(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】電路遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 39/00 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
H01H39/00 A
(21)【出願番号】P 2020508147
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2019008509
(87)【国際公開番号】W WO2019181469
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2018053550
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018053551
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 純久
(72)【発明者】
【氏名】木本 進弥
(72)【発明者】
【氏名】金松 健児
(72)【発明者】
【氏名】木下 一寿
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-153371(JP,A)
【文献】特開2015-072925(JP,A)
【文献】実開昭48-008644(JP,U)
【文献】特開2005-302588(JP,A)
【文献】実開平04-068334(JP,U)
【文献】特開2013-041815(JP,A)
【文献】実開昭53-135571(JP,U)
【文献】特開平08-138511(JP,A)
【文献】特公昭49-024742(JP,B1)
【文献】特開2017-117678(JP,A)
【文献】特開2004-288604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
H01H 1/06- 1/66
H01H 37/58-37/74
H01H 45/00-45/14
H01H 50/00-50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する固定端子と、
可動接点を有し、
第1位置にあるときに前記可動接点と前記固定接点とが接触し第2位置にあるときに前記可動接点と前記固定接点とが接触しない可動接触子と
、
燃焼によりガスを発生させる点火器
、前記可動接触子の上方かつ前記点火器の下方に配置され前記点火器の発生させる前記ガスによって下方に移動して前記可動接触子を前記第1位置から前記第2位置へと移動させるピストン、及び前記ピストンを収容するスリーブを有するパイロアクチュエータと、
を備え、
前記スリーブは、下方に向かうほど径が小さくなり下方に移動する前記ピストンを内壁で挟持する第1筒部を有する、
電路遮断装置。
【請求項2】
前記可動接点
と前記固定接点
とが接触するように前記可動接触子を
保持する保持部をさらに備える、
請求項1に記載の電路遮断装置。
【請求項3】
前記保持部は、永久磁石を備える、
請求項
2に記載の電路遮断装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記可動接触子を機械的に保持するラッチ機構を備える、
請求項
2又は3に記載の電路遮断装置。
【請求項5】
前記保持部は、前記可動接触子の下方に配置され、前記可動接触子を上方に付勢する弾性部を備え、
前記弾性部は、下方に移動する前記ピストンによって圧縮される、
請求項
2~4のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項6】
前記可動接点は、前記固定接点に溶着されている、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項7】
前記ピストンは、
前記第1筒部の径よりも径が大きく前記点火器の下方に位置するベースと、
前記ベースの下方に位置し、前記ベースの径及び前記第1筒部の径よりも径の小さいシリンダーと、
を有し、
前記ピストンが下方に移動して、前記ピストンの前記ベースが前記第1筒部の前記内壁で挟持される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項8】
前記ピストンは、
前記ベースに前記点火器と向かい合う第1端を有し、
前記可動接触子を押す第2端
を有する、
請求項7に記載の電路遮断装置。
【請求項9】
前記ピストンは、前記可動接触子
を前記第2位置まで移動
させた状態で前記第1筒部に挟持される、
請求項
1~8のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項10】
前記電路遮断装置は、外部の電気回路の第1端及び第2端にそれぞれ接続される第1電極及び第2電極を備え、
前記電路遮断装置は、前記第1電極と前記第2電極との間を繋ぐ電路に、前記可動接点と前記固定接点との組を一つのみ備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項11】
前記可動接触子は板状であって、
前記電路遮断装置は、前記可動接触子において前記可動接点が位置する面とは反対の面に固定されたヨークを備える、
請求項1~10のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項12】
前記電路遮断装置は、
前記ヨークとしての第1ヨークを備え、
前記可動接触子を挟んで前記第1ヨークと対向する位置に、前記可動接触子と離れて固定された第2ヨークを更に備える、
請求項11記載の電路遮断装置。
【請求項13】
前記電路遮断装置は、前記固定接点と電気的に接続されており前記可動接触子を流れる電流の方向に沿って延びる電路片を備え、
前記可動接触子は、前記可動接点と前記固定接点とが対向する方向において、前記電路片と前記固定接点との間に位置し、
前記電路片を流れる電流の向きが、前記可動接触子を流れる電流の向きと反対である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項14】
前記電路遮断装置は、温度上昇により湾曲して前記可動接点から前記固定接点に向かう向きに前記可動接触子を押すバイメタルを備える、
請求項1~13のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項15】
前記電路遮断装置は、各々が前記可動接点を有する前記可動接触子を複数備える、
請求項1~14のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項16】
前記複数の可動接点は、前記点火器で発生した前記ガスの圧力に連動して、複数の前記固定接点から異なるタイミングで引き離される、
請求項15に記載の電路遮断装置。
【請求項17】
前記複数の可動接点は、異なる材料で形成されている、
請求項15又は16に記載の電路遮断装置。
【請求項18】
前記複数の可動接点は、同一の材料で形成されている、
請求項15又は16に記載の電路遮断装置。
【請求項19】
前記複数の可動接触子は、並列に配置された2つの可動接触子を備え、
前記2つの可動接触子が移動する向きは、互いに異なる、
請求項15~18のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項20】
前記可動接触子は、前記可動接点としての第1可動接点に加えて、第2可動接点を有し、
前記電路遮断装置は、前記固定接点としての第1固定接点を有する前記固定端子としての第1固定端子に加えて、第2固定接点を有する第2固定端子を備え、
前記可動接触子は、前記第1可動接点が前記第1固定接点に接触し、前記第2可動接点が前記第2固定接点に接触するように、前記第1固定端子と前記第2固定端子との間に挟持される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項21】
前記第1固定接点と前記第1可動接点とが対向する向きと、前記第2固定接点と前記第2可動接点とが対向する向きとが、反対向きである、
請求項20に記載の電路遮断装置。
【請求項22】
前記電路遮断装置は、前記固定接点と前記可動接点のうち一方を第1接点、他方を第2接点として、前記第2接点を複数備え、
1つの第1接点に対して複数の第2接点が接続される、
請求項1~21のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項23】
前記電路遮断装置は、
前記可動接触子と別体であって前記可動接触子と直列に接続される追加可動接触子を備え、
前記可動接触子と前記追加可動接触子とが、並列に配置され、
前記可動接触子が移動する向きと前記追加可動接触子が移動する向きとが、互いに異なる、
請求項1~22のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項24】
前記スリーブは、前記可動接触子が前記第1位置にあるときに前記ベースを収容する第2筒部をさらに有し、
前記可動接触子が前記第1位置にあるとき、前記第1筒部の前記内壁は、前記シリンダーと向かい合っている、
請求項7又は8に記載の電路遮断装置。
【請求項25】
前記パイロアクチュエータは、前記スリーブの内壁よりも内側に突出する保持部をさらに有し、
前記ピストンには、前記保持部と接触する溝が形成されており、
前記保持部が前記溝に接触することにより、前記ピストンが前記スリーブ内に位置するように保持される、
請求項1~24のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項26】
固定接点を有する固定端子と、
前記固定接点の下方に位置する可動接点を有
し、第1位置にあるときに前記可動接点と前記固定接点とが接触し第2位置にあるときに前記可動接点と前記固定接点とが接触しない可動接触子と、
前記可動接触子の上方に配置されたパイロアクチュエータと、
を備え、
前記パイロアクチュエータは、
ガスを発生させる点火器と、
前記点火器の下方に配置され、前記点火器の発生させる前記ガスによって下方に移動するピストンと、
前記ピストンを収容するスリーブと、
前記スリーブの内壁よりも内側に突出する保持部と、
を有し、
前記保持部が前記ピストンの側壁に接触することにより、前記ピストンは前記スリーブ内に保持される、
電路遮断装置。
【請求項27】
前記ピストンの側壁には、前記保持部と接触する溝が形成されており、
前記ピストンは、前記保持部と前記溝との接触により前記スリーブ内で保持される、
請求項26に記載の電路遮断装置。
【請求項28】
前記ピストンは、前記ガスによって前記保持部での保持が解除され、下方に移動する、
請求項
26又は27に記載の電路遮断装置。
【請求項29】
前記ピスト
ンは、前記可動接触子に結合されており
、前記可動接触子を引く
端部を有する、
請求項
26~28のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項30】
前記電路遮断装置は、前記可動接触子を移動させた後に前記ピストンを機械的に保持して前記ピストンが元の位置に戻るのを防止する戻り止め機構を備える、
請求項
26~29のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項31】
前記固定接点及び前記可動接触子を収容する収容室をさらに備え、
前記可動接点と前記固定接点との間に生じるアークを引き延ばす磁束を前記収容室内に発生させる、磁束発生部を備える、
請求項26~30のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項32】
前記固定接点及び前記可動接触子を収容する収容室をさらに備え、
前記収容室に配置されて、前記可動接点と前記固定接点との間に生じるアークの消弧を促進する消弧材を備える、
請求項26~31のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項33】
前記消弧材は、加熱されることによって前記収容室に消弧ガスを放出する消弧ガス発生部材を備える、
請求項32に記載の電路遮断装置。
【請求項34】
前記消弧材は、前記収容室内に封入された消弧性を有するガス又は液体を備える、
請求項32又は33に記載の電路遮断装置。
【請求項35】
前記消弧材は、前記収容室内に配置されて前記アークに接触することによって前記アークを消弧する消弧体を備える、
請求項32~34のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項36】
前記電路遮断装置は、外部の電気回路の第1端及び第2端にそれぞれ接続される第1電極及び第2電極を備え、
前記電路遮断装置は、前記第1電極と前記第2電極との間を繋ぐ電路に、前記可動接触子と前記固定端子との組を複数備える、
請求項26~35のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項37】
前記電路遮断装置は、前記可動接点が前記固定接点から引き離された隔離位置で前記可動接触子を保持するロック機構を、備える、
請求項26~36のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項38】
前記ロック機構は、永久磁石を備える、
請求項37に記載の電路遮断装置。
【請求項39】
前記ロック機構は、前記可動接触子と機械的に結合して前記可動接触子の前記固定端子に向かう向きの移動を規制する規制部を備える、
請求項37又は38に記載の電路遮断装置。
【請求項40】
前記ロック機構は、前記可動接触子の衝突により変形する樹脂部材を備える、
請求項37~39のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項41】
前記可動接触子は、前記樹脂部材に向かう向きに突出する突起を備える、
請求項40に記載の電路遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電路遮断装置に関し、より詳細には、燃焼により発生するガスに連動して電路を遮断する電路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車、特に電動車両上に装着されるよう意図された、パイロテクニックアクチュエータを備える回路遮断器が開示されている。
【0003】
特許文献1の回路遮断器は、導電体と、ハウジングと、マトリクスと、パンチと、パイロテクニックアクチュエータと、を備えている。
【0004】
ハウジングは、導電体によって部分的に横切られ、導電体の端部は、回路遮断器用の2つの接続端子を形成する。マトリクスとパンチとは、導電体の両側(上側と下側と)に配置されている。
【0005】
パイロテクニックアクチュエータは、点火されたときにパンチを第1の位置から第2の位置に移動させる。パンチ及びマトリクスは、パンチが第1の位置から第2の位置に移動するときに、導電体を破断(分割)して3つの別個の部品に分離する。パンチは溝を備え、パンチが第2の位置にある状態で、パンチの溝はマトリクス内に係合される。
【0006】
特許文献1記載の回路遮断器では、パイロテクニックアクチュエータで発生するエネルギーによって導電体を破断して、電路を遮断している。そのため、この回路遮断器では電路の遮断に時間を要し、また破断された電路における高電圧側電路と低電圧側電路間の空隙の距離を大きく設けることができず、電流の遮断性能の向上に限りがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、電流の遮断性能の向上を図ることが可能な電路遮断装置を提供することを目的とする。
【0009】
本開示の一態様に係る電路遮断装置は、固定端子と、可動接触子と、パイロアクチュエータと、を備える。前記固定端子は、固定接点を有する。前記可動接触子は、可動接点を有する。前記可動接触子は、第1位置にあるときに前記可動接点と前記固定接点とが接触し、第2位置にあるときに前記可動接点と前記固定接点とが接触しない。前記パイロアクチュエータは、点火器、ピストン、及びスリーブを有する。前記点火器は、燃焼によりガスを発生させる。前記ピストンは、前記可動接触子の上方かつ前記点火器の下方に配置され、前記点火器の発生させる前記ガスによって下方に移動して前記可動接触子を前記第1位置から前記第2位置へと移動させる。前記スリーブは、前記ピストンを収容する。前記スリーブは、下方に向かうほど径が小さくなり下方に移動する前記ピストンを内壁で挟持する第1筒部を有する。
【0010】
本開示の一態様に係る電路遮断装置は、固定端子と、可動接触子と、パイロアクチュエータと、を備える。前記固定端子は、固定接点を有する。前記可動接触子は、前記固定接点の下方に位置する可動接点を有する。前記可動接触子は、第1位置にあるときに前記可動接点と前記固定接点とが接触し第2位置にあるときに前記可動接点と前記固定接点とが接触しない。前記パイロアクチュエータは、前記可動接触子の上方に配置されている。前記パイロアクチュエータは、点火器と、ピストンと、スリーブと、保持部と、を有する。前記点火器は、ガスを発生させる。前記ピストンは、前記点火器の下方に配置され、前記点火器の発生させる前記ガスによって下方に移動する。前記スリーブは、前記ピストンを収容する。前記保持部は、前記スリーブの内壁よりも内側に突出する。前記保持部が前記ピストンの側壁に接触することにより、前記ピストンは前記スリーブ内に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る電路遮断装置の断面図である。
