(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】照明システム及び照明システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H05B 47/20 20200101AFI20230421BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20230421BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20230421BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20230421BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230421BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20230421BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230421BHJP
【FI】
H05B47/20
F21V8/00 227
F21V9/30
F21V7/00 570
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2019156635
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】竹中 俊明
(72)【発明者】
【氏名】小西 洋史
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-527518(JP,A)
【文献】特開2014-239188(JP,A)
【文献】特開2017-213980(JP,A)
【文献】特開2013-197033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0116520(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/20
F21V 8/00
F21V 9/30
F21V 7/00
H05B 45/00
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の発光素子を含み、第1光を出射する光源と、
前記第1光の一部を、前記第1光とは波長が異なる第2光に変換する波長変換部材と、
前記第1光が入射し、前記第1光を前記波長変換部材に照射する光学系と、
前記第2光の一部であるモニタ光を受光し、前記モニタ光の強度に対応するモニタ信号を出力する光センサと、
前記光源及び前記光センサを制御する出力制御回路とを備え、
前記出力制御回路は、前記モニタ信号に基づいて、前記光学系及び前記波長変換部材の状態を検査する光学系検査工程と、前記光源の状態を検査する光源検査工程とを時分割で行う
照明システム。
【請求項2】
前記出力制御回路は、前記光源検査工程においては、前記光センサにおける前記モニタ信号の増幅率を低下させ、前記光学系検査工程においては、前記増幅率を低下させない
請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記1以上の発光素子は、複数の発光素子を含み、
前記出力制御回路は、前記光源検査工程において、前記モニタ信号の強度が前回の前記光源検査工程における前記モニタ信号の強度と比べて所定の割合以上低下した場合に、前記複数の発光素子の各々に供給する電力を順次変化させたときの前記モニタ信号の変化を検出することによって、前記複数の発光素子のうち出力が低下している発光素子を特定する
請求項1又は2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記出力制御回路は、前記光源検査工程と、前記光学系検査工程とを交互に行う
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項5】
前記1以上の発光素子の各々は、半導体レーザ素子であり、
前記光学系は、前記第1光を導光する導光部材を含む
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項6】
照明システムの制御方法であって、
前記照明システムは、
1以上の発光素子を含み、第1光を出射する光源と、
前記第1光の一部を、前記第1光とは波長が異なる第2光に変換する波長変換部材と、
前記第1光が入射し、前記第1光を前記波長変換部材に照射する光学系と、
前記第2光の一部であるモニタ光を受光し、前記モニタ光の強度に対応するモニタ信号を出力する光センサとを備え、
前記照明システムの制御方法は、
前記モニタ信号に基づいて、前記光学系及び波長変換部材の状態を検査する光学系検査工程と、
前記モニタ信号に基づいて、前記光源の状態を検査する光源検査工程とを含み、
前記光源検査工程と前記光学系検査工程とを時分割で行う
照明システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明システム及び照明システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体発光素子を用いた照明装置が知られている(例えば、特許文献1など参照)。特許文献1に記載された照明装置では、半導体レーザ素子から出射された青色のレーザ光は、導光部材によって結像レンズへと導光され、結像レンズによって波長変換部材へと集光される。レーザ光は、波長変換部材を励起し、かつ、波長変換部材の表面によって散乱される。そして、波長変換部材において生成された黄色の光と、波長変換部材の表面によって散乱された青色の光とが混合されることによって生成された白色の光は、照明装置の外部へ出射される。
【0003】
上述の導光部材は、レーザ光の入射側端面から、出射側端面まで延伸しており、導光部材の入射側端面に対向する位置に半導体レーザ素子が配置され、導光部材の出射側端面に対向する位置に、結像レンズを介して波長変換部材及び光検出部が配置されている。
【0004】
光検出部は、波長変換部材が発光する黄色の光を含め、当該黄色の光と青色のレーザ光との混色光である白色の光を受光し、当該受光した光の受光量に応じた電気信号である検出信号を駆動回路へ出力する。駆動回路は、検出信号に基づいて、レーザ光を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された照明装置において、半導体レーザ素子及び導光部材において異常が発生する場合がある。これらの異常は、光検出部からの検出信号に基づいて検知することができる。しかしながら、特許文献1に記載された照明装置では、半導体レーザ素子及び導光部材のどちらで異常が発生しているのかを特定できない。例えば、半導体レーザ素子の出射光を検出する光検出部を追加すれば、異常発生箇所を特定できるが、照明装置の構成が複雑となる。
