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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】隔膜式ガスセンサ及びセンサユニット
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/404 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
G01N27/404 341U
G01N27/404 341D
G01N27/404 341R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018247622
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020106482
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】金野 裕子
(72)【発明者】
【氏名】水村 諒介
(72)【発明者】
【氏名】廣田 孝範
(72)【発明者】
【氏名】持丸 治貴
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭46-006600(JP,A)
【文献】特開平02-310458(JP,A)
【文献】実開昭58-032459(JP,U)
【文献】特開2005-069820(JP,A)
【文献】特開2015-230172(JP,A)
【文献】特開平02-057960(JP,A)
【文献】特開昭61-071346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的手法を利用してサンプルガス中の検出対象ガスを検出するための隔膜式ガスセンサにおいて、
電解液を収容する、開口部を備えた容器と、
前記開口部に隣接して前記容器に設けられた、検出対象ガスを検出するための作用極と、
前記開口部を封止するように前記容器に取り付けられた、検出対象ガスを透過させることが可能な樹脂製の多孔性膜で構成された隔膜と、
前記隔膜の前記作用極とは反対側において前記隔膜に隣接して配置された、前記隔膜の伸びを抑制するための樹脂製の繊維で形成された網目状構造又は不織布状構造を有するシートで構成された補強部材と、
前記隔膜の前記作用極側において前記隔膜及び前記作用極に隣接して配置された、前記電解液が浸透可能であり前記電解液を保持可能なスペーサと、
記隔膜及び前記補強部材を前記容器に保持する保持部材と、
を有し、
前記隔膜及び前記補強部材は前記開口部よりも大きい範囲にわたり設けられ、前記スペーサは前記作用極よりも大きくかつ前記開口部よりも小さい範囲に設けられており、前記保持部材は、前記隔膜と前記作用極との間に前記スペーサを挟持して、前記スペーサを介して前記隔膜を前記作用極に向けて押圧した状態で、前記隔膜及び前記補強部材を前記容器に向けて押圧して前記隔膜及び前記補強部材を前記容器に保持することを特徴とする隔膜式ガスセンサ。
【請求項2】
前記補強部材を構成する樹脂は、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の隔膜式ガスセンサ。
【請求項3】
前記スペーサは、(a)樹脂製、セルロース製若しくはガラス製の繊維で構成された網目状構造若しくは不織布状構造を有するシート、(b)樹脂製、セルロース製若しくはガラス製の繊維で構成された濾材、又は、(c)樹脂で構成されたスポンジであることを特徴とする請求項1又は2に記載の隔膜式ガスセンサ。
【請求項4】
前記スペーサを構成する樹脂は、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む群より選択されることを特徴とする請求項に記載の隔膜式ガスセンサ。
【請求項5】
前記補強部材の厚さは1μm以上、500μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の隔膜式ガスセンサ。
【請求項6】
前記スペーサの厚さは1μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の隔膜式ガスセンサ。
【請求項7】
