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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】波長分離のための複屈折プリズム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/08 20230101AFI20230420BHJP
   G02F 1/37 20060101ALI20230420BHJP
   H01S 3/109 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
H01S3/08
G02F1/37
H01S3/109
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021504540
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019059792
(87)【国際公開番号】W WO2020025181
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】16/050,499
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514323268
【氏名又は名称】コヒーレント レーザーシステムズ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゼーラート, ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】フォン エルム, リュディガー
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-003289(JP,A)
【文献】特開平03-150887(JP,A)
【文献】特開平11-064902(JP,A)
【文献】米国特許第05333142(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102570277(CN,A)
【文献】特表2003-523541(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013449(WO,A1)
【文献】特開2012-208490(JP,A)
【文献】特開2007-214189(JP,A)
【文献】特開2004-200536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波長を有する放射を、第2高調波波長を有する放射に変換するための光学装置であって、前記装置は、
前記基本放射が循環する光共振器と、
前記光共振器内に位置付けられ、循環する基本放射を第2高調波放射に変換するように配置される光学的非線形結晶であって、前記基本放射および第2高調波放射は、相互に直交する直線偏光を有する、光学的非線形結晶と、
前記光共振器内に位置付けられ、前記光学的非線形結晶から同軸上で伝播する前記基本放射および第2高調波放射を受信するように配置されるプリズムであって、前記基本放射および第2高調波放射は、前記基本放射についての略外部ブリュースター角で前記プリズムの第1の面に入射し、前記基本放射は、前記プリズムを通って透過され、かつ前記基本放射についての略内部ブリュースター角で前記プリズムの第2の面に入射し、前記基本放射は、前記第2の面を通って前記プリズムを出る、プリズムと
を備え、前記プリズムは、コーティングされていない複屈折プリズムであり、前記プリズムは、さらに、前記第2高調波放射の一部が、前記プリズムの前記第1の面を通って前記プリズムに入り、前記プリズムの前記第2の面によって全内反射され、前記第2高調波放射についての略内部ブリュースター角で前記プリズムの第3の面に入射し、前記第3の面を通って前記プリズムを出るように配置され、
前記基本放射は、前記プリズム内の異常光線であり、前記第2高調波放射は、前記プリズム内の常光線である、装置。
【請求項2】
前記光共振器は、一方向性リング共振器である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光共振器は、前記基本放射のための増強共振器として構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プリズムの前記第1の面および前記第2の面は、前記プリズムの第1の結晶軸に平行であり、前記プリズムの前記第3の面は、前記第1の結晶軸に平行ではない、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記プリズムは、負の一軸性複屈折材料で作製され、前記基本放射は、前記プリズムの第2の結晶軸に平行に前記プリズム内を伝播し、前記負の一軸性複屈折材料の光軸は、前記プリズムの第3の結晶軸である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プリズムは、正の一軸性複屈折材料で作製され、前記第1の結晶軸は、前記正の一軸性複屈折材料の光軸である、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
