IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一般社団法人Brain’s Consensus Communicationsの特許一覧

<>
  • 特許-妊婦用支腹具 図1
  • 特許-妊婦用支腹具 図2
  • 特許-妊婦用支腹具 図3
  • 特許-妊婦用支腹具 図4A
  • 特許-妊婦用支腹具 図4B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】妊婦用支腹具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20230420BHJP
   A41B 9/12 20060101ALI20230420BHJP
   A41C 1/10 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A61F5/01 E
A41B9/12 B
A41C1/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022183360
(22)【出願日】2022-11-16
【審査請求日】2022-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515212389
【氏名又は名称】一般社団法人Brain’s Consensus Communications
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【代理人】
【識別番号】100217227
【弁理士】
【氏名又は名称】野呂 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲也
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211213737(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1誘導体と、第2誘導体と、前記第1誘導体および前記第2誘導体と接続された支腹部とを備え、
前記第1誘導体は、使用者の左肩に装着される左肩装着部と、
前記支腹部の右側と接続する支腹部右接続部と、
少なくとも前記使用者の背面側を通り、前記左肩装着部と前記支腹部右接続部とを接続し、前記支腹部右接続部の方向へ引っ張る第1引張体と、
前記左肩装着部と前記第1引張体とを接続する第3引張体を有し、
前記第2誘導体は、前記使用者の右肩に装着される右肩装着部と、
前記支腹部の左側と接続する支腹部左接続部と、
少なくとも前記使用者の背面側を通り、前記右肩装着部と前記支腹部左接続部とを接続し、前記支腹部左接続部の方向へ引っ張る第2引張体と、
前記右肩装着部と前記第2引張体とを接続する第4引張体を有し、
前記第1引張体は、
前記使用者の左脇に装着される左脇装着部を有し、
前記左肩装着部から前記使用者の前面、前記左脇装着部、および前記使用者の背面を経由して前記支腹部右接続部に接続し、
前記第2引張体は、
前記使用者の右脇に装着される右脇装着部を有し、
前記右肩装着部から前記使用者の前面、前記右脇装着部、および前記使用者の背面を経由して前記支腹部左接続部に接続し、
前記第3引張体は、
前記第1引張体と、前記使用者の背面の縦方向中心線より右側で接続し、
前記第4引張体は、
前記第2引張体と、前記使用者の背面の縦方向中心線より左側で接続する構成であり、
前記支腹部は、前記使用者の前方に配置され、かつ、へそより下から下腹部までの幅に形成されており、
前記第1誘導体の前記第3引張体の端部は前記第1引張体に固定され、
前記第2誘導体の前記第4引張体の端部は前記第2引張体に固定され、
前記第1引張体と前記第2引張体が交差している第1第2交差部と、前記第3引張体と前記第4引張体が交差している第3第4交差部は、両方とも交差しているだけで固定されておらずそれぞれが自由に移動できる構成である
妊婦用支腹具。
【請求項2】
前記支腹部右接続部と、前記支腹部左接続部は、前記支腹部の長さを変化させる支腹部長さ調節機能部を有し、
前記支腹部長さ調節機能部は、前記使用者の脇腹を含む脇腹より背中側に位置している
