IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図1
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図2
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図3
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図4
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図5
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図6
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図7
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図8
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図9
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図10
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図11
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図12
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図13
  • 特許-載置物検出装置および車両制御システム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】載置物検出装置および車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230421BHJP
   B60R 21/015 20060101ALI20230421BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
B60R21/015 340
B60R21/015 311
B60N2/42
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021561181
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035354
(87)【国際公開番号】W WO2021106325
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2019213392
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】松本 玄
(72)【発明者】
【氏名】古屋 博之
(72)【発明者】
【氏名】森浦 祐太
(72)【発明者】
【氏名】浮津 博伸
(72)【発明者】
【氏名】浦上 進
(72)【発明者】
【氏名】松井 義徳
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-301980(JP,A)
【文献】特許第3671730(JP,B2)
【文献】特許第4258931(JP,B2)
【文献】特許第3614068(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L5/00
B60N2/42
B60R21/015
-----------------------------------
本件特許出願に対応する国際特許出願PCT/JP2020/035354の
調査結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を検出するための複数のセンサ部がマトリクス状に配置された荷重センサと、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサ上の載置物の状況を検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサの検出領域上における荷重分布を検出し、
前記荷重分布に基づいて前記載置物が人または動物と物の何れであるかを判別し、
前記載置物が物であると判別した場合、前記荷重分布の時間的変化に基づいて、当該物に人または動物が載っているか否かを判別し、
前記荷重分布の時間的変化が10Hz以下の場合に、前記物に人または動物が載っていると判別する、
ことを特徴とする載置物検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の載置物検出装置において、
前記荷重センサは、所定の対象物に組み込まれて使用され、
前記制御部は、前記荷重センサが前記対象物に組み込まれた後の前記各センサ部の検出値を基準として、前記荷重分布を検出する、
ことを特徴とする載置物検出装置。
【請求項3】
荷重を検出するための複数のセンサ部がマトリクス状に配置され、移動体に設置された荷重センサと、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサ上の載置物の状況を検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記移動体の加速度に関する情報を取得し、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサの検出領域上における荷重分布を検出し、
前記荷重分布に基づいて前記載置物が人または動物と物の何れであるかを判別し、
前記載置物が物であると判別した場合、前記加速度に関する情報と前記荷重分布の時間的変化とに基づいて、当該物に人または動物が載っているか否かを判別し、
前記荷重センサからの出力に基づく前記荷重分布の時間的変化が、前記加速度により生じる前記荷重分布の時間的変化に整合しない場合に、前記物に人または動物が載っていると判別する、
ことを特徴とする載置物検出装置。
【請求項4】
荷重を検出するための複数のセンサ部がマトリクス状に配置され、移動体に設置された荷重センサと、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサ上の載置物の状況を検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記移動体の加速度に関する情報を取得し、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサの検出領域上における荷重分布を検出し、
前記荷重分布に基づいて前記載置物が人または動物と物の何れであるかを判別し、
前記載置物が物であると判別した場合、前記加速度に関する情報と前記荷重分布の時間的変化とに基づいて、当該物に人または動物が載っているか否かを判別し、
前記加速度が閾値以上である場合、前記物に人または動物が載っていると判別することを中止する、
ことを特徴とする載置物検出装置。
【請求項5】
荷重を検出するための複数のセンサ部がマトリクス状に配置され車両の各座席に設置された荷重センサと、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサ上の載置物の状況を検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサの検出領域上における荷重分布を検出し、
前記荷重分布に基づいて前記載置物が人または動物と物の何れであるかを判別し、
前記載置物が物であると判別した場合、前記荷重分布の時間的変化に基づいて、当該物に人または動物が載っているか否かを判別し、
前記物に人または動物が載っているか否かの前記判別において、前記制御部は、
載置物が物であると判別された第1の荷重センサからの出力に基づいて当該第1の荷重センサにおける荷重分布の第1の時間的変化を取得し、
載置物が物であると判別された他の第2の荷重センサからの出力に基づいて当該第2の荷重センサにおける荷重分布の第2の時間的変化を取得し、
前記第1の時間的変化と前記第2の時間的変化とが整合しないことに基づいて、前記第1の荷重センサ上の物に人または動物が載っていると判別する、
ことを特徴とする載置物検出装置。
【請求項6】
請求項1ないしの何れか一項に記載の載置物検出装置において、
前記制御部は、前記物の上に人および動物が載っていないと判別した後、前記荷重分布の時間的変化を監視して、前記物に人または動物が載っているか否かの判別を継続する、
ことを特徴とする載置物検出装置。
【請求項7】
置物検出装置と、
車両に対する所定の制御を行う車両制御部と、を備え、
前記載置物検出装置は、
荷重を検出するための複数のセンサ部がマトリクス状に配置され、前記車両の座席に設置された荷重センサと、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサ上の載置物の状況を検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサの検出領域上における荷重分布を検出し、
前記荷重分布に基づいて前記載置物が人または動物と物の何れであるかを判別し、
前記載置物が物であると判別した場合、前記荷重分布の時間的変化に基づいて、当該物に人または動物が載っているか否かを判別し、
前記車両制御部は、前記載置物検出装置の検出結果に基づいて前記車両内に人または動物が放置されていると判定した場合に、当該放置を前記車両の外部に報知する制御を実行する、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項8】
請求項に記載の車両制御システムにおいて、
前記車両制御部は、運転手の退出に関する所定の退出条件が満たされた場合に、前記車両内に人または動物が放置されているか否かの判定を開始する、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項9】