【
図2】
図2は、同上の電路遮断装置の要部の斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の電路遮断装置における、
図1と直交する方向の断面図である。
【
図4】
図4は、同上の電路遮断装置に含まれるパイロアクチュエータの断面図である。
【
図5】
図5は、同上の電路遮断装置を備える電源システムを説明するための回路図である。
【
図6】
図6は、同上の電路遮断装置の動作途中の断面図である。
【
図7】
図7は、同上の電路遮断装置の動作後の断面図である。
【
図8】
図8は、変形例1の電路遮断装置に含まれるパイロアクチュエータの断面図である。
【
図9】
図9Aは、変形例2の電路遮断装置の動作前の一部破断した側面図である。
図9Bは、変形例1の電路遮断装置の動作後の一部破断した側面図である。
【
図10】
図10は、変形例3の電路遮断装置の要部の分解斜視図である。
【
図11】
図11は、変形例4の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図12】
図12は、変形例5の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図13】
図13は、変形例6の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図14】
図14は、変形例7の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図15】
図15Aは、変形例8の電路遮断装置の要部の断面図である。
図15Bは、変形例8の電路遮断装置の要部における、
図15Aと直交する方向の断面図である。
【
図16】
図16は、変形例9の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図17】
図17Aは、変形例10の電路遮断装置の斜視図である。
図17Bは、変形例10の電路遮断装置の正面図である。
【
図18】
図18は、変形例11の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図19】
図19は、変形例12の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図20】
図20は、変形例13、変形例14の電路遮断装置の要部の回路図である。
【
図21】
図21は、変形例13の電路遮断装置の要部の斜視図である。
【
図26】
図26Aは、変形例17の電路遮断装置の可動接触子の正面図である。
図26Bは、変形例15の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図27】
図27Aは、変形例18の電路遮断装置の可動接触子の正面図である。
図27Bは、変形例16の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図28】
図28Aは、変形例19の電路遮断装置の要部の上方から見た断面図である。
図28Bは、変形例19の電路遮断装置の要部の側方から見た断面図である。
図28Cは、変形例19の電路遮断装置のピストンの斜視図である。
【
図29】
図29は、同上の電路遮断装置の要部の動作後の側方から見た断面図である。
【
図30】
図30Aは、変形例20の電路遮断装置の要部の上方から見た断面図である。
図30Bは、変形例20の電路遮断装置の要部の側方から見た断面図である。
図30Cは、変形例20の電路遮断装置のピストンの斜視図である。
【
図31】
図31は、同上の電路遮断装置の要部の動作後の側方から見た断面図である。
【
図32】
図32Aは、変形例21の電路遮断装置の要部の上方から見た断面図である。
図32Bは、変形例21の電路遮断装置の要部の側方から見た断面図である。
【
図33】
図33は、同上の電路遮断装置の要部の動作後の側方から見た断面図である。
【
図34】
図34は、変形例22の電路遮断装置の斜視図である。
【
図35】
図35は、変形例22の電路遮断装置で発生するアークを引き延ばすことを説明する図である。
【
図36】
図36は、変形例23の電路遮断装置の斜視図である。
【
図37】
図37は、変形例24の電路遮断装置の断面図である。
【
図38】
図38Aは、変形例25の電路遮断装置の要部の斜視図である。
図38Bは、変形例25の電路遮断装置の要部の上面図である。
【
図39】
図39は、変形例26の電路遮断装置の断面図である。
【
図40】
図40は、変形例27の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図41】
図41は、変形例28の電路遮断装置の要部の断面図である。
【
図42】
図42は、変形例29の電路遮断装置の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎない。本開示は、実施形態及び変形例に限定されることなく、この実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態及び変形例において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
(1)実施形態
実施形態に係る電路遮断装置100について、
図1~
図7を用いて説明する。
【0014】
(1.1)概要
実施形態に係る電路遮断装置100は、
図1に示すように、第1固定端子(固定端子)1と、第2固定端子2と、可動接触子(可動端子)3と、保持部4と、パイロアクチュエータ5と、収容室70と、を備える。
【0015】
第1固定端子1は、第1固定接点(固定接点)11を有している。第1固定端子1は、電気回路の第1端に接続される第1電極12を有している。
【0016】
第2固定端子2は、第2固定接点21を有している。第2固定端子2は、第1固定端子1とは別体に形成されている。第2固定端子2は、電気回路の第2端に接続される第2電極22を有している。
【0017】
可動接触子3は、第1可動接点(可動接点)31を有している。第1可動接点31は、第1固定接点11に接続される。可動接触子3は、第2可動接点32を有している。第2可動接点32は、第2固定接点21に接続される。可動接触子3は、第1固定端子1及び第2固定端子2の各々とは別体に形成される。
【0018】
第1固定接点11、第2固定接点21、可動接触子3(第1可動接点31及び第2可動接点32)は、収容室70に収容されている。
【0019】
保持部4は、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、可動接触子3を保持する。保持部4は、特に、可動接触子3に電流が流れていないとき(非通電時)に、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、可動接触子3を保持する。
【0020】
図4に示すように、パイロアクチュエータ5は、点火器51と、加圧室520と、ピストン53と、を備えている。
【0021】
点火器(squib)51は、燃焼によりガスを発生させる。点火器51は発熱体と火薬(燃料)を含み、発熱体に電気信号が流れ発熱体が発熱すると、火薬が着火する。点火器51が、点火されると、火薬が燃焼してガスを発生させる。点火器51で発生したガスは、加圧室520内に導入されて加圧室520内の圧力を上昇させる。
【0022】
ピストン53は、第1端531で加圧室520内の圧力を受けて動かされ、第2端532で固定端子(第1固定端子)1から離す向きの力を可動接触子3に(直接又は間接的に)与えて可動接触子3を移動させる。より詳細には、ピストン53は、第1端531で加圧室520の圧力を受け、加圧室520内の上昇した圧力によって押されて、第2端532で可動接触子3を押す。ピストン53は、加圧室520内の大きな圧力を受けて、高速で可動接触子3を押す。
【0023】
可動接触子3はピストン53によって押されて、収容室70内で移動する。可動接触子3は、ピストン53によって押されて、
図6、
図7に示すように、第1可動接点31が第1固定接点11から引き離され、かつ第2可動接点32が第2固定接点21から引き離される。
【0024】
つまり、電路遮断装置100では、点火器51で発生したガスの圧力に連動して、可動接触子3が固定端子1から離れる向きに移動して、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から引き離される。これにより、第1電極12と第2電極22との間の電路が遮断される。
【0025】
上述のように、電路遮断装置100では、点火器51で発生するガスのエネルギーを用いて、可動接触子3を固定端子(第1固定端子)1に対して高速で移動させる(引き離す)ことによって、電路を遮断している。したがって、接点間で発生するアークは、可動接触子3が移動するのと同じ程度に長い距離だけ、急速に引き延ばされて消弧される。これにより、電路遮断装置100は、アークを短時間で消弧させることが可能となり、電流の遮断性能を向上させることが可能となる。さらに、接点間で発生するアークは、収容室70内での可動接触子3の移動距離分だけ引き延ばされて、消弧される。これにより、電路遮断装置100は、アークを引き延ばして消弧させることが可能となり、電流の遮断性能を向上させることが可能となる。
【0026】
(1.2)詳細
以下、本実施形態に係る電路遮断装置100について、
図1~
図7を用いて詳細に説明する。
【0027】
(1.2.1)電源システム
図5に示すように、本実施形態の電路遮断装置100は、例えば電源システム200のヒューズとして用いられる。
【0028】
電源システム200は、例えば、電動車両等の車両300に搭載され、インバータ3001を介して接続されるモータ3002を駆動して、車両300を走行させる。車両300では、
図5に示すように、インバータ3001と並列にプリチャージコンデンサ3003が接続されている。
【0029】
インバータ3001は力行時、電源システム200から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ3002に供給し、回生時、モータ3002から供給される交流電力を直流電力に変換して電源システム200に供給する。モータ3002は例えば、三相交流同期モータである。
【0030】
電源システム200は、電路遮断装置100に加えて、バッテリ201、第1メインリレー202、第2メインリレー203、プリチャージ抵抗204、プリチャージリレー205、電流センサ(シャント抵抗)206及び制御回路207を備える。
【0031】
バッテリ201は、直列接続された複数の電池セルを備える。電池セルは、例えば、ニッケル水素電池セル、リチウムイオン電池セル等を用いることができる。
【0032】
第1メインリレー202の第1端は、バッテリ201の正極と接続され、第2端は、インバータ3001の第1入力端子(高電位側入力端子)と接続されている。
【0033】
第2メインリレー203の第1端は、電流センサ206及び電路遮断装置100を介してバッテリ201の負極と接続され、第2端は、インバータ3001の第2入力端子(低電位側入力端子)と接続されている。
【0034】
第1メインリレー202と並列に、プリチャージ抵抗204とプリチャージリレー205との直列回路が接続されている。
【0035】
制御回路207は、第1メインリレー202、第2メインリレー203、プリチャージリレー205、及び電路遮断装置100の動作を制御する。
【0036】
制御回路207は、モータ3002への電力の供給の開始時、プリチャージリレー205及び第2メインリレー203を閉じて、プリチャージコンデンサ3003を充電する。これによりモータ3002への突入電流が抑制される。制御回路207は、プリチャージコンデンサ3003への充電の完了後、プリチャージリレー205を開き、第1メインリレー202を閉じて、電源システム200からの電力の供給を開始させる。
【0037】
また、制御回路207は、電流センサ206で検出される電流に基づき、電源システム200を含む回路の異常の発生を検知する。制御回路207は、電源システム200を含む回路に異常が発生すると、第1メインリレー202、第2メインリレー203及び電路遮断装置100のうちの少なくとも一つを動作させて(起動させて)、回路を遮断する。
【0038】
制御回路207は、例えば、電流センサ206で検出される電流の大きさが第1閾値を超える時間が第1時間継続すると、第1メインリレー202と第2メインリレー203とのうちの少なくとも一方を開く。これにより、回路が遮断される。この場合、例えば制御回路207によって、開かれたリレー(第1メインリレー202、第2メインリレー203)が再び閉じられると、再度回路が形成されて、電源システム200からモータ3002への電力の供給が再開される。
【0039】
一方、制御回路207は、例えば、電流センサ206で検出される電流の大きさが第2閾値(>第1閾値)を超える時間が第2時間継続すると、電路遮断装置100を動作させる。これにより、回路が遮断される。電路遮断装置100は、回路の電路を遮断する遮断装置である。電路遮断装置100は、動作(起動)すると電路を遮断し続けるため、電路遮断装置100の起動後は、電源システム200からモータ3002への電力の供給が停止される。したがって、車両300の事故発生時等に、電路遮断装置100が動作することで、電源システム200を遮断することが可能となる。
【0040】
(1.2.2)構成
次に、電路遮断装置100の構成について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0041】
電路遮断装置100は、上述のように、第1固定端子1、第2固定端子2、可動接触子3、保持部4、及びパイロアクチュエータ5を備えている。また、電路遮断装置100は、
図1に示すように、第1ヨーク(下ヨーク)61と、第2ヨーク(上ヨーク)62と、収容室70を有するハウジング7と、を備えている。
【0042】
本実施形態の可動接触子3は、導電性を有する金属材料からなる板状の部材であって、一方向に長く形成されている。可動接触子3は、長手方向の第1端に第1可動接点31を有し、第2端に第2可動接点32を有する。第1固定端子1と第2固定端子2とは、可動接触子3の長手方向に沿って並んで配置されている。第1固定端子1は、可動接触子3の第1可動接点31と対向する位置に第1固定接点11を有し、第2固定端子2は、可動接触子3の第2可動接点32と対向する位置に第2固定接点21を有する。
【0043】
以下では、説明の便宜上、第1固定接点11と第1可動接点31との対向方向(第2固定接点21と第2可動接点32との対向方向;
図1の上下方向)を上下方向と定義し、第1可動接点31から見て第1固定接点11側を上方とする。また、第1固定端子1と第2固定端子2とが並んでいる方向(
図1の左右方向)を左右方向と定義し、第1固定端子1から見て第2固定端子2側を右方とする。つまり、以下では、
図1の上下左右を上下左右として説明する。また、以下では、上下方向及び左右方向の両方に直交する方向(
図1の紙面に直交する方向)を、前後方向として説明する。ただし、これらの方向は電路遮断装置100の使用形態を限定する趣旨ではない。
【0044】
第1固定端子1と第2固定端子2とは、左右方向に並ぶように配置されている(
図1参照)。第1固定端子1及び第2固定端子2の各々は、導電性の金属材料からなる。第1固定端子1及び第2固定端子2は、第1固定接点11及び第2固定接点21に外部の電気回路(上記の電源システム200を構成する回路)を接続するための端子として機能する。本実施形態では、第1固定端子1及び第2固定端子2の各々は、一例として銅(Cu)で形成されている。ただし、これに限定されず、第1固定端子1及び第2固定端子2の各々は銅以外の導電性材料で形成されていてもよい。
【0045】
図2に示すように、第1固定端子1は、接続片110と、電極片120と、連結片130と、電路片140と、を一体に備えている。
【0046】
接続片110は、上下方向に厚みを有し前後方向に長い矩形板状である。本実施形態では、接続片110の下面が第1固定接点11として機能するが、これに限定されない。第1固定接点11は、例えば、接続片110とは別部材からなり、溶接等によって接続片110に固定されていてもよい。
【0047】
電極片120は、前後方向に厚みを有する板状である。電極片120は、正方形状であって中央に貫通孔を有している。電極片120は、上記外部の電気回路の第1端と接続される。つまり、電極片120は、外部の電気回路の第1端に接続される第1電極12として機能する。
【0048】
連結片130は、左右方向に厚みを有し上下方向に長い矩形板状である。連結片130の下側辺は、接続片110の左側辺と結合されている。
【0049】
