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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ユーティリティトークン管理システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/32 20060101AFI20230420BHJP
   G06Q 20/38 20120101ALI20230420BHJP
【FI】
H04L9/32 200B
G06Q20/38 310
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021128983
(22)【出願日】2021-08-05
(65)【公開番号】P2023023438
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】397041185
【氏名又は名称】三菱UFJ信託銀行株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 達哉
【審査官】局 成矢
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-023927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0013048(US,A1)
【文献】国際公開第2021/132483(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/32
G06Q 20/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
役務又は商品の提供に関わるトークンを管理するトークン管理システムであって、
ブロックチェーンネットワーク(BCN)と、
前記BCNのノードを構成すると共に、前記トークンのトランザクションを認証するトークン認証サーバと、
前記BCNのノードを構成すると共に、1つ又は複数のトークン権利者端末装置のそれぞれで動作するウォレットアプリを管理する1つ又は複数のウォレット管理サーバと、
前記BCNのノードを構成すると共に、前記役務又は商品を管理する役務又は商品管理システムと連携する連携管理サーバとを備える、トークン管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン認証サーバ、前記ウォレット管理サーバ、及び前記連携管理サーバは、それぞれのノードで前記トランザクションに署名するための第1秘密鍵を有する、トークン管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、前記トークンの権利者に紐づくトランザクションに署名するための第2秘密鍵を有する、トークン管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、前記ウォレットアプリのアカウント情報を前記トークンの権利者と関連付けて登録している、トークン管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、自らが管理するトークン以外のトークンの移転処理に関与しないように設定されている、トークン管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、前記ウォレットアプリのアカウント毎に異なる秘密鍵を有する、トークン管理システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記複数のトークン権利者端末装置の間で、異なる役務又は商品に紐づけられたトークンの交換をマッチングするマッチングサーバを備える、トークン管理システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記連携管理サーバは、全てのトークンのトランザクションについて署名又は承認ができず、参照するのみであるように設定されている、トークン管理システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記BCNのノードを構成すると共に、前記トークンの原簿を管理する1つ又は複数のトークン原簿管理サーバを備える、トークン管理システム。
【請求項10】
