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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】無線給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20230421BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230421BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230421BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20230421BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20230421BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J7/00 301D
B64C39/02
B64D27/24
B64F1/36
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019098488
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020195186
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「屋外無線給電技術の研究開発・実証」委託研究(管理法人:JST)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】杉野 正芳
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋士
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135880(JP,A)
【文献】特開2018-207766(JP,A)
【文献】特開2011-166992(JP,A)
【文献】特開2011-125153(JP,A)
【文献】特開2010-154625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 7/00
B64C 39/02
B64D 27/24
B64F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設けられている駐機場(11)と、前記駐機場(11)に着陸または前記駐機場(11)から離陸する飛行装置(12)との間において、電界結合を用いて非接触で電力を伝達する無線給電システムであって、
高周波の電力を生成する高周波生成部(21)と、
前記駐機場(11)に設けられ、前記高周波生成部(21)で生成した高周波を出力する送電電極部(22)と、
前記高周波生成部(21)で生成し前記送電電極部(22)から出力する電力について、前記送電電極部(22)における反射を検出する反射検出部(24)と、
前記反射検出部(24)で検出した電力の反射に基づいて、前記高周波生成部(21)から出力する電力を制御する制御部(25)と、
を備え
前記制御部(25)は、前記送電電極部(22)における電力の反射率が予め設定した上限値以上のとき、前記高周波生成部(21)から出力する電力を予め設定した小電力値に設定し、
前記送電電極部(22)における電力の反射率が予め設定した下限値以下のとき、前記高周波生成部(21)から出力する電力を予め設定した大電力値に設定し、
前記送電電極部(22)における電力の反射率が予め設定した上限値と下限値との間にあるとき、前記高周波生成部(21)から出力する電力を、予め設定した前記小電力値より大きく前記大電力値より小さい中電力値に設定する無線給電システム。
【請求項2】
前記送電電極部(22)の少なくとも前記飛行装置(12)と対向する面を覆い、撥水性を有する床部(54)をさらに備える請求項1記載の無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線給電システムに関し、特に無人の飛行装置に電力を供給する無線給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるドローンと称される無人の飛行装置が普及している。この飛行装置は、主にバッテリなどに蓄えた電力を動力源としてモータでプロペラを駆動することにより飛行する。この飛行装置への電力の供給は、バッテリなどを充電することによって行なわれる。この場合、無線による非接触の電力の供給が期待されている。飛行装置は、主に屋外を飛行することから、電力の供給を受ける駐機場も屋外に設置される。