請求項またはに記載の車両制御システムにおいて、
前記車両制御部は、前記載置物検出装置の検出結果に基づいて運転席に人がいないと判定した場合に、前記運転席以外の座席に人または動物がいるか否かに基づいて、前記車両内に人または動物が放置されているか否かを判定する、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項10】
請求項に記載の車両制御システムにおいて、
前記車両制御部は、前記載置物検出装置の検出結果に基づいて前記運転席に人がいないと判定した場合、前記載置物検出装置の検出結果に基づいて運転席以外の座席に人および動物がいないと判定しても、前記車両内に人または動物が放置されているか否かの判定を継続する、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項11】
請求項ないし10の何れか一項に記載の車両制御システムにおいて、
前記車両制御部は、前記車両における人または動物の放置時間に応じて、報知の形態を切り替える、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項12】
請求項1ないしの何れか一項に記載の載置物検出装置と、
車両に対する所定の制御を行う車両制御部と、を備え、
前記荷重センサは、前記車両の座席に設置され、
前記車両制御部は、前記載置物検出装置の検出結果に基づいて物の上に人または動物がいる座席を特定し、特定した座席に対するエアバックの動作を停止させる、
ことを特徴とする車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重を検出するための複数のセンサ部がマトリクス状に配置された荷重センサを用いて、当該荷重センサ上の載置物の状況を検出する載置物検出装置、および当該載置物検出装置の検出結果に基づいて所定の制御を行う車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、荷重を検出するための複数のセンサ部がマトリクス状に配置された荷重センサが、種々の分野で用いられている。たとえば、シート状の荷重センサを車両の座席に配置することにより、各座席上の物体の状況を検出することができる。
【0003】
以下の特許文献1には、複数のセンサ部がマトリクス状に配置されたシートセンサと、シートセンサに接続されたマイクロコンピュータと、を備える着座乗員判定装置が記載されている。この装置では、シートセンサが車両の座席に設置され、マトリクス状に配置された全てのセンサ部からの出力電圧の分布に基づいて、シートセンサ上の載置物が、大人、子供およびチャイルドシートの何れであるかが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4513190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような装置では、シートセンサ上の載置物が、大人、子供およびチャイルドシートの何れであるかを判定できるものの、さらにチャイルドシートに子供が座っているか否かについては判定されない。チャイルドシートに子供が座っているか否かが検出されると、たとえば、子供に対する制御と大人に対する制御とを切り替えることができ、安全面等において重要な要素となる。
【0006】
かかる課題に鑑み、本発明は、荷重センサ上の載置物の状況をより緻密に検出することが可能な載置物検出装置および車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、載置物検出装置に関する。本態様に係る載置物検出装置は、荷重を検出するための複数のセンサ部がマトリクス状に配置された荷重センサと、前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサ上の載置物の状況を検出する制御部と、を備える。前記制御部は、前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサの検出領域上における荷重分布を検出し、前記荷重分布に基づいて前記載置物が人または動物と物の何れであるかを判別し、前記載置物が物であると判別した場合、前記荷重分布の時間的変化に基づいて、当該物に人または動物が載っているか否かを判別する。前記制御部は、前記荷重分布の時間的変化が10Hz以下の場合に、前記物に人または動物が載っていると判別する。
【0008】
本態様に係る載置物検出装置によれば、物に人または動物が載っているか否かをさらに判別できるため、荷重センサ上の載置物の状況をより緻密に検出することができる。これにより、たとえば、チャイルドシート(物)に子供(人)が座っている場合に、当該子供に対する制御を円滑かつ適切に行うことができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、車両制御システムに関する。本態様に係る車両制御システムは、載置物検出装置と、車両に対する所定の制御を行う車両制御部と、を備える。前記載置物検出装置は、荷重を検出するための複数のセンサ部がマトリクス状に配置され、前記車両の座席に設置された荷重センサと、前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサ上の載置物の状況を検出する制御部と、を備える。前記制御部は、前記荷重センサからの出力に基づいて前記荷重センサの検出領域上における荷重分布を検出し、前記荷重分布に基づいて前記載置物が人または動物と物の何れであるかを判別し、前記載置物が物であると判別した場合、前記荷重分布の時間的変化に基づいて、当該物に人または動物が載っているか否かを判別する。前記車両制御部は、前記載置物検出装置の検出結果に基づいて前記車両内に人または動物が放置されていると判定した場合に、当該放置を前記車両の外部に報知する制御を実行する。
【0010】
本態様に係る車両制御システムによれば、車両に子供や動物等が放置されていることを報知できる。上記のように、チャイルドシート等の物に子供が載っていることも判別できるため、チャイルドシートに子供が載せられて放置されている場合も、適切に報知できる。よって、安全性をより高めることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、車両制御システムに関する。本態様に係る車両制御システムは、上記第1の態様に係る載置物検出装置と、車両に対する所定の制御を行う車両制御部と、を備える。前記荷重センサは、前記車両の座席に設置され、前記車両制御部は、前記載置物検出装置の検出結果に基づいて物の上に人または動物がいる座席を特定し、特定した座席に対するエアバックの動作を停止させる。
【0012】
本態様に係る車両制御システムによれば、たとえば、チャイルドシートに子供が載っている場合に、当該チャイルドシートが設置された座席に対するエアバックの動作が停止される。よって、子供に対する安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によれば、荷重センサ上の載置物の状況をより緻密に検出することが可能な載置物検出装置および車両制御システムを提供できる。
【0014】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、実施形態に係る、基材および導電弾性体を模式的に示す斜視図である。図1(b)は、実施形態に係る、被覆付き銅線を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)は、実施形態に係る、糸を模式的に示す斜視図である。図2(b)は、実施形態に係る、基材が設置されたことにより組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
図3図3(a)、(b)は、実施形態に係る、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線の周辺を模式的に示す断面図である。
図4図4は、実施形態に係る、Z軸負方向に見た場合の荷重センサを模式的に示す平面図である。
図5図5(a)は、実施形態に係る、車両の座席の着座面に荷重センサが設置された状態を模式的に示す図である。図5(b)は、実施形態に係る、車両の座席の着座面に載置物が載置された状態を模式的に示す図である。
図6図6(a)~(f)は、実施形態に係る、着座面に設置された荷重センサが実際に検出した荷重分布を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る、載置物検出装置および車両制御システムの構成を示すブロック図である。
図8図8は、実施形態に係る、載置物検出装置の制御部の処理を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係る、車両制御システムの車両制御部の第1処理を示すフローチャートである。
図10図10は、実施形態に係る、車両制御システムの車両制御部の第2処理を示すフローチャートである。
図11図11(a)は、実施形態に係る、設定警告数、所定時間、および報知内容を示す表である。図11(b)は、変更例に係る、設定警告数、所定時間、および報知内容を示す表である。
図12図12(a)は、変更例1に係る、載置物検出装置の制御部の処理を示すフローチャートである。図12(b)は、変更例2に係る、載置物検出装置の制御部の処理を示すフローチャートである。
図13図13(a)は、変更例3に係る、載置物検出装置の制御部の処理を示すフローチャートである。図13(b)は、変更例4に係る、載置物検出装置の制御部の処理を示すフローチャートである。
図14図14(a)は、変更例4に係る、車両に加速度が生じている場合に加速度による荷重の変化が生じていることを模式的に示す図である。図14(b)は、変更例4に係る、車両に加速度が生じていない場合に加速度による荷重の変化が生じていないことを模式的に示す図である。
