(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】カメラモジュールのための液晶ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20230420BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20230420BHJP
C08L 67/03 20060101ALI20230420BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230420BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20230420BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20230420BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
G03B17/02
C08L101/12
C08L67/03
C08L23/26
C08K3/32
C08K3/26
C08K3/30
(21)【出願番号】P 2021140687
(22)【出願日】2021-08-31
(62)【分割の表示】P 2018508634の分割
【原出願日】2016-08-03
【審査請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2015-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン・シン
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533325(JP,A)
【文献】特表2007-506850(JP,A)
【文献】特表2013-500351(JP,A)
【文献】特開2005-290371(JP,A)
【文献】国際公開第2007/043701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,G03B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形部品を含むカメラモジュールであって、
当該成形部品はポリマー組成物を含み、当該ポリマー組成物は、液晶ポリマーと、
0.1~35マイクロメートルのメジアン粒径
及びモース硬度スケールに基づいて2.5~10.0の硬度値を有する無機粒子状材料と、
エポキシ官能化オレフィンコポリマーとを含み、
当該ポリマー組成物が、ISO試験No.527:2012にしたがって23℃において測定して
4%以上の破断点引張伸びと、ISO試験No.179-1:2010にしたがって23℃において測定して
6kJ/m
2以上のシャルピーノッチ付き衝撃強さを示す、前記カメラモジュール。
【請求項2】
当該無機粒子状材料が、
2~20マイクロメートルのメジアン粒径を有する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
当該カメラモジュールが、その上にキャリアーアセンブリが搭載されている概して平面状のベースを含み、当該ベース、キャリアーアセンブリ、又は両方が当該成形部品を含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
当該カメラモジュールが、当該ポリマー組成物を含むベースを含有する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
当該カメラモジュールが、当該ポリマー組成物を含むメインボードを含有する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
当該カメラモジュールが、当該ポリマー組成物を含むフィルムを含むカバーを含有する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項7】
当該カメラモジュールが、当該ポリマー組成物を含む断熱キャップを含有する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項8】
当該ポリマー組成物が、
0.05重量%~1.5重量%の量の滑剤を含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項9】
当該ポリマー組成物がガラス繊維を含まない、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項10】
当該ポリマー組成物が鉱物繊維を含まない、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項11】
当該液晶ポリマーが、当該ポリマー組成物の
20重量%~80重量%を構成する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項12】
当該ポリマー組成物が、1000秒
-1の剪断速度において測定して
20~120Pa・秒の溶融粘度を有する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項13】
当該ポリマー組成物が、ISO試験No.527:2012にしたがって23℃において測定して
60~350MPaの引張り強さを示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項14】
当該ポリマー組成物が、ISO試験No.527:2012にしたがって23℃において測定して
6,000MPa~12,000MPaの引張弾性率を示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項15】
当該ポリマー組成物が、ISO試験No.178:2010にしたがって23℃において測定して
80~350MPaの曲げ強さを示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項16】
当該ポリマー組成物が、ISO試験No.178:2010にしたがって23℃において測定して
6,000MPa~15,000MPaの曲げ弾性率を示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項17】
当該ポリマー組成物が、ASTM-D648-07にしたがって1.8MPaの規定荷重において測定して
200℃~280℃の荷重撓み温度(DTUL)を示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項18】
当該ポリマー組成物が、ASTM-D785-08(スケールM)にしたがって測定して
25~80のロックウェル硬さを示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項19】
当該ポリマー組成物が、
1×10
10
Ω・m~9×10
14
Ω・mの体積抵抗率を示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項20】
当該ポリマー組成物が、
1×10
17
Ω~1×10
26
Ωの表面抵抗率を示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項21】
当該ポリマー組成物が、ISO試験No.527:2012にしたがって23℃において測定して
4%~10%の破断点引張伸びを示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項22】
当該ポリマー組成物が、ISO試験No.179-1:2010にしたがって23℃において測定して
6kJ/m
2
~25kJ/m
2
のシャルピーノッチ付き衝撃強さを示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項23】
当該ポリマー組成物が、ISO-294-4:2001にしたがってタイプD2試験片を用いて測定して
6以下の寸法安定性を示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項24】
当該液晶ポリマーが、当該液晶ポリマーに対して、
45モル%~70モル%の量の4-ヒドロキシ安息香酸から誘導される単位、
15モル%~35モル%の量のテレフタル酸から誘導される単位、
5モル%~20モル%の量の4,4’-ビフェノールから誘導される単位、
3モル%~25モル%の量の6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸から誘導される単位、及び
1モル%~35モル%の量のアセトアミノフェンから誘導される単位を含有する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項25】
当該液晶ポリマーが、当該ポリマー組成物の
30重量%~70重量%を構成し、
当該エポキシ官能化オレフィンコポリマーが当該ポリマー組成物の
1重量%~4重量%を構成し、当該無機粒子状材料が当該ポリマー組成物の
25重量%~40重量%を構成し、そして滑剤が当該ポリマー組成物の
