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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】軸受振れ改善のためのころ順番付け
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/36 20060101AFI20230420BHJP
   F16C 33/34 20060101ALI20230420BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20230420BHJP
   F16C 33/32 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
F16C19/36
F16C33/34
F16C19/06
F16C33/32
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021537153
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020028935
(87)【国際公開番号】W WO2020219374
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-08-21
(31)【優先権主張番号】62/837,419
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595016783
【氏名又は名称】ザ・ティムケン・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE TIMKEN COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100147511
【弁理士】
【氏名又は名称】北来 亘
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマー,マシュー ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ファウスト,カール イー.
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-533436(JP,A)
【文献】特表2013-525711(JP,A)
【文献】特開平2-168016(JP,A)
【文献】特開昭61-215480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/36,19/06,33/34,33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受において、
前記軸受の360度円周範囲を周って間隔を空けて配置された複数の転動要素と、
前記転動要素を転動させる内軌道を画定している内輪部材と、
前記転動要素を転動させる外軌道を画定している外輪部材と、
最大直径を有する転動要素が配置される場所によって画定された高点と、
最小直径を有する転動要素が配置される場所によって画定された低点とを備えており、
前記高点が前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に配置されており、
前記低点が前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に配置されており、
前記高点の数は前記低点の数と同じであり、その数が奇数非単数又は2より大きい偶数であり
各低点は2つの隣接する高点の間に配置されており、
前記複数の転動要素のうちの高点と低点の間に配置された転動要素は、前記高点から前記低点に向かう方向に直径が減少しており、
前記軸受は、1つの転動要素列の高点及び低点を、隣接する転動要素列内の高点及び低点と整列させるケージを有する多列軸受組立体である、軸受。
【請求項2】
前記奇数非単数の高点及び前記奇数非単数の低点は3つである、請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
前記軸受内の転動要素の合計数に依存して、各高点は隣接する高点から可能な限り120度に近い間隔を空けて配置されている、請求項2に記載の軸受。
【請求項4】
前記軸受内の転動要素の合計数に依存して、各低点は隣接する高点から可能な限り60度に近い間隔を空けて配置されている、請求項3に記載の軸受。
【請求項5】
前記高点はすべて、前記軸受内の前記転動要素の最大測定直径である同じ直径を有する転動要素によって画定されている、請求項1に記載の軸受。
【請求項6】
前記低点はすべて、前記軸受内の前記転動要素の最小測定直径である同じ直径を有する転動要素によって画定されている、請求項1に記載の軸受。
【請求項7】
前記高点は異なる直径を有する転動要素によって画定されている、請求項1に記載の軸受。
