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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】地中埋設箱の排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/02 20060101AFI20230421BHJP
   E03F 5/10 20060101ALI20230421BHJP
   E03F 7/02 20060101ALI20230421BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
E03F5/02
E03F5/10 Z
E03F7/02
E02D29/12 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019043811
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020147915
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕史
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0192295(US,A1)
【文献】特許第3171331(JP,B2)
【文献】特開2013-002146(JP,A)
【文献】特開2016-156435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0198343(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2004-0033942(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E02D 29/00
E02D 29/045-37/00
F16K 15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される地中埋設箱と、
前記地中埋設箱に形成された排水口から連続する排水流路に取り付けられた逆流防止装置から成る地中埋設箱の排水装置であって、
前記逆流防止装置は前記排水流路を開閉する弁体と、
前記弁体を前記排水流路内に固定する固定部材とを備え、
前記弁体は前記排水流路内に固定される軸部と、前記軸部の周囲に形成された傘状の開閉部から成るアンブレラ弁であって、弾性変形によって前記排水流路を開閉し、
前記固定部材は下端において前記弁体が当接して前記排水流路を閉塞する弁座を有することを特徴とする地中埋設箱の排水装置。
【請求項2】
地中に埋設される地中埋設箱と、
前記地中埋設箱に形成された排水口から連続する排水流路に取り付けられた逆流防止装置から成る地中埋設箱の排水装置であって、
前記逆流防止装置は前記排水流路を開閉する弁体と、
前記弁体を前記排水流路内に固定する固定部材とを備え、
前記弁体は対向する側面同士が当接することによって前記排水流路を閉塞する開閉部を備える自封式弁であって、弾性変形によって前記排水流路を開閉し、
前記固定部材は、前記弁体が取り付けられた状態で前記排水口より挿入され、前記弁体を前記排水流路内に固定することを特徴とする地中埋設箱の排水装置。
【請求項3】
前記逆流防止装置は、
前記固定部材は、前記弁体とともに前記排水流路内に着脱可能であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の地中埋設箱の排水装置
【請求項4】
前記逆流防止装置は、
前記弁体の上流側及び下流側に捕集部材を備えるとともに、
少なくとも下流側の前記捕集部材は前記固定部材と係合し、前記固定部材とともに着脱可能であることを請求項に記載の地中埋設箱の排水装置
【請求項5】
前記地中埋設箱はマンホール又はハンドホールであることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の地中埋設箱の排水装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールやハンドホール等の地中埋設箱の排水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中を通して配設された電線等の各種ケーブルに対し、当該各種ケーブルの接続工事や点検のために、適宜マンホールやハンドホールと称される地中埋設箱が埋設されている。
上記地中埋設箱は上部に取り付けられた蓋部が地上に露出しているとともに、その側面に各種ケーブルが挿通されている。従って、蓋部を取り外すことによってケーブルの工事や点検等を行うことが可能となる。
ここで、上記地中埋設箱は蓋部から漏れ出す地上からの雨水や、側面から漏れ出す地下水が内部に浸透することがあり、当該排水を排出するために、底面に排水口が形成されている。又、当該排水口には、地中埋設箱内の排水は排出する一方、下流側から地下水等の逆流を防ぐ様に、逆流防止装置が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3171331号