【0003】
しかしながら、駐機場を屋外に設置する場合、無線による電力を送信する送電電極部は雨や露などに晒される。雨や露によって送電電極部が濡れると、飛行装置に設けられている受電電極部との間の誘電率に変化が生じる。この誘電率の変化はインピーダンスの変化を招き、送電電極部から受電電極部への電力の伝達効率の低下を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-17151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、インピーダンスの変化の影響を低減し、電力の伝達効率の低下を低減する無線給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の無線給電システムは、高周波生成部から出力する電力を制御する制御部を備えている。制御部は、高周波生成部で生成して送電電極部から出力する電力について、反射検出部を通して送電電極部における反射率を取得する。制御部は、取得した反射率に基づいて、高周波生成部から出力する電力を制御する。例えば反射検出部で検出した電力の反射率が大きいとき、送電電極部が設けられた駐機場には飛行装置が駐機していないと考えられる。そのため、制御部は、高周波生成部から送電電極部への電力の供給を抑える。また、例えば反射検出部で検出した電力の反射率が小さいとき、駐機場には飛行装置が駐機していると考えられる。そのため、制御部は、高周波生成部から送電電極部へ大きな電力を供給する。さらに、例えば電力の反射率がこれら大と小との間にあるとき、駐機場には水滴など誘電率の変化を生じさせる物質が付着して送電電極部と受電電極部との間に存在していると考えられる。そのため、制御部は、高周波生成部から送電電極部へ適度な電力を供給し、送電電極部と受電電極部との間に存在する水を加熱する。これにより、送電電極部と受電電極部との間に存在する水滴は、送電電極部に供給された電力による加熱によって除去される。したがって、駐機場に付着した水滴などによるインピーダンスの変化の影響が低減され、電力の伝達効率の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態による無線給電システムを適用した駐機場および飛行装置を示す模式図
図2】一実施形態による無線給電システムの構成を示すブロック図
図3】一実施形態による無線給電システムを適用した駐機場および飛行装置を示す模式図
図4】一実施形態による無線給電システムにおける処理の流れを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態による無線給電システムについて説明する。
図1および図2に示すように無線給電システム10は、駐機場11から飛行装置12へ電界結合を用いて非接触で電力を供給する。無線給電システム10は、図2に示すように高周波生成部21、送電電極部22、信号変換部23、反射検出部24および制御部25を備えている。また、無線給電システム10は、上記に加え、受電電極部31、受電回路部32、蓄電部33、駆動部34および機体制御部35を備えている。この無線給電システム10を構成する高周波生成部21、送電電極部22、信号変換部23、反射検出部24および制御部25は、いずれも地上の駐機場11側に設けられている。また、無線給電システム10を構成する受電電極部31、受電回路部32、蓄電部33、駆動部34および機体制御部35は、いずれも可動側である飛行装置12に設けられている。飛行装置12は、地上側の駐機場11から離陸、または駐機場11へ着陸する。飛行装置12は、駐機場11に駐機しているとき、駐機場11から非接触で電力の供給を受ける。
【0009】
高周波生成部21は、例えばインバータを有しており、電源41からの電力を用いて高周波を生成する。高周波生成部21で生成した高周波は、信号変換部23を通して送電電極部22に供給される。信号変換部23は、例えばバラン(balun)と称される平衡-不平衡変換器を有しており、高周波生成部21から供給された高周波を送電電極部22へ分配する。反射検出部24は、高周波生成部21から送電電極部22へ出力された電力の反射を検出する。すなわち、高周波生成部21から送電電極部22へ出力された電力は、高周波の特性として、その一部が送電電極部22で反射する。反射検出部24は、この送電電極部22において反射した電力を検出する。反射検出部24は、検出した電力を、電気信号として制御部25へ出力する。