【請求項8】
前記低点は異なる直径を有する転動要素によって画定されている、請求項1に記載の軸受。
【請求項9】
前記軸受は、玉軸受、アンギュラ接触玉軸受、球面軸受、円筒ころ軸受、四点玉軸受、円すい二重外軌道輪軸受、円すい二重内軌道輪軸受、及び深溝玉軸受のうちの1つである、請求項1に記載の軸受。
【請求項10】
前記転動要素は、すべての転動要素が前記軸受の前記内軌道及び前記外軌道と接触するように予荷重がかけられている、請求項1に記載の軸受。
【請求項11】
交差ころ軸受において、当該交差ころ軸受は、
前記軸受の360度円周範囲を周って間隔を空けて配置された複数のころであって、隣接するころのそれぞれの軸が互いに概して垂直になるように隣接するころが交差されている、複数のころと、
第1の内輪部材であって、前記複数のころを転動させる第1の内輪部材の軌道を画定している第1の内輪部材と、
第2の内輪部材であって、前記複数のころを転動させる第2の内輪部材の軌道を画定している第2の内輪部材と、
前記複数のころを転動させる外軌道を画定している外輪部材と、
最大直径を有する複数のころが配置される場所によって画定された高点であって、各高点は、一対の隣接するころによって画定されており、前記一対の隣接するころの内の一のころが第1の内輪部材に乗り、前記一対の隣接するころの内の他のころが第2の内輪部材に乗る、高点と、
最小直径を有する複数のころが配置される場所によって画定された低点と、
各隣接するころの間に複数のスペーサのうちの1つのスペーサが配置されている、複数のスペーサとを備えており
前記高点が前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に配置されており、
前記低点が前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に配置されており、
前記高点の数は前記低点の数と同じであり、その数が奇数非単数又は2より大きい偶数であり
各低点は2つの隣接する高点の間に配置されており、
前記複数のころのうちの高点と低点の間に配置されたころは、前記高点から前記低点に向かう方向に直径が減少している、交差ころ軸受。
【請求項12】
前記軸受にはケージが存在していない、請求項11に記載の交差ころ軸受。
【請求項13】
各ころは、当該ころを前記外輪部材に向かって付勢する尖端部を小径端に隣接して含んでいる、請求項11に記載の交差ころ軸受。
【請求項14】
前記奇数非単数の高点及び前記奇数非単数の低点は3つである、請求項11に記載の交差ころ軸受。
【請求項15】
前記奇数非単数の高点及び前記奇数非単数の低点は5つである、請求項11に記載の交差ころ軸受。
【請求項16】
内軌道は、前記第1の内輪部材の軌道及び前記第2の内輪部材の軌道を備えており、前記ころは、すべてのころが前記軸受の前記内軌道及び前記外軌道と接触するように予荷重がかけられている、請求項11に記載の交差ころ軸受。
【請求項17】
前記ころは、円すいころ、又は、円筒ころである、請求項11に記載の交差ころ軸受。
【請求項18】
2より大きい前記偶数の高点及び前記偶数の低点の数は4である、請求項11に記載の交差ころ軸受。
【請求項19】
前記偶数の高点及び前記偶数の低点の数は4である、請求項1に記載の軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2019年4月23日出願の米国仮特許出願第62/837,419号の恩典を主張し、その内容全体をこれにより参考文献として本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、転動要素軸受に、より具体的には交差ころ精密軸受に関する。
【背景技術】
【0003】
機械工具及び他の精密用途は、低い誤差運動及び振れを満たすために精密な振れ特性を有する軸受を必要とするのが典型的である。所要の誤差運動及び振れを実現するには、往々にして軸受構成部品すべてのサイズ公差を厳格化することが必要になる。その様な公差最小化は費用が掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国仮特許出願第62/837,419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製造された状態のころを順番付けること(sequencing)によって組立体の誤差運動及び振れを低減した軸受を実現する。ころに多少のサイズ変差があっても、創意に富んだ順番付けによって振れを最小化する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、発明は、軸受の360度円周範囲を周って間隔を空けて配置された複数の転動要素を含む軸受を提供している。奇数非単数の高点が軸受の円周範囲を周って可能な限り均等に近く(as near to evenly as possible)配置され、高点は最大直径を有する転動要素が配置される場所によって画定されている。奇数非単数の低点が軸受の円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置され、低点は最小直径を有する転動要素が配置される場所によって画定されている。奇数非単数の高点の数は奇数非単数の低点の数と同じであり、各低点は2つの隣接する高点の間に可能な限り均等に近く配置されている。複数の転動要素のうちの高点と低点の間に配置された転動要素は、高点から低点に向かう方向に直径が減少している。
