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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】内視鏡のための電子装置、及び内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/04 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
A61B1/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021547122
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020052732
(87)【国際公開番号】W WO2020164967
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】102019103288.1
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591228476
【氏名又は名称】オリンパス ビンテル ウント イーベーエー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユングバウアー セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】パブスト スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ウィータース マルティン
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/040692(WO,A1)
【文献】特開平03-018343(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第03616773(DE,A1)
【文献】特表2016-533199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートクレーブ処理可能なリジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)及び成形保持体(60)を備える、内視鏡(10)のための電子装置(20)であって、
前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)は、互いに接着される導電性材料及び非導電性材料の構造化層であって、そこでは導電構造が導体トラック(56)及び接点領域(48,50,52)を形成する、構造化層から形成され、追加的な補強によりリジッド領域(32)において硬くなっており、電子部品が実装されてエポキシ樹脂(34)にて封入され、接点領域(48,50,52)を有するフレキシブル領域(40)において可撓性を有するように設計され、
前記成形保持体(60)は、断面が円弧状の基本形状を有し、その形状は、その半径方向内側が、前記内視鏡(10)の内管(14)上への配置のために形成され、その半径方向外側(64)が、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)を収容し、それに形を付けるための収容外形(66)と、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)を屈曲状態で保持するための保持手段(68,70,72)と、を有するように形成される、
電子装置(20)。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置(20)であって、前記成形保持体(60)は、その円弧状の基本形状において、180°より大きい円弧に沿って形成され、且つ、弾性的に復元力を有するように設計される、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項3】
請求項2に記載の電子装置(20)であって、前記成形保持体(60)は、前記内視鏡(10)の前記内管(14)上に配置されるとき、圧入によって前記内管(14)上の適切な位置に保持される、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の電子装置(20)であって、前記成形保持体(60)は、電気絶縁材料にて作られる、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項5】