【0010】
制御部25は、高周波生成部21および反射検出部24に接続している。制御部25は、例えばCPU、ROMおよびRAMで構成されるマイクロコンピュータを有している。制御部25は、CPUでコンピュータプログラムを実行することにより、反射率算出部42および出力制御部43をソフトウエア的に実現する。なお、反射率算出部42および出力制御部43は、ソフトウエア的に限らず、ハードウエア的、またはソフトウエアとハードウエアとの協働によって実現してもよい。反射率算出部42は、高周波生成部21で生成した高周波の電力と、反射検出部24で検出した電力とから反射率を算出する。すなわち、反射率算出部42は、高周波生成部21で出力した電力に対し、送電電極部22から反射した電力の割合を反射率として算出する。出力制御部43は、反射率算出部42で算出した反射率に基づいて、高周波生成部21を制御する。すなわち、出力制御部43は、算出した反射率に基づいて、高周波生成部21が生成する高周波の電力の出力を制御する。
【0011】
飛行装置12の受電電極部31は、駐機場11に駐機しているとき、駐機場11の送電電極部22と対向する。このとき、受電電極部31は、非接触で送電電極部22と対向する。送電電極部22が高周波の電力を出力することにより、受電電極部31は電界結合を用いて送電電極部22から非接触で電力を受け取る。このように、高周波生成部21で生成した高周波の電力は、送電電極部22から受電電極部31へ非接触で伝送される。
【0012】
受電回路部32は、例えば整流回路などを有しており、受電電極部31で受け取った電力を整流する。整流された電力は、蓄電部33に蓄えられる。受電回路部32は、例えばDC-DCコンバータなどのように受電電極部31で受け取った電力、または整流回路で整流された電力を変圧する変圧回路などを有していてもよい。蓄電部33は、例えばバッテリやキャパシタなどを有しており、整流された電力を蓄える。駆動部34は、モータ51やプロペラ52などを有しており、飛行装置12が飛行するための推進力を発生する。駆動部34は、飛行装置12に複数設けられている。
【0013】
機体制御部35は、蓄電部33から駆動部34へ供給する電力を制御するとともに、受電電極部31から蓄電部33への充電を制御する。機体制御部35は、姿勢検出部53に接続している。姿勢検出部53は、例えば図示しない加速度センサや角速度センサなどを有しており、飛行装置12に加わる加速度、角速度、高度、地磁気などの飛行装置12の飛行状態を検出する。姿勢検出部53は、これらの各種のセンサで取得されたデータを機体制御部35へ出力する。機体制御部35は、地上からの指示および姿勢検出部53で取得された飛行状態に基づいて、モータ51の回転数やプロペラ52のピッチなどを変更する。これにより、機体制御部35は、複数の駆動部34が発生する推進力をそれぞれ制御する。機体制御部35は、複数の駆動部34から発生する推進力を制御することにより、飛行装置12の飛行姿勢や飛行速度を制御する。また、機体制御部35は、蓄電部33の充電量が予め設定された範囲内となるように受電回路部32から蓄電部33へ供給する電力を制御する。
【0014】
無線給電システム10は、図1に示すように、駐機場11に送電電極部22および床部54を備えている。床部54は、送電電極部22の少なくとも飛行装置12と対向する面を覆っている。すなわち、床部54は、飛行装置12が駐機場11に駐機しているとき、送電電極部22と受電電極部31との間に位置する。飛行装置12は、駐機場11側へ伸びる脚部55を有している。脚部55は、飛行装置12が駐機場11に駐機しているとき、床部54に接する。脚部55が床部54に接することにより、駐機場11に設けられている送電電極部22と飛行装置12に設けられている受電電極部31との間には床部54を挟んで所定の間隔が確保される。
【0015】
床部54は、例えば撥水性を有する材料で形成、または撥水性を有する材料が塗布されている。この場合、床部54は、例えばフッ素樹脂などのように撥水性を有する材料で形成または塗布してもよく、微細な表面加工により撥水構造としてもよい。これにより、床部54に付着した水滴は、風によって除去される。例えば飛行装置12が駐機場11に着陸するとき、図3に示すように駐機場11は飛行装置12から下降する風を受ける。つまり、飛行装置12が駐機場11に着陸するとき、飛行装置12の飛行を維持するために、飛行装置12から駐機場11へ向かう気流が形成される。このように駐機場11が飛行装置12から風を受けると、この風によって撥水性を有する床部54に付着した水滴の多くは床部54から除去される。この場合、例えば床部54に隣接して溝部56を設けてもよい。これにより、飛行装置12から受ける風によって床部54を移動する水滴は、溝部56に捕集される。その結果、床部54つまり受電電極部31の飛行装置12側に付着する水滴の除去が促される。