【0007】
発明の別の態様は、軸受の360度円周範囲を周って複数の転動要素を順番付ける方法を提供している。方法は、軸受を周って可能な限り均等に近く間隔を空けて配置される奇数非単数の高点を作成する工程であって、高点は最大直径を有する転動要素が配置される場所によって画定される、高点を作成する工程と;軸受を周って可能な限り均等に近く間隔を空けて配置される同じ奇数非単数の低点を作成する工程であって、各低点は隣接する高点の間に可能な限り均等に間隔を空けて配置され、低点は最小直径を有する転動要素が配置される場所によって画定される、低点を作成する工程と;高点から低点に向かう方向に転動要素の直径が減少してゆくように高点と低点の間に残りのころを順番付ける工程と、を含んでいる。
【0008】
別の態様では、発明は、軸受の360度円周範囲を周って間隔を空けて配置された複数の円すいころを含む交差ころ軸受を提供している。隣接する円すいころのそれぞれの軸が互いに概して垂直になるように、隣接する円すいころは交差されている。複数のスペーサが提供されていて、各隣接する円すいころの間に複数のスペーサのうちの1つのスペーサが配置されている。奇数非単数の高点が軸受の円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置され、高点は最大直径を有する円すいころが配置される場所によって画定されている。少なくとも1つの低点が2つの隣接する高点の間に可能な限り均等に近く配置され、低点は最小直径を有する円すいころが配置される場所によって画定されている。複数の円すいころのうちの高点と低点の間に配置された円すいころは、高点から低点に向かう方向に直径が減少している。
【0009】
更に別の態様では、発明は、軸受の360度円周範囲を周って間隔を空けて配置された複数の転動要素を含む軸受を提供している。2より大きい偶数の高点が軸受の円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置され、高点は最大直径を有する転動要素が配置される場所によって画定されている。2より大きい偶数の低点が軸受の円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置され、低点は最小直径を有する転動要素が配置される場所によって画定されている。高点の数は低点の数と同じであり、各低点は2つの隣接する高点の間に可能な限り均等に近く配置されている。複数の転動要素のうちの高点と低点の間に配置された転動要素は高点から低点に向かう方向に直径が減少している。
【0010】
発明の他の態様は、詳細な説明及び添付図面を考察することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を具現化している交差ころ精密軸受の斜視図であり、部分的に分解して示されている。
図2図1の組立済み軸受の部分断面図である。
図3図1の軸受のころ順番付けの模式説明図である。
図4図1のころ順番付けを説明している、内輪及び外輪の一部が除去された部分組立図である。
図5】発明を具現化している或る代わりのころ順番付け配置の模式説明図である。
図6】本発明を具現化している二列球面ころ軸受の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の幾つかの実施形態を詳細に解説する前に理解しておくべきこととして、発明はその適用において、以下の説明に述べられ又は以下の図面に描かれる構築の詳細事項及び構成要素の配置に限定されない。発明は他の実施形態の余地があり、発明は様々なやり方で及び他の転動要素軸受型式と共に実践され又は実施されることができる。
【0013】
図1及び図2は、本発明による転動要素軸受10を描いている。描かれている軸受10は精密機械工具内に使用される型式の交差ころ軸受である。1つの例が、オハイオ州ノース・カントンのザ・ティムケン・カンパニー社から入手可能なTimken型TXRDO軸受である。その様な軸受10は、回転式機械工具での高い精度を実現するために、低い組立体の振れを有することが要求される。当然ながら、発明は他の型式の軸受にも適用することができる。
【0014】