前記隔膜は、フッ素樹脂及び低密度ポリエチレンを含む群から選択される樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の隔膜式ガスセンサ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の隔膜式ガスセンサと、前記隔膜式ガスセンサの前記隔膜に隣接してサンプルガスを収容する空間を形成するフローセルであって、前記空間にサンプルガスを導入する導入部及び前記空間からサンプルガスを排出する排出部を備えたフローセルと、を有することを特徴とするセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルガス中の検出対象ガスを検出するための電気化学的手法を利用した隔膜式ガスセンサ、及びこれを備えたセンサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体製造工程や各種工業における排出気体などのサンプルガス中の検出対象ガスの濃度測定や漏洩検知などのために、電気化学的手法を利用した隔膜式ガスセンサが広く用いられている(特許文献1)。このような隔膜式ガスセンサとしては、定電位電解式、ガルバニ電池式などの電気化学反応による電流の測定に基づくものが広く用いられており、検出対象ガスとしては例えばアンモニア(NH)、シアン化水素(HCN)、塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)、アルシン(AsH)、ホスフィン(PH)、ジボラン(B)などの毒性ガスが挙げられる。
【0003】
図6(a)は、従来の隔膜式ガスセンサ100の一例の概略断面図である。本例では、隔膜式ガスセンサ100は3極のものであるが、他に2極のものもある。隔膜式ガスセンサ100は、図中下方端部に開口部1aを備えた、電解液Sを収容する容器1を有する。また、隔膜式ガスセンサ100は、作用極2と、対極3と、参照極4と、を有する。また、隔膜式ガスセンサ100は、開口部1aを封止するように容器1に取り付けられた、液体の透過を阻止するとともに検出対象ガスを透過させることが可能な隔膜5を有する。隔膜5は、容器1の図中下方端部の取付部1bの端面1cとの間にOリング8を挟むようにして、容器1に取り付けられる。本例では、隔膜5を載置した環状の押さえ部材9を、袋ナット状の取付部材10と容器1の取付部1bとの間に挟むようにして、取付部材10を容器1の取付部1bに螺合することで、隔膜5を容器1に取り付けている。また、図中では模式的に示されているが、このとき隔膜5を作用極2の表面に密着させることで、容器1の内部の電解液Sが隔膜5と作用極2の表面との間に浸透して、隔膜5と作用極2の表面との間に電解液層Saが形成される。そして、参照極4の電位に対して所定の範囲の電位に維持された作用極2と電解液Sとの界面で、隔膜5を透過した検出対象ガスが電解されることで作用極2と対極3との間に生じる電流が、測定回路(図示せず)で測定される。これによって、検出対象ガスの濃度測定又は検知が行われる。なお、隔膜5としては、ガス透過性を有する高分子膜、又は多孔性高分子膜等が用いられる。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体)などのフッ素樹脂製の高分子膜、又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの多孔性高分子膜などである。
【0004】
図6(b)は、上記従来の隔膜式ガスセンサ100がフローセル200に取り付けられて構成されたセンサユニット300の概略断面図である。隔膜式ガスセンサ100は、図6(b)に示すように、例えば半導体製造工程の排出気体の処理装置などの測定対象環境より配管などを介してサンプルガスが導入されるフローセル200に取り付けられて用いられる場合がある。フローセル200は、サンプルガスを収容するチャンバー201と、チャンバー201にサンプルガスを導入するための導入口202と、チャンバー201からサンプルガスを排出するための排出口203と、を有する。
【0005】
上述のような構成の隔膜式ガスセンサ100は、隔膜5の交換、電解液Sの補充や交換などを適宜行うことにより、初期性能が回復する。そのため、比較的ランニングコストを低く抑えることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5688955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような構成の従来の隔膜式ガスセンサには、以下のような改善すべき課題がある。
【0008】
従来の隔膜式ガスセンサ100では、長期間使用した場合などに、隔膜5が伸びることがある。そして、隔膜5が作用極2の表面から離れて電解液層Saが厚くなったり、逆に隔膜5が作用極2の表面に張り付いて電解液層Saが無くなったりすることがある。このように電解液層Saの厚さが変化すると、隔膜式ガスセンサ100の感度の低下などが発生する。この現象は、隔膜式ガスセンサ100が測定対象環境に配管などを介して接続されたフローセル200に取り付けられて用いられる場合などに顕著となる。つまり、この場合、隔膜式ガスセンサ100の隔膜5は、フローセル200に接続された配管内の圧力条件に常にさらされることになる。上述のように、隔膜5は、例えばPTFEなどで形成された薄い樹脂フィルムであるため、圧力負荷がある場合には経時的に変形してしまうことがある。特に、隔膜5の材料として多用されるPTFEは、非常に塑性変形しやすい性質を持っている。例えば、隔膜式ガスセンサ100の容器1の内部に対してフローセル200のチャンバー201の内部が負圧になっている状態で隔膜式ガスセンサ100が用いられる場合には、隔膜5が伸びて作用極2の表面から離れるように変形しやすい。また、逆に、隔膜式ガスセンサ100の容器1の内部に対してフローセル200のチャンバー201の内部が正圧になっている状態で隔膜式ガスセンサ100が用いられる場合には、隔膜5が伸びて作用極2の表面に張り付いてしまうことがある。