【0007】
そこで本開示は、簡素化された構成を有し、発光素子の異常と、光学系及び波長変換部材の異常とを個別に検出できる照明システムなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本開示の照明システムは、1以上の発光素子を含み、第1光を出射する光源と、前記第1光の一部を、前記第1光とは波長が異なる第2光に変換する波長変換部材と、前記第1光が入射し、前記第1光を前記波長変換部材に照射する光学系と、前記第2光の一部であるモニタ光を受光し、前記モニタ光の強度に対応するモニタ信号を出力する光センサと、前記光源及び前記光センサを制御する出力制御回路とを備え、前記出力制御回路は、前記モニタ信号に基づいて、前記光学系及び前記波長変換部材の状態を検査する光学系検査工程と、前記光源の状態を検査する光源検査工程とを時分割で行う。
【0009】
上記課題を解決するために本開示の照明システムの制御方法において、前記照明システムは、1以上の発光素子を含み、第1光を出射する光源と、前記第1光の一部を、前記第1光とは波長が異なる第2光に変換する波長変換部材と、前記第1光が入射し、前記第1光を前記波長変換部材に照射する光学系と、前記第2光の一部であるモニタ光を受光し、前記モニタ光の強度に対応するモニタ信号を出力する光センサとを備え、前記照明システムの制御方法は、前記モニタ信号に基づいて、前記光学系及び波長変換部材の状態を検査する光学系検査工程と、前記モニタ信号に基づいて、前記光源の状態を検査する光源検査工程とを含み、前記光源検査工程と前記光学系検査工程とを時分割で行う。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、簡素化された構成を有し、発光素子の異常と、光学系及び波長変換部材の異常とを個別に検出できる照明システムなどを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る照明システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る照明システムの構成を示す外観図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る光源及び切替部の構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る光センサの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る光センサの構成を示す回路図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る光センサの出力特性を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る照明システムの制御方法の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る光学系検査工程の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る光源検査工程の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る発光素子検査工程の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る照明システムの動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0014】
(実施の形態)
実施の形態に係る照明システム及び照明システムの制御方法について説明する。
【0015】
[1.全体構成]
まず、本実施の形態に係る照明システムの構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1及び
図2は、それぞれ、本実施の形態に係る照明システム1の構成を示すブロック図及び外観図である。
図1には、照明システム1と併せて入力電源P1も示されている。入力電源P1は、照明システム1に交流電力を供給する系統電源である。入力電源P1は、例えば、商用交流電源である。
【0016】
照明システム1は、照明光L2を出射するシステムであり、
図1及び
図2に示されるように、光源装置2と、導光部材3と、灯具4とを備える。なお、照明システム1の各構成要素は、一体化されていてもよいし、一体化されていなくてもよい。例えば、照明システム1は、一つの筐体内に配置されていてもよいし、複数の分散配置された装置の組み合わせであってもよい。
【0017】
光源装置2は、第1光を出射する装置である。
図1に示されるように、光源装置2は、照明点灯装置5と、光源6と、光学部材7とを有する。本実施の形態では、光源装置2は、第1光としてレーザ光L1を出射する。光源装置2は、
図2に示されるように筐体2aを有し、筐体2a内に、
図1に示される照明点灯装置5、光源6及び光学部材7が収容される。
【0018】
照明点灯装置5は、光源6に電力を供給することで点灯させる装置であり、駆動装置5aと、電源回路51と、出力制御回路52と、光センサ53と、切替部54とを有する。
【0019】
駆動装置5aは、光源6に供給する電力を制御する装置であり、電源回路51と、出力制御回路52とを有する。駆動装置5aは、切替部54の制御も行う。
【0020】
以下、照明システム1の各構成要素について説明する。
【0021】
[1-1.光源]
光源6は、1以上の発光素子を含み、第1光を出射する。以下、本実施の形態に係る光源6の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態に係る光源6及び切替部54の構成を示す回路図である。
図3に示されるように、光源6は、直列に接続された4個の発光素子61~64を含む。発光素子61~64の各々は、供給される電力に応じて発光する素子であれば特に限定されない。本実施の形態では、発光素子61~64の各々は、青色のレーザ光を出射する半導体レーザ素子である。これにより、光源6は、第1光としてレーザ光L1を出射する。なお、光源6に含まれる複数の発光素子の電気的な接続態様は、直列接続に限定されず、並列接続であってもよいし、直列接続及び並列接続を組み合わせた接続態様であってもよい。また、光源6に含まれる発光素子の個数は4個に限定されず、1以上であればよい。また、光源6に含まれる発光素子の各々は、半導体レーザ素子に限定されず、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro Luminescence)素子などの他の固体発光素子であってもよい。
【0022】