描かれている軸受10は、第1の内輪14及び第2の内輪18と、外輪22とを含んでいる。輪14、18、及び22は、転動要素(例えば、円錐ころ)26を転動させるそれぞれの軌道を画定している。隣接するころ26は交差されており、つまりそれらの回転軸は図示の様に互いに概して垂直であることを意味する。隣接するころ26は、更に、ポリマー(例えば、ナイロン)部材であってもよいスペーサ30によって互いから分離されている。これらの交差ころ軸受はケージを含んでいないが、代わりに、別個の独立したスペーサ30を利用している。各ころ26は、ころ26を外輪22に対して付勢するために小径端上に配置された尖端部(nib)34を更に含んでいる。尖端部34もまたポリマー部材である。
【0015】
軸受10のためのころ26はバッチ式に製造される。ころの例えば外径などの寸法的均一性を実現するための努力にもかかわらず、製造差異が必然的にころ間にいくらかの不一致又は差異をもたらす。本発明は、ころ寸法のこの差異を認識し、それを軸受10の設計及び組立プロセスへ組み入れている。
【0016】
例示としての軸受10は、34個のころ26を含んでいてもよい。交差ころ軸受は、典型的には偶数個のころを有している。製造されたら、34個のころ26のそれぞれが1つ又はそれ以上の限界寸法について測定される。例えば、描かれている円すいころ26の場合、ころ26の大端の直径又は各ころ26の最大値直径が測定されてもよい。ころの小端の直径並びにころの長さに沿った中点の直径(即ち平均直径)を測定するのも一般的である。概して、サイズ変差は、直径がどこで測定されるかにかかわらず、ころ間で一貫しているはずであり、したがって本発明の方法では3つの場所のいずれが測定に使用されてもよいと理解している。どの測定値(例えば、大端、小端、中点)が使用されるかにかかわらず、最大直径を有するころには1のサイズ係数を割り当てることができる。より小さい直径(製造差異に起因)を有するころには、最大値測定直径より下の増分的差異に応じて1より小さいサイズ係数を割り当てることができる。ゆえに、次に大きい直径を有するころには0.9のサイズ係数を割り当てることができ、その次に大きい直径を有するころには0.8のサイズ係数を割り当てることができ、以下同様に割り当てることができる。当然ながら、様々な他の分類命名法が代用されてもよいだろう(例えば、n、n-1、n-2...、など)。
【0017】
ころ26すべてが測定され分類されたら、軸受10内のころ26の順番付けを決定することができる。描かれている実施形態では、順番付けは、1より大きい奇数(例えば、3、5、7、など)の高点又は最大値直径/利用可能最大直径ころ場所を軸受10の360度周りに提供することに基づく。非単数奇数のこれら高点を有することによって、軸受10の輪間の揺動又は角度誤差アラインメントは最小限に抑えられる。図3の模式説明図を参照すると、3つの高点が作成され、これら3つの高点は軸受10を周って可能な限り同等に近く(例えば、約120度隔てて)配置されている。ころの数が3の倍数でなければ、厳密に120度隔てるのは不可能なので、実際の角度は多少逸脱するが、特定の軸受10、ころ26、及びスペーサ30が使用されることを前提とすれば、可能な限り120度に近く、ということになるだろう。例えば、任意の2つの高点間の間隔は110度から130度の範囲であり得る。同様に、軸受が5つの高点を含んでいるなら、隣接する高点は可能な限り72度に近く、62度から82度の範囲であり得る。本明細書及び付随の特許請求の範囲での使用に際し、「可能な限り均等に近く(as near to evenly as possible)」又は同様の語句は、軸受内に使用される特定のころ数、スペーサ30、及び/又は軸受内に使用される予定のころのバッチ内で起こり得るころサイジングの差異に起因する、純粋に等しい間隔とは異なる角度的配置を受容することを意図している。これについては以下の実施例に関連して更に明確にし、解説してゆく。
【0018】
ころ26は、仮にサイズ係数1を有する3個のころがあるとして、それら3個のころが互いから可能な限り120度に近く隔たって配置されるように、輪14、18、22内に順番に配置される。最小のサイズ係数を有する3個(又はそれ以上)のころもまた互いから可能な限り120度に近く隔たって配置され、それによって3つの低点又は最小値直径/利用可能最小直径ころ場所が作成される。これら3つの低点は、最大ころによって作成される高点から可能な限り60度に近い角度オフセットにある。図3は、3つの高点と3つの低点を実現するための最大直径ころと最小直径ころのこの配置を模式的に描いている。
【0019】
次いで、残りのころ26が、最大ころのうちの1つと隣接する最小ころとの間に配置されたときにサイズが最大から最小へ減少するように最大ころと最小ころの間に順番に配置される。これは図3の外側の線38によって図式的に描かれている。
【0020】
下表1は、平均ころ直径に基づいてころ位置が決定される1つの例示として順番列を描いている。
【0021】
【表1】
【0022】