請求項9に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン管理システムは、前記トークン認証サーバ、前記1つ又は複数のウォレット管理サーバ、前記連携管理サーバ、及び前記トークン原簿管理サーバのノード毎に第1公開鍵を有し、前記トークンの権利者毎に第2公開鍵を有する、トークン管理システム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン原簿管理サーバは、自らが発行したトークン以外のトークンの原簿書換処理に関与しないように設定されている、トークン管理システム。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記連携管理サーバは、前記トークンの権利行使対象となる役務又は商品1件毎に異なる第1シリアル番号を生成する、トークン管理システム。
【請求項13】
請求項12に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン原簿管理サーバは、前記第1シリアル番号に所定の情報を加えた後、前記トークン原簿管理サーバに紐づく第1秘密鍵を用いて第1ハッシュ化データを生成し、前記第1ハッシュ化データを含むトークンを発行する、トークン管理システム。
【請求項14】
請求項13に記載のトークン管理システムにおいて、
前記所定の情報は、前記トークン原簿管理サーバのID、及びトークン発行日時を含む、トークン管理システム。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、前記トークンを行使して前記役務又は商品の提供を受けるためのトークン行使情報を前記トークン権利者端末装置から受信すると、前記第1ハッシュ化データを前記トークン原簿管理サーバに紐づく第1公開鍵を用いて復号化することにより前記第1シリアル番号を生成し、前記第1シリアル番号に基づき読取コードを生成し、前記読取コードを前記トークン権利者端末装置に送信する、トークン管理システム。
【請求項16】
請求項15に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、前記第1シリアル番号に基づき読取コードを生成する際、前記第1シリアル番号をハッシュ化した第2ハッシュ化データを生成し、前記第2ハッシュ化データから前記読取コードを生成する、トークン管理システム。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のトークン管理システムにおいて、
前記読取コードは、前記役務又は商品管理システムの端末装置で読み取り可能な一次元コード又は二次元コードである、トークン管理システム。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン権利者端末装置は、前記読取コードをのディスプレイに表示し、前記役務又は商品管理システムの店舗端末装置は、前記読取コードを読み込む、トークン管理システム。
【請求項19】
請求項15乃至18のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記連携管理サーバは、前記役務又は商品管理システムから送信された前記読取コードを、前記トークン権利者に紐づく第2公開鍵を用いて復号化することにより第2シリアル番号を生成し、前記第1シリアル番号と前記第2シリアル番号が一致する場合、前記第1シリアル番号に関連する前記役務又は商品を提供するための情報を前記役務又は商品管理システムに送信する、トークン管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックチェーンを用いて、役務又は商品の提供に関わるユーティリティトークンを管理するユーティリティトークン管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
B2C(企業と一般消費者の取引)の際、マーケティングの一環として、既存の上場株式に付帯する株主優待、施設の利用券、会員権等が、紙媒体で提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
紙媒体によるB2Cマーケティングには、実施者(企業)と受領者である一般消費者(個人)双方の立場から、次の課題(1)~(2)が生じている。
(1)企業側の課題:認知・関心の獲得、及びその維持に多額のコストを要する。
(2)個人側の課題:広告により刹那的な関心や消費に繋がることはあっても、閾値を超えた頻度のものは嫌悪感に繋がることがある。
B2Cマーケティングに関連して、「応援投資」(ファンマーケティング)等としての株主優待施策があるが、既存の株主優待施策にも、次のような課題(i)~(ii)が生じている。
【0004】
(i)企業側の課題:株主名簿は内容面や鮮度面でマーケティング利用には不十分であり、株主優待券の印刷、紙管理、配送等に人的負荷とコストが発生し、譲渡制限を付していても株主優待券交付後の統制は実質困難(金券ショップ等)であるばかりか、株主優待券の譲渡後の2次権利者の把握も困難である。
【0005】
(ii)個人側の課題:株主優待券毎に利用期限の管理を要する点や、利用時に持参する必要がある等、煩雑であり、自分が使いきれないとき等、不使用時に換金する際に中間業者マージンが発生する。
