IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーチキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-消火器 図1
  • 特許-消火器 図2
  • 特許-消火器 図3
  • 特許-消火器 図4
  • 特許-消火器 図5
  • 特許-消火器 図6
  • 特許-消火器 図7
  • 特許-消火器 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】消火器
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/76 20060101AFI20230420BHJP
   B05B 7/26 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A62C13/76 D
B05B7/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021172171
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2017158086の分割
【原出願日】2017-08-18
(65)【公開番号】P2022009336
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-047298(JP,A)
【文献】特開2012-055360(JP,A)
【文献】特開2004-135742(JP,A)
【文献】特表2015-528738(JP,A)
【文献】実開昭60-063361(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
B05B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の消火液及び所定の第1圧力範囲の低圧ガスが充填された本体容器と、
前記第1圧力範囲より高い所定の第2圧力範囲の高圧ガスが封入されたガス容器と、
前記本体容器及び前記ガス容器を一操作で開封する操作部と、
前記操作部により開封された前記本体容器から前記低圧ガスの加圧により流入した前記消火液と前記開封されたガス容器から流入した前記高圧ガスとを内部で混合して外部に放出する微噴霧ノズル機構と、
を備えたことを特徴とする消火器。
【請求項2】
所定量の消火液及び所定の第1圧力範囲の低圧ガスが充填された本体容器と、
前記第1圧力範囲より高い所定の第2圧力範囲の高圧ガスが封入されたガス容器と、
前記本体容器及び前記ガス容器を一操作で開封する操作部と、
前記操作部により開封された前記本体容器から前記低圧ガスの加圧により流入した前記消火液の微噴霧を外部に放出すると共に、前記開封されたガス容器から流入した前記高圧ガスを外部に放出して外部で前記消火液の微噴霧と混合させる微噴霧ノズル機構と、
を備えたことを特徴とする消火器。
【請求項3】
所定量の消火液及び所定の第1圧力範囲の低圧ガスが充填された本体容器と、
前記第1圧力範囲より高い所定の第2圧力範囲の高圧ガスが封入されたガス容器と、
前記ガス容器を開封する操作部と、
前記操作部により開封された前記ガス容器から流入した高圧ガスを外部に放出すると共に、前記高圧ガスのガス圧により放出切替機構を作動させて前記本体容器を開封し、前記低圧ガスで加圧された前記消火液の液圧より前記高圧ガスのガス圧が低下した場合に、前記液圧により前記放出切替機構を逆方向に作動させて前記消火液の放出経路を開放し、前記低圧ガスの加圧により前記消消火液の微噴霧を外部に放出する微噴霧ノズル機構と、
を備えたことを特徴とする消火器。
【請求項4】
請求項2又は3記載の消火器に於いて、
前記微噴霧ノズル機構は、
環状開口として形成され、前記高圧ガスを外部に放出する第1放出口と、
前記環状開口の内側に開口し、前記低圧ガスによる前記消火液の微噴霧を外部に放出する第2放出口と、
を備えたことを特徴とする消火器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素ガスを混合した微噴霧を放出して火災を消火する消火器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消火器には、放射方式によって分類すると、加圧式と蓄圧式の2種類の放出方式がある。近年、加圧式の消火器を長期間悪環境下に放置したままにしておいたこと等で発生した腐食に気づかず、加圧式の消火器を操作したところ、消火器容器内部のCO2等の高圧ガスカートリッジの起動によって、急激に容器内の圧力が上昇したため、消火器容器が破壊するという事故例が報告されている。
【0003】
この危険性を回避するため、蓄圧式の消火器が近年主流となってきている。蓄圧式の消火器の場合は、常時消火器が0.7~0.98Mpa程度に蓄圧されているため、加圧式のように大気圧から急激な圧力上昇になる場合とは異なり、仮に消火器本体の腐食が進み、耐圧の低下が有った場合には、徐々に蓄圧気体が抜けていくため、大きな事故に繋がらないこと、また気体が漏洩した場合には圧力計によって、判断できるというメリットがあり、安全性の観点から主流となってきている。
【0004】
一方、加圧式の消火器の場合は、常時、消火器内が加圧されていないため、圧力容器に