電路片140は、前後方向に厚みを有する板状である。電路片140は、電極片120と連結片130との間を接続する。電路片140の左側辺は、電極片120の右側辺の上部と結合されている。電路片140の右側辺は、連結片130の左面の中央に結合されている。
【0050】
図2に示すように、第2固定端子2は、接続片210と、電極片220と、連結片230と、電路片240と、を一体に備えている。
【0051】
接続片210は、上下方向に厚みを有し前後方向に長い矩形板状である。本実施形態では、接続片210の下面が第2固定接点21として機能するが、これに限定されない。第2固定接点21は、例えば、接続片210とは別部材からなり、溶接等によって接続片210に固定されていてもよい。
【0052】
電極片220は、前後方向に厚みを有する板状である。電極片220は、正方形状であって中央に貫通孔を有している。電極片220は、上記外部の電気回路の第2端と接続される。つまり、電極片220は、外部の電気回路の第2端に接続される第2電極22として機能する。
【0053】
連結片230は、左右方向に厚みを有し上下方向に長い矩形板状である。連結片230の下側辺は、接続片210の右側辺と結合されている。
【0054】
電路片240は、前後方向に厚みを有する板状である。電路片240は、電極片220と連結片230との間を接続する。電路片240の右側辺は、電極片220の左側辺の上部と結合されている。電路片240の左側辺は、連結片230の右面の中央に結合されている。
【0055】
図1に示すように、第1固定端子1は、電極片120がハウジング7の左壁から外部に露出し、連結片130の下端部と接続片110とがハウジング7の内部空間(収容室70)内に収容された状態で、ハウジング7に固定されている。第2固定端子2は、電極片220がハウジング7の右壁から外部に露出し、連結片230の下端部と接続片210がハウジング7の内部空間(収容室70)内に収容された状態で、ハウジング7に固定されている。
【0056】
図1~
図3に示すように、可動接触子3は、上下方向に厚みを有し、かつ前後方向よりも左右方向に長い板状に形成されている。可動接触子3は、その長手方向(左右方向)の両端部を第1固定接点11及び第2固定接点21に対向(接続)させるように、接続片110及び接続片210の下方に配置されている(
図1参照)。可動接触子3のうち、第1固定接点11に対向する部位には第1可動接点31が設けられ、第2固定接点21に対向する部位には第2可動接点32が設けられている(
図1参照)。
【0057】
本実施形態では、第1可動接点31は、第1固定接点11に接触している。より詳細には、第1可動接点31は、第1固定接点11に面接触している。また、第2可動接点32は、第2固定接点21に接触している。より詳細には、第2可動接点32は、第2固定接点21に面接触している。
【0058】
本実施形態では、第1可動接点31は、可動接触子3とは別部材であって銀(Ag)からなり、溶接等によって可動接触子3に固定されている。同様に、第2可動接点32は、可動接触子3とは別部材であって銀(Ag)からなり、溶接等によって可動接触子3に固定されている。ただし、これに限られず、第1可動接点31及び第2可動接点32の各々は、可動接触子3の一部が打ち出されるなどして可動接触子3と一体に構成されていてもよい。
【0059】
図1に示すように、可動接触子3は、ハウジング7の内部空間(収容室70)に収容されている。可動接触子3は、保持部4によって、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、保持されている。
【0060】
第1固定端子1と第2固定端子2とは、可動接触子3を介して短絡する。すなわち、第1固定端子1の第1電極12は、第1固定接点11、第1可動接点31、可動接触子3、第2可動接点32及び第2固定接点21を介して、第2固定端子2の第2電極22と電気的に接続される(
図2参照)。そのため、電気回路の第1端に第1電極12が電気的に接続され、第2端に第2電極22が電気的に接続されると、電路遮断装置100は、第1電極12と第2電極22との間に電路を形成する。
【0061】
図1、
図3に示すように、ハウジング7は、内筒体71と、外筒体72と、蓋部材73と、を備えている。
【0062】
内筒体71は、電気絶縁性を有する材料、例えば樹脂材料から形成されている。内筒体71は、下面が閉じ上面が開口した有底円筒状に形成されている。内筒体71の下壁の上面(内筒体71の底面)には、円筒状の保持リブ711が設けられている。保持リブ711は、内筒体71と同心状に形成されている。
【0063】
外筒体72は、例えば金属材料から形成されている。外筒体72は、非磁性の金属材料で形成されていることが好ましい。非磁性の金属材料は、例えば、SUS304等のオーステナイト系ステンレスである。ただし、外筒体72の材料は非磁性でなくともよく、例えば、42アロイ等の鉄を主成分とする合金であってもよい。
【0064】
外筒体72は、内筒体71と同心状であって、下面が閉じ上面が開口した有底円筒状に形成されている。外筒体72は、内筒体71の周囲を覆うように設けられている。つまり、外筒体72は、ハウジング7の強度(収容室70の外壁の強度)を向上させる強度部材である。
【0065】
なお、内筒体71は、例えばインサート成形等によって外筒体72と一体に形成されてもよい。また、ハウジング7は、外筒体72を備えていなくてもよい。
【0066】
蓋部材73は、電気絶縁性を有する材料、例えば樹脂材料から形成されている。蓋部材73は、上面が閉じ下面に開口を有する有底円筒状に形成されている。蓋部材73は、例えばインサート成形によって、第1固定端子1及び第2固定端子2と一体に形成される。
【0067】
蓋部材73の上壁の厚みは、蓋部材73の側壁の厚みよりも厚い。蓋部材73の上壁の中央には、蓋部材73と同心状の貫通孔731が形成されている。蓋部材73の貫通孔731内にパイロアクチュエータ5が配置される。パイロアクチュエータ5の下端部は、蓋部材73の上壁の下面(内面)から突出している。貫通孔731は、パイロアクチュエータ5(のケース52)によって気密に塞がれている。
【0068】
蓋部材73の側壁の下面には、円環状の凹溝732が形成されている。内筒体71及び外筒体72の上縁が凹溝732内に挿入されることで、内筒体71及び外筒体72が蓋部材73に結合される。これにより、ハウジング7は、内筒体71及び蓋部材73で囲まれる気密な内部空間(収容室70)を有している。ハウジング7の内部空間(収容室70)内に、第1固定接点11、第2固定接点21、及び可動接触子3が収容されている。収容室70内には、水素等の消弧性のガスが封入されていてもよい。
【0069】
本実施形態では、ハウジング7の形状は内部空間(収容室70)を有する略円柱状であるが、これに限定されない。ハウジング7は、第1固定接点11、第2固定接点21、及び可動接触子3を収容する内部空間(収容室70)を有する形状であればよく、中空の多角柱状(例えば中空の直方体状)等の他の形状であってもよい。
【0070】
第1ヨーク61は、強磁性体であって、例えば、鉄等の金属材料で形成されている。第1ヨーク61は、可動接触子3の下面に固定されて、可動接触子3と一体となっている(
図1、
図3参照)。つまり、第1ヨーク61は、可動接触子3において、第1可動接点31及び第2可動接点32が位置する面とは反対の面に固定されている。
【0071】
第1ヨーク61は、可動接触子3に電流が流れたとき、この電流によって発生する磁界が第1ヨーク61内を通過するように、この磁界に作用する。つまり、第1ヨーク61がない場合には、可動接触子3を流れる電流を中心とする(同心形状の)磁界が発生するが、第1ヨーク61がある場合には、第1ヨーク61内を通過するように磁界が変化する。よって、可動接触子3を流れる電流に作用する磁界は、その中心が第1可動接点31及び第2可動接点32がある面(つまり上面)側に誘導され、この結果、相対的に、可動接触子3に上向きの力が生じる。このため、第1ヨーク61がある場合、第1ヨーク61がない場合に比べて、第1可動接点31及び第2可動接点32と第1固定接点11及び第2固定接点21との接続が維持されやすくなる。
【0072】
第1ヨーク61の下面には、円柱状に凹んだ嵌合凹部610が形成されている。
【0073】
第2ヨーク62は、強磁性体であって、例えば、鉄等の金属材料で形成されている。第2ヨーク62は、可動接触子3を挟んで第1ヨーク61と対向する位置に、可動接触子3と離れて固定されている。なお、第2ヨーク62は、パイロアクチュエータ5のピストン53の第2端532(下端部)に当接してもよい。本実施形態では、第2ヨーク62は、パイロアクチュエータ5のピストン53の第2端532(下端部)に固定されている。第2ヨーク62は、可動接触子3の中央部分と対向するように(
図2参照)、可動接触子3と隙間を開けて接触しないように(
図3参照)配置されている。第2ヨーク62は、可動接触子3と電気的に絶縁されている。
【0074】
第2ヨーク62は、前後方向の両端部に、上方に突出する一対の突出部621,622(
図3参照)を有している。言い換えれば、第2ヨーク62の上面における前後方向の両端部には、可動接触子3の前後方向の側面と対向する突出部621,622が形成されている。
図3に示すように、一対の突出部621,622のうちの前方の突出部621の先端面(下端面)は、第1ヨーク61の前端部に、後方の突出部622の先端面(下端面)は、第1ヨーク61の後端部にそれぞれ突き合わされる。したがって、可動接触子3を通って第1固定端子1と第2固定端子2との間に電流が流れた場合には、第1ヨーク61及び第2ヨーク62で形成される磁路を通る磁束が生じる。このとき、第1ヨーク61の前端部と第2ヨーク62の前端の突出部621とが互いに異極に磁化され、かつ、第1ヨーク61の後端部と第2ヨーク62の後端の突出部622とが互いに異極に磁化される。これにより、第1ヨーク61と第2ヨーク62との間に吸引力が作用する。第2ヨーク62は、ピストン53の第2端532(下端部)に固定されているので、第1ヨーク61は、この吸引力によって上方に引き寄せられる。第1ヨーク61が上方に引き寄せられることによって、可動接触子3には第1ヨーク61から上向きの力が作用する。
【0075】
可動接触子3に電流が流れていると、この電流に起因して、第1可動接点31及び第2可動接点32を第1固定接点11及び第2固定接点21から引き離す電磁反発力が、生じることがある。すなわち、可動接触子3に電流が流れると、ローレンツ(Lorentz)力により、可動接触子3を下方に移動させる向きの電磁反発力が可動接触子3に作用することがある。
【0076】
本実施形態では、上記のように、第1ヨーク61によって、第1ヨーク61を通るように磁界が変化して、第1ヨーク61がない場合と比較して上向きの力が生じる。また、第1ヨーク61と第2ヨーク62との間に、上記の吸引力が作用する。これらの結果、可動接触子3を流れる電流によって、可動接触子3を上方に押し上げる力、つまり第1可動接点31及び第2可動接点32を第1固定接点11及び第2固定接点21それぞれに押し付ける力が作用する。
【0077】
上記のように、第1ヨーク61及び第2ヨーク62は、第1可動接点31及び第2可動接点32と第1固定接点11及び第2固定接点21との接続を維持する力を可動接触子3を流れる電流によって発生させる、接続維持機構として機能する。
【0078】
第2ヨーク62の突出部621,622と第1ヨーク61の上面の前後方向の両端との間には、電気絶縁性を有する材料、例えば樹脂材料から形成されるスペーサ631,632が配置されている(
図3参照)。これにより、第2ヨーク62と第1ヨーク61との間の電気絶縁性が確保される。
【0079】
図1、
図3に示すように、本実施形態の保持部4は接圧ばね41を備えている。接圧ばね41は、コイルばねである。接圧ばね41は、内筒体71の底面(内面)と第1ヨーク61の下面との間に配置されている。接圧ばね41のコイル軸は、上下方向に沿っている。接圧ばね41の第1端411の内側に、内筒体71の保持リブ711が挿入されている。接圧ばね41の第2端412は、第1ヨーク61の嵌合凹部610内に挿入されている。接圧ばね41は、第1ヨーク61を介して、可動接触子3を上方へと付勢している。つまり、保持部4は、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11に接続される向きに可動接触子3を付勢する弾性部(接圧ばね41)を備えている。
【0080】
接圧ばね41は、第1ヨーク61を介して可動接触子3を上方に付勢している。接圧ばね41は、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、かつ第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、可動接触子3を保持している。
【0081】
図4に、本実施形態のパイロアクチュエータ5の断面図を示す。本実施形態のパイロアクチュエータ5は、点火器51で発生したガスによってピストン53(ピン535)を押し出す、いわゆるピンプッシャの構造を有している。
【0082】
図4に示すように、パイロアクチュエータ5は、点火器51と、内部に加圧室520を有するケース52と、ピストン53と、を備えている。
【0083】
点火器51は、ボディ511と、メタルスリーブ(金属CAN)512と、燃焼部513と、一対のピン電極514と、発熱素子515と、を備えている。
【0084】
ボディ511は、例えば電気絶縁性を有する樹脂材料等から形成され、上面が開口し下面が閉じた有底円筒状に形成されている。ボディ511の内部空間5110は、例えばガラス等の電気絶縁性を有する封止材料によって、封止されている。
【0085】
メタルスリーブ512は、例えばステンレススチール等の金属製であって、上面が開口し下面が閉じた有底円筒状の円筒部と、円筒部の上端から側方に突出する鍔部と、を一体に有している。メタルスリーブ512(の円筒部)の下壁の中央には、例えば、下壁を貫通しない深さの十字溝等が形成されている。つまり、メタルスリーブ512の下壁の一部分は、メタルスリーブ512の他の部分よりも強度の低い(破断しやすい)低強度部となっている。メタルスリーブ512は、ボディ511の下面を覆うように、鍔部でボディ511と接着等によって結合されている。
【0086】
燃焼部513は、例えばニトロセルロース等の火薬を含む。燃焼部513は、ボディ511とメタルスリーブ512とで囲まれる空間内に配置されている。燃焼部513に含まれる火薬は、燃焼によって大量のガスを発生させる材料であればよく、ニトロセルロースには限定されない。
【0087】
一対のピン電極514の各々は、第1端が燃焼部513内(ボディ511とメタルスリーブ512とで囲まれる空間内)に位置し、第2端がボディ511を通ってパイロアクチュエータ5の外部に露出している。一対のピン電極514の第2端は、制御回路207に接続されている。
【0088】
発熱素子515は、通電により熱を発生する素子であり、本実施形態ではニクロム線である。発熱素子515は、燃焼部513内(ボディ511とメタルスリーブ512とで囲まれる空間内)に配置されている。発熱素子515は、一対のピン電極514の第1端同士の間に接続されている。
【0089】
点火器51では、制御回路207からの電流によって一対のピン電極514間が通電されると、発熱素子515が発熱し、燃焼部513の温度が上昇する。燃焼部513(発熱素子515の周囲の部分)の温度が発火温度を超えると、火薬が爆発的に燃焼して瞬時に大量のガス(例えば一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス)が発生する。ガスの発生によって、燃焼部513内の圧力がメタルスリーブ512の低強度部の耐圧を超えると、低強度部が破断され、燃焼により発生したガスが、破断された部分を通って外部(本実施形態では、下方の加圧室520)に放出される。
【0090】
図4に示すように、ピストン53は、ベース533と、シリンダー534と、ピン(ロッド)535と、ばね536と、を備えている。
【0091】
ベース533は、例えば樹脂等の電気絶縁性を有する材料から形成されており、例えばポリカーボネート又はポリブチレンテレフタレート製である。ベース533は、それぞれ円柱状の第1柱部、第2柱部及び第3柱部を上から順に有しており、第1柱部、第2柱部及び第3柱部が軸を揃えて(同心状に)上下に繋がった形状を有している。第1柱部の外径は、第2柱部の外径よりも大きく、第2柱部の外径は、第3柱部の外径よりも大きい。ベース533の外側面において、第1柱部と第2柱部との境界には、第1柱部及び第2柱部と同心である円環状の保持溝5330が形成されている。
【0092】
本実施形態では、ベース533の第1柱部の底面(上面)が、ピストン53の第1端531である。
【0093】
シリンダー534は、例えば樹脂等の電気絶縁性を有する材料から形成されている。シリンダー534は、円筒状に形成されている。シリンダー534の内径は、ベース533の第3柱部の外径とほぼ等しく、第2柱部の外径よりも小さい。シリンダー534の外径は、ベース533の第2柱部の外径よりも小さい。シリンダー534の上面開口内に、ベース533の第3柱部が嵌め込まれて、シリンダー534とベース533とが結合されている。