【0016】
次に、制御部25における処理について詳細に説明する。
制御部25は、上述のように反射検出部24で検出した電力の反射に基づいて高周波生成部21の出力を制御する。このとき、制御部25は、反射率算出部42において算出した反射率の大きさに基づいて高周波生成部21を制御する。制御部25は、反射率算出部42で算出した反射率を、大領域、中領域または小領域のいずれかに分類する。すなわち、制御部25は、反射率が予め設定した上限値A以上のとき、反射率を大領域に分類する。また、制御部25は、反射率が予め設定した下限値B以下のとき、反射率を小領域に分類する。さらに、制御部25は、反射率が予め設定した上限値Aと下限値Bとの間にあるとき、反射率を中領域に分類する。上限値Aおよび下限値Bは、例えば無線給電システム10の特性、駐機場11および飛行装置12の特性などに応じて任意に設定することができる。ここでは、説明の簡単のために、一例として、上限値Aは反射率80%、下限値Bは反射率30%とする。この一例の場合、制御部25は、反射率算出部42で算出した反射率が80%以上であれば大領域と分類し、反射率が30%以下であれば小領域と分類し、反射率が30%~80%であれば中領域と分類する。
【0017】
出力制御部43は、反射率が大領域にあるとき、高周波生成部21から出力する電力を予め設定した小電力値Waに制御する。また、出力制御部43は、反射率が小領域にあるとき、高周波生成部21から出力する電力を予め設定した大電力値Wbに制御する。さらに、出力制御部43は、反射率が中領域にあるとき、高周波生成部21から出力する電力を予め設定した中電力値Wcに制御する。小電力値Wa、大電力値Wbおよび中電力値Wcは、例えば高周波生成部21の能力、および蓄電部3の容量など、送電側および受電側の特性に応じて任意に設定することができる。ここでは、説明の簡単のために、一例として、小電力値Waは10W、大電力値Wbは1000W、中電力値Wcは300Wとする。
【0018】
駐機場11に飛行装置12が駐機していないとき、送電電極部22から出力した電力を受け取る対象が存在しない。そのため、高周波生成部21から送電電極部22へ出力した電力の大部分は、送電電極部22において反射する。その結果、駐機場11に飛行装置12が駐機していないとき、反射率は上限値A以上の大領域となる。このように、駐機場11に飛行装置12が駐機していないとき、送電電極部22は大きな電力を出力する必要がない。つまり、エネルギーの消費を低減することが好ましい。そこで、出力制御部43は、反射率算出部42で算出した反射率が大領域にあるとき、高周波生成部21から出力する電力を小電力値Waに設定する。
【0019】
一方、駐機場11に飛行装置12が駐機しているとき、送電電極部22から出力する電力を受け取る対象が存在する。そのため、送電電極部22と受電電極部31との間に水などが存在しなければ、高周波生成部21から送電電極部22へ出力した電力の大部分は、送電電極部22で反射することなく、飛行装置12の受電電極部31へ伝達される。その結果、駐機場11に飛行装置12が駐機し、送電電極部22と受電電極部31との間に水などが存在していないとき、反射率は下限値B以下の小領域となる。このように、床部54が乾燥した状態で駐機場11に飛行装置12が駐機しているとき、送電電極部22は蓄電部33の充電のために大きな電力を出力することができる。そこで、出力制御部43は、反射率算出部42で算出した反射率が小領域にあるとき、高周波生成部21から出力する電力を大電力値Wbに設定する。
【0020】