負荷がかからず、腐食が発生しない限り長期に使用が可能であること、また高圧ガスはガスカートリッジに封入されているため、ガスが漏れず、火災時に確実に消火剤を放出できるという利点がある。しかし、前述したように、加圧式は消火器が腐食していた場合には、破損、破裂による大きな事故の発生が危慎される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-51398号公報
【文献】特開平11-47298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来の加圧式消火器や蓄圧式消火器に代わる消火器として、窒素ガスにより水を微噴霧化した窒素微噴霧を消火剤として放出する窒素微噴霧式の消火器が注目されている。
【0007】
窒素微噴霧式の消火器は、非常に微細の粒子径(10~100μm)を持つ水を加圧窒素によって放出するとともに、窒素ガスを放出することによって、窒素の窒息作用と極少量の水の冷却作用、及び水が蒸発する際に膨張して火炎近くの空気(酸素)を排除する窒息作用等の相乗効果で消火できるという特性を持っている。
【0008】
しかしながら、窒素微噴霧が消火効果をより発揮するには、窒素を単に水を噴霧状にするためのエネルギーとして使用するだけでなく、十分な窒素量の噴出による窒息効果の促進が必要となる。
【0009】
そこで、窒素微噴霧の消火器における放射方式として、蓄圧式を採用する場合、消火効果を発揮するためには、消火器の容積を大きくすること或いは蓄積量を多くするため窒素の蓄圧力を大きくすること、またはその両方が必要となる。特に消火器の内圧を上げると、必然として消火器の耐圧力を上げるため容器の肉厚を上げるなどの対策が必要となり、容器が重くなり持ち運びに大きな負担が掛かること、またコスト高になることが想定される。
【0010】
また、窒素微噴霧の消火器における放射方式として、加圧式を採用する場合、消火効果を発揮するためには、なるべく放出圧力を上げて水を微細化するとともに、大量の窒素を放出する必要があり、起動した際の容器内庄力上昇が更に大きくなって、万一消火器が腐食していた場合には、破損、破裂による大きな事故の発生が危慎される。
【0011】
本発明は、蓄圧式と加圧式の両方のメリットを有し、さらには両方のデメリットを解決すると共に、両方の特長を生かして、微噴霧消火の性能と機能をより高く発揮させることを可能とする消火器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(2流体内部混合方式)
本発明は、消火器において、
所定量の消火液及び所定の第1圧力範囲の低圧ガスが充填された本体容器と、
第1圧力範囲より高い所定の第2圧力範囲の高圧ガスが封入されたガス容器と、
本体容器及びガス容器を一操作で開封する操作部と、
操作部により開封された本体容器から低圧ガスの加圧により流入した消火液と開封されたガス容器から流入した高圧ガスとを内部で混合して外部に放出する微噴霧ノズル機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
(2流体外部混合方式)
本発明は、消火器において、
所定量の消火液及び所定の第1圧力範囲の低圧ガスが充填された本体容器と、
第1圧力範囲より高い所定の第2圧力範囲の高圧ガスが封入されたガス容器と、
本体容器及びガス容器を一操作で開封する操作部と、
操作部により開封された本体容器から低圧ガスの加圧により流入した消火液の微噴霧を外部に放出すると共に、開封されたガス容器から流入した高圧ガスを外部に放出して外部で消火液の微噴霧と混合させる微噴霧ノズル機構と、
を備えたことを特徴とする。

【0014】
(2流体切替え方式)
本発明は、消火器において、
所定量の消火液及び所定の第1圧力範囲の低圧ガスが充填された本体容器と、
第1圧力範囲より高い所定の第2圧力範囲の高圧ガスが封入されたガス容器と、
ガス容器を開封する操作部と、
操作部により開封されたガス容器から流入した高圧ガスを外部に放出すると共に、高圧ガスのガス圧により放出切替機構を作動させて本体容器を開封し、低圧ガスで加圧された消火液の液圧より高圧ガスのガス圧が低下した場合に、液圧により放出切替機構を逆方向に作動させて消火液の放出経路を開放し、低圧ガスの加圧により消火液の微噴霧を外部に放出する微噴霧ノズル機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
(第1放出口と第2放出口の配置)
微噴霧ノズル機構は、
環状開口として形成され、高圧ガスを外部に放出する第1放出口と、
環状開口の内側に開口し、低圧ガスによる消火液の微噴霧を外部に放出する第2放出口と、
を備える。
【発明の効果】
【0016】
(基本的な効果)
本発明は、消火器において、所定量の消火液が収納されると共に所定の第1圧力範囲の低圧ガスが充填された本体容器と、本体容器の内部に配置された第1圧力範囲より高い所定の第2圧力範囲の高圧ガスが封入されたガス容器と、レバー操作により、本体容器を開封して消火液を微噴霧ノズル機構に流入させるとともに、ガス容器を開封して高圧ガスを微噴霧ノズル機構に流入させる操作部と、本体容器から低圧ガスの加圧により流入した消火液とガス容器から流入した高圧ガスをとを外部に放出する、又は消火液と高圧ガスとを混合して外部に放出する微噴霧ノズル機構とが設けられたため、低圧ガスにより送り出された消火液を高圧ガスにより微粒子化した微噴霧が放出されることで、窒素等のガスの窒息作用と極少量の消火液の冷却作用、及び消火液が蒸発する際に膨張して火炎近くの空気(酸素)を排除する窒息作用等の相乗効果により、消火性能が高めることができる。