【0094】
ピン535は、例えば樹脂等の電気絶縁性を有する材料から形成されており、例えばポリカーボネート又はポリブチレンテレフタレート製である。ピン535は、それぞれ円柱状の大径部及び小径部を上から順に有しており、大径部及び小径部が軸を揃えて(同心状に)上下に繋がった形状を有している。ピン535の大径部の軸方向(上下方向)の長さは、シリンダー534の長さと同程度である。具体的には、ピン535の長さは、シリンダー534に結合されたベース533の底面(下面)とシリンダー534の下端との間の距離よりも、僅かに大きい。
図1に示すように、ピン535の小径部は、第2ヨーク62の貫通孔内に固定されている。本実施形態では、ピン535の小径部を含む領域が、ピストン53の第2端532である。
【0095】
図4に示すように、ばね536は、コイルばねである。ばね536は、シリンダー534とピン535との間の相対位置を規定する。具体的には、ばね536は、シリンダー534の内側面とピン535の外側面との間に挟まれて、シリンダー534の内側でピン535を保持する。
【0096】
ケース52は、ホルダ521と、スリーブ522と、キャップ523と、第1保持ばね524と、第2保持ばね525と、を備えている。ケース52は、全体として略円筒状に形成されている。
【0097】
ケース52のホルダ521は、金属製であり、例えばアルミニウム又はアルミ合金製である。ホルダ521は、上面及び下面が開口した略円筒状に形成されており、内側面が多段の円筒面状に形成されている。ホルダ521は、点火器51及びピストン53を保持している。
【0098】
ケース52のホルダ521の上側部分の空間内に、点火器51が嵌め込まれている。ホルダ521の上側部分の内面は、点火器51の外面(ボディ511の外側面、メタルスリーブ512の鍔部の外面、メタルスリーブ512の円筒部の外側面)にほぼ密接する形状を有している。ホルダ521(の内部空間)の上側の開口は、点火器51によって閉じられている。
【0099】
ケース52のホルダ521の下側部分の空間内に、ピストン53のベース533が嵌め込まれている。ホルダ521の下側部分の内面は、ベース533の第1柱部の外側面にほぼ密接する形状を有している。ホルダ521(の内部空間)の下側の開口は、ピストン53(のベース533)によって閉じられている。
【0100】
ケース52に点火器51とピストン53とを取り付けることで、点火器51(のメタルスリーブ512)の下面、ピストン53(のベース533)の上面、ケース52(のホルダ521)の内面の間に、閉じた気密空間が形成される。点火器51で発生したガスは、メタルスリーブ512の下壁の破断された部分を通って、この気密空間に導入される。つまり、この気密空間が、点火器51で発生したガスの圧力を受ける加圧室520として機能する。
【0101】
ケース52のスリーブ522は、金属製であり、例えば鋼製である。スリーブ522は、上面及び下面が開口した略円筒状に形成されている。スリーブ522は、それぞれ円筒状の第1筒部、第2筒部及び第3筒部を上から順に有しており、第1筒部、第2筒部及び第3筒部が軸を揃えて(同心状に)上下に繋がった形状を有している。第1筒部の内側面は、下側に向かう程径が小さくなるテーパ状に形成されている。第2筒部の内側面は、一定の径を有する円筒面状に形成されている。第2筒部の内径は、ピストン53のベース533の第1柱部(最も径の大きな部分)の外径とほぼ等しい。第3筒部の内側面は、下側に向かう程径が小さくなるテーパ状に形成されている。第3筒部の内側面の径は、上端がベース533の第1柱部(ベース533で最も径の大きな部分)の外径とほぼ等しく、下側に向かう程径が小さくなっている。つまり、スリーブ522の第3筒部は、ピストン53のベース533が内部を通過できない形状である。
【0102】
ケース52のキャップ523は、金属製であり、例えば鋼製である。キャップ523は、上下両面が開口した円筒状に形成されている。キャップ523の下面には、内方に突出する突出部(鍔)が形成されている。突出部(鍔)の内径は、ピストン53のシリンダー534の外径とほぼ等しい。ピストン53は、点火器51で発生したガスの圧力を受けて一方方向に移動する動作ピンである。
【0103】
本実施形態では、ホルダ521、スリーブ522、キャップ523の外径は等しい。
【0104】
第1保持ばね524は、中空円盤状の被挟持部と、被挟持部の内側面から斜め上方に向かって突出する中空円錐台状の保持部と、を有する。第1保持ばね524の被挟持部は、ケース52のホルダ521とスリーブ522との間に挟み込まれており、これにより、第1保持ばね524はホルダ521とスリーブ522との間に挟持される。第1保持ばね524は、ホルダ521とスリーブ522との境界部分の隙間を封止する。保持部は、ピストン53のベース533の保持溝5330に接触し、ベース533に上向きの力を与えてベース533を保持する(ベース533の下向きの移動を阻止する)。
【0105】
第2保持ばね525は、中空円盤状の被挟持部と、被挟持部の内側面から斜め下方に向かって突出する中空円錐台状の保持部と、を有する。第2保持ばね525の被挟持部は、ケース52のスリーブ522とキャップ523との間に挟み込まれており、これにより、第2保持ばね524はスリーブ522とキャップ523との間に挟持される。第2保持ばね525は、スリーブ522とキャップ523との境界部分の隙間を封止する。保持部の突出先端は、ピストン53のシリンダー534の外側面から離れている。保持部の突出先端の径は、ピストン53のベース533の第2柱部の外径とほぼ等しい。
【0106】
図4に示すように、ケース52に点火器51及びピストン53を組み付けた状態では、点火器51のピン電極514がケース52の上面から突出している。また、ピン535の小径部が、ケース52の下面から下方に突出している。
【0107】
図1に示すように、パイロアクチュエータ5は、ケース52によって蓋部材73の貫通孔731を塞ぐように、ハウジング7に取り付けられる。この状態で、ピストン53の第2端(ピン535の下端)は、可動接触子3の中心(長手方向及び短手方向の中心)と対向している。
【0108】
(1.2.3)動作
次に、上述した構成の電路遮断装置100の動作について、
図1、
図6、
図7に基づいて説明する。
【0109】
電路遮断装置100は、第1電極12が電気回路(例えば、電源システム200を構成する回路)の第1端に接続され、第2電極22が電気回路の第2端に接続される。ここでは、電気回路の第1端の方が第2端よりも高電位とする。
【0110】
電気回路の通常時には、接圧ばね41のばね力等によって、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、可動接触子3が保持されている(
図1参照)。このとき、第1電極12から第1固定接点11、第1可動接点31、可動接触子3、第2可動接点32、第2固定接点21をこの順に通って、第2電極22に向かって電流が流れる。
【0111】
このとき、第1可動接点31と第1固定接点11との接触及び第2可動接点32と第2固定接点21との接触は、接圧ばね41のばね力、上記の第1ヨーク61と第2ヨーク62との間の吸引力等によって、維持される。なお、電路遮断装置100に過電流等が流れても、その大きさが比較的小さい場合には、上記の第1ヨーク61と第2ヨーク62との間の吸引力等によって接点間の接触が維持される。
【0112】
電気回路の異常時には、例えば制御回路207が電気回路での異常の発生を検知する。異常の発生を検知すると、制御回路207は、電路遮断装置100を動作させて(起動して)、電気回路を遮断する。
【0113】
具体的には、制御回路207は、一対のピン電極514間に電流を流して、発熱素子515に通電する。発熱素子515は、通電されると発熱し、燃焼部513の温度を上昇させる。燃焼部513の温度が火薬の発火温度を超えると、火薬が燃焼して大量のガスが発生し、ガスの圧力によってメタルスリーブ512の下壁の低強度部が破断され、破断された部分を通ってガスが加圧室520に放出される。燃焼部513は、爆発的に燃焼して大量のガスを発生させるため、加圧室520の圧力は短時間で急速に増加する。
【0114】
ピストン53は、第1端531(ベース533の上面)で加圧室520内の圧力を受けて下方に押され、第2端532(ピン535)で可動接触子3を下方に押す。ピストン53は、可動接触子3における第1可動接点31と第2可動接点32との間の部位に力を与えて、可動接触子3を下方へ移動させる。
【0115】
具体的には、ピストン53では、ベース533の底面(上面)が加圧室520内の圧力を受け、第1保持ばね524のばね力に抗して、ベース533がシリンダー534と一緒に下方への移動を開始する。このときのベース533(ピストン53)の初速は、加圧室520内での大きな圧力のため、非常に大きくなる。ピン535は、ばね536を介してシリンダー534から下向きの力を受け、シリンダー534の下方への移動の開始からわずかに遅れて、下方へ移動し始める。ピン535、第2ヨーク62、第1ヨーク61及び可動接触子3は一体となっており、ピン535の下方への移動によって、可動接触子3は下方に押されて下方へ移動する。ここで、ピン535には、ベース533が下方への移動を開始した後にばね536に蓄えられた弾性エネルギーによる力も作用するため、ピン535には非常に大きな下向きの力がかかり、その初速も大きくなる。
【0116】
可動接触子3を下方に押す力が、可動接触子3を上向きに支える力(接圧ばね41のばね力、第1ヨーク61と第2ヨーク62との間の吸引力等)を超えると、可動接触子3が、第1ヨーク61を介して接圧ばね41を圧縮しながら下方へ移動する。これにより、第1可動接点31が第1固定接点11から引き離され、第2可動接点32が第2固定接点21から引き離される(
図6参照)。この結果、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路が遮断されて、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路を流れる電流が遮断される。
【0117】
ピストン53、第1ヨーク61、可動接触子3、及び第2ヨーク62は、一体となって(以下、説明の便宜上、ピストン53、第1ヨーク61、可動接触子3、及び第2ヨーク62のまとまりを「移動体」と呼ぶ)、下方へ移動する。ピストン53が移動する方向とピストン53によって可動接触子3が移動する方向は、同一方向である。移動体は、典型的には接圧ばね41が最も圧縮される位置まで移動する(
図7参照)。このとき、ピストン53のベース533は、ケース52のスリーブ522の第3筒部の内面を押し広げながら(変形させながら)第3筒部内を移動することになる。なお、移動体の運動エネルギーは、接圧ばね41の弾性エネルギー、移動体が内筒体71の底面と衝突する際に発生する熱エネルギー等に変換される。
【0118】
移動体は、接圧ばね41が圧縮された位置で、圧縮された接圧ばね41から上向きの力を受ける。しかし、移動体の上方への移動は、ベース533とケース52のスリーブ522の第3筒部との間の摩擦力、及びケース52(加圧室520)内に充満するガスの圧力によって、阻止される。これによって、移動体は、
図7に示す位置で停止する。つまり、第3筒部は、可動接触子3を移動させた後にピストン53を機械的に保持してピストン53が元の位置に戻るのを防止する、戻り止め機構として機能している。なお、本実施形態において、戻り止め機構は必ずしも必要ではない。ケース52内に充満するガスの圧力が、接圧ばね41のばね力に抗して(可動接点31,32が固定接点11,21から引き離された位置で)移動体の上方への移動を阻止できる程度に大きければ、戻り止め機構は省略可能である。この場合、第3筒部の内側面は、例えば、第2筒部と同様に一定の径を有する円筒面状であってもよい。
【0119】
ここにおいて、可動接触子3に電流が流れている状態で第1可動接点31が第1固定接点11から引き離されると、第1可動接点31と第1固定接点11との間にアークが発生する可能性がある。同様に、可動接触子3に電流が流れている状態で第2可動接点32が第2固定接点21から引き離されると、第2可動接点32と第2固定接点21との間にアークが発生する可能性がある。
【0120】
これに対し、本実施形態の電路遮断装置100では、パイロアクチュエータ5で発生するガスのエネルギーを用いて、可動接点31,32を固定接点11,21から急速に引き離すことで、アークを急速に引き延ばして消弧している。
【0121】
点火器51で発生したガスからピストン53に与えられる力(圧力)は非常に大きい。このため、可動接触子3は、ピストン53に押されて高速で第1固定端子1及び第2固定端子2から引き離され、接点間で発生したアークは急速に引き延ばされて消弧される。
【0122】
特に、本実施形態では、可動接触子3と固定端子(第1固定端子)1とが別体であるため、導電体を破断することによって電路を遮断している特許文献1の回路遮断器に比べて、電路の遮断自体に必要なエネルギーは小さい。言い換えれば、点火器51で発生したエネルギーの大部分を、可動接触子3の移動(可動接触子3の運動エネルギー)に用いることができる。これにより、電路遮断装置100では、可動接触子3の移動速度が大きくなり、アークの引き延ばし性能及び消弧性能が向上する。
【0123】
また、特許文献1記載の回路遮断器では、パイロテクニックアクチュエータで発生するエネルギーによって導電体を破断して破断部分の端部を折り曲げることで、電路を遮断している。このため、この回路遮断器では、破断された導電体の部分同士が十分に引き離されない可能性があり、また破断された電路における高電圧側電路と低電圧側電路間の空隙の距離を大きく設けることができず、電流の遮断性能の向上に限りがある。
【0124】
本実施形態では、収容室70内で、可動接触子3が固定端子(第1固定端子)1から離れる向きに移動して、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から引き離される。このため、導電体を破断し折り曲げることによって電路を遮断している特許文献1の回路遮断器に比べて、電路遮断後の接点間の距離を大きくすることが可能となる。これにより、電路遮断装置100は、アークの引き延ばし長さを大きく取ることが可能となり、消弧性能が向上する。
【0125】
また、可動接触子3は収容室70内で移動するため、第1可動接点31と第1固定接点11との間、第2可動接点32と第2固定接点21との間に発生するアークは、収容室70内に閉じ込められる。このため、アークが電路遮断装置100の外部に漏れにくい。すなわち、収容室70は、第1可動接点31と第1固定接点11との間、第2可動接点32と第2固定接点21との間に発生するアークを内部に閉じ込めて消弧する、消弧室でもある。
【0126】
一例において、可動接触子3の移動時間(
図1に示す位置から
図7に示す位置まで移動する時間)は1ms以内であり、収容室70内での可動接触子3の移動距離(
図1に示す位置と、
図7に示す位置との間の距離)は20~30mm程度である。ただし、電路遮断装置100の特性はこれらの数値には限られず、必要に応じて適宜設計可能である。
【0127】
(2)変形例
以上説明した上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。また、上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例のいくつかを列挙する。上記の実施形態及び下記の変形例は、適宜組み合わせ可能である。
【0128】
(2.1)変形例1
ピンプッシャ型のパイロアクチュエータ5の構造は、
図4に示す構造に限られない。
図8に、変形例1の電路遮断装置100におけるパイロアクチュエータ5(実施形態とは別の構造のパイロアクチュエータ5)の断面図を示す。
【0129】
本変形例のパイロアクチュエータ5は、主に、ケース52及びピストン53の構造が、実施形態の電路遮断装置100のパイロアクチュエータ5と異なっている。本変形例の電路遮断装置100(パイロアクチュエータ5)において、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0130】
図8に示すように、ケース52は、ホルダ521と、スリーブ522と、を備えている。ケース52は、全体として略円筒状に形成されている。
【0131】
ケース52のホルダ521は、金属製であり、例えばアルミニウム又はアルミ合金製である。ホルダ521は、上面及び下面が開口した略円筒状に形成されている。ホルダ521の内部空間内に、点火器51が嵌め込まれている。ホルダ521の内面は、点火器51の外面(ボディ511の外側面、メタルスリーブ512の鍔部の外面、メタルスリーブ512の円筒部の上側部分の外側面)にほぼ密接する形状を有している。ホルダ521は、ホルダ521の下側の開口からメタルスリーブ512の下側部分が突出するように、点火器51を保持している。ホルダ521は、その下端の部分に、筒状の規制部5211を有している。規制部5211は、メタルスリーブ512の円筒部の上側部分の外側面に沿って延びている。
【0132】