記プリズムは、β-ホウ酸バリウム(BBO)で作製されたプリズムある、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記基本放射は、426ナノメートルの波長を有し、前記第2高調波放射は、213ナノメートルの波長を有する、請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記基本放射は、426ナノメートルの波長を有し、前記第2高調波放射は、213ナノメートルの波長を有し、
前記基本放射についての前記外部ブリュースター角は、約57.42°であり、前記基本放射についての前記内部ブリュースター角は、約32.58°であり、前記第2高調波放射についての前記内部ブリュースター角は、約28.68°である、請求項に記載の装置。
【請求項10】
記プリズムは、バナジン酸塩(VO)で作製されたプリズムである、請求項1~4および6のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記基本放射は、426ナノメートルの波長を有し、前記第2高調波放射は、213ナノメートルの波長を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記基本放射は、前記プリズムの前記第1の面および前記第2の面に対してp偏光され、前記第2高調波放射は、前記プリズムの前記第3の面に対してp偏光される、請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
光ゲイン媒質をさらに含む、請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
第2高調波波長を有する放射を生成するための光学装置であって、前記装置は、
基本波長を有する放射を生成する源と、
一方向性リング共振器であって、前記一方向性リング共振器は、前記基本放射を受信し、前記一方向性リング共振器内で前記基本放射を循環させるように配置される、一方向性リング共振器と、
前記光共振器内に位置付けられ、循環する基本放射を第2高調波放射に変換するように配置される光学的非線形結晶であって、前記基本放射および第2高調波放射は、相互に直交する直線偏光を有する、光学的非線形結晶と、
前記光共振器内に位置付けられ、前記光学的非線形結晶から同軸上で伝播する前記基本放射および第2高調波放射を受信するように配置されるプリズムであって、前記基本放射および第2高調波放射は、前記基本放射についての略外部ブリュースター角で前記プリズムの第1の面に入射し、前記基本放射は、前記プリズムを通って透過され、かつ前記基本放射についての略内部ブリュースター角で前記プリズムの第2の面に入射し、前記基本放射は、前記第2の面を通って前記プリズムを出る、プリズムと
を備え、前記プリズムは、コーティングされていない複屈折プリズムであり、前記プリズムは、さらに、前記第2高調波放射の一部が、前記プリズムの前記第1の面を通って前記プリズムに入り、前記プリズムの前記第2の面によって全内反射され、前記第2高調波放射についての略内部ブリュースター角で前記プリズムの第3の面に入射し、前記第3の面を通って前記プリズムを出るように配置され、
前記基本放射は、前記プリズム内の異常光線であり、前記第2高調波放射は、前記プリズム内の常光線である、装置。
【請求項15】
前記プリズムの前記第1の面および前記第2の面は、前記プリズムの第1の結晶軸に平行であり、前記プリズムの前記第3の面は、前記第1の結晶軸に平行ではない、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記プリズムは、負の一軸性複屈折材料で作製され、前記基本放射は、前記プリズムの第2の結晶軸に平行に前記プリズム内を伝播し、前記負の一軸性複屈折材料の光軸は、前記プリズムの第3の結晶軸である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記プリズムは、正の一軸性複屈折材料で作製され、前記第1の結晶軸は、前記正の一軸性複屈折材料の光軸である、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
