IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特許7266160スキージブレードおよびスクリーン印刷装置
<>
  • 特許-スキージブレードおよびスクリーン印刷装置 図1
  • 特許-スキージブレードおよびスクリーン印刷装置 図2
  • 特許-スキージブレードおよびスクリーン印刷装置 図3
  • 特許-スキージブレードおよびスクリーン印刷装置 図4
  • 特許-スキージブレードおよびスクリーン印刷装置 図5
  • 特許-スキージブレードおよびスクリーン印刷装置 図6
  • 特許-スキージブレードおよびスクリーン印刷装置 図7
  • 特許-スキージブレードおよびスクリーン印刷装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】スキージブレードおよびスクリーン印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/44 20060101AFI20230421BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20230421BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20230421BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B41F15/44 B
B41F15/08 303E
H05K3/12 610N
H05K3/12 610Q
H05K3/34 505D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018175516
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020044744
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】河内 満
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 正幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊行
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-300589(JP,A)
【文献】特開2012-213886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0232726(US,A1)
【文献】特開2004-090385(JP,A)
【文献】特開2017-128016(JP,A)
【文献】特開2012-106474(JP,A)
【文献】特開2015-093417(JP,A)
【文献】特開2009-045839(JP,A)
【文献】特開2017-077711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/44
B41F 15/08
H05K 3/12
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード保持部により上縁側が保持されて下縁がマスクプレートに当接され、前記ブレード保持部が前記マスクプレートに対して相対移動することで前記下縁が前記マスクプレート上を摺動して前記マスクプレート上に供給されたペーストを掻き寄せるスキージブレードであって、
前記上縁を含み前記ブレード保持部に保持されて斜め下方に延びる主部と、
前記下縁を含み前記主部の下側から斜め下方に延びる下縁近傍部とを有し、
前記下縁が前記マスクプレートに当接していない状態において、前記下縁近傍部の前記マスクプレートに対する傾き角が前記主部のマスクプレートに対する傾き角よりも小さいスキージブレード。
【請求項2】
前記下縁近傍部が前記主部に対して屈曲した形状を有する請求項1に記載のスキージブレード。
【請求項3】
一様厚さの板材が曲げ加工されて前記下縁近傍部が前記主部に対して屈曲した請求項2に記載のスキージブレード。
【請求項4】
前記下縁が前記マスクプレートに当接していない状態において、前記下縁近傍部の前記マスクプレートに対する傾き角は5~45°の範囲内の角度である請求項1~3のいずれかに記載のスキージブレード。
【請求項5】
前記下縁近傍部の領域の前記下縁からの幅は0.2~3mmの範囲内の長さである請求項1~4のいずれかに記載のスキージブレード。
【請求項6】
金属材料から構成された請求項1~5のいずれかに記載のスキージブレード。
【請求項7】