【0017】
また、消火器の構造を加圧方式と蓄圧方式の混合方式としたことで、蓄圧方式の容器の腐食や何らかの原因で発生した充填ガスの漏洩が、圧力計の指示値で明確に分かり、火災時消火剤不放出を防止できるというメリットがある。
【0018】
一方、加圧方式を併用することで、密閉式のガス容器(カートリッジ)に微噴霧消火、例えば平均粒子径が10μm~200μm程度の微噴霧に必要な高圧ガスを安全に貯蔵できるため、容器破壊などの大きな事故を防止し、また、消火液を微細にするとともに窒素等のガスの窒息作用をして消火効果を大幅に上げることができる。
【0019】
また、消火液の微噴霧に必要な十分な量の高圧ガスをガス容器(カートリッジ)に貯蔵することができ、消火器を小型化できる。この場合、ガス容器(カートリッジ)に充填された高圧ガスは、本体容器内に放出されることなく消火液を微細化するために外部に放出され、本体容器内の庄力は低圧の蓄圧以上に上昇しないため、使用時の容器破壊の事故を確実に防止できる。
【0020】
また、消火液を送り出す低圧ガスと水を微細化する高圧ガスの両方を同じ本体容器内で提供できることになり、小型化、低コスト、構造の簡単さなど、そのメリットは非常に大きい。
【0021】
(2流体・内部混合方式の効果)
また、微噴霧ノズル機構は、本体容器を開封して低圧ガスの加圧により送り出された消火液とガス容器の開封で送り出された高圧ガスとを内部で混合して外部に放出するようにし、具体的には、微噴霧ノズル機構は、消火液と高圧ガスとを混合する混合室、混合室に連通する第1導入口、第2導入口及び放出口を備えたノズル本体と、ノズル本体の第2導入口に上端が連結され、下端が消火液に浸漬して配置されたサイホン管と、操作部のレバー操作によりガス容器のシールを破封し、第1導入口を介して混合室に高圧ガスを供給する第1破封部材と、操作部のレバー操作又はガス容器から放出された高圧ガスによりサイホン管から第2導入口に至る経路を閉鎖するように配置されたシール部材を破封して、第2導入口を介して混合室に低圧ガスで加圧された消火液を供給する第2破封部材とが設けられたため、ノズル機構の混合室で高圧ガスと低圧ガスで押し出された消火液が混合されることから、例えば平均粒子径が数十μm~200μmといった粒子径の比較的大きな微噴霧が放出され、主として一般火災を対象としたA火災消火器として使用できる。
【0022】
(2流体・外部混合方式の効果)
また、微噴霧ノズル機構は、本体容器を開封して低圧ガスの加圧により送り出された消火液の微噴霧を外部に放出すると共にガス容器の開封で送り出された高圧ガスを外部に放出して外部で消火液の微噴霧と混合させ、具体的には、微噴霧ノズル機構は、高圧ガスを外部に放出する第1放出口、消火液の微噴霧を外部に放出する第2放出口、第1放出口に連通する第1導入口、及び第2放出口に連通する第2導入口を備えたノズル本体と、ノズル本体の第2導入口に上端が連結され、下端が消火液に浸漬して配置されたサイホン管と、操作部のレバー操作によりガス容器のシールを破封し、第1導入口を介して第1放出口に高圧ガスを供給する第1破封部材と、操作部のレバー操作又はガス容器から放出された高圧ガスによりサイホン管から第2導入口に至る経路を閉鎖するように配置されたシール部材を破封して第2導入口を介して第2放出口に低圧ガスで加圧された消火液を供給する第2破封部材とが設けられたため、例えば平均粒子径が10μm~数十μmといった粒子径の比較的小さな微噴霧が放出され、電気火災に適したB火災消火器や油火災に適したC火災消火器として使用できる。
【0023】
(2流体切替え方式の効果)
また、微噴霧ノズル機構は、ガス容器を開封した場合にガス容器から送り出された高圧ガスを外部に放出すると共に、高圧ガスのガス圧による放出切替機構の作動で本体容器を開封して、低圧ガスで加圧された液圧より高圧ガスのガス圧が低下した場合に放出切替機構を液圧により逆方向に作動させて消火液の放出経路を確保し、低圧ガスにより消火液の微噴霧を外部に放出し、具体的には、微噴霧ノズル機構は、高圧ガスを外部に放出する第1放出口、消火液の微噴霧を外部に放出する第2放出口、放出切替機構が収納される第1シリンダ室と第2シリンダ室とが連設されたシリンダ室、第1放出口及び第1シリンダ室に連通する第1導入口、第2シリンダ室に連通する第2導入口、及び第2放出口と第2シリンダ室と間に導入口を備えたノズル本体と、ノズル本体の第2導入口に上端が連結され、下端が消火液に浸漬して配置されたサイホン管と、操作部のレバー操作によりガス容器のシールを破封し、第1導入口を介して第1放出口及び第1シリンダ室に高圧ガスを供給する第1破封部材と、第1シリンダ室に摺動自在に収納される第1ピストン、第2シリンダ室に第1ピストンとロッドで連結され摺動自在に収納された第2ピストン、及び第2ピストンの第1ピストンの反対側に設けられた第2破封部材を備えた放出切替機構と、が設けられ、操作部のレバー操作によりガス容器から放出された高圧ガスを外部に放出させると共に第1シリンダ室に導入して第1ピストン及び第2ピストンを摺動させ第2破封部材によりサイホン管から第2導入口に至る経路を閉鎖するように配置されたシール部材を破封して第2ピストンの当接により第2導入口を閉鎖状態とし、低圧ガスで加圧された液圧より高圧ガスのガス圧が低下した場合に低圧ガスで加圧された液圧で第2ピストンを摺動させて閉鎖状態を解除することにより、低圧ガスによる消火液の微噴霧を外部に放出させるため、消火器の操作部をレバー操作すると最初にガス容器から高圧ガスが放出され、窒素等のガスによる窒息作用で火力が抑制され、時間が経過して高圧ガスの圧力が低下してくると、本体容器の低圧ガスによる消火液の微噴霧の放出に切り替わり、微噴霧による冷却作用と窒素等のガスによる窒息作用により消火することができる。