0.05重量%~1.5重量%を構成する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項26】
当該ポリマー組成物が、ISO試験No.527:2012にしたがって23℃において測定して
5%~10%の破断点引張伸び、ISO試験No.179-1:2010にしたがって23℃において測定して
9kJ/m
2
~25kJ/m
2
のシャルピーノッチ付き衝撃強さ、及び1000秒
-1の剪断速度において測定して
20~120Pa・秒の溶融粘度を示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項27】
当該ポリマー組成物が、ISO試験No.527:2012にしたがって23℃において測定して
60~350MPaの引張り強さ、ASTM-D648-07にしたがって1.8MPaの規定荷重において測定して
200℃~280℃の荷重撓み温度(DTUL)、及びASTM-D785-08(スケールM)にしたがって測定して
25~80のロックウェル硬さを示す、請求項
26に記載のカメラモジュール。
【請求項28】
請求項1~
27のいずれか一項のカメラモジュールを含む、携帯電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、2015年8月17日出願の米国仮出願62/205,865(その
全部を参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]カメラモジュール(又はコンポーネント)は、携帯電話、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等においてしばしば用いられている。例としては、例えば、ベースに搭載されているキャリアー(carrier)を含むコンパクトカメラ
モジュール、デジタルカメラシャッターモジュール、デジタルカメラの構成部品、ゲーム機内のカメラ、医療用カメラ、監視カメラ等が挙げられる。かかるカメラモジュールはより複雑になってきており、現在ではより多い数の可動部品を含む傾向がある。例えば幾つかの場合においては、2つのコンパクトカメラモジュールアセンブリを単一のモジュール内に搭載して画質を向上させることができる(「デュアルカメラ」モジュール)。他の場合においては、列状のコンパクトカメラモジュールを用いることができる。これらの部品のデザインはより複雑になってきているので、カメラモジュールの成形部品を形成するために用いるポリマー組成物は、組み立てプロセスに耐えることができるように十分に延性であることがますます重要になっている。ポリマー組成物はまた、使用中に破断又は破砕することなくある程度の衝撃エネルギーを吸収することもできなければならない。今日まで、殆どの従来の技術は、ポリマー組成物の強度及び他の特性の向上を助けるために繊維状充填剤を用いることを伴っている。しかしながら残念なことに、これらの技術は、結局のところはそれを加熱する際の部品の劣った寸法安定性のような他の問題を導くだけである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]したがって、カメラモジュールの成形部品において用いるための改良されたポリマー組成物に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本発明の一態様によれば、100重量部の少なくとも1種類の液晶ポリマー;約50~約90重量部の、モース硬度スケールに基づいて約2.5以上の硬度値及び約0.1~約35マイクロメートルの平均径を有する無機粒子状材料;及び約1~約15重量部のエポキシ官能化オレフィンコポリマー;を含むポリマー組成物が開示される。
【0005】
本発明の他の態様によれば、カメラモジュールのための成形部品が開示される。この成形部品は、液晶ポリマーを含むポリマー組成物を含む。この組成物は、ISO試験No.527:2012にしたがって23℃において測定して約3.5%以上の破断点引張伸び、ISO試験No.179-1:2010にしたがって23℃において測定して約6kJ/m2以上のシャルピーノッチ付き衝撃強さ、及びISO-294-4:2001にしたがってタイプD2試験片を用いて測定して約6以下の寸法安定性を示す。
【0006】
[0005]本発明の他の特徴及び形態を下記においてより詳細に示す。
[0006]当業者に対するそのベストモードを含む本発明の完全且つ実施化可能な程度の開示を、添付の図面の参照を含む明細書の残りの部分においてより詳しく示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】[0007]
図1は、本発明の一態様にしたがって形成することができるコンパクトカメラモジュール(CCM)の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一態様にしたがって形成することができるコンパクトカメラモジュール(CCM)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0008]本議論は代表的な態様のみの記載であり、本発明のより広い形態を限定するものとは意図しないことが当業者に理解される。
[0009]一般的に言えば、本発明は、複雑なカメラモジュールデザインにおいてそれを用いることを可能にする延性(例えば破断点引張伸び)及び衝撃強さ(例えばシャルピーノッチ付き衝撃強さ)の独特の組合せを示すことができるポリマー組成物に関する。例えば、本ポリマー組成物は、ISO試験No.527:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって23℃において測定して約3.5%以上、幾つかの態様においては約4%以上、幾つかの態様においては約4.5%~約20%、幾つかの態様においては約5%~約10%の破断点引張伸びを示すことができる。本組成物はまた、ISO試験No.179-1:2010(ASTM-D256-10、方法Bと技術的に同等)にしたがって23℃において測定して約6kJ/m2以上、幾つかの態様においては約6.5kJ/m2以上、幾つかの態様においては約7~約25kJ/m2、幾つかの態様においては約8~約20kJ/m2のシャルピーノッチ付き衝撃強さを有することもできる。従来の知見に反して、寸法安定性に悪影響を与えることなく延性及び高い衝撃強さのかかるバランスを達成することができることが見出された。より詳しくは、本組成物は、約6以下、幾つかの態様においては約5以下、幾つかの態様においては約0.5~約5、幾つかの態様においては約1~約4.5の寸法安定性を示すことができる。「寸法安定性」は、横方向における収縮度を機械方向における収縮度で割ることによって求めることができる(これらは、ISO-294-4:2001(ASTM-D955-08(2014)と技術的に同等)にしたがってタイプD2試験片を用いて求めることができる)。横方向における収縮度(ST)は、例えば約0.2%~約1.5%、幾つかの態様においては約0.4%~約1.2%、幾つかの態様においては約0.5%~約1.0%にすることができ、一方で機械方向における収縮度(SF)は、約0.02%~約0.6%、幾つかの態様においては約0.05%~約0.5%、幾つかの態様においては約0.1%~約0.4%にすることができる。
【0009】
[0010]本発明者らは、複数の特性のかかる独特の組合せを有する部品を達成する能力は、ポリマー組成物中において用いる複数の成分の性質及びそれらの相対濃度を選択的に制御することによって達成することができることを見出した。例えば、本ポリマー組成物には、液晶ポリマーを、エポキシ官能化オレフィンコポリマー、及びモース硬度スケールに基づいて約2.5以上、幾つかの態様においては約3.0以上、幾つかの態様においては約3.0~約11.0、幾つかの態様においては約3.5~約11.0、幾つかの態様においては約4.5~約6.5の硬度値を有する無機粒子状材料と組み合わせて含めることができる。かかる材料はまた、通常は、例えばISO-13320:2009にしたがうレーザー回折法を用いて(例えばHoriba LA-960粒径分布分析装置を用いて)測定して約
0.1~約35マイクロメートル、幾つかの態様においては約2~約20マイクロメートル、幾つかの態様においては約3~約15マイクロメートル、幾つかの態様においては約7~約12マイクロメートルのメジアン径(median size)(例えば直径)も有する。この
材料はまた、狭い寸法分布を有していてもよい。即ち、粒子の少なくとも約70体積%、幾つかの態様においては粒子状材料の少なくとも約80体積%、幾つかの態様においては材料の少なくとも約90体積%が上述の範囲内の径を有していてよい。
【0010】
[0011]無機粒子状材料は、通常は、重量基準で液晶ポリマー100部あたり約50~約90部、幾つかの態様においては約55~約85部、幾つかの態様においては約60~約80部の量で用いる。同様に、エポキシ官能化オレフィンコポリマーは、通常は、重量基