【0016】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施形態における荷重センサは、荷重を検出するための複数のセンサ部(素子部)がマトリクス状に配置された荷重センサである。このような荷重センサは、「静電容量型感圧センサ素子」、「容量性圧力検出センサ素子」、「感圧スイッチ素子」などと称される場合もある。また、以下の実施形態における載置物検出装置は、車両内に設置されるとともに、上記のような荷重センサを含み、荷重センサからの出力に基づいて車両内の座席における載置物を判定する装置である。載置物としては、人、動物(たとえば、犬)、チャイルドシート(幼児用補助装置)、動物用キャリーバッグ等が挙げられる。以下の実施形態では、載置物が人およびチャイルドシートの場合の構成例が示されている。また、以下の実施形態における車両制御システムは、車両内に設置されるとともに、上記のような載置物検出装置を含み、車両に対する所定の制御を行うシステムである。以下の実施形態は、本発明の一実施形態あって、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、荷重センサ1の高さ方向である。
【0019】
図1(a)~図4を参照して、荷重センサ1について説明する。
【0020】
図1(a)は、基材11と、基材11の上面に設置された3つの導電弾性体12とを模式的に示す斜視図である。
【0021】
基材11は、弾性を有する絶縁性の部材であり、X-Y平面に平行な平板形状を有する。基材11は、非導電性を有する樹脂材料または非導電性を有するゴム材料から構成される。基材11に用いられる樹脂材料は、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(たとえば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材11に用いられるゴム材料は、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0022】
導電弾性体12は、基材11の上面(Z軸正側の面)に接着剤等により設置される。図1(a)では、基材11の上面に、3つの導電弾性体12が設置されている。導電弾性体12は、弾性を有する導電性の部材である。各導電弾性体12は、基材11の上面においてY軸方向に長い帯状の形状を有しており、X軸方向に互いに離間した状態で並んで設置されている。各導電弾性体12のY軸負側の端部に、導電弾性体12と電気的に接続されたケーブル12aが設置される。導電弾性体12は、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。
【0023】
導電弾性体12に用いられる樹脂材料は、上述した基材11に用いられる樹脂材料と同様、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(ポリジメチルポリシロキサン(たとえば、PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。導電弾性体12に用いられるゴム材料は、上述した基材11に用いられるゴム材料と同様、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0024】
導電弾性体12に用いられる導電性フィラーは、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In(酸化インジウム(III))、およびSnO(酸化スズ(IV))等の金属材料や、PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる複合物)等の導電性高分子材料や、金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。
【0025】
図1(b)は、図1(a)の構造体に載置された3つの被覆付き銅線13を模式的に示す斜視図である。
【0026】
被覆付き銅線13は、図1(a)に示した3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置される。ここでは、3つの被覆付き銅線13が3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置されている。各被覆付き銅線13は、導電性の線材と、当該線材の表面を被覆する誘電体とからなる。3つの被覆付き銅線13は、導電弾性体12の長手方向(Y軸方向)に沿って、導電弾性体12に交差するように並んで配置されている。各被覆付き銅線13は、3つの導電弾性体12に跨がるよう、X軸方向に延びて配置される。被覆付き銅線13の構成については、追って図3(a)、(b)を参照して説明する。
【0027】
図2(a)は、図1(b)の構造体に設置された糸14を模式的に示す斜視図である。
【0028】
図1(b)のように3つの被覆付き銅線13が配置された後、各被覆付き銅線13は、被覆付き銅線13の長手方向(X軸方向)に移動可能に、糸14で基材11に接続される。図2(a)に示す例では、12個の糸14が、導電弾性体12と被覆付き銅線13とが重なる位置以外の位置において、被覆付き銅線13を基材11に接続している。糸14は、導電性を有する材料により構成され、たとえば、繊維とその中に分散した導電性の金属材料から構成される。糸14に用いられる導電性の金属材料は、たとえば銀である。
【0029】
図2(b)は、図1(b)の構造体に設置された基材15を模式的に示す斜視図である。
【0030】
図2(a)に示した構造体の上方から、図2(b)に示すように、基材15が設置される。基材15は、絶縁性の部材である。基材15は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびポリイミド等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材15は、X-Y平面に平行な平板形状を有し、X-Y平面における基材15の大きさは、基材11と同様である。基材15の四隅の頂点が基材11の四隅の頂点に対して、シリコーンゴム系接着剤や糸などで接続されることにより、基材15が基材11に対して固定される。こうして、図2(b)に示すように、荷重センサ1が完成する。
【0031】
図3(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線13の周辺を模式的に示す断面図である。図3(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、図3(b)は、荷重が加えられている状態を示している。
【0032】
図3(a)に示すように、被覆付き銅線13は、銅線13aと、銅線13aを被覆する誘電体13bと、により構成される。銅線13aは、銅により構成されており、銅線13aの直径は、たとえば、約60μmである。誘電体13bは、電気絶縁性を有し、たとえば、樹脂材料、セラミック材料、金属酸化物材料などにより構成される。誘電体13bは、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフテレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料でもよく、AlおよびTaなどからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料でもよい。
【0033】
図3(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、導電弾性体12と被覆付き銅線13との間にかかる力、および、基材15と被覆付き銅線13との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、図3(b)に示すように、基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられ、基材15の上面に対して下方向に荷重が加えられると、被覆付き銅線13によって導電弾性体12が変形する。なお、基材11の下面または基材15の上面が静止物体に載置されて、他方の基材に対してのみ荷重が加えられた場合も、反作用により静止物体側から同様に荷重を受けることになる。
【0034】
図3(b)に示すように、荷重が加えられると、被覆付き銅線13は、導電弾性体12に包まれるように導電弾性体12に近付けられ、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触面積が増加する。これにより、被覆付き銅線13内の銅線13aと導電弾性体12との間の静電容量が変化し、この領域の静電容量が検出され、この領域にかかる荷重が算出される。
【0035】
図4は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1を模式的に示す平面図である。図4では、便宜上、糸14および基材15の図示が省略されている。
【0036】
図4に示すように、3つの導電弾性体12と3つの被覆付き銅線13とが交わる位置に、荷重に応じて静電容量が変化するセンサ部A11、A12、A13、A21、A22、A23、A31、A32、A33が形成される。各センサ部は、導電弾性体12と被覆付き銅線13を含み、被覆付き銅線13は、静電容量の他方の極(たとえば陽極)を構成し、導電弾性体12は、静電容量の一方の極(たとえば陰極)を構成する。
【0037】
各センサ部に対してZ軸方向に荷重が加わると、荷重により被覆付き銅線13が導電弾性体12に包み込まれる。これにより、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触面積が変化し、当該被覆付き銅線13と当該導電弾性体12との間の静電容量が変化する。被覆付き銅線13のX軸負側の端部およびケーブル12aのY軸負側の端部は、図7を参照して後述する制御部201に対して、回路を介して接続されている。
【0038】
