(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】部品実装機のバックアップピン自動配置システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
H05K13/04 P
(21)【出願番号】P 2021543920
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2019035225
(87)【国際公開番号】W WO2021044620
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】黒田 英矢
(72)【発明者】
【氏名】杉田 寛佳
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-014627(JP,A)
【文献】特開2008-211051(JP,A)
【文献】特許第6553709(JP,B2)
【文献】特許第5925666(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を実装する回路基板を下方から支えるためのバックアップピンを載置するバックアッププレートと、
前記回路基板に部品を実装する部品実装動作と前記バックアッププレート上に前記バックアップピンを自動配置するバックアップピン自動配置動作を行う
2つのXYロボットとを備え
た部品実装機のバックアップピン自動配置システムにおいて、
前記部品実装機は、前記2つのXYロボットが移動できる移動可能エリアが前記回路基板の搬送方向であるX方向に離れて位置して、前記2つのXYロボットの移動可能エリアの間に移動範囲外のエリアが存在し、前記移動可能エリアでのみ部品実装動作とバックアップピン自動配置動作が可能であり、前記移動範囲外のエリアを跨いだ位置で前記回路基板の搬送を停止させて前記2つのXYロボットで部品を当該回路基板に実装することが可能であり、
前記
2つのXYロボットは、前記バックアップピン自動配置動作を行う際に、
前記移動可能エリア内で前記バックアッププレートのうちの前記回路基板の下面と対向しない領域の少なくとも一部を前記バックアップピンを保管するストックエリアとして使用し、前記ストックエリアに保管されている前記バックアップピンをピックアップして前記バックアッププレートのうちの生産ジョブで指定された位置に自動配置する、部品実装機のバックアップピン自動配置システム
であって、
前記
2つのXYロボットは、前記バックアップピンの配置を変更する生産ジョブ切替え時に前記バックアッププレート上から取り除いた不要なバックアップピンを前記ストックエリアに退避させる空きスペースがない場合には、
前記移動可能エリア内で前記バックアッププレートのうちの前記回路基板の下面と対向する領域のうちの前記回路基板の下面側の実装済み部品と干渉しない領域の少なくとも一部を退避エリアとして使用し、前記ストックエリアに退避できない前記不要なバックアップピンを前記退避エリアに退避させる、部品実装機のバックアップピン自動配置システム。
【請求項2】
前記
2つのXYロボットの動作を制御する制御装置は、前記生産ジョブ切替え時に前記回路基板の下面側の実装済み部品に関する情報を取得し、前記バックアッププレート上から取り除いた不要なバックアップピンを前記ストックエリアに退避させる空きスペースがないか否かを判定し、前記空きスペースがない場合には前記不要なバックアップピンを前記退避エリアに退避させるように前記
2つのXYロボットの動作を制御する、請求項1に記載の部品実装機のバックアップピン自動配置システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記回路基板の下面側の実装済み部品に関する情報を前記部品実装機の生産を管理する生産管理コンピュータから取得する、請求項2に記載の部品実装機のバックアップピン自動配置システム。
【請求項4】
部品を実装する回路基板を下方から支えるためのバックアップピンを載置するバックアッププレートと、
前記回路基板に部品を実装する部品実装動作と前記バックアッププレート上に前記バックアップピンを自動配置するバックアップピン自動配置動作を行うXYロボットと
を備え、