【0009】
また、従来の隔膜式ガスセンサ100では、電解液層Saの電解液Sが蒸発して減少し、電解液層Saの厚さが変化することで、隔膜式ガスセンサ100の感度の低下などが発生することがある。この現象も、隔膜式ガスセンサ100がフローセル200に取り付けられて用いられる場合などに顕著となる。つまり、隔膜式ガスセンサ100の容器1の内部に対してフローセル200のチャンバー201の内部が負圧とされ、サンプルガスの湿度が低い場合などに、電解液層Saの電解液Sが隔膜5を通して蒸発して減少しやすくなる。
【0010】
さらに、従来の隔膜式ガスセンサ100では、隔膜5の作用極2に対する押し付け強さの違いにより、電解液層Saの厚さが変化しやすく、隔膜式ガスセンサ100の感度が変化しやすい。例えば、図6(a)に示すように取付部材10を容器1の取付部1bに螺合することで隔膜5を作用極2の表面に密着させ、隔膜5と作用極2の表面との間に電解液層Saを形成する場合、取付部材10の締め付け量(角度)の違いによって、電解液層Saの厚さが変化して、隔膜式ガスセンサ100の感度が変化することがある。
【0011】
このように、従来の隔膜式ガスセンサ100では、隔膜5の伸び、電解液Sの蒸発、隔膜5の押し付け強さの違いといった要因が単独で又は複合的に働いて、隔膜式ガスセンサ100の短期的な感度の安定性(隔膜5の交換直後の感度の安定性など)、及び長期的な感度の安定性(隔膜5の新品時から交換直前までの感度の安定性など)に影響しやすい。
【0012】
したがって、本発明の目的は、感度の長期的な安定性を向上させることができるとともに、初期及び保守作業(隔膜の交換、電解液の補充や交換など)の際の感度のバラツキを低減させることのできる電気化学的手法を利用した隔膜式ガスセンサ及びセンサユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係る隔膜式ガスセンサ及びセンサユニットにて達成される。要約すれば、本発明は、電気化学的手法を利用してサンプルガス中の検出対象ガスを検出するための隔膜式ガスセンサにおいて、電解液を収容する、開口部を備えた容器と、前記開口部に隣接して前記容器に設けられた、検出対象ガスを検出するための作用極と、前記開口部を封止するように前記容器に取り付けられた、検出対象ガスを透過させることが可能な樹脂製の多孔性膜で構成された隔膜と、前記隔膜の前記作用極とは反対側において前記隔膜に隣接して配置された、前記隔膜の伸びを抑制するための樹脂製の繊維で形成された網目状構造又は不織布状構造を有するシートで構成された補強部材と、前記隔膜の前記作用極側において前記隔膜及び前記作用極に隣接して配置された、前記電解液が浸透可能であり前記電解液を保持可能なスペーサと、記隔膜及び前記補強部材を前記容器に保持する保持部材と、を有し、前記隔膜及び前記補強部材は前記開口部よりも大きい範囲にわたり設けられ、前記スペーサは前記作用極よりも大きくかつ前記開口部よりも小さい範囲に設けられており、前記保持部材は、前記隔膜と前記作用極との間に前記スペーサを挟持して、前記スペーサを介して前記隔膜を前記作用極に向けて押圧した状態で、前記隔膜及び前記補強部材を前記容器に向けて押圧して前記隔膜及び前記補強部材を前記容器に保持することを特徴とする隔膜式ガスセンサである。
【0014】
本発明の他の態様によると、上記本発明の隔膜式ガスセンサと、前記隔膜式ガスセンサの前記隔膜に隣接してサンプルガスを収容する空間を形成するフローセルであって、前記空間にサンプルガスを導入する導入部及び前記空間からサンプルガスを排出する排出部を備えたフローセルと、を有することを特徴とするセンサユニットが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気化学的手法を利用した隔膜式ガスセンサ及びセンサユニットにおいて、感度の長期的な安定性を向上させることができるとともに、初期及び保守作業(隔膜の交換、電解液の補充や交換など)の際の感度のバラツキを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】隔膜式ガスセンサ及びセンサユニット(3極式)の一実施例の概略断面図である。