請求項1~の何れか一項に記載の電子装置(20)であって、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)を収容し、それに形を付ける前記成形保持体(60)の前記収容外形(66)は、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)を、内視鏡軸の方向にガイドするための係合部(68)と、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)を前記内視鏡軸と垂直にガイドするための係合部(70)とを有する、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項6】
請求項1~4の何れか一項に記載の電子装置(20)であって、前記成形保持体(60)は、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)の前記フレキシブル領域(40)の端部領域(58)を収容し、固定するための保持手段として長孔状の収容手段(72)を有する、ことを特徴する電子装置(20)。
【請求項7】
請求項5に記載の電子装置(20)であって、前記成形保持体(60)は、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)の前記フレキシブル領域(40)の端部領域(58)を収容し、固定するための保持手段として長孔状の収容手段(72)を有し、前記長孔状の収容手段(72)は、前記内視鏡軸の方向にガイドするための前記係合部(68)に対して前記内視鏡軸の方向に変位している、ことを特徴する電子装置(20)。
【請求項8】
請求項1~の何れか一項に記載の電子装置(20)であって、前記成形保持体(60)は、ケーブルタイのための切り欠き、及び/またはフィードスルーを有する、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項9】
請求項1~の何れか一項に記載の電子装置(20)であって、前記成形保持体(60)は、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)を半径方向に位置決めするための複数の平坦部(74,76,78)を有する、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項10】
請求項9に記載の電子装置(20)であって、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)は、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)が取り付けられたときに前記成形保持体(60)の前記平坦部(74,76,78)の間の移行部に位置する目標屈曲点(41,42)を有するように設計される、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の電子装置(20)であって、前記成形保持体(60)は、その半径方向外側(64)に、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)と接続され得る別のプリント回路基板(90)を収容するための収容外形(80)を有する、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項12】
請求項11に記載の電子装置(20)であって、前記別のプリント回路基板(90)はヒータ回路基板である、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の電子装置(20)であって、前記別のプリント回路基板(90)もまた、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)に接続するための金属接点領域(92)を有し、該金属接点領域(92)は、前記別のプリント回路基板(90)が、前記別のプリント回路基板(90)を収容するための前記成形保持体(60)の前記収容外形(66)に収容された状態において、直接的な接続を介して、対応して配置される前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)の金属接点領域(48)に接続されるか、または接続され得る、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項14】
互いに接着される導電性材料及び非導電性材料の構造化層であって、そこでは導電構造が導体トラック(56)及び接点領域(48,50,52)を形成する、構造化層から形成されるオートクレーブ処理可能なリジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)を備え、該リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)は、追加的な補強によりリジッド領域(32)において硬くなっており、電子部品が実装されてエポキシ樹脂(34)にて封入され、接点領域(48,50,52)を有するフレキシブル領域(40)において可撓性を有するように設計される、請求項11~13の何れか一項に記載の、内視鏡(10)のための電子装置(20)であって、