34個のころが、1(最大)、0.9、0.8、0.7、0.6、及び0.5(最小)の6通りのサイズ係数へ内訳されている。なんとこの34個のころのバッチにはサイズ係数1のころが6個あることに注目されたい。これらは6個の最大ころである。したがって、これらの最大ころのうちの2個はころ番号1と34を割り当てられ、対内で隣同士に配置され、最大ころの3つの対が互いから可能な限り120度に近い間隔を空けて配置される(ころ番号1、34;ころ番号12、13;及びころ番号23、24、並びにそれらの関連付けられた角度的位置を参照)。ころ1ところ12の間隔は116.47度、ころ12ところ24の間隔は127.06度、ころ24ところ1の間隔は116.47度であることに注目されたい。したがって、ころの数、ころそれぞれのサイズ変差、及びスペーサ30を所与として、如何に3つの高点のそれぞれを画定しているころの対が互いから概して約120度隔てられ、軸受の周囲を周って可能な限り均等に間隔を空けて配置されるかが分かる。この創意に富んだ順番付けを実施する軸受設計の当業者なら、ころの数と測定がなされた後に決定されるサイズ係数分類とに基づいて、任意の特定の軸受のための高点と低点の適切な「可能な限り均等に近い」間隔を決定することができるであろう。各高点を画定している1つのころの場所に基づいて配置を決定することの代わりに、別の考えられる方法は、各高点の中心(各高点を画定する2個又は3個のころの間の中点)を可能な限り120度に近く隔てて配置するというものであろう。
【0023】
高点が一対のころによって画定されている場合、対になった高点ころは、隣接するころが交差されている(即ちそれらの軸は概して互いに垂直である)ので交互の軌道輪に乗る。この配置の場合、半径方向及び軸方向の振れは共に低減される。ゆえに、隣接するころの対を使用して高点を作成することが可能な場合、交差ころ軸受では改善された振れ低減化が実現され得る。
【0024】
なんとこの34個のころのバッチにはサイズ係数0.5のころが4個あることにも注目されたい。これらは4個の最小ころである。ころ番号6と7は対内で隣同士に配置されるのに対し、2個の残りの最小ころにはころ番号18と29が割り当てられ、可能な限り120度に近い間隔を空けて配置される。これらの最小ころは最も近接する最大ころから可能な限り60度に近い間隔を空けて配置される。この場合も同じく、上述の様に、ころの数、サイズ変差、などに基づく同じ考慮事項が適用される。
【0025】
サイズ係数0.9、0.8、0.7、及び0.6を割り当てられている残りのころは、最大ころから最小ころに向かってサイズが減少するように表中に示されている様に配置される。図4は、ころ番号1~4を有する組立済みの軸受10の一部分を描いている。この場合も同じく、偶数のころ数に因り、また任意のころのバッチについての特定のサイズ係数の内訳に因り、最大ころと隣接する最小ころとの間のころ数は必ずしも同じであるとは限らないだろう。
【0026】
最高度の精度のために、図1及び図2に示されている様に、すべてのころは軸受の基準組立時点及び動作時に軸受軌道輪に対し予荷重をかけられている。大きいころは小さいころよりわずかに高い予荷重を有するが、すべてのころが継続的に内軌道及び外軌道と接触にある。記載の順番付けでのころサイズの漸進的遷移は、隣接するころとのより均一な接触圧力を提供し、軸受組立体の動的安定性を高める。
【0027】
発明はしたがって、(1)軸受を周って可能な限り均等に近い間隔を空けて配置される奇数非単数の高点又はノードを作成し、(2)軸受周りに可能な限り均等に近い間隔を空けて配置される同じ奇数の低点又はノードを、各低点が隣接する高点間で可能な限り均等に間隔を空けて配置されるようにして作成し、(3)高点から低点に向かう方向に直径が増分的に小さくなってゆくように残りのころを高点と低点の間に順番付ける、という方法を含んでいる。
【0028】
軸受10がその場で及び/又はエンドユーザーによって組み立てられるように分解状態で提供される限りにおいては、ころ26は明瞭に番号を付され、軸受10の最小化された組立体振れが実現されるのを確約するべく適正な順番でころを設置するための説明書とともに分解状態の軸受が包装されるようにしてもよい。例えば、ころ26は、表1に載せられているころの場合がそうであるように、番号順に設置されるように順に番号を付されてもよいだろう。代わりに、ころが測定された際に番号を付される場合には、軸受内で各ころ番号がどこに位置するべきかのチャート又はリストが提供されてもよい。
【0029】
発明は、ころ順番付けにおける、各軸受のために提供される特定のころのバッチによって決定づけられるところの他の変化型も企図している。例えば、いくつかの実施形態では、奇数非単数の高点が上記と同じやり方で作成されてもよい。ただし、最小直径のころの数が高点の数と一致しないことも考えられ、したがって真の最低点の数が、技術的には、1つか、2つか、又は高点の数より小さく高点の数と同じでない何か他の数となることもあり得る。
【0030】