記プリズムは、β-ホウ酸バリウム(BBO)で作製されたプリズムである、請求項14~16のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記基本放射は、426ナノメートルの波長を有し、前記第2高調波放射は、213ナノメートルの波長を有する、請求項14~18のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
記プリズムは、バナジン酸塩(VO)で作製されたプリズムである、請求項14、15、および17のうちのいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Wolf Seelert、および
【数1】
(本発明の技術的分野)
本発明は、概して、異なる波長の2つの成分を有する放射を分離するための光学素子に関する。本発明は、特に、可視波長放射用のレーザ共振器から紫外線波長放射を結合するための光学素子に関し、紫外線波長放射は、可視波長放射の第2高調波変換によって生み出される。
【背景技術】
【0002】
(背景技術の議論)
紫外線(UV)波長放射を提供するためのデバイスにおいて、光学的非線形結晶内での可視波長放射の高調波変換によって紫外線波長放射を生成することが一般的である。典型的に、可視波長放射は、近赤外線(NIR)波長放射の第2高調波変換によって生成され、近赤外線波長放射は、光ポンプ式半導体(OPS)レーザ等のソリッドステートレーザで生成される。
【0003】
例として、連続波UV放射を生成するための1つの一般的な配置では、可視放射は、電磁スペクトルのNIR領域内の波長を有する基本放射の空洞内第2高調波変換によって生成される。可視放射は、可視放射のためのインピーダンス整合共振増強空洞内に結合される。共振増強空洞内の光学的非線形結晶は、可視放射をUV放射に変換する。可視放射の空洞内生成のためのOPSレーザを用いて、266ナノメートル(nm)以下の波長を有するUV放射を生成することが可能である。
【0004】
典型的に、UV放射は、光コーティングされた薄膜ダイクロッイクフィルタによって共振空洞の外に方向付けられる。このダイクロイックフィルタは、共振器ミラーの1つとしての役割を果たし、可視放射を反射し、UV放射を透過し得る。代替として、ダイクロイックフィルタも、空洞内素子であり得、可視放射を透過し、UV放射を共振器の外に反射し得る。
【0005】
上で説明されるレーザ配置の特定の限界は、UV放射によって引き起こされる薄膜フィルム光コーティングへの損傷である。この限界は、短波長UV放射に関してより問題となる。さらに、未だ損傷していないコーティングでさえも、典型的に、層厚における製造的ばらつきに起因する損失、またはコーティングの材料による吸収に起因する損失を有する。そのような損失は、空洞内高調波生成を有する共振器の効率性を低減し、最終的に、これらの共振器の使用寿命を低減する。薄膜光コーティングを全く要求しない可視放射からUV放射を分離するためのデバイスに対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(本発明の概要)
一側面において、基本波長を有する放射を、第2高調波波長を有する放射に変換するための光学装置は、基本放射が循環する光共振器を備える。光学的非線形結晶は、光共振器内に位置付けられ、循環する基本放射を第2高調波放射に変換するように配置される。基本放射および第2高調波放射は、相互に直交する直線偏光を有する。コーティングされて
いない複屈折プリズムは、光共振器内に位置付けられ、光学的非線形結晶から同軸上で伝播する基本放射および第2高調波放射を受信するように配置される。基本放射および第2高調波放射は、基本放射についての略外部ブリュースター角でプリズムの第1の面に入射する。プリズムを通って透過される基本放射は、基本放射についての略内部ブリュースター角でプリズムの第2の面に入射する。プリズムは、さらに、第2高調波放射の一部が、プリズムの第1の面を通ってプリズムに入り、プリズムの第2の面によって全内反射され、第2高調波放射についての略内部ブリュースター角でプリズムの第3の面に入射し、第3の面を通ってプリズムを出るように配置される。基本放射は、プリズム内の異常光線であり、第2高調波放射は、プリズム内の常光線である。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
基本波長を有する放射を、第2高調波波長を有する放射に変換するための光学装置であって、前記装置は、
前記基本放射が循環する光共振器と、
前記光共振器内に位置付けられ、循環する基本放射を第2高調波放射に変換するように配置される光学的非線形結晶であって、前記基本放射および第2高調波放射は、相互に直交する直線偏光を有する、光学的非線形結晶と、