【文献】特開2017-210969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の逆流防止装置は、水より比重の小さいフロートを有するフロート弁を備えている。フロート弁は下流側から地下水等が逆流した際、浮上したフロートが弁座と当接することによって排水流路を閉塞し、地中埋設箱内への地下水等の逆流を防ぐ構造となっている。
ここで、上記フロート弁を備えた逆流防止装置は、フロートが上下に変位するためのスペースが必要となることから、逆流防止装置が上下方向に大型化してしまうという問題を有している。又、逆流防止装置が大型化することによって、地中埋設箱の肉厚が増加してしまうため、製造コストが増加してしまう。
【0005】
本発明は上記問題に鑑み、装置を小型化するとともに、安価に製造することが可能な地中埋設箱の排水装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、地中に埋設される地中埋設箱と、
前記地中埋設箱に形成された排水口から連続する排水流路に取り付けられた逆流防止装置から成る地中埋設箱の排水装置であって、
前記逆流防止装置は前記排水流路を開閉する弁体と、
前記弁体を前記排水流路内に固定する固定部材とを備え、
前記弁体は前記排水流路内に固定される軸部と、前記軸部の周囲に形成された傘状の開閉部から成るアンブレラ弁であって、弾性変形によって前記排水流路を開閉し、
前記固定部材は下端において前記弁体が当接して前記排水流路を閉塞する弁座を有することを特徴とする地中埋設箱の排水装置である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、地中に埋設される地中埋設箱と、
前記地中埋設箱に形成された排水口から連続する排水流路に取り付けられた逆流防止装置から成る地中埋設箱の排水装置であって、
前記逆流防止装置は前記排水流路を開閉する弁体と、
前記弁体を前記排水流路内に固定する固定部材とを備え、
前記弁体は対向する側面同士が当接することによって前記排水流路を閉塞する開閉部を備える自封式弁であって、弾性変形によって前記排水流路を開閉し、
前記固定部材は、前記弁体が取り付けられた状態で前記排水口より挿入され、前記弁体を前記排水流路内に固定することを特徴とする地中埋設箱の排水装置である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、前記逆流防止装置は、
前記固定部材は、前記弁体とともに前記排水流路内に着脱可能であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の地中埋設箱の排水装置である。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、前記逆流防止装置は、
前記弁体の上流側及び下流側に捕集部材を備えるとともに、
少なくとも下流側の前記捕集部材は前記固定部材と係合し、前記固定部材とともに着脱可能であることを請求項に記載の地中埋設箱の排水装置である。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、前記地中埋設箱はマンホール又はハンドホールであることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の地中埋設箱の排水装置である。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明によれば、弁体が弾性変形によって排水流路を開閉することにより、従来のフロートによって浮力を利用したフロート弁に対し、フロートが上下動するスペースを必要としないことから、装置を小型化することが可能となる。
又、弁体を排水流路内に固定する固定部材が弁体とともに着脱可能であることにより、容易に清掃や部材の交換等が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の施工状態を示す断面図である。
図2】逆流防止装置を示す断面斜視図である。
図3】逆流防止装置を示す断面図である。
図4】逆流防止装置の各部材を示す断面図である。
図5】逆流防止装置の各部材を示す分解斜視図である。
図6】固定部材を示す(a)平面図(b)正面図である。
図7】排水流路が開放された状態を示す断面図である。
図8】第二実施形態に係る本発明の施工状態を示す断面図である。
図9】逆流防止装置を示す断面図である。
図10】逆流防止装置の各部材を示す断面図である。
図11】固定部材を示す(a)平面図(b)正面図である。
図12】排水流路が開放された状態を示す断面図である。
図13】第三実施形態を示す断面図である。
図14】第四実施形態の各部材を示す分解断面図である。