図2】隔膜式ガスセンサ及びセンサユニット(2極式)の一実施例の概略断面図である。
図3】一実施例の隔膜式ガスセンサにおける隔膜、補強部材、スペーサを示す模式的な平面図及び斜視図である。
図4】実施例の効果を示すグラフである。
図5】実施例の効果を示すグラフである。
図6】従来の隔膜式ガスセンサ及びセンサユニットの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る隔膜式ガスセンサ及びセンサユニットを図面に則して更に詳しく説明する。
【0018】
[実施例1]
1.隔膜式ガスセンサの構成
図1(a)は、本実施例の隔膜式ガスセンサ100の概略断面図である。本実施例の隔膜式ガスセンサ100は、3極式のものである。なお、図1(a)において、図6(a)を参照して説明した従来の隔膜式ガスセンサのものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同じ符号を付している。
【0019】
隔膜式ガスセンサ100は、電解液Sを収容する容器1を有する。容器1は、図中下方端部に開口部1aを有する。また、隔膜式ガスセンサ100は、検出対象ガスを検出するための作用極2と、作用極2との間で電流を流すための対極3と、作用極2の電位を制御するための参照極4と、を有する。作用極2は、支持体11に支持されて、開口部1aに隣接して配置されている。また、隔膜式ガスセンサ100は、開口部1aを封止するように容器1に取り付けられた、液体の透過を阻止するとともに検出対象ガスを透過させることが可能な隔膜5を有する。容器1と隔膜5とによって、内部に電解液Sを収容する室(検出槽)1fが形成される。
【0020】
容器1は、概略、段付き円筒形状を有しており、図中上方の大径部と図中下方の小径部とを有し、図中下方の小径部が隔膜5を取り付けるための取付部1bとされており、この取付部1bの図中下方端部に平面視略円形の開口部1aが形成されている。隔膜5は、取付部1bの平面視略円形の端面1cとの間にシール部材としてのOリング8を挟むようにして、容器1に取り付けられる。なお、シール部材は、Oリング8に限定されるものではなく、パッキンなどであってもよい。また、容器1には、圧補償部である圧補償口1eが設けられており、この圧補償口1eには、液密状態を維持するようにして、ガス透過性の圧補償膜を備えた圧補償ビス12が螺合される。
【0021】
隔膜式ガスセンサ100は更に、隔膜5の作用極2とは反対側において隔膜5に隣接して配置された、隔膜5の伸びを抑制するための補強部材6と、隔膜5の作用極2側において隔膜5及び作用極2に隣接して配置された、電解液Sが浸透可能なスペーサ7と、を有する。本実施例では、環状(本実施例では円環状)の押さえ部材9に形成された平面視略円形の押さえ開口部9aの縁に補強部材6が載置され、この補強部材6の作用極2側に隔膜5が配置され、更にこの隔膜5の作用極2側にスペーサ7が載置される。また、この補強部材6、隔膜5及びスペーサ7が配置された押さえ部材9が、袋ナット状の取付部材10に形成された平面視略円形の取付部材開口部10aの縁部に載置される。そして、取付部材10の内周に形成されたネジ10b及び容器1の取付部1bの外周に形成されたねじ1dを介して、取付部材10が容器1の取付部1bに螺合される。これにより、隔膜5及び補強部材6が、Oリング8を介して容器1に向けて押圧された状態で容器1に取り付けられ、容器1の内部の電解液Sが漏れないように隔膜5によって開口部1aが液密状態に封止される。また、これにより、隔膜5はスペーサ7を介して作用極2に向けて押圧される。このとき、容器1の内部の電解液Sが、隔膜5と作用極2の表面との間に挟持されるようにして配置されたスペーサ7に浸透して、隔膜5と作用極2の表面との間に電解液層Saが形成される。これにより、対極3及び参照極4は、容器1の内部の電解液Sを介して作用極2と電気的に接続される。本実施例では、押さえ部材9及び取付部材10が、スペーサ7を介して隔膜5を作用極2に向けて押圧した状態で隔膜5を容器1に保持する保持部材として機能する。補強部材6、スペーサ7については、後述して更に説明する。
【0022】
作用極2、対極3、参照極4は、液密状態を維持するようにして容器1の外部に引き出されて、リード線を介してポテンショスタット回路とされる測定回路(図示せず)に接続される。そして、参照極4の電位に対して作用極2の電位が所定の範囲の電位に維持された状態で、隔膜5を透過した検出対象ガスが作用極2と電解液Sとの界面で電解されると、検出対象ガスの濃度に対応した電流が作用極2と対極3との間に生じる。この電流が測定回路で測定される。これによって、検出対象ガスの濃度測定又は検知が行われる。
【0023】