ケース52のスリーブ522は、金属製であり、例えば鋼製である。スリーブ522は、上面及び下面が開口した略円筒状に形成されている。本変形例のスリーブ522は、それぞれ円筒状の第1筒部、第2筒部及び第3筒部を上から順に有しており、第1筒部、第2筒部及び第3筒部が軸を揃えて(同心状に)上下に繋がった形状を有している。
【0133】
第1筒部の内側面は、一定の径を有する円筒面状に形成されている。第1筒部の内径はホルダ521の規制部5211の外径とほぼ等しい。また、第1筒部の内径は、ピストン53のピン535の大径部(後述)の外径とほぼ等しい。第2筒部は、下側に向かう程径が小さくなるテーパ筒状に形成されている。第3筒部の内側面は、一定の径を有する円筒面状に形成されている。第3筒部の内径は、ピストン53のピン535の小径部(後述)の外径よりも僅かに大きい。また、第3筒部の内径は、ピストン53のピン535の大径部の外径よりも小さい。つまり、スリーブ522の第3筒部は、ピストン53のピン535(の大径部)が通過できない形状である。
【0134】
スリーブ522は、大径部の上端部分を、ホルダ521の規制部5211の周りに嵌め込むことで、ホルダ521に結合される。
【0135】
図8に示すように、本変形例では、ピストン53はピン535のみを備えている。
【0136】
ピン535は、例えば樹脂等の電気絶縁性を有する材料から形成されており、例えばポリカーボネート又はポリブチレンテレフタレート製である。ピン535は、それぞれ円柱状の大径部、中径部、小径部及び突出部を上から順に有しており、大径部、中径部、小径部及び突出部が軸を揃えて(同心状に)配置されている。大径部の外径は、中径部の外径よりも大きい。中径部の外径は、小径部の外径よりも大きい。小径部の外形は、突出部の外形よりも大きい。大径部と中径部とは、大径部から中径部に向かう程径が小さくなる柱状の第1繋ぎ部によって、繋がっている。中径部と小径部とは、中径部から小径部に向かう程径が小さくなる柱状の第2繋ぎ部によって、繋がっている。突出部は、小径部の底面(下面)から下方に突出している。つまり、ピン535は、下側に向かうほど(点火器51から離れるほど)径が小さくなる柱状である。本変形例では、ピン535の大径部の底面(上面)が、ピストン53の第1端531である。また、ピン535の突出部を含む領域が、ピストン53の第2端532である。
【0137】
ピン535の大径部の上面には、その周縁部分に、弾性リブ5351が一体に設けられている。弾性リブ5351は、弾性を有している。弾性リブ5351は、上側に向かう程内径及び外径が徐々に大きくなり厚さが小さくなるテーパ筒状に形成されている。ピン535の大径部の上面には、その一部(
図8の例では、左端の部分)に、上方に突出する位置決めストッパ5352が設けられている。
【0138】
ピン535(ピストン53)は、スリーブ522内に保持されている。ピン535は、突出部がスリーブ522の下側の開口から突出するように、スリーブ522内に配置されている。ピン535は、弾性リブ5351の外側面がスリーブ522の第1筒部の内面に弾性的に接触することで、スリーブ522に保持されている。ピン535の外側面とスリーブ522の内面との間は、弾性リブ5351によって隙間なく閉じられている。
【0139】
図8に示すように、ケース52に、点火器51とピストン53とを取り付けることで、点火器51(のメタルスリーブ512の外側面)、ケース52の内面、及びピストン53の上面の間に、閉じた気密空間(加圧室520)が形成される。
【0140】
なお、ケース52に、点火器51とピストン53とを取り付けた状態では、ピストン53(ピン535)のケース52内への過剰な押し込みが防止される。つまり、たとえピン535の突出部が上方に押されたとしても、ピン535の位置決めストッパ5352がホルダ521の規制部5211に接触することで、ピン535の上方への移動が阻止される。これにより、ピン535を、ケース52内における所定範囲内に位置させることができる。
【0141】
本変形例でも、点火器51でガスが発生すると、ピストン53(ピン535)が第1端531によって加圧室520内の圧力を受け、加圧室520内の上昇した圧力によって下方へ移動して、第2端532で可動接触子3を押す。これにより、可動接触子3を下方に移動させて、第1可動接点31を第1固定接点11から引き離し、第2可動接点32を第2固定接点21から引き離すことが可能となる。
【0142】
また、ピストン53は、加圧室520内の圧力によって下方へ押されると、スリーブ522の第3筒部をピン535の中径部によって押し広げながら下方へと進み、ピン535の第1繋ぎ部がスリーブ522の第2筒部に接触する位置で停止する。このとき、ピン535の中径部とスリーブ522の第3筒部との間には摩擦力が働き、ピン535の移動(上向き及び下向きの移動)が阻止される。つまり、本変形例の第3筒部は、可動接触子3を移動させた後にピストン53を機械的に保持してピストン53が元の位置に戻るのを防止する、戻り止め機構として機能する。
【0143】
もちろん、ピンプッシャ型のパイロアクチュエータ5は、上記実施形態及び変形例1の構造に限られず、他の構造を有していてもよい。
【0144】
(2.2)変形例2
パイロアクチュエータ5は、点火器51で発生したガスによってピストン53(ピン535)を引く、いわゆるピンプラーの構造を有していてもよい。
【0145】
図9A、
図9Bに、ピンプラーの構造を有するパイロアクチュエータ5を備えた変形例2に係る電路遮断装置100を示す。変形例2の電路遮断装置100において、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0146】
本変形例の電路遮断装置100は、第1ヨーク61及び第2ヨーク62を備えていない。そして、ピストン53の第2端532は、可動接触子3に結合されている。また、パイロアクチュエータ5のケース52は、内筒体71及び外筒体72に形成された貫通孔内に配置されており、貫通孔を気密に塞いでいる。接圧ばね41は、パイロアクチュエータ5のケース52と可動接触子3との間に配置されて、可動接触子3が第1固定端子1及び第2固定端子2に向かう向き(
図9Aの下向き)に、可動接触子3を付勢している。可動接触子3の上面及びケース52の下面には、接圧ばね41に対応する位置に、接圧ばね41の端部を受ける図示しない凹所が形成されている。
【0147】
本変形例において、パイロアクチュエータ5のピストン53は、例えば、
図9Aの上下方向に延びる円柱状の柱状部と、柱状部の端部(
図9Aの上端部)から側方に広がる鍔部と、を有する断面T字形状に形成されている。ケース52は、ピストン53の柱状部の側面に対向するように、加圧室520を有している。柱状部の先端(ピストン53の第2端532)が、可動接触子3と結合されている。
【0148】
一対のピン電極514間に電流が流されて点火器51が点火されると、点火器51からガスが発生して加圧室520内の圧力が増加し、ピストン53は
図9Aの上方に移動する。可動接触子3は、ピストン53の第2端532に引かれて、ピストン53と一体に第1固定端子1及び第2固定端子2から離れる向き(
図9Aの上方)に移動する。これにより、第1可動接点31及び第2可動接点32が、第1固定接点11及び第2固定接点21から引き離される(
図9B参照)。この結果、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路が遮断されて、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路を流れる電流が遮断される。
【0149】
(2.3)変形例3~変形例5
保持部4は、接圧ばね41に限定されない。
【0150】
例えば、保持部4は、
図10に示す変形例3、
図11に示す変形例4のように、永久磁石421、422を備えていてもよい。
【0151】
図10に示す変形例3では、可動接触子3は、本体部330と一対の突出部340とを有し、上面視十字形状に形成されている。本体部330は、左右方向に長く、長手方向の両端に第1可動接点31及び第2可動接点32を有している。一対の突出部340は、本体部330の側面から前後方向に突出している。可動接触子3の突出部340の各々には、磁性材料からなる板状の磁性部材、詳しくは鉄片4210が設けられている。可動接触子3は、その中心が、パイロアクチュエータ5のピン535の先端と対向している。また、ハウジング7の蓋部材73の下面において、パイロアクチュエータ5の前後(鉄片4210と対向する位置)に、一対の永久磁石421が設けられている。また、変形例3の電路遮断装置100は、第1ヨーク61及び第2ヨーク62を備えていない。なお、変形例3におけるその他の構成は、実施形態の電路遮断装置100と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0152】
変形例3では、永久磁石421が鉄片4210に直接接触した状態で、第1可動接点31及び第2可動接点32が第1固定接点11及び第2固定接点21と接続される。これにより、第1可動接点31及び第2可動接点32が第1固定接点11及び第2固定接点21と接続されるように、保持部4(永久磁石421)によって可動接触子3が保持される。なお、永久磁石421は、鉄片4210との間に隙間が空いた状態で、第1可動接点31及び第2可動接点32が第1固定接点11及び第2固定接点21と接続されるように可動接触子3を保持してもよい。また、永久磁石421と鉄片4210との間に、スペーサが設けられてもよい。また、可動接触子3に永久磁石421が設けられ、ハウジング7に鉄片4210が設けられてもよい。永久磁石42の数は2つに限られず、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0153】
図11に示す変形例4では、可動接触子3は、本体部330と、一対の延長部350(
図11では、一方のみ図示)と、を備える。本体部330は、左右方向に長く、長手方向の両端に第1可動接点31及び第2可動接点32を有している。一対の延長部350の各々は、側面視L字状である。一対の延長部350は、本体部330の左右方向の両端から下方へ本体部330と離れるように延びており、互いに対称な形状に形成されている。延長部350の突出先端の上面に、永久磁石422が設けられている。また、ハウジング7の内筒体71及び外筒体72からなるハウジング本体710には、磁性材料からなり内方へ突出する板状の磁性部材、詳しくは鉄片4220が設けられている。永久磁石422が鉄片4220に直接接触した状態で、第1可動接点31及び第2可動接点32が第1固定接点11及び第2固定接点21と接続される。なお、変形例4におけるその他の構成は、実施形態の電路遮断装置100と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0154】
変形例4でも、永久磁石422(保持部4)によって、第1可動接点31及び第2可動接点32が第1固定接点11及び第2固定接点21と接続されるように、可動接触子3が保持される。
【0155】
また、保持部4は、
図12に示す変形例5のように、可動接触子3を機械的に保持するラッチ機構43を備えていてもよい。
【0156】
図12に示す変形例5では、ラッチ機構43は、板状の一対の支持部材430と、弾性部材である一対のコイルばね431と、を備えている。ハウジング本体710の側面には、支持部材430が嵌まる形状の凹部7100が形成されている。コイルばね431は、その一端が凹部7100の底面に固定され、他端に支持部材430の基部の底面が固定されている。支持部材430は、凹部7100から先端が突出している。支持部材430の先端の上面は、斜面となっている。可動接触子3は、第1可動接点31及び第2可動接点32が第1固定接点11及び第2固定接点21と接続されるように、長手方向(左右方向)の両端の底面が一対の支持部材430によって支持されている。
【0157】
パイロアクチュエータ5のピストン53によって、可動接触子3が下方へ押されると、一対の支持部材430は可動接触子3によって押される。支持部材430は、可動接触子3によって押されて、コイルばね431を圧縮しながら凹部7100内に押し込まれる。これにより、可動接触子3は下方へ移動する。
【0158】
変形例5でも、第1可動接点31及び第2可動接点32が第1固定接点11及び第2固定接点21と接続されるように、保持部4(ラッチ機構43)によって可動接触子3が保持される。なお、ラッチ機構43は、コイルばね431を備えずに支持部材430がハウジング本体710の側面から突出する形状であってもよい。この場合、支持部材430の強度は、パイロアクチュエータ5に押された可動接触子3によって折り曲げられる程度の強度であればよい。
【0159】
なお、保持部4は、接圧ばね41、永久磁石42、ラッチ機構43以外の他の保持構造を備えていてもよい。また、保持部4は、接圧ばね41、永久磁石42、ラッチ機構43及び他の保持構造のうちの2つ以上を同時に(例えば、接圧ばね41と永久磁石42とを同時に)備えていてもよい。
【0160】
接圧ばね41は、実施形態では圧縮ばねであるが、引きばねであってもよい。引きばねからなる接圧ばね41は、例えば、実施形態の電路遮断装置100においては、蓋部材73と可動接触子3との間に配置されればよい。接圧ばね41の数は、1つには限られず2つ以上であってもよい。
【0161】
(2.4)変形例6~変形例18
電路遮断装置100では、上述のように、可動接触子3に電流が流れる通電時に、可動接点(第1可動接点)31を固定接点(第1固定接点)11から引き離す電磁反発力が生じることがある。電路遮断装置100では、電気回路の異常時以外(パイロアクチュエータ5によって可動接触子3が移動されるとき以外)には、可動接点(第1可動接点)31と固定接点(第1固定接点)11とが安定して接続されていることが好ましい。以下、電磁反発力に対して可動接点(第1可動接点)31と固定接点(第1固定接点)11との接続状態の安定化を図るための構成を備えた変形例について、列挙する。
【0162】
(2.4.1)
図13に示す変形例6の電路遮断装置100は、第1電極12と第2電極22との間を繋ぐ電路に、可動接点31と固定接点11との組を一つのみ備えている。具体的には、変形例6では、可動接触子3と第2固定端子2とは、可動接点と固定接点との組からなる接点組ではなく、銅線を編んでなる編組線64によって接続されている。編組線64は、曲げ変形可能なフレキシブル導線である。第2固定端子2は編組線64の一端が固定された第1固定部29を有し、可動接触子3は編組線64の他端が固定された第2固定部39を有している。すなわち、可動接触子3は、第1固定端子1の固定接点11と接触および開離し、第2固定端子2とフレキシブル導線を介して接続されている接点装置を備えている。編組線64は、第1固定部29と第2固定部39を結ぶ直線距離より長く、編組線64の一端と他端の間に湾曲部640を有している。編組線64は、第1固定部29から可動接触子3より下方に延在し、湾曲部640は可動接触子3より下方に配置されている。また湾曲部640は可動接触子3より上方に配置されていてもよい。可動接触子3と第2固定端子2の間の相対移動に応じて湾曲部640が変形する。電路遮断装置100は、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11に接続される向きに可動接触子3を付勢する弾性部(接圧ばね41)を備えている。ピストン53は、可動接触子3における第1可動接点31と第2固定部39との間の部位に力を与えて、可動接触子3を下方へ移動させる。可動接触子3が下方へ移動すると、第1可動接点31が第1固定接点11から離れ、また可動接触子3の第2固定部39が第2固定端子の第1固定部29から離れる。弾性部は、第1可動接点31と第2固定部39との間において可動接触子3を付勢している。なお、編組線64の長さ(一端と他端との間の長さ)は、収容室70内での可動接触子3の移動距離よりも長くても短くても同じでもよい。編組線64の長さが可動接触子3の移動距離よりも短いと、可動接触子3がピストン53に押されて移動するときに可動接触子3に引かれることで編組線64が千切れる。これにより、可動接触子3と第1固定端子1間の絶縁空間ギャップ、及び可動接触子3と第2固定端子2間の絶縁空間ギャップの2箇所の絶縁空間ギャップが生じる。この2箇所の絶縁空間ギャップが発生することにより、遮断性能が向上する。変形例6におけるその他の構成は、実施形態の電路遮断装置100と同様なので、詳しい説明は省略する。
【0163】
実施形態のように、電路遮断装置100の点火器51のガス発生前において、可動接点と固定接点との組からなる接点組の数が2個であれば、電磁反発力によって接続が不安定となる可能性のある場所が2箇所ある。これに対し、変形例6のように接点組の数が1個であれば、電磁反発力によって接続が不安定となる可能性のある場所が1箇所となり、可動接点と固定接点との間の接続状態(第1電極12-第2電極22間の導通状態)の安定化を図ることができる。
【0164】
なお、
図13に二点鎖線で示すように、可動接触子3と第2固定端子2との間に、樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料からなり可動接触子3と第2固定端子2との間の接触を防止するスペーサ641が設けられていてもよい。