[1-2.切替部]
切替部54は、光源6に含まれる各発光素子の両端を短絡する回路である。切替部54は、1以上の発光素子にそれぞれ並列に接続された1以上のスイッチを有する。以下、本実施の形態に係る切替部54の構成について、
図3を用いて説明する。
図3に示されるように、本実施の形態では、切替部54は、複数の発光素子61~64にそれぞれ並列に接続された複数のスイッチ821~824を有する。複数のスイッチ821~824の各々は、例えば半導体リレー(言い換えると、ソリッド・ステート・リレー)であり、発光素子としての発光ダイオード82aと、受光素子としてのフォトトランジスタ82bとを有する。複数のスイッチ821~824がそれぞれ有する複数のフォトトランジスタ82bは、電源回路51の出力端間において、互いに直列に接続されている。さらに、複数のスイッチ821~824の各々において、発光ダイオード82aが出力制御回路52に接続されており、フォトトランジスタ82bが発光素子61~64のうちの一つと並列に接続されている。発光ダイオード82aのアノードが出力制御回路52に接続されており、発光ダイオード82aのカソードが電源回路51の低電圧側の出力端に電気的に接続されている。スイッチ821~824の各々は、各発光ダイオード82aへの出力制御回路52の制御により、フォトトランジスタ82bをオン及びオフする。以降、フォトトランジスタ82bのオン及びオフを、スイッチ821~824の各々のオン及びオフということがある。
【0023】
複数のスイッチ821~824は、複数の発光素子61~64と一対一に対応し、対応する発光素子に並列に接続されている。スイッチ821は発光素子61に対応し、スイッチ822は発光素子62に対応する。スイッチ823は発光素子63に対応し、スイッチ824は発光素子64に対応する。
【0024】
各スイッチにおいて、フォトトランジスタ82bがオフ状態である場合、対応する発光素子に駆動電流I1が流れる。一方、フォトトランジスタ82bがオン状態である場合、対応する発光素子の両端が短絡されるため、対応する発光素子に駆動電流I1は流れない。例えば、スイッチ821のフォトトランジスタ82bがオフ状態である場合、発光素子61に駆動電流I1が流れる。一方、スイッチ821のフォトトランジスタ82bがオン状態である場合、発光素子61に駆動電流I1は流れない。スイッチ822と発光素子62との関係、スイッチ823と発光素子63との関係、及びスイッチ824と発光素子64との関係についても、上述のスイッチ821と発光素子61との関係と同じである。
【0025】
[1-3.光学部材]
光学部材7は、光源6からのレーザ光L1を、光学系に導く部材である。本実施の形態では、光学系は導光部材3であり、光学部材7は、レーザ光L1を導光部材3の第1端31に向けて反射させる。
図1に示すように、光学部材7は、ダイクロイックミラー7aを有する。光学部材7は、さらに、レーザ光L1を集光して、導光部材3の第1端31に入射させる。光学部材7は、ダイクロイックミラー7a以外に、ミラー及びレンズなどの他の光学部品を備えていてもよい。また、導光部材3の第1端31から出射したモニタ光L3は、光学部材7のダイクロイックミラー7aを透過し、光センサ53に到達する。
【0026】
ダイクロイックミラー7aは、レーザ光L1及びモニタ光L3の光路を、空間的に分離する機能を有する。ダイクロイックミラー7aは、波長帯域に応じて光を透過又は反射させる。なお、本実施の形態では、ダイクロイックミラー7aは、レーザ光L1を反射させ、モニタ光L3を透過させる構成としたが、レーザ光L1を透過させ、モニタ光L3を反射させる構成としてもよい。この場合、レーザ光L1の光路及びモニタ光L3の光路に合わせて光センサ53及び光源6の配置が適宜変更される。
【0027】
[1-4.導光部材]
導光部材3は、レーザ光L1(つまり、第1光)が入射し、レーザ光L1を波長変換部材4aに照射する光学系の一例である。本実施の形態では、導光部材3は、レーザ光L1を導光する光ファイバであり、光源装置2と灯具4とを光学的に接続する。導光部材3のコア径は、例えば400μmである。なお、導光部材3のコア径は、5mm以下であればよい。そして、導光部材3の第1端31には、光源6から放射されて光学部材7によって集光されたレーザ光L1が入射する。レーザ光L1は、導光部材3の第1端31から、導光部材3の内部を伝達されて、導光部材3の第2端32から出射する。
【0028】
[1-5.灯具]
灯具4は、照明システム1において照明光L2を出射する器具である。本実施の形態では、灯具4は、器具本体4bと、波長変換部材4aとを有する。
【0029】
器具本体4bは、波長変換部材4aを収納し、波長変換部材4aから出射される照明光L2を出射する。器具本体4bは、例えば、両端に開口部を有する筒状の部材であり、照明光L2の配光を調整する反射板などを有する。
【0030】
波長変換部材4aは、第1光を、第1光とは波長が異なる第2光に変換する部材である。本実施の形態では、波長変換部材4aは、器具本体4bの内部に収納され、導光部材3の第2端32から出射されたレーザ光L1(つまり、第1光)が照射される。本実施の形態では、波長変換部材4aは、透光性材料に蛍光体が混合されている部材である。蛍光体は、例えば黄色蛍光体である。黄色蛍光体は、例えば、Ceで付活されたY3Al5O12、又はEuで付活されたBa2SiO4である。蛍光体は、青色のレーザ光L1の一部により励起されて、第2光として黄色光を出射する。波長変換部材4aは、残りの青色のレーザ光L1と黄色光との混色光である白色光を生成する。灯具4は、少なくとも1つの光学部品をさらに備えており、波長変換部材4aで生成された白色光を配光制御し、白色光の殆どは、照明光L2として灯具4から照明空間に照射される。
【0031】
さらに、第2光の一部は、モニタ光L3として導光部材3の第2端32に入射する。第2端32に入射したモニタ光L3は、導光部材3の内部を伝達されて、導光部材3の第1端31から出射する。
【0032】
[1-6.光センサ]
光センサ53は、第2光の一部であるモニタ光L3を受光し、モニタ光L3の強度に対応するモニタ信号を出力する検出器である。本実施の形態では、光センサ53は、導光部材3の第1端31から出射したモニタ光L3を検出する。より具体的には、モニタ光L3は、導光部材3の第2端32に入射し、導光部材3の内部を通って、導光部材3の第1端31から出射する。導光部材3の第1端31から出射したモニタ光L3は、光学部材7のダイクロイックミラー7aを透過し、光センサ53に到達する。光センサ53は、受光したモニタ光L3の光量に応じたモニタ信号Y1を出力する。なお、光学部材7から光センサ53までのモニタ光L3の光路上には、モニタ光L3の波長帯域以外の波長帯域の光を減衰させる光フィルタなどが配置されてもよい。
【0033】
以下、光センサ53の機能構成について