【0024】
(第1放出口と第2放出口の配置による効果)
また、ノズル本体の高圧ガスが放出される第1放出口は環状開口として形成され、低圧ガスによる消火液の微噴霧が放出される第2放出口は環状開口の中心穴として開口されたため、低圧ガスによる加圧で中心穴から放出された消火液の周囲を包むように環状開口から高圧ガスが放出され、消火液を微細化すると共に高速で微噴霧を飛翔させ、火災を効率良く抑制消火可能とする。
【0025】
(ガスの圧力)
低圧ガスの圧力は1.0MPa以下であり、高圧ガスは2.0MPa以上であり、これにより低圧ガスは消火液を確実に送り出し、高圧ガスは送り出された消火液を例えば内部混合方式又は外部混合方式によってその範囲は変わるが、総じて平均粒子径が10μm~200μm程度の微細化して微噴霧することができる。
【0026】
(微噴霧粒子の効果)
微噴霧ノズル機構から放出する微噴霧の平均粒子径は10μm及至200μmとしたため、高圧ガスの圧力を例えば2MPa以上の範囲で調整し、圧力を高くすることで平均粒子径を小さくし、圧力を低くすることで平均粒子径を大きくするといった制御が可能となり、火災の種類に対応した粒子径による微噴霧の消火器が簡単に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】2流体内部混合放射を行う消火器の実施形態を示した断面図
図2図1の消火器による窒素ガスと微噴霧の内部混合による2流体内部混合放射を示した断面図
図3】2流体内部混合放射を行う消火器の他の実施形態を示した断面図
図4】2流体外部混合放射を行う消火器の実施形態を示した断面図
図5】2流体切替え放射を行う消火器の実施形態を示した断面図
図6図5のノズル機構を取り出して示した断面図
図7図6のノズル機構による高圧窒素ガスの放出状態を示した断面図
図8図6のノズル機構による窒素微噴霧への切替え状態を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
[2流体内部混合放射型消火器の実施形態]
(消火器の構造)
図1は2流体内部混合放射を行う消火器10の実施形態を示した断面図であり、本実施形態の消火器は高圧窒素ガスと窒素微噴霧の2流体を内部で混合し、混合1流体として窒素微噴霧を放出するようにしたことを特徴とする。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の消火器は、本体容器12の上部開口に蓋部材14が配置されており、蓋部材14の下側にはガス容器16が配置されている。ガス容器16は内部に高圧窒素ガスが充填された高圧カートリッジが使用され、上端の取出口はシール16aにより封止され、ガス容器16には2.0MPa以上の高圧窒素ガスが充填されている。
【0030】
また、蓋部材14の下側にはサイホン管22の上部がシール48の配置により封止された状態で連結され、サイホン管22の下端は本体容器12の底部に近い位置に降ろされており、下端をテーパ状に切失したテーパ吸込口22aとしている。
【0031】
本体容器12の内部には少量の消火液として水20が収納されると共に低圧窒素ガス18が充填されている。低圧窒素ガス18の圧力は、例えば0.7MPa~0.9MPaの範囲に設定されている。
【0032】
本体容器12に収納した水20のレベルに対し、サイホン管22の下端に形成されたテーパ吸込口22aは、テーパ吸込口22a全体が水20に浸漬するように配置している。
【0033】
蓋部材14の上部にはノズル機構24Aが設けられている。ノズル機構24Aは、ガス容器16のシール16aを開封するための機構として、蓋部材14に固定されたプランジャーケース43に上下方向に摺動自在にプランジャー42が配置され、プランジャー42の下側に破封部材として機能するカッター44が収納されている。
【0034】
蓋部材14には下レバー36が固定されると共に、上レバー38が軸ピン40により下向き回りに回動自在に配置されている。なお、上レバー38には安全栓45が装着されており、安全栓45を外さない限り、上レバー38を押し下げることはできない。
【0035】
プランジャー42の上端は上レバー38の内側に接触又は近接しており、安全栓45を引き外して上レバー38を押し下げると、プランジャー42が押し込まれ、これによりカッター44を押し込んでガス容器16のシール16aを破って開封させ、これによりガス容器16から放出された高圧窒素ガスを、プランジャー42内の内部通路42aを介して第1導入口28からノズル本体26の混合室27に送り込んでいる。
【0036】
また、ノズル本体26の下側には第2導入口30が設けられ、第2導入口30にはシール48を介してサイホン管22の上端が固定されている。第2導入口30には、ノズル本体26を上下に貫通したプランジャー46の先端が位置し、プランジャー46の先端には形成された破封部材として機能するカッター46aが形成されている。
【0037】