【0165】
(2.4.2)
電路遮断装置100は、実施形態とは異なる形状のヨークを備えていてもよく、実施形態とはヨークの数が異なっていてもよい。
【0166】
図14に示す変形例7の電路遮断装置100では、第2ヨーク62は、突出部を備えておらず、矩形の板状に形成されている。その一方、第1ヨーク61は、上方に(第2ヨーク62に向かって)突出する一対の突出部611,612を有している。詳しくは、第1ヨーク61の上面における前後方向(
図14の左右方向)の両端部には、可動接触子3の前後方向の側面と対向する突出部611,612が形成されている。変形例7におけるその他の構成は、実施形態の電路遮断装置100と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0167】
変形例7の構成であっても、実施形態と同様に、第1ヨーク61及び第2ヨーク62によって、第1可動接点31及び第2可動接点32と第1固定接点11及び第2固定接点21との接続を維持する力(上向きの力)が発生される。これにより、第1可動接点31と第1固定接点11との接続状態、及び第2可動接点32と第2固定接点21との接続状態の、安定化を図ることができる。
【0168】
図15A、
図15Bに示す変形例8の電路遮断装置100は、第2ヨーク62がハウジング7に固定されている点で、変形例7の電路遮断装置100と相違する。
【0169】
具体的には、変形例8における第2ヨーク62は、上下方向に軸を有する円筒状であって、パイロアクチュエータ5において蓋部材73から突出する部分を囲うように、蓋部材73に固定されている。第2ヨーク62の下面の前後方向の部分は、第1ヨーク61の一対の突出部611,612と対向している(
図15B参照)。変形例8におけるその他の構成は、変形例7の電路遮断装置100と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0170】
変形例8の構成であっても、変形例7と同様に、第1ヨーク61及び第2ヨーク62によって、第1可動接点31及び第2可動接点32と第1固定接点11及び第2固定接点21との接続を維持する力が発生される。これにより、可動接点31と固定接点11との接続状態の安定化を図ることができる。なお、変形例8において、第2ヨーク62はパイロアクチュエータ5のケース52に固定されていてもよい。
【0171】
なお、
図16に示す変形例9のように、電路遮断装置100は、第1ヨーク61のみを備えて第2ヨーク62を備えなくてもよい。また、保持部4等によって、電磁反発力に抗して可動接点31と固定接点11とを安定して接続できれば、電路遮断装置100は、第1ヨーク61及び第2ヨーク62を両方とも備えていなくてもよい。
【0172】
(2.4.3)
電路遮断装置100では、可動接触子3を流れる前又は流れた後の電流の引き回し経路を適切に設計することで、可動接点31と固定接点11との接続状態の安定化を図ることが可能である。この構造を備えた変形例10、変形例11の電路遮断装置100について、説明する。
【0173】
変形例10の電路遮断装置100は、
図17A、
図17Bに示すように、第1固定端子1の電路片140が、第1電路片1401、第2電路片1402、第3電路片1403及び第4電路片1404を有している。また、第2固定端子2の電路片240が、第1電路片2401、第2電路片2402、第3電路片2403及び第4電路片2404を有している。
【0174】
図17Aに示すように、第1固定端子1の第1電路片1401は、前後方向に厚みを有し、連結片130の左面から左向きに延びる板状である。第2電路片1402は、第1電路片1401と連結されており、上下方向に厚みを有し、第1電路片1401の左端部から後方に延びるように、ハウジング7の左方に配置されている。第3電路片1403は、第2電路片1402と連結されており、前後方向に厚みを有し、第2電路片1402の後端部から下方に延びるように、ハウジング7の後方に配置されている。第4電路片1404は、第3電路片1403と連結されており、前後方向に厚みを有し、第3電路片1403の下端部から右方に延びるように、ハウジング7の後方に配置されている。つまり、第4電路片1404は、固定接点(第1固定接点)11と電気的に接続されており、可動接触子3を流れる電流の方向(左右方向)に沿って延びている。第4電路片1404の厚み方向(前後方向)は、可動接点31と固定接点11とが対向する方向(上下方向)と直交する。
【0175】
第2固定端子2の第1電路片2401は、前後方向に厚みを有し、連結片230の右面から右向きに延びる板状である。第2電路片2402は、第1電路片2401と連結されており、上下方向に厚みを有し、第1電路片2401の右端部から前方に延びるように、ハウジング7の右方に配置されている。第3電路片2403は、第2電路片2402と連結されており、前後方向に厚みを有し、第2電路片2402の前端部から下方に延びるように、ハウジング7の前方に配置されている。第4電路片2404は、第3電路片2403と連結されており、前後方向に厚みを有し、第3電路片2403の下端部から左方に延びるように、ハウジング7の前方に配置されている。つまり、第4電路片2404は、固定接点(第1固定接点)11と電気的に接続されており、可動接触子3を流れる電流の方向(左右方向)に沿って延びている。第4電路片2404の厚み方向(前後方向)は、可動接点31と固定接点11とが対向する方向(上下方向)と直交する。
【0176】
図17Bに示すように、可動接触子3は、前後方向から見て、固定接点(第1固定接点)11と第4電路片1404との間に位置する。また、可動接触子3は、前後方向から見て、固定接点(第1固定接点)11と第4電路片2404との間に位置する。第1固定端子1の第4電路片1404と第2固定端子2の第4電路片2404とは、前後方向において対向している。
【0177】
つまり、変形例10の電路遮断装置100では、第1可動接点31と第1固定接点11とが対向する方向において、可動接触子3が第4電路片1404と第1固定接点11との間に位置する。第4電路片1404を流れる電流の向きが、可動接触子3を流れる電流の向きと反対である。また、第1可動接点31と第1固定接点11とが対向する方向において、可動接触子3が第4電路片2404と第1固定接点11との間に位置する。第4電路片2404を流れる電流の向きが、可動接触子3を流れる電流の向きと反対である。
【0178】
このため、可動接触子3と第4電路片1404との間、及び可動接触子3と第4電路片2404との間には、斥力が発生する。この斥力は、ローレンツ力によって、可動接触子3及び第4電路片1404,2404を流れる電流が受ける力である。第4電路片1404,2404はハウジング7に対して固定されているため、可動接触子3には、第4電路片1404,2404から離れる向きの力(
図17Bの上向きの力)がかかる。これにより、可動接点31と固定接点11との接続状態の安定化を図ることができる。
【0179】
図18に示す変形例11のように、第1電極12と第2電極22との間を繋ぐ電路に、可動接点31と固定接点11との組を一つのみ備えた構成において、第1固定端子1が第4電路片1404を備えていてもよい。また、第2固定端子2が第4電路片2404を備えていてもよい。
【0180】
また、電路片の引き回し形状は、図示のものに限定されない。例えば、電路片140が、ハウジング7の内部で引き回される(可動接触子3とは反対向きの電流が流れる電路片(第4電路片)1404が、ハウジング7の内部に配置される)構成であってもよい。
【0181】
(2.4.4)
図19に示す変形例12の電路遮断装置100は、温度上昇により湾曲して可動接点(第1可動接点)31から固定接点(第1固定接点)11に向かう向きに可動接触子3を押すバイメタル65を備えている。
【0182】
具体的には、変形例12の電路遮断装置100は、板状の一対のバイメタル65を備えている。バイメタル65は、ハウジング本体710の側面に基部が嵌め込まれており、先端部が可動接触子3の下面に接触している。変形例12の電路遮断装置100では、短絡電流等の過電流が可動接触子3に流れると、過電流によってバイメタル65が加熱され、第1固定端子1及び第2固定端子2に向かう向き(上方)に可動接触子3を押す。これにより、可動接点31と固定接点11との接続状態の安定化を図ることができる。
【0183】
なお、変形例12におけるその他の構成は、実施形態の電路遮断装置100と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0184】
(2.4.5)
電磁反発力の大きさは、可動接触子3と固定端子1との接続箇所に流れる電流による。したがって、可動接触子3と固定端子1との接続箇所を複数にすれば、各接続箇所に流れる電流を低減させて、電磁反発力を低減することができる。例えば、第1固定端子1-第2固定端子2間に、複数の可動接触子3を並列に配置すれば、各可動接触子3を流れる電流の大きさが小さくなり、各接続箇所にかかる電磁反発力を低減することが可能である。
【0185】
図20に概略的に示すように、変形例13、変形例14の電路遮断装置100は、各々が可動接点(第1可動接点)31を有する可動接触子3を複数備えている。固定端子(第1固定端子)1は、固定接点(第1固定接点)11を複数備えている。複数の可動接点(第1可動接点)31は、複数の固定接点(第1固定接点)11に個別に接続される。
【0186】
【0187】
図21に示すように、変形例13の電路遮断装置100は、複数の可動接触子3(第1可動接触子301、第2可動接触子302)と、電気絶縁性の保持体36と、を備えている。
【0188】
図21、
図22Aに示すように、複数の可動接触子3の各々は、左右方向に長い板状であって、左端部の上面に第1可動接点31を有し、右端部の上面に第2可動接点32を有している。具体的には、
図22Aに示すように、第1可動接触子301は、左端部の上面に第1可動接点311を有し、右端部の上面に第2可動接点312を有している。第2可動接触子302は、左端部の上面に第1可動接点321を有し、右端部の上面に第2可動接点322を有している。また、第1固定端子1の下面において、複数の可動接触子3の第1可動接点31に接触する部分が、それぞれ第1固定接点11である。第2固定端子2の下面において、複数の可動接触子3の第2可動接点32に接触する部分が、それぞれ第2固定接点21である。
【0189】
保持体36は、樹脂等の絶縁材料から前後方向に延びる直方体状に形成されている。保持体36は、複数の可動接触子3(第1可動接触子301及び第2可動接触子302)を保持している。保持体36の後端部(
図22Aの上端部)における上下方向の中央を、第1可動接触子301が貫通している。保持体36の前端部(
図22Aの下端部)における上下方向の中央を、第2可動接触子302が貫通している。
図21に示すように、保持体36の上面は、パイロアクチュエータ5のピストン53の第2端532と対向している。
図22A、
図22Bに示すように、保持体36の下面には、接圧ばね41の第2端412を受ける嵌合凹部360が形成されている。
【0190】
なお、変形例13におけるその他の構成は、実施形態の電路遮断装置100と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0191】
変形例13の電路遮断装置100では、保持体36がピストン53に押されると、複数の第1可動接点31が、(ほぼ)同時に第1固定接点11から引き離され、複数の第2可動接点32が、(ほぼ)同時に第2固定接点21から引き離される。
【0192】
このように、第1固定端子1-第2固定端子2間に、複数の可動接触子3を並列に配置することで、各接続箇所にかかる電磁反発力を低減することが可能である。
【0193】
なお、電磁反発力の低減の観点からは、可動接点31及び固定接点11からなる接点組の材料は、複数の接点組の間で同じであることがより好ましい。つまり、複数の第1可動接点31(第1可動接触子301の第1可動接点311と第2可動接触子302の第1可動接点321と)は、同一の材料で形成されていることが好ましい。また、複数の第2可動接点32(第1可動接触子301の第2可動接点312と第2可動接触子302の第2可動接点322と)は、同一の材料で形成されていることが好ましい。さらに、複数の第1可動接点31と複数の第2可動接点32も、同一の材料で形成されていることが好ましい。複数の接点組の間で材料が同じであれば、並列配置された複数の可動接触子3に電流を均等に分配させることが可能となり、各接続箇所に作用する電磁反発力をより低減することが可能となる。
【0194】
ただし、可動接点31及び固定接点11からなる接点組の材料は、複数の接点組の間で異なっていてもよい。つまり、複数の可動接点(複数の第1可動接点)31(第1可動接触子301の第1可動接点311と第2可動接触子302の第1可動接点321と)は、異なる材料で形成されていてもよい。この場合でも、並列配置された複数の可動接触子3に電流を分配することで、各接続箇所に作用する電磁反発力を低減することが可能である。
【0195】
図23A、
図23Bに、変形例14の電路遮断装置100の要部を示す。変形例14の電路遮断装置100は、保持体36の構造が、変形例13と相違する。なお、変形例14におけるその他の構成は、変形例13の電路遮断装置100と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0196】
変形例14の保持体36は、それぞれ樹脂等の絶縁材料から形成された第1部材361及び第2部材362を備えている。
【0197】
第1部材361は、前後方向(
図23Aの上下方向)に長く形成されている。第1部材361は、第1可動接触子301が貫通する後端部(
図23Aの上端部、
図23Bの左端部)の直方体部3611と、直方体部3611から前方に突出する板部3612と、を有している。板部3612の前後方向の中央部分には、上方に凹んだ凹所が形成されている。
【0198】
第2部材362は、前後方向(
図23Aの上下方向)に長く形成されている。第2部材362は、第2可動接触子302が貫通する前端部(
図23Aの下端部、
図23Bの右端部)の直方体部3621と、直方体部3621から後方に突出する板部3622と、を有している。第2部材362の板部3622の下面には、接圧ばね41の第2端412を受ける嵌合凹部360が形成されている。直方体部3621の後面(
図23Bの左面)には、第1部材361の板部3612の前端部が挿入される凹部が形成されている。第2部材362の後端部(
図23Bの左端部)には、第1部材361の板部3612の後端部を挟んで板部3612と対向するように、押さえ部3613が形成されている。板部3612の前後方向の中央部分には、第1部材361の板部3612の凹所と対向する位置に、上方に突出する突部が形成されている。突部にはコイルばね37が嵌め込まれ、第1部材361を上方に(第2部材362から離れる向きに)付勢している。これにより、保持体36は、第1部材361の板部3612の上面が第2部材362に接触し、第1部材361の板部3612の下面が第2部材362から離れた状態で、保持部4(接圧ばね41)によって保持されている。
【0199】
第1部材361の板部3612の中央部分の上面(
図23Bの上面)は、パイロアクチュエータ5のピストン53の第2端532と対向している。
【0200】
変形例14の電路遮断装置100では、保持体36の第1部材361の板部3612の中央部分がピストン53によって下方に押されると、まず、コイルばね37を圧縮しながら、第1部材361のみが下方に移動する。これにより、第1可動接触子301が下方に移動して、第1可動接触子301の第1可動接点311及び第2可動接点312が、第1固定接点11及び第2固定接点21から引き離される。ピストン53がさらに下方へ移動すると、ばね37がさらに圧縮されて、第1部材361の下面が、第2部材362の上面に接触する。これにより、第1部材361に押されて、第2部材362も下方に移動し、第2可動接触子302も下方に移動する。第2可動接触子302が下方に移動することで、第2可動接触子302の第1可動接点321及び第2可動接点322が、第1固定接点11及び第2固定接点21から引き離される。
【0201】
つまり、変形例14の電路遮断装置100では、複数の可動接点(第1可動接触子301の第1可動接点311と第2可動接触子302の第1可動接点321と)は、複数の固定接点11から異なるタイミングで引き離されることになる。
【0202】
この場合、可動接点31及び固定接点11からなる接点組の材料は、複数の接点組の間で異なることがより好ましい。つまり、複数の第1可動接点31(第1可動接触子301の第1可動接点311と第2可動接触子302の第1可動接点321と)は、異なる材料で形成されていることが好ましい。また、複数の第2可動接点32(第1可動接触子301の第2可動接点312と第2可動接触子302の第2可動接点322と)は、異なる材料で形成されていることが好ましい。一つの可動接触子3に設けられている第1可動接点31と第2可動接点32と(例えば、第1可動接触子301の第1可動接点311と第2可動接点312と)は、同じ材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