請求項1記載の妊婦用支腹具。
【請求項3】
前記支腹部は、幅方向の対向する端部それぞれに、前記使用者のお腹と接する使用者へそ下当接部と使用者下腹部当接部とを有し、
前記使用者へそ下当接部は、前記使用者下腹部当接部よりも上方向に配置されており、
前記使用者に装着された際に、当該使用者の側面方向から見て、水平方向の仮想線と前記第1引張体または前記第2引張体からの前記使用者下腹部当接部の延長線とが成す角度よりも、水平方向の仮想線と前記第1引張体または前記第2引張体からの前記使用者へそ下当接部の延長線とが成す角度が小さくなる
請求項2記載の妊婦用支腹具。
【請求項4】
前記支腹部は、前記支腹部右接続部および前記支腹部左接続部付近の幅の大きさよりも、前記使用者の前面に配置される箇所の幅の大きさの方が大きくなるように、長手方向の中央付近に向かって段々と幅広となるように形成されている
請求項3記載の妊婦用支腹具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、妊婦の腹部および腰部を支える妊婦用支腹具に関する。
【背景技術】
【0002】
妊娠している女性(妊婦)は、胎児が成長するにつれてお腹が前方に大きく張り出してくる。この状態は、歩行する際に、重心が前方にあることから、姿勢が前のめりになりがちであり、その姿勢の癖がついてしまうことで、出産後のスタイルや姿勢が悪くなるばかりでなく、肩こりや腰痛などの身体の不調を引き起こす原因ともなり得る。
【0003】
例えば、妊婦の腹部を補助するものとして、妊婦用の腹帯が提案されている。例えば、少なくとも胸部から腰までを伸縮性素材により被覆可能な筒状に形成された妊婦用腹帯が提案されている(特許文献1参照)。しかし、このような妊婦用の腹帯は、使用者の姿勢を誘導するものではなく、重心が継続して前方にあることで発生する姿勢の悪化を正せるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-300642
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述の問題に鑑みて、妊婦の姿勢を正しい姿勢に誘導し、姿勢の悪化が継続することで出産後に身体の不調を引き起こすことがないような妊婦用支腹具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、第1誘導体と、第2誘導体と、前記第1誘導体および前記第2誘導体と接続された支腹部とを備え、前記第1誘導体は、使用者の左肩に装着される左肩装着部と、前記支腹部の右側と接続する支腹部右接続部と、少なくとも前記使用者の背面側を通り、前記左肩装着部と前記支腹部右接続部とを接続し、前記支腹部右接続部の方向へ引っ張る第1引張体と、前記左肩装着部と前記第1引張体とを接続する第3引張体を有し、前記第2誘導体は、前記使用者の右肩に装着される右肩装着部と、前記支腹部の左側と接続する支腹部左接続部と、少なくとも前記使用者の背面側を通り、前記右肩装着部と前記支腹部左接続部とを接続し、前記支腹部左接続部の方向へ引っ張る第2引張体と、前記右肩装着部と前記第2引張体とを接続する第4引張体を有し、前記第1引張体は、前記使用者の左脇に装着される左脇装着部を有し、前記左肩装着部から前記使用者の前面、前記左脇装着部、および前記使用者の背面を経由して前記支腹部右接続部に接続し、
前記第2引張体は、前記使用者の右脇に装着される右脇装着部を有し、前記右肩装着部から前記使用者の前面、前記右脇装着部、および前記使用者の背面を経由して前記支腹部左接続部に接続し、前記第3引張体は、前記第1引張体と、前記使用者の背面の縦方向中心線より右側で接続し、前記第4引張体は、前記第2引張体と、前記使用者の背面の縦方向中心線より左側で接続する構成であり、前記支腹部は、前記使用者の前方に配置され、かつ、へそより下から下腹部までの幅に形成されている妊婦用支腹具であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明により、妊婦の姿勢を正しい姿勢に誘導し、姿勢の悪化が継続することで出産後に身体の不調を引き起こすことがないような妊婦用支腹具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】使用者が装着した際の本発明に係る妊婦用支腹具の背面図。