図4を用いて説明する。
図4は、本実施の形態に係る光センサ53の機能構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、光センサ53は、光電変換素子531と、増幅部532とを有する。
【0034】
光電変換素子531は、受光したモニタ光L3の光量に応じた電気信号を出力する素子である。光電変換素子531は、例えばフォトダイオードなどの光検出素子であり、受光したモニタ光L3の光量に応じた光電流を出力する。
【0035】
増幅部532は、光電変換素子531が出力する電気信号を増幅する回路である。本実施の形態では、増幅部532は、電流アンプ及び抵抗などを有しており、光電変換素子531が出力する光電流を増幅し、増幅した光電流を電圧に変換し、変換した電圧をモニタ信号Y1として出力する。すなわち、モニタ信号Y1は電圧信号であり、モニタ光L3の光量が大きいほど、光電流の値は大きくなり、モニタ信号Y1の電圧値は高くなる。光センサ53は、出力制御回路52に電気的に接続されており、モニタ信号Y1は出力制御回路52に出力される。
【0036】
増幅部532は、増幅率切替部53dを有する。増幅率切替部53dは、モニタ信号の増幅率を増大又は低減させる回路である。言い換えると、増幅率切替部53dは、光電変換素子531が出力する光電流の増幅率を切り替える回路である。増幅率切替部53dは、出力制御回路52から入力される信号に基づいて増幅率を切り替える。
【0037】
以下、本実施の形態に係る光センサ53の回路構成について
図5を用いて説明する。
図5は、本実施の形態に係る光センサ53の構成を示す回路図である。
図5に示される光センサ53の光電変換素子531は、フォトダイオードである。増幅部532は、電流アンプ53a、抵抗53b、抵抗53c、及び増幅率切替部53dを有する。
【0038】
電流アンプ53aは、制御電圧Vcを駆動電圧として、光電変換素子531の光電流I10を増幅し、増幅した電流(つまり、出力電流)を出力する。電流アンプ53aの出力端には、抵抗53b及び抵抗53cの各一端が電気的に接続されている。抵抗53b及び抵抗53cの各他端は、増幅率切替部53dに電気的に接続されている。
【0039】
増幅率切替部53dは、スイッチ53eを有する。スイッチ53eは、2つの固定接点X1、X2、及び可動接点X3を有し、可動接点X3を固定接点X1又はX2に選択的に接続する。固定接点X1は抵抗53bの他端に電気的に接続され、固定接点X2は抵抗53cの他端に電気的に接続されている。可動接点X3は、回路グランドに電気的に接続されている。したがって、スイッチ53eは、可動接点X3の接続先を固定接点X1又はX2に切り換えることで、抵抗53b及び抵抗53cのうちいずれかの他端を回路グランドに電気的に接続する。すなわち、増幅率切替部53dは、抵抗53b及び抵抗53cのうち一方を、電流アンプ53aの出力端と回路グランドとの間に接続される抵抗(ゲイン抵抗)として切替可能に選択する。そして、電流アンプ53aの出力電流は、ゲイン抵抗(抵抗53b又は抵抗53c)及びスイッチ53eを流れる。出力電流によるスイッチ53eでの電圧降下を略0とみなせば、電流アンプ53aの出力端と回路グランドとの間には、ゲイン抵抗(抵抗53b又は抵抗53c)の電圧降下による電圧値Vy1が生じ、電流アンプ53aの出力端からモニタ信号Y1が出力される。
【0040】
本実施の形態では、抵抗53bの抵抗値は、抵抗53cの抵抗値より大きい。したがって、一定の光電流I10に対して、抵抗53bをゲイン抵抗とした場合の電圧値Vy1は、抵抗53cをゲイン抵抗とした場合の電圧値Vy1より大きくなる。すなわち、増幅率切替部53dは、可動接点X3の接続先を固定接点X1又はX2に切り換えることで、増幅部532の増幅率を切り替えることができる。具体的には、抵抗53bをゲイン抵抗としたときの増幅率は、抵抗53cをゲイン抵抗としたときの増幅率より大きくなる。
【0041】
ここで、光センサ53の出力特性について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係る光センサ53の出力特性を示すグラフである。
図6の横軸はモニタ光L3の光量Q0を示し、
図6の縦軸はモニタ信号Y1の電圧値Vy1を示す。
図6に示されるように、光量Q0が0(ゼロ)から増加するにつれて、電圧値Vy1も0から線形に増加する。そして、光量Q0が飽和光量Qa1(第1値)を上回ると、電圧値Vy1は飽和電圧値(飽和値)Va1(第2値)で一定になる。すなわち、増幅部532はアナログ増幅器として機能し、光量Q0が0以上Qa1以下の範囲であれば、光センサ53は、電圧値Vy1が光量Q0に比例する線形領域で動作しており、光量Q0が多いほど電圧値Vy1は高くなる。しかし、光量Q0が飽和光量Qa1を上回ると、光センサ53は、光センサ53の出力が飽和する飽和領域で動作し、電圧値Vy1は飽和電圧値Va1で一定になる。飽和光量Qa1は、例えば光量Q0の最大値(すなわち、光源6の定格点灯時のモニタ光L3の光量Q0)の25%程度である。このように、光センサ53を線形領域だけでなく、飽和領域でも動作させることで、光センサ53で測定できる光量Q0のダイナミックレンジを広くすることができる。通常、出力制御回路52は、駆動電流I1を定格電流値に制御して、定格の駆動電流I1を光源6に供給する。定格の駆動電流I1による光量Q0は飽和光量Qa1よりも大きく、通常時の電圧値Vy1は飽和電圧値Va1になる。なお、飽和電圧値Va1が光量Q0の増加に伴って微小(線形領域の増加に比べて十分に小さい程度)に増加する場合、飽和電圧値Va1の最小値を第2値とする。
【0042】
図6に示す光センサ53の出力特性は、光センサ53の抵抗53bをゲイン抵抗としたときの出力特性である。すなわち、光センサ53の抵抗53bをゲイン抵抗とすれば(つまり、増幅率を最大とすれば)、モニタ光L3の光量Q0が飽和光量Qa1を上回る場合、モニタ信号Y1の電圧値Vy1は飽和電圧値Va1になる。
【0043】
増幅率切替部53dの切替制御は出力制御回路52によって行われる。通常、出力制御回路52は、増幅率切替部53dを制御して、抵抗53bをゲイン抵抗として選択させる(つまり、増幅率を最大とする)。そして、出力制御回路52は、増幅率切替部53dを制御して、ゲイン抵抗を抵抗53bから抵抗53cに所定のタイミングで切り替えさせる。すなわち、増幅率切替部53dは、増幅部532の増幅率を所定のタイミングで切り替える。抵抗53cの抵抗値は、光量Q0の最大値(すなわち、光源6の定格点灯時の光量Q0)において、光センサ53が線形領域で動作するように定められる。したがって、ゲイン抵抗として抵抗53cを用いることで、光センサ53は、光量Q0に1対1で対応するモニタ信号Y1の電圧値Vy1を出力できる。これにより、モニタ光L3の光量を正確に測定できるため、光源6の状態を正確に判定できる。