【0006】
上記課題(i)、(ii)は、株主優待券に限らず、紙媒体で、施設の利用券、会員権の利用、役務の利用券、商品等の引換券を用いて、任意の役務又は商品を提供する場合も生じている。
【0007】
これまでのトークン化の仕組み(Progmat等のセキュリティトークン基盤を含む)においては、トークンは代替可能・分割可能なトークン(Fungible Token)であって、裏付となる権利毎に独立した性質のものでは無い。
【0008】
これに対して、非代替性トークン(NFT:Non-fungible Token)と呼ばれる代替不可・分割不可なトークン化の既存の仕組みも提案されている。しかし、NFTであっても、例えばあるトークンにデジタルアートの閲覧権が紐づけられているような場合、トークンのメタデータとして当該デジタルアートの画像表示用URL情報が掲載されているような仕様となっている。
【0009】
したがって、個々のトークンID自体がユニークだったとしても、当該URLを意識的又は偶発的に第三者が知った場合等はトークン保有者のみが当該デジタルアートを閲覧できるとは限らない等、閲覧権等の権利自体がユニークであることを保証せず、その権利者が排他的に権利を行使できることも保証していない。
【0010】
そこで、本発明は、紙媒体を介在させずに、ブロックチェーンを用いて役務又は商品の提供に関わるトークンを管理するトークン管理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のトークン管理システムの各態様は、次の通りである。
[態様1]
役務又は商品の提供に関わるトークンを管理するトークン管理システムであって、
ブロックチェーンネットワーク(BCN)と、
前記BCNのノードを構成すると共に、前記トークンのトランザクションを認証するトークン認証サーバと、
前記BCNのノードを構成すると共に、1つ又は複数のトークン権利者端末装置のそれぞれで動作するウォレットアプリを管理する1つ又は複数のウォレット管理サーバと、
前記BCNのノードを構成すると共に、前記役務又は商品を管理する役務又は商品管理システムと連携する連携管理サーバとを備える、トークン管理システム。
【0012】
[態様2]
態様1に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン認証サーバ、前記トークン原簿管理サーバ、前記ウォレット管理サーバ、及び前記連携管理サーバは、それぞれのノードで前記トランザクションに署名するための第1秘密鍵を有する、トークン管理システム。
[態様3]
態様2に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、前記トークンの権利者に紐づくトランザクションに署名するための第2秘密鍵を有する、トークン管理システム。
[態様4]
態様3に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、前記ウォレットアプリのアカウント情報を前記トークンの権利者と関連付けて登録している、トークン管理システム。
【0013】
[態様5]
態様1乃至4のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、自らが管理するトークン以外のトークンの移転処理に関与しないように設定されている、トークン管理システム。
[態様6]
態様5に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレット管理サーバは、前記ウォレットアプリのアカウント毎に異なる秘密鍵を有する、トークン管理システム。
[態様7]
態様1乃至6のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記複数の権利者端末装置の間で、異なる役務又は商品に紐づけられたトークンの交換をマッチングするマッチングサーバを備える、トークン管理システム。
【0014】
[態様8]
態様1乃至7のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記連携管理サーバは、全てのトークンのトランザクションについて署名又は承認ができず、参照するのみであるように設定されている、トークン管理システム。
[態様9]
態様1乃至8のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記BCNのノードを構成すると共に、前記トークンの原簿を管理する1つ又は複数のトークン原簿管理サーバを備える、トークン管理システム。
[態様10]
態様9に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン管理システムは、前記トークン認証サーバ、前記1つ又は複数のウォレット管理サーバ、前記連携管理サーバ、及び前記トークン原簿管理サーバのノード毎に第1公開鍵を有し、前記トークンの権利者毎に第2公開鍵を有する、トークン管理システム。