前記XYロボットは、前記バックアップピン自動配置動作を行う際に、前記バックアッププレートのうちの前記回路基板の下面と対向しない領域の少なくとも一部を前記バックアップピンを保管するストックエリアとして使用すると共に、前記バックアッププレートのうちの前記回路基板の下面と対向する領域のうちの前記回路基板の下面側の実装済み部品と干渉しない領域の少なくとも一部を前記バックアップピンを保管する退避エリアとして使用し、前記ストックエリア又は前記退避エリアに保管されている前記バックアップピンをピックアップして前記バックアッププレートのうちの生産ジョブで指定された位置に自動配置する、部品実装機のバックアップピン自動配置システムにおいて、
前記生産ジョブには、
前記バックアップピンの配置を変更する生産ジョブ切替え時に前記バックアッププレート上から取り除いた不要なバックアップピンを前記ストックエリアと前記退避エリアのどちらのエリアに退避させるかを指定する退避先情報が登録され、
前記XYロボットは、
前記生産ジョブ切替え時に前記バックアッププレート上から取り除いた不要ないた不要なバックアップピンを前記生産ジョブの退避先情報で指定されたエリアに退避させる
、部品実装機のバックアップピン自動配置システム。
【請求項5】
前記退避先情報は、前記生産ジョブの作成時に前記生産ジョブを最適化する処理を実行する生産ジョブ最適化装置が前記不要なバックアップピンの退避先を判断して前記生産ジョブに登録したものである、請求項4に記載の部品実装機のバックアップピン自動配置システム。
【請求項6】
前記退避先情報は、前記生産ジョブの作成時に作業者が手動で前記生産ジョブに登録したものである、請求項4に記載の部品実装機のバックアップピン自動配置システム。
【請求項7】
前記XYロボットは、前記生産ジョブ切替え時に既に前記退避エリアに退避させた前記バックアップピンが存在する場合には、前記ストックエリアよりも先に前記退避エリアから前記バックアップピンをピックアップして前記生産ジョブで指定された位置に自動配置する、請求項1乃至6のいずれかに記載の部品実装機のバックアップピン自動配置システム。
【請求項8】
前記XYロボットは、前記生産ジョブ切替え時に前記回路基板のサイズ又は形状の変更により前記ストックエリアが狭められる場合には、前記ストックエリアの狭められた領域から先に前記バックアップピンをピックアップして前記生産ジョブで指定された位置に自動配置する、請求項1乃至6のいずれかに記載の部品実装機のバックアップピン自動配置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品を実装する回路基板を下方から支えるためのバックアップピンを生産ジョブで指定された位置に自動配置する機能を搭載した部品実装機のバックアップピン自動配置システムに関する技術を開示したものである。
【背景技術】
【0002】
近年の部品実装基板は薄型化が進み、曲りやすくなっているため、部品実装機で回路基板に部品を実装する場合は、特許文献1(特開2011-14627号公報)に記載されているように、回路基板を下方からバックアップピンで支えて回路基板の曲りを防ぐようにしている。この特許文献1の部品実装機は、バックアップピンを載置するバックアッププレート(バックアップベース)を備え、このバックアッププレートのうちの回路基板と対向しない領域の少なくとも一部をバックアップピンを保管するストックエリアとして使用し、このストックエリアに保管されているバックアップピンを装着ヘッドでピックアップしてバックアッププレート上に自動配置するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、部品を実装する回路基板のサイズや形状等を変更する生産ジョブ切替え毎にバックアップピンの配置を変更する必要があり、そのバックアップピンの配置の変更によって、使用するバックアップピンの本数が増減し、ストックエリアに残すバックアップピン(使用しないバックアップピン)の本数も増減する。
【0005】
また、生産ジョブ切替え時に回路基板のサイズや形状によってはバックアッププレート上のストックエリアが狭められる場合があるが、ストックエリアが狭められると、そのストックエリアに保管可能なバックアップピンの本数が減少する。このため、使用しないバックアップピンの本数がストックエリアに保管可能なバックアップピンの本数よりも多くなる場合がある。
【0006】