【0044】
[1-7.電源回路]
電源回路51は、光源6に電力を供給する回路である。電源回路51は、入力電源P1が出力する電力の電圧を変換して出力する。本実施の形態では、入力電源P1が出力する交流電力を直流電力に変換するスイッチング電源回路である。電源回路51は、力率改善機能を有するスイッチング電源回路であってもよい。例えば、電源回路51は、AC/DC変換回路及びDC/DC変換回路を有する。AC/DC変換回路は、例えば、力率改善機能を有する昇圧チョッパ回路又は昇降圧チョッパ回路である。AC/DC変換回路は、絶縁型のフライバック方式のコンバータ回路であってもよい。DC/DC変換回路は、例えば、定電流制御されるチョッパ回路である。なお、光源6の電圧がAC/DC変換回路の出力電圧より低い場合、DC/DC変換回路として降圧チョッパ回路などの降圧型の回路を用いる。一方、光源6の電圧がAC/DC変換回路の出力電圧より高い場合、DC/DC変換回路として昇圧チョッパ回路などの昇圧型の回路を用いる。また、光源6の電圧がAC/DC変換回路の出力電圧より高いときと低いときとがある場合、DC/DC変換回路として昇降圧チョッパ回路などの昇降圧型の回路を用いる。
【0045】
また、電源回路51は、シングルステージコンバータ(SSコンバータ)であってもよい。SSコンバータは、力率改善回路の機能とAC/DCコンバータの機能とを備えた、1コンバータ方式(電圧変換が1回)のコンバータである。
【0046】
[1-8.出力制御回路]
出力制御回路52は、光源6及び光センサ53を制御する回路である。本実施の形態では、出力制御回路52は、電源回路51及び切替部54を制御することによって、光源6の各発光素子に供給される電流を制御する。より具体的には、出力制御回路52は、電源回路51を制御することで、駆動電流I1を調整する。すなわち、駆動装置5aは、駆動電流I1を可変とすることで、レーザ光L1の光量を調整する調光機能を有する。また、出力制御回路52は、切替部54を制御することで、光源6の各発光素子の両端を短絡する。
【0047】
また、出力制御回路52は、光センサ53からのモニタ信号Y1に基づいて、光源6の状態を検査する光源検査工程と、光学系及び波長変換部材4aの状態を検査する光学系検査工程とを時分割で行う。光源検査工程及び光学系検査工程の詳細については後述する。
【0048】
出力制御回路52は、例えば、制御用IC(Integrated Circuit)、コンピュータシステムなどを含む。コンピュータシステムは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって出力制御回路52の各機能を実現することができれば、その種類は限定されない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(Large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。ここでは、電子回路に含まれる集積回路をICやLSIと呼んでいるが、集積回路は、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも上記集積回路と同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、非一時的記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネットなどを含む広域通信網を介して非一時的記録媒体に供給されてもよい。コンピュータシステムでは、プロセッサがプログラムを実行することによって、本実施の形態に係る出力制御回路52の各機能が実現される。
【0049】
[2.制御方法]
次に、本実施の形態に係る照明システム1の制御方法について
図7を用いて説明する。
図7は、本実施の形態に係る照明システム1の制御方法の流れを示すフローチャートである。
【0050】
図7に示されるように、まず、照明システム1の電源が投入される(S10)。これにより、入力電源P1から照明システム1に電力が供給される(
図1参照)。
【0051】
続いて、出力制御回路52は、電源回路51を制御することにより、光源6に駆動電流I1を供給する(S12)。これに伴い、光源6の各発光素子はレーザ光L1を出力する。レーザ光L1は、光学部材7及び導光部材3を介して波長変換部材4aに照射され、波長変換部材4aから照明光L2及びモニタ光L3が出射される。
【0052】
波長変換部材4aから出射されたモニタ光L3は、導光部材3及び光学部材7を介して光センサ53に入射する。光センサ53は、モニタ光L3を測定し、モニタ信号Y1を出力制御回路52に出力する。出力制御回路52は、モニタ信号Y1を初期検出値として取得する(S14)。ここで、光センサ53の増幅部532において、ゲイン抵抗として、抵抗53bが用いられる。これにより、駆動電流I1が定格電流値である場合には、初期検出値は、
図6に示される飽和電圧値Va1となる。
【0053】
続いて、
図7に戻り、出力制御回路52は、光センサ53の増幅率切替部53dを制御することにより、光センサ53の増幅部532における増幅率を低減する(S16)。つまり、
図5に示される増幅率切替部53dを制御することで、ゲイン抵抗として抵抗53cを用いる。このように、増幅部532における増幅率を低減した状態において、光センサ53は、モニタ光L3を測定し、モニタ信号Y1を出力制御回路52に出力する。出力制御回路52は、モニタ信号Y1を基準値として取得する(S18)。ここで、モニタ信号Y1が飽和電圧値Va1より小さい値となるように、増幅部532のゲイン抵抗が設定される。これにより、モニタ光L3の光量と1対1に対応するモニタ信号Y1を測定できる。
【0054】
続いて、
図7に戻り、出力制御回路52は、光センサ53の増幅率切替部53dを制御することにより、光センサ53の増幅部532における増幅率を増大する(S20)。つまり、
図5に示される増幅率切替部53dを制御することで、ゲイン抵抗として抵抗53bを用いる。
【0055】
続いて、
図7に戻り、出力制御回路52は、光学系検査工程を行う(S30)。ここで、光学系検査工程について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施の形態に係る光学系検査工程の流れを示すフローチャートである。
【0056】
光学系検査工程において、
図8に示されるように、出力制御回路52は、検出値を取得する(S32)。具体的には、光センサ53は、モニタ光L3を測定し、モニタ信号Y1を出力制御回路52に出力する。出力制御回路52は、モニタ信号Y1を検出値として取得する。
【0057】