準で液晶ポリマー100部あたり約1~約15部、幾つかの態様においては約2~約12部、幾つかの態様においては約3~約10部の量でポリマー組成物中において用いる。例えば、無機粒子状材料は、通常はポリマー組成物の約20重量%~約60重量%、幾つかの態様においては約25重量%~約55重量%、幾つかの態様においては約30重量%~約50重量%を構成し、一方でエポキシ官能化オレフィンコポリマーは、通常はポリマー組成物の約0.1重量%~約20重量%、幾つかの態様においては約0.5重量%~約15重量%、幾つかの態様においては約1重量%~約10重量%を構成する。液晶ポリマーはまた、ポリマー組成物の約20重量%~約80重量%、幾つかの態様においては約30重量%~約70重量%、幾つかの態様においては約35重量%~約60重量%を構成させることができる。
【0011】
[0012]ここで、本発明の種々の態様をより詳細に記載する。
I.液晶ポリマー:
[0013]本ポリマー組成物中において用いる液晶ポリマーは、一般に、棒状の構造を有することができ、それらの溶融状態において結晶質の挙動(例えばサーモトロピックネマチック状態)を示すことができる限りにおいて「サーモトロピック」として分類される。このポリマーは、約250℃~約400℃、幾つかの態様においては約280℃~約390℃、幾つかの態様においては約300℃~約380℃のような比較的高い融点を有する。かかるポリマーは、当該技術において公知の1以上のタイプの繰り返し単位から形成することができる。液晶ポリマーには、例えば、通常はポリマーの約60モル%~約99.9モル%、幾つかの態様においては約70モル%~約99.5モル%、幾つかの態様においては約80モル%~約99モル%の量の1以上の芳香族エステル繰り返し単位を含めることができる。芳香族エステル繰り返し単位は、一般に、次式(I):
【0012】
【0013】
(式中、
環Bは、置換又は非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレン又は1,3-フェニレン)、置換又は非置換の5又は6員アリール基に縮合している置換又は非置換の6員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、或いは置換又は非置換の5又は6員アリール基に結合している置換又は非置換の6員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
Y1及びY2は、独立して、O、C(O)、NH、C(O)HN、又はNHC(O)である)
によって表すことができる。
【0014】
[0014]通常は、Y1及びY2の少なくとも1つはC(O)である。かかる芳香族エステル繰り返し単位の例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、Y1及びY2はC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、Y1はOであり、Y2はC(O)である)、並びにこれらの種々の組み合わせを挙げることができる。
【0015】
[0015]例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-
ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタン等、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香族ジカルボン酸繰り返し単位を用いることができる。特に好適な芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸(TA)、イソフタル酸(IA)、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)を挙げることができる。用いる場合には、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、及び/又はNDA)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約5モル%~約60モル%、幾つかの態様においては約10モル%~約55モル%、幾つかの態様においては約15モル%~約50%を構成する。
【0016】
[0016]また、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸等、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ヒドロキシカルボン酸から誘導される芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位を用いることもできる。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)である。用いる場合には、ヒドロキシカルボン酸(例えばHBA及び/又はHNA)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約10モル%~約85モル%、幾つかの態様においては約20モル%~約80モル%、幾つかの態様においては約25モル%~約75%を構成する。
【0017】
[0017]また、ポリマー中において他の繰り返し単位を用いることもできる。例えば幾つかの態様においては、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(又は4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ジオールから誘導される繰り返し単位を用いることができる。特に好適な芳香族ジオールとしては、例えばヒドロキノン(HQ)及び4,4’-ビフェノール(BP)を挙げることができる。用いる場合には、芳香族ジオール(例えばHQ及び/又はBP)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約1モル%~約30モル%、幾つかの態様においては約2モル%~約25モル%、幾つかの態様においては約5モル%~約20%を構成する。また、芳香族アミド(例えばアセトアミノフェン(APAP))、及び/又は芳香族アミン(例えば4-アミノフェノール(AP)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン等)から誘導されるもののような繰り返し単位を用いることもできる。用いる場合には、芳香族アミド(例えばAPAP)及び/又は芳香族アミン(例えばAP)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約0.1モル%~約20モル%、幾つかの態様においては約0.5モル%~約15モル%、幾つかの態様においては約1モル%~約10%を構成する。また、種々の他のモノマー繰り返し単位をポリマー中に導入することができることも理解すべきである。例えば幾つかの態様においては、脂肪族又は脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミン等のような非芳香族モノマーから誘導される1以上の繰り返し単位をポリマーに含めることができる。勿論、他の態様においては、ポリマーは、非芳香族(例えば脂肪族又は脂環式)モノマーから誘導される繰り返し単位を含まないという点で「全芳香族」であってよい。
【0018】
[0018]必ずしも必須ではないが、液晶ポリマーは、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(NDA)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)、又はこれらの組み合わせのようなナフテン系ヒドロキシカルボン酸及びナフテン系ジカルボン酸から誘導される繰り返し単位を最小の含量で含むという限りにおいて「低ナフテン」ポリマーであってよい。即ち、ナフテン系のヒドロキシカルボン酸及び/又はジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、又はHNAとNDAの組み合わせ)から誘導される繰り返し単位の合計量は、通常はポリマーの30モル%以下、幾つかの態様においては約15モル%以下、幾つかの態様においては約10モル%以下、幾つかの態様においては約8モル%以下、幾つかの態様においては0モル%~約5モル%(例えば0モル%)である。高いレベルの従来のナフテン酸が存在しないにもかかわらず、得られる「低ナフテン」ポリマーはなお良好な熱及び機械特性を示すことができると考えられる。
【0019】
[0019]1つの特定の態様においては、液晶ポリマーは、4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)、並びにテレフタル酸(TA)及び/又はイソフタル酸(IA)、並びに種々の他の随意的な成分から誘導される繰り返し単位から形成することができる。4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)から誘導される繰り返し単位は、ポリマーの約10モル%~約80モル%、幾つかの態様においては約30モル%~約75モル%、幾つかの態様においては約45モル%~約70%を構成することができる。更に、テレフタル酸(TA)及び/又はイソフタル酸(IA)から誘導される繰り返し単位は、ポリマーの約5モル%~約40モル%、幾つかの態様においては約10モル%~約35モル%、幾つかの態様においては約15モル%~約35%を構成することができる。また、ポリマーの約1モル%~約30モル%、幾つかの態様においては約2モル%~約25モル%、幾つかの態様においては約5モル%~約20%の量の4,4’-ビフェノール(BP)及び/又はヒドロキノン(HQ)から誘導される繰り返し単位を用いることもできる。他の可能な繰り返し単位としては、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)、2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)、及び/又はアセトアミノフェン(APAP)から誘導されるものを挙げることができる。例えば幾つかの態様においては、HNA、NDA、及び/又はAPAPから誘導される繰り返し単位は、用いる場合には、それぞれ約1モル%~約35モル%、幾つかの態様においては約2モル%~約30モル%、幾つかの態様においては約3モル%~約25モル%を構成することができる。