図2】使用者が装着した際の本発明に係る妊婦用支腹具の右背面斜視図。
図3】使用者が装着した際の本発明に係る妊婦用支腹具の正面図。
図4A】使用者が装着していない際の本発明に係る妊婦用支腹具の斜視図。
図4B】妊婦用支腹具の支腹部右接続部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、使用者が装着した際の本発明に係る妊婦用支腹具1の背面図であり、図2は、使用者が装着した際の本発明に係る妊婦用支腹具1の右背面斜視図であり、図3は、使用者が装着した際の本発明に係る妊婦用支腹具1の正面図であり、図4Aは、使用者が装着していない際の本発明に係る妊婦用支腹具1の斜視図であり、図4Bは、妊婦用支腹具1の支腹部右接続部25Rの拡大図である。
なお、本発明における「使用者」とは、妊娠後に所定の期間が経過し、お腹が前方に張り出している妊婦である。また、本明細書において「肩」とは、腕の上端部から首元までの範囲を含む人体の部分のことをいう。
【0010】
妊婦用支腹具1は、ベルト状または帯状の第1誘導体2と、ベルト状または帯状の第2誘導体3と、支腹部20とを有する。第1誘導体2、第2誘導体3および支腹部20は、人が軽い力で引っ張っても大きく伸縮しない程度の伸縮性を有する素材で形成されている。伸縮性が高いと姿勢誘導効果を発揮しないが、若干の伸縮性を有する場合は、使用者が装着した際の腹部の圧迫感を低減することができる。このような素材としては例えば、繊維やゴムバンドを使用することができる。
【0011】
第1誘導体2は、左肩装着部10Lと、使用者の前面から背面にかけて左肩装着部10Lと支腹部20を繋ぐ第1引張体12Lと、使用者の背面で左肩装着部10Lと第1引張体12Lを繋ぐ第3引張体11Lと、使用者の右半身側で支腹部20と接続する支腹部右接続部25Rとで構成されている。また、第2誘導体3は、右肩装着部10Rと、使用者の前面から背面にかけて右肩装着部10Rと支腹部20を繋ぐ第2引張体12Rと、使用者の背面で右肩装着部10Rと第2引張体12Rを繋ぐ第4引張体11Rと、使用者の右半身側で支腹部20と接続する支腹部左接続部25Lとで構成されている。
【0012】
第1引張体12Lは、左脇装着部17Lを有し、使用者の左肩(左肩装着部10L)から前面で腕の付け根に沿ったあと、使用者の左脇(左脇装着部17L)から背面に回り、使用者の右側の腰から右脇腹付近へ伸びている。また、右脇腹側の端部に右側支腹部長さ調節機能部121Rを備える。そして、左肩側の端部が、第3引張体11Lと連続して接続され、右脇腹側の端部が右側支腹部長さ調節機能部121Rによって、支腹部右接続部25Rで支腹部20と接続されている。また、第1引張体12Lは、左脇装着部17L付近の幅の大きさよりも、支腹部右接続部25R付近の幅の大きさの方が大きくなるように形成されている。
【0013】
第3引張体11Lは、使用者の背面で使用者の左肩(左肩装着部10L)で、第1引張体12Lから連続して伸び、使用者の背面で第1引張体12Lと右側引張体接続部18Rで固定されている。右側引張体接続部18Rは、使用者の背面の縦方向中心線より右側に配置される。第3引張体11Lと右側引張体接続部18Rとの固定方法は、面ファスナー、ボタン、または縫い付けといった種々の固定方法を使用できる。
【0014】
左肩装着部10Lは、使用者の前方の左腕の付け根に沿って延びる第1引張体12Lと、使用者の背中に沿って左肩から右側腰部に向かって延びる第3引張体11Lの境界である。そして、左肩装着部10Lの横幅は、1cm~7cmとすることができ、2cm~6cmが好適であり、3cm~5cmとすることがより好適である。左肩装着部10Lの厚みは、横幅より薄い。これにより、引っ張られても横幅の分だけ力が分散されて痛くなく、かつ、使用者の身体に薄くフィットしてごわつかず、目立たないようにできる。
【0015】