ところで、駐機場11の送電電極部22を覆う床部54に水滴が付着すると、送電電極部22と受電電極部31との間には水が存在する。このように、送電電極部22と受電電極部31との間に水が存在しているとき、送電電極部22と受電電極部31との間の誘電率が変化する。送電電極部22と受電電極部31との間の誘電率が変化すると、これにともなって送電電極部22と受電電極部31との間のインピーダンスは、電界結合による電力の伝達効率の高い最適値から変化する。そのため、送電電極部22から受電電極部31への電力の伝達効率が低下し、蓄電部33の充電が妨げられる原因となる。そこで、送電電極部22と受電電極部31との間に水が存在するとき、この水を除去する必要がある。送電電極部22と受電電極部31との間に水が存在すると、飛行装置12が駐機場11に駐機しているときでも、送電電極部22から受電電極部31へ伝達される電力は減少する。そのため、送電電極部22における電力の反射率は、上限値Aより小さく下限値Bより大きな中領域となる。このように、送電電極部22と受電電極部31との間の水の付着は、反射率によって検出可能である。そこで、出力制御部43は、反射率算出部42で算出した反射率が中領域にあるとき、駐機場11の送電電極部22と飛行装置12の受電電極部31との間に水が存在していると判断する。これにより、出力制御部43は、反射率算出部42で算出した反射率が中領域にあるとき、高周波生成部21から出力する電力を中電力値Wcに設定する。このように高周波生成部21から送電電極部22へ中電力値Wcの電力を供給することにより、送電電極部22と受電電極部31との間に存在する水は加熱される。その結果、送電電極部22と受電電極部31との間に存在する水は、蒸発し、除去される。この場合、高周波生成部21から送電電極部22へ供給する電力を中電力値Wcに設定することにより、送電電極部22に付着した水の加熱が促され、送電電極部22の過剰な加熱やこれにともなう機器の損傷が回避される。
【0021】
次に、上記の構成による無線給電システム10の作動について図4に基づいて説明する。
無線給電システム10の制御部25を起動すると(S101)、出力制御部43は高周波生成部から出力する電力を小電力値Waに設定する(S102)。これにより、高周波生成部21は、送電電極部22へ小電力値Waで電力を出力する(S103)。制御部25は、S103で電力の出力を開始すると、反射検出部24を通して反射率を取得する(S104)。そして、制御部25は、反射率算出部42において、反射検出部24で検出した電力に基づいて反射率を算出する。制御部25は、S104で取得した反射率が上限値A以上であるか否かを判断する(S105)。
【0022】
制御部25は、S105において反射率が上限値A以上であると判断すると(S105:Yes)、反射率が大領域にあると分類する(S106)。そして、出力制御部43は、高周波生成部21から送電電極部22へ出力する電力を小電力値Waに設定する(S107)。これにより、高周波生成部21は、送電電極部22へ小電力値Waで電力を出力する(S108)。すなわち、反射率が上限値A以上であるとき、駐機場11に飛行装置12が駐機していない、または駐機前の着陸過程にあると考えられる。そのため、送電電極部22へ大きな電力を供給しても、駐機場11から飛行装置12へ電力の伝達は行なわれない。そこで、出力制御部43は、無用な電力の消費の低減を図るために、高周波生成部21から送電電極部22へ供給する電力を小電力値Waとする。すなわち、出力制御部43は、高周波生成部21を含む地上側を、消費電力の小さな待機状態とする。
【0023】
制御部25は、S105において反射率が上限値A未満であると判断すると(S105:No)、反射率が下限値B以下であるか否かを判断する(S109)。制御部25は、S109において反射率が下限値B以下であると判断すると(S109:Yes)、反射率が小領域にあると分類する(S110)。そして、出力制御部43は、高周波生成部21から送電電極部22へ出力する電力を大電力値Wbに設定する(S111)。これにより、高周波生成部21は、送電電極部22へ大電力値Wbで電力を出力する(S112)。すなわち、反射率が下限値B以下であるとき、駐機場11に飛行装置12が駐機し、送電電極部22と受電電極部31との間に水などが存在していないと考えられる。そのため、送電電極部22へ大きな電力を供給することにより、駐機場11の送電電極部22と飛行装置12の受電電極部31との間では充電に十分な電力が伝達される。そこで、出力制御部43は、飛行装置12へ電力を供給するために、高周波生成部21から送電電極部22へ供給する電力を大電力値Wbとする。これにより、駐機場11から飛行装置12へ十分な電力が供給され、蓄電部33は充電される。
【0024】