【0020】
II.無機粒子状材料:
[0020]上述したように、特定の硬度値を有する無機粒子状材料を本ポリマー組成物中において用いることができる。かかる粒子状材料の例としては、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3;3.0のモース硬度)、又は炭酸水酸化銅(Cu2CO3(OH)2;4.0のモース硬度)のような炭酸塩;フッ化カルシウム(CaFl2;4.0のモース硬度)のようなフッ化物;ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7;5.0のモース硬度)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO4;3.5のモース硬度)、又は水和リン酸アルミニウム(AlPO4・2H2O;4.5のモース硬度)のようなリン酸塩;シリカ(SiO2;6.0のモース硬度)、カリウムアルミニウムシリケート(KAlSi3O8;6のモース硬度)、又はケイ酸銅(CuSiO3・H2O;5.0のモース硬度)のようなケイ酸塩;ホウケイ酸水酸化カルシウム(Ca2B5SiO9(OH)5;3.5のモース硬度)のようなホウ酸塩;アルミナ(AlO2;10.0のモース硬度);硫酸カルシウム(CaSO4;3.5のモース硬度)、又は硫酸バリウム(BaSO4;3~3.5のモース硬度)のような硫酸塩など、並びにこれらの組合せを挙げることができる。
【0021】
III.エポキシ官能化オレフィンコポリマー:
[0021]上述したように、平均で分子あたり2以上のエポキシ官能基を含むという点で「エポキシ官能化されている」オレフィンコポリマーも用いる。このコポリマーは、一般に1種類以上のα-オレフィンから誘導されるオレフィンモノマー単位を含む。かかるモノ
マーの例としては、例えば、2~20個の炭素原子、通常は2~8個の炭素原子を有する線状及び/又は分岐のα-オレフィンモノマーが挙げられる。具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘキセン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-オクテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチル、又はジメチル置換1-デセン;1-ドデセン;及びスチレン;が挙げられる。特に望ましいα-オレフィンモノマーは、エチレン及びプロピレンである。このコポリマーはまた、エポキシ官能性モノマー単位も含んでいてよい。かかる単位の1つの例は、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分である。本明細書において用いる「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル及びメタクリルモノマー、並びにアクリレート及びメタクリレートモノマーのようなその塩又はエステルを包含する。例えば、好適なエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのような1,2-エポキシ基を含むものを挙げることができるが、これらに限定されない。他の好適なエポキシ官能性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエタクリレート、及びグリシジルイタコネートが挙げられる。所望の分子量の達成を助けるために、他の好適なモノマーを用いることもできる。
【0022】
[0022]勿論、コポリマーは、当該技術において公知なように他のモノマー単位を含んでいてもよい。例えば、他の好適なモノマーとしては、エポキシ官能性でない(メタ)アクリルモノマーを挙げることができる。かかる(メタ)アクリルモノマーの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、i-アミルアクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-デシルアクリレート、メチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、i-アミルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、メチルシクロヘキシルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等、及びこれらの組合せを挙げることができる。例えば1つの特定の態様においては、コポリマーは、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分、α-オレフィンモノマー成分、及び非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分から形成されるターポリマーであってよい。コポリマーは、例えば次の構造:
【0023】
【0024】
(式中、x、y、及びzは1以上である)
を有するポリ(エチレン-co-ブチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)であってよい。
【0025】
[0023]1つ又は複数のモノマー成分の相対割合は、エポキシ反応性とメルトフローレートの間のバランスを達成するように選択することができる。より詳しくは、高いエポキシモノマー含量はマトリクスポリマーとの良好な反応性をもたらすことができるが、含量が過度に高いと、コポリマーがポリマーブレンドの溶融強度に悪影響を与える程度までメルトフローレートが減少する可能性がある。したがって、殆どの態様において、1種類又は複数のエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーは、コポリマーの約1重量%~約20重量%、幾つかの態様においては約2重量%~約15重量%、幾つかの態様においては約3重量%~約10重量%を構成する。また、1種類又は複数のα-オレフィンモノマーは、コポリマーの約55重量%~約95重量%、幾つかの態様においては約60重量%~約90重量%、幾つかの態様においては約65重量%~約85重量%を構成していてよい。用いる場合には、他のモノマー成分(例えば非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー)は、コポリマーの約5重量%~約35重量%、幾つかの態様においては約8重量%~約30重量%、幾つかの態様においては約10重量%~約25重量%を構成していてよい。得られるメルトフローレートは、通常は、ASTM-D1238-13にしたがって2.16kgの荷重及び190℃の温度において測定して、約1~約30グラム/10分(g/10分)、幾つかの態様においては約2~約20g/10分、幾つかの態様においては約3~約15g/10分である。
【0026】
[0024]本発明において用いることができる好適なエポキシ官能化コポリマーの1つの例は、ArkemaからLOTADER(登録商標)AX8840の名称で商業的に入手できる。LOTADER(登録商標)AX8840は、例えば5g/10分のメルトフローレートを有し、8重量%のグリシジルメタクリレートモノマー含量を有する。他の好適なコポリマーは、DuPontからELVALOY
(登録商標)PTWの名称で商業的に入手でき、これはエチレン、ブチルアクリレート、及
びグリシジルメタクリレートのターポリマーであり、12g/10分のメルトフローレート、及び4重量%~5重量%のグリシジルメタクリレートモノマー含量を有する。
【0027】
IV.導電性充填剤:
[0025]随意的ではあるが、ポリマー組成物中において導電性充填剤を用いて、成形操作、輸送、回収、組立等の間において静電荷を生成させる傾向の減少を促進することもできる。実際、上述の制御された寸法及び量の無機粒子状材料を存在させることによって、導電性充填剤が液晶ポリマーマトリクス内で分散する能力を増大させて、それによって所望の静電防止特性を達成するために比較的低い濃度の導電性充填剤を用いることを可能にすることができる。しかしながら、これは比較的低い濃度で用いられるので、熱及び機械特
性に対する影響を最小にすることができる。この点に関し、導電性充填剤は、用いる場合には、通常はポリマー組成物の約0.1重量%~約30重量%、幾つかの態様においては約0.3重量%~約20重量%、幾つかの態様においては約0.4重量%~約5重量%、幾つかの態様においては約0.5重量%~約1.5重量%を構成する。