例えば、1つの実施形態では、軸受に使用される予定のころのバッチを測定すると最小直径のころが1つしかないということもあるだろう。その場合、最小直径のころは、2つの隣接する高点の間に可能な限り均等に間隔を空けて配置させることができる。当該の単一の最小ころが技術的には軸受上に単一の低点を画定することになるが、残りのころの順番付けについては上述の同じ概念が使用されることになる。3つの高点が存在し、単一の最小ころが2つの隣接する高点の間に可能な限り均等に間隔を空けて配置された場合、次に小さい直径のころを2つの異なる隣接する高点の間に可能な限り均等に間隔を空けて配置させ、次に小さい直径の別のころを最後の2つの異なる隣接する高点の間に可能な限り均等に間隔を空けて配置させればよいだろう。図3を参照して、この実施例では、最小単一ころによって画定される低点は、小#1とラベル表示されてもよいだろう。小#2及び小#3とラベル表示されるころは、最小直径のころよりもわずかに大きなころであるとはいえ、次に小さい直径のころであることに変わりはなく、ころの順番付けは表1に基づく実施形態に関連した上述の同じパターンに従う。つまり、3つの高点が図3に示すように間隔を空けて配置された状態で、ころは図3に模式的に表されている大→小→大の繰り返される順番で配列されるのである。
【0031】
同じ状況は、ころのバッチ内に最大直径のころが1つしか存在しない場合に起こるだろう。その場合、技術的には単一の最高点しかないということになるが、次に大きなころが所望の合計数の高点を作成するのに使用されることになるだろう。したがって、高点という用語は、最大直径のころによって決定される軸受上の最高点を含み、尚且つ、ころのバッチ内には所望数の高点を作成するのに利用できる最大直径のころが足りないのであるから最大直径に次ぐ直径であるころが使用される場所も含み得るものと理解されたい。同様に、低点という用語は、最小直径のころによって決定される軸受上の最低点を含み、尚且つ、ころのバッチ内には所望数の低点を作成するのに利用できる最小直径のころが足りないのであるから最小直径に次ぐ直径であるころが使用される場所も含み得るものと理解されたい。
【0032】
したがって当業者には理解されるように、ころの各バッチについて、完全に一致した数の高点と低点を実現するべく、所望数の相等しい高点又は所望数の相等しい低点を有することは実施可能でないこともあり得る。しかしながら、軸受を周って可能な限り均等に間隔を空けて配置される奇数非単数の高点を作成し、そして、最小ころを低点として高点間に可能な限り均等に間隔を空けて配置させ、残りのころが高点からそれら低点に向けてサイズが減少してゆくようにして、それら高点の間に残りのころを順番付ける、という発明概念は、組立体の振れを低減させることが判明した創意に富む概念である。
【0033】
また、本明細書及び付随の特許請求の範囲での使用に際し、隣接する高点と低点の間に配置されるころに言及するときの、高点から低点に向かう方向に直径が減少するという語句は、高点と低点の間の2つの隣接するころが同じ直径であり得る状況も想定している。この場合、順番列(即ち、1つのころから次のころ)内のすべてのころには直径の減少がないということもある。ただし、高点から隣接する低点への傾向は、直径の増加を差し挟まない直径の減少である。
【0034】
高点と低点は互いから大凡180度に配置されるのが理想的である。奇数非単数の順番列が最適ではあるが、2より大きい高点の偶数順番列(例えば4、6、8、など)を使用しても、360度円周を周って均等に高点を分配し高点の間に均等に低点を配置させるようにそれらが適正に互いから隔てて順番付けられるなら、誤差動作及び振れの低減化にある程度の恩恵をもたらすだろう。図5は、4つの高点と4つの低点を有する1つのその様な配置を模式的に描いている。図5に示されている配置では、発明概念は、軸受を周って可能な限り均等に間隔を空けて配置される2より大きい偶数の高点を作成すること、及び、最小ころを低点として高点間に可能な限り均等に間隔を空けて配置させ、残りのころが高点からそれら低点に向けてサイズが減少してゆくようにして、それら高点の間に残りのころを順番付けること、を含んでいる。
【0035】
円周を周るころの順番付けを交差ころ軸受について説明してきた。他の軸受型式も同じく、この型式の順番付けから恩恵を受けることができる。例えば、TS(円すい単列)軸受の様な単列軸受が改善された振れ特性を必要とするなら、同様のやり方でころを順番付ければよい。このことは同じく、玉軸受、アンギュラ接触玉軸受、球面軸受、円筒ころ軸受の様な他の軸受型式にも適用できる。同様のやり方で順番付けられた他の軸受組合せも改善された振れを有することができる。これらには、円すい交差ころ軸受、円筒交差ころ軸受、四点玉軸受、円すい二重外軌道輪軸受(taper double outer race bearing)、円すい二重内軌道輪軸受(taper double inner race bearing)、及び深溝玉軸受が含められるだろう。これらの型式の軸受では、各軸受列は前述の様に順番付けられたころを有する。