[態様11]
態様9又は10に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン原簿管理サーバは、自らが発行したトークン以外のトークンの原簿書換処理に関与しないように設定されている、トークン管理システム。
【0015】
[態様12]
態様9乃至11のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記連携管理サーバは、前記トークンの権利行使対象となる役務又は商品1件毎に異なる第1シリアル番号を生成する、トークン管理システム。
[態様13]
態様12に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン原簿管理サーバは、前記第1シリアル番号に所定の情報を加えた後、前記トークン原簿管理サーバに紐づく第1秘密鍵を用いて第1ハッシュ化データを生成し、前記第1ハッシュ化データを含むトークンを発行する、トークン管理システム。
[態様14]
態様13に記載のトークン管理システムにおいて、
前記所定の情報は、前記トークン原簿管理サーバのID、及びトークン発行日時を含む、トークン管理システム。
【0016】
[態様15]
態様13又は14に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレットアプリ管理サーバは、前記トークンを行使して前記役務又は商品の提供を受けるためのトークン行使情報を前記トークン権利者端末装置から受信すると、前記第1ハッシュ化データを前記トークン原簿管理サーバに紐づく第1公開鍵を用いて復号化することにより前記第1シリアル番号を生成し、前記第1シリアル番号に基づき読取コードを生成し、前記読取コードを前記UT権利者端末装置に送信する、トークン管理システム。
[態様16]
態様15に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ウォレットアプリ管理サーバは、前記第1シリアル番号に基づき読取コードを生成する際、前記第1シリアル番号を前記トークン権利者に紐づく第2秘密鍵を用いてハッシュ化した第2ハッシュ化データを生成し、前記第2ハッシュ化データから前記読取コードを生成する、トークン管理システム。
[態様17]
態様15又は16に記載のトークン管理システムにおいて、
前記読取コードは、前記役務又は商品管理システムの端末装置で読み取り可能な一次元コード又は二次元コードである、トークン管理システム。
【0017】
[態様18]
態様15乃至17のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン権利者端末装置は、前記読取コードをディスプレイに表示し、前記役務又は商品管理システムの店舗端末装置は、前記読取コードを読み込む、トークン管理システム。
[態様19]
態様15乃至18のいずれか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記連携管理サーバは、前記役務又は商品管理システムから送信された前記読取コードを、前記トークン権利者に紐づく前記第2公開鍵を用いて復号化することにより第2シリアル番号を生成し、前記第1シリアル番号と前記第2シリアル番号が一致する場合、前記第1シリアル番号に関連する前記役務又は商品を提供するための情報を前記役務又は商品管理システムに送信する、トークン管理システム。
【発明の効果】
【0018】
本発明のトークン管理システムは、紙媒体を介在させずに、ブロックチェーンを用いて任意の役務又は商品の提供を受けることを可能とする。さらに、本発明の請求項12乃至19に係るトークン管理システムは、トークンの権利者が排他的に権利を行使することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るUT管理システムを含む構成図である。
図2図1のUT管理システムにおけるUT利用時の処理を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のトークン管理システムを、ユーティリティトークン(UT)管理システムとした一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分は、同じ符号を付して説明は適宜省略する。本実施形態における各用語の意味は次の通りである。ユーティリティトークン(UT)とは、任意の役務若しくは商品の提供を受けるための権利を示すトークン(電子証票)である。セキュリティトークン(ST)とは、有価証券、不動産、又は動産等の所有権を示すトークン(電子証票)である。トランザクション(Tx)とは、ブロックチェーンネットワークで管理されるブロック単位でまとめて記録されている取引データである。POSとは、販売時点情報管理(Point Of Sales)を意味し、POSシステムとは、役務又は商品の提供に関する情報を役務又は商品単位で記録し集計するシステムである。