続いて、出力制御回路52は、ステップS32で取得した検出値の低下率が第1閾値より大きいか否かを判定する(S34)。ここでは、ステップS32で取得した検出値と、その直前に取得した検出値(又はステップS14で検出した初期検出値)とを比較して、検出値の低下率が第1閾値より大きいか否かを判定する。第1閾値は、光学系又は波長変換部材4aに異常が発生した場合の検出値の低下率に基づいて決定される。第1閾値は、例えば、50%程度である。
【0058】
ステップS34において、検出値の低下率が第1閾値より大きいと出力制御回路52が判定した場合(S34でYes)、出力制御回路52は、光学系又は波長変換部材4aに異常が発生したと判断して、光源6への電流供給を停止する(S36)。
【0059】
一方、ステップS34において、検出値の低下率が第1閾値より大きくないと出力制御回路52が判定した場合(S34でNo)、出力制御回路52は、光学系検査工程の開始時点から(つまり、ステップS32開始時点から)、光学系検査時間が経過したか否かを判定する(S38)。ここで、光学系検査時間とは、光学系検査工程を継続する時間の最小値であり、例えば、50msec以上、100msec以下程度とすることができる。
【0060】
ステップS38において、光学系検査時間が経過していないと出力制御回路が判定した場合(S38でNo)、ステップS32に戻り、光学系検査工程を継続する。一方、ステップS38において、光学系検査時間が経過していると出力制御回路が判定した場合(S38でYes)、
図7に示される光源検査工程(S40)に進む。
【0061】
以下、光源検査工程について
図9を用いて説明する。
図9は、本実施の形態に係る光源検査工程の流れを示すフローチャートである。
【0062】
光源検査工程において、出力制御回路52は、
図7に示されるステップS16と同様に、光センサ53の増幅部532における増幅率を低減し(S42)、
図8に示されるステップS32と同様に、検出値を取得する(S44)。
【0063】
続いて、出力制御回路52は、
図9に示されるステップS44で取得した検出値の基準値からの低下率が第2閾値より大きいか否かを判定する(S46)。ここで、第2閾値は、検出値の低下率として、光源6に異常が発生しているおそれがあると想定される範囲の下限値程度に設定される値である。第2閾値は、例えば、基準値の10%程度に設定される。つまり、検出値の基準値からの低下率が第2閾値より大きい場合、光源6に異常が発生している蓋然性が高い。
【0064】
ステップS46において、検出値の基準値からの低下率が第2閾値より大きくないと出力制御回路52が判定した場合(S46でNo)、出力制御回路52は、光源検査工程を終了して、光学系検査工程に戻る(
図7のS30)。
【0065】
一方、ステップS46において、検出値の基準値からの低下率が第2閾値より大きいと出力制御回路52が判定した場合(S46でYes)、前回の光源検査工程においても、低下率が第2閾値より大きかったか否かを判定する(S48)。
【0066】
ステップS48において、前回の光源検査工程においては、低下率が第2閾値より大きくないと出力制御回路52が判定していた場合(S48でNo)、出力制御回路52は、光源検査工程を終了して、光学系検査工程に戻る(
図7のS30)。
【0067】
一方、ステップS48において、前回の光源検査工程においても、低下率が第2閾値より大きいと出力制御回路52が判定していた場合(S48でYes)、出力制御回路52は、基準値を直前のステップS44で取得した検出値に更新し(S50)、発光素子検査工程に進む(S60)。ここで、発光素子検査工程について、
図10を用いて説明する。
図10は、本実施の形態に係る発光素子検査工程の流れを示すフローチャートである。
【0068】
図10に示されるように、発光素子検査工程において、光源6にn個(nは、1以上の整数)の発光素子が含まれる場合、1番目の発光素子からn番目の発光素子まで、一つずつ順に検査を行う(
図10のループ1)。本実施の形態では、1番目の発光素子61から4番目の発光素子64まで順に検査を行う。具体的には、検査工程において、出力制御回路52は、i番目(iは1以上n以下の整数)の発光素子に並列に接続されたi番目のスイッチを短絡する(S62)。例えば、i=1である場合、1番目の発光素子61に並列に接続されたスイッチ821を短絡する。これにより、1番目の発光素子には、電流が流れず、1番目のスイッチ821に電流が流れる。このため、1番目の発光素子61が正常に動作している場合、1番目のスイッチ821を短絡することで、光源6が出射するレーザ光L1及びモニタ光L3の光量が低下する。
【0069】
一方、1番目の発光素子61に異常が発生していて、レーザ光を出射していない場合、1番目のスイッチ821を短絡しても、レーザ光L1及びモニタ光L3の光量は低下しない。したがって、1番目のスイッチ821を短絡して、モニタ光L3の光量を測定することで、1番目の発光素子61の異常の有無を判定できる。iが1以外の場合についても同様にi番目の発光素子の異常の有無を判定できる。
【0070】
ステップS62に続いて、出力制御回路52は、
図8に示されるステップS32と同様に、検出値を取得する(S64)。続いて、出力制御回路52は、検出値が基準値より低下したか否かを判定する(S66)。具体的には、検出値の基準値からの低下量が第3閾値より大きい場合に、出力制御回路52は、検出値が基準値より低下したと判定する。第3閾値は、例えば、基準値の1%以上5%以下程度の値に設定される。
【0071】
ステップS66において、検出値が基準値より低下したと出力制御回路52が判定した場合(S66でYes)、出力制御回路52は、i番目の発光素子は正常であると判定して、i番目のスイッチを開放し(S68)、i+1番目の発光素子の検査を行う。一方、ステップS66において、検出値が基準値より低下していないと出力制御回路52が判定した場合(S66でNo)、出力制御回路52は、i番目の発光素子が異常であると判定して、i番目のスイッチを短絡状態のまま維持して、i+1番目の発光素子の検査を行う。
【0072】
以上のように、各発光素子の検査を行い、全発光素子の検査が終了した後、
図9に示されるように、出力制御回路52は、n-1個以上のスイッチが短絡状態であるか否かを判定する(S52)。言い換えると、短絡されていない発光素子が2個以上あるか否かを判定する。出力制御回路52は、n-1個以上のスイッチが短絡状態であると判定した場合には、光源6への電流の供給を停止し(S54)、照明システム1の動作を終了する。一方、出力制御回路52は、短絡状態であるスイッチの個数は、n-1未満であると判定した場合、モニタ光L3の光量の低下分を補うように、光源6へ供給する電流を増大させて(S56)、
図7に示される光学系検査工程を行う(S30)。
【0073】