第2誘導体3は、右肩装着部10Rと、使用者の前面から背面にかけて伸びて、右肩装着部10Rと支腹部20とを繋ぐ第2引張体12Rと、使用者の背面で右肩装着部10Rと第2引張体12Rを繋ぐ第4引張体11Rと、使用者の右半身側で支腹部20と接続する支腹部左接続部25Lとで構成されている。
【0016】
第2引張体12Rは、右脇装着部17Rを有し、使用者の右肩(右肩装着部10R)から前面で腕の付け根に沿ったあと、使用者の右脇(右脇装着部17R)から背面に回り、使用者の左側の腰から左脇腹付近へ伸びている。また、左脇腹側の端部に左側支腹部長さ調節機能部121Lを備える。そして、右肩側の端部が、第4引張体11Rと連続して接続され、左脇腹側の端部が左側支腹部長さ調節機能部121Lによって、支腹部左接続部25Lで支腹部20と接続されている。また、第2引張体12Rは、右脇装着部17R付近の幅の大きさよりも、支腹部左接続部25L付近の幅の大きさの方が大きくなるように形成されている。
【0017】
第4引張体11Rは、使用者の背面で使用者の右肩(右肩装着部10R)から、第2引張体12Rから連続して伸び、使用者の背面で第2引張体12Rと左側引張体接続部18Lで固定されている。左側引張体接続部18Lは、使用者の背面の縦方向中心線より左側に配置される。第4引張体11Rと左側引張体接続部18Lとの固定方法は、面ファスナー、ボタン、または縫い付けといった種々の固定方法を使用できる。
【0018】
右肩装着部10Rは、使用者の前方の右腕の付け根に沿って延びる第2引張体12Rと、使用者の背中に沿って右肩から左側腰部に向かって延びる第4引張体11Rの境界である。そして、右肩装着部10Rの横幅は、1cm~7cmとすることができ、2cm~6cmが好適であり、3cm~5cmとすることがより好適である。右肩装着部10Rの厚みは、横幅より薄い。これにより、引っ張られても横幅の分だけ力が分散されて痛くなく、かつ、使用者の身体に薄くフィットしてごわつかず、目立たないようにできる。
【0019】
したがって、使用者が妊婦用支腹具1を装着した際に、左肩装着部10Lが、使用者の左肩との上面に沿うように装着され、第1引張体12Lが、左肩装着部10Lにおいて第3引張体11Lと接続され、左肩装着部10Lから使用者の前方の腕の付け根に沿ったあと左脇装着部17Lを形成しながら脇の下から背中側を通り、支腹部20と支腹部左接続部25Lで接続される。また、同様に、使用者が妊婦用支腹具1を装着した際に、右肩装着部10Rが、使用者の右肩との上面に沿うように装着され、第2引張体12Rが、右肩装着部10Rにおいて第4引張体11Rと接続され、右肩装着部10Rから使用者の前方の腕の付け根に沿ったあと右脇装着部17Rを形成しながら脇の下から背中側を通り、支腹部20と支腹部右接続部25Rで接続されている。
【0020】
また、第1誘導体2と第2誘導体3は、第1引張体12Lと第2引張体12Rが交差している第1第2交差部16と、第3引張体11Lと第4引張体11Rが交差している第3第4交差部14とを形成する。第1第2交差部16において、第1引張体12Lと第2引張体12Rとは固定されていない。また、第3第4交差部14において、第3引張体11Lと第4引張体11Rとは固定されていない。したがって、第1第2交差部16および第3第4交差部14は、それぞれが自由に移動・伸縮することができる。
【0021】
支腹部20は、帯状に形成され、長手方向の両端部の一方に右側支腹部長さ調節機能部121Rを備え、他方に左側支腹部長さ調節機能部121Lを備える。そして、支腹部20は、右側支腹部長さ調節機能部121Rによって、支腹部右接続部25Rで第1引張体12Lと接続され、左側支腹部長さ調節機能部121Lによって、支腹部左接続部25Lで第2引張体12Rと接続されている。また、支腹部20は、使用者が妊婦用支腹具1を装着した際に、腹部前方に配置され、使用者のへそ100より下から下腹部の範囲となるような幅を有し、幅方向の対向する端部それぞれに、使用者のお腹と接する使用者へそ下当接部21と使用者下腹部当接部22とを有する。使用者へそ下当接部21は、使用者下腹部当接部22よりも方向に配置されている。支腹部20の幅は、支腹部右接続部25Rおよび支腹部左接続部25L付近(長手方向の両端付近)の幅の大きさよりも、使用者の前面に配置される箇所(長手方向の中央付近)の幅の大きさの方が大きくなるように、長手方向の中央付近に向かって段々と幅広となるように形成されている。