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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】タイヤコールドリトレッド方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/56 20060101AFI20230420BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230420BHJP
   B60C 11/02 20060101ALI20230420BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20230420BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B29D30/56
B60C1/00 Z
B60C11/02 A
C09J9/02
C09J11/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021555550
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2020052479
(87)【国際公開番号】W WO2020188502
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】102019000004001
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ルカ レリオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェロエン ルスト
(72)【発明者】
【氏名】ブラム ヴィンセント
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-053340(JP,A)
【文献】特開2010-027364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0039161(US,A1)
【文献】特表2012-533458(JP,A)
【文献】特表2002-534299(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01477317(GB,A)
【文献】特開2005-280021(JP,A)
【文献】特開平05-138764(JP,A)
【文献】特開平03-090339(JP,A)
【文献】特開平09-011706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00- 30/72
B60C 1/00- 19/12
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(1)のコールドリトレッドのための方法であって:
-古くて摩耗したトレッドが前記タイヤから除去され、それにより、前記タイヤ(1)のケーシング(3)の赤道面(2)が露出される、除去ステップと;
-クッション(4)と、トレッドパターンを備えた予硬化済みトレッドストリップ(6)とが、前記ケーシング(3)の前記赤道面(2)の周りに配置される、配置ステップと;
-前記ケーシング(3)と前記予硬化済みトレッドストリップ(6)との間に配置された前記クッション(4)が硬化される、硬化ステップと;
を含み、
前記タイヤコールドリトレッド方法は、導電性接着剤化合物(5)が、前記クッション(4)と前記予備硬化トレッドストリップ(6)との間に、及び/又は、前記クッション(4)と前記ケーシング(3)との間に、配置される、導電性介入ステップを含むことを特徴とし;
前記導電性接着剤化合物(5)は、5~20重量%の範囲の量からなり、300 m2/gr以上の表面積を有するグラフェン、グラファイト、及びカーボンブラックから選択される、少なくとも1つの導電性材料を含み;
前記硬化ステップは、前記導電性接着剤化合物(5)が、熱源(S)又は電源(S)のいずれかに接続されて、それにより、熱を前記クッション(4)に伝達する、接続作業を含み、
前記導電性接着剤化合物(5)が有機溶媒をベースにする、タイヤコールドリトレッド方法。
【請求項2】
前記有機溶媒がn-ヘプタンであることを特徴とする、請求項に記載のタイヤコールドリトレッド方法。
【請求項3】
-前記硬化ステップの前に、流体状態にあるフィラー(7)が前記予硬化済みトレッドストリップ(6)上に配置され、それにより、前記予硬化済みトレッドストリップ(6)を覆うコーティングを形成する、コーティングステップと;