前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)は、前記フレキシブル領域(40)に切り欠き(44)を有し、その内側の縁は、前記切り欠き(44)内に突出する弾性アーム(46)の外形を有し、該弾性アーム(46)の端部は、前記別のプリント回路基板(90)との接続のための前記金属接点領域(48)を有する、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項15】
互いに接着される導電性材料及び非導電性材料の構造化層であって、そこでは導電構造が導体トラック(56)及び接点領域(48,50,52)を形成する、構造化層から形成されるオートクレーブ処理可能なリジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)を備え、該リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)は、追加的な補強によりリジッド領域(32)において硬くなっており、電子部品が実装されてエポキシ樹脂(34)にて封入され、接点領域(48,50,52)を有するフレキシブル領域(40)において可撓性を有するように設計される、内視鏡(10)のための電子装置(20)であって、
前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)は、前記フレキシブル領域(40)に切り欠き(44)を有し、その内側の縁は、前記切り欠き(44)内に突出する弾性アーム(46)の外形を有し、該弾性アーム(46)の端部は、別のプリント回路基板(90)との接続のための金属接点領域(48)を有する、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の電子装置(20)であって、前記切り欠き(44)は、内視鏡軸を横断して延びる方向に関して前記別のプリント回路基板(90)よりも大きな幅を有する、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項17】
請求項13~16の何れか一項に記載の電子装置(20)であって、前記リジッドフレキシブル多層プリント回路基板(30)と前記別のプリント回路基板(90)との間の前記接続(94)はポッティングされる、ことを特徴とする電子装置(20)。
【請求項18】
請求項1~1の何れか一項に記載の電子装置(20)を備える内視鏡(10)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[説明]
本発明は、内視鏡のための電子装置、及び電子装置を備える対応する内視鏡に関する。
【0002】
医療用内視鏡、特にビデオ内視鏡は、使用後にオートクレーブ処理、つまりオートクレーブ内で洗浄及び滅菌される。これは、温水及びリンス流体、または高温蒸気、及び正圧または負圧を用いて行われる。これは、内視鏡の光学系及び電子システムもまた高温、高湿度に晒されることを意味し、それらは、頻繁に繰り返される使用と洗浄の後で、正圧及び負圧下でさえも機能を維持するために高温、高湿度から保護されなければならないことを意味する。
【0003】
内視鏡内のいくつかの電子機器は、それゆえに内視鏡の密閉部内に収納され、それにより、この電子機器の一部は、内視鏡の光学系及び機構部の一部と共に水分の侵入から保護される。しかしながら、内視鏡の近位端のハンドル部などの内視鏡の他の部分は、オートクレーブ処理中に水分が浸透し得る、いわゆる「非密閉空間」である。電子機器が内視鏡の非密閉空間内に取り付けられる場合には、それらは洗浄及び滅菌の影響から適切に保護されなければならない。
【0004】
出願人によって販売される内視鏡において、非密閉空間内に配置される電子機器はFR4リジッドプリント回路基板(PCB)に基づいている。その表面に取り付けられる電子部品には、回路を水分から保護するためにシリコン材料が充填されたシートメタル筐体が設けられる。ポッティング工程は、この場合かなりの時間を要する。さらに、金属の筐体は電気的に絶縁しない。筐体を用いる設計のために大きな取付空間が用いられ、筐体材料として考えられ得る例えばPEEKは、鋼のように薄い壁で製造することができないため、取付空間は、絶縁筐体材料を用いるとさらに大きくならざるを得ないであろう。
【0005】
加えて、いくつかの内視鏡においては、加熱箔が、電気プリント回路基板の形で取り付けられるが、電気プリント回路基板は、サーミスタ以外には水分に敏感な電子部品または回路を何も含まない。そのため、加熱箔が密閉空間に配置されないにも関わらず、サーミスタのみが一滴の接着剤にて水分から保護される。同様のことが、内視鏡のハンドルの制御ボタン用のPCBにも当てはまる。ここでは、3つの機械的スイッチング素子のみが組み入れられ、これらは水分からの特別な保護を必要としない。しかしながら、このPCBは、水分に永久に耐えることができないことも知られており、それゆえに、各サービスセッションの間に予防的に取り換えられなければならない。加熱箔及び制御基板は両方ともケーブルに直接接続される。