この対策として、上記特許文献1では、バックアッププレート上のストックエリアが不足する場合には、バックアッププレート以外の別の場所に予備のストックエリアを設け、作業者がバックアッププレート上から不要なバックアップピンを取り除いて予備のストックエリアに収める作業を行うようにしている。この作業は作業者が手作業で行うため、生産ジョブの切替え作業に時間がかかり、生産性が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、部品を実装する回路基板を下方から支えるためのバックアップピンを載置するバックアッププレートと、前記回路基板に部品を実装する部品実装動作と前記バックアッププレート上に前記バックアップピンを自動配置するバックアップピン自動配置動作を行う2つのXYロボットとを備えた部品実装機のバックアップピン自動配置システムにおいて、前記部品実装機は、前記2つのXYロボットが移動できる移動可能エリアが前記回路基板の搬送方向であるX方向に離れて位置して、前記2つのXYロボットの移動可能エリアの間に移動範囲外のエリアが存在し、前記移動可能エリアでのみ部品実装動作とバックアップピン自動配置動作が可能であり、前記移動範囲外のエリアを跨いだ位置で前記回路基板の搬送を停止させて前記2つのXYロボットで部品を当該回路基板に実装することが可能であり、前記2つのXYロボットは、前記バックアップピン自動配置動作を行う際に、前記移動可能エリア内で前記バックアッププレートのうちの前記回路基板の下面と対向しない領域の少なくとも一部を前記バックアップピンを保管するストックエリアとして使用し、前記ストックエリアに保管されている前記バックアップピンをピックアップして前記バックアッププレートのうちの生産ジョブで指定された位置に自動配置する、部品実装機のバックアップピン自動配置システムであって、前記2つのXYロボットは、前記バックアップピンの配置を変更する生産ジョブ切替え時に前記バックアッププレート上から取り除いた不要なバックアップピンを前記ストックエリアに退避させる空きスペースがない場合には、前記移動可能エリア内で前記バックアッププレートのうちの前記回路基板の下面と対向する領域のうちの前記回路基板の下面側の実装済み部品と干渉しない領域の少なくとも一部を退避エリアとして使用し、前記ストックエリアに退避できない前記不要なバックアップピンを前記退避エリアに退避させるようにしたものである。
【0008】
この構成では、生産ジョブ切替え時に使用しないバックアップピンの本数がストックエリアに保管可能なバックアップピンの本数よりも多くなった場合には、各XYロボットの移動可能エリア内でバックアッププレートのうちの回路基板の下面と対向する領域のうちの回路基板の下面側の実装済み部品と干渉しない領域の少なくとも一部を退避エリアとして使用し、ストックエリアに退避できない不要なバックアップピンを各XYロボットによって退避エリアに退避させることができる。これにより、生産ジョブ切替え時に作業者がバックアッププレート上から不要なバックアップピンを取り除いてバックアッププレート以外の別の場所に設けられた予備のストックエリアに収めるという面倒な作業を行う必要がなくなり、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は一実施例の2台の部品実装機を配列し、一方の部品実装機からフィーダや上部カバー等を取り除いて示す斜視図である。
【
図2】
図2はフィーダと上部カバー等を取り除い示す部品実装機の斜視図である。
【
図4】
図4はコンベアとバックアッププレートとバックアップピンとの位置関係を示す斜視図である。
【
図5】
図5は隣接する各部品実装機の2台のXYロボットの移動可能エリアと回路基板の搬送停止位置とストックエリアと退避エリアとの位置関係を説明する平面図である。
【
図6】
図6は部品実装機の制御系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書に開示した一実施例を説明する。
まず、
図1乃至
図3を用いて部品実装機10の構成を説明する。
この部品実装機10は、部品実装基板を生産する部品実装ラインに複数台配列される。
図1は、2台の部品実装機10を設置した例を示している。
【0011】
各部品実装機10は、コンベア11で搬送されてくる回路基板12に部品を実装する2つの実装ヘッド13L,13R(