図4に示すように、3つの被覆付き銅線13をラインL11、L12、L13と称し、3つの導電弾性体12から引き出されたケーブル12aをラインL21、L22、L23と称する。ラインL11がラインL21、L22、L23に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、センサ部A11、A12、A13であり、ラインL12がラインL21、L22、L23に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、センサ部A21、A22、A23であり、ラインL13がラインL21、L22、L23に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、センサ部A31、A32、A33である。
【0039】
センサ部A11に対して荷重が加えられると、センサ部A11において導電弾性体12と被覆付き銅線13との接触面積が増加する。したがって、ラインL11とラインL21との間の静電容量を検出することにより、センサ部A11において加えられた荷重を算出することができる。同様に、他のセンサ部においても、当該他のセンサ部において交わる2つのライン間の静電容量を検出することにより、当該他のセンサ部において加えられた荷重を算出することができる。
【0040】
ここで、本実施形態では、荷重センサ1は車両の座席に設置され、荷重センサ1からの出力に基づいて車両内の座席における載置物(人やチャイルドシート等)が判定される。以下、図5(a)~図6(f)を参照して、車両内に設置された荷重センサ1の出力に基づいて載置物を判定する処理の概要について説明する。
【0041】
図5(a)は、車両Cの座席の着座面に荷重センサ1が設置された状態を模式的に示す図である。
【0042】
本実施形態では、車両Cに設けられた座席の数は4つであり、車両C内には、4つの座席St(1)~(4)が設けられている。座席St(1)は、運転席であり、座席St(2)は、助手席であり、座席St(3)は、運転席の後方に位置する座席であり、座席St(4)は、運転席の斜め後方に位置する座席である。各座席の着座面にそれぞれ荷重センサ1が設置され、各荷重センサ1は、車両C内に設置された制御部201(図7参照)に接続される。荷重センサ1は、マトリクス状にセンサ部が配置された検出領域1aにおいて荷重を検出する。
【0043】
車両Cに設けられる複数の荷重センサ1を含む載置物検出装置2(図7参照)は、荷重センサ1が座席に組み込まれたときに、オペレータによる初期設定の下、載置物が載っていない状態で、荷重センサ1の各センサ部の検出値を基準値として記憶する。これにより、荷重センサ1の上に座席のカバー等が設置されて初期荷重が生じたとしても、初期荷重に応じた基準値が記憶されるため、実際の動作時に検出された荷重から初期荷重を減算することにより、初期荷重を除いた状態で荷重分布を検出することができる。
【0044】
図5(b)は、車両Cの座席の着座面に載置物が載置された状態を模式的に示す図である。
【0045】
図5(b)に示す例では、座席St(1)に人(運転手)が座っており、座席St(3)にも人が座っている。一方、座席St(2)と座席St(4)には、チャイルドシートが設置されており、座席St(4)のチャイルドシートには子供が座っている。図5(b)に示すように、各座席の着座面に設置された荷重センサ1は、検出領域1a上に載置された載置物に応じて荷重分布を検出する。
【0046】
図6(a)~(f)は、着座面に設置された荷重センサ1が実際に検出した荷重分布を示す図である。
【0047】
この場合の荷重センサ1は、縦方向に32個および横方向に32個のマトリクス状に並ぶセンサ部を備えている。図6(a)~(f)において、各センサ部に対応する矩形領域には、各センサ部が検出した荷重値に応じて色が付されており、矩形領域に付された色は、荷重が大きくなる順に、青色、緑色、黄色、赤色と変化している。図6(a)~(f)の矩形領域に付された色は、元はカラーであったものを、便宜上グレーに置き換えたものである。図6(a)~(f)に示す荷重値は、実際に検出された荷重から初期荷重を減算したものである。
【0048】
荷重センサ1の上に載置物が存在しない場合、図6(a)に示すように、全てのセンサ部に荷重がかからない。荷重センサ1の上に直接的に人が座っている場合、図6(b)に示すように、荷重のかかる範囲が人の臀部の形になる。荷重センサ1の上にチャイルドシートのみが設置されている場合、図6(c)に示すように、チャイルドシートの脚の形状に応じて荷重がかかる。荷重センサ1の上に設置されたチャイルドシートの上に子供が座っている場合、図6(d)に示すように、チャイルドシートの脚の形状に応じて荷重がかかるとともに、図6(c)に比べてやや荷重が大きくなる。
【0049】
ここで、載置物が存在するか否かは、荷重センサ1に荷重がかかっているか否かで判別可能である。また、人が直接的に座っている場合と、チャイルドシートが設置されている場合とは、それぞれ荷重のかかる範囲の形状(荷重分布)により判別可能である。しかしながら、チャイルドシートのみが設置されている場合と、チャイルドシートに子供が座っている場合とでは、チャイルドシートの重さや子供の体重が一定ではなく、さらに図6(b)のように人の臀部の形も現れないために、荷重センサ1により検出される荷重分布から判別することは困難である。
【0050】
そこで、発明者らは、チャイルドシートのみが設置されている場合と、チャイルドシートに人(子供)が座っている場合とを判別するために、荷重分布の時間的変化に着目した。具体的には、発明者らは、チャイルドシート上に人が存在する場合、人の動きに伴い荷重分布が時間の経過に応じて変動するが、人が存在しない場合、荷重分布は時間の経過に応じて変動しないことに着目した。
【0051】
図6(e)、(f)は、座席に設置されたチャイルドシートに子供が座っている場合に、互いに異なるタイミングで測定された荷重分布を示す図である。
【0052】
チャイルドシートに子供が座っている場合、図6(e)、(f)に示すように、時間の経過とともにチャイルドシート上において荷重分布が変動する。図6(e)の場合は、子供がチャイルドシート上で左側に寄っていることにより、チャイルドシートの荷重がかかる範囲において左側の荷重が大きくなっている。一方、図6(f)の場合は、子供がチャイルドシート上で右側に寄っていることにより、チャイルドシートの荷重がかかる範囲において右側の荷重が大きくなっている。
【0053】
したがって、図6(e)、(f)に示すように、時間的変化に応じて荷重分布が変動するか否かに基づいて、チャイルドシート上に子供が座っているか否かを判定することが可能になる。座席の載置物を検出する処理については、追って図8を参照して説明する。
【0054】
図7は、載置物検出装置2および車両制御システム3の構成を示すブロック図である。
【0055】
載置物検出装置2は、車両C内に設置され、少なくとも1つの荷重センサ1と、制御部201と、を備える。本実施形態の載置物検出装置2は、図5(a)、(b)に示したように車両Cの4つの座席にそれぞれ設置された4つの荷重センサ1を含んでいる。各荷重センサ1は、制御部201に接続されている。
【0056】
制御部201は、演算処理回路とメモリを備え、たとえばFPGAやMPUにより構成される。制御部201のメモリには、上述した荷重センサ1の各センサ部の基準値が記憶されている。制御部201は、荷重センサ1からの出力に基づいて荷重センサ1の検出領域1a(図5(a)、(b)参照)上における荷重分布を検出する。具体的には、制御部201は、測定対象のセンサ部に対して矩形電圧を印加して電圧値を測定し、測定した電圧値に基づいて測定対象のセンサ部の静電容量を算出して、センサ部にかかる荷重を算出する。制御部201は、このような荷重の算出をセンサ部ごとに行って、検出領域1a上における荷重分布を取得する。そして、制御部201は、取得した荷重分布に基づいて荷重センサ1上の載置物の状況を検出する。
【0057】
車両制御システム3は、載置物検出装置2と、車両制御部301と、ドア開閉検出部311と、ドアロック部312と、開始指示受付部313と、エアバッグ駆動部314と、加速度センサ315と、無線通信部316と、スピーカー317と、を備える。載置物検出装置2を除く車両制御システム3の各部は、車両Cにあらかじめ搭載された構成である。
【0058】
車両制御部301は、演算処理回路とメモリを備え、たとえばFPGAやMPUにより構成される。車両制御部301は、ドア開閉検出部311、ドアロック部312、開始指示受付部313、エアバッグ駆動部314、加速度センサ315、無線通信部316、およびスピーカー317を制御するとともに、これら各部が検出した信号を受信する。
【0059】
ドア開閉検出部311は、車両Cのドアの開閉を検出する。ドアロック部312は、車両Cのドアが開かないようにロックする。開始指示受付部313は、ユーザーからのエンジンオンおよびオフの指示を受け付ける。開始指示受付部313は、エンジンキーの受付機構により構成されてもよく、エンジンオンのボタンにより構成されてもよい。エアバッグ駆動部314は、衝撃が発生したときにエアバッグを駆動する。エアバッグは4つの座席全てに設置されている。加速度センサ315は、車両Cの加速度を測定する。無線通信部316は、公衆無線回線を介して無線通信を行う。スピーカー317は、車両Cの外部に音声を出力する。スピーカー317は、たとえば、ホーン(クラクション)を鳴らすためのスピーカーである。なお、スピーカー317は、ホーン(クラクション)を鳴らすためのスピーカーに限らない。
【0060】
図8は、載置物検出装置2の制御部201の処理を示すフローチャートである。
【0061】
載置物検出装置2は、車両Cのバッテリーを電源として用いながら、各座席の荷重センサ1ごとに、所定の時間間隔(たとえば、1/40秒)で繰り返し図8の処理を行っている。後述する車両制御部301の第2処理では、車両Cのエンジンがオフの状態で座席の状態を取得する必要があるため、載置物検出装置2は、車両Cのエンジンがオフの場合でもバックグラウンドで図8の処理を行っている。なお、載置物検出装置2は、車両制御部301から問い合わせを受け付けた場合に、対象となる荷重センサ1について図8の処理を行ってもよい。