【0006】
内視鏡内の密閉空間は空間的に限定されるので、小型の電子回路のみがその中に取り付けられ得る。さらに、密閉空間内にさらなる電子機器を収納するために密閉空間の大きさを拡大することは必ずしも可能ではない。何れにしても、必要とされる密閉接続が多くあると、非常に手間のかかるものとなり、エラーの生じ易さを増大させる。
【0007】
さらなる電子回路を内視鏡に組み入れることが必要となる場合には、それらは非密閉空間内に配置されなければならず、水分の影響から保護されなければならない。しかしながら、内視鏡の寸法を大きくすることができない場合には、非密閉空間内の取付空間もまた非常に限定され、それゆえに、このために特別な解決策のみが見込まれる。
【0008】
ここから進んで、本発明の目的は、さらなる電子機器を、効率的な方法で非密閉空間内に組み入れることである。
【0009】
本目的は、オートクレーブ処理可能なリジッドフレキシブル多層プリント回路基板及び成形保持体を備える、内視鏡のための電子装置であって、プリント回路基板は、互いに接着される導電性材料及び非導電性材料の構造化層であって、そこでは導電構造が導体トラック及び接点領域を形成する、構造化層から形成され、追加的な補強によりリジッド領域において硬くなっており、電子部品が実装されてエポキシ樹脂にて封入され、接点領域を有するフレキシブル領域において可撓性を有するように設計され、成形保持体は、断面が円弧状の基本形状を有し、その形状は、その半径方向内側が、内視鏡の特に円筒状の内管上への配置のために形成され、その半径方向外側が、リジッドフレキシブルプリント回路基板を収容し、それに形を付けるための収容外形と、プリント回路基板を屈曲状態で保持するための保持手段と、を有するように形成される、電子装置によって実現される。
【0010】
オートクレーブ処理可能なリジッドフレキシブル多層プリント回路基板及び成形保持体を備える電子装置は、さらなる電子機器を非密閉空間内に導入するために適切なフレームを提供する。この空間は、プリント回路基板及びその表面に配置される電子部品を組み入れるためにハンドル内に設けられる円筒状の空洞の空間である。この空間を十分に利用するために、プリント回路基板は屈曲されなければならない。本発明によれば、電子部品はプリント回路基板のリジッド領域に配置されなければならないため、リジッドフレキシブルプリント回路基板が用いられる。ただし、それを屈曲するために、プリント回路基板は、少なくとも部分的に可撓性も有さなければならない。これらの2つの必要とされる性質を兼ね備えるために、リジッドフレキシブルプリント回路基板が用いられる。このようにして、プリント回路基板は、内視鏡の外管から間隔が空けられた内視鏡の内筒または内管の周りに載置され得る。
【0011】
取り付けの安全性を向上させるために、プリント回路基板に対して成形保持体が用いられる。これにより、取り扱いがとりわけ容易になる。なぜならば、プリント回路基板は、内視鏡の外側の成形保持体を用いることで必要な形状に形を付けることができ、それによって、内視鏡の非密閉空間内の空洞の円筒状の空間内に導入され得るようにすることができるためである。成形保持体は、好ましくは、オートクレーブ処理を可能とするようにプリント回路基板に被覆を設けることによって作成される密封状態でプリント回路基板を収容するように設計される。
【0012】
内視鏡の内筒、あるいはむしろ内管への取り付けを容易にするために、一実施形態において、成形保持体は、その円弧状の基本形状において、180°より大きい円弧に沿って形成され、且つ、弾性的に復元力を有するように設計され、特に成形保持体は、内視鏡の内管上に配置されるとき、圧入によって内管上の適切な位置に保持される。このことは、特にプリント回路基板が、内筒または内管のテーパ状の領域に成形保持体にて取り付けられるとき、軸方向の取り付けが困難な状況を回避することを可能にする。円弧状の基本形状は、180°より大きく円弧に沿っているため、成形保持体は片側が開放され、それにより、この側から取り付けられ得る。成形保持体は、その開口によって内筒上に押し込まれ得る。その形状は半分より小さく開放されているので、保持体は内筒にスナップ嵌めされる。同時に、成形保持体が配置された後、内筒は二度と脱落しない程度に包囲される。これは、成形保持体の弾性によって補助され、このことは側面からの取り付けを可能にし、成形保持体が、挟持または圧入によって内筒または内管の適切な位置に保持されることを確実にする。
【0013】