基板の上面側に設置されるマスクプレートと、前記マスクプレートに対して相対移動されるブレード保持部と、前記ブレード保持部により保持された請求項1~6のいずれかに記載のスキージブレードとを備え、前記スキージブレードの下縁を前記マスクプレートに当接させた状態で前記ブレード保持部を前記マスクプレートに対して相対移動させることで前記スキージブレードの前記下縁を前記マスクプレート上で摺動させ、前記マスクプレート上に供給されたペーストを前記スキージブレードで掻き寄せて前記基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクプレートを介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置に用いられるスキージブレードおよびこのスキージブレードが用いられたスクリーン印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置は、パターン開口が形成されて基板の上面側に設置されるマスクプレートと、マスクプレートに対して移動されるスキージを備えている。スキージは板材から構成されたスキージブレードと、ブレードスキージの上縁側を保持するブレード保持部を備えている。スクリーン印刷装置は、スキージブレードの下縁をマスクプレートに当接させた状態でブレード保持部をマスクプレートに対して相対移動させ、スキージブレードの下縁をマスクプレート上で摺動させることで、マスクプレート上に供給したペーストをスキージブレードで掻き寄せて基板にペーストを印刷する構成となっている(例えば、下記の特許文献1)。
【0003】
このようなスクリーン印刷装置では、スキージブレードはブレード保持部から斜め下方に延びており、マスクプレートに対して所定の傾き角を有している。スキージブレードがマスクプレート上を摺動するとき、その傾き角はマスクプレートに対するアタック角となり、パターン開口に対するペーストの充填性能等に大きな影響を与える。ここで、スキージブレードのマスクプレートに対する傾き角は、スキージブレードとマスクプレートとの間に形成される空間(ペースト保持空間)に必要量のペーストを保持できることと、マスクプレートに対するスキージの移動速度(スキージ速度)をできるだけ高速にして一定の作業効率を確保することとの兼ね合いから、経験上、50~70°の範囲内の角度が最適であるとされている。また、スキージブレードには、パターン開口に充填したペーストを削り取ってしまう「えぐり」が少ないという性能も要求される。このような要求が満足されるようにするため、近年では、パターン開口上での変形の小さい金属製のスキージブレードが多く用いられている。
【0004】
スクリーン印刷装置には、更に、印刷後のペーストの形状(印刷形状)が安定していることも要求される。印刷後のペーストの印刷形状は、パターン開口にペーストを充填させるときのペーストの押し込み圧力が高いほど安定することが知られている。ペーストの押し込み圧力を高めるためには、スキージブレードのマスクプレートに対する傾き角を小さくしてアタック角を小さくすることが有効であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-45839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スキージブレードのマスクプレートに対する傾き角を小さくするとペースト保持空間が小さくなり、掻き寄せることができるペーストの量が少なくなって充填量不足が生じるおそれがある。また、掻き寄せることができるペーストの量が少なくなることでパターン開口内にペーストを押し込む時間を長くとる必要が生じ、スキージ速度を遅くせざるを得なくなって作業効率を低下させてしまうおそれもある。
【0007】
そこで本発明は、ペーストの充填量不足や作業効率の低下を生じることなく印刷後のペーストの形状安定性を向上させることができるスキージブレードおよびスクリーン印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスキージブレードは、ブレード保持部により上縁側が保持されて下縁がマスクプレートに当接され、前記ブレード保持部が前記マスクプレートに対して相対移動することで前記下縁が前記マスクプレート上を摺動して前記マスクプレート上に供給されたペーストを掻き寄せるスキージブレードであって、前記上縁を含み前記ブレード保持部に保持されて斜め下方に延びる主部と、前記下縁を含み前記主部の下側から斜め下方に延びる下縁近傍部とを有し、前記下縁が前記マスクプレートに当接していない状態において、前記下縁近傍部の前記マスクプレートに対する傾き角が前記主部のマスクプレートに対する傾き角よりも小さい。
【0009】
本発明のスクリーン印刷装置は、基板の上面側に設置されるマスクプレートと、前記マスクプレートに対して相対移動されるブレード保持部と、前記ブレード保持部により保持された請求項1~6のいずれかに記載のスキージブレードとを備え、前記スキージブレードの下縁を前記マスクプレートに当接させた状態で前記ブレード保持部を前記マスクプレートに対して相対移動させることで前記スキージブレードの前記下縁を前記マスクプレート上で摺動させ、前記マスクプレート上に供給されたペーストを前記スキージブレードで掻き寄せて前記基板にペーストを印刷する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ペーストの充填量不足や作業効率の低下を生じることなく印刷後のペーストの形状安定性を向上させることができるスキージブレードおよびスクリーン印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置の斜視図