【0203】
より詳細には、第1固定接点11から先に引き離される第1可動接触子301の第1可動接点311及び第2可動接点312は、抵抗の小さい材料(例えば銅)で形成されていることが好ましい。また、第1固定接点11から後に引き離される第2可動接触子302の第1可動接点321及び第2可動接点322は、耐アーク性の高い材料(例えばタングステン合金)で形成されていることが好ましい。この構成であれば、第1固定接点11から先に引き離される第1可動接触子301の第1可動接点311と第1固定接点11との間(及び第2可動接点312と第2固定接点21との間)には、アークが(ほとんど)発生しない。このため、電路遮断装置100全体としてみたときの耐アーク性を向上させることができる。また、通電時には抵抗の小さな第1可動接触子301側の経路を介して電流を流すことができるため、通電性能を向上させることも可能となる。
【0204】
なお、変形例13及び変形例14において、第1固定接点11が、接続片110とは別部材からなる場合、2以上の第1可動接点31が、1つの第1固定接点11と接続されてもよい。同様に、第2固定接点21が、接続片210とは別部材からなる場合、2以上の第2可動接点32が、1つの第2固定接点21と接続されてもよい。
【0205】
(2.4.6)
電路遮断装置100は、可動接点(第1可動接点)31と固定接点(第1固定接点)11とのうちの一方を第1接点、他方を第2接点として、第2接点を複数備えてもよい。電路遮断装置100では、1つの第1接点に対して、複数の第2接点が接続されてもよい。
【0206】
図24Aに、変形例15の電路遮断装置100の要部を示す。変形例15の電路遮断装置100は、可動接触子3の構造が、実施形態と相違する。変形例15におけるその他の構成は、実施形態の電路遮断装置100と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0207】
図24Aに示すように、可動接触子3は、2つの第1可動接点31と、2つの第2可動接点32と、を有している。2つの第1可動接点31の各々は、第1固定端子1の接続片110の下面(第1固定接点11)に接触する。2つの第2可動接点32の各々は、第2固定端子2の接続片210の下面(第2固定接点21)に接触する。つまり、本変形例では、1つの第1接点としての固定接点(第1固定接点)11に対して、2つの第2接点としての2つの可動接点(第1可動接点)31が接続される。
【0208】
このように、可動接触子3に複数の可動接点(第1可動接点)31を設け、固定端子(第1固定端子)1と可動接触子3との接続箇所を複数にすることで、各接続箇所での電磁反発力を低減することが可能となる。また、可動接触子3に複数の第2可動接点32を設け、第2固定端子2と可動接触子3との接続箇所を複数にすることで、各接続箇所での電磁反発力を低減することが可能となる。なお、
図24Bに示すように、可動接触子3は、第1可動接点31と第2可動接点32とのうちの一方(
図24Bの例では、第2可動接点32)のみを、複数備えていてもよい。また、本変形例では、可動接触子3は、電気絶縁性の保持体36に保持されているが、保持体36はなくてもよい。
【0209】
図25Aに、変形例16の電路遮断装置100の要部を示す。変形例16の電路遮断装置100は、第1固定端子1及び第2固定端子2の構造が、実施形態と相違する。変形例16におけるその他の構成は、実施形態の電路遮断装置100と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0210】
図25Aに示すように、第1固定端子1は、2つの第1固定接点11を有している。第2固定端子2は、2つの第2固定接点21を有している。本変形例では、例えば、各固定接点(第1固定接点11、第2固定接点21)は、第1固定端子1又は第2固定端子2とは別部材からなり、接続片110又は210に固定されて形成される。2つの固定接点(第1固定接点)11の各々は、可動接触子3の可動接点(第1可動接点)31に接触する。2つの第2固定接点21の各々は、可動接触子3の第2可動接点32に接触する。つまり、本変形例では、1つの第1接点としての可動接点(第1可動接点)31に対して、2つの第2接点としての2つの固定接点(第1固定接点)11が接続される。
【0211】
このように、固定端子(第1固定端子)1に複数の固定接点(第1固定接点)11を設け、固定端子(第1固定端子)1と可動接触子3との接続箇所を複数にすることで、各接続箇所での電磁反発力を低減することが可能となる。また、第2固定端子2に複数の第2固定接点21を設け、第2固定端子2と可動接触子3との接続箇所を複数にすることで、各接続箇所での電磁反発力を低減することが可能となる。なお、
図25Bに示すように、第1固定端子1と第2固定端子2とのうちの一方が、固定端子(第1固定端子1又は第2固定端子2)を複数備えていてもよい。
【0212】
なお、
図24Aに示すように固定端子(第1固定端子)1に複数の固定接点(第1固定接点)11が設けられ、
図25Aに示すように可動接触子3に複数の可動接点(第1可動接点)31が設けられ、複数の可動接点が複数の固定接点に接続されてもよい。この場合も、固定端子(第1固定端子)1と可動接触子3との接続箇所を複数にすることで、各接続箇所での電磁反発力を低減することが可能となる。第2可動接点32と第2固定接点21との関係も同様である。
【0213】
変形例15及び変形例16の電路遮断装置100においても、変形例13の場合と同様に、接点組の材料は適宜選択されてよい。
【0214】
(2.4.7)
可動接点(第1可動接点)31と、固定接点(第1固定接点)11との間の接圧を高めることで、可動接点31と固定接点11との接続状態の安定化を図ってもよい。
【0215】
図26A、
図26Bに、変形例17の電路遮断装置100の要部を示す。
図26Aは、変形例17の可動接触子3の正面図であり、
図26Bは、変形例17の電路遮断装置100において、固定端子1及び第2固定端子2間に可動接触子3を配置した部分を示す断面図である。なお、
図26Bではパイロアクチュエータ5等の図示を省略している。また、変形例17の電路遮断装置100におけるその他の構成は、実施形態と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0216】
図26Bに示すように、本変形例の電路遮断装置100では、可動接触子3は、第1可動接点31が第1固定接点11に接触し、第2可動接点32が第2固定接点21に接触するように、第1固定端子1と第2固定端子2との間に挟持(圧入)されている。これにより、可動接点31と固定接点11との接続状態の安定化を図ることができる。
【0217】
図27A、
図27Bに、変形例18の電路遮断装置100の要部を示す。
図27Aは、変形例18の可動接触子3の正面図であり、
図27Bは、変形例18の電路遮断装置100において、固定端子1及び第2固定端子2間に可動接触子3を配置した部分を示す断面図である。なお、
図27Bではパイロアクチュエータ5等の図示を省略している。また、変形例18の電路遮断装置100におけるその他の構成は、実施形態と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0218】
図27Bに示すように、本変形例の電路遮断装置100では、第1固定接点11と第1可動接点31とが対向する向きと、第2固定接点21と第2可動接点32とが対向する向きとが、反対向きである。これにより、可動接点31と固定接点11との間の接続をさらに安定化させることができる。
【0219】
なお、第1可動接点(可動接点)31は、第1固定接点(固定接点)11に溶着されていてもよい。また、第2可動接点32は、第2固定接点21に溶着されていてもよい。例えば、第1可動接点31が第1固定接点11に接触し第2可動接点32が第2固定接点21に接触した状態で、第1電極12-第2電極22間に電流(例えば2000A程度)を流すことで、接触する可動接点と固定接点とが溶着される。溶着によって、第1可動接点(可動接点)31と第1固定接点(固定接点)11との間の接触面(第2可動接点32と第2固定接点21との間の接触面)が大きくなり、接圧が向上する。
【0220】
(2.5)変形例19~変形例21
可動接触子3が移動する向きは、ピストン53が移動する向きと異なっていてもよい。つまり、可動接触子3が移動する向きは、ピストン53が移動する向きと交差する向きであってもよい。例えば、可動接触子3が移動する向きは、ピストン53が移動する向きと略直交する向きであってもよい。以下、この構成を備えた変形例について説明する。
【0221】
(2.5.1)
変形例19の電路遮断装置100について、
図28A~
図29を参照して説明する。
図28Aは、電路遮断装置100の要部の上方から見た断面図、
図28Bは、電路遮断装置100の要部の側方から見た断面図である。
図28Cは、本変形例のピストン53の斜視図である。
図29は、電路遮断装置100の要部の動作後の側方から見た断面図である。
【0222】
図28Aに示すように、本変形例の電路遮断装置100は、ハウジング7、点火器51、ケース52、ピストン53、固定端子(第1固定端子)1、第2固定端子2、可動接触子3、接圧ばね41(保持部4)を備えている。
【0223】
第1固定端子1及び第2固定端子2の各々は、左右方向(
図28Aの上下方向;
図28Bの紙面に垂直な方向)に長い矩形の板状に形成されている。第1固定端子1と第2固定端子2とは、左右方向に並ぶように配置されている。第1固定端子1の先端部(
図28Aの下端部)に、第1固定接点(固定接点)11が設けられている。第2固定端子2の先端部(
図28Bの上端部)に、第2固定接点21が設けられている。
【0224】
可動接触子3は、左右方向に長い板状に形成されている。可動接触子3は、長手方向の第1端(
図28Aの上端)に第1可動接点(可動接点)31を有し、第2端(
図28Aの下端)に第2可動接点32を有している。第1可動接点31が第1固定接点11と対向し、かつ第2可動接点32が第2固定接点21と対向するように、第1固定端子1、第2固定端子2及び可動接触子3が配置されている。
【0225】
接圧ばね41は、可動接触子3が、第1固定端子1及び第2固定端子2に向かうように、可動接触子3を後方(
図28Aの右向き)に付勢している。つまり、接圧ばね41は、第1可動接点31が第1固定接点11と接続され、第2可動接点32が第2固定接点21と接続される向きに、可動接触子3を付勢している。
【0226】
点火器51は、ケース52に収容されている。ケース52は、可動接触子3の上方に配置されている。本変形例のケース52は、円筒状に形成されている。ケース52の上面には、点火器51のピン電極514を露出させるための開口が形成されている。ケース52の下面には、点火器51の燃焼部513で発生したガスを放出するための孔が形成されている。ケース52の内部において点火器51の下方には、空間(加圧室520)が形成されている。
【0227】
ピストン53は、上下方向において、ケース52(点火器51)と可動接触子3との間に配置されている。ピストン53は、板部537と楔部538とを有している。板部537は、左右方向に長さを有する矩形板状であって、ピストン53の上端に位置する。楔部538は、いわゆる楔形であって、その断面形状が、長方形の下側に直角三角形が繋がった台形状である。楔部538は、板部537の下面の前側の部分(
図28Bの左側の部分)から、下方に突出している。楔部538は、前面(
図28Bの左側の面)の下側部分に、後方に傾斜した傾斜面を有している。つまり、楔部538は、下方に向かう程厚さ(
図28Bの左右方向の寸法)が小さくなる柱状に形成されている。ピストン53の下端(楔部538の先端)は、前後方向(
図28Bの左右方向)において、可動接触子3と第1固定端子1(第2固定端子2)との間に位置している。
【0228】
ハウジング7は、内部空間(収容室70)を有する矩形箱状に形成されている。ハウジング7の内部空間に、固定端子(第1固定端子)1の先端部、第2固定端子2の先端部、可動接触子3、接圧ばね41、ケース52、及びピストン53が収容されている。
【0229】
ハウジング7の内部空間は、第1空間~第4空間を含む。
【0230】
第1空間は、上下に長い円柱状の空間である。第1空間内には、第1空間の上側の開口を塞ぐように、ケース52が配置されている。
【0231】
第2空間は、第1空間の下方に位置し、上下に長い直方体状の空間である。第2空間内には、ピストン53が、その上面(板部537の上面)がケース52の孔に対向するように、配置されている。上下方向と直交する平面において、第2空間の断面形状は、ピストン53の板部537の形状と同じである。つまり、ピストン53は、ハウジング7の第2空間を塞ぐように、第2空間内に配置されている。
【0232】
第3空間は、第2空間の下方に位置し、左右に長い直方体状の空間である。第3空間内には、可動接触子3、第1固定端子1の先端部(第1固定接点11を含む)、及び第2固定端子2の先端部(第2固定接点21を含む)が配置されている。
【0233】
第4空間は、第3空間の前方に位置し、前後に長い円柱状の空間である。第4空間内には、接圧ばね41が配置されている。
【0234】
本変形例では、点火器51でガスが発生すると、加圧室520内の圧力が上昇し、この上昇した圧力によってピストン53が下方に押される。ピストン53は、下方に移動するにつれて、楔部538が可動接触子3と第1固定端子1との間(及び、可動接触子3と第2固定端子2との間)に入り込み、可動接触子3を前方(
図28Bの左向き)に押す(
図29参照)。これにより、第1可動接点31が第1固定接点11から引き離され、第2可動接点32が第2固定接点21から引き離される。移動後のピストン53は、可動接触子3と固定端子1との間に、物理的に介在することになる。なお、本変形例では、可動接触子3が移動する向き(前向き)は、ピストン53が移動する向き(下向き)と直交している。
【0235】
本変形例においては、ピストン53の板部537の上面が、加圧室520内の圧力をうける第1端531であり、ピストン53の楔部538が、可動接触子3を押す第2端532である。
【0236】
本変形例でも、点火器51で発生するガスのエネルギーを用いて、可動接触子3を固定端子(第1固定端子)1に対して移動させることによって、電路を遮断している。したがって、接点間で発生するアークは、可動接触子3の移動速度と同程度の速度で、急速に引き延ばされて消弧される。これにより、電路遮断装置100は、アークを短時間で消弧させることが可能となり、電流の遮断性能を向上させることが可能となる。
【0237】
なお、ピストン53の長さ(
図28Bの紙面に垂直な方向の寸法)は、第1固定接点11と第2固定接点21との間の距離よりも長いことが好ましく、可動接触子3の長さと同等であることが好ましい。この場合、ピストン53が下方に移動すると、板部537の下面の後側が第1固定端子1及び第2固定端子2の上面に接触して、ピストン53の下方へのさらなる移動が阻止される(
図29参照)。これにより、ピストン53を、可動接触子3と第1固定端子1及び第2固定端子2との間の位置に、保持させることが可能となる。
【0238】
また、ピストン53の形状は、
図28Cの形状に限られず、例えば楔部538のみを備えていてもよい。或いは、楔部538の前後の両面に、下方に向かうにつれて互いに近づくように傾斜する傾斜面を備えていてもよい、また、ピストン53は、三角柱状に形成されていてもよい。もちろん、これらの形状以外の形状であってもよい。
【0239】
本変形例の電路遮断装置100においても、実施形態と同様に、第1ヨーク61、第2ヨーク62、戻り止め機構等を、適宜備えていてもよい。
【0240】
(2.5.2)
変形例20の電路遮断装置100について、
図30A~
図31を参照して説明する。
図30Aは、電路遮断装置100の要部の上方から見た断面図、
図30Bは、電路遮断装置100の要部の側方から見た断面図である。
図30Cは、本変形例のピストン53の斜視図である。
図31は、電路遮断装置100の要部の動作後の側方から見た断面図である。本変形例の電路遮断装置100において、変形例19と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0241】
本変形例の電路遮断装置100は、並列に配置された2つの可動接触子3(第1可動接触子301、第2可動接触子302)を備えている。2つの可動接触子3が移動する向きは、互いに異なっている。
【0242】
図30Aに示すように、2つの可動接触子3(第1可動接触子301、第2可動接触子302)の各々は、左右方向(
図30Aの上下方向;
図30Bの紙面に垂直な方向)に長い板状である。各可動接触子3は、左端部(
図30Aの上端部)の一面に第1可動接点31を有し、右端部(
図30Aの下端部)の一面に第2可動接点32を有している。具体的には、
図30Aに示すように、第1可動接触子301は、左端部の後面(
図30Aの右面)に第1可動接点311を有し、右端部の後面に第2可動接点312を有している。第2可動接触子302は、左端部の前面(
図30Aの左面)に第1可動接点321を有し、右端部の前面に第2可動接点322を有している。