隔膜式ガスセンサ100は、作用極2、対極3及び参照極4の材料、電解液Sの組成、作用極2の電位などを適宜設定することで、種々の検出対象ガスの検出に適用することができる。隔膜式ガスセンサ100は、これらに限定されるものではないが、例えば塩素(Cl)、臭素(Br)、フッ素(F)、アンモニア(NH)、塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)、シラン(SiH)、シアン化水素(HCN)、アルシン(AsH)、ホスフィン(PH)、ジボラン(B)などの毒性ガスとされる広範囲の検出対象ガスの検出などに適用することができる。
【0024】
例えば、検出対象ガスが塩化水素ガスである塩化水素ガスセンサの場合、隔膜式ガスセンサ100の構成は、次のように設定することができる。作用極2の材料としては、金、白金などが用いられる。また、対極3の材料としては、白金、銀、ヨウ化銀などが用いられる。また、参照極4の材料としては、銀・塩化銀(塩化銀メッキした銀)、銀・ヨウ化銀(ヨウ化銀メッキした銀)などが用いられる。また、電解液Sとしては、ヨウ化カリウム、ヨウ素酸カリウム水溶液を基本成分として、20~80容量%のエチレングリコールを加えたものが用いられる。また、作用極2の電位は、参照極4に対して-300~+300Vとされる。なお、上述のような3極式のセンサの場合には参照極が設けられるが、2極式のセンサの場合には、参照極4は省略される。図2(a)は、本発明を適用した2極式の隔膜式ガスセンサ100の一実施例の概略断面図である。図2(a)において、図1(a)に示す本実施例の3極式の隔膜式ガスセンサ100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同じ符号を付している。
【0025】
隔膜5は、検出対象ガスを透過させることが可能であること、また測定環境において長期にわたり組成が安定していることなどの観点から適宜選択することができる。隔膜5を構成する材料としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレンなどを用いることができる。フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)及びETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などを用いることができる。例えば、隔膜5としては、フッ素樹脂製の多孔性膜である、平均孔径が0.1μm~5.0μmの細孔を有し、厚さが50μm~300μmであるPTFE製の多孔性膜を好適に用いることができる。なお、隔膜5は、検出対象ガスを十分に透過させることが可能であれば、細孔があけられた多孔性のものでなくてもよい。
【0026】
2.センサユニット
図1(b)は、本実施例の隔膜式ガスセンサ100がフローセル200に取り付けられて構成されたセンサユニット300の概略断面図である。なお、図1(b)において、図6(b)を参照して説明した従来のセンサユニットのものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同じ符号を付している。
【0027】
本実施例の隔膜式ガスセンサ100は、図1(a)に示すように開放状態で室内環境中の検出対象ガスを検出するために用いられる他、図1(b)に示すようにフローセル200に取り付けられて、例えば半導体製造工程の排出気体の処理装置などの測定対象環境より配管などを介してフローセル200の内部に導入されたサンプルガス中の検出対象ガスを検出するために用いられる。センサユニット300は、隔膜式ガスセンサ100とフローセル200とを有して構成される。フローセル200は、隔膜式ガスセンサ100の隔膜5に隣接してサンプルガスを収容する空間であるチャンバー201と、チャンバー201にサンプルガスを導入するための導入部である導入口202と、チャンバー201からサンプルガスを排出するための排出部である排出口203と、を有する。本実施例では、隔膜式ガスセンサ100は、容器1の図中下方に取り付けられた取付部材10が、フローセル200のチャンバー201を形成する開口部に嵌合されることで、フローセル200に気密状態を維持するようにして取り付けられる。
【0028】
このように隔膜式ガスセンサ100がフローセル200に取り付けられて用いられる場合、隔膜式ガスセンサ100の隔膜5は、フローセル200に接続された配管内の圧力条件にさらされる。サンプルガスの圧力が低い場合や、排出口203を介してサンプルガスをポンプで引く場合は、隔膜式ガスセンサ100の容器1の内部に対してフローセル200のチャンバー201の内部が負圧になる。前述のように、この場合、隔膜5が伸びて作用極2から離れるように変形しやすい。また、サンプルガスの圧力が高い場合や、導入口202を介してサンプルガスをポンプで押し込む場合は、隔膜式ガスセンサ100の容器1の内部に対してフローセル200のチャンバー201の内部が正圧になる。前述のように、この場合、隔膜5が伸びて作用極2の表面に張り付きやすい。