-前記硬化ステップ中に、前記予硬化済みトレッドストリップ(6)を覆う前記フィラー(7)に対して外側から押圧することにより、前記タイヤが、前記予硬化済みトレッドストリップ(6)に付与される半径方向の圧力を受ける、圧縮ステップと;
-前記硬化ステップに続いて、前記予硬化済みトレッドストリップ(6)から前記フィラー(7)が除去される、除去ステップと;
をさらに含む、請求項1又は2に記載のタイヤコールドリトレッド方法。
【請求項4】
前記フィラー(7)は、乾燥すると収縮する材料を含むことを特徴とする、請求項に記載のタイヤコールドリトレッド方法。
【請求項5】
前記収縮する材料は粘土であることを特徴とする、請求項に記載のタイヤコールドリトレッド方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のタイヤコールドリトレッド方法によってリトレッドされたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤコールドリトレッド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、「トラック」タイヤのリトレッドの分野で有利な用途を見出す。「トラック」タイヤのリトレッドは、一般性を失うことなく、以下の説明で明示的に参照される。
【0003】
「トラック」タイヤは、通常、最初の使用の最後にリトレッドされる。すなわち、「トラック」タイヤには、事前に除去された、古くて摩耗したトレッドに代えて、新しいトレッドが与えられる。「トラック」タイヤのリトレッドは、使用済みタイヤから、古くて摩耗したトレッドを機械的に除去することで、「ケーシング」を露出させ、続いて新しいトレッドをケーシングに取り付けることを含む。ケーシングへの新しいトレッドの取り付けは、ケーシングの周りに「トレッドストリップ」を巻き付けることを含む;続いて、ケーシングへのトレッドストリップの理想的な接着を確定するために、ケーシングは硬化プロセスを受ける。
【0004】
ホットリトレッドプロセスにおいて、トレッドストリップは、生であるとともにパターンを有しない。パターンは、硬化プロセス中に製造される。硬化プロセスは、所望のパターンを有する金型を備えた硬化プレス内で実施される。ホットリトレッドプロセスにおいて、硬化は、高温(150℃から160℃の範囲)及び圧力(約14から約16バールの範囲)で行われる。これらは、硬化プロセス中においてゴムに金型内を流れてトレッドのパターンを形成するのに十分な流動性を持たせるために必要である;しかしながら、これらの高温及び高圧に起因してケーシングが受ける熱的及び機械的ストレスは、ケーシングにさらなるストレスを引き起こす。
【0005】
コールドリトレッドプロセスにおいて、トレッドストリップ(「PCT-予硬化済みトレッドストリップ(Pre Cured Tread - strip)」とも呼ばれる)は、予め硬化され、パターンが既に与えられており、ケーシングと予硬化済みトレッドストリップとの間には、中間ストリップ(以下「クッション」という。)が介入されている。中間ストリップは、生ゴムで作られており、結合機能を有している。コールドリトレッドプロセスにおいて、硬化は、クッションを硬化させて、クッションの結合作用を通じて、ケーシングへのトレッドの理想的な接着を確定する、という唯一の目的を果たす。この硬化ステップは、トレッドのパターンの生成を意味するものではなく(トレッドは既に硬化されている)、100℃~125℃のオーダーの温度と4~6バールのオーダーの圧力とを必要とする。
【0006】
ホットリトレッドプロセスと比較した場合、コールドリトレッドプロセスの硬化ステップは、明らかに、大幅により低い温度及び圧力を必要とし、その結果、ケーシングは、より小さな熱的及び機械的なストレスにさらされる。
【0007】
コールドリトレッドプロセスは、ケーシングが有害な状態になるのを防ぐという利点があるものの、生産性が低いという欠点がある。
【0008】
さらに、コールドリトレッドプロセスにおいて、(クッションの介入とともに)ケーシングへのトレッドストリップの適切な接着を確実にするために、硬化中に、トレッドストリップをケーシングに対して適切に圧縮するために、半径方向の圧力が加えられる必要がある。既知のリトレッドプラントにおいて、硬化中に加えられるこの半径方向の圧力は、オートクレーブにタイヤを挿入することによって得られ、そこでは(約6バールの)過圧力が発生する。タイヤは予め2つの柔軟な「エンベロープ」(内側と外側)どうしの間に挿入される。ここで、最初に真空が生成され、続いて約4.5バールの圧力に達するまで空気が吹き込まれる;オートクレーブにおいて、エンベロープの内側(4.5バール)と外側(6バール)との間の圧力差(通常「DPC」として知られている。)が硬化サイクル全体にわたって維持され、トレッドをケーシングに対して圧縮するために必要な空気圧を生成する。