図2参照)と、2つの実装ヘッド13L,13Rを別々に回路基板12の搬送方向であるX方向とこのX方向と直交する方向であるY方向に移動させる2つのXYロボット14L,14Rとを搭載した構成となっている。
【0012】
2つのXYロボット14L,14Rは、同一の構成でサイズも同じであり、2つの実装ヘッド13L,13Rを別々にX方向に移動させる2つのXスライド15L,15Rと、該Xスライド15L,15Rを別々にY方向に移動させる2つのYスライド16L,16Rとを組み合わせて構成されている。2つのXYロボット14L,14Rは、2つのYスライド16L,16RがX方向に異なる移動可能エリアAL,AR(
図5に示す基板搬入側の移動可能エリアALと基板搬出側の移動可能エリアAR)をY方向に移動するように配置され、且つ、各Yスライド16L,16Rには、各Xスライド15L,15Rが支持されていると共に、各Xスライド15L,15RをX方向に移動させる各駆動源である各X軸駆動装置17L,17R(
図6参照)が支持されている。
【0013】
この場合、
図5に示すように、2つのXYロボット14L,14Rが移動できる移動可能エリアAL,AR(基板搬入側の移動可能エリアALと基板搬出側の移動可能エリアAR)が回路基板12の搬送方向であるX方向に離れて位置して、2つのXYロボット14L,14Rの移動可能エリアAL,ARの間に移動範囲外のエリアMが存在し、移動可能エリアAL,ARでのみ部品実装動作と後述するバックアップピン自動配置動作を行うことができるようになっている。
【0014】
各X軸駆動装置17L,17Rは、例えば送りねじ装置又はリニアモータ等を用いて構成されている。更に、各Yスライド16L,16Rに支持された各Xスライド15L,15Rには、各実装ヘッド13L,13Rが支持されていると共に、回路基板12の基板マークを撮像するマーク撮像用のカメラ(図示せず)が支持されている。
【0015】
各実装ヘッド13L,13Rには、それぞれ部品を吸着する1本又は複数本の吸着ノズル18(
図2参照)が保持されていると共に、部品吸着動作時や部品実装動作時に各吸着ノズル18を下降/上昇させるZ軸駆動装置19L,19R(
図6参照)が設けられている。各実装ヘッド13L,13Rは、回転型の実装ヘッドであっても良いし、回転しない実装ヘッドであっても良い。
【0016】
一方、各Yスライド16L,16RをY方向に移動させる駆動源であるY軸駆動装置は、リニアモータ21L,21Rを用いて構成されている。2つのリニアモータ21L,21Rは、各々のシャフト状の固定子23L,23RがY方向に平行に延びて各固定子23L,23RのY方向両端部が実装機本体31に支持され、各固定子23L,23Rに沿って直線運動する各可動子22L,22Rに各Yスライド16L,16Rが取り付けられている。各リニアモータ21L,21RのX方向の位置は、各Yスライド16L,16RのX方向幅の中央に相当する位置となっている。本実施例では、各リニアモータ21L,21Rは、シャフト型のリニアモータを用いているが、フラット型のリニアモータを用いても良い。その他、Y軸駆動装置は、リニアモータに代えて、送りねじ装置を用いて構成しても良い。
【0017】
各リニアモータ21L,21Rの固定子23L,23Rの両端部を支持する実装機本体31は、部品実装機10の骨組みを構成する箱型の構造体であり、その内側には、回路基板12をX方向に搬送するコンベア11が配置され、その上方を2つの実装ヘッド13L,13RがXY方向に移動するようになっている。実装機本体31の正面側には、部品を供給するテープフィーダ、トレイフィーダ等の部品供給装置32(
図1参照)をセットするスペースが設けられている。
【0018】
各実装ヘッド13L,13RのY方向の位置情報(Y座標)である各Yスライド16L,16RのY方向の位置情報(Y座標)を測定するために、実装機本体31に2つのリニアスケール33L,33R(
図3参照)がY方向に平行に延びるように設けられている。各リニアスケール33L,33Rは、例えば磁気式、光電式(光学式)、電磁誘導式等、いずれの方式のものであっても良い。
【0019】
実装機本体31の中央部(2つのXYロボット14L,14Rの間)に梁状に設けられた中フレーム37(
図1乃至
図3参照)の下面側には、各Yスライド16L,16Rの内側の端部をY方向にガイドする各ガイドレール35R,36L(