【0062】
なお、以下の処理に用いられる荷重は、各センサ部からの出力に基づいて算出される荷重から上述の初期荷重を減算したものである。
【0063】
処理が開始されると、制御部201は、荷重センサ1の各センサ部が検出した荷重の合計(総荷重)が閾値Wth以下であるか否かを判定する(S101)。図6(a)に示したように、荷重センサ1上に載置物が存在しない場合、総荷重はほぼゼロとなり、図6(b)~(f)に示したように、荷重センサ1上に載置物が存在する場合、総荷重はある程度の大きさの値となる。したがって、載置物が存在する場合と存在しない場合とを判別可能となるよう閾値Wthが設定されることにより、載置物の有無を判定できる。
【0064】
荷重が閾値Wth以下である場合(S101:YES)、制御部201は、荷重センサ1の検出領域1a上に載置物がないと判定する(S102)。他方、総荷重が閾値Wthより大きい場合(S101:NO)、制御部201は、荷重センサ1が検出した荷重分布の形状に基づいて、載置物が人か否かを判定する(S103)。
【0065】
S103の判定では、従来周知の方法を用いることができる。たとえば、制御部201は、AI(人工知能)により、載置物が人である場合の荷重分布をあらかじめ学習しておき、判定対象となる荷重分布に基づいて載置物が人か否かを判定してもよい。また、制御部201は、載置物が人である場合の典型的な荷重分布と判定対象となる荷重分布とのマッチング度合いを所定の判別式により算出し、算出したマッチング度合いに基づいて載置物が人か否かを判定してもよい。
【0066】
S103の判定結果が人である場合(S104:YES)、制御部201は、荷重センサ1の検出領域1a上の載置物は人であると判定する(S105)。これにより、図5(b)の座席St(1)、St(3)のように、検出領域1a上に人のみが座っていることが分かる。他方、S103の判定結果が人でない場合(S104:NO)、制御部201は、荷重センサ1の検出領域1a上の載置物を、物(チャイルドシート)のみ、または人(子供)が載った物(チャイルドシート)と判定して、処理をS106に進める。
【0067】
続いて、制御部201は、荷重センサ1が検出した荷重分布の時間的変化が閾値Vth以上であるか否かを判定する(S106)。そして、S106でYESと判定された場合に、制御部201は、所定時間内の加速度が閾値Ath以上であるか否かを判定する(S107)。
【0068】
S106の判定では、具体的に、制御部201は、現在の荷重分布と所定時間前(たとえば1秒前)の荷重分布とに基づいて、同じ位置のセンサ部において荷重値の差分の絶対値を算出し、算出した差分の絶対値を全センサ部において合計する。そして、制御部201は、差分の絶対値の合計を荷重分布の時間的変化とし、荷重分布の時間的変化が閾値Vth以上であるか否かを判定する。たとえば、図6(e)の状態から図6(f)の状態に変化した場合、差分の絶対値の合計は大きい値となる。このような場合に、チャイルドシート上で子供が動いたか否かを判別可能となるよう閾値Vthが設定される。これにより、チャイルドシート上に子供いるか否かを判別することが可能となる。
【0069】
ただし、S106で荷重分布の時間的変化が閾値Vth以上と判定され、チャイルドシート上に子供がいることが推定される場合であっても、車両Cが加速度を伴って移動している場合、チャイルドシート上に子供がいないにもかかわらず荷重分布の時間的変化が生じる可能性がある。すなわち、チャイルドシート上に子供がいない場合であっても、加速度により、荷重分布のバランスが加速度の方向に変化し、その結果、荷重分布の時間的変化が閾値Vth以上となることが起こり得る。
【0070】
そこで、本実施形態では、S107において、所定時間内(たとえば3秒以内)の車両Cの加速度が閾値Ath(たとえば1m/s)以上であるか否かが判定される。車両Cの加速度は、加速度センサ315により取得されており、制御部201は、車両Cの加速度を、車両制御部301を介して取得する。これにより、チャイルドシート上に子供がいないにもかかわらず、チャイルドシート上に子供がいると判定されることを防止することができる。
【0071】
荷重分布の時間的変化が閾値Vth以上であり(S106:YES)、所定時間内の加速度が閾値Ath未満である場合(S107:NO)、制御部201は、荷重センサ1の検出領域1a上の載置物を、人(子供)が載っている物(チャイルドシート)と判定する(S108)。他方、所定時間内に加速度が閾値Ath以上になった場合(S107:YES)、処理がS106に戻され、再度S106の判定が行われる。また、荷重分布の時間的変化が閾値Vth未満である場合(S106:NO)、制御部201は、荷重センサ1の検出領域1a上の載置物を、人(子供)が載っていない物(チャイルドシート)と判定する(S109)。
【0072】
図9は、車両制御システム3の車両制御部301の第1処理を示すフローチャートである。車両制御部301の第1処理は、エアバッグのオンオフ制御に関する処理である。
【0073】
車両制御部301は、開始条件を満たした場合(S201:YES)、S202以降の処理を開始する。開始条件は、たとえば、開始指示受付部313によりユーザーからのエンジンオンの指示が受け付けられ、エンジンがオンの状態になっていることである。なお、S201の開始条件は、エンジンがオンの状態であることに限らず、ドア開閉検出部311により車両Cのドアが開かれたことが検出されたこと、ドアロック部312により車両Cのドアのロックが解除されたこと、図8の処理により運転席に人がいると判定されたことなどでもよく、これら条件のうち2以上の条件を満たすことを開始条件としてもよい。
【0074】
開始条件が満たされると(S201:YES)、車両制御部301は、エアバッグ駆動部314を駆動させて、全ての座席に設置されたエアバッグをオンに設定する(S202)。これにより、全ての座席に設置されたエアバッグが待機状態になり、衝撃が発生した場合にエアバッグが駆動することになる。
【0075】
続いて、車両制御部301は、全座席の載置物に関する状態を載置物検出装置2の制御部201に問い合わせ、制御部201から全座席の載置物に関する状態を取得する(S203)。具体的には、S203の問い合わせに応じて、載置物検出装置2の制御部201は、図8の処理により取得した全座席の載置物に関する状態を車両制御部301に送信する。これにより、車両制御部301は、座席ごとに、「載置物なし」、「載置物は人」、「載置物は人(子供)が載っている物(チャイルドシート)」、「載置物は物(チャイルドシート)」のいずれかの判定結果を制御部201から受信する。
【0076】
続いて、車両制御部301は、S204~S209において、各座席に対してエアバッグの状態を再設定する。
【0077】
具体的には、車両制御部301は、座席の場所を示す変数nに1を代入する(S204)。車両制御部301は、S203で取得した座席St(n)の状態に基づいて、座席St(n)の載置物が人またはなしであるか否かを判定する(S205)。座席St(n)の載置物が人またはなしの場合(S205:YES)、車両制御部301は、座席St(n)のエアバッグをオンに設定する(S206)。これにより、座席St(n)に設置されたエアバッグが待機状態になり、衝撃が発生した場合にエアバッグが駆動することになる。他方、座席St(n)の載置物が、人が載っている物または物のみである場合(S205:NO)、車両制御部301は、座席St(n)のエアバッグをオフに設定する(S207)。これにより、座席St(n)に設置されたエアバッグが休止状態になり、衝撃が発生してもエアバッグが駆動しなくなる。
【0078】
車両制御部301は、変数nの値を1加算して(S208)、変数nの値が設定座席数(車両Cに設けられた座席数)より大きいか否かを判定する(S209)。本実施形態では、図5(a)、(b)に示したように、設定座席数は4である。変数nの値が設定座席数以下であると(S209:NO)、処理がS205に戻され、再度S205~S209の処理が行われる。変数nの値が設定座席数より大きいと(S209:YES)、全ての座席に対してエアバッグの再設定が終わったため、処理が終了する。
【0079】
処理が終了すると、再度処理がS201から実行され、開始条件が満たされる場合(S201:YES)、再度S202以降の処理が行われる。本実施形態の開始条件はエンジンがオンの状態であるため、エンジンがオンである限り、図9の処理が繰り返し行われることになる。
【0080】
図10は、車両制御システム3の車両制御部301の第2処理を示すフローチャートである。車両制御部301の第2処理は、車両C内に人が放置されていることの報知制御に関する処理である。
【0081】
車両制御部301は、運転手の退出に関する所定の退出条件が満たされた場合(S211:YES)、S212以降の処理を開始する。S211の退出条件は、たとえば、載置物検出装置2が、図8の処理により運転席の載置物に関する状態を取得し、車両制御部301が、載置物検出装置2から取得した運転席の載置物に関する状態に基づいて、運転席に人がいないと判定したことである。
【0082】
なお、S211の退出条件は、運転席に人がいないことに限らず、他の条件であってもよい。たとえば、退出条件は、開始指示受付部313によりユーザーからのエンジンオフの指示が受け付けられ、エンジンがオフの状態になったこと、ドア開閉検出部311により車両Cのドアが開かれたことが検出されたこと、ドアロック部312により車両Cのドアのロックが解除されたこと、車両Cが停止していることなどでもよく、これら条件のうち2以上の条件を満たすことを退出条件としてもよい。
【0083】
退出条件が満たされると(S211:YES)、車両制御部301は、運転席以外の座席の載置物に関する状態を載置物検出装置2の制御部201に問い合わせ、制御部201から運転席以外の座席の載置物に関する状態を取得する(S212)。
【0084】