この設計は、絶縁のために収縮チューブを使用することに対するいくつかの利点を提供する。内視鏡の内筒のテーパが非常に大きいために、一旦、より広い領域を通って取り付けられると、収縮チューブがテーパの上に収縮するのに十分な収縮能力を有さないといった例がある。これらのような場合において、収縮チューブは、それゆえに実用的でない。収縮チューブの別の不利な点は、毛細管現象によって水が収縮チューブの下に引き寄せられることがあり、それゆえに、収縮チューブの下の金属の内筒上で腐食が発生し得る。しかしながら、成形保持体は、収縮チューブほど完全には載置されていないため、この効果は発生しない。このことは、成形保持体の表面粗さ、及び内視鏡の内筒または内管との間に密な嵌合が形成されないという事実によるものである。
【0014】
実施形態において、成形保持体は電気絶縁材料、特にPEEKにて作られる。
【0015】
リジッドフレキシブルプリント回路基板を保持するために、実施形態において、リジッドフレキシブル回路基板を収容し、それに形を付ける成形保持体の収容外形は、リジッドフレキシブルプリント回路基板を内視鏡軸の方向にガイドするための係合部と、リジッドフレキシブルプリント回路基板を内視鏡軸と垂直にガイドするための係合部とを有する。内視鏡軸は、内視鏡の長手方向軸を意味すると理解されるべきである。係合部は、特に成形保持体の底面から隆起部として立ち上がり、一部はプリント回路基板の形状の一部のネガティブとして、それがそこに嵌め込まれ得るように設計される外形要素を意味すると理解されるべきである。隆起部または係合部は、プリント回路基板の位置が変わることを防止する。
【0016】
実施形態において、成形保持体は、リジッドフレキシブルプリント回路基板のフレキシブル領域の端部領域を収容し固定するための保持手段として長孔状の収容手段を有し、長孔状の収容手段は、特に、内視鏡軸の方向の係合部に対して非対称である。長孔状の収容手段は、プリント回路基板のフレキシブルな部分を半径方向に固定するために用いられ、それにより、それが成形保持体上でその位置からずれることを防止する。長孔状の収容手段は、内視鏡軸の方向のガイドとして作用する係合部をさらに形成する。長孔は、内視鏡軸の方向の、対応する第1係合部と平行である。内視鏡軸の方向の係合部に対して非対称な長孔の配置は、長孔が第1係合部に対して軸方向に変位していることを意味する。このことは、プリント回路基板が、位置を外れて回転されたり、成形保持体に対して誤った方向に配置されたりし得ないことを確実にする。
【0017】
他の実施形態において、成形保持体は、ケーブルタイのための切り欠き及び/またはフィードスルーを有し、それにより、プリント回路基板の一部及び/またはケーブルは、ケーブルタイによって成形保持体に固定され得る。例えばPEEK製の耐熱ケーブルタイは、例えばプリント回路基板を成形保持体に固定するのに適している。
【0018】
実施形態において、成形保持体は、リジッドフレキシブルプリント回路基板を半径方向に位置決めするための複数の、特に3つの平坦部を有し、リジッドフレキシブルプリント回路基板は、リジッドフレキシブルプリント回路基板が取り付けられたときに、成形保持体の平坦部間の移行部に位置する目標屈曲点を有するように特に設計される。平坦部のうちの1つは、プリント回路基板のリジッド領域用であり、第2平坦部、及び、該当する場合には第3平坦部も、プリント回路基板のフレキシブル部用であり、特に、例えばケーブル端または別のプリント回路基板との接続のためのはんだ領域を設けるためのものである。平坦部はまたプリント回路基板、特に機械的荷重がかかるはんだ領域、にかかる曲げ応力を低減する。曲げ応力は、任意に設けられる目標屈曲点によってさらに低減される。
【0019】
実施形態において、成形保持体は、その半径方向外側に、リジッドフレキシブルプリント回路基板と接続され得る別のプリント回路基板、特にヒータ回路基板を収容するための内視鏡の長手方向軸と平行に特に方向付けられる収容外形を有する。このようにして、リジッドフレキシブルプリント回路基板及び内視鏡の長手方向軸の方向に方向付けられる別のプリント回路基板が交わる。交わるポイントは、例えば1つ以上のはんだ接続による2つのプリント回路基板の直接的な相互接続に特に適している。この目的のために、リジッドフレキシブルプリント回路基板はまた、リジッドフレキシブルプリント基板のリジッド領域に配置される内側の電子回路に接触する別のプリント回路基板のための接続領域も有する。プリント回路基板内の内部接触は、自動化された工程で作成することができ、それにより、取り付けの際に手作業で接続がなされるときにエラーが発生しないようにすることができる。実施形態において、別のプリント回路基板もまた、リジッドフレキシブルプリント回路基板に接続するための金属接点領域を有し、それは、別のプリント回路基板が、別のプリント回路基板を収容するための成形保持体の収容外形に収容された状態において、直接的な接続、特にはんだ接続を介して、対応して配置されるリジッドフレキシブルプリント回路基板の金属接点領域に接続されるか、または接続され得る。