【0021】
[UT管理システム]
本発明の実施形態に係るUT管理システム1000を含むネットワークの構成図を、図1に示す。UT管理システム1000は、権限が異なる複数のノードを有する分散型台帳又はブロックチェーンネットワーク(BCN)100と、UT認証サーバ200と、UT原簿管理サーバ300(第1UT原簿管理サーバ300A、及び第2UT原簿管理サーバ300B)と、ウォレット管理者サーバ400(第1ウォレット管理者サーバ400A、及び第2ウォレット管理サーバ400B)と、POS連携基盤管理サーバ500とから構成される。UT管理システム1000は、加盟店POSシステム600、UT発行体サーバ700、及び/又はUT権利者端末装置800も含むことができる。
【0022】
BCN100は、後述する各ノードAN、NN、及びCNを備えている。
UT認証サーバ200は、UTの二重消費を検証(監視)しTxの更新を承認するためのノータリーノードNNと、所定のデータ処理を実行するデータベース(不図示)と、ノータリーノードNN(自己のノード)でTxに署名するための秘密鍵NKと、ノータリーノードNN及び秘密鍵NKを用いて各種処理を実行する制御部(不図示)とを備えている。
【0023】
UT管理システム1000は、UT認証サーバ200、ウォレット管理サーバ400、POS連携基盤管理サーバ500、及びUT原簿管理サーバ300のノード毎に第1公開鍵を有する。UT管理システム1000は、トークンの権利者毎に第2公開鍵を有する。なお、本実施形態において、各サーバが暗号化(ハッシュ化)するときは「暗号化を実行するサーバが有する秘密鍵」(そのサーバしか知らない秘密鍵)を利用し、復号化(デコード)するときは「暗号化したサーバの公開鍵」(BCN100に参加していれば知ることができ、秘密鍵に対応した公開鍵)を利用する。
【0024】
以下、第1UT原簿管理サーバ300A、及び第2UT原簿管理サーバ300Bを区別しない場合、UT原簿管理サーバ300という。同様に、以下、第1UT、及び第2UTを区別しない場合、UTという。各UTは、それぞれが異なる権利者又は所有者に紐づけられた複数のUTから構成される。
【0025】
第1UT原簿管理サーバ300Aは、第1UTについてTxの更新を承認するための第1アセットノードANと、所定の一貫したデータ処理を実行するリレーショナルデータベースRDBと、第1アセットノードAN(自己のノード)でTxに署名するための秘密鍵NKと、第1アセットノードAN及び秘密鍵NKを用いて各種処理を実行する制御部(不図示)とを備えている。第1UT原簿管理サーバ300Aの第1アセットノードANは、第2UT等、第1UT(自らが発行したUT)以外のUTの原簿書換処理に関与しないように設定されている。
【0026】
第2UT原簿管理サーバ300Bは、第2UTについてTxの更新を承認するための第2アセットノードANと、所定の一貫したデータ処理を実行するリレーショナルデータベースRDBと、第2アセットノードAN(自己のノード)でTxに署名するための秘密鍵NKと、第2アセットノードAN及び秘密鍵NKを用いて各種処理を実行する制御部(不図示)とを備えている。第2UT原簿管理サーバ300Bの第2アセットノードANは、第1UT等、第2UT(自らが発行したUT)以外のUTの原簿書換処理に関与しないように設定されている。
【0027】
本実施形態において、第1UT原簿管理サーバ300A及び第2UT原簿管理サーバ300Bの2つを示したが、これに限定されずUT管理システム1000は、任意の複数のUT原簿管理サーバ300を備えることができる。第1UT原簿管理サーバ300Aは、デジタル証券であるSTに付随する第1UT(株主優待等)を管理する原簿管理サーバとすることができる。第2UT原簿管理サーバ300Bは、上場株式等の有価証券原簿に付随する第2UTを管理する原簿管理サーバとすることができる。UT発行体サーバ700は、第1UT原簿管理サーバ300A及び/又は第2UT原簿管理サーバ300Bに対して、各UTの発行指図を実行する。
【0028】
以下、第1ウォレット管理サーバ400A、及び第2ウォレット管理サーバ400Bを区別しない場合、ウォレット管理サーバ400という。第1ウォレット管理サーバ400Aは、Txを管理するための第1カストディアンノードCNと、所定の一貫したデータ処理を実行するリレーショナルデータベースRDBと、第1カストディアンノードCN(自己のノード)で任意の第1UTのTxに署名するための秘密鍵NKと、第1カストディアンノードCNで第1UTの権利者(アカウント)毎に第1UTに紐づくTxに署名するための秘密鍵AKと、第1カストディアンノードCN及び秘密鍵NK、AKを用いて各種処理を実行する制御部(不図示)とを備えている。第1カストディアンノードCNは、第2UT等、第1UT(自らが管理するUT)以外のUTの移転処理に関与しないように設定されている。