また、第1誘導体2における左脇装着部17Lの幅の大きさよりも、支腹部20における支腹部左接続部25L付近の幅の大きさ、使用者のお腹と背中の境界付近の幅の大きさ、および使用者の前面に配置される箇所の幅の大きさの方が大きくなるように形成されている。同様に、第2誘導体3における右脇装着部17Rの幅の大きさよりも、支腹部20における支腹部右接続部25R付近の幅の大きさ、使用者のお腹と背中の境界付近の幅の大きさ、および使用者の前面に配置される箇所の幅の大きさの方が大きくなるように形成されている。
【0022】
また、支腹部20は、使用者に装着された際に、使用者の右側面方向から見て、水平方向の仮想線と第1引張体12Lからの使用者へそ下当接部21の延長線とが成す角度S1と、水平方向の仮想線と第1引張体12Lからの使用者下腹部当接部22の延長線とが成す角度S2について、S2がS1より大きくなる。すなわち、支腹部20は、使用者に装着された際に、使用者の右側面方向から見て、使用者下腹部当接部22から使用者へそ下当接部21にかけて湾曲または直線に傾斜している構成である角度S1およびS2は、水平より20°から70°の範囲を有する。すなわち、支腹部20は、使用者の前方下方で使用者の下腹部に当接する使用者下腹部当接部22から、使用者の前方で使用者下腹部当接部22より上方かつ前方の使用者へそ下当接部21までが、水平より20°から70°の範囲で湾曲または直線に傾斜している構成である。
【0023】
右側支腹部長さ調節機能部121Rは、第1引張体12Lと、支腹部20のそれぞれに、お互いが対となるように設けられている。右側支腹部長さ調節機能部121Rは、例えば、面ファスナーであって、図4Bに示すように、第1引張体12Lの支腹部20側端部の片面(内側面または外側面)に雄型面ファスナー30a(または雌型面ファスナー)が設けられ、支腹部20の第1引張体12L側端部の片面(外側面または内側面)に雌型面ファスナー30b(または雄型面ファスナー)が設けられている。なお、面ファスナーは、雄型と雌型が表裏にそれぞれ配置されている一体型のものでもよい。このような場合、第1引張体12Lおよび支腹部20の一方に雄型面ファスナー面が配置され、他方に雌型面ファスナー面が配置されている。そして、右側支腹部長さ調節機能部121Rによって、第1引張体12Lと支腹部20とが接続され、支腹部右接続部25Rを形成している。言いかえると、支腹部右接続部25Rは、右側支腹部長さ調節機能部121Rを有している。右側支腹部長さ調節機能部121Rは、第1引張体12Lと、支腹部20に設けられている少なくともいずれか一方の長手方向(引張方向)の長さAまたはBが5cm以上となるように設けられている。
【0024】
なお、図示省略するが、左側支腹部長さ調節機能部121Lは、右側支腹部長さ調節機能部121Rと同様に、第2引張体12Rと、支腹部20のそれぞれに、お互いが対となるように設けられている。左側支腹部長さ調節機能部121Lは、例えば、面ファスナーであって、第2引張体12Rに雄型面ファスナー30a(または雌型面ファスナー)が設けられ、支腹部20に雌型面ファスナー30b(または雄型面ファスナー)が設けられている。なお、面ファスナーは、雄型と雌型が表裏にそれぞれ配置されている一体型のものでもよい。このような場合、第2引張体12Rおよび支腹部20の一方に雄型面ファスナー面が配置され、他方に雌型面ファスナー面が配置されている。そして、左側支腹部長さ調節機能部121Lによって、第2引張体12Rと支腹部20とが接続され、支腹部左接続部25Lを形成している。言いかえると、支腹部左接続部25Lは、左側支腹部長さ調節機能部121Lを有している。左側支腹部長さ調節機能部121Lは、第2引張体12Rと、支腹部20に設けられている少なくともいずれか一方の長手方向の長さが5cm以上となるように設けられている。
【0025】