ノズル本体26の上側に取り出されたプランジャー46の先端は、上レバー38の下側に接触又は近接しており、安全栓45を引き外して上レバー38を押し下げると、プランジャー46が押し込まれ、これによりカッター46aを押し込んで第1導入口30を封止しているシール48を突き破って開封させ、これにより本体容器12内に収納している水20を本体容器12内に充填している低圧窒素ガス18の力でノズル本体26の混合室27に送り込むようしにている。
【0038】
ノズル本体26は先端に放出口32を開口しており、放出口32にはゴム製の防護キャップ34が装着されている。
【0039】
なお、本体容器12内に充填した低圧窒素ガス18の圧力を示すために圧力計を設けても良いが、図示は省略している。
【0040】
(窒素微噴霧の放出動作)
図2図1の消火器による窒素ガスと微噴霧の内部混合による2流体内部混合放射を示した断面図である。
【0041】
火災時に消火器10を使用する場合には、図1に示した安全栓45を抜いて上レバー38のロックを解除し、続いて、図2に示すように、上レバー38を押し下げる。上レバー38が押し下げられると、プランジャー42が押し下げられ、プランジャー42の先端のよりカッター44も押し下げられ、カッター44によりガス容器16のシール16aが突き破られて開封し、内部に充填している高圧窒素ガス15が点線で示すように、ノズル本体26の第1導入口28から混合室27に送り込まれる。
【0042】
また、上レバー38が押し下げられると、プランジャー46も押し下げられ、プランジ
ャー46の先端のカッター46aによりシール48が突き破られて本体容器12が開封され、本体容器12の内部に充填している低圧窒素ガス18の加圧により水20がサイホン管22から第2導入口30を通って混合室27に送り込まれる。この場合、サイホン管22の下端のテーパ吸込口22aは水20に浸かっていることから、低圧窒素ガス18の圧力で水20が混合室27に送り込まれる。
【0043】
混合室27では、第1導入口28から送り込まれた高圧窒素ガス15の高速噴流が略直交する方向から送り込まれた水20に衝突して水を微噴霧化し、放出口32から混合1流体としての窒素微噴霧50が高速で噴射される。
【0044】
なお、防護キャップ34は高圧窒素ガスの放出で吹き飛して外すことができ、外れた防護キャップ34を紛失しないため、紐やチェーンで連結しておくことが望ましい。
【0045】
このため本実施形態の消火器10から窒素微噴霧50が放出されることで、窒素ガスの窒息作用と極少量の水の冷却作用、及び水が蒸発する際に膨張して火炎近くの空気(酸素)を排除する窒息作用等の相乗効果により、消火性能が高めることができる。
【0046】
また、消火器10の構造として、高圧窒素ガスを充填してガス容器16を用いた加圧式と、本体容器12に低圧窒素ガス18を充填した蓄圧式の混合方式としたことで、蓄圧式の本体容器12の腐食や何らかの原因で発生した充填ガスの漏洩が、圧力計を設けていた場合にはその指示値で明確に分かり、火災時の消火剤不放出を防止できるというメリットがある。
【0047】
一方、高圧窒素ガス15を充填してガス容器16を用いた加圧式を併用することで、密閉式のガス容器16(カートリッジ)に微噴霧消火、例えば平均粒子径が10μm~200μm程度の微噴霧に必要な高圧窒素ガスを安全に貯蔵できるため、水を微細にするとともに窒素ガスの窒息作用をして消火効果を大幅に上げることができる。
【0048】
また、水の微噴霧に必要な十分な量の高圧窒素ガスをガス容器16に貯蔵することができ、消火器10を小型化できる。この場合、ガス容器16に充填された高圧窒素ガスは、本体容器12内に放出されることなく水を微細化するためノズル機構24Aを介して外部に放出され、本体容器12内の庄力は低圧窒素ガス18の蓄圧0.7~0.9MPa以上に上昇しないため、使用時の容器破壊の事故を確実に防止できる。
【0049】
また、水20を送り出す低圧窒素ガス18と水を微細化する高圧窒素ガスの両方を同じ本体容器12内で提供できることになり、小型化、低コスト、構造の簡単さなど、そのメリットは非常に大きい。
【0050】
また、本実施形態の消火器10は、ノズル本体26の混合室27で高圧窒素ガス15を水20と低圧窒素ガス18の気液混合流体に衝突させて内部で水を微噴霧化していることから、微噴霧化した水の平均粒子径は数十μm~200μmと比較的大きく、このため一般火災を対象としたA火災消火器としての使用に適している。
【0051】
[2流体内部混合放射型消火器の他の実施形態]
(消火器の構造)
図3は2流体内部混合放射を行う消火器の他の実施形態を示した断面図であり、本実施形態の消火器は、レバー操作によりガス容器を開封して放出された高圧窒素ガスの力により本体容器を開封させるようにしたことを特徴とする。
【0052】
図3に示すように、本実施形態の消火器10は、蓋部材14の下側に配置されたサイホ
ン管22の開口に配置されたシール48を開封させる構造として、ノズル本体26の上下方向にシリンダ56を形成してロッド54を備えたピストン52を摺動自在に設け、ロッド54の上端はプラグ55を通して取出し、ロッド54の下端には破封部材として機能するカッター54aが形成され、ピストン52とプラグ55の間のシリンダ室を貫通して、ガス容器16からの高圧窒素ガスを第1導入口28に送り込む通路を形成し、更に、ピストン52の下側からノズル本体26の第2導入口30に配管31が接続されている。
【0053】
それ以外の構成及び機能は、図1の実施形態と同じになることから、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0054】