前記光共振器内に位置付けられ、前記光学的非線形結晶から同軸上で伝播する前記基本放射および第2高調波放射を受信するように配置されるコーティングされていない複屈折プリズムであって、前記基本放射および第2高調波放射は、前記基本放射についての略外部ブリュースター角で前記プリズムの第1の面に入射し、前記基本放射は、前記プリズムを通って透過され、かつ前記基本放射についての略内部ブリュースター角で前記プリズムの第2の面に入射し、前記基本放射は、前記第2の面を通って前記プリズムを出る、コーティングされていない複屈折プリズムと
を備え、前記プリズムは、さらに、前記第2高調波放射の一部が、前記プリズムの前記第1の面を通って前記プリズムに入り、前記プリズムの前記第2の面によって全内反射され、前記第2高調波放射についての略内部ブリュースター角で前記プリズムの第3の面に入射し、前記第3の面を通って前記プリズムを出るように配置され、
前記基本放射は、前記プリズム内の異常光線であり、前記第2高調波放射は、前記プリズム内の常光線である、装置。
(項目2)
前記光共振器は、一方向性リング共振器である、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記光共振器は、前記基本放射のための増強共振器として構成される、項目1に記載の装置。
(項目4)
前記プリズムの前記第1の面および前記第2の面は、前記プリズムの第1の結晶軸に平行であり、前記プリズムの前記第3の面は、前記第1の結晶軸に平行ではない、項目1~3のうちのいずれか一項に記載の装置。
(項目5)
前記プリズムは、負の一軸性複屈折材料で作製され、前記基本放射は、前記プリズムの第2の結晶軸に平行に前記プリズム内を伝播し、前記負の一軸性複屈折材料の光軸は、前記プリズムの第3の結晶軸である、項目4に記載の装置。
(項目6)
前記プリズムは、正の一軸性複屈折材料で作製され、前記第1の結晶軸は、前記正の一軸性複屈折材料の光軸である、項目4に記載の装置。
(項目7)
前記コーティングされていない複屈折プリズムは、β-ホウ酸バリウム(BBO)で作製されたプリズムである、項目1~6のうちのいずれか一項に記載の装置。
(項目8)
前記基本放射は、426ナノメートルの波長を有し、前記第2高調波放射は、213ナノメートルの波長を有する、項目1~7に記載の装置。
(項目9)
前記コーティングされていない複屈折プリズムは、β-ホウ酸バリウム(BBO)で作製されたプリズムである、項目8に記載の装置。
(項目10)
前記基本放射についての前記外部ブリュースター角は、約57.42°であり、前記基本放射についての前記内部ブリュースター角は、約32.58°であり、前記第2高調波放射についての前記内部ブリュースター角は、約28.68°である、項目9に記載の装置。
(項目11)
前記コーティングされていない複屈折プリズムは、バナジン酸塩(VO )で作製されたプリズムである、項目1~8のうちのいずれか一項に記載の装置。
(項目12)
前記基本放射は、前記複屈折プリズムの前記第1の面および前記第2の面に対してp偏光され、前記第2高調波放射は、前記複屈折プリズムの前記第3の面に対してp偏光される、項目1~11のうちのいずれか一項に記載の装置。
(項目13)
光ゲイン媒質をさらに含む、項目1~12のうちのいずれか一項に記載の装置。
(項目14)
第2高調波波長を有する放射を生成するための光学装置であって、前記装置は、
基本波長を有する放射を生成する源と、
一方向性リング共振器であって、前記一方向性リング共振器は、前記基本放射を受信し、前記一方向性リング共振器内で前記基本放射を循環させるように配置される、一方向性リング共振器と、
前記光共振器内に位置付けられ、循環する基本放射を第2高調波放射に変換するように配置される光学的非線形結晶であって、前記基本放射および第2高調波放射は、相互に直交する直線偏光を有する、光学的非線形結晶と、
前記光共振器内に位置付けられ、前記光学的非線形結晶から同軸上で伝播する前記基本放射および第2高調波放射を受信するように配置されるコーティングされていない複屈折プリズムであって、前記基本放射および第2高調波放射は、前記基本放射についての略外部ブリュースター角で前記プリズムの第1の面に入射し、前記基本放射は、前記プリズムを通って透過され、かつ前記基本放射についての略内部ブリュースター角で前記プリズムの第2の面に入射し、前記基本放射は、前記第2の面を通って前記プリズムを出る、コーティングされていない複屈折プリズムと
を備え、前記プリズムは、さらに、前記第2高調波放射の一部が、前記プリズムの前記第1の面を通って前記プリズムに入り、前記プリズムの前記第2の面によって全内反射され、前記第2高調波放射についての略内部ブリュースター角で前記プリズムの第3の面に入射し、前記第3の面を通って前記プリズムを出るように配置され、
前記基本放射は、前記プリズム内の異常光線であり、前記第2高調波放射は、前記プリズム内の常光線である、装置。
(項目15)