【0020】
本発明の目的はまた、互いに接着される導電性材料及び非導電性材料の構造化層であって、そこでは導電構造が導体トラック及び接点領域を形成する、構造化層から形成される、オートクレーブ処理可能なリジッドフレキシブル多層プリント回路基板を備え、リジッドフレキシブル多層プリント回路基板は、追加的な補強によりリジッド領域において硬くなっており、電子部品が実装されてエポキシ樹脂にて封入され、接点領域を有するフレキシブル領域において可撓性を有するように設計される、内視鏡のための電子装置によって実現され、この装置はリジッドフレキシブルプリント回路基板がフレキシブル領域に切り欠きを有するように開発され、その内側の縁は切り欠き内に突出する弾性アームの外形を有し、弾性アームの端部は1つまたは別のプリント回路基板との接続のための金属接点領域を有し、切り欠きは、特に内視鏡軸を横断して延びる方向に関して別のプリント回路基板より大きな幅を有する。
【0021】
この実施形態は、それ自体として独創性があり、上述の保持体と組み合わせ得るものの、この保持体に依存しない。この実施形態は、リジッドフレキシブルプリント回路基板と上述の別のプリント回路基板、例えばヒータ回路基板、との機械的に耐久性のある接続に用いられる。
【0022】
この実施形態の特徴は、いくつかの技術的な効果及び利点をもたらす。まず、弾性アームが形成された切り欠きと、はんだ接続との組み合わせは、2つのプリント回路基板間の結合の機械的な耐久性を向上させる。機械的負荷が弾性アームの曲げによって吸収される一方で、はんだ接続は、それ自体に掛かる機械的負荷は比較的小さなものとなり、それゆえにより耐久性がある。また、2つのプリント回路基板間のはんだ領域は、水分に関して問題がある。水がはんだ箇所間に接触経路を生成する場合、これはプリント回路基板上の電子機器の誤作動を引き起こし得る。特に、一方が他方の上に積み重ねられて載置されるプリント回路基板の2つの部分の間の毛細管現象によって水が引き寄せられてそこに集まるとき、そのような水のブリッジが形成される。このような毛細管現象の生じる場所は、確実に密閉しなければならないが、その方法は容易ではない。そのようにする際、2つのプリント回路基板が交わる領域に切り欠きを設けることが役立つ。弾性アームは、非常に小さな移行領域のみが残ることを確実にし、従って、これらの領域に水分はほとんど浸透できない。
【0023】
切り欠きが、別のPCBの幅よりも広い場合には、隣接するはんだ接続間の重なりが排除される。切り欠きによって、はんだ付けを含むはんだ接続は、ポッティングによって容易に保護され得る。それゆえに、2つのプリント回路基板の間の接続部分に対して、これらに耐水性も与える被覆をもたらすことが可能となる。実施形態において、リジッドフレキシブルプリント回路基板と別のプリント回路基板との間の接続、特にはんだ接続は、特にシリコンにてポッティングされる。さらに、接続に関するその後の解決策において、薄いアームは、別のプリント回路基板に隣接する空き領域で切断されてもよく、その後個別にはんだ除去されてもよい。
【0024】
実施形態において、ケーブルのためのはんだ付け領域は、リジッドフレキシブルプリント回路基板の一方の面上のみにて存在してもよく、且つ/または金めっきされてもよい。実施形態において、別の加熱板のためのはんだ付け領域は、プリント回路基板の両面にて金めっきされる。これは、2つのプリント回路基板間のはんだぬれ性を向上させる。はんだは、それゆえに、両方の部分の間に流れることができ、より良好な接続を形成する。さらに、プリント回路基板が歪んで取り付けられた場合には、ケーブルのためのはんだ付け箇所はもうアクセスすることができないので、このことは、歪んだ取り付けに対する保護をもたらす。
【0025】
本発明の目的はまた、上述の本発明による電子装置を備える内視鏡によっても実現される。この内視鏡は、対応する電子装置を備えているので、上述の本発明による電子装置と同様の特徴、性質及び利点を有する。
【0026】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲及び添付の図面と共に、本発明による実施形態の説明から明らかになるであろう。本発明による実施形態は、個々の特徴または、いくつかの特徴の組み合わせを実現し得る。
【0027】
本発明は、本発明の概念を制限することなく、例示的な実施形態に基づいて図面を参照して以下に説明され、これにより、文面にてより詳細に説明されない本発明による全ての詳細に関して、図面を明示的に参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による電子装置の概略的な斜視図である。
図2】本発明による内視鏡の一部の概略的な斜視図である。
図3】本発明による内視鏡の近位部の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面において、同一または類似の要素、及び/または部分には、それぞれの場合において同一の参照番号が与えられ、それゆえに、再度の説明は常に省略される。