【0029】
なお、図2(b)は、図2(a)に示す2極式の隔膜式ガスセンサ100がフローセル200に取り付けられて構成されたセンサユニット300の概略断面図である。図2(b)において、図1(b)に示すセンサユニット300のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同じ符号を付している。
【0030】
3.補強部材及びスペーサ
隔膜5の外側に補強部材6を配置することで、隔膜5を補強し、隔膜5が引き伸ばされることを抑制し、また隔膜5の変形を抑制することができる。また、隔膜5の内側に液体保持機能(保水機能)を有するスペーサ7を配置することで、隔膜5の押し付け強さによらず隔膜5と作用極2の表面との間の距離を略一定として電解液層Saの厚さを略一定とすることを可能とし、また隔膜5が作用極2の表面に張り付くことを抑制することができる。このように、隔膜5、及び作用極2と隔膜5との間の電解液層Saの寸法安定性を向上させることによって、隔膜式ガスセンサ100の短期的な感度の安定性、及び長期的な感度の安定性を向上させることができる。つまり、隔膜式ガスセンサ100の感度の長期的な安定性を向上させることができるとともに、隔膜式ガスセンサ100の初期及び保守作業(隔膜の交換、電解液の補充や交換など)の際の感度のバラツキを低減させることができる。補強部材6は、長期使用における隔膜5の伸びによる変形を抑制するのに特に効果的であるが、短期的な圧力変動による隔膜5の伸びによって電解液層Saの厚さが変動するのを抑制する効果もある。また、スペーサ7は、隔膜5を容器1に取り付けた際(初期)の隔膜5の押し付け強さによらずに電解液層Saの厚さを一定にし、また長期使用において電解液Sを保持して電解液層Saを維持するのに特に効果的であるが、長期使用において隔膜5が作用極2に張り付くのを抑制する効果もある。
【0031】
図3(a)は、本実施例における隔膜5、補強部材6、スペーサ7の配置関係を説明するための模式的な平面図である。また、図3(b)は、隔膜5、補強部材6及びスペーサ7の模式的な分解斜視図である。本実施例では、隔膜5、補強部材6及びスペーサ7は、平面視略円形であり、補強部材6は隔膜5と同等の外径を有し、スペーサ7は隔膜5よりも小さく作用極2よりも大きい外径を有する。なお、本実施例では、補強部材6は隔膜5と一体に形成されおり、スペーサ7は隔膜5とは別体として形成されている。
【0032】
補強部材6は、隔膜5の作用極2とは反対側の面に沿って配置され、隔膜5が伸びて変形することを抑制できるものであればよい。ただし、補強部材6は、隔膜5の面に沿わせて作用極2の表面に押圧できることが望まれるため、補強部材6を構成する材料は弾性を有する樹脂であることが望ましい。補強部材6としては、樹脂製の繊維で構成された、網目状構造又は不織布状構造を有するシートを用いることができる。
【0033】
ここで、網目状構造(ネット)は、一の方向及び該一の方向と交差する方向(直交する方向に限定されない)に延在する繊維(繊維束、糸を含む)によって構成されていればよい。網目状構造は、2方向に延在する繊維からなることに限定されるものではなく、3方向以上の互いに交差する繊維で構成されていてもよい。また、網目状構造は、典型的には、各方向に延在する繊維が熱的、機械的又は化学的な作用によって接着されたものであるが、織物であってもよい。また、不織布状構造は、繊維を織らずに構成されたものであればよい。不織布状構造は、典型的には繊維が絡み合わされて構成されたものであるが、繊維が熱的、機械的、又は化学的な作用によって接着されていてもよい。
【0034】
補強部材6を構成する樹脂としては、ポリエステル(PET(ポリエチレンテレフタラート)など)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。なお、補強部材6を構成する樹脂は、隔膜5を構成する樹脂よりも塑性変形しにくいものであることが好ましい。また、補強部材6は、隔膜5と一体に形成されていてもよいし、隔膜5とは別体で形成されていてもよい。補強部材6が隔膜5と一体化されている場合、その一体化は熱的、機械的又は化学的な作用によって行われていてよい。補強部材6の厚さは、1μm以上、500μm以下であることが好ましい。補強部材6の厚さが1μm未満であると、十分に隔膜5の伸びを抑制することが難しくなることがあり、補強部材6の厚さが500μmを超えると隔膜5の面に沿わせて配置することが難しくなることがある。補強部材6の厚さは、10μm以上、300μm以下であることがより好ましい。例えば、隔膜5と、樹脂製の繊維で構成された網目状構造のシートである補強部材6と、が一体に形成された強化膜として、多孔性のPTFEで構成された隔膜5とポリプロピレン繊維のネットで構成された補強部材6とが一体化されたサポーテッドPTFEタイプメンブレンフィルター(東洋濾紙株式会社製)を好適に用いることができる。また、隔膜5と、樹脂製の繊維で構成された不織布状構造のシートである補強部材6と、が一体に形成された強化膜として、PTFEタイプフィルター(杭州科百特濾過機材有限公司製)を好適に用いることができる。