【0036】
多列(例えば二列)軸受配置が振れ低減化を必要とするなら、各列の周りのころを、上記の様に順番付け、図6に示されている様に1つの列の高点及び低点を隣接する(単数又は複数の)列の高点及び低点と整列に保つようケージ42によって保持させればよい。
【0037】
発明の様々な特徴は付随の特許請求の範囲に示されている。
本願発明の実施形態は、例えば、以下の通りである。
[実施形態1]
軸受であって、
前記軸受の360度円周範囲を周って間隔を空けて配置された複数の転動要素と、
前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置された奇数非単数の高点であって、最大直径を有する転動要素が配置される場所によって画定されている高点と、
前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置された奇数非単数の低点であって、最小直径を有する転動要素が配置される場所によって画定されている低点と、を備える軸受において、
前記奇数非単数の高点の数は前記奇数非単数の低点の数と同じであり、
各低点は2つの隣接する高点の間に可能な限り均等に近く配置されており、
前記複数の転動要素のうちの高点と低点の間に配置された転動要素は、前記高点から前記低点に向かう方向に直径が減少している、軸受。
[実施形態2]
前記奇数非単数の高点及び前記奇数非単数の低点は3つである、実施形態1に記載の軸受。
[実施形態3]
前記軸受内の転動要素の合計数に依存して、各高点は隣接する高点から可能な限り120度に近い間隔を空けて配置されている、実施形態2に記載の軸受。
[実施形態4]
前記軸受内の転動要素の合計数に依存して、各低点は隣接する高点から可能な限り60度に近い間隔を空けて配置されている、実施形態3に記載の軸受。
[実施形態5]
前記軸受は交差ころ軸受であり、前記転動要素は円すいころである、実施形態1に記載の軸受。
[実施形態6]
前記軸受は複数のスペーサを更に備え、各隣接するころの間に前記複数のスペーサのうちの1つのスペーサが配置されている、実施形態5に記載の軸受。
[実施形態7]
前記軸受にはケージが存在していない、実施形態5に記載の軸受。
[実施形態8]
前記軸受は2つの内輪と1つの外輪を含んでいる、実施形態5に記載の軸受。
[実施形態9]
各ころは、当該ころを前記外輪に向かって付勢する尖端部(nib)を小径端に隣接して含んでいる、実施形態8に記載の軸受。
[実施形態10]
前記高点はすべて、前記軸受内の前記転動要素の最大測定直径である同じ直径を有する転動要素によって画定されている、実施形態1に記載の軸受。
[実施形態11]
前記低点はすべて、前記軸受内の前記転動要素の最小測定直径である同じ直径を有する転動要素によって画定されている、実施形態1に記載の軸受。
[実施形態12]
前記高点は異なる直径を有する転動要素によって画定されている、実施形態1に記載の軸受。
[実施形態13]
前記低点は異なる直径を有する転動要素によって画定されている、実施形態1に記載の軸受。
[実施形態14]
前記軸受は、玉軸受、アンギュラ接触玉軸受、球面軸受、円筒ころ軸受、円すい交差ころ軸受、円筒交差ころ軸受、四点玉軸受、円すい二重外軌道輪軸受(taper double outer race bearing)、円すい二重内軌道輪軸受(taper double inner race bearing)、及び深溝玉軸受のうちの1つである、実施形態1に記載の軸受。
[実施形態15]
前記軸受は、1つの転動要素列の前記高点及び前記低点を、隣接する転動要素列内の前記高点及び前記低点と整列させるケージを有する多列軸受組立体である、実施形態1に記載の軸受。
[実施形態16]
前記転動要素は、すべての転動要素が前記軸受の内軌道及び外軌道と接触するように予荷重がかけられている、実施形態1に記載の軸受。
[実施形態17]
軸受の360度円周範囲を周って複数の転動要素を順番付ける方法であって、当該方法は、
前記軸受を周って可能な限り均等に近く間隔を空けて配置される奇数非単数の高点を作成する工程であって、前記高点は最大直径を有する転動要素が配置される場所によって画定される、高点を作成する工程と;
前記軸受を周って可能な限り均等に近く間隔を空けて配置される同じ奇数非単数の低点を作成する工程であって、各低点は隣接する高点の間に可能な限り均等に間隔を空けて配置され、前記低点は最小直径を有する転動要素が配置される場所によって画定される、低点を作成する工程と;
高点から低点に向かう方向に前記転動要素の直径が減少してゆくように前記高点と前記低点の間に残りのころを順番付ける工程と、を備えている、方法。
[実施形態18]
前記奇数非単数の高点及び前記奇数非単数の低点は3つである、実施形態17に記載の方法。
[実施形態19]
前記軸受内のころの合計数に依存して、各高点は隣接する高点から可能な限り120度に近い間隔を空けて配置される、実施形態18に記載の方法。
[実施形態20]