図2参照)が取り付けられている。各Yスライド16L,16Rの左右両端部には、各ガイドレール35L,35R,36L,36Rと摺動自在に嵌合するガイド部材38(
図1参照)が設けられている。
【0020】
各Yスライド16L,16Rのうち、各リニアスケール33L,33Rから各Yスライド16L,16RのY方向の位置情報を読み取り可能な位置に、その位置情報を読み取る各センサ40L,40R(
図6参照)が設けられている。
【0021】
各実装ヘッド13L,13RのX方向の位置情報(X座標)である各Xスライド15L,15RのX方向の位置情報(X座標)を測定するために、各センサ41L,41R(
図6参照)が設けられている。各Xスライド15L,15RのX方向の位置情報を測定する構成については図示しないが、例えば、各Yスライド16L,16Rに各Xスライド15L,15Rの移動方向であるX方向に沿って各リニアスケールを設け、各リニアスケールから各Xスライド15L,15RのX方向の位置情報を読み取る各センサ41L,41Rを各Xスライド15L,15Rに設けた構成としても良い。或は、各Xスライド15L,15RをX方向に移動させる各X軸駆動装置17L,17Rとして送りねじ装置を用いる場合には、その送りねじ装置のモータに設けられたエンコーダ(センサ41L,41R)の出力パルスをカウントして、そのカウント値から各Xスライド15L,15RのX方向の位置情報(実装ヘッド13L,13RのX座標)を算出するようにしても良い。
【0022】
次に、
図4を用いてコンベア11の構成を説明する。
コンベアベルト52,53は、回路基板12の両辺部を載せて搬送するように該回路基板12の搬送方向と平行に配置され、一方のコンベアベルト53を保持するレール55は、位置が固定された基準レールであり、他方のコンベアベルト52を保持するレール54は、回路基板12の幅に応じてその幅方向に移動する可動レールとなっている。
【0023】
このコンベア11には、複数本のバックアップピン51を載せるバックアッププレート56が水平に設けられている。このバックアッププレート56は、鉄等の磁性材料で形成され、バックアップピン51の下部に設けられた磁石(図示せず)によりバックアッププレート56上にバックアップピン51が吸着保持されるようになっている。このバックアッププレート56は、昇降装置57によって昇降するように構成され、搬入されてきた回路基板12をクランプするときにバックアッププレート56が上限位置へ上昇し、回路基板12のクランプを解除するときにバックアッププレート56が下限位置へ下降するようになっている。
【0024】
本実施例では、バックアッププレート56のサイズが回路基板12のサイズよりも大きく形成され、バックアッププレート56のうちの回路基板12の下面と対向しない領域(回路基板12の真下から張り出す領域)で且つXYロボット14L,14Rの移動可能エリアAL,ARの範囲内に、バックアップピン51を保管するストックエリアSL,SRが設けられ、このストックエリアSL,SRに、少なくとも生産ジョブで指定されたバックアップピン51の配置に必要な本数のバックアップピン51を保管できるようになっている。
【0025】
また、本実施例では、バックアップピン51の上部外周には、複数の係合突起58が等角度間隔で設けられている。XYロボット14L,14Rがバックアップピン51をバックアッププレート56上に自動配置する際には、XYロボット14L,14Rの実装ヘッド13L,13Rに交換可能に取り付けられた係合保持具(図示せず)でバックアップピン51の係合突起58をバヨネット係合方式で係合保持するようにしている。尚、実装ヘッド13L,13Rに交換可能に取り付けられたチャック(図示せず)でバックアップピン51を挟持するようにしても良い。
【0026】
部品実装ラインの各部品実装機10の動作を制御する制御装置45は、1台又は複数台のコンピュータ(CPU)により構成され、コンベア11の基板搬送動作を制御すると共に、各XYロボット14L,14Rにより各実装ヘッド13L,13Rを別々にXY方向に移動させて、部品供給装置32から供給される部品を吸着ノズル18で吸着する部品吸着動作と、該部品を回路基板12に実装する部品実装動作とを制御する。
【0027】