【0035】
スペーサ7は、隔膜5と作用極2との間に配置され、隔膜5と作用極2との間の距離を略一定に維持することができるとともに、電解液Sが浸透可能でありかつ保持することのできる液体保持機能(保水機能)を有するものであればよい。スペーサ7としては、樹脂製、セルロース製若しくはガラス製の繊維で構成された網目状構造若しくは不織布状構造を有するシートを用いることができる。また、スペーサ7としては、樹脂製、セルロース製若しくはガラス製の繊維で構成された濾材(濾紙)を用いてもよい。また、スペーサ7としては、樹脂で構成されたスポンジ若しくは多孔性フィルムを用いてもよい。スペーサ7を構成する樹脂としては、ポリエステル(PETなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。また、スペーサ7は、隔膜5とは別体で形成されていてもよいし、隔膜5と一体に形成されていてもよい。スペーサ7が隔膜5と一体化されている場合、その一体化は熱的、機械的又は化学的な作用によって行われていてよい。スペーサ7の厚さは、1μm以上、100μm以下であることが好ましい。スペーサ7の厚さが1μm未満であると、電解液Sを十分に保持することが難しくなることがあり、スペーサ7の厚さが100μmを超えると隔膜5と作用極2とが離れすぎて隔膜式ガスセンサ100の応答速度が遅くなることがある。スペーサ7の厚さは、1μm以上、60μm以下であることがより好ましい。例えば、隔膜5とは別体で構成されたスペーサ7として、ポリエステル繊維で構成された不織布であるポリエステル不織布(バイリーン社製)を好適に用いることができる。
【0036】
4.実験例
次に、実験例を用いて本実施例の効果について更に説明する。
【0037】
<実験例1>
本実施例の隔膜式ガスセンサ100を備えたセンサユニット300(図1(b))と、比較例としての従来の隔膜式ガスセンサ100を備えたセンサユニット300(図6(b))と、を用いて、隔膜式ガスセンサ100の指示値の経時変化を調べる実験を行った。
【0038】
本実験例では、フローセル200の排出口203に接続された吸引手段によって、吸引圧力を-5kPaとして大気(温度25℃、湿度30~40%RH)を連続吸引して、チャンバー201の内部を隔膜式ガスセンサ100の容器1の内部に対して負圧とした。そして、適宜のタイミングで、一定濃度の検出対象ガスをチャンバー201に吸引する大気(サンプルガス)に導入して、検出対象ガスの濃度を測定した。
【0039】
本実験例では、隔膜式ガスセンサ100を、検出対象ガスが塩化水素ガスである塩化水素ガスセンサ、検出対象ガスがアンモニアガスであるアンモニアガスセンサとして構成してそれぞれ同様の実験を行った。塩化水素ガスセンサとして構成する場合、本実施例、比較例のいずれにおいても、作用極2は金、対極3は銀、参照極4は銀とし、電解液Sはヨウ化カリウム、ヨウ素酸カリウム水溶液を基本成分として50容量%のエチレングリコールを加えたものとし、作用極2の電位を参照極4に対して+200Vとして作用極2と対極3との間に流れる電流を測定して、塩化水素ガス濃度指示値(ppm)に換算した。アンモニアガスセンサとして構成する場合、本実施例、比較例のいずれにおいても、作用極2は銀、対極3は銀、参照極4は銀とし、電解液Sは硝酸銀、酢酸塩水溶液を基本成分として50容量%のエチレングリコールを加えたものとし、作用極2の電位を参照極4に対して0Vとして作用極2と対極3との間に流れる電流を測定して、アンモニアガス濃度指示値(ppm)に換算した。
【0040】
本実施例では、隔膜5及び補強部材6として、隔膜5と補強部材6とが一体に形成された強化膜である、サポーテッドPTFEタイプメンブレンフィルター(東洋濾紙株式会社製、品名J010A系、平均孔径0.10μm、PTFE膜の厚さ30μm、ネットの厚さ100μm)を用いた。このフィルターは、多孔性のPTFE膜(隔膜5)と、ポリプロピレン繊維のネット(補強部材6)とが一体化されたものである。また、本実施例では、このフィルターは直径が約22mmの円形であり、Oリング8の直径は約20.3mm、作用極2の直径は塩化水素ガスセンサでは約10mm、アンモニアガスセンサでは約8mmであった。また、本実施例では、スペーサ7として、ポリエステル繊維で構成された厚さ38μmの不織布であるポリエステル不織布(バイリーン社製)を用いた。本実施例では、このスペーサ7は直径が約13mmの円形である。