図2】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置の要部側面図
図3】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備える印刷ヘッドの斜視図
図4】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備える印刷ヘッドの側面図
図5】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるスキージの側面図
図6】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置の動作説明図
図7】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置において基板にマスクプレートが重ねられる前後を示す基板とマスクプレートの側断面図
図8】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置によりマスクプレートのパターン開口にペーストを充填している様子を示すスキージの側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1および図2は本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置1を示している。スクリーン印刷装置1は上流工程側から供給された基板2を搬入し、その基板2の上面に設けられた電極2dに半田等のペーストPstを印刷して下流工程側に搬出する装置である。ここでは説明の便宜上、作業者OPから見たスクリーン印刷装置1の左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。また、Y軸方向のうち作業者OPから見た手前側を前側、奥側を後側とする。
【0013】
図1および図2において、スクリーン印刷装置1は基台11上に基板搬送部12と基板移動部13を備えている。基板搬送部12はX軸方向に延びた一対のコンベアから構成されている。基板搬送部12はスクリーン印刷装置1の外部から供給された基板2を基台11の上方の所定の位置に搬送する。基板移動部13は基板搬送部12の下方に位置しており、下受け部13a、一対のクランパ13bおよび移動機構13cを備えている(図2)。
【0014】
図1および図2において、基板搬送部12の上方にはY軸方向に延びて水平かつ平行に配置された2つ(左右)のマスクガイド14が設けられている。これら左右のマスクガイド14にはマスクプレート15の左右両端が支持されて基板搬送部12の上方に設置されている。マスクプレート15は金属製の矩形の板状部材から構成されており、その中央部には、基板2の電極2dに対応して配置された多数のパターン開口15Hが設けられている。
【0015】
図1および図2において、マスクガイド14の上方には印刷ヘッド16が設けられている。図3および図4にも示すように、印刷ヘッド16はX軸方向に延びた形状の移動ベース21の上面に2つ(前後)の昇降シリンダ22を備えている。2つの昇降シリンダ22は移動ベース21の上面側にY軸方向に並んで取り付けられている。各昇降シリンダ22のピストンロッド22Rは移動ベース21を下方に貫いて延びており、下端を移動ベース21の下方に位置させている。移動ベース21の下方に突出した2つのピストンロッド22Rそれぞれの下端にはスキージ23が取り付けられている。
【0016】
図1および図2において、印刷ヘッド16は移動ベース21の左右の両端部が基台11に設けられたヘッド移動機構16Kによって支持されている。ヘッド移動機構16Kは移動ベース21をY軸方向に移動させることにより、印刷ヘッド16の全体をマスクプレート15に対してY軸方向に往復移動させる。
【0017】
図3および図4において、印刷ヘッド16が有する2つの(前後)のスキージ23はそれぞれ、ブレード保持部31とスキージブレード32を有している。ブレード保持部31は昇降シリンダ22のピストンロッド22Rの下端に結合されている。
【0018】
図3において、各スキージ23のスキージブレード32はX軸方向に延びた平板形状を有している。各スキージブレード32は、図5に示すように、上縁32aを含みブレード保持部31に保持されて斜め下方に延びる平板状の主部32Mと、下縁32bを含み主部32Mの下側に位置する下縁近傍部32Kとを有している(図3および図4も参照)。本実施の形態では、スキージブレード32は金属材料(例えばステンレス)から構成されており、一様厚さの金属製の板材が曲げ加工されることによって、下縁近傍部32Kが主部32Mの下側の屈曲部32D(図5)において屈曲した形状となっている。