【0029】
第2ウォレット管理サーバ400Bは、Txを管理するための第2カストディアンノードCNと、所定の一貫したデータ処理を実行するリレーショナルデータベースRDBと、第2カストディアンノードCN(自己のノード)で任意の第2UTのTxに署名するための秘密鍵NKと、第2カストディアンノードCNで第2UTの権利者(アカウント)毎に第2UTに紐づくTxに署名するための秘密鍵AKと、第2カストディアンノードCN、及び秘密鍵NK、AKを用いて各種処理を実行する制御部(不図示)とを備えている。第2カストディアンノードCNは、第1UT等、第2UT(自らが管理するUT)以外のUTの原簿処理に関与しないように設定されている。
【0030】
本実施形態において、第1ウォレット管理サーバ400A及び第2ウォレット管理サーバ400Bの2つを示したが、これに限定されずUT管理システム1000は、任意の複数のウォレット管理サーバ400を備えることができる。
【0031】
POS連携基盤管理サーバ(連携管理サーバ)500は、UT原簿管理サーバ300、加盟店POSシステム(役務又は商品情報管理システム)600と通信可能に接続される。POS連携基盤管理サーバ500は、第1UT及び第2UTに基づく役務又は商品の提供についてPOSシステム600と連携して処理を実行する。POSシステム600は、複数の店舗端末装置610と、複数の店舗端末装置610との間で役務又は商品の情報を送受信するPOSサーバ620とから構成される。
【0032】
POS連携基盤管理サーバ500は、所定店舗に関わるUTについて、Txの参照のみが可能なレファレンスノードRNと、所定の一貫したデータ処理を実行するリレーショナルデータベースRDBと、レファレンスノードRN(自己のノード)でPOSサーバ620が提供する役務又は商品に関係するUTのTxを参照するための秘密鍵NKと、レファレンスノードRN、及び秘密鍵NKを用いて各種処理を実行する制御部(不図示)とを備えている。レファレンスノードRNは、全てのTxについて署名(承認)ができず、参照するのみであるように設定されている。
【0033】
POSサーバ620は、複数の店舗端末装置610と通信可能に接続されている。POSシステムは、POSサーバ620及び複数の店舗端末装置610から構成される。
【0034】
[UT権利者端末装置]
以下、第1UT権利者端末装置800A、及び第2UT権利者端末装置800Bを区別しない場合、UT権利者端末装置800という。複数の第1UT権利者端末装置800Aが、第1ウォレット管理サーバ400Aと通信可能に接続されている。各第1UT権利者端末装置800Aには、第1ウォレット管理サーバ400Aを介して第1UTの処理(更新情報反映等)を実行するためのウォレットアプリがインストールされている。複数の第2UT権利者端末装置800Bが、第2ウォレット管理サーバ400Bと通信可能に接続されている。各第2UT権利者端末装置800Bには、第2ウォレット管理サーバ400Bを介して第2UTの処理(更新情報反映等)を実行するためのウォレットアプリがインストールされている。ウォレット管理サーバ400は、ウォレットアプリのアカウント情報を、UTの権利者と関連付けて登録している。
【0035】
UT権利者端末装置800は、スマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピュータである。第1UT権利者端末装置800Aの所有者及び/又は第2UT権利者端末装置800Bの所有者は、限定するものではないが例えば、デジタル証券及び/又は上場株式等の有価証券への投資家とすることができる。
【0036】
[UTマッチングサーバ]
UTマッチングサーバ900は、第1UT権利者端末装置800A、第2UT権利者端末装置800B、第1ウォレット管理サーバ400A、第2ウォレット管理サーバ400Bと通信可能に接続されている。UTマッチングサーバ900は、所定の一貫したデータ処理を実行するリレーショナルデータベースRDBと、マッチング処理を実行する制御部(不図示)とを備えている。UTマッチングサーバ900は、第1UT及び第2UTの間でUTの交換をマッチングするマッチング処理を実行する。
【0037】
[POS連携の具体的処理]
1.連携コード・UT連携処理(UT発行時(暗号化))
本実施形態のUT管理システム1000において、UT発行時の連携コード・UT連携処理について図1を用いて説明する。