一方、制御部25は、S109において反射率が下限値B以下でない、つまり反射率が上限値Aと下限値Bとの間にあると判断すると(S109:No)、反射率が中領域にあると分類する(S113)。そして、出力制御部43は、高周波生成部21から送電電極部22へ出力する電力を中電力値Wcに設定する(S114)。これにより、高周波生成部21は、送電電極部22へ中電力値Wcで電力を出力する(S115)。すなわち、反射率が上限値Aと下限値Bとの間にあるとき、駐機場11に飛行装置12が駐機しているものの、送電電極部22と受電電極部31との間に水などのインピーダンスの変化を招き電力の伝達を妨げる物質が存在していると考えられる。そこで、出力制御部43は、高周波生成部21から送電電極部22へ出力する電力を、蓄電部33の充電に必要な電力よりも小さく、かつ待機状態よりも大きな値に設定する。これにより、送電電極部22と受電電極部31との間に存在する水は加熱される。その結果、送電電極部22と受電電極部31との間に存在する水は、除去される。
【0025】
制御部25は、S108において高周波生成部21から小電力値Waで電力を出力、S112において高周波生成部21から大電力値Wbで電力を出力、またはS115において高周波生成部21から中電力値Wcで電力を出力すると、S104へリターンし、反射率の監視を継続する。制御部25は、反射検出部24で検出した反射率に基づいて、高周波生成部21から出力する電力を制御する。例えばS112において大電力値Wbで電力を出力した後、反射率が上限値Aよりも大きくなると、飛行装置12の蓄電部33の充電が完了したと考えられる。そのため、出力制御部43は、高周波生成部21から出力する電力を小電力値Waに変更し、待機状態へ移行する。このように、制御部25は、送電電極部22における電力の反射率に基づいて、高周波生成部21から出力する電力を制御する。また、例えばS115において中電力値Wcで電力を出力した後、反射率が下限値Bよりも小さくなると、送電電極部22と受電電極部31との間の水が蒸発して除去されたと考えられる。そのため、出力制御部43は、高周波生成部21から出力する電力を大電力値Wbに変更し、飛行装置12へ十分な電力を供給する。
【0026】
上述の一実施形態の無線給電システム10は、高周波生成部21から出力する電力を制御する制御部25を備えている。制御部25は、高周波生成部21で生成して送電電極部22から出力する電力について、反射検出部24を通して送電電極部22における反射率を取得する。制御部25は、取得した反射率に基づいて、高周波生成部21から出力する電力を制御する。すなわち、反射検出部24で検出した反射率が上限値A以上のとき、送電電極部22が設けられた駐機場11には飛行装置12が駐機していないと考えられる。そのため、制御部25は、高周波生成部21から送電電極部22へ供給する電力を小電力値Waとして、電力の供給を抑える。また、反射検出部24で検出した反射率が下限値B以下のとき、駐機場11には飛行装置12が駐機していると考えられる。そのため、制御部25は、高周波生成部21から送電電極部22へ供給する電力を大電力値Wbとして、飛行装置12の蓄電部33を充電するのに十分な電力を供給する。さらに、反射検出部24で検出した反射率が上限値Aと下限値Bとの間にあるとき、駐機場11には水滴などインピーダンスの変化を生じさせる物質が付着し、送電電極部22と受電電極部31との間に存在していると考えられる。そのため、制御部25は、高周波生成部21から送電電極部22へ供給する電力を中電力値Wcとして、送電電極部22と受電電極部31との間に存在する水を加熱する。これにより、送電電極部22と受電電極部31との間に存在する水は、加熱によって蒸発し、除去される。したがって、駐機場11に付着した水滴などによるインピーダンスの変化の影響を低減し、電力の伝達効率の低下を低減することができる。
【0027】
また、一実施形態では、送電電極部22の少なくとも飛行装置12の受電電極部31と対向する面は、撥水性を有している。これにより、床部54は、飛行装置12が着陸時に地上側の送電電極部22に接近すると、飛行装置12から生じる下向きの風に晒される。そのため、床部54に付着した水滴などは、飛行装置12の接近時における下向きの風によって吹き飛ばされる。その結果、送電電極部22を含む床部54の飛行装置12側に存在する水は、駐機場11から飛行装置12へ電力の供給を開始する前に、除去が促される。したがって、電力の供給の前に中電力値Wcによる加熱が短縮され、消費電力の低減を図ることができる。
【0028】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【0029】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
図面中、10は無線給電システム、11は駐機場、12は飛行装置、21は高周波生成部、22は送電電極部、24は反射検出部、25は制御部、54は床部を示す。
図1
図2
図3
図4