(窒素微噴霧の放出動作)
図3に示す消火器10を火災時に使用する場合には、安全栓45を抜いて上レバー38のロックを解除し、続いて、上レバー38を押し下げるとプランジャー42が押し下げられ、プランジャー42の先端のカッター44も押し下げられ、カッター44によりガス容器16のシール16aが突き破られて開封し、内部に充填している高圧窒素ガスがノズル本体26のシリンダ室を通って第1導入口28から混合室27に送り込まれる。
【0055】
このようにガス容器16から放出された高圧窒素ガスがピストン52の上側のシリンダ室に送り込まれると、高圧窒素ガスによる加圧を受けてピストン52が下降し、ロッド54の先端のカッター54aによりシール48が突き破られて本体容器12が開封され、本体容器12の内部に充填している低圧窒素ガス18の加圧により水20がサイホン管22から配管31及び第2導入口30を通って混合室27に気液混合流体として送り込まれる。
【0056】
混合室27では、第1導入口28から送り込まれた高圧窒素ガスの高速噴流が略直交する方向から送り込まれた水20と低圧窒素ガス18との気液混合流体に衝突して水を微噴霧化し、放出口32から混合1流体としての窒素微噴霧が高速で噴射される。
【0057】
このように本実施形態は、レバー操作により放出された高圧窒素ガスの力を利用して本体容器12のシール48を開封させることから、図1に示した上レバー38の操作によりプランジャー46を押し下げて本体容器12を開閉させる場合に比べ、簡単な構造とすることができる。
【0058】
[2流体外部混合放射型消火器の実施形態]
(消火器の構造)
図4は2流体外部混合放射を行う消火器の実施形態を示した断面図であり、本実施形態の消火器は高圧窒素ガスと水を低圧窒素ガスで微噴霧化した窒素微噴霧の2流体を外部に放出して混合させるようにしたことを特徴とする。
【0059】
図4に示すように、本実施形態の消火器は、本体容器12の上部開口に蓋部材14が配置され、蓋部材14の下側には2.0MPa以上の高圧窒素ガスが充填されたガス容器16が配置され、また、サイホン管22の上部がシール48の配置により封止された状態で連結され、サイホン管22の下端はテーパ吸込口22aが形成され、本体容器12の内部には少量の水20が収納されると共に0.7MPa~0.9MPaの低圧窒素ガス18が充填されている。
【0060】
蓋部材14の上部には2流体外部混合放射型のノズル機構24Bが設けられている。ノズル機構24Bは、ノズル本体60が基部60a、周囲ノズル60b及び中心ノズル60cで構成されており、中心ノズル60cと周囲ノズル60bは同軸に配置されている。
【0061】
周囲ノズル60bの後部には第1導入口62が連通され、先端にはリング状に開口した第1放出口66が形成されている。中心ノズル60cの後部には下側から第2導入口64が連通され、先端には中心穴となる第2放出口68が形成されている。第1放出口66及び第2放出口68には防護キャップ70が装着されている。
【0062】
ノズル機構24Bは、ガス容器16のシール16aを開封するための機構として、蓋部材14に固定されたプランジャーケース43に上下方向に摺動自在にプランジャー42が配置され、プランジャー42の下側に破封部材として機能するカッター44が収納されている。
【0063】
蓋部材14には下レバー36が固定されると共に、上レバー38が軸ピン40により下向き回りに回動自在に配置されている。上レバー38には安全栓45が装着されており、安全栓45を外さない限り、上レバー38を押し下げることはできない。
【0064】
プランジャー42の上端は上レバー38の内側に接触又は近接しており、安全栓45を引き外して上レバー38を押し下げると、プランジャー42が押し込まれ、これによるカッター44を押し込んでガス容器16のシール16aを破って開封させ、これによりガス容器16から放出された高圧窒素ガスを第1導入口62からノズル本体60の周囲ノズル60bに送り込み、リング状に開口された第1放出口66から筒状に高圧窒素ガスを放出させるようにしている。
【0065】
また、ノズル本体60の中心ノズル60cに対する第2導入口64の下側に設けたシール48を開封させるため、ノズル本体60の基部60aを上下に貫通したプランジャー46が配置され、プランジャー46の先端には形成された破封部材として機能するカッター46aが形成されている。
【0066】
ノズル本体60の上側に取り出されたプランジャー46の先端は、上レバー38の下側に接触又は近接しており、安全栓45を引き外して上レバー38を押し下げると、プランジャー46が押し込まれ、これによりカッター46aを押し込んで第2導入口64を封止しているシール48を突き破って開封させ、これにより本体容器12内に収納している水20を本体容器12内に充填している低圧窒素ガス18の力でノズル本体60の中心ノズル60cに気液混合状態で送り込み、先端の第2放出口68から窒素微噴霧の流体として放出させるようにしている。
【0067】
なお、上レバー38の操作によりプランジャー42とプランジャー46を押し下げてシール16a,48を開封させる機構は、基本的には図1の実施形態と同じになることから、同一符号で示している。
【0068】
このようにノズル機構24Bの先端のリング状の開口となる第1放出口66からの高圧窒素ガスの放出と、中心穴となる第2放出口68からの水と低圧窒素ガスの窒素微噴霧の放出が同時に行われることで、外部空間を飛翔する中で窒素微噴霧の中の水の微粒子が高圧窒素ガスにより更に微噴霧化されながら放出される。