前記軸受内のころの合計数に依存して、各低点は隣接する高点から可能な限り60度に近い間隔を空けて配置される、実施形態17に記載の方法。
[実施形態21]
前記転動要素に番号を付す工程と、前記転動要素を前記軸受の中へ適正に設置するための設置説明書を提供する工程と、を更に備えている実施形態17に記載の方法。
[実施形態22]
前記高点はすべて、前記軸受内の前記転動要素の最大測定直径である同じ直径を有する転動要素によって画定される、実施形態17に記載の方法。
[実施形態23]
前記低点はすべて、前記軸受内の前記転動要素の最小測定直径である同じ直径を有する転動要素によって画定される、実施形態17に記載の方法。
[実施形態24]
前記高点は異なる直径を有する転動要素によって画定される、実施形態17に記載の方法。
[実施形態25]
前記低点は異なる直径を有する転動要素によって画定される、実施形態17に記載の方法。
[実施形態26]
前記軸受は多列軸受組立体であり、前記方法は、1つの転動要素列の前記高点及び前記低点を、隣接する転動要素列内の前記高点及び前記低点と整列させるケージを提供する工程を含んでいる、実施形態17に記載の方法。
[実施形態27]
すべての転動要素が前記軸受の内軌道及び外軌道と接触するように、前記転動要素を予荷重がかけられた状態に置く工程、を更に備えている実施形態17に記載の方法。
[実施形態28]
交差ころ軸受であって、当該交差ころ軸受は、
前記軸受の360度円周範囲を周って間隔を空けて配置された複数の円すいころであって、隣接する円すいころのそれぞれの軸が互いに概して垂直になるように隣接する円すいころが交差されている、複数の円すいころと、
複数のスペーサであって、各隣接する円すいころの間に当該複数のスペーサのうちの1つのスペーサが配置されている、複数のスペーサと、
前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置された奇数非単数の高点であって、最大直径を有する円すいころが配置される場所によって画定されている高点と、
前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置された奇数非単数の低点であって、最小直径を有する円すいころが配置される場所によって画定されている低点と、を備えている、交差ころ軸受において、
前記奇数非単数の高点の数は前記奇数非単数の低点の数と同じであり、
各低点は2つの隣接する高点の間に可能な限り均等に近く配置されており、
前記複数の円すいころのうちの高点と低点の間に配置された円すいころは、前記高点から前記低点に向かう方向に直径が減少している、交差ころ軸受。
[実施形態29]
前記軸受にはケージが存在していない、実施形態28に記載の交差ころ軸受。
[実施形態30]
前記軸受は2つの内輪と1つの外輪を含んでいる、実施形態28に記載の交差ころ軸受。
[実施形態31]
各円すいころは、当該ころを前記外輪に向かって付勢する尖端部(nib)を小径端に隣接して含んでいる、実施形態30に記載の交差ころ軸受。
[実施形態32]
前記奇数非単数の高点及び前記奇数非単数の低点は3つである、実施形態28に記載の交差ころ軸受。
[実施形態33]
前記奇数非単数の高点及び前記奇数非単数の低点は5つである、実施形態28に記載の交差ころ軸受。
[実施形態34]
前記円すいころは、すべてのころが前記軸受の内軌道及び外軌道と接触するように予荷重がかけられている、実施形態28に記載の交差ころ軸受
[実施形態35]
軸受であって、
前記軸受の360度円周範囲を周って間隔を空けて配置された複数の転動要素と、
前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置された2より大きい偶数の高点であって、最大直径を有する転動要素が配置される場所によって画定されている高点と、
前記軸受の前記円周範囲を周って可能な限り均等に近く配置された2より大きい偶数の低点であって、最小直径を有する転動要素が配置される場所によって画定されている低点と、を備える軸受において、
前記偶数の高点の数は前記偶数の低点の数と同じであり、
各低点は2つの隣接する高点の間に可能な限り均等に近く配置されており、
前記複数の転動要素のうちの高点と低点の間に配置された転動要素は、前記高点から前記低点に向かう方向に直径が減少している、軸受。
[実施形態36]
前記高点の数及び前記低点の数は4である、実施形態35に記載の軸受。
[実施形態37]
前記転動要素は、すべての転動要素が前記軸受の内軌道及び外軌道と接触するように予荷重がかけられている、実施形態35に記載の軸受。
【符号の説明】
【0038】
10 転動要素軸受
14 第1の内輪
18 第2の内輪
22 外輪
26 転動要素、ころ
30 スペーサ
34 尖端部
38 ころ順番列のころ直径減少を描いた線
42 ケージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6