更に、部品実装ラインの各部品実装機10の制御装置45は、生産ジョブ(生産プログラム)に従って生産を開始する際に、2つのXYロボット14L,14Rの動作を制御して、バックアッププレート56のストックエリアSL,SRに保管されているバックアップピン51をピックアップしてバックアッププレート56のうちの生産ジョブで指定された位置に自動配置するバックアップピン自動配置動作を行ってから生産を開始する。
【0028】
生産ジョブで指定されたバックアップピン51の配置は、部品実装ラインを構成する複数の部品実装機10で共通して使用され、且つ、バックアップピン51の位置が回路基板12に対する相対的な位置で指定される。
図5に示すように、部品実装機10毎に回路基板12の搬送停止位置が異なる場合があるためである。
【0029】
ところで、
図5に示すように、各部品実装機10の2つのXYロボット14L,14Rが移動できる移動可能エリアAL,ARが回路基板12の搬送方向であるX方向に離れて位置するため、2つのXYロボット14L,14Rの移動可能エリアAL,ARの間に移動範囲外のエリアMが存在する。各部品実装機10は、移動可能エリアAL,ARでのみ部品実装動作とバックアップピン自動配置動作が可能であるため、移動範囲外のエリアMを跨いだ位置で回路基板12の搬送を停止させて2つのXYロボット14L,14Rで部品を当該回路基板12に実装する場合には、
図5に示すように、部品実装機10毎に回路基板12の搬送停止位置を変更して当該回路基板12と移動範囲外のエリアMとの相対的な位置関係を変更することで、部品実装機10毎に当該回路基板12の実装可能エリアの位置を変更して部品を実装するようにしている。
【0030】
各部品実装機10は、移動範囲外のエリアMにはバックアップピン51を自動配置することができないため、各部品実装機10の制御装置45は、生産ジョブで指定されたバックアップピン51の配置のうち移動範囲外のエリアMに対応する位置のバックアップピン51が存在するか否かを回路基板12の搬送停止位置と移動範囲外のエリアMとの相対的な位置関係を考慮して判定し、移動範囲外のエリアMに対応する位置のバックアップピン51が存在する場合には、当該位置のバックアップピン51については生産ジョブで指定されたバックアップピン51の配置から除外してストックエリアSL,SRに残して自動配置せず、それ以外のバックアップピン51のみをストックエリアSL,SRから取り出して生産ジョブで指定された位置に自動配置する。
【0031】
ところで、部品を実装する回路基板12のサイズや形状等を変更する生産ジョブ切替え毎にバックアップピン51の配置を変更する必要があり、そのバックアップピン51の配置の変更によって、使用するバックアップピン51の本数が増減し、ストックエリアSL,SRに残すバックアップピン51(使用しないバックアップピン51)の本数も増減する。
【0032】
また、生産ジョブ切替え時に回路基板12のサイズや形状によってはバックアッププレート56上のストックエリアSL,SRが狭められる場合があるが、ストックエリアSL,SRが狭められると、そのストックエリアSL,SRに保管可能なバックアップピン51の本数が減少する。このため、使用しないバックアップピン51の本数がストックエリアSL,SRに保管可能なバックアップピン51の本数よりも多くなる場合がある。
【0033】
そこで、本実施例では、バックアップピン51の配置を変更する生産ジョブ切替え時にバックアッププレート56上から取り除いた不要なバックアップピン51をストックエリアSL,SRに退避させる空きスペースがない場合(つまり使用しないバックアップピン51の本数がストックエリアSL,SRに保管可能なバックアップピン51の本数よりも多くなる場合)には、バックアッププレート56のうちの回路基板12の下面と対向する領域のうちの回路基板12の下面側の実装済み部品と干渉しない領域の少なくとも一部を退避エリアTとして使用し、ストックエリアSL,SRに退避できない不要なバックアップピン51を退避エリアTに退避させるようにしている。
【0034】
このような退避エリアTへの不要なバックアップピン51の退避動作を実現するために、本実施例では、部品実装ラインの各部品実装機10の制御装置45は、回路基板12の下面側の実装済み部品に関する情報とストックエリアSL,SRに関する情報を部品実装ラインの各部品実装機10の生産を管理する生産管理コンピュータ(図示せず)から取得し、バックアッププレート56上から取り除いた不要なバックアップピン51をストックエリアSL,SRに退避させる空きスペースがないか否かを判定し、前記空きスペースがない場合には、ストックエリアSL,SRに退避できない不要なバックアップピン51を退避エリアTに退避させるようにXYロボット14L,14Rの動作を制御する。