図15】逆流防止弁を示す断面図である。
図16】第五実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の地中埋設箱の排水装置を説明する。尚、以下に記載する発明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。
【0014】
地中埋設箱1は地中に埋設されるマンホール又はハンドホールであり、図1乃至図7に示すように、コンクリート製の上部11と下部12が接合部13において接着されることによって形成された、上面が開口された略直方体状の箱体であって、当該開口された上面は蓋部14によって閉塞されている。又、地中埋設箱1は対向する側面15と側面16に形成された貫通孔17に各種ケーブル(図示せず)が挿通される保護管18が取り付けられているとともに、底面19に逆流防止装置2が取り付けられている。
【0015】
以下に記載するように、本実施形態に係る逆流防止装置2はフランジ部材3、固定部材4、弁体5、目皿6、目皿7を備えている。
【0016】
フランジ部材3は地中埋設箱1の底面19に取り付けられており、内部に排水流路を形成する中空の筒状部材であって、地中埋設箱1内の汚水等を排出する排水口31を形成する。又、フランジ部材3は上端全周において外向きに延設された鍔部32を有するとともに、内側面には固定部材4と係合する凸部33と、凸部33下方において形成された段部34を有している。又、フランジ部材3の下方には塩ビ製の管体8が配置されている。
【0017】
固定部材4は硬質の合成樹脂より成り、図4乃至図6に示すように、円筒状の環状部41と、当該環状部41の中央に形成された取付部47と、環状部41と取付部47を繋ぐ把持部48と、弁体5が当接する弁座49を有している。
環状部41は上面に切り欠き42と、板状部43と、傾斜部44が形成されており、当該切り欠き42と板状部43と傾斜部44は環状部41の軸を中心とした回転対称となる位置にそれぞれ2箇所ずつ形成されている。又、環状部41は外側面において凹部45と溝部46が形成されている。
切り欠き42は環状部41上面の外周に形成された凹状の切り溝であり、その幅は上記フランジ部材3の凸部33が通過可能な程度となるように構成されている。
板状部43は環状部41の上面より上方に向けて延設されているとともに、矩形の開口部431が形成されており、施工完了時には当該開口部431に目皿6が係合される。
傾斜部44は切り欠き42から板状部43に向けて反時計回りに進むにつれて漸次上方へ突出し、端部が板状部43と連続するよう形成されている。
凹部45は環状部41の側面において全周に亘り形成され、フランジ部材3の内側面と
当接する環状のパッキンPが嵌着されている。
溝部46は凹部45の下方において、環状部41の外周全周に亘って形成されており、施工完了時には目皿7が係合される。
取付部47は固定部材4の中央に配置され、上下方向に向けて取付孔が穿設されており、当該取付孔に弁体5が挿通されている。尚、取付孔の内径は弁体5の軸部51の外径と略同一となっている。
把持部48は環状部41の内側面と取付部47の外側面を連結して取付部47を支承し、弁体5を着脱する際には取手として機能する。
弁座49は環状部41の下端であり、下方に進むにつれて拡径する方向に傾斜が形成されており、図3に示すように、弁体5が固定部材4に取り付けられた際に、全周に亘り弁体5の開閉部52が当接することで排水流路を閉塞する。
【0018】
弁体5はゴムやシリコン等の弾性を有する軟質材から成る断面視略T字形状であって、排水流路内に固定される軸部51と、軸部51の周囲に形成された傘状の開閉部52から成るアンブレラ弁である。
軸部51は弁体5の中心に形成された棒状であり、その中程において、取付孔よりも大径の膨出部53が形成されている。
開閉部52は軸部51の一端から外側に向けて延設された厚さ1mm以下の軸方向視円形の薄膜であり、図4に示すように、断面視において外周が他端へと向かうように丸みを帯びつつ傾斜している。尚、開閉部52は弁体5が取付部47に固定された状態において、弁座49と当接している。ここで、図3に示すように、弁座49に当接した開閉部52は弁座49の傾斜に沿って変形している。この時、開閉部52は弁座49と当接箇所が自身の傾斜方向とは逆の方向へと変形することから、弁体5は開閉部52の復元力によって強く弁座49と面接触し、確実に排水流路を閉塞することが可能となる。
【0019】
目皿6は弁体5の上流側に配置された捕集部材であり、断面視すり鉢状であって、上下方向に向けて複数の捕集孔が開口されることによって形成された捕集部を有している。又、目皿6の側面には外側に向けて係合部61が突設され、上記固定部材4の開口部431に係合させることによって固定部材4に固定されている。
【0020】
目皿7は弁体5の下流側に配置された捕集部材であり、断面視凹状であって、上下方向に向けて複数の捕集孔が開口されることによって形成された捕集部を有している。又、目皿7は内側に向けて係合部71が突設され、上記固定部材4の溝部46と係合することによって固定部材4に固定されている。