すなわち、本発明の妊婦用支腹具1は、使用者が装着していない状態では、図4Aに示すように、平面状で真ん中(支腹部20の中央付近に該当する)が幅広の帯状の布で、両袖部分(長手部分、第1誘導体2および第2誘導体3に該当する)を幅方向へ湾曲させて、その端部を本体(第1引張体12Lおよび第2引張体12Rに該当する)に固定させた(固定位置が右側引張体接続部18Rおよび左側引張体接続部18Lに該当する)構造である。右側支腹部長さ調節機能部121Rおよび左側支腹部長さ調節機能部121Lは、使用状態に装着した際に、利用者の下腹部には位置せず、脇腹を含む脇腹より背中側に位置する。このように右側支腹部長さ調節機能部121Rおよび左側支腹部長さ調節機能部121Lが脇腹より背中側(脇腹を含む)に位置することで、下腹部全体を違和感なく優しく支えることができ、かつ、利用者の体形に合わせて適切な長さに調整することができる。また、右側支腹部長さ調節機能部121Rおよび左側支腹部長さ調節機能部121Lは、支腹部20の幅(装着時の下腹部の斜め上下方向の長さ)よりも短い幅に形成されている。これにより、右側支腹部長さ調節機能部121Rおよび左側支腹部長さ調節機能部121Lが少ない面積となって不快に感じることがなく、かつ、広い面積の支腹部20で下腹部を優しく支えることができる。
【0026】
使用者は、支腹部20が使用者自身の前方となるように、第1引張体12Lと第3引張体11Lとで形成された環状部に左腕を通し、第2引張体12Rと第4引張体11Rとで形成された環状部に右腕を通すことで、妊婦用支腹具1を装着する。このとき、右側引張体接続部18Rおよび左側引張体接続部18Lは、製造段階でまたは使用者によってあらかじめ固定されており、使用者が、自身の下腹部に沿って支腹部20が配置されるように、右側支腹部長さ調節機能部121Rおよび左側支腹部長さ調節機能部121Lで支腹部20(使用者下腹部当接部22および使用者へそ下当接部21)の長さを調整し、支腹部左接続部25Lおよび支腹部右接続部25Rを固定する。
【0027】
すなわち、使用者の左肩には、左肩装着部10Lが装着され、支腹部20が使用者の腹部を下方向から持ち上げるように配置されると、各図の矢印の方向に向かって力がかかり、第1引張体12Lおよび第3引張体11Lによって、上下の2方向から背中側および右腰方向へ引っ張られる。同様に、使用者の右肩は、右肩装着部10Rが装着され、支腹部20が使用者の腹部を下方向から持ち上げるように配置されると、各図の矢印の方向に向かって力がかかり、第2引張体12Rおよび第4引張体11Rによって、上下の2方向から背中側、左腰方向へ引っ張られる。このとき、第1誘導体2、第2誘導体3、および支腹部20のそれぞれは、人が軽い力で引っ張っても大きく伸縮しない程度の伸縮性を有する素材で形成されているため、お腹の大きさや呼吸による上下運動などである程度変形し、使用者のお腹、肩、および背中を強く圧迫しない。さらに、使用者が妊婦用支腹具1を装着すると、お腹の重みによって、左右の肩が開き、胸を張り、使用者の背筋が伸びるような、使用者が上半身を起こしたような姿勢に誘導される。
【0028】
また、使用者は、右側支腹部長さ調節機能部121Rおよび左側支腹部長さ調節機能部121Lによって、支腹部20の長さ(使用者下腹部当接部22および使用者へそ下当接部21の長さ)を自由に調節することができる。
【0029】
以上の構成により、妊婦の姿勢を正しい姿勢に誘導できる妊婦用支腹具を提供することができる。
妊婦用支腹具1は、使用者の前方に配置され、かつ、へそより下から下腹部までの幅に形成されている支腹部20を備え、お腹の重みと、支腹部20と接続された第1誘導体2および第2誘導体3とによって、使用者の左右の肩が開き、胸を張り、背筋が伸びるような、使用者が上半身を起こしたような姿勢に誘導する。より詳細には、左右の肩甲骨を対側の下半身に向かって引っ張ることができる。このため、大きなお腹によって重心が前方にあるにもかかわらず、左右の肩甲骨を背中側で互いに引っ張り合わせて使用者の背筋を伸ばし、さらに、背骨に集中している神経に刺激を与え、本来の機能を十分に果たしていなかった部位(省エネモードとなっていた部位)を機能させ、その部位の出力が上がり、力を発揮しやすくさせることができる。したがって、使用者は、大きなお腹を有した状態であっても、正しい姿勢で無駄な力を入れずに動作を行うことができる。また背中の神経が刺激されて筋肉へ送る神経伝達信号の出力が上がり、各部の筋力が増大し、各部の負担が軽減される。また、姿勢が矯正されるため、腰部、肩、および背中に負担をかけずに生活することができ、姿勢の悪化が継続することで出産後に身体の不調を引き起こさないようにすることができる。さらに、使用者は、妊婦用支腹具1によって、身体全体を正しい姿勢にすることで、身体のバランスが保たれ、余計な力を使うことなく身体を支えることができる。これにより、重心が前方にあることから使用者の身体の使い方が偏って発生する頭痛や肩こりなどの症状を軽減することもできる。