車両制御部301は、S212で取得した載置物に関する状態に基づいて、運転席以外の座席に人または人が載っているチャイルドシート(物)があるか否かを判定する(S213)。運転席以外の座席に人も人が載っているチャイルドシートもない場合(S213:NO)、車両C内に人はいないと考えられるため、処理が終了する。他方、運転席以外の座席に人または人が載っているチャイルドシートがある場合(S213:YES)、車両制御部301は、車両C内に人が放置されている可能性があることを報知するために、車両Cの外部に向けて、スピーカー317から所定の音量で0.5秒程度の効果音を1回だけ出力させる(S214)。
【0085】
続いて、車両制御部301は、S215~S222において、所定の時間間隔をあけながら車両C内に人が放置されている場合にその旨を報知する。
【0086】
具体的には、車両制御部301は、警告回数を示す変数mに1を代入し(S215)、タイマーのカウントを開始する(S216)。続いて、車両制御部301は、S212と同様、載置物検出装置2の制御部201から運転席以外の座席の載置物に関する状態を取得し(S217)、所定時間T(m)が経過したか否かを判定する(S218)。図11(a)に示すように、変数mの値に応じて所定時間T(m)の値が異なっている。たとえば、変数mの値が1のときT(1)は10分であり、変数mの値が2のときT(2)は30分であり、変数mの値が3のときT(3)は1時間である。
【0087】
図10に戻り、所定時間T(m)が経過していない場合(S218:NO)、車両制御部301は、処理をS217に戻して、再度S217の処理を行って、運転席以外の座席の載置物に関する情報を取得する。
【0088】
所定時間T(m)が経過すると(S218:YES)、車両制御部301は、所定時間T(m)の間に取得した運転席以外の座席の載置物に関する情報に基づいて、運転席以外の座席に人または人が載っているチャイルドシート(物)があるか否かを判定する(S219)。具体的には、車両制御部301は、所定時間T(m)の間に、いずれかの座席において一度でも人または人が載っている物が存在するとの結果を制御部201から受信した場合、S219においてYESと判定する。
【0089】
S219においてYESと判定した場合、車両制御部301は、車両C内に人が放置されていると判定して、変数mの値に応じた報知を行う(S220)。図11(a)に示すように、変数mの値に応じて報知内容が異なっている。たとえば、変数mの値が1のとき、車両制御部301は、無線通信部316を介して、車両C内に人が放置されている旨のメールを、あらかじめ登録されたメールアドレス(たとえば、運転手の携帯電話のメールアドレス)に送信する。変数mの値が2のとき、車両制御部301は、車両Cの外部に向けて、スピーカー317から効果音よりも大きい音量で1秒程度の警報音を20回程度出力させる。変数mの値が3のとき、車両制御部301は、無線通信部316を介して、警察とJAF(日本自動車連盟)に、車両C内に人が放置されている旨、車両Cのナンバー、および車両Cの位置情報などを含む車両情報を送信する。
【0090】
図10に戻り、報知処理が終わると、車両制御部301は、変数mの値を1加算する(S221)。他方、S219においてNOと判定した場合、車両制御部301は、S220、S221の処理をスキップさせる。
【0091】
続いて、車両制御部301は、変数mの値が設定警告数(警告を行う回数)より大きいか否かを判定する(S222)。本実施形態では、図11(a)に示したように、設定警告数は3である。変数mの値が設定警告数以下であると(S222:NO)、処理がS216に戻され、再度S216~S222の処理が行われる。変数mの値が設定警告数より大きいと(S222:YES)、全ての警告が終わったため、処理が終了する。
【0092】
処理が終了すると、再度処理がS211から実行され、退出条件が満たされる場合(S211:YES)、再度S212以降の処理が行われる。本実施形態の退出条件は運転席に人がいないことであるため、運転席に人がいない限り、図10の処理が繰り返し行われることになる。
【0093】
<実施形態の効果>
以上、実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0094】
制御部201は、荷重センサ1からの出力に基づいて、荷重センサ1の検出領域1a上における荷重分布を検出し、荷重分布に基づいて当該荷重センサ1の検出領域1a上の載置物が、人と物(チャイルドシート)の何れであるかを判別する。制御部201は、載置物が物(チャイルドシート)であると判別した場合、荷重分布の時間的変化に基づいて物(チャイルドシート)に人(子供)が載っているか否かを判別する。このように、本実施形態によれば、物(チャイルドシート)に人(子供)が載っていることについてまで精緻に判別できる。これにより、チャイルドシートに子供が座っている場合に、当該子供に対する制御(たとえば、当該子供に対してエアバッグをオフにする制御)を円滑かつ適切に行うことができる。
【0095】
荷重センサ1は、所定の対象物(車両Cの座席)に組み込まれて使用され、制御部201は、荷重センサ1が対象物に組み込まれた後の各センサ部の検出値を基準として、荷重分布を検出する。荷重センサ1が対象物に組み込まれると、各センサ部に荷重が掛かった状態となる場合がある。上記構成によれば、この状態の検出値を基準として荷重分布が検出されるため、荷重分布を精度良く検出できる。
【0096】
制御部201は、加速度センサ315から車両Cの加速度を取得し、加速度と差分の絶対値の合計(荷重分布の時間的変化)とに基づいて、物(チャイルドシート)に人(子供)が載っているか否かを判別する。車両Cに加速度が生じると、この加速度がチャイルドシートにも作用し、チャイルドシートから荷重センサ1に付与される荷重のバランスが変化する。これにより、チャイルドシートに子供が載っていない場合であっても、荷重センサ1の出力により検出される荷重分布に時間的変化が生じる。上記構成では、荷重分布とともに加速度が加味されるため、加速度により生じる荷重分布の変化によりチャイルドシートに子供が載っていると誤判別されることを抑制でき、チャイルドシートに子供が載っているか否かを、精度良く判別できる。
【0097】
制御部201は、所定時間内の車両Cの加速度が閾値Ath以上である場合(図8のS107:YES)、処理をS106に戻すことにより、物(チャイルドシート)に人(子供)が載っていると判別すること(S108)を中止する。すなわち、加速度が荷重分布の時間的変化を生じさせる程度に大きい場合は、チャイルドシートに子供が載っているとの判別が行われない。よって、加速度により生じる荷重分布の変化によりチャイルドシートに子供が載っていると誤判別されることを抑制でき、チャイルドシートに子供が載っているか否かを、精度良く判別できる。
【0098】
制御部201は、図8のS109において、物(チャイルドシート)の上に人(子供)が載っていないと判別した後、図8の処理を終了させる。そして、制御部201は、所定の間隔を空けたあと、当該荷重センサ1に対して再度図8の処理を開始する。これにより、制御部201は、図8のS106において、荷重分布の時間的変化を監視して、チャイルドシートに子供が載っているか否かの判別を継続することになる。このように、チャイルドシートに子供が載っているか否かの判別が継続されると、チャイルドシートの上に子供が載っていないとの誤判定が放置されることを抑制できる。また、後からチャイルドシートに子供が載った場合に、子供が載ったことを適正に判別できる。
【0099】
車両制御部301は、載置物検出装置2の検出結果に基づいて車両C内に人(子供)が放置されていると判定した場合に、図11(a)に示したように経過時間に応じて、当該放置を車両Cの外部に報知する制御を実行する。これにより、車両Cに子供等が放置されていることを報知できる。また、本実施形態では、チャイルドシート等の物に子供が載っていることも判別できるため、チャイルドシートに子供が載せられて放置されている場合も、適切に報知できる。よって、安全性をより高めることができる。
【0100】
車両制御部301は、運転手の退出に関する所定の退出条件が満たされた場合に(図10のS211:YES)、車両C内に人が放置されているか否かの判定を開始する。これにより、運転手が退出し所定の退出条件が満たされた場合に、子供が放置されているか否かの判定が開始されるため、子供の放置を適切に判定できる。
【0101】
車両制御部301は、載置物検出装置2の検出結果に基づいて運転席に人がいないと判定した場合に(図10のS211:YES)、運転席以外の座席に人がいるか否かに基づいて、車両C内に人が放置されているか否かを判定する(S219)。運転席に人がいない場合、車両Cは駐車状態にあると想定され得る。したがって、運転席に人がいないことを放置の判定の前提条件とすることにより、車両C内に人が放置されているか否かを適切に判定できる。
【0102】
車両制御部301は、載置物検出装置2の検出結果に基づいて運転席に人がいないと判定した場合、載置物検出装置2の検出結果に基づいて運転席以外の座席に人がいないと判定しても(S219:NO)、変数mの値が設定警告数を超えるまで、車両C内に人が放置されているか否かの判定を継続する。たとえば、子供がチャイルドシートで動かずに眠っていた場合は、チャイルドシートに人がいると判定されない。この場合、運転席から人が退出した直後のみ放置の有無の判定が行われると、放置がないと判定されてしまう。上記構成によれば、その後も放置の有無の判定が行われるため、眠っていた子供が起きて動いた場合に、載置物検出装置2により人の存在(チャイルドシートに人が載っていること)が判別され、車両制御部301において、車両C内に人が放置されているとの判定がなされる。よって、このような場合も、人の放置を適切に報知でき、安全性を高めることができる。
【0103】
車両制御部301は、車両Cにおける人の放置時間に応じて、報知の形態を切り替える。具体的には、図11(a)に示したように、変数mの値に応じて、所定時間T(m)および報知内容が切り替えられる。これにより、放置時間に関する緊急性に応じて、適切な形態で報知を実行できる。よって、安全性を高めることができる。
【0104】