【0009】
「DPC」圧力差が生成されるオートクレーブとエンベロープとの使用により、製造業者はトレッド全体において均一な圧力を得ることができる。確かに、空気圧の均一性(これは、機械的な方法では決して達成できない。なぜなら、パターンの凹部の寸法、形状、及び数に起因して、パターンの凹部は到達され得ないからである。)は、ケーシングへのトレッドの理想的な接着を確実にする。
【0010】
ただし、オートクレーブとエンベロープとの使用は、様々な欠点の影響を受ける:第1に、使用中、オートクレーブは、大気圧よりも大幅に高い内圧を有し、そのため、機器の特定の安全設計とプラントのオペレーターが従うべき厳格な作業手順とを、必要とする。さらに、タイヤへのエンベロープの取り付けは、かなり長く、複雑である。実際、硬化中にエンベロープが破損した可能性がある場合(これは頻繁に発生する。)、オペレーターは、リトレッドプロセスを最初から再開したり、あるいは、場合によっては、リトレッドされているタイヤを廃棄したりする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、製造業者が、上記の従来技術に典型的な生産性及び安全性に関する欠点に直面する必要なしに、タイヤコールドリトレッドプロセスを実施できるようにするような、解決策を見つける必要がある。
【0012】
本発明の発明者らは、導電性接着剤化合物の使用を通じて、前記必要性を満たすことができる解決策を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主題は、タイヤのコールドリトレッドのための方法であり、当該方法は:
-古くて摩耗したトレッドがタイヤから除去され、それにより、タイヤのケーシングの赤道面が露出される、除去ステップと;
-クッションと、トレッドパターンを備えた予硬化済みトレッドストリップとが、ケーシングの赤道面の周りに配置される、配置ステップと;
-ケーシングと予硬化済みトレッドストリップとの間に配置されたクッションが硬化される、硬化ステップと;
を含み、
このリトレッド方法は、導電性接着剤化合物が、クッションと予備硬化トレッドストリップとの間に、及び/又は、クッションとケーシングとの間に、配置される、導電性介入ステップを含むことを特徴とし;
導電性接着剤化合物は、5~20重量%の範囲の量からなり、300 m2/gr以上の表面積を有するグラフェン、グラファイト、及びカーボンブラックから選択される、少なくとも1つの導電性材料を含み;
硬化ステップは、導電性接着剤化合物が、熱源又は電源のいずれかに接続されて、それにより、熱をクッションに伝達する、接続作業を含む。
【0014】
導電性接着剤化合物は、有機溶媒をベースにしていると好適であり;有機溶媒はn-ヘプタンであるとより好適である。
【0015】
以下、接着剤化合物とは、タイヤの2つのゴム部分どうしの間の接着性を高めるのを助けるためにタイヤの製造に有用な化合物のタイプ(一般に「セメント」として知られている。)を意味する。接着性化合物は、通常、有機溶剤をベースとしているため、高い接着効率と使いやすさとを示す。これらは、主に、有機溶剤におけるゴムの溶解性に起因し、ひいては、有機溶剤が蒸発すると、ゴムどうしが互いに溶けて1つの単位部品をほぼ形成することができることに起因する。
【0016】
この方法は、好ましくは、さらに以下のステップを含む:
-硬化ステップの前に、流体状態にあるフィラーが予硬化済みトレッドストリップ上に配置され、それにより、予硬化済みトレッドストリップを覆うとともに、圧力を容易に付与できるような平らで均一な表面を実現する、コーティングを形成する、コーティングステップ;
-硬化ステップ中に、予硬化済みトレッドストリップを覆うフィラーに対して外側から押圧することにより、タイヤが、トレッドストリップに付与される半径方向の圧力を受ける、圧縮ステップ;
-硬化ステップに続いて、予硬化済みトレッドストリップからフィラーが除去される、除去ステップ。
【0017】
フィラーは、乾燥すると収縮する材料を含むと好適であり;当該収縮する材料は、粘土であるとより好適である。
【0018】
本発明のさらなる主題は、本発明によるコールドリトレッド方法によってリトレッドされたタイヤである。
【0019】
以下、添付の図面を参照しつつ、単なる説明的かつ非限定的な例として、本発明の実施形態の説明がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】タイヤの概略図であり、このタイヤにおいて、古くて摩耗したトレッドが機械的に除去され、それにより、対応するケーシングの赤道面が露出している。