【0069】
(窒素微噴霧の放出動作)
図4に示した消火器10を火災時に使用する場合には、安全栓45を抜いて上レバー38のロックを解除して押し下げると、プランジャー42が押し下げられて先端のカッター44によりガス容器16のシール16aが突き破られて開封し、内部に充填している高圧窒素ガスがノズル本体60の第1導入口62を通って周囲ノズル60bに送り込まれ、先端の第1放出口66から筒状に高圧窒素ガスが放出される。
【0070】
また、上レバー38が押し下げられると、プランジャー46も押し下げられ、先端のカッター46aによりシール48が突き破られて本体容器12が開封され、本体容器12の内部に充填している低圧窒素ガス18の加圧により水20がサイホン管22から第2導入口64を通って中心ノズル60cに送り込まれ、先端の第2放出口68から低圧窒素ガスにより水を微粒子化した窒素微噴霧の流体が放出される。
【0071】
中心ノズル60cから低圧窒素ガスにより水を微噴霧化した窒素微噴霧の気液混合流体は、その周囲に放出された高圧窒素ガスの高速ガス流の衝突を受けて水粒子が更に微細化され、平均粒子径が10μm~数十μmといった比較的細かい窒素微噴霧として火炎に放出される。
【0072】
このため本実施形態の消火器10からは高圧窒素ガスと、低圧窒素ガスによる水の微噴霧との2流体が放出され、飛翔中に両者の混合により水粒子が更に微噴霧化された窒素微噴霧となって放出されることで、窒素等の窒素ガスの窒息作用と極少量の水の冷却作用、及び水が蒸発する際に膨張して火炎近くの空気(酸素)を排除する窒息作用等の相乗効果により、消火性能が高めることができる。
【0073】
また、消火器10の構造として、高圧窒素ガスを充填してガス容器16を用いた加圧式と、本体容器12に低圧窒素ガス18を充填した蓄圧式の混合方式としたことで、蓄圧式の本体容器12の腐食や何らかの原因で発生した充填ガスの漏洩が、圧力計を設けていた場合にはその指示値で明確に分かり、火災時の消火剤不放出を防止できるというメリットがある。
【0074】
一方、高圧窒素ガスを充填してガス容器16を用いた加圧式を併用することで、密閉式のガス容器16に微噴霧消火に必要な2.0MPa以上の高圧窒素ガスを安全に貯蔵できるため、水を微細にするとともに窒素ガスの窒息作用をして消火効果を大幅に上げることができる。
【0075】
また、水の微噴霧に必要な十分な量の高圧窒素ガスをガス容器16に貯蔵することができ、消火器10を小型化できる。この場合、ガス容器16に充填された高圧窒素ガスは、本体容器12内に放出されることなく水を微細化するためノズル機構24Bを介して外部に放出され、本体容器12内の圧力は低圧窒素ガス18の蓄圧0.7~0.9MPa以上に上昇しないため、使用時の容器破壊の事故を確実に防止できる。
【0076】
また、水20を送り出す低圧窒素ガス18と水を微細化する高圧窒素ガスの両方を同じ本体容器12内で提供できることになり、小型化、低コスト、構造の簡単さなど、そのメリットは非常に大きい。
【0077】
また、本実施形態の消火器10は、放出された高圧窒素ガスを低圧窒素ガスにより微噴霧化した窒素微噴霧に衝突させて更に水粒子を微細化していることから、微噴霧化して水の平均粒子径が10μm~数十μmといった粒子径の比較的小さな窒素微噴霧が放出され、電気火災に適したB火災消火器や油火災に適したC火災消火器として使用できる。
【0078】
[2流体切替え放射型の消火器]
図5は2流体切替え放射を行う消火器の実施形態を示した断面図であり、図6図5のノズル機構を取り出して示した断面図である。
【0079】
(消火器の構造)
本実施形態の消火器は、消火器を使用する場合、最初に高圧窒素ガスが放出され、時間
が経過すると窒素微噴霧の放出に切り替わることを特徴とする。
【0080】
図5及び図6に示すように、本実施形態の消火器10は、基本的な構造及び機能は、図4の2流体外部混合放射型の消火器と同じになるが、次の点が相違している。
【0081】
本実施形態のノズル機構24Bは、基部60aに上下方向に分けて第1シリンダ76と第2シリンダ78を形成し、第1シリンダ76に第1ピストン72を摺動自在に組み込むと共に第2シリンダ78に第2ピストン74を摺動自在に組込み、第1ピストン72と第2ピストン74はロッド80により連結され、更に、ロッド80は第2ピストン74の下側に延在され、先端にシール48を開封させるためのカッター80aが形成されている。
【0082】
第1ピストン72の上側のシリンダ室には、高圧窒素ガスが供給される第1導入口62からの通路が連通され、第2ピストン74の下側のシリンダ室には、本体容器12内の低圧窒素ガス18により加圧された水が供給される第2導入口64と中心ノズル60cに至る導入口65が連通されている。
【0083】
ここで、第1ピストン72が高圧窒素ガスの圧力P1を受ける受圧面積をS1、第2ピストン74が本体容器12内の低圧窒素ガス18の圧力P2を受ける受圧面積をS2とすると、
S1<S2
となるように、第1ピストン72の径を小さくし、第2ピストン74の径を大きくしている。
【0084】
また、第1ピストン72には1本のシールリング82が設けられているが、第2ピストン74には2本のシールリング84,86が設けられており、第2ピストン74が下端に当接した場合に、2本のシールリング84,86の間に中心ノズル60cに対する導入口65が位置して密閉できるように配置している。
【0085】