前記プリズムの前記第1の面および前記第2の面は、前記プリズムの第1の結晶軸に平行であり、前記プリズムの第3の面は、前記第1の結晶軸に平行ではない、項目14に記載の装置。
(項目16)
前記プリズムは、負の一軸性複屈折材料で作製され、前記基本放射は、前記プリズムの第2の結晶軸に平行に前記プリズム内を伝播し、前記負の一軸性複屈折材料の光軸は、前記プリズムの第3の結晶軸である、項目15に記載の装置。
(項目17)
前記プリズムは、正の一軸性複屈折材料で作製され、前記第1の結晶軸は、前記正の一軸性複屈折材料の光軸である、項目15に記載の装置。
(項目18)
前記コーティングされていない複屈折プリズムは、β-ホウ酸バリウム(BBO)で作製されたプリズムである、項目14~17のうちのいずれか一項に記載の装置。
(項目19)
前記基本放射は、426ナノメートルの波長を有し、前記第2高調波放射は、213ナノメートルの波長を有する、項目18に記載の装置。
(項目20)
前記コーティングされていない複屈折プリズムは、バナジン酸塩(VO )で作製されたプリズムである、項目14~17のうちのいずれか一項に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0007】
(図面の簡単な説明)
本明細書中に統合され、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の好ましい実施形態を概略的に図示し、上で与えられる概略的説明および以下で与えられる好ましい実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するために役割を果たす。
【0008】
図1図1は、高調波変換のために構成される一方向リング共振器を概略的に図示する平面図であり、一方向リング共振器は、入力可視放射をUV放射に変換するための光学的非線形結晶を含み、本発明によるコーティングされていない複屈折アウトカップリングプリズムを含み、プリズムは、UV放射を可視放射から分離しUV放射をリング共振器外に方向付けるように配置され、複屈折プリズムは、負の一軸性複屈折を有する。
【0009】
図2A図2Aは、図1の本発明の複屈折プリズムの好ましい実施形態を概略的に図示する平面図である。
【0010】
図2B図2Bは、概して図2Aに示される方向2B-2Bで見た図2Aの複屈折プリズムの断面図である。
【0011】
図3図3は、図2Aのプリズムと同様であるが、複屈折プリズムが正の一軸性複屈折を有する、本発明の複屈折プリズムの好ましい実施形態を概略的に図示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の詳細な説明)
ここで図面を参照すると、図1は、本発明による光学装置の好ましい実施形態10を概略的に図示している。装置10は、光共振器12を含み、光共振器12は、高調波変換のための増強共振器として構成される。共振器12は、平面鏡14と、凹面鏡16と、ブリュースターカットされた光学的非線形結晶18と、本発明によるコーティングされていない複屈折アウトカップリングプリズム20とによって形成される一方向性リング共振器である。
【0013】
可視波長放射「F」は、鏡14を通して共振器12内に結合される。説明の便宜上、可視波長放射は、本明細書中でこれ以降「基本放射」として指定される。基本放射の源21は、上で議論されるように、NIR放射の高調波変換によって基本放射を生成し得る。例として、源21は、レーザ放射の光線を生成するダイオードポンプ式OPSレーザであり得る。基本放射の光線経路は、単一の矢尻を有するように描写されている。基本放射は、共振器12を回って循環し、ひいては、鏡14、光学的非線形結晶18、プリズム20、および鏡16によって方向付けられる。
【0014】
鏡14は、基本放射に対して部分的に透過性である。例えば、約1%が透過性であり、約99%が反射性である。鏡14の透過は、入力基本波長に共振器をインピーダンス整合するように選択される。鏡16は、基本放射に対して最大限に反射性である。鏡16は、基本放射のための共振状態に共振器12を維持するために、圧電性トランスデューサ22によって継続的に平行移動可能である。鏡の平行移動によって共振器12を共振状態に「ロックされた」ことを維持するための方法は、業界において周知である。これらのロッキング方法は、Pound-Drever-Hall法および
【数2】
法を含む。任意のそのようなロッキング方法の詳細な説明は、本発明の原理を理解するために必要ではなく、よって、本明細書中で提示されない。
【0015】
基本放射は、直線偏光され、偏光の向きは、矢尻「P」で示されている。光学的非線形結晶18は、タイプ1第2高調波変換によって基本放射からUV放射を生成するように配置される。第2高調波UV放射「SH」の光線経路は2つの矢尻を有するように描写されている。第2高調波放射は、直線偏光され、偏光の向きは、矢尻「P2H」によって示されている。基本放射および第2高調波放射は、相互に直交する線形偏光を有する。