図2】リトレッドされるタイヤのケーシングの周りでのクッションの巻き付けの概略図である。
図3】クッション上への導電性接着剤化合物の配置の概略図である。
図4】導電性接着剤化合物を介入させた、クッションの周りでの予硬化済みトレッドストリップの巻き付けの概略図である。
図5】予め巻き付かれた予硬化済みトレッドストリップ上へのフィラーの付与の概略図である。
図6】リトレッドタイヤの硬化中の圧縮の概略図である。
図7】硬化後の予硬化済みトレッドストリップからのフィラーの除去の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1において、番号1は、全体として、古くて摩耗したトレッドが機械的に除去され、それにより、対応するケーシング3の赤道面2が露出している、タイヤを示している。
【0022】
古い使用済みトレッドを除去する手順は、既知であり、本発明には関係がないため、これ以上説明しない。
【0023】
図2は、クッション4がケーシング3の赤道面2上に巻き付けられる配置ステップを示している。当業者が知っているように、クッションは、生ゴムの中間ストリップであり、使用済みタイヤのケーシングと新しくて事前に硬化されたトレッドストリップとの間の結合機能を果たす。
【0024】
図3は、導電性接着剤化合物5がクッション4の露出面上に配置される、導電性介入ステップを示している。図3によれば、導電性接着剤化合物は、クッション4の露出面全体の上に配置されたのではなく、なるべくクッション4の露出面上に延びる破線に沿ってストリップの形態で配置されたものである。特に、この特定の例において、導電性接着剤化合物は、グラファイトが15重量%に達する量で溶解されたn-ヘプタンをベースとしている。
【0025】
例として、表Iは、導電性接着剤化合物のphr組成を示し、溶媒及び導電性材料に関してのみ重量パーセントを示している。
【0026】
【表1】
*導電性材料は、300 m2/gr以上の表面積を有するグラファイト、グラフェン、及びカーボンブラックから選択される。
【0027】
実験は、本発明の目的のために有効であるために、導電性材料(300 m2/gr以上の表面積を有するグラファイト、グラフェン、及びカーボンブラックから選択される。)の量は、導電性接着剤化合物内において5~20重量%の範囲の量が含まれなければならないことを示した。
【0028】
導電性接着剤化合物5のストリップは、2つの自由端5aを有し、これらは、以下でより詳細に説明されるように、電気的又は熱的な接点を作り出すのに有用である。
【0029】
上記において本実施形態で説明したことに反して、導電性接着剤化合物5は、クッション4とケーシング3の赤道面2との間に配置されることができる。又は、導電性接着剤化合物5は、クッション4とケーシング3の赤道面2との間、及び、クッション4と新しい予硬化済みトレッドストリップとの間の両方に配置されることができる。
【0030】
上記において本実施形態で説明したことに反して、導電性接着剤化合物は、クッションの表面上で連続して延在するとともに、電源又は熱源に接続されるように配置された部分を有する限り、異なる形態に従って配置されることができる。
【0031】
図4は、予硬化済みトレッドストリップ6が、クッション4上に巻き付けられる、配置ステップの別の作業を示しており、クッション4上には導電性接着剤化合物5が事前に配置されている。予硬化済みトレッドストリップ6は、適切な金型内で既に硬化されているので、画定されたトレッドパターンを有することに留意されたい。
【0032】
図5は、予硬化済みトレッドストリップ6の巻き付け後、かつ、タイヤ1に硬化ステップを受けさせる前に、流体状態のフィラー7が予硬化済みトレッドストリップ6上に配置される、コーティングステップを示している。フィラー7は、トレッドのパターンを完全に満たし(すなわち、トレッドパターンの溝に入り込む)、予硬化済みトレッドストリップ6を覆うコーティングを形成する。言い換えれば、フィラー7は、予硬化済みトレッドストリップ6の「ネガティブ」を作り出す。
【0033】
特に、フィラー7は、予硬化済みトレッドストリップ6を完全に覆うように、したがって、外側に平坦な赤道面(すなわち、平坦な表面、すなわち、凹部及び溝のない)を有するように、予硬化済みトレッドストリップ6上に付与される。換言すれば、フィラー7は、予硬化済みトレッドストリップ6を「平らにする」コーティングを形成するために使用され、したがって、外側に向かって、平坦な赤道面(すなわち、凹部及び溝のない滑らかな表面)を与える。
【0034】