(2流体放出の切替え動作)
図7図6のノズル機構による高圧窒素ガスの放出状態を示した断面図、図8図6の窒素微噴霧への切替え状態を示した断面図である。
【0086】
図5及び図6に示した消火器10を火災時に使用する場合には、安全栓45を抜いて上レバー38のロックを解除して押し下げると、プランジャー42が押し下げられて先端のカッター44によりガス容器16のシール16aが突き破られて開封し、内部に充填している高圧窒素ガスがノズル本体60の第1導入口62を通って周囲ノズル60bに送り込まれ、図7に示すように、先端の第1放出口66から筒状に高圧窒素ガス90が放出される。
【0087】
また、ガス容器16から放出された高圧窒素ガスは、第1ピストン72の上側のシリンダ室に加わり、図7に示すように、第1ピストン72は(P1・S1)の力を受けて下降し、ロッド80の先端のカッター80aによりシール48が突き破られて本体容器12が開封され、本体容器12の内部に充填している低圧窒素ガス18の加圧により水20がサイホン管22から第2導入口64に供給される。
【0088】
このとき第2ピストン74は第2シリンダ78の下側に当接する位置に移動し、第2ピストン74に設けたシールリング84,86は、中心ノズル60cに対する導入口65の両側に位置し、中心ノズル60cへの流路を閉鎖している。
【0089】
このため第2ピストン74には(P2・S2)となる上向きの力が加わるが、第1ピス
トン72に加わっている下向きの力(P1・S1)との間には、
(P1・S1)>(P2・S2)
の関係があるため、第1ピストン72及び第2ピストン74は動かず、ガス容器16からの高圧窒素ガス90のみが消火器10から放出された1流体放出を維持している。
【0090】
ガス容器16の開封により高圧窒素ガスの放出を始めてから時間が経つと、高圧窒素ガスの圧力P1が徐々に低下し、
(P1・S1)<(P2・S2)
となって下向きの力(P1・S1)に対し上向きの力(P2・S2)が上回ると、図8に示すように、第2ピストン74は第1ピストン72と共に押し上げられ、第2導入口64が中心ノズル60cに連通し、本体容器12の内部に充填している低圧窒素ガス18の加圧により水20がサイホン管22から第2導入口64を通って中心ノズル60cに送り込まれ、先端の第2放出口68からの放出により微噴霧化された窒素微噴霧92が放出され、2流体放出に切り替わる。
【0091】
更に時間が経過して、ガス容器16から放出された高圧窒素ガスの圧力P1が更に低下すると、第2ピストン74に加わる上向きの力(P2・S2)により押し上げられ、第1ピストン72が第1シリンダ76の上端に当接する位置まで移動し、中心ノズル60cに対する流路を完全に開き、窒素微噴霧92を主体とした放出に切り替わる。
【0092】
このため本実施形態の2流体切替え型の消火器によれば、消火器のレバーを操作すると最初にガス容器から高圧窒素ガスが放出され、窒素ガスによる窒息作用で火力が抑制され、時間が経過して高圧窒素ガスの圧力が低下してくると、本体容器の低圧窒素ガスにより水を微噴霧化した窒素微噴霧の放出に切り替わり、窒素微噴霧による冷却作用と窒素ガスによる窒息作用により消火することができる。
【0093】
[本発明の変形例]
(消火液)
本実施形態にあっては、消火液として通常の水を使用しているが、不純物によるイオン化を抑制するために蒸留水や純水あるいは超純水を使用してもよい。また、消火作用のある薬剤を混入した液体としても良い。
【0094】
(不活性ガス)
上記の実施形態は、窒息消火の窒素ガスを使用しているが、窒素ガス以外の不活性ガス、例えば二酸化炭素を使用することもできる。しかし、不活性ガスとして二酸化炭素を使用した場合、酸欠の問題があることから、屋外等の開放空間での消火器としての使用に限定する必要がある。
【0095】
(ホース)
上記の実施形態は、消火上部に設けたノズルから窒素微噴霧を放出しているが、ノズル機構24A,24Bのノズル部分にホースを接続し、ホース先端のノズルから窒素微噴霧を放出させるようにしても良い。
【0096】
(消火器サイズ)
また、消火器のサイズは必要に応じて小型、中型、大型といった適宜の容量をとすることができる。
【0097】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されること無く、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0098】
10:消火器
12:本体容器
14:蓋部材
15,90:高圧窒素ガス
16:ガス容器
16a:シール
18:低圧窒素ガス
20:水
22:サイホン管
24A,24B:ノズル機構
26,60:ノズル本体
27:混合室
28:第1導入口
30:第2導入口
31:配管
32:放出口
34,70:防護キャップ
36:下レバー
38:上レバー
40:軸ピン
42,46:プランジャー
43:プランジャーケース
44,46a,54a,80a:カッター
45:安全栓
48:シール
50,92:窒素微噴霧
52:ピストン
54:ロッド
56:シリンダ
60a:基部
60b:周囲ノズル
60c:中心ズル
62:第1導入口
64:第2導入口
66:第1放出口
68:第2放出口
72:第1ピストン
74:第2ピストン
76:第1シリンダ
78:第2シリンダ
80:ロッド
82,84,86:シールリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8