【0016】
プリズム20は、入力面24と、基本放射のための出力面26と、第2高調波放射のための出力面28とを含む。プリズムの結晶軸「a」軸、「b」軸および「c」軸は、図面に示されるように配向される。面24および面26は、図面の平面に直交し、a軸に平行である。出力面28は、図面の平面に直交せずに傾けられており、a軸に平行ではない。以下の説明においては、プリズム20は、負の一軸性複屈折材料で作製され、c軸に平行な光軸を有する。プリズム内の異常光線は、c軸に平行な直線偏光を有する。プリズム内の常光線は、c軸に垂直な直線偏光を有する。プリズム20内の特定の光線についての屈折率nは、それが異常光線であるか常光線であるかに関わらず、光線の波長に依存する。負の一軸性複屈折材料では、常光線についての屈折率(n)は、異常光線についての屈折率(n)より大きい。
【0017】
基本放射および第2高調波放射は、光学的非線形結晶から同軸上で伝播し、基本波長についての外部ブリュースター角でプリズム20の入力面24に入射する。基本放射は、入力面24を通ってプリズム20に入り、プリズムを通って透過させられる。基本放射は、基本放射についての内部ブリュースター角でプリズム20の出力面26に入射する。基本放射は、出力面26を通ってプリズムを出る。基本放射は、面24および面26の両方への入射の平面に平行に偏光される(p偏光)。よって、基本放射は、非常に低い反射損失を伴ってプリズムを通って完全に透過させられる。
【0018】
第2高調波放射は、入力面24への入射の平面に垂直に偏光され(s偏光)、破線30によって示されるように、いくらかの反射損失を伴ってプリズム内に透過させられる。複屈折プリズム20の内側で、第2高調波放射は、より高い屈折率を経験するので、基本放射より激しく屈折される。第2高調波放射は、第2高調波放射についての臨界角より大きい角度で出力面26に入射する。これは、出力面26からの第2高調波放射の全内反射を引き起こす。プリズムの出力面28は、好ましくは、第2高調波放射についての内部ブリュースター角で第2高調波放射が出力面28に入射するように傾けられる。第2高調波放射は、出力面28に対してp偏光され、無視できる損失を伴ってプリズムの外に透過される。第2高調波放射は、これにより、破線30によって示される反射損失のみを伴って共振器12の外に結合される。
【0019】
プリズム20の作用の詳細な説明は、図2Aおよび図2Bを参照して以下で述べられ、例示的な複屈折プリズムは、β-ホウ酸バリウム(BBO)で作製され、例示的な波長は、基本放射が426nmであり、第2高調波放射が213nmである。BBOでは、426nmでの異常光線の屈折率は、1.5650であり、213nmでの常光線の屈折率は、1.8284である。
【0020】
まず図2Aを参照すると、同軸基本放射「F」および第2高調波UV放射「2H」は、角度αでプリズム20の入力面24に入射する。結晶軸が描写されるように向けられることによって、直線偏光された基本放射は、複屈折プリズムのより小さい屈折率(n)を経験する。基本放射は、入力面24に対してp偏光されており、角度αは、57.42°であり、これは、426nm放射の異常光線についての外部ブリュースター角である。従って、基本放射は、無視できる損失を伴ってプリズム内に透過される。プリズム20内で、基本放射は、異常光線であり、プリズムのb軸に平行に伝播する。基本放射は、角度βで出力面26に入射する。角度βは、32.58°であり、これは、426nm放射の異常光線についての内部ブリュースター角である。よって、基本放射も、無視できる損失を伴って出力面26を通って透過される。
【0021】
第2高調波放射は、入力面24に対してs偏光され、複屈折プリズムのより高い屈折率(n)に遭遇する。従って、第2高調波放射の一部は、破線30によって示されるように、入力面24から反射される。本例では、第2高調波放射の約25%が反射され、約75%が透過される。プリズム20内で、第2高調波放射の透過された部分は、常光線である。入力面24において、第2高調波放射は、基本放射より強く屈折される。これは、より高い屈折率(n>n)に起因して、より短い213nmの波長に起因する分光によって拡張される。このより強い屈折によって、第2高調波放射は、37.72°の角度γでプリズム20の出力面26に入射し、この角度γは、213nm放射の常光線の全内反射についての33.16°の臨界角より大きい。よって、第2高調波放射は、全内反射を経験し、それによって、プリズムの出力面28に向けて第2高調波放射を光線経路32に沿って方向付ける。
【0022】