UT発行体サーバ700は、ステップS101で、UT原簿管理サーバ300に対してUT発行指図を送信する。UT発行体サーバ700からのUT発行指図を受信した後、UT原簿管理サーバ300は、ステップS102で、POSサーバ620から役務又は商品の情報を受信する。受信した役務又は商品の情報に基づき、UT原簿管理サーバ300は、ステップS103で、POS連携基盤管理サーバ500に対して連携コード(第1シリアル番号(x))の発行依頼を送信する。
【0038】
UT原簿管理サーバ300から連携コードの発行依頼を受信すると、POS連携基盤管理サーバ500は、ステップS104で、UTの権利行使対象となる役務又は商品1件毎に異なる第1シリアル番号(x)を発行(生成)し、UTを発行するUT原簿管理サーバ300に第1シリアル番号(x)を通知する。これによって、UT原簿管理サーバ300、POS連携基盤管理サーバ500の間で、第1シリアル番号(x)を連携(共有)することができる。なお、POS連携基盤管理サーバ500は、第1シリアル番号(x)をPOSサーバ620に送信することができる。店舗端末装置610は、POSサーバ620から第1シリアル番号(x)を受信して確認(共有)することができる。
【0039】
UT原簿管理サーバ300は、ステップS105で、受信した第1シリアル番号(x)にUT原簿管理サーバID(y)とUT発行日時(z)を加えた第2連携コードX(X=x+y+z)を生成する。UT原簿管理サーバ300は、秘密鍵NKを用いて第2連携コードXをハッシュ化した第1ハッシュ化(暗号化)データを生成する。これによって、UT原簿管理サーバ300は、第1ハッシュ化データを「トークンID」(X’)として有するTxを含む、UTを発行することができる。
【0040】
発行されたUTには「UT原簿管理者ID」(y)と「UT発行日時」(z)が登録されている。UTは、UT管理システム1000に参加している関係サーバ200、300、400、500のノードNN、AN、CN、及びRNが閲覧できるものとする。
【0041】
2.連携コード・UT連携処理(UT利用時(復号化・変換・表示))
本実施形態のUT管理システム1000において、UT利用時の連携コード・UT連携処理について図2を用いて説明する。
UT権利者(UT権利者端末装置800の操作者)がUTの権利を行使して役務又は商品を受け取る際、UT権利者端末装置800が、ウォレットアプリのUT行使ボタンの操作(タップ)を検出すると、UT権利者端末装置800は、ステップS201で、ウォレットアプリ管理サーバ400にUT行使情報を送信する。
【0042】
UT行使情報を受信したウォレットアプリ管理サーバ400は、ステップS202で、利用対象の「トークンID」(X’)をUT原簿管理サーバ300の第1公開鍵を用いて復号化し、第2連携コードX(x+y+z)を得る。
【0043】
ウォレットアプリ管理サーバ400は、ステップS203で、第2連携コードXから「UT原簿管理ID」(y)と「UT発行日時」(z)を除き、第1シリアル番号(x)を得る。ウォレットアプリ管理サーバ400は、ステップS204で、第1シリアル番号(x)をUT権利者端末800(ウォレットアプリのアカウント)毎に設定された秘密鍵AKを用いてハッシュ化した第2ハッシュ化データ(「ハッシュ化後の第1シリアル番号」(x’))を得る。
【0044】
ウォレットアプリ管理サーバ400は、ステップS205で、「ハッシュ化後の第1シリアル番号」(x’)を読取コードに変換してUT権利者端末装置800に送信する。UT権利者端末装置800は、ステップS206Aで、UT権利者端末装置800のディプレイ上にウォレットアプリを用いて読取コードを表示する。読取コードは、一次元コード(バーコード)、又は二次元コード(QRコード(登録商標))とすることができる。
【0045】
3.連携コード・UT連携方式(UT消費時(読取・変換・消込))
UTに基づく役務又は商品の提供者となる店舗端末装置610は、ステップS206Bで、読み取り装置を介して、UT権利者端末装置800のディプレイに表示されている読取コードを読み取って、「ハッシュ化後の第1シリアル番号」(x’)を生成し、ステップS207で、POSサーバ620に、「ハッシュ化後の第1シリアル番号」(x’)を送信する。
【0046】
POSサーバ620は、ステップS208で、受信した、「ハッシュ化後の第1シリアル番号」(x’)をPOS連携基盤管理サーバ500に送信する。POS連携基盤管理サーバ500は、ステップS209で、受信した「バッシュ化後の第1シリアル番号」(x’)をUT権利者の第2公開鍵を用いて復号化し、「第2シリアル番号」(x)を得る。
【0047】
POS連携基盤管理サーバ500は、ステップS210で、復号化した「第2シリアル番号」(x)が、自身が発行した「第1シリアル番号」(x)と一致するか否かを判定する。ステップS210で「第1シリアル番号」(x)との一致が判定されると、POS連携基盤管理サーバ500は、ステップS211で、「第1シリアル番号」(x)と一意に紐づく役務又は商品の内容を、POSサーバ620で特定させると共にPOSサーバ620を介して店舗端末装置610に表示させる。