【0021】
上述の様に、本発明の弁体5は固定部材4の上方及び下方においてそれぞれ目皿6、目皿7を備えている。ここで、固定部材4の上方に配置された目皿6は地中埋設箱1から排出される汚水中のゴミ等を捕捉し、目皿7は下流側からの地下水中のゴミ等を捕捉する。
【0022】
上記逆流防止装置2は、以下のようにして施工される。
【0023】
まず、取付部47に軸部51を挿通し、反対側から軸部51を引っ張り、弁体5を固定部材4に取り付ける。この時、軸部51に形成された膨出部53は取付部47よりも大径であるが、弁体5は軟質材から構成されているため、強く引っ張ることによって膨出部53を変形させて取り付けることができる。尚、当該取り付けの際、弁体5の開閉部52が弁座49に当接するとともに、図3に示すように、弁座49の傾斜面に沿って変形し、開閉部52が弁座49に対して全周に亘り面接触する。
次に、固定部材4の溝部46に目皿7の係合部71を係合させ、固定部材4に目皿7を取り付ける。
次に、弁体5と目皿7が取り付けられた固定部材4を、凸部33と切り欠き42の位置
を合致させた状態でフランジ部材3に挿入する。そして、環状部41の上面が凸部33よりも下方に位置するまで固定部材4をフランジ部材3に挿入した後に、固定部材4を時計方向に回転させることによって、固定部材4がフランジ部材3に取り付けられる。尚、上記回転の際、傾斜部44が凸部33と当接することによって、上記時計方向への回転に係る応力の一部が固定部材4を下方へと押し下げる応力へと変換される。これにより、パッキンPが固定部材4の内周に形成された段部34に強く押し付けられ、固定部材4外側面とフランジ部材3内側面の間は完全に止水される。
最後に、目皿6を固定部材4上に載置し、係合部61を開口部431に係合させることで施工が完了する。
【0024】
上記フランジ部材3は地中埋設箱1に取り付けられるが、当該取り付け方法については何ら限定されるものではない。即ち、地中埋設箱1の底面19に取付穴を形成し、フランジ部材3を接着しても良く、フランジ部材3を配置した後にコンクリートを打設することによって底面19にインサートしても良い。
【0025】
上記逆流防止装置2のメンテナンスを行う際には、固定部材4を反時計周りに回動させることで、フランジ部材3より固定部材4を取り外すことが可能となる。
【0026】
以下に、上記逆流防止装置2を備える地中埋設箱1の排水装置の動作について説明する。
【0027】
まず、図3に示すように、地中埋設箱1内に汚水等が無く、且つ下流側からも地下水等の逆流が生じていない状態において、弁体5は自身の弾性によって開閉部52が弁座49に対して全周に亘り面接触することで排水流路を閉塞している。尚、弁体5の中心とフランジ部材3の中心は合致しており、開閉部52は自身の弾性によって弁座49に向けて均等に応力が加えられている。従って、開閉部52は自身の弾性を付勢手段として、弁座49と全周に亘って均等に面接触しており、特定箇所に応力が集中することなく安定して排水流路を閉塞している。
ここで、蓋部14から漏れ出した雨水や、上部11と下部12の接合部13から染み出た地下水等によって地中埋設箱1内に汚水等が生じると、当該汚水等は排水口31へ流入する。この時、図7に示すように、排水口31へと流入した汚水等は弁体5の開閉部52に応力を加え、当該開閉部52を下流側に向けて弾性変形させる。これにより、開閉部52は弁座49から離間し、排水流路が開放されることで汚水等は地中埋設箱1外へと排出される。尚、地中埋設箱1内の汚水等が全て排出されると、弁体5は自身の弾性によって復元し、開閉部52が再び全周に亘り弁座49に面接触することで排水口31から連続する排水流路が閉塞される。
一方、下流側より地下水等の逆流が生じた場合、弁体5には開閉部52が弁座49に押し付けられる方向に応力が加わることから、排水流路の閉塞が維持され、地中埋設箱1内への地下水の逆流が防止される。
尚、汚水や地下水中に含まれる岩石・土砂等は目皿6又は目皿7によって捕集され、逆流防止装置2の動作が阻害されることはない。
【0028】
以下に、図8乃至図12を用いて本発明の第二実施形態について説明する。尚、第二実施形態においては、逆流防止装置の弁体として自封式弁を採用している。尚、以下に記載する第二実施形態においては、上記第一実施形態とは固定部材4、弁体5、目皿7のみが異なるため、当該異なる各部材についてのみ説明し、その他の部材に関しては上記第一実施形態と同様の番号を付してその記載を省略する。
【0029】
固定部材4は硬質の合成樹脂より成り、図9乃至図11に示すように、円筒状の環状部41と、当該環状部41の内周に形成された把持部48を有している。
環状部41は上面に切り欠き42と、板状部43と、傾斜部44が形成されており、当該切り欠き42と板状部43と傾斜部44は環状部41の軸を中心とした回転対称となる位置にそれぞれ2箇所ずつ形成されている。又、環状部41は外側面において凹部45と溝部46と取付部471が形成されている。