【0030】
また、妊婦用支腹具1は、使用者の左右の肩甲骨をそれぞれ左右反対側の下半身方向に引っ張りながら引き合わせる形態である。この構成により、左右の肩甲骨を後方へそらして胸を左右方向に開くようにする姿勢誘導と、背中の上方と上半身下方とを引き合わせるようにして胸を上下方向に張るようにする姿勢誘導の両方を同時に実行することができ、効果的に姿勢を伸ばして正しい姿勢とすることができる。また、左肩装着部10Lから支腹部右接続部25Rに向けて引っ張られ、同じ強さで右肩装着部10Rから支腹部左接続部25Lに向けて引っ張られることにより、使用者の胸を左右に広げ、かつ、胸を前上方へ張るように反らすことができる。
【0031】
また、第1引張体12Lと第2引張体12Rが交差している第1第2交差部16と、第3引張体11Lと第4引張体11Rが交差している第3第4交差部14は、両方とも交差しているだけで固定されておらず、それぞれが自由に移動・伸縮できる。この構成により、第1引張体12Lおよび第3引張体11Lによって左肩を右腰から引っ張ることができ、第2引張体12Rおよび第4引張体11Rによって右肩を左腰から引っ張ることができる。第1第2交差部16および第3第4交差部14で固定すると背中中心から引っ張ることになるが、そうではなく肩を反対側の腰から引っ張ることで、より効果的に姿勢を正し、身体のバランスを整え、肩、背中、および腰の可動域を保ち、自由に動くことができる。こうした構造により、万が一の転倒等の際、とっさに何かに掴まったり、手を付く等して事故を未然に防ぐことが出来る。
【0032】
また、妊婦用支腹具1は、使用者の左肩を、第1引張体12Lおよび第3引張体11Lによって上下方向それぞれから同時に右腰方向に引っ張る形態であり、使用者の右肩を、第2引張体12Rおよび第4引張体11Rによって上下方向それぞれから同時に左腰方向に引っ張る構成である。この構成により、引張体が左右どちらか1本のときと比較して、お腹によって肩にかかる力が分散され、より身体への負担を軽減することができる。
【0033】
また、第1引張体12Lは、左脇装着部17L付近における幅方向の大きさよりも、支腹部右接続部25R付近における幅方向の大きさの方が大きく設定され、同様に、第2引張体12Rは、右脇装着部17Rにおける横幅よりも、左側引張体接続部18Lおよび支腹部左接続部25Lにおける横幅が広く設定される。この構成により、支腹部20を脱落することなく強固に保持することができる。
【0034】
また、支腹部右接続部25Rと、支腹部左接続部25Lは、それぞれ支腹部20の長さを変化させる右側支腹部長さ調節機能部121Rと、左側支腹部長さ調節機能部121Lを有する。この構成により、使用者は、支腹部20における使用者下腹部当接部22および使用者へそ下当接部21の長さを自由に調節することができる。すなわち、妊娠期間が長くなるにつれてお腹の大きさが次第に大きくなり、人が軽い力で引っ張っても大きく伸縮しない程度の伸縮性である支腹部20では、長さが足りなくなるところ、右側支腹部長さ調節機能部121Rおよび左側支腹部長さ調節機能部121Lによって、支腹部20の長さを長くすることで、姿勢の誘導を継続しながら腹部を適切な締め付けで支えることができる。
【0035】
また、右側支腹部長さ調節機能部121Rおよび左側支腹部長さ調節機能部121Lは、第1引張体12Lおよび第2引張体12Rと、支腹部20とのそれぞれにお互いが対となるように設けられた、雄型面ファスナーと雌型面ファスナーにより形成され、雄型面ファスナーと雌型面ファスナーの少なくとも一方の引張方向の長さAまたはBが5cm以上である。この構成により、使用者はお腹の大きさの段階に応じて、自由に、かつ、簡単に支腹部20の長さを変更することができる。さらに、支腹部右接続部25Rおよび支腹部左接続部25Lの引張方向の長さを十分に確保することができ、支腹部20が脱落することなく使用者のお腹を支えることができる。