【0019】
図4において、前側のスキージブレード32の主部32Mはブレード保持部31から前下方に延びており、後側のスキージブレード32の主部32Mはブレード保持部31から後下方に延びている。前後のスキージブレード32それぞれの互いに対向する側の面(前側のスキージブレード32では後側の面、後側のスキージブレード32では前側の面)は、そのスキージブレード32によってマスクプレート15上のペーストPstを掻き寄せるときにペーストPstを掻き寄せる面(ペースト掻寄せ面32Sと称する)となる。
【0020】
前後のスキージ23はそれぞれ、昇降シリンダ22によって、マスクプレート15の上方領域で昇降される。各スキージ23は、そのスキージ23のスキージブレード32の下縁32bがマスクプレート15から離間した待機位置(図4中に示す紙面右側のスキージ23の位置)と、スキージブレード32の下縁32bがマスクプレート15に当接した当接位置(図4中に示す紙面左側のスキージ23の位置)との間で昇降される。
【0021】
図5に示すように、下縁32bがマスクプレート15に当接していない状態において、スキージブレード32のマスクプレート15に対する傾き角は主部32Mと下縁近傍部32Kとで異なっており、下縁近傍部32Kのマスクプレート15に対する傾き角(符号をθkとする)は、主部32Mのマスクプレート15に対する傾き角(符号をθmとする)よりも小さくなっている。具体的には、下縁32bがマスクプレート15に当接していない状態において、主部32Mのマスクプレート15に対する傾き角θmは50~70°の範囲内の角度となっており、下縁近傍部32Kのマスクプレート15に対する傾き角θkは5~45°の範囲内の角度(より好ましくは10~20°の範囲内の角度)となっている。また、下縁近傍部32Kの領域の下縁32bからの幅W(図3および図5)は、0.2~3mmの範囲内の長さ(より好ましくは0.5~2.0mmの範囲内の長さ)となっている。
【0022】
スクリーン印刷装置1により基板2にスクリーン印刷を行うときは、先ず、基板搬送部12が上流工程側より基板2を搬入して所定の位置に位置させる(図2)。基板2が所定の位置に位置したら基板移動部13が作動し、基板2を下受け部13aによって下方から支持し、一対のクランパ13bによってY軸方向にクランプする。そして、移動機構13cによって下受け部13aおよび一対のクランパ13bごと基板2を移動させ、基板2の電極2dをマスクプレート15のパターン開口15Hの下方に位置合わせする。基板移動部13は、基板2の電極2dをマスクプレート15のパターン開口15Hの下方に位置合わせしたら下受け部13aおよび一対のクランパ13bごと基板2を押し上げ(図6(a)中に示す矢印A)、基板2の上面をマスクプレート15の下面に接触させる(図6(a))。これにより基板2の電極2dとマスクプレート15のパターン開口15Hとが合致した状態となる(図7(a)→図7(b))。
【0023】
基板2をマスクプレート15に接触させたら、昇降シリンダ22を作動させて、スキージ23を下降させる。スキージ23は、通常は待機位置に位置されており、スキージブレード32によってペーストPstを掻き寄せようとする側のスキージ23を当接位置へ下降させる。詳細には、前側のスキージブレード32によってペーストPstを掻き寄せようとするときには前側のスキージ23を待機位置から当接位置へ下降させ、後側のスキージブレード32によってペーストPstを掻き寄せようとするときには後側のスキージ23を待機位置から当接位置へ下降させる。
【0024】
スキージ23を当接位置へ下降させることによって、そのスキージ23のスキージブレード32の下縁32bがマスクプレート15に当接したら、ヘッド移動機構16Kを作動させて、移動ベース21をY軸方向に移動させる(図6(b)および図8中に示す矢印B)。このとき、マスクプレート15に当接させたスキージブレード32が前側である場合には移動ベース21をマスクプレート15の前側の端から後側の端に向けて移動させ、マスクプレート15に当接させたスキージブレード32が後側である場合には移動ベース21をマスクプレート15の後側の端から前側の端に向けて移動させる。すなわち、マスクプレート15に当接させたスキージブレード32のペースト掻寄せ面32Sが前進する方向に移動ベース21を移動させる。
【0025】
スキージ23を当接位置に位置させた状態で移動ベース21をY軸方向に移動させると、そのスキージ23のスキージブレード32の下縁32bがマスクプレート15上を摺動し、マスクプレート15上に予め供給されたペーストPstがペースト掻寄せ面32Sによって掻き寄せられる(図8)。そして、スキージブレード32の下縁32bがパターン開口15Hを通過するとき、そのパターン開口15HにペーストPstが押し込まれて充填される。
【0026】
スキージブレード32がパターン開口15HにペーストPstを充填しているとき、ペーストPstは主として、スキージブレード32の下縁近傍部32Kによってパターン開口15Hに押し込まれる。このときのスキージブレード32の実質的なアタック角は、下縁近傍部32Kの傾き角θkに相当する角度となる。