【0030】
図1は、リジッドフレキシブルプリント回路基板30と、リジッドフレキシブルプリント回路基板30がその上に配置されて保持される成形保持体60と、を備える本発明による電子装置20の概略的な斜視図である。成形保持体60は円弧状の基本形状を有する長尺状の基体であり、円弧状の基本形状はその内側62で内視鏡の内筒または内管の半径に適合し、さらに、開口を片側に有し、該開口によって内筒または内管上に配置され得る。保持体60は、弾性を有する電気絶縁材料、例えばPEEKなどのプラスチック材料から製造され、それにより、保持体60は内視鏡の内筒などの円筒体上にスナップ嵌めされ得る。開口は円周の半分より小さい。
【0031】
成形保持体60は、リジッドフレキシブルプリント回路基板30の形のオートクレーブ処理可能な電子機器を収容するために用いられる。上記プリント回路基板は、リジッド領域32を有し、リジッド領域32はエポキシ樹脂被覆34にて完全に包囲される。上記リジッド領域には電子部品35が実装され、電子部品35はエポキシ樹脂被覆34の均一な塗布によって包囲され、それにより内視鏡のオートクレーブ処理の間の水分の影響から保護される。内視鏡のハンドルの部分における円筒状の空洞内にプリント回路基板30を導入可能とするために、リジッドフレキシブルプリント回路基板30は、屈曲されなければならない。この目的のために、プリント回路基板30はフレキシブル領域40を有し、フレキシブル領域40は先細になっているフィードスルー36を介してリジッド領域32内へと通じる。プリント回路基板30のフレキシブル領域40は、リジッド領域32と同じ方法では硬くされず、それゆえに、内視鏡内への挿入に適した形状に屈曲され得る。
【0032】
リジッドフレキシブルプリント回路基板30のフレキシブル領域40は、フレキシブル領域40がそこで屈曲され得る目標屈曲点41,42を有し、それにより、接触点または金属接点領域48,50,52を有する、より平坦な領域が形成される。これらの接触点または金属接点領域48,50,52は、例えば電子的な接触、またはケーブルや別のプリント回路基板との接続の確立などの様々な機能を提供する。リジッド領域32からより離れた領域において、フレキシブル領域40は切り欠き44を有し、その内側の輪郭は複数のアーム46を有し、アーム46はそれらの材料特性により、復元力及び弾性を有するように設計され、その端部には、それぞれ金属接点領域48が設けられる。これらは、別のプリント回路基板とのはんだ接続を形成するために用いられる。さらなる金属接点領域50,52が、プリント回路基板30のフレキシブル領域40にわたって分布するように配置される。
【0033】
さらに、フレキシブル領域40はLED54を有し、それらは例えばリジッドフレキシブルプリント回路基板30上で電子機器の機能性を検査するために、電子機器の取り付け及び製造の間に用いられてもよい。様々な導体トラック56もまた、図1においてフレキシブル領域40の表面に示される。さらなる導体トラックは、多層のフレキシブルプリント回路基板30の層内に埋め込まれ、それゆえに図1において視認できない。
【0034】
成形保持体60の外側64は収容外形66を有し、収容外形66は、リジッドフレキシブルプリント回路基板30が収容外形66の上に、または収容外形66に対して配置され保持され得るように形成される。プリント回路基板30を軸方向及び周方向に固定するために、収容外形66は、プリント回路基板30の先細になっているフィードスルー36の領域に軸方向の係合部68、エポキシ樹脂被覆34側に周方向の係合部70を有し、リジッドフレキシブルプリント回路基板の対応する部分が、それに対して、またはその中に配置され得る。これらは、プリント回路基板30のエッジ輪郭に隣接する隆起部である。さらに、成形保持体60は長孔状の収容手段72を有し、そこへリジッドフレキシブルプリント回路基板30のフレキシブル領域40の端部領域58が挿入され、それによって、引き上げやねじりに対して固定される。ケーブルタイを用いてさらなる固定を実現することができ、該当する場合には、成形保持体60はケーブルタイのための対応するフィードスルー開口を有する。
【0035】
成形保持体60は、さらに3つの平坦部74,76,78を有し、それぞれは、プリント回路基板30のフレキシブル領域40の異なる部分に隣接し、反対側では、リジッドフレキシブルプリント回路基板30のリジッド領域32に隣接する。成形保持体60の平坦部74は、さらに、成形保持体60の長手方向軸または長手方向の延出部と平行に延在する別のプリント回路基板のための収容外形80を有する。上記別のプリント回路基板は、加熱プリント回路基板またはヒータ回路基板であってもよい。対応するヒータ回路基板は、図1には示されない。それゆえに、概して、図1に示される装置20は、内視鏡の非密閉空間内にオートクレーブ処理可能な電子機器を挿入するために適した形状を有する。