【0041】
また、比較例では、隔膜5として、多孔性のPTFE膜(住友電工社製、品名ポアフロン、孔径0.10μm、厚さ80μm)を用いた。比較例における隔膜5、Oリング8、作用極2のそれぞれの直径は、本実施例のものと実質的に同じである。
【0042】
本実施例及び比較例の隔膜式ガスセンサ100を塩化水素ガスセンサとして構成した場合の結果を図4(a)、アンモニアガスセンサとして構成した場合の結果を図4(b)に示す。本実施例及び比較例のいずれについても2個の被検センサを用いた結果を示している。
【0043】
図4(a)、(b)からわかるように、比較例では、被検センサごとの指示値のばらつきが大きかった。これは、被検センサごとに電解液層Saの厚さが一定ではなかったことによるものと考えられる。また、比較例では、短期間で指示値がほぼゼロになるものがあった。これは、サンプルガスが比較的低湿度でありチャンバー201内が負圧であることにより電解液層Saの電解液Sが蒸発して減少したこと、及び、チャンバー201内が負圧であることにより隔膜5が伸びてたわみが生じたことにより、電解液層Saの厚さが変化したことによるものと考えられる。
【0044】
これに対して、図4(a)、(b)からわかるように、本実施例では、被検センサごとの指示値のばらつきは小さかった。これは、隔膜5と作用極2の表面との間にスペーサ7を設けたことにより、隔膜5と作用極2との間の距離が略一定に保たれたことによるものと考えられる。また、本実施例では、経時的な指示値の変化も小さかった。これは、隔膜5の外側に補強部材6を設けたことにより、隔膜5が伸びてたわみが生じることを抑制できたこと、及びスペーサ7が電解液Sを保持して電解液層Saの電解液Sの蒸発による減少が抑制されたことによるものと考えられる。
【0045】
<実験例2>
本実施例の隔膜式ガスセンサ100(図1(a))と、比較例としての従来の隔膜式ガスセンサ100(図6(a))と、を用いて、隔膜5の押し付け強さの違いによる隔膜式ガスセンサ100の指示値の変化を調べる実験を行った。
【0046】
本実験例では、本実施例及び比較例の隔膜式ガスセンサ100として、それぞれ実験例1において説明したものと実質的に同じ塩化水素ガスセンサを用いた。そして、本実施例及び比較例の隔膜式ガスセンサ100のそれぞれについて、取付部材10の締め付け起点からの締め付け量(角度)を0度~210度の範囲で変化させ、検出対象ガスの濃度が一定の雰囲気中に被検センサを配置して、被検センサの出力(締め付け角度120~150度の場合の出力に対する相対出力)を比較した。
【0047】
比較例の隔膜式ガスセンサ100についての結果を図5(a)、本実施例の隔膜式ガスセンサ100についての結果を図5(b)に示す。本実施例及び比較例のいずれについても3個の被検センサを用いた結果を示している。
【0048】
図5(a)からわかるように、比較例では、取付部材10の締め付け量(角度)、すなわち、隔膜5の押し付け強さの違いによって、隔膜式ガスセンサ100の出力に比較的大きなばらつきが生じた。これは、隔膜5の押し付け強さの違いによって、電解液層Saの厚さが異なってしまったためであると考えられる。
【0049】
これに対して、図5(b)に示すように、本実施例では、取付部材10の締め付け量(角度)、すなわち、隔膜5の押し付け強さの違いがあっても、隔膜式ガスセンサ100の出力の差は小さかった。そして、120度以上の締め付け角度とすることで、ほぼ一定の出力が得られた。これは、隔膜5と作用極2の表面との間にスペーサ7を設けたことにより、隔膜5の押し付け強さに違いがあっても、電解液層Saの厚さを略一定に保つことができたためであると考えられる。つまり、本実施例では、操作者の個人差によって隔膜5の押し付け強さが違っても、電解液層Saの厚さを略一定にして感度のバラツキを低減することができることがわかる。
【0050】
5.効果
以上説明したように、本実施例によれば、隔膜5、及び作用極2と隔膜5との間の電解液層Saの寸法安定性を向上させることによって、隔膜式ガスセンサ100の短期的な感度の安定性、及び長期的な感度の安定性を向上させることができる。つまり、本実施例によれば、電気化学的手法を利用した隔膜式ガスセンサ100及びセンサユニット300において、感度の長期的な安定性を向上させることができるとともに、隔膜式ガスセンサ100の初期及び保守作業(隔膜の交換、電解液の補充や交換など)の際の感度のバラツキを低減させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 容器
2 作用極
3 対極
4 参照極
5 隔膜
6 補強部材
7 スペーサ
100 隔膜式ガスセンサ
200 フローセル
300 センサユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6