【0035】
或は、生産ジョブには、不要なバックアップピン51をストックエリアSL,SRと退避エリアTのどちらのエリアに退避させるかを指定する退避先情報が登録され、各部品実装機10の制御装置45は、バックアッププレート56上から取り除いた不要なバックアップピン51を生産ジョブの退避先情報で指定されたエリアに退避させるようにしても良い。
【0036】
この場合、退避先情報は、生産ジョブの作成時に生産ジョブを最適化する処理を実行する生産ジョブ最適化装置(オプチマイザ)が不要なバックアップピン51の退避先を判断して生産ジョブに登録するようにしても良い。
【0037】
或は、退避先情報は、生産ジョブの作成時に作業者が手動で生産ジョブに登録するようにしても良い。
【0038】
また、生産ジョブ切替え時に既に退避エリアTに退避させたバックアップピン51が存在する場合には、ストックエリアSL,SRよりも先に退避エリアTからバックアップピン51をピックアップして生産ジョブで指定された位置に自動配置するようにすれば良い。
【0039】
また、生産ジョブ切替え時に回路基板12のサイズ又は形状の変更によりストックエリアSL,SRが狭められる場合には、ストックエリアSL,SRの狭められた領域から先にバックアップピン51をピックアップして生産ジョブで指定された位置に自動配置するようにすれば良い。
【0040】
以上説明した本実施例によれば、生産ジョブ切替え時に使用しないバックアップピン51の本数がストックエリアSL,SRに保管可能なバックアップピン51の本数よりも多くなった場合には、バックアッププレート56のうちの回路基板12の下面と対向する領域のうちの回路基板12の下面側の実装済み部品と干渉しない領域の少なくとも一部を退避エリアTとして使用し、ストックエリアSL,SRに退避できない不要なバックアップピン51をXYロボット14L,14Rによって退避エリアTに退避させることができる。これにより、生産ジョブ切替え時に作業者がバックアッププレート56上から不要なバックアップピン51を取り除いてバックアッププレート56以外の別の場所に設けられた予備のストックエリアに収めるという面倒な作業を行う必要がなくなり、生産性を向上できる。
【0041】
本実施例の部品実装機10は、2つのXYロボット14L,14Rを備え、2つのXYロボット14L,14Rが移動できる移動可能エリアAL,ARが回路基板12の搬送方向であるX方向に離れて位置し、2つのXYロボット14L,14Rの移動可能エリアAL,ARの間に移動範囲外のエリアMが存在する構成となっているため、生産ジョブ切替え時に使用しないバックアップピン51の本数が多くなる傾向があり、生産ジョブ切替え時に使用しないバックアップピン51の本数がストックエリアSL,SRに保管可能なバックアップピン51の本数よりも多くなる可能性が、1台のXYロボットのみを備えた部品実装機よりも増える。このため、本実施例のように、2つのXYロボット14L,14Rを備えた部品実装機10に対して本発明を適用すれば、生産性向上について大きな効果が得られる。
【0042】
しかし、本発明は、1台のXYロボットのみを備えた部品実装機に対して本発明を適用しても良いことは勿論である。
【0043】
その他、本発明は、上記実施例に限定されず、例えば、各部品実装機に2つのコンベアを並設して、各部品実装機に搬入した2枚の回路基板に対してバックアップピンを自動配置して2枚の回路基板に部品を実装する構成としたり、バックアップピン51の構成を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
10…部品実装機、11…コンベア、12…回路基板、13L,13R…実装ヘッド、14L,14R…XYロボット、15L,15R…Xスライド、16L,16R…Yスライド、17L,17R…X軸駆動装置、18…吸着ノズル、19L,19R…Z軸駆動装置、21L,21R…リニアモータ、31…実装機本体、32…部品供給装置、45…制御装置、51…バックアップピン、56…バックアッププレート、AL,AR…移動可能エリア、M…移動範囲外のエリア、SL,SR…ストックエリア、T…退避エリア