切り欠き42は環状部41上面の外周に形成された凹状の切り溝であり、その幅は上記フランジ部材3の凸部33が通過可能な程度となるように構成されている。
板状部43は環状部41の上面より上方に向けて延設されているとともに、矩形の開口部431が形成されており、施工完了時には当該開口部431に目皿6が係合される。
傾斜部44は切り欠き42から板状部43に向けて反時計回りに進むにつれて漸次上方へ突出し、端部が板状部43と連続するよう形成されている。
凹部45は環状部41の側面において全周に亘り形成され、フランジ部材3の内側面と当接する環状のパッキンPが嵌着されている。
溝部46は凹部45の下方において、環状部41の外周全周に亘って形成されており、施工完了時には目皿7が係合される。
取付部471は上記溝部46の下方に形成された外鍔部であり、弁体5の上端が嵌着されている。
把持部48は環状部41の内側面に形成され、弁体5を着脱する際に取手として機能する。
【0030】
弁体5はシリコンゴム等の弾性を有する軟質材から成る略円筒形状であって、内部に排水流路を形成している。又、弁体5は上流側において、固定部材4の取付部471に取り付けられる断面視略コの字状の流入口と、流入口より下方において対向する側面同士が漸次近接するように形成された傾斜面54と、傾斜面54の先端に形成され、上記対向する側面同士が当接することによって排水流路を閉塞する開閉部52から構成されている。
上記弁体5は開閉部52において、自身の弾性によって対向する面同士の当接状態が維持されることによって排水流路を閉塞しており、逆流防止装置2の上流側から下流側に向けて気体や流体が通過しない限りにおいて排水流路の閉塞を維持している。
【0031】
目皿7は弁体5の下流側に配置された捕集部材であり、断面視凹状であって、上下方向に向けて複数の捕集孔が開口されることによって形成された捕集部を有している。又、目皿7は内側に向けて係合部71が突設され、上記固定部材4の溝部46と係合することによって固定部材4に固定されている。
【0032】
上記逆流防止装置2は、以下のようにして施工される。
【0033】
まず、取付部471に弁体5の流入口を嵌着させる。
次に、固定部材4の溝部46に目皿7の係合部71を係合させ、固定部材4に目皿7を取り付ける。
次に、弁体5と目皿7が取り付けられた固定部材4を、凸部33と切り欠き42の位置を合致させた状態でフランジ部材3に挿入する。そして、環状部41の上面が凸部33よりも下方に位置するまで固定部材4をフランジ部材3に挿入した後に、固定部材4を時計方向に回転させることによって、固定部材4がフランジ部材3に取り付けられる。尚、上記回転の際、傾斜部44が凸部33と当接することによって、上記時計方向への回転に係る応力の一部が固定部材4を下方へと押し下げる応力へと変換される。これにより、パッキンPが固定部材4の内周に形成された段部34に強く押し付けられ、固定部材4外側面とフランジ部材3内側面の間は完全に止水される。
最後に、目皿6を固定部材4上に載置し、係合部61を開口部431に係合させることで施工が完了する。
【0034】
上記フランジ部材3は地中埋設箱1に取り付けられるが、当該取り付け方法については何ら限定されるものではない。即ち、地中埋設箱1の底面19に取付穴を形成し、フランジ部材3を接着しても良く、フランジ部材3を配置した後にコンクリートを打設することによって底面19にインサートしても良い。
【0035】
上記逆流防止装置2のメンテナンスを行う際には、固定部材4を反時計周りに回動させることで、フランジ部材3より固定部材4を取り外すことが可能となる。
【0036】
上記弁体5を有する逆流防止装置2を備えた地中埋設箱1は、当該地中埋設箱1内に汚水等が無く、且つ下流側からも地下水等の逆流が生じていない状態において、図9に示すように、弁体5は自身の弾性によって開閉部52が互いに当接することで排水流路を閉塞している。
ここで、蓋部14から漏れ出した雨水や、上部11と下部12の接合部13から染み出た地下水等によって地中埋設箱1内に汚水等が生じると、当該汚水等は排水口31へ流入する。この時、図12に示すように、排水口31へと流入した汚水等は弁体5の開閉部52を内側から押し広げるように応力を加え、当該開閉部52を弾性変形させる。これにより、排水流路が開放されることで汚水等は地中埋設箱1外へと排出される。尚、地中埋設箱1内の汚水等が全て排出されると、弁体5は自身の弾性によって復元し、開閉部52が互いに当接することで排水口31から連続する排水流路が閉塞される。
一方、下流側より地下水等の逆流が生じた場合、弁体5には対向する開閉部52同士が当接する方向に応力が加わることから、排水流路の閉塞が維持され、地中埋設箱1内への地下水の逆流が防止される。
【0037】