【0036】
また、支腹部20は、支腹部右接続部25Rおよび支腹部左接続部25L付近(長手方向の両端付近)の幅の大きさよりも、使用者の前面に配置される箇所(長手方向の中央付近)の幅の大きさ方が大きくなるように形成されている。このような構成により、最も使用者の重心を前方に移動させるお腹の中心付近にフィットして、しっかりと支えることができる。
【0037】
支腹部20は、使用者の前方下方で使用者の下腹部に当接する使用者下腹部当接部22から、使用者の前方で使用者下腹部当接部22より上方かつ前方の使用者へそ下当接部21までが、水平より20°から70°の範囲で湾曲または直線に傾斜している構成である。この構成により、支腹部20は、第1誘導体2および第2誘導体3の、それぞれ使用者の左肩および右肩を背中方向に引っ張る動きに合わせて背中側に引っ張られる。したがって、使用者のお腹を前方斜め下方向から後方斜め上方向に向かって持ち上げる動きとなり、使用者のお腹を確実に支えることができる。
【0038】
また、妊婦用支腹具1は、使用者が装着していない際は、平面状で真ん中(支腹部20の中央付近に該当する)が幅広の帯状の布を用いて、両袖部分(長手部分、第1誘導体2および第2誘導体3に該当する)を幅方向へ湾曲させて、その端部を本体(第1引張体12Lおよび第2引張体12Rに該当する)に固定させた(固定位置が右側引張体接続部18Rおよび左側引張体接続部18Lに該当する)構造である。この構成により、図1図3に示したように、使用者が中央を下腹部にあてて横腹から背中を通じてクロスして腕を通して両肩にかけて装着すると、使用者の下腹部を広い面で斜め上方へ持ち上げるように支える状態に自然に配置される。したがって、使用者である妊婦の腹部を優しく支えることができる。
【0039】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、本実施例では、右側引張体接続部18Rおよび左側引張体接続部18Lは面ファスナーまたはボタン等で構成され、使用者が装着前に固定できる形態としたが、各接続部は製造段階で縫い付けられる、もしくは一体に形成されている構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、妊婦の腹部および腰部を支えるための妊婦用支腹具の製造および販売に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…妊婦用支腹具
2…第1誘導体
3…第2誘導体
20…支腹部
21…使用者へそ下当接部
22…使用者下腹部当接部
10L…左肩装着部
10R…右肩装着部
11L…第3引張体
11R…第4引張体
12L…第1引張体
12R…第2引張体
121R…右側支腹部長さ調節機能部
121L…左側支腹部長さ調節機能部
17L…左脇装着部
17R…右脇装着部
25L…支腹部左接続部
25R…支腹部右接続部
【要約】
【課題】妊婦の姿勢を正しい姿勢に誘導する妊婦用支腹具を提供することを目的とする。
【解決手段】第1誘導体2と第2誘導体3と支腹部20とを備え、支腹部20は、使用者の前方に配置され、かつ、へそより下から下腹部までの幅に形成され、使用者の左肩付近に装着される左肩装着部10Lと、支腹部20の右側と接続する支腹部右接続部25Rと、少なくとも使用者の背面側を通り、左肩装着部10Lと支腹部右接続部25Rとを接続し、支腹部右接続部25Rの方向へ引っ張る第1引張体12Lと、を有し、第2誘導体3は、使用者の右肩付近に装着される右肩装着部10Rと、支腹部20の左側と接続する支腹部左接続部25Lと、少なくとも使用者の背面側を通り、右肩装着部10Rと支腹部左接続部25Lとを接続し、支腹部左接続部25Lの方向へ引っ張る第2引張体12Rとを備える妊婦用支腹具1とした。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4A
図4B