【0036】
図2は、本発明による内視鏡10の一部の概略的な斜視図である。図1に示される装置20が、開放状態の内視鏡10の一部と共に示される。図2の左側のハンドル12は、装置20が取り付けられる内管14または内筒の周りの空洞16を有する。明確に視認可能なように、成形保持体60は、その内側62が内視鏡10の内管14の周りに配置され、その開口は図面の視認者とは反対の側にあり、このことは、成形保持体60がこの側から内管14上に押し付けられることを可能にする。ケーブル18もまた示され、その一本は、はんだ接続による機械的な接続を形成するために金属接点領域52に接続される。ケーブル内の個別のより線は示されていない。リジッドフレキシブルプリント回路基板30のフレキシブル領域40の金属接点領域50は、ここでは示されない上記のより線との電気的な接続を形成するために用いられる。別のケーブル18は、装置20のオートクレーブ処理可能な電子機器と接触することなく、成形保持体60の側面開口を通って内管14に沿って延在する。
【0037】
さらに、別のプリント回路基板90が示され、それは、ハンドル12の近位から内視鏡10の長手方向軸に沿って延出し、装置20内に突出する。この別のプリント回路基板90は、例えば、加熱プリント回路基板である。別のプリント回路基板90は、この別のプリント回路基板90のための収容外形80に収容され、その収容外形80内で成形保持体60と、リジッドフレキシブルプリント回路基板30のフレキシブル領域40の底面との間に延在する。機械的及び電子的な接続を作成するために、リジッドフレキシブルプリント回路基板30のアーム46の端部の金属接点領域48と、別のプリント回路基板90の上面上の対応する接点領域92との間で直接的なはんだ接続94が形成される。
【0038】
これらの直接的なはんだ接続94は、装置20を軸方向に保持し、それゆえに装置20を内視鏡10の内管14上にさらに固定する。メンテナンスまたは交換作業が必要とされる場合には、アーム46は接続を解除するために非常に容易に分離され得る。別の方法として、はんだ接続94ははんだ付け錫の加熱及び溶解によって解除され得る。
【0039】
図3は本発明による内視鏡10の近位部の断面の概略図である。内管14と、成形保持体60であって、その内側62が内管14上に配置され、リジッドフレキシブルプリント回路基板30がその上に載置される成形保持体60と、が明確に視認され得る。エポキシ樹脂被覆34されたリジッド領域32は、成形保持体60の平坦部78上に置かれ、一方、フレキシブル領域40は2つの他の平坦部74,76上に置かれ、平坦部74は長孔状の収容手段72を形成する成形部によって閉塞され、プリント回路基板30のフレキシブル領域40の端部領域58は、収容手段72内にてガイドされる。
【0040】
電子部品は、エポキシ樹脂被覆34によってオートクレーブ処理の影響から保護される。フレキシブルプリント回路基板が被覆34内から導出されるフィードスルーを介して、可能な限り、いかなる水分の浸透もできないようにするために、また、プリント回路基板30をフレキシブル領域40においても保護するために、先細になっている領域36における移行部および、フレキシブル領域40の他の部分も、はんだ接続が形成された後に、例えばシリコンコーティングによって水分から保護される。上記コーティングは好ましくは、少なくとも部分的にリジッド領域32のエポキシ樹脂被覆34と重ね合わされ、それにより、電子部品35は、その被覆34内のフィードスルーを介した水分の侵入から保護される。
【0041】
図面のみから把握される特徴、及び他の特徴と組み合わせて開示される個々の特徴も含む名称が付された全ての特徴は、単独で、また組み合わせで、本発明にとって必須であると考えられる。本発明による実施形態は、個々の特徴またはいくつかの特徴の組み合わせによって実現され得る。本発明の範囲内において、「特に」または「好ましくは」によって示される特徴は、任意の特徴として理解される。
【符号の説明】
【0042】
10…内視鏡、12…ハンドル、14…内管、16…空洞、18…ケーブル、20…装置、30…リジッドフレキシブルプリント回路基板、32…リジッド領域、34…エポキシ樹脂被覆、35…封入された電子部品、36…先細になっているフィードスルー、40…フレキシブル領域、41,42…目標屈曲点、44…切り欠き、46…アーム、48…金属接点領域、50…金属接点領域、52…金属接点領域、54…LED、56…導体トラック、58…プリント回路基板のフレキシブル領域の端部領域、60…成形保持体、62…内側、64…外側、66…収容外形、68…軸方向の係合部、70…周方向の係合部、72…長孔状の収容手段、74…平坦部、76…平坦部、78…平坦部、80…別のプリント回路基板のための収容外形、90…別のプリント回路基板、92…金属接点領域、94…直接的なはんだ接続
図1
図2
図3