以上のように、本実施の形態に係る照明システム1の制御方法においては、出力制御回路52は、モニタ信号Y1に基づいて、光学系及び波長変換部材4aの状態を検査する光学系検査工程と、光源6の状態を検査する光源検査工程とを時分割で行う。これにより、光学系及び波長変換部材4aの異常と、光源6の各発光素子の異常とを個別に検出できる。また、本実施の形態に係る照明システム1では、光学系及び波長変換部材4aと、光源6との検査を一つの光センサ53だけで行うことができるため、構成を簡素化できる。
【0074】
また、本実施の形態では、出力制御回路52は、光源検査工程と、光学系検査工程とを交互に繰り返し行うことで、光源及び光学系などの異常を遅滞なく検出できる。
【0075】
[3.動作例]
次に、本実施の形態に係る照明システム1の動作例について、
図11を用いて説明する。
図11は、本実施の形態に係る照明システム1の動作例を示すタイミングチャートである。
図11には、光源6に供給される駆動電流I1、光センサ出力(モニタ信号Y1)、増幅率切替部53dのスイッチ53eの状態、及び、切替部54のスイッチ821~824に供給される電圧レベルと、時間との関係が示されている。
【0076】
図11に示されるように、まず、照明システム1の電源が投入されて、出力制御回路52は、光源6への駆動電流I1の供給を開始する。具体的には、時点t0に駆動電流I1=i1となるように、電流量を増大させる。この際、光センサ53において、ゲイン抵抗として抵抗53bが用いられており、増幅率が大きい状態となっている。このため、光センサ53からのモニタ信号Y1は、時点t0に至る前に飽和し、飽和電圧値Va1となる。
【0077】
時点t0において、光源6への駆動電流I1=i1となった後、出力制御回路52は、モニタ信号Y1を初期検出値として取得する。
図11に示される動作例では、初期検出値は、飽和電圧値Va1である。
【0078】
続いて、時点t1において、出力制御回路52は、光センサ53の増幅率切替部53dのスイッチ53eを制御することにより、光センサ53の増幅部532における増幅率を低減する。具体的には、出力制御回路52は、スイッチ53eの可動接点X3を固定接点X2に接続することで、ゲイン抵抗を抵抗53bから抵抗53cに切り替える(
図5参照)。このように、増幅部532における増幅率を低減した状態において、出力制御回路52は、モニタ信号Y1を基準値として取得する。
図11に示される動作例では、基準値は、飽和電圧値Va1より小さいVa2である。出力制御回路52は、基準値を取得した後、時点t2において、光センサ53の増幅率を増大させる。
【0079】
続いて、出力制御回路52は、
図8を用いて説明した光学系検査工程を行う。具体的には、検出値を取得し、検出値の低下率が第1閾値より大きいか否かを判定する。
図11に示される動作例では、光学系検査時間が経過するまでに、検出値の初期検出値からの低下率が第1閾値より大きくならなかったため、時点t3において、出力制御回路52は光学系検査工程を終了して、
図9及び
図10を用いて説明した光源検査工程を行う。具体的には、出力制御回路52は、時点t1から時点t2までの動作と同様に、光センサ53の増幅率を低減した状態で、光センサ53が出力するモニタ信号Y1を検出値として取得する。
図11に示される動作例では、時点t3で取得した検出値(Va2)の、時点t1で取得した基準値(Va2)からの低下率は第2閾値以下であるため、時点t4において、光源検査工程を終了して、光センサ53の増幅率を増大させる。
【0080】
続いて、時点t2から時点t3までの期間と同様に、出力制御回路52は、光学系検査工程を行う。
図11に示される動作例では、光学系検査時間が経過するまでに、検出値の初期検出値からの低下率が第1閾値より大きくならなかったため、時点t5において、出力制御回路52は光学系検査工程を終了して、光源検査工程を行う。具体的には、出力制御回路52は、時点t1から時点t2までの動作と同様に、光センサ53の増幅率を低減した状態で、光センサ53が出力するモニタ信号Y1を検出値として取得する。
図11に示される動作例では、時点t5で取得した検出値(Va3)の、時点t1で取得した基準値(Va2)からの低下率は第2閾値より大きいが、前回の(つまり、時点t3での)光源検査工程においては、検出値の基準値からの低下率は第2閾値以下であったため、時点t6において、光源検査工程を終了して、光センサ53の増幅率を増大させる。
【0081】
続いて、時点t2から時点t3までの期間と同様に、出力制御回路52は、光学系検査工程を行う。
図11に示される動作例では、光学系検査時間が経過するまでに、検出値の初期検出値からの低下率が第1閾値より大きくならなかったため、時点t7において、出力制御回路52は光学系検査工程を終了して、光源検査工程を行う。具体的には、出力制御回路52は、光センサ53の増幅率を低減した状態で、光センサ53が出力するモニタ信号Y1を検出値として取得する。
図11に示される動作例では、時点t7で取得した検出値(Va3)の、時点t1で取得した基準値(Va2)からの低下率は第2閾値より大きく、かつ、前回の(つまり、時点t5での)光源検査工程においても、検出値の基準値からの低下率は第2閾値より大きかったため、基準値を時点t7で取得した検出値(Va3)に更新し、発光素子検査工程を行う。
【0082】
発光素子検査工程においては、まず、光センサ53のモニタ信号Y1を安定させるために、時点t8まで待機する。本実施の形態では、例えば、出力制御回路52は、10msec程度待機する。
【0083】
続いて、時点t8から時点t9までの期間において、出力制御回路52は、1番目のスイッチ821にHIGHレベルの電圧を供給することによって、スイッチ821を短絡し、検出値を取得する。
図11に示される動作例では、検出値はVa3未満となり、基準値(Va3)より低下しているため、1番目の発光素子61に異常がないと判定し、1番目のスイッチ821を開放する。
【0084】
続いて、時点t9から時点t10までの期間において、出力制御回路52は、2番目のスイッチ822にHIGHレベルの電圧を供給することによって、スイッチ822を短絡し、検出値を取得する。
図11に示される動作例では、検出値はVa3未満となり、基準値(Va3)より低下しているため、2番目の発光素子62に異常がないと判定し、2番目のスイッチ822を開放する。
【0085】
続いて、時点t10から時点t11までの期間において、出力制御回路52は、3番目のスイッチ823にHIGHレベルの電圧を供給することによって、スイッチ823を短絡し、検出値を取得する。
図11に示される動作例では、検出値はVa3となり、基準値(Va3)から低下していないため、3番目の発光素子63に異常が発生していると判定し、3番目のスイッチ823を短絡状態のまま維持する。
【0086】
続いて、時点t11から時点t12までの期間において、出力制御回路52は、4番目のスイッチ824にHIGHレベルの電圧を供給することによって、スイッチ824を短絡し、検出値を取得する。