ここで図2Bを参照すると、プリズム20の角度θおよび角度φ、ならびにa軸に対する出力面28の傾角δは、第2高調波放射が常光線についての内部ブリュースター角で出力面28に入射するように選択される。第2高調波光線は、出力面28に対してp偏光され、無視できる損失を伴って出力面28を通りプリズムの外に透過される。透過された第2高調波光線は、常光線についての外部ブリュースター角ωで出力面28から出る。本例では、角度θは77.12°であり、角度φは37.72°である。角度δは28.68°であり、角度ωは61.32°である。第2高調波放射が出力面28に入射する場所34が、基準として点で示される。
【0023】
本発明の重要な原理は、光コーティングの使用を回避しつつプリズムを通過中の基本放射における反射損失を、完全に除去するわけではないが、最小化することであることを留意されたい。そのようなコーティングは、第2高調波UV放射との相互作用を通じて最終的に劣化し、初めでさえ100%未満の効率であり得る。図1の共振器12は、基本放射の強い共振増強を提供し、従って、効率的な第2高調波変換を提供するために、非常に高いQ値の共振器である。0.1%未満の全内損失を有する低損失共振器を想定すると、共振器の出力結合は、約1%の変換効率で主に第2高調波放射への変換を経る。例として、コーティングによって引き起こされる基本放射についての1%程度の追加の損失は、空洞内循環電力を約50%まで低減し得る。この追加の損失は、生成される第2高調波放射を75%も低減し得、これは、プリズム20の入力面24における第2高調波放射の反射損失より顕著に大きい。
【0024】
上の説明では、基本放射は、プリズムのb軸に平行に伝播し、プリズムのc軸に平行な偏光の向きを有する。基本放射と第2高調波放射とは、a軸について回転させられた結晶軸を有する代替となる配置においても分離され得、それによって、基本放射は、b軸に対してある角度で伝播する。しかし、基本放射が最も低い屈折率(n)を経験し、それによって基本放射と第2高調波放射との角度分離(γ-β)を最大化するので、本明細書中で説明され描写される配置が好ましい。
【0025】
上の説明では、プリズム20は、負の一軸性複屈折材料で作製される。図3は、正の一軸性複屈折材料で作製された代替となるコーティングされていない複屈折アウトカップリングプリズム40を概略的に図示し、常光線についての屈折率は、異常光線についての屈折率より小さい(n<n)。例として、バナジン酸塩(VO)は、高い光学品質で商業的に利用可能である正の一軸性複屈折材料である。プリズム40は、結晶軸が再配向されることを除いて図2Aのプリズム20と同様である。c軸について回転された結晶軸を有するプリズム40の代替となる配置において、基本放射と第2高調波放射とが、同様に分離される。上で議論されるように、結晶面の相対的向きおよび結晶面への入射の角度は、屈折率に依存し、屈折率は、選択された複屈折材料固有である。
【0026】
本発明は、好ましい実施形態、および426nm放射を213nm放射に変換する場合のその実施形態の特定の数値の例を参照して上で説明される。当業者は、本明細書中で提供される本発明の説明から、本発明の意図および範囲から逸脱せずに、本発明の他の実施形態および例を発明し得る。当業者は、本発明が受動的リング共振器における使用に限定されず、光ゲイン媒質を有する共振器に統合され得、かつ/または直線共振器に統合され得ることも認識するであろう。例として、本発明は、能動的共振器において用いられ得、この場合、プラセオジムをドープされたフッ化イットリウムリチウム(Pr:YLF)のゲイン媒質が、約522nmの波長を有する基本放射を生成し、約522nmの波長は、光学的非線形結晶における第2高調波生成によって約261nmの波長を有する第2高調波UV放射に変換される。
【0027】
本発明の利点は、第2高調波UV放射のみがプリズムの出力面28に入射することである。本発明は、非常に少ない反射損失を伴う第2高調波光線の透過について角度δだけ傾けられるコーティングされていない出力面28を有することを描写および説明されるが、出力面は、代わりに、直角入射(δが0°)のために構成され、反射防止コーティングを有し得る。複数の波長に特有のダイクロイック光コーティングより、1つの波長のみに特有の損傷抵抗薄膜光コーティングを製作することの方が、概して簡単である。コーティングされた出力面が、他の便宜な入射角のために構成され得る。例として、プリズムの全体形状は、二等辺三角形であり得、等しい長さを有するコーティングされていない基本的な入力面および出力面は、基本光線のためであり、反射防止コーティングされた出力面は、第2高調波UV放射のためである。
【0028】
まとめると、本発明は、好ましい実施形態および他の実施形態を参照して上で説明される。しかし、本発明は、本明細書中で説明および描写される実施形態によって限定されない。むしろ、本発明は、本明細書に添付される請求項によってのみ限定される。
図1
図2A
図2B
図3