【0048】
店舗端末装置601は、ステップS212で、POSシステムで特定された役務又は商品の内容に基づき、役務又は商品を提供し、POSPOSサーバ620に対して「第1シリアル番号」(x)を使用済みとして番号の消込を要求し終了する。
【0049】
以上説明した本実施形態に係るUT管理システム1000による処理をまとめると、以下に記載する仕組み(1)乃至(3)となる。これらの仕組み(1)~(3)に基づき、UTに表示される役務又は商品の権利行使は、UT管理システム1000上で当該権利の保有者として登録されている「UT権利者」のみが行使できることを技術的に保証する。
【0050】
(1)UT原簿管理サーバ300は、POS連携コード(役務1件毎に異なるシリアル番号)等を自身の秘密鍵を用いてハッシュ化したコードをトークンIDとしてUTを発行する。
(2)UT権利者端末装置800は、ウォレットアプリを通じて、「UT原簿管理サーバ800の第1公開鍵を用いてトークンIDを復号化しPOS連携コードを得て、UT権利サーバ600の秘密鍵を用いてハッシュ化したコードを得て、ハッシュ化後のコードを読取コードに変換した上で、UT権利者端末装置800のディスプレイに表示する。
(3)POSシステム600の店舗端末装置610が読取コードを読み取り、POSシステム600は、POS連携基盤管理サーバ500を通じて、UT権利者の第2公開鍵を用いてハッシュ化前のPOS連携コードを得て、店舗端末装置610は、当該連携コードと一意に紐づく役務又は商品内容を店舗端末装置610で表示する。
【0051】
[まとめ]
本実施形態に係るUT管理システム1000は、既存の上場株式に付帯する優待や、BCN100を用いてトークン化されたデジタル証券としてのSTに付帯する利用権等の権利を、有価証券又はデジタル証券と分化させた独立のUTとして、「発行」、「移転」、「利用」、「償還」を可能とする。本発明の実施形態に係るウォレットアプリを備えた権利者端末装置800を用いることにより、各権利等の発行・付与から消込までをデジタル完結で処理可能とし、権利移転制限等の統制や移転・利用履歴等の捕捉も、UT管理システム1000上で可能となる。
【0052】
加えて、各付帯権利等はUT管理システム1000(BCN100)上で権利者として登録された者のみが行使でき、当該権利情報の改竄も不可能なため、UTの譲渡・交換に際して技術的に信頼性を担保した形で取引が可能となり、中間業者を介さず個人間で直接的に実行が可能となる。
【0053】
UT利用時(権利の行使時)は、各権利者端末装置800で起動しているモバイルウォレットアプリ上で、「権利行使」処理をすることで、権利行使先の店舗側端末装置610を介してPOSシステム600と連携(割引後の価格表示や提供役務の消込)をするための読取コードを表示し、役務又は商品を受領することができる。
【0054】
「読取コード」は役務又は商品1件毎に異なる「第1シリアル番号」に基づき生成されており、UT管理システム1000上でトークン化する際に当該「第1シリアル番号」をハッシュ化したコードを「トークンID」とすることで、非代替・分割不可型トークン(Non-fungible Token、以下NFT)として発行することができる。
【0055】
UTを利用しPOSシステム上で反映する際、「連携コード」の発行元がUT権利者の第2公開鍵を用いて復号化し「第2シリアル番号」を得て「第1シリアル番号」と照合する必要がある仕組みと、前述のNFT化の仕組みにより、UT管理システム1000上でUT権利者として登録された者のみが権利行使できることを技術的に保証することができる。
【0056】
さらに、UT管理システム1000によれば、応援投資の実施者(企業)と受領者(個人)双方にとって、次のような利益を生じる。
(企業の利益)既存の優待券と比較し、印刷、紙管理、配送等の人的負荷とコストが縮減される。移転による認知・利用機会の最大化や、リアルタイムな権利者・行使状況の把握により、適切なマーケティング施策が企画できる。上記効果により「応援投資」の実効性が向上し、エンゲージメントの高い(“同じ船”意識)ロイヤル顧客の支持基盤を構築できる。
(個人の利益)付与された各種権利の管理や利用に伴う煩雑さが解消される。中間業者マージンの負担なく第三者への譲渡や他のUTとの交換が可能となり、満足度が向上する。
【符号の説明】
【0057】
1000 UT管理システム
100 ブロックチェーンネットワーク(BCN)
200 UT認証サーバ
300 UT原簿管理サーバ
400 ウォレット管理サーバ
500 POS連携基盤管理サーバ
600 POSシステム
610 店舗端末装置
620 POSサーバ
700 UT発行体サーバ
800 UT権利者端末装置
900 マッチングサーバ
図1
図2