図5に示される実施形態において、フィラー7は、予硬化済みトレッドストリップ6がケーシング3の周りに巻き付けられた後(すなわち、予硬化済みトレッドストリップ6が環状形状を有するとき)、付与装置8によって予硬化済みトレッドストリップ6上に付与される。
【0035】
好ましい実施形態によれば、フィラー7は粘土で作られることができる。粘土は、見つけやすく、あまり高価ではなく、さらなるリトレッド作業のために、又は一般に、リサイクル可能である、という利点を有する。さらに、乾燥時に粘土が自然に収縮することにより、フィラー7は、トレッドのパターンから容易に除去されることもできる。
【0036】
図6は、タイヤ1が硬化金型9内に収容される、硬化及び圧縮ステップを示している。硬化金型9は、複数の押圧体10からなる。複数の押圧体10は、それぞれが扇形のような形状であり、全て一緒になって、内側にタイヤ1を収容するように設計されたリングを形成する。
【0037】
図によれば、導電性接着剤化合物5の両端5aは、熱源又は電源に接続されており、これは、概略的に示され、Sで示されている。Sが電源である場合、ジュール効果により、導電性接着剤化合物5は温度が高くなり、その熱がクッション4に伝達され、クッション4の硬化を引き起こす。
【0038】
このように、熱は、硬化プロセスに関与するタイヤ1の部分(クッション)にのみ伝達されることができる。この可能性は、タイヤ全体を加熱プロセスにかける必要がないという大きな利点を提供し、タイヤの既に硬化した部分が劣化するリスクがないとともに、硬化ステップがより速くなる、という結果をもたらす。
【0039】
導電性接着剤化合物5も熱伝導性を有するので、上記のものに代わるものは、導電性接着剤化合物5を熱源に接続することである。この場合、Sは電源ではなく熱源を示す。
【0040】
各押圧体10は、アクチュエータ11(例えば、空気圧又は油圧シリンダ)によって半径方向に動かされる(したがって、タイヤ1に対して半径方向に押される)。好ましい実施形態によれば、アクチュエータ11は、調整された力で、中心に向かって半径方向の圧力(すなわち、タイヤ1を圧縮する半径方向の圧力)を押圧体10に加えるように設計される。調整された力は、次のように決定される。硬化プロセス中、タイヤ1(すなわち、タイヤ1の一部である予硬化済みトレッドストリップ6)は、所望の圧力で半径方向に圧縮される;例として、アクチュエータ11は、押圧体10を半径方向に押すために、調整された圧力を有する空気圧又は油圧システムを使用することができ、又は、調整されたばねを備えた完全に機械的なシステムを使用することができる。
【0041】
硬化プロセス中、タイヤ1は周囲圧力に保たれ、半径方向の圧力が、硬化金型9の押圧体10によって、及び、フィラー7の介入をもって、予硬化済みトレッドストリップ6に機械的に加えられる。換言すれば、硬化金型14の押圧体10は、外側に滑らかな表面を有するフィラー7に対して押圧し(したがって、押圧体10によって加えられる圧力は、フィラー7全体に均一に分散される。);フィラー7は、押圧体10によって加えられた圧力を、予硬化済みトレッドストリップ6全体に均一に伝達する。なぜなら、フィラー7は、予硬化済みトレッドストリップ6全体に(すなわち、トレッドパターンの全ての溝にさえ)均一に分布しているからである。結果として、フィラー7は、予硬化済みトレッドストリップ6の形状をネガティブに再現するコーティングであるため、押圧体10によって予硬化済みトレッドストリップ6全体に掛かる圧力の「分配器」のように機能する。
【0042】
図7は、硬化ステップの後、フィラー7が、概略的に示され12で示される適切な装置によって、予硬化済みトレッドストリップ6から除去される、除去ステップを示している。この作業で、タイヤ1のリトレッドプロセスが終了する。
【0043】
要約すると、本発明によるコールドリトレッド方法は、オートクレーブを使用せずに、また、唯一のクッションを加熱することによって、硬化ステップが実施されることを確実にする。これは、より迅速で安全な硬化を行う(オートクレーブの使用によって引き起こされる安全性の問題を回避する)とともに、タイヤの既に硬化した部分が、それらを劣化させ得るような加熱プロセスを受ける必要性を大幅に回避できる、という重要な利点につながる。これらの結果は、クッションと予硬化済みトレッドストリップとの間、及び/又はクッションとケーシングとの間に配置された、導電性接着剤化合物の存在のおかげで得られる。
【0044】
さらに、予硬化済みトレッドストリップがフィラーで覆われているため、製造業者は真空エンベロープを使用する必要がなく、ひいては、複雑なタイヤの装着/脱着作業やエンベロープの破損のリスクを回避できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7