図11に示される動作例では、検出値はVa3未満となり、基準値(Va3)から低下しているため、4番目の発光素子64に異常がないと判定し、4番目のスイッチ824を開放する。
【0087】
出力制御回路52は、時点t12にて発光素子検査工程を終了し、短絡状態のスイッチの個数を確認する。
図11に示される動作例では、短絡状態のスイッチは、スイッチ823の一つのみであるため、出力制御回路52は、光源6に供給する駆動電流I1をi1からi2に増大させて、動作を継続する。
【0088】
これ以降、以上の動作と同様に、光学系検査工程と光源検査工程とを交互に繰り返す。
【0089】
以上のように、本実施の形態に係る照明システム1においては、光学系及び波長変換部材の異常と、光源6の各発光素子の異常とを個別に検出できる。
【0090】
[4.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る照明システム1は、1以上の発光素子を含み、第1光を出射する光源6と、第1光の一部を、第1光とは波長が異なる第2光に変換する波長変換部材4aと、第1光が入射し、第1光を波長変換部材4aに照射する光学系と、第2光の一部であるモニタ光L3を受光し、モニタ光L3の強度に対応するモニタ信号Y1を出力する光センサ53と、光源6及び光センサ53を制御する出力制御回路52とを備える。出力制御回路52は、モニタ信号に基づいて、光学系及び波長変換部材4aの状態を検査する光学系検査工程と、光源6の状態を検査する光源検査工程とを時分割で行う。
【0091】
これにより、光学系及び波長変換部材の異常と、光源6の各発光素子の異常とを個別に検出できる。また、本実施の形態に係る照明システム1では、光学系及び波長変換部材4aと、光源6との検査を一つの光センサ53だけで行うことができるため、構成を簡素化できる。
【0092】
また、本実施の形態に係る照明システム1において、出力制御回路52は、光源検査工程においては、光センサ53におけるモニタ信号Y1の増幅率を低下させ、光学系検査工程においては、増幅率を低下させなくてもよい。
【0093】
これにより、光センサ53のモニタ信号Y1が飽和している場合に、モニタ光L3の光量と、モニタ信号Y1とを1対1で対応させることが可能となるため、モニタ光L3の光量を正確に測定できる。
【0094】
また、本実施の形態に係る照明システム1において、光源6に含まれる1以上の発光素子は、複数の発光素子を含み、出力制御回路52は、光源検査工程において、モニタ信号Y1の強度が前回の光源検査工程におけるモニタ信号Y1の強度と比べて所定の割合以上低下した場合に、複数の発光素子の各々に供給する電力を順次変化させたときのモニタ信号Y1の変化を検出することによって、複数の発光素子のうち出力が低下している発光素子を特定してもよい。
【0095】
これにより、複数の発光素子を個別に検査することができ、出力が低下している発光素子を正確に特定できる。例えば、本実施の形態に係る照明システム1のように、各発光素子の両端を順次短絡して(つまり、各発光素子に供給する電力を順次ゼロとして)モニタ信号Y1の変化を検出してもよい。
【0096】
また、本実施の形態に係る照明システム1において、出力制御回路52は、光源検査工程と、光学系検査工程とを交互に行ってもよい。
【0097】
これにより、光源及び光学系などの異常を遅滞なく検出できる。
【0098】
また、本実施の形態に係る照明システム1において、光源6に含まれる1以上の発光素子の各々は、半導体レーザ素子であり、光学系は、第1光(つまり、レーザ光L1)を導光する導光部材3を含んでもよい。
【0099】
これにより、半導体レーザ素子から出力された高輝度のレーザ光L1を導光部材3によって、波長変換部材4aまで容易に導波できる。
【0100】
また、本実施の形態に係る照明システム1の制御方法は、モニタ信号Y1に基づいて、光学系及び波長変換部材4aの状態を検査する光学系検査工程と、モニタ信号Y1に基づいて、光源6の状態を検査する光源検査工程とを含み、光源検査工程と光学系検査工程とを時分割で行う。
【0101】
これにより、光学系及び波長変換部材の異常と、光源6の各発光素子の異常とを個別に検出できる。また、本実施の形態に係る照明システム1の制御方法によれば、光学系及び波長変換部材4aと、光源6との検査を一つの光センサ53だけで行うことができるため、照明システム1の構成を簡素化できる。
【0102】
(変形例など)
以上、本開示の複数の態様に係る照明システムなどについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0103】
例えば、実施の形態では、2回連続で、光源検査工程において、検出値の基準値からの低下量が2回連続で第2閾値より大きい場合に、発光素子検査工程を行ったが、光源検査工程の構成はこれに限定されない。例えば、1回でも低下量が第2閾値より大きくなった場合に発光素子検査工程を行ってもよいし、3回連続で低下量が第2閾値より大きくなった場合に発光素子検査工程を行ってもよい。
【0104】
また、上記実施の形態では、出力制御回路52は、光源検査工程においては、光センサ53におけるモニタ信号Y1の増幅率を低下させたが、必ずしも増幅率を低下させなくてもよい。例えば、増幅率を低下させない状態でも、モニタ光L3の光量と、モニタ信号Y1とが1対1で対応している場合には、光源検査工程において増幅率を低下させなくてもよい。
【0105】
また、上記実施の形態では、光学系として導光部材3を用いたが、光学系の構成は、第1光が入射し、第1光を波長変換部材4aに照射することができれば、導光部材3に限定されない。例えば、光学系として、ミラー、レンズなどの光学素子を用いてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態では、光源検査工程において、各発光素子に供給する電流を変化させるために、各発光素子に並列接続されるスイッチを短絡させて、各発光素子に流れる電流をゼロとしたが、光源検査工程の態様はこれに限定されない。例えば、光源検査工程において、各発光素子に供給する電流をゼロより大きい電流量に減少させてもよい。具体的には、スイッチ及び抵抗を直列接続した回路を、各発光素子に並列に接続してもよい。
【0107】
また、上記実施の形態の光源検査工程において、検出値の基準値からの低下率が第2閾値より2回連続で大きくなった場合に発光素子検査工程を行ったが、検出値の基準値からの低下率が1回でも第2閾値より大きくなった場合に、発光素子検査工程を行ってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 照明システム
3 導光部材
4a 波長変換部材
6 光源
52 出力制御回路
53 光センサ
53e、821、822、823、824 スイッチ
54 切替部
61、62、63、64 発光素子