なお、設定警告数、所定時間および報知内容は、図11(a)に示した内容に限らず、たとえば、図11(b)に示した内容であってもよい。設定警告数を多くすることで、経過時間に応じた報知をより詳細に行うことが可能になる。
【0105】
車両制御部301は、載置物検出装置2の検出結果に基づいて物(チャイルドシート)の上に人(子供)がいる座席を特定し、特定した座席に対するエアバックの動作を停止させる(図9のS207)。チャイルドシートに子供が載っている場合に、当該チャイルドシートが設置された座席に対するエアバックの動作が停止される。よって、子供に対する安全性を高めることができる。チャイルドシートに子供が座っている場合は、衝撃発生時に、チャイルドシートによって子供が保護されるため、エアバッグを駆動させずともよい。
【0106】
<変更例>
載置物検出装置2および車両制御システム3の構成は、上記実施形態に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
【0107】
たとえば、上記実施形態では、図8のS106において、差分の絶対値の合計を荷重分布の時間的変化とし、この時間的変化が閾値Vthと比較された。しかしながら、時間的変化は、差分の絶対値の合計に限らず、チャイルドシートの上に人が乗っていることを検出可能な数値であればよく、たとえば、以下の変更例1、2のように設定されてもよい。
【0108】
図12(a)は、変更例1に係る、載置物検出装置2の制御部201の処理を示すフローチャートである。図12(a)では、図8と比較して、S106に代えてS111が追加されている。図12(a)には、便宜上、処理の一部のみが示されている。以下、S111の処理について説明する。
【0109】
S111において、制御部201は、現在の荷重分布と所定時間前(たとえば1秒前)の荷重分布とに基づいて、現在の荷重分布の重心位置と所定時間前の荷重分布の重心位置とを算出し、算出した2つの重心位置から重心の移動量を算出する。
【0110】
ここで、重心位置は、たとえば、図6(a)~(f)に示した荷重分布を、同図の上下方向に平行な第1区分線と左右方向に平行な第2区分線で区分した場合に、第1区分線で区分される左右の領域からそれぞれ算出される荷重の合計値が互いに等しくなり、且つ、第2区分線で区分される上下の領域からそれぞれ算出される荷重の合計値が等しくなるときの、第1区分線と第2区分線の交点の位置として取得され得る。ただし、重心の算出方法は、これに限られるものではなく、その位置について荷重のバランスが全周に亘って等しくなる点である限りにおいて、他の算出方法であってもよい。
【0111】
そして、制御部201は、算出した重心の移動量を荷重分布の時間的変化とし、荷重分布の時間的変化が閾値Dth以上であるか否かを判定する。チャイルドシート上に人がいる場合、人の動きに応じて重心位置が変化する。このような場合に、チャイルドシート上で人が動いたか否かを判別可能となるよう閾値Dthが設定される。
【0112】
重心の移動量が閾値Dth以上である場合(S111:YES)、S107の判定がNOであれば、制御部201は、チャイルドシートに子供が載っていると判定する(S108)。他方、重心の移動量が閾値Dth未満である場合(S111:NO)、制御部201は、載置物がチャイルドシートであると判定する(S109)。このように、変更例1によれば、上記実施形態と同様、チャイルドシート上に子供がいるか否かを判別することが可能となる。
【0113】
図12(b)は、変更例2に係る、載置物検出装置2の制御部201の処理を示すフローチャートである。図12(b)では、図12(a)と比較して、S111に代えてS112が追加されている。以下、S112の処理について説明する。
【0114】
S112において、制御部201は、検出領域1a上において荷重分布の重心位置が所定量(たとえば10cm)だけ移動するために要する時間を1周期として算出し、算出した1周期に基づいて、載置物の移動に関する周波数(1周期の逆数)を算出する。そして、制御部201は、算出した移動に関する周波数を荷重分布の時間的変化とし、荷重分布の時間変化が閾値Fth以下であるか否かを判定する。チャイルドシート上に人がいる場合、移動に関する周波数は、車両Cの左右方向に1Hz程度、車両Cの前後方向に3~5Hz程度となる。このような場合に、チャイルドシート上で人が動いたか否かを判別可能となるよう閾値Fthが設定される。閾値Fthは、たとえば10Hzである。
【0115】
移動に関する周波数が閾値Fth以下である場合(S112:YES)、S107の判定がNOであれば、制御部201は、チャイルドシートに子供が載っていると判定する(S108)。他方、移動に関する周波数が閾値Fthより大きい場合(S112:NO)、制御部201は、載置物がチャイルドシートであると判定する(S109)。なお、載置物がチャイルドシートである場合、重心位置が移動しないため、上述の周期が得られない。この場合、制御部201は、S112の判定をNOとして、載置物がチャイルドシートであると判定する。
【0116】
ここで、チャイルドシート(物)に振動等が伝達することにより荷重分布に時間的変化が生じる場合がある。他方、チャイルドシートに載っている子供(人)の動きは、通常、10Hz以下に収まる。よって、上記構成によれば、子供の動きではなく振動等の伝達によって荷重分布に時間的変化が生じた場合に、この時間的変化に基づいてチャイルドシートに子供が載っていると誤判別することを防ぐことができる。よって、変更例2によれば、チャイルドシートに子供が載っている状況をより精度良く判別できる。
【0117】
また、上記実施形態では、図8のS107において、所定時間内の車両Cの加速度が閾値Ath以上であるか否かが判定されたが、S107の判定は、たとえば、以下の変更例3のように変更されてもよい。
【0118】
図13(a)は、変更例3に係る、載置物検出装置2の制御部201の処理を示すフローチャートである。図13(a)では、図8と比較して、S107に代えてS113が追加されている。以下、S113の処理について説明する。
【0119】
S113において、制御部201は、検出領域1a上において荷重分布の重心位置が移動する方向を、荷重センサ1の出力に基づく荷重分布の時間的変化として取得する。また、制御部201は、加速度センサ315から取得される車両Cの加速度に基づいて、加速度により荷重が移動する方向を、加速度に基づく荷重分布の時間的変化として取得する。具体的には、制御部201は、加速度センサ315からの出力に基づいて、載置物に付与される加速度の方向を取得し、この方向を、加速度により荷重が移動する方向として取得する。変更例3において、加速度センサ315は、加速度のみならず、加速度の方向も検出可能である。そして、制御部201は、荷重分布の重心位置の移動方向が、加速度により荷重が移動する方向と整合するか否かを判定する。
【0120】
ここで、車両Cに加速度が生じていると、チャイルドシート上に人が載っていない場合でも、チャイルドシートの重心位置が加速度に応じた方向に移動してしまう。そこで、変更例3では、S106において荷重分布の時間的変化が生じていると判定されたとしても、重心位置の移動方向が加速度により荷重が移動する方向と整合する場合には(S113:YES)、不正確な判定を避けるために処理がS106に戻される。他方、重心位置の移動方向が加速度により荷重が移動する方向と整合しない場合には(S113:NO)、重心位置の移動がチャイルドシート上の人に起因するものと考えられるため、制御部201は、チャイルドシートに人が載っていると判定する(S108)。
【0121】
このように、荷重センサ1の出力に基づく荷重分布の時間的変化が加速度により生じる荷重分布の時間的変化に整合する場合は、物(チャイルドシート)に人が載っていると判定されない。よって、加速度により生じる荷重分布の変化によりチャイルドシートに人が載っていると誤判別されることを抑制でき、チャイルドシートに人が載っているか否かを、より精度良く判別できる。
【0122】
また、上記実施形態では、図8のS107において、車両Cに加速度が生じているか否かの判定には、車両Cに設けられた加速度センサ315から取得された加速度が用いられたが、他の手段により車両Cに加速度が生じているか否かが判定されてもよい。たとえば、以下の変更例4のように、複数の荷重センサ1の出力に基づいて、車両Cに加速度が生じているか否かが判定されてもよい。
【0123】
図13(b)は、変更例4に係る、載置物検出装置2の制御部201の処理を示すフローチャートである。図13(b)では、図8と比較して、S107に代えてS114が追加されている。以下、S114の処理について説明する。
【0124】
S114において、制御部201は、載置物がチャイルドシートまたは人が載っているチャイルドシートと判定した全ての荷重センサ1に対して、それぞれ、荷重センサ1の出力に基づいて荷重センサ1における重心の移動方向を、荷重分布の時間的変化として取得する。そして、制御部201は、各荷重センサ1に基づいて取得した重心の移動方向(荷重分布の時間的変化)が互いに整合するか否かを判定する。
【0125】
ここで、車両Cに加速度が生じている場合、図14(a)に示すように、物がある全ての荷重センサ1において加速度による荷重の変化が生じる。図14(a)に示す例では、座席St(1)、St(2)、St(4)に物が載置されているため、これらの座席の荷重センサ1において荷重の変化がほぼ同じ方向に生じる。この場合、座席St(1)、St(4)において人の動きに応じて荷重の変化が生じることがあるが、荷重センサ1が検出する荷重の変化においては、車両Cの加速度が支配的になる。一方、車両Cに加速度が生じていない場合、図14(b)に示すように、物がある全ての荷重センサ1において車両Cの加速度による荷重の変化が生じない。図14(b)に示す例では、車両Cに加速度が生じていないため、座席St(2)において荷重の変化がなく、座席St(1)、St(4)において人の動きのみに応じて互いに整合しない荷重の変化が生じている。
【0126】