上記本発明の地中埋設箱の排水装置によれば、アンブレラ弁や自封式弁を弁体5として使用する逆流防止装置2を備えることにより、従来のフロート弁を利用した逆流防止装置を備える排水装置よりも装置の全高を抑えることが可能となる。即ち、アンブレラ弁や自封式弁は従来のフロート弁を用いた逆流防止装置のように、フロートが上下に変位するためのスペースを必要としないことから、装置を小型化することが可能となる。又、これによって本発明は地中埋設箱1の肉厚を薄くすることが可能となり、製品を安価に製造することができる。
又、逆流防止装置2は弁体5を排水流路内に固定する固定部材4を備えるとともに、当該固定部材4は弁体5及び目皿7とともに排水流路内に着脱可能となっている。これにより、作業者はユニットとして固定部材4と弁体5及び捕集部材である目皿7を装置から着脱可能となり、容易に清掃や部材の交換等が可能となる。尚、本発明においては、固定部材4は凸部33と傾斜部44による回転ロック構造によって取り付けられている。従って、雄螺子と雌螺子による螺合を用いた取り付けに対し、固定部材4の着脱の際に必要な回転量を抑えることが可能となる。
【0038】
本発明の実施形態は以上であるが、本発明の地中埋設箱の排水装置は、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更が可能である。
例えば、固定部材4の着脱方法について何ら限定されるものではない。即ち、上記第一及び第二実施形態において、固定部材4の着脱方法は凸部33と傾斜部44による回転ロック構造であったが、その他の方法であっても良い。例えば、図13に示すように、フランジ部材3と固定部材4による係合を利用した着脱方法であっても良い。尚、図13においては、凸部33が開口部431に係合することによって固定がなされている。
又、図14及び図15に示すように、固定部材4に凸部33が形成されておらず、固定部材4をフランジ部材3に押し込んだ際に生じるパッキンPの摩擦を利用した着脱方法であっても良い。
上記第三及び第四実施形態に示す着脱方法においては、固定部材4を回転させることなく、下方に押し込む/上方に引き上げる操作のみで固定部材4を着脱させることが可能となる。その他、固定部材4を所定の位置に配置した後、別部材を取り付けることによって固定部材4を排水流路内に固定する等しても良い。
又、図16に示すように、排水口31を閉塞する止水栓9を用意しても良い。この場合、1.止水栓9によって排水口31が常時閉塞されている仕様、2.止水栓9を取り付けず排水口31が常時開放されている仕様、3.逆流防止装置2によって下流側からの逆流のみが防止された仕様、の3つの仕様を使い分けることが可能となる。即ち、沿岸部等地下水位が高く、地中埋設箱1内への浸水が止められない地域においては上記1.止水栓9によって排水口31が常時閉塞されている仕様とし、地下水位が地中埋設箱1よりも下位にある地域においては2.止水栓9を取り付けず排水口31が常時開放されている仕様とし、ゲリラ豪雨等によって一時的に地下水位が変動する地域においては3.逆流防止装置2によって下流側からの逆流のみが防止された仕様とする等、地中埋設箱1が設置される箇所やその用途によって排水装置の仕様を変更することが可能となる。この時、本発明は固定部材4によって弁体5や捕集部材が容易に着脱可能であることから、上記仕様変更を簡単に行うことが可能となる。
【0039】
又、上記実施形態においては、捕集部材として目皿を備えていたが、微細な穴が多数形成された多孔質のフィルターを捕集部材として配置しても良い。又、目皿とフィルターを併用しても良い。このように構成することによって、更に弁体5の動作を安定させることが可能となる。
又、厚肉の地中埋設箱1に対応する場合には、長尺の管体8取り付けることによって、長さを延長させても良い。又、管体8を取り付けず、目皿7を地中埋設箱1の裏面から突出させても良い。
又、上記各実施形態において、逆流防止装置2は捕集部材を弁体5の上流側及び下流側に備えている。又、固定部材4は下流側の捕集部材と係合しており、当該固定部材4とともに捕集部材が着脱可能であったが、固定部材4が弁体5の上流側の捕集部材と係合し、当該固定部材4とともに弁体5の上流側の捕集部材が装置より着脱可能であっても良い。
又、地中埋設箱1の用途についても何ら限定されるものではない。従って、各種ケーブルは電話用や電力供給用等、どのようなものであっても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 地中埋設箱
11 上部
12 下部
13 接合部
14 蓋部
15 側面
16 側面
17 貫通孔
18 保護管
19 底面
2 逆流防止装置
3 フランジ部材
31 排水口
32 鍔部
33 凸部
34 段部
4 固定部材
41 環状部
42 切り欠き
43 板状部
431 開口部
44 傾斜部
45 凹部
46 溝部
47 取付部
471 取付部
48 把持部
49 弁座
5 弁体
51 軸部
52 開閉部
53 膨出部
54 傾斜面
6 目皿
61 係合部
7 目皿
71 係合部
8 管体
9 止水栓
P パッキン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16