【0028】
[0026]一般に、任意の種々の導電性充填剤をポリマー組成物中において用いて、その静電気防止特性の向上を促進することができる。好適な導電性充填剤の例としては、例えば、金属粒子(例えばアルミニウムフレーク)、金属繊維、炭素粒子(例えば、黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック等)、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを挙げることができる。炭素繊維及び炭素粒子(例えば黒鉛)が特に好適である。用いる場合には、好適な炭素繊維としては、ピッチベースの炭素(例えばタールピッチ)、ポリアクリロニトリルベースの炭素、金属被覆炭素等を挙げることができる。望ましくは、炭素繊維は、それらが比較的高い炭素含量、例えば約85重量%以上、幾つかの態様においては約90重量%以上、幾つかの態様においては約93重量%以上の炭素含量を有するという点で高い純度を有する。例えば、炭素含量は、少なくとも約94重量%、例えば少なくとも約95%重量%、例えば少なくとも約96重量%、例えば少なくとも約97重量%、例えば更には少なくとも約98重量%であってよい。炭素純度は、一般に100重量%未満、例えば約99重量%未満である。炭素繊維の密度は、通常は約0.5~約3.0g/cm3、幾つかの態様においては約1.0~約2.5g/cm3、幾つかの態様においては約1.5~約2.0g/cm3である。
【0029】
[0027]一態様においては、炭素繊維は繊維の破断を最小にしてマトリクス中に導入する。成形後の繊維の体積平均長さは、一般に、約3mmの初期長さを有する繊維を用いる場合であっても約0.1mm~約1mmにすることができる。また、炭素繊維の平均長さ及び分布も、液晶ポリマーマトリクス内においてより良好な接続及び電気流路を達成するように、最終ポリマー組成物中において選択的に制御することができる。繊維の平均直径は、約0.5~約30マイクロメートル、幾つかの態様においては約1~約20マイクロメートル、幾つかの態様においては約3~約15マイクロメートルであってよい。
【0030】
[0028]ポリマーマトリクス内における分散を向上させるために、炭素繊維は、炭素繊維と液晶ポリマーとの適合性を増加させるサイジング剤で少なくとも部分的に被覆することができる。サイジング剤は、安定で、液晶ポリマーを成形する温度において熱分解しないものであってよい。一態様においては、サイジング剤に芳香族ポリマーのようなポリマーを含めることができる。例えば、芳香族ポリマーは、約300℃より高く、例えば約350℃より高く、例えば約400℃より高い熱分解温度を有していてよい。本明細書において用いる材料の熱分解温度とは、ASTM試験E-1131(又はISO試験11358)にしたがって求めて、材料が熱重量分析中にその質量の5%を損失する温度である。サイジング剤はまた、比較的高いガラス転移温度も有していてよい。例えば、サイジング剤のガラス転移温度は、約300℃より高く、例えば約350℃より高く、例えば約400℃より高くてよい。サイジング剤の特定の例としては、ポリイミドポリマー、全芳香族ポリエステルポリマーなどの芳香族ポリエステルポリマー、及び高温エポキシポリマーが挙げられる。一態様においては、サイジング剤に液晶ポリマーを含めることができる。サイジング剤は、少なくとも約0.1重量%の量、例えば少なくとも0.2重量%の量、例えば少なくとも約0.1重量%の量で繊維上に存在させることができる。サイジング剤は、一般に約5重量%未満の量、例えば約3重量%未満の量で存在する。
【0031】
[0029]他の好適な導電性充填剤はイオン液体である。かかる材料の1つの利益は、イオン液体は、導電性であることに加えて溶融加工中に液体形態で存在することもでき、これにより液晶ポリマーマトリクス内により均一にブレンドすることが可能であることである。これにより導電性が向上し、それによって組成物がその表面から静電荷を速やかに消散
させる能力が増大する。
【0032】
[0030]イオン液体は、一般に、液晶ポリマーと一緒に溶融加工する際に液体の形態であることができるのに十分に低い融点を有する塩である。例えば、イオン液体の融点は、約400℃以下、幾つかの態様においては約350℃以下、幾つかの態様においては約1℃~約100℃、幾つかの態様においては約5℃~約50℃であってよい。塩は、カチオン種及び対イオンを含む。カチオン種は、「カチオン中心」として少なくとも1つのヘテロ原子(例えば窒素又はリン)を有する化合物を含む。かかるヘテロ原子化合物の例としては、例えば次の構造:
【0033】
【0034】
[0031](上式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、独立して、水素;置換又は非置換のC1~C10アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル等);置換又は非置換のC3~C14シクロアルキル基(例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、シクロヘキセニル等);置換又は非置換のC1~C10アルケニル基(例えば、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン等);置換又は非置換のC2~C10アルキニル基(
例えば、エチニル、プロピニル等);置換又は非置換のC1~C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ等);置換又は非置換のアシルオキシ基(例えば、メタクリロキシ、メタクリロキシエチル等);置換又は非置換のアリール基(例えばフェニル);置換又は非置換のヘテロアリール基(例えば、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、キノリル等);などからなる群から選択される)
を有する第4級オニウムが挙げられる。例えば1つの特定の態様においては、カチオン種は、構造:N+R1R2R3R4(式中、R1、R2、及び/又はR3は、独立してC1~C6アルキル(例えば、メチル、エチル、ブチル等)であり、R4は、水素又はC1~C4アルキル基(例えばメチル又はエチル)である)を有するアンモニウム化合物であってよい。例えば、カチオン成分は、トリブチルメチルアンモニウム(R1、R2、及びR3はブチルであり、R4はメチルである)であってよい。
【0035】
[0032]カチオン種に対する好適な対イオンとしては、例えば、ハロゲン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素等);スルフェート又はスルホネート(例えば、硫酸メチル、硫酸エチル、硫酸ブチル、硫酸ヘキシル、硫酸オクチル、ハイドロジェンスルフェート、メタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ドデシルスルフェート、トリフルオロメタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムドデシルエトキシスルフェート等);スルホスクシネート;アミド(例えばジシアンアミド);イミド(例えば、ビス(ペンタフルオロエチル-スルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチル)イミド等);ボレート(例えば、テトラフルオロボレート、テトラシアノボレート、ビス[オキサラト]ボレート、ビス[サリチラト]ボレート等);ホスフェート又はホスフィネート(例えば、ヘキサフルオロホスフェート、ジエチルホスフェート、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィネート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート等);アンチモネート(例えばヘキサフルオロアンチモネート);アルミネート(例えばテトラクロロアルミネート);脂肪酸カルボキシレート(例えば、オレエート、イソステアレート、ペンタデカフルオロオクタノエート等);シアネート;アセテート;など、並びに前記の任意のものの組み合わせを挙げることができる。液晶ポリマーとの相溶性の向上を促進するために、イミド、脂肪酸カルボキシレート等のような本来概して疎水性の対イオンを選択することが望ましい可能性がある。特に好適な疎水性対イオンとしては、例えば、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びビス(トリフルオロメチル)イミドを挙げることができる。
【0036】
V.他の成分:
[0033]滑剤、熱伝導性充填剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止剤、並びに特性及び加工性を向上させるために加える他の材料のような広範囲の更なる添加剤をポリマー組成物中に含めることもできる。例えば、実質的に分解することなく液晶ポリマーの処理条件に耐えることができる滑剤を、ポリマー組成物中において用いることができる。かかる滑剤の例としては、エンジニアリングプラスチック材料の処理において滑剤として通常用いられるタイプの脂肪酸、エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機ホスフェートエステル、及び炭化水素ワックス、並びにこれらの混合物が挙げられる。好適な脂肪酸は、典型的には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデカン酸(octadecinic acid)、パリナリン酸(parinric acid)などのように、約12~約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有する。好適
なエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、及びコンプレックスエステルが挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、脂肪酸第1級アミド、脂肪酸第2級アミド、メチレン及びエチレンビスアミド、並びにアルカノールアミド、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアラミドなどが挙げられる。また、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどのような脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィン及び酸化ポリオレフィンワックス、並びに微結晶質ワックスなどの炭化水素ワックス;も好適である。特に好適な滑剤は、ステアリン酸の酸、塩、又はアミド、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、カルシウムステアレート、又はN,N’-エチレンビスステアラミドである。用いる場合には、1種類又は複数の滑剤は、通常は、ポリマー組成物の約0.05重量%~約1.5重量%、幾つかの態様においては約0.1重量%~約0.5重量%(重量基準)を構成する。
【0037】
[0034]上述したように、本発明の1つの有益な特徴は、得られる部品の寸法安定性に悪影響を与えることなく良好な機械特性を達成することができることである。この寸法安定性の保持を確保することを助けるためには、ポリマー組成物は、ガラス繊維及び鉱物繊維のような通常の繊維状充填剤を実質的に含まないままにすることが一般に望ましい。而して、使用したとしても、かかる繊維は、通常はポリマー組成物の約10重量%以下、幾つかの態様においては約5重量%以下、幾つかの態様においては約0.001重量%~約3重量%を構成する。
【0038】
VI.形成:
[0035]液晶ポリマー、無機粒子状材料、エポキシ官能化オレフィンコポリマー、及び他の随意的な添加剤は、一緒に溶融加工又はブレンドすることができる。これらの成分は、バレル(例えば円筒形のバレル)内に回転可能に取り付けられて収容されている少なくとも1つのスクリューを含み、スクリューの長さに沿って、供給セクション及び供給セクションの下流に配置される溶融セクションを画定することができる押出機に、別々か又は組み合わせて供給することができる。押出機は一軸又は二軸押出機であってよい。所望の場合には、無機粒子状材料及びエポキシ官能化オレフィンコポリマーは、液晶ポリマーを供給する位置の下流の位置で押出機に加えることができる。スクリューの速度は、所望の滞留時間、剪断速度、溶融加工温度等を達成するように選択することができる。例えば、スクリュー速度は、約50~約800の毎分回転数(rpm)、幾つかの態様においては約70~約150rpm、幾つかの態様においては約80~約120rpmの範囲にすることができる。また、溶融ブレンド中のみかけ剪断速度は、約100秒-1~約10,000秒-1、幾つかの態様においては約500秒-1~約5000秒-1、幾つかの態様においては約800秒-1~約1200秒-1の範囲にすることができる。みかけ剪断速度は、4Q/πR3(式中、Qはポリマー溶融体の体積流量(m3/秒)であり、Rはそれを通って溶融ポリマーが流れる毛細管(例えば押出機ダイ)の半径(m)である)に等しい。
【0039】
[0036]本発明者らは、それを形成する特定の方法には関係なく、得られるポリマー組成物は優れた熱特性を有することができることを見出した。例えば、ポリマー組成物を小さい寸法を有する金型のキャビティ中に容易に流入させることができるように、ポリマー組成物の溶融粘度を十分に低くすることができる。1つの特定の態様においては、ポリマー組成物は、1000秒-1の剪断速度において測定して約1~約200Pa・秒、幾つかの態様においては約5~約180Pa・秒、幾つかの態様においては約10~約150Pa・秒、幾つかの態様においては約20~約120Pa・秒の溶融粘度を有することができる。溶融粘度は、ISO試験No.11443:2005にしたがって、組成物の融点(例えば350℃)よりも15℃高い温度で測定することができる。
【0040】
VII.成形部品:
[0037]形成したら、ポリマー組成物は成形部品に成形することができる。例えば、成形部品は、乾燥して予備加熱したプラスチック顆粒を金型中に射出する1成分射出成形プロセスを用いて成形することができる。用いる技術に関係なく、本発明の成形部品は、その表面光沢度によって示すことができる比較的平滑な表面を有することができることが見出された。例えば、光沢計を用いて約80°~約85°の角度で求められる表面光沢度は、約35%以上、幾つかの態様においては約38%以上、幾つかの態様においては約40%~60%にすることができる。従来は、かかる平滑な表面を有する部品はまた、十分に良好な機械特性は有しないと考えられていた。しかしながら、従来の見解に反して、本発明の成形部品は優れた機械特性を有することが分かった。例えば、本部品は、カメラモジュールの薄い部品を形成する際に有用な高い溶接強度を有することができる。例えば、本部品は、約10キロパスカル(kPa)~約100kPa、幾つかの態様においては約20kPa~約80kPa、幾つかの態様においては約40kPa~約70kPaの溶接強度(これは、ISO試験527-1:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって23℃において求められるピーク応力である)を示すことができる。
【0041】
[0038]引張及び曲げ機械特性もまた良好である。例えば、本部品は、約20~約500MPa、幾つかの態様においては約50~約400MPa、幾つかの態様においては約60~約350MPaの引張り強さ、及び/又は約4,000MPa~約20,000MPa、幾つかの態様においては約5,000MPa~約18,000MPa、幾つかの態様においては約6,000MPa~約12,000MPaの引張弾性率を示すことができる。引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。本部品はまた、約20~約500MPa、幾つかの態様においては約50~約400MPa、幾つかの態様においては約80~約350MPaの曲げ強さ、及び/又は約4,000MPa~約20,000MPa、幾つかの態様においては約5,000MPa~約18,000MPa、幾つかの態様においては約6,000MPa~約15,000MPaの曲げ弾性率も示すことができる。曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM-D790-10と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。本成形部品はまた、ASTM-D648-07(ISO試験No.75-2:2013と技術的に同等)にしたがって1.8MPaの規定荷重において測定して約190℃以上、幾つかの態様においては約200℃~約280℃の荷重撓み温度(DTUL)も示すことができる。また、本部品のロックウェル硬さは、ASTM-D785-08(スケールM)にしたがって求めて約25以上、幾つかの態様においては約30以上、幾つかの態様においては35~80にすることができる。
【0042】
[0039]更に、本成形部品はまた、特に上で議論したように導電性充填剤をポリマー組成物内に含める場合には、優れた静電防止挙動を有することもできる。かかる静電防止挙動は、IEC-60093にしたがって求めて比較的低い表面及び/又は体積抵抗率によって特徴付けることができる。例えば、本成形部品は、約1×1015Ω以下、幾つかの態様においては約1×1014Ω以下、幾つかの態様においては約1×1010Ω~約9×1013Ω、幾つかの態様においては約1×1011~約1×1013Ωの表面抵抗率を示すことができる。更に、本成形部品はまた、約1×1015Ω・m以下、幾つかの態様においては約1×109Ω・m~約9×1014Ω・m、幾つかの態様においては約1×1010~約5×1014Ω・mの体積抵抗率を示すこともできる。勿論、かかる静電防止挙動は決して必須ではない。例えば、幾つかの態様においては、本成形部品は、約1×1015Ω以上、幾つかの態様においては約1×1016Ω以上、幾つかの態様においては約1×1017Ω~約9×1030Ω、幾つかの態様においては約1×1018~約1×1026Ωのような比較的高い表面抵抗率を示すことができる。
【0043】
[0040]幾つかの用途においては、本成形部品は1以上の更なる部品(例えば、成形部品