したがって、物がある各荷重センサ1に基づいて取得した重心の移動方向が互いに整合する場合(S114:YES)、車両Cに加速度が生じていると判定できる。この場合、上記実施形態のS107と同様、加速度により生じる荷重分布の変化によりチャイルドシートに子供が載っていると誤判別されることを抑制するために、処理がS106に戻される。他方、物がある各荷重センサ1に基づいて取得した重心の移動方向が互いに整合しない場合(S114:NO)、車両Cに加速度が生じていないと判定できる。この場合、制御部201は、載置物を子供が載っているチャイルドシートと判定する(S108)。
【0127】
このように変更例4によれば、物(チャイルドシート)が載置された一の荷重センサ1の荷重分布の時間的変化が、物(チャイルドシート)が載置された他の荷重センサ1の荷重分布の時間的変化と一致しない場合、当該一の荷重センサ1に人(子供)が載っており、当該人(子供)の挙動によって、特異な荷重分布の時間的変化が生じたと推定され得る。よって、上記構成のように、一の荷重センサ1による荷重分布の時間的変化を他の荷重センサ1による荷重分布の時間的変化と対照することにより、一の荷重センサ1に載置された物に人が載っているか否かを判別できる。
【0128】
また、上記実施形態では、載置物検出装置2の制御部201が荷重センサ1上の載置物の状況を検出したが、載置物検出装置2に制御部が設けられない場合には、載置物検出装置2に接続された車両C側の車両制御部301が、荷重センサ1上の載置物の状況を検出してもよい。また、載置物検出装置2側の制御部201と、車両C側の車両制御部301とが、共同で荷重センサ1上の載置物の状況を検出してもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、図8のS103~S105において、制御部201は、荷重センサ1の出力に基づいて載置物が人か否かを判定したが、これに限らず、載置物が人であると判定した場合に、荷重の分布の形状や面積に基づいて、さらに人が子供と大人の何れであるかを判定してもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、荷重センサ1は、座席に組み込まれたときの基準値(初期荷重)に基づいて荷重分布を検出したが、これに限らず、荷重センサ1の基準値は、座席に組み込まれた後、検出領域1aに載置物がない状態の所定のタイミングで更新されてもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、荷重センサ1の各センサ部からの出力に基づいて算出される荷重から初期荷重が減算された荷重が、図8の処理に用いられた。しかしながら、これに限らず、初期荷重が小さいことが想定される場合には、初期荷重の測定および初期荷重に応じた基準値の記憶が省略され、実際に算出された荷重がそのまま図8の処理に用いられてもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、図8の処理は連続的に繰り返し行われたが、所定時間(たとえば、10分、30分、1時間)連続的に繰り返し行った後で図8の処理が終了され、その後は、車両制御部301の第1処理および第2処理の呼び出しに応じて行われてもよい。また、上記実施形態では、図8の処理は、1/40秒間隔で実行されたが、これに限らず、10分間隔や1時間間隔で実行されてもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、荷重センサ1は、車両C内の全ての座席に設置されたが、これに限らず、車両C内の一部の座席にのみ設置されてもよく、たとえば、運転席と、家族の人数に応じた座席とに設置されてもよい。
【0134】
また、上記実施形態では、図10のS219において、車両制御部301は、運転席以外の座席に人または人が載ったチャイルドシート(物)があるか否かを判定したが、人が載ったチャイルドシートがあるか否かのみを判定してもよい。この場合、たとえば、助手席や後部座席に座っている大人がいることに基づいて、S219の判定がYESとならないため、チャイルドシートに座っている子供にのみ基づいて、外部に人が放置されている旨の報知を行うことができる。
【0135】
また、上記実施形態では、図8のS101、S106において、荷重センサ1の各センサ部の検出値から算出される荷重に基づいて判定が行われたが、これに限らず、荷重に対応する数値が用いられてもよい。たとえば、各センサ部の検出値(電圧値)に基づいて判定が行われてもよく、各センサ部の検出値から算出される静電容量に基づいて判定が行われてもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、図10に示す第2処理において、S222でYESと判定された後、再度S211から処理が行われたが、これに限らず、S222でYESと判定された後、最後に行われた報知が所定間隔で連続して行われてもよい。たとえば、1時間ごとに警察とJAFに車両情報を送信する処理が行われてもよく、この報知とともに警報音の出力が行われてもよい。
【0137】
また、上記実施形態では、図10のS219では、所定時間T(m)の間に、いずれかの座席において一度でも人または人が載っている物が存在するとの結果が得られた場合にYESと判定された。しかしながら、これに限らず、S219の判定の直前に取得した各座席の状態に基づいて、人または人が載っている物が存在するとの結果が得られた場合にYESと判定されてもよい。ただし、子供がチャイルドシートで動かずに眠っており、所定時間T(m)の間に一度しか動かなかったような場合も想定されるため、上記実施形態のように所定時間T(m)にわたる各座席の状態に基づいて判定されるのが好ましい。
【0138】
また、上記実施形態では、外部にメールおよび車両情報を送信するための無線通信部が、車両C側に設けられたが、載置物検出装置2に設けられてもよい。この場合、たとえば、車両制御部301は、メールまたは車両情報を含む送信指示を載置物検出装置2の制御部201に送信し、送信指示を受信した制御部201が、載置物検出装置2に設けられた無線通信部を介して外部にメールまたは車両情報を送信する。
【0139】
また、上記実施形態および変更例では、図10のS220において、車両C内に人が放置されている旨が、図11(a)、(b)に示した手段により報知されたが、報知手段はこれに限らない。たとえば、車両Cの方向指示器(ウインカー)の点灯や、車両Cの前照灯(ヘッドライト)の点灯により報知が行われてもよい。また、車両Cに他のスピーカーが設けられ、当該他のスピーカーから車両Cの外部に向けて「子供が放置されている可能性があります」とのメッセージが音声で出力されることにより報知が行われてもよい。
【0140】
また、上記実施形態では、マトリクス状に並ぶセンサ部の数は、図4の場合、3×3=9個であり、図6(a)~(f)の場合、32×32=1024個であったが、これに限らず、縦方向および横方向に並ぶセンサ部の数は、2以上であればよい。
【0141】
また、上記実施形態では、載置物検出装置2は車両Cに設置されたが、これに限らず、他の対象物(たとえば、電車、バス、施設のベンチなど)やシステムに設置されてもよい。また、物として判別される載置物は、チャイルドシートに限らず、人が載る物である限りにおいて、他の物であってもよい。
【0142】
また、上記実施形態では、載置物が人とチャイルドシートの何れであるかが判別されたが、これに限らず、載置物が、人または動物と物(チャイルドシートや動物用キャリーバッグ)の何れであるかが判別されてもよい。
【0143】
この場合、載置物が動物であることの判定は、人の場合と同様、重量分布(AI、典型的な重量分布とのマッチング度合い)に基づいて行われ得る。また、物(動物用キャリーバッグ)に動物が載っていることの判定も、人の場合と同様、重量分布の時間的変化および所定時間内の加速度に基づいて行われ得る。
【0144】
なお、このように、載置物の判定対象として動物が含まれる場合、物の種類(チャイルドシート/動物用キャリーバッグ)と当該物に載っている対象物の種類(子供/動物)の判定が難しいことが想定され得る。このため、図9および図10の制御では、特に、物に人と動物の何れが載っているかを区別せずに、エアバッグのオン/オフおよび車内放置の報知が行われればよい。この場合、図8のステップS108では、載置物が人または動物が載っている物であると判定される。そして、この判定に伴い、図9のステップS205の判定がNOとなって、エアバッグがオフに設定され、図10のステップS213、S219の判定がYESとなって、効果音の出力および車内放置の報知が行われる。
【0145】
また、載置物が人または動物である場合も、図9および図10の制御において、特に、人と動物とが区別されなくてもよい。この場合、図8のステップS103、S104、S105では、載置物が人または動物であるかが判定される。そして、載置物が人または動物であると判定された場合、図9のステップS205の判定がYESとなってエアバッグがオンに設定され、図10のステップS213、S219の判定がYESとなって、効果音の出力および車内放置の報知が行われる。
【0146】
なお、重量分布(AI、典型的な重量分布とのマッチング度合い)に基づいて、載置物が人と動物の何れであるかが判別可能な場合、載置物が人と動物の何れであるかによって、異なる制御が行われてもよい。たとえば、載置物が人である場合は、図9のステップS205の判定がYESとなってエアバッグがオンに設定され、載置物が動物である場合は、図9のステップS205の判定がNOとなってエアバッグがオフに設定されてもよい。また、判定対象は、動物のみでもよい。
【0147】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0148】
1 荷重センサ
1a 検出領域
2 載置物検出装置
201 制御部
3 車両制御システム
301 車両制御部
A11~A13、A21~A23、A31~A33 センサ部
C 車両(移動体)
St(1)~(4) 座席
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14