【0027】
ここで、下縁近傍部32Kのマスクプレート15に対する傾き角θkが主部32Mのマスクプレート15に対する傾き角θmよりも小さいので、仮にスキージブレード32の全体が一様に同じ傾き角(主部32Mのマスクプレート15に対する傾き角θm)を有してその傾き角がそのままアタック角となるもの(これは従来のスキージブレードに相当する)であった場合と比較し、パターン開口15HへのペーストPstの押し付け圧力は高くなる。このためペーストPstは上記従来のスキージブレードを用いた場合よりも高い押し付け圧力でパターン開口15Hへ押し込まれることとなり、ペーストPstの充填性能(特に印刷後のペーストPstの形状安定性)が向上する。
【0028】
また、スキージブレード32によりペーストPstを掻き寄せている状態ではスキージブレード32の全体が下方に撓むので、下縁近傍部32Kのマスクプレート15に対する実際のアタック角は、下縁32bがマスクプレート15に当接していない状態での下縁近傍部32Kの傾き角θk(前述したように、5~45°の範囲内の角度)よりも更に小さい角度(例えば4°以下)となる。このため充填圧そのものも高くなり、より一層、印刷後のペーストの形状安定性が向上する。
【0029】
また、前述したように、下縁近傍部32Kの領域の下縁32bからの幅Wは0.2~3mmの範囲内の長さに設定されている。これは、パターン開口15Hに押し込んだペーストPstからの反発力に抗することができる適切な長さであり、ペーストPstをパターン開口15H内に確実に押し込むことができるので、充填量不足を防止しつつ、印刷後のペーストPstの形状をより安定させることができる。
【0030】
また、主部32Mのマスクプレート15に対する傾き角θmは、従来のスキージブレードのマスクプレートに対する傾き角と同じ程度の角度(50~70°の範囲内の角度)であるので、下縁32bを当接させたマスクプレート15との間に形成される空間(ペースト保持空間)に保持できるペーストPstの容量を従来通りに維持できる。また。スキージ23のマスクプレート15に対する移動速度(スキージ速度)も、各パターン開口15Hへの充填量不足が生じず、かつ、一定の作業効率を確保できる適切な従来の速度に維持できる。
【0031】
上記のようにしてマスクプレート15のパターン開口15HにペーストPstが充填されたら、基板移動部13は基板2を下降させて、マスクプレート15から基板2を離間(版離れ)させる。基板2がマスクプレート15から離間したら、基板搬送部12は基板2を下流工程側に搬出する。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1では、下縁32bがマスクプレート15に当接していない状態で、下縁近傍部32Kのマスクプレート15に対する傾き角θkが主部32Mのマスクプレート15に対する傾き角θmよりも小さくなっており、パターン開口15HへのペーストPstの押し込み圧力を従来よりも高くすることができる。このためパターン開口15HへのペーストPstの充填性能、特に、印刷後のペーストPstの形状安定性を向上させることができる。また、主部32Mのマスクプレート15に対する傾き角θmは前述通りの角度でよいのでスキージ速度の高速性を維持でき、作業効率を低下させない。このように本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1(スキージブレード32)によれば、ペーストPstの充填量不足や作業効率の低下を生じることなく、印刷後のペーストPstの形状安定性を向上させることができる。
【0033】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態では、スキージブレード32は金属材料から構成されるようになっていたが、その他の材料(ウレタンゴムやプラスチック等)から構成されていてもよい。金属材料のように曲げ加工できない材料を用いる場合には、材料を切削加工或いは抜き加工等することで、下縁近傍部32Kのマスクプレート15に対する傾き角が主部32Mのマスクプレート15に対する傾き角θmよりも小さい本発明のスキージブレード32を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
ペーストの充填量不足や作業効率の低下を生じることなく印刷後のペーストの形状安定性を向上させることができるスキージブレードおよびスクリーン印刷装置を提供する。
【符号の説明】
【0035】
1 スクリーン印刷装置
2 基板
15 マスクプレート
31 ブレード保持部
32 スキージブレード
32M 主部
32K 下縁近傍部
32a 上縁
32b 下縁
θm 主部のマスクプレートに対する傾き角
θk 下縁近傍部のマスクプレートに対する傾き角
W 幅
Pst ペースト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8