、金属等)と接合することができる。特に、本発明の成形部品の増大した延性によって、従来は可能であるとは考えられていなかった技術を用いてそれを他の部品と容易に接合することを可能にすることができる。例えば一態様においては、熱かしめ技術を用いることができる。かかる態様においては、まず隣接する部品内の例えば部品の周縁の周りに複数の受入孔を形成することができ、その後、複数の熱かしめ材を対応する受入孔中に挿入することができる。挿入したら、かしめ装置を用いて熱かしめ材に熱及び圧力をかけて、それらが隣接する部品に有効に接合するようにすることができる。勿論、熱かしめ法とは別に、接着剤接合、溶接等のような他の公知の技術を用いることもできる。
【0044】
VIII.用途:
[0041]本ポリマー組成物及び/又は成形部品は、種々の用途において用いることができる。例えば、本成形部品は、照明アセンブリ、電池システム、センサー及び電子コンポーネント、スマートホンのような携帯電子機器、MP3プレーヤー、携帯電話、コンピューター、テレビ、自動車部品等において用いることができる。1つの特定の態様においては、本成形部品は、無線通信機器(例えば携帯電話)において通常的に用いられているもののようなカメラモジュールにおいて用いることができる。例えば、カメラモジュールは、ベース、ベース上に搭載されているキャリアーアセンブリ、キャリアーアセンブリ上に搭載されているカバー等を用いることができる。ベースは、約500マイクロメートル以下、幾つかの態様においては約10~約450マイクロメートル、幾つかの態様においては約20~約400マイクロメートルの厚さを有していてよい。更に、キャリアーアセンブリは、約500マイクロメートル以下、幾つかの態様においては約10~約450マイクロメートル、幾つかの態様においては約20~約400マイクロメートルの壁厚を有していてよい。
【0045】
[0042]1つの特に好適なカメラモジュールを
図1~2に示す。示されているように、カメラモジュール500は、ベース506の上に配されているキャリアーアセンブリ504を含む。次にベース506は、場合によって用いるメインボード508の上に配される。これらの比較的薄い特徴のために、ベース506及び/又はメインボード508は、上記に記載の本発明のポリマー組成物から成形するのに特に適している。キャリアーアセンブリ504は、当該技術において公知の任意の種々の構造を有していてよい。例えば一態様においては、キャリアーアセンブリ504は、1以上のレンズ604を収容する中空のバレルを含んでいてよく、これはメインボード508の上に配置されて回路601によって制御される画像センサー602と連絡している。バレルは、長方形、円筒形等のような任意の種々の形状を有していてよい。幾つかの態様においては、バレルは本発明のポリマー組成物から形成することができ、上述の範囲内の壁厚を有していてよい。カメラモジュールの他の部品も本発明のポリマー組成物から形成することができることを理解すべきである。例えば、示されているように、例えば基材(substrate)510(例えばフィルム)及
び/又は断熱キャップ502を含むカバーによって、キャリアーアセンブリ504を覆うことができる。幾つかの態様においては、基材510及び/又はキャップ502も本ポリマー組成物から形成することができる。
【実施例】
【0046】
[0043]本発明は以下の実施例を参照してより良好に理解することができる。
試験方法:
[0044]溶融粘度:溶融粘度(Pa・秒)は、ISO試験No.11443:2005にしたがって、1000秒-1の剪断速度、及び融点(例えば350℃)より15℃高い温度において、Dynisco LCR7001毛細管流量計を用いて求めることができる。流量計オリフ
ィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm±0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0047】
[0045]融点:融点(Tm)は、当該技術において公知なように示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。融点は、ISO試験No.11357-2:2013によって求められる示差走査熱量測定(DSC)ピーク融解温度である。DSC手順においては、TA-Q2000装置上で行うDSC測定を用いて、ISO標準規格10350に示されているように試料を20℃/分で加熱及び冷却した。
【0048】
[0046]荷重撓み温度(DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2:2013(ASTM-D648-07と技術的に同等)にしたがって求めることができる。より詳しくは、80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する試験片試料を、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルである沿層方向3点曲げ試験にかけることができる。試験片をシリコーン油浴中に降下させることができ、そこで0.25mm(ISO試験No.75-2:2013に関しては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させる。
【0049】
[0047]引張弾性率、引張応力、及び破断点引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって試験することができる。80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する同じ試験片試料について、弾性率及び強度の測定を行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は1又は5mm/分であってよい。
【0050】
[0048]曲げ弾性率及び曲げ応力:曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM-D790-10と技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は64mmの支持材スパンに関して行うことができる。試験は、未切断のISO-3167多目的棒材の中央部分について行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0051】
[0049]ノッチ付きシャルピー衝撃強さ:ノッチ付きシャルピー特性は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM-D256-10:方法Bと技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は、タイプAのノッチ(0.25mmの底半径)、及びタイプ1の試験片寸法(80mmの長さ、10mmの幅、及び4mmの厚さ)を用いて行うことができる。試験片は、一枚歯フライス盤を用いて多目的棒材の中央部分から切り出すことができる。試験温度は23℃であってよい。
【0052】
[0050]ロックウェル硬さ:ロックウェル硬さは材料の押し込み抵抗性の指標であり、ASTM-D785-08(スケールM)にしたがって求めることができる。試験は、まず規定の小荷重を用いて鋼球圧子を材料の表面中に押し込むことによって行う。次に、荷重を規定の大荷重に増加させ、減少させて元の小荷重に戻す。ロックウェル硬さは、圧子の深さの正味の増加分の量であり、貫入量を目盛分割で割った値を130から減じることによって計算される。
【0053】
[0051]寸法安定性:所定の方向における試料の収縮度は、ISO-294-4:2001(ASTM-D955-08(2014)と技術的に同等)にしたがって求めることができる。例えば、タイプD2試験片に適合する60mmの機械方向寸法又は長さ(Lm)、60mmの横寸法又は幅(Wm)、及び2mmの高さ寸法(Hm)を有する金型キャビティを用いて部品を射出成形することができる。金型から取り出して冷却した後に、5つの試験片の平均長さ(Ls)及び幅(Ws)を測定することができる。流れ(又は長さ)方向における収縮度(SF)は、SF=(Lm-Ls)×100/Lmによって算出することができ、横(又は幅)方向における収縮度(ST)は、SW=(Wm-Ws)×100/Wmによって算出することができる。その後、横方向における収縮度を機械方向にお
ける収縮度で割ることによって、「寸法安定性」を求めることができる。
【0054】
[0052]表面/体積抵抗率:表面及び体積抵抗率の値は、IEC-60093(ASTM-D257-07と同等)にしたがって求めることができる。この手順によると、標準試験片(例えば1メートル立方)を2つの電極の間に配置する。電圧を60秒間印加し、抵抗を測定する。表面抵抗率は、電位勾配(V/m)と単位電極長さあたりの電流(A/m)との商であり、概して絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端が正方形を画定するので、商において長さは約分されて表面抵抗率はΩで報告されるが、Ω毎スクエアのより説明的な単位を見ることも通常的である。体積抵抗率もまた、電流密度に対する材料において電流に平行な電位勾配の比として求められる。SI単位においては、体積抵抗率は1メートル立方の材料の対向面の間の直流抵抗(Ω・m)に数値的に等しい。
【0055】
実施例1:
[0053]試料1~2は、下表1に示すように、種々の割合の液晶ポリマー、硫酸バリウム、エポキシ官能化オレフィンコポリマー、滑剤(Glycolube(登録商標)P)、導電性充填剤、及び黒色マスターバッチから形成した。エポキシ官能化オレフィンコポリマーは、エチレン、ブチルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートから形成されるターポリマーであった(Elvaloy(登録商標)PTW、DuPont)。硫酸バリウムは、約4マイクロメートルのメジアン径を有していた。黒色マスターバッチは、80重量%の液晶ポリマー及び20重量%のカーボンブラックを含んでいた。導電性充填剤は、イオン液体、即ちトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(3MからのFC-4400)を含んでいた。それぞれの試料における液晶ポリマーは、Leeらの米国特許5,508,374に記載されているように、HBA、HNA、TA、BP、及びAPAPから形成した。配合は、18mmの一軸押出機を用いて行った。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形した。
【0056】
【0057】
[0054]また、成形部品を熱及び機械特性に関しても試験した。結果を下表2において示す。
【0058】
【0059】
実施例2:
[0055]試料3~4は、下表3に示すように、種々の割合の液晶ポリマー、ピロリン酸カルシウム、エポキシ官能化オレフィンコポリマー、滑剤(Glycolube(登録商標)P)、及び黒色マスターバッチから形成した。エポキシ官能化オレフィンコポリマーは、エチレン、ブチルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートから形成されるターポリマーであった(Elvaloy(登録商標)PTW、DuPont)。ピロリン酸カルシウムは、約6マイクロメートルのメジアン粒径を有していた。黒色マスターバッチは、80重量%の液晶ポリマー及び20重量%のカーボンブラックを含んでいた。それぞれの試料における液晶ポリマーは、Leeらの米国特許5,508,374に記載されているように、HBA、HNA、TA
、BP、及びAPAPから形成した。配合は、18mmの一軸押出機を用いて行った。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形した。
【0060】
【0061】
[0056]また、成形部品を熱及び機械特性に関しても試験した。結果を下表4において示す。
【0062】
【0063】
[0057]本発明のこれら及び他の修正及び変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱するこ
となく当業者によって実施することができる。更に、種々の態様の幾つかの形態は、全体
的又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、
上記の記載は例示のみの目的であり、添付の特許請求の範囲において更に記載されている
発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
100重量部の少なくとも1種類の液晶ポリマー;
約50~約90重量部の、モース硬度スケールに基づいて約2.5以上の硬度値及び約
0.1~約35マイクロメートルのメジアン粒径を有する無機粒子状材料;並びに
約1~約15重量部のエポキシ官能化オレフィンコポリマー;
を含むポリマー組成物。
[請求項2]
液晶ポリマーがポリマー組成物の約20重量%~約80重量%を構成する、請求項1に
記載のポリマー組成物。
[請求項3]
液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4
-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキノン、4,4’-ビ
フェノール、アセトアミノフェン、又はこれらの組合せから誘導される繰り返し単位を含
む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項4]
無機粒子状材料が、ピロリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、又はこれ
らの組合せを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項5]
無機粒子状材料がポリマー組成物の約20重量%~約60重量%を構成し、エポキシ官
能化コポリマーがポリマー組成物の約1重量%~約20重量%を構成する、請求項1に記
載のポリマー組成物。
[請求項6]
エポキシ官能化オレフィンコポリマーがエチレンモノマー単位を含む、請求項1に記載
のポリマー組成物。
[請求項7]
エポキシ官能化オレフィンコポリマーがエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分
を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項8]
エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分が、グリシジルアクリレート、グリシジ
ルメタクリレート、又はこれらの組合せから誘導される、請求項7に記載のポリマー組成
物。
[請求項9]
エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー単位が前記コポリマーの約1重量%~約20
重量%を構成する、請求項7に記載のポリマー組成物。
[請求項10]
エポキシ官能化オレフィンコポリマーが、エポキシ官能性でない(メタ)アクリルモノ
マー単位を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項11]
エポキシ官能化オレフィンコポリマーが、ASTM-D-1238-13にしたがって
2.16kgの荷重及び190℃の温度において測定して約1~約30グラム/10分の
メルトフローレートを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項12]
エポキシ官能化オレフィンポリマーがポリ(エチレン-co-ブチルアクリレート-c
o-グリシジルメタクリレート)である、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項13]
導電性充填剤を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項14]
導電性充填剤がイオン液体を含む、請求項13に記載のポリマー組成物。
[請求項15]
約10重量%以下の繊維状充填剤を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項16]
ISO試験No.527:2012にしたがって23℃において測定して約3.5%以
上の破断点引張伸びを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項17]
ISO試験No.179-1:2010にしたがって23℃において測定して約6kJ
/m2以上のシャルピーノッチ付き衝撃強さを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項18]
ISO-294-4:2001にしたがってタイプD2試験片を用いて測定して約6以
下の寸法安定性を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項19]
請求項1に記載のポリマー組成物を含む成形部品。
[請求項20]
カメラモジュールのための成形部品であり、成形部品は液晶ポリマーを含むポリマー組
成物を含み、当該組成物は、ISO試験No.527:2012にしたがって23℃にお
いて測定して約3.5%以上の破断点引張伸び、ISO試験No.179-1:2010
にしたがって23℃において測定して約6kJ/m2以上のシャルピーノッチ付き衝撃強
さ、及びISO-294-4:2001にしたがってタイプD2試験片を用いて測定して
約6以下の寸法安定性を示す、前記成形部品。
[請求項21]
ポリマー組成物が、モース硬度スケールに基づいて約2.5以上の硬度値を有する無機
粒子状材料を含む、請求項20に記載の成形部品。
[請求項22]
無機粒子状材料が約0.1~約35マイクロメートルのメジアン径を有する、請求項2
1に記載の成形部品。
[請求項23]
ポリマー組成物がエポキシ官能化オレフィンコポリマーを含む、請求項20に記載の成
形部品。
[請求項24]
請求項19に記載の成形部品を含むカメラモジュール。
[請求項25]
カメラモジュールが、その上にキャリアーアセンブリが搭載されている概して平面状の
ベースを含み、当該ベース、キャリアーアセンブリ、又は両方が当該成形部品を含む、請
求項24に記載のカメラモジュール。
[請求項26]
請求項19に記載の成形部品を更なる構成部品に接合する方法であって、
成形部品及び構成部品内に受入孔を形成し;
当該孔の中に熱かしめ材を挿入し;そして
熱かしめ材に熱及び圧力をかけて、それによって成形部品を構成部品に接合する;
ことを含む、前記方法。