【0243】
また、第1固定端子1の先端部の前面には、第1可動接触子301の第1可動接点311に接続される第1固定接点111(11)が設けられている。第1固定端子1の先端部の後面には、第2可動接触子302の第1可動接点321に接続される第1固定接点112(11)が設けられている。第2固定端子2の先端部の前面には、第1可動接触子301の第2可動接点312に接続される第2固定接点211(21)が設けられている。第2固定端子2の先端部の後面には、第2可動接触子302の第2可動接点322に接続される第2固定接点212(21)が設けられている。
【0244】
第1可動接触子301とハウジング7との間には、接圧ばね41(第1接圧ばね411)が設けられている。第1接圧ばね411は、第1可動接触子301を後方(
図30Aの右向き)に付勢している。つまり、第1可動接触子301は、第1接圧ばね411によって、第1可動接点311が第1固定接点111に接続され、第2可動接点312が第2固定接点211に接続される向きに、付勢されている。
【0245】
第2可動接触子302とハウジング7との間には、接圧ばね41(第2接圧ばね412)が設けられている。第2接圧ばね412は、第2可動接触子302を前方(
図30Aの左向き)に付勢している。つまり、第2可動接触子302は、第2接圧ばね412によって、第1可動接点321が第1固定接点112に接続され、第2可動接点322が第2固定接点212に接続される向きに、付勢されている。
【0246】
第1接圧ばね411と第2接圧ばね412とは、対応する可動接触子3を、互いに反対向きに付勢している。第1接圧ばね411と第2接圧ばね412とは、対応する可動接触子3を、可動接触子3同士が近づく向きに付勢している。
【0247】
本変形例のピストン53は、板部537と第1楔部5381と第2楔部5382とを有している。板部537は、左右方向に長さを有する矩形板状であって、ピストン53の上端に位置する。第1楔部5381は、いわゆる楔形である。第1楔部5381は、板部537の下面の前側の部分(
図30Bの左側の部分)から、下方に突出している。第1楔部5381は、前面(
図30Bの左側の面)の下側部分に、後方に傾斜した傾斜面を有している。つまり、第1楔部5381は、下方に向かう程厚さ(
図30Bの左右方向の寸法)が小さくなる柱状に形成されている。第1楔部5381の先端は、前後方向(
図30Bの左右方向)において、第1可動接触子301と第1固定端子1(第2固定端子2)との間に位置している。第2楔部5382は、いわゆる楔形である。第2楔部5382は、板部537の下面の後側の部分(
図30Bの右側の部分)から、下方に突出している。第2楔部5382は、後面(
図30Bの右側の面)の下側部分に、前方に傾斜した傾斜面を有している。つまり、第2楔部5382は、下方に向かう程厚さ(
図30Bの左右方向の寸法)が小さくなる柱状に形成されている。第2楔部5382の先端は、前後方向(
図30Bの左右方向)において、第2可動接触子302と第1固定端子1(第2固定端子2)との間に位置している。
【0248】
点火器51及びケース52は、変形例19の電路遮断装置100と同様である。
【0249】
固定端子(第1固定端子)1の先端部、第2固定端子2の先端部、第1可動接触子301、第2可動接触子302、第1接圧ばね411、第2接圧ばね412、ケース52、及びピストン53は、ハウジング7の内部空間に収容されている。
【0250】
本変形例では、点火器51でガスが発生すると、加圧室520内の圧力が上昇し、この上昇した圧力によってピストン53が下方に押される。ピストン53は、下方に移動するにつれて、第1楔部5381が第1可動接触子301と第1固定端子1との間(及び、第1可動接触子301と第2固定端子2との間)に入り込み、第1可動接触子301を前方(
図30Bの左向き)に押す。これにより、第1可動接点311が第1固定接点111から引き離され、第2可動接点312が第2固定接点211から引き離される。また、ピストン53は、下方に移動するにつれて、第2楔部5382が第2可動接触子302と第1固定端子1との間(及び、第2可動接触子302と第2固定端子2との間)に入り込み、第2可動接触子302を後方(
図30Bの右向き)に押す(
図31参照)。これにより、第1可動接点321が第1固定接点112から引き離され、第2可動接点322が第2固定接点212から引き離される。
【0251】
本変形例でも、可動接触子3が移動する向き(前向き及び後向き)は、ピストン53が移動する向き(下向き)と直交している。また、本変形例において、2つの可動接触子3(第1可動接触子301及び第2可動接触子302)が移動する向きは、互いに異なっている。特に、本変形例では、2つの可動接触子3は、ピストン53に押されて互いに離れる向きに移動する。
【0252】
本変形例の電路遮断装置100でも、可動接点31を固定接点11から急速に引き離すことで、アークを短時間で消弧させることが可能となり、電流の遮断性能を向上させることが可能となる。
【0253】
また、本変形例の電路遮断装置100では、2つの可動接触子3は、並列に配置されている。2つの可動接触子3は、可動接点31と固定接点11とが対向する方向(
図30Aの左右方向)において、固定端子1を挟むように配置されている。そして、2つの可動接触子3(第1可動接触子301及び第2可動接触子302)に、同じ向きの電流が流れる。例えば、第1固定端子1が第2固定端子2よりも高電位の場合、各可動接触子3には、第1固定端子1から第2固定端子2に向かう向きの電流が流れる。
【0254】
上記の構成により、一方の可動接触子3に流れる電流には、他方の可動接触子3に流れる電流によって発生する磁界によって、他方の可動接触子3に向かう向きのローレンツ力がかかる。したがって、本変形例では、電磁反発力に対して、第1可動接点31と第1固定接点11との接続状態の安定化及び第2可動接点32と第2固定接点21との接続状態を図ることが可能となる。
【0255】
(2.5.3)
変形例21の電路遮断装置100について、
図32A~
図33を参照して説明する。
図32Aは、電路遮断装置100の要部の上方から見た断面図、
図32Bは、電路遮断装置100の要部の側方から見た断面図である。
図33は、電路遮断装置100の要部の動作後の側方から見た断面図である。本変形例の電路遮断装置100において、変形例19と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0256】
本変形例の電路遮断装置100は、可動接触子3と別体であって可動接触子3と直列に接続される追加可動接触子9を備えている。可動接触子3と追加可動接触子9とは、並列に配置されている。可動接触子3が移動する向きと追加可動接触子9が移動する向きとは、互いに異なっている。本変形例では、可動接触子3が移動する向きと追加可動接触子9が移動する向きとが、互いに反対向きである。
【0257】
図32Aに示すように、本変形例の電路遮断装置100は、第1固定端子1と、第2固定端子2と、第3固定端子38と、可動接触子3と、追加可動接触子9と、を備えている。
【0258】
第1固定端子1及び第3固定端子38の各々は、左右方向(
図30Aの上下方向;
図30Bの紙面に垂直な方向)に長い矩形の板状に形成されている。第2固定端子2は、上面視(
図28Aの紙面に垂直な方向から見て)略C字状に形成されている。
【0259】
第1固定端子1の先端部(
図32Aの上端部)の一面(右面)に、第1固定接点(固定接点)11が設けられている。第2固定端子2の一端(
図32Aの左端)の一面(
図32Aの右面)に、第2固定接点21が設けられている。第1固定接点11と第2固定接点21とは、左右方向(
図32Aの上下方向)に並んで配置されている。
【0260】
第2固定端子2の他端(
図32Aの右端)の面(
図32Aの右面)に、第3固定接点23が設けられている。第3固定端子38の先端部(
図32Aの上端部)の一面(左面)に、第4固定接点381が設けられている。第3固定接点23と第4固定接点381とは、左右方向(
図32Aの上下方向)に並んで配置されている。
【0261】
可動接触子3は、左右方向に長い板状に形成されている。可動接触子3は、長手方向の第1端(
図32Aの下端)に第1可動接点(可動接点)31を有し、第2端(
図32Aの上端)に第2可動接点32を有している。第1可動接点31が第1固定接点11と対向し、かつ第2可動接点32が第2固定接点21と対向するように、第1固定端子1、第2固定端子2及び可動接触子3が配置されている。
【0262】
追加可動接触子9は、左右方向に長い板状に形成されている。追加可動接触子9は、長手方向の第1端(
図32Aの上端)に第3可動接点91を有し、第2端(
図32Aの下端)に第4可動接点92を有している。第3可動接点91が第3固定接点23と対向し、かつ第4可動接点92が第4固定接点381と対向するように、第2固定端子2、第3固定端子38及び追加可動接触子9が配置されている。
【0263】
可動接触子3と追加可動接触子9は、第2固定端子2を介して電気的に直列に接続されている。
【0264】
可動接触子3と追加可動接触子9とは、互いに平行に配置されている。ハウジング7の底面の中央には、可動接触子3及び追加可動接触子9と平行に、壁75が形成されている。
【0265】
可動接触子3と壁75との間には、2つの接圧ばね41(第1接圧ばね411)が設けられている。2つの第1接圧ばね411は、可動接触子3を前方(
図32Aの左向き)に付勢している。つまり、第1可動接触子301は、2つの第1接圧ばね411によって、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続される向きに、付勢されている。
【0266】
追加可動接触子9と壁75との間には、2つの接圧ばね41(第2接圧ばね412)が設けられている。2つの第2接圧ばね412は、追加可動接触子9を後方(
図32Aの右向き)に付勢している。つまり、追加可動接触子9は、2つの第2接圧ばね412によって、第3可動接点91が第3固定接点23に接続され、第4可動接点92が第4固定接点381に接続される向きに、付勢されている。
【0267】
第1接圧ばね411と第2接圧ばね412とは、可動接触子3と追加可動接触子9とを、互いに反対向きに付勢している。第1接圧ばね411と第2接圧ばね412とは、可動接触子3と追加可動接触子9とを、可動接触子3と追加可動接触子9とが離れる向きに付勢している。
【0268】
本変形例のピストン53は、板部537と第1楔部538と第2楔部539とを有している。板部537は、前後方向に長さを有する矩形板状であって、ピストン53の上端に位置する。第1楔部538は、いわゆる楔形であって、その断面形状が直角三角形状である。第1楔部538は、板部537の下面の前側の部分(
図32Bの左側の部分)から、下方に突出している。第1楔部538は、後面(
図32Bの右側の面)に、前方に傾斜した傾斜面を有している。つまり、第1楔部538は、下方に向かう程厚さ(
図32Bの左右方向の寸法)が小さくなる柱状に形成されている。第1楔部538の先端は、前後方向(
図32Bの左右方向)において、可動接触子3と第1固定端子1(第2固定端子2)との間に位置している。第2楔部539は、いわゆる楔形であって、その断面形状が直角三角形状である。第2楔部539は、板部537の下面の後側の部分(
図32Bの右側の部分)から、下方に突出している。第2楔部539は、前面(
図32Bの左側の面)に、後方に傾斜した傾斜面を有している。つまり、第2楔部539は、下方に向かう程厚さ(
図32Bの左右方向の寸法)が小さくなる柱状に形成されている。第2楔部539の先端は、前後方向(
図32Bの左右方向)において、追加可動接触子9と第2固定端子2(第3固定端子38)との間に位置している。
【0269】
第1固定端子1の先端部、第2固定端子2、第3固定端子38の先端部、可動接触子3、追加可動接触子9、第1接圧ばね411、第2接圧ばね412、ケース52、及びピストン53は、ハウジング7の内部空間に収容されている。なお、点火器51及びケース52は、ピストン53の上面の中央と対向するように、ハウジング7内に配置されている。
図32B及び
図33では、点火器51及びケース52を、想像線で示している。
【0270】
本変形例では、点火器51でガスが発生すると、加圧室520内の圧力が上昇し、この上昇した圧力によってピストン53が下方に押される。ピストン53は、下方に移動するにつれて、第1楔部538が可動接触子3と第1固定端子1との間(及び、可動接触子3と第2固定端子2との間)に入り込み、可動接触子3を後方(
図32Bの右向き)に押す。これにより、第1可動接点31が第1固定接点11から引き離され、第2可動接点32が第2固定接点21から引き離される。また、ピストン53は、下方に移動するにつれて、第2楔部539が追加可動接触子9と第2固定端子2との間(及び、追加可動接触子9と第3固定端子38との間)に入り込み、追加可動接触子902を前方(
図32Bの左向き)に押す(
図33参照)。これにより、第3可動接点91が第3固定接点23から引き離され、第4可動接点92が第4固定接点381から引き離される。
【0271】
本変形例でも、可動接触子3が移動する向き(後向き)は、ピストン53が移動する向き(下向き)と直交している。また、本変形例において、可動接触子3と追加可動接触子9とが移動する向きは、互いに異なっている。特に、変形例では、可動接触子3と追加可動接触子9とは、ピストン53に押されて、互いに近づく向きに移動する。
【0272】
本変形例の電路遮断装置100でも、可動接点31を固定接点11から急速に引き離すことで、アークを短時間で消弧させることが可能となり、電流の遮断性能を向上させることが可能となる。
【0273】
また、本変形例の電路遮断装置100では、可動接触子3と追加可動接触子9とは、並列に配置されている。可動接触子3は、可動接点31と固定接点11とが対向する方向(
図30Aの左右方向)において、追加可動接触子9と固定接点1との間に位置する。そして、追加可動接触子9を流れる電流の向きが、可動接触子3を流れる電流の向きと反対である。例えば、第1固定端子1が第3固定端子38よりも高電位である場合、可動接触子3には、第1可動接点31から第2可動接点32に向かう向きの電流が流れ、追加可動接触子9には、第3可動接点91から第4可動接点92に向かう向きの電流が流れる。
【0274】
上記の構成により、可動接触子3に流れる電流には、追加可動接触子9に流れる電流によって発生する磁界によって、追加可動接触子9から離れる向きのローレンツ力がかかる。したがって、本変形例では、電磁反発力に対して、第1可動接点31と第1固定接点11との接続状態の安定化、及び第2可動接点32と第2固定接点21との接続状態の安定化を図ることが可能となる。
【0275】
要するに、追加可動接触子9を、変形例10の電路遮断装置100における電路片(第4電路片1404,2404)として機能させることができる。
【0276】
また、可動接触子3と同様、追加可動接触子9に流れる電流には、可動接触子3に流れる電流によって発生する磁界によって、可動接触子3から離れる向きのローレンツ力がかかる。これにより、電磁反発力に対して、第3可動接点91と第3固定接点23との接続状態の安定化、及び第4可動接点92と第4固定接点381との接続状態の安定化を図ることが可能となる。
【0277】
さらに、可動接触子3と第1固定接点11、第2固定接点21との2つの接点(可動接点と固定接点との2つの接点組)と、追加可動接触子9と第3固定接点23、第4固定接点381との2つの接点が、電気的に直列に接続されている。すなわち、第1固定端子1と第3固定端子23間の電流経路において、電気的に直列に接続された4つの接点(接点組)からそれぞれ接点間にアークが生じることになる。これにより遮断性能を高めることができる。
【0278】
(2.6)変形例22、変形例23
電路遮断装置100は、磁束発生部8を備えていてもよい。磁束発生部8は、第1可動接点(可動接点)31と第1固定接点(固定接点)11との間(第2可動接点32と第2固定接点21との間)に生じるアークを引き延ばす磁束を収容室70内に発生させる。
【0279】
図34、
図35は、磁束発生部8としての2つの消弧用磁石81,82を備えた変形例22の電路遮断装置100を示している。なお、変形例22の電路遮断装置100は、磁束発生部8として、2つのカプセルヨーク83,84を更に備えている。
図34は、変形例22の電路遮断装置100の斜視図であり、
図35は、消弧用磁石81,82でアークを引き延ばすことを説明するための図である。
【0280】
カプセルヨーク83,84は、強磁性体であって、例えば、鉄等の金属材料で形成されている。カプセルヨーク83,84は、消弧用磁石81,82を保持している。カプセルヨーク83,84は、左右方向の両側からハウジング7を囲むように、ハウジング7に対して左右方向の両側に配置されている。
【0281】
消弧用磁石81,82は、前後方向において互いに異極(S極とN極と)が対向するように配置されている。消弧用磁石81,82は、ハウジング7に対して前後方向の両側に配置されている。消弧用磁石81,82は、可動接触子3が第1固定端子1及び第2固定端子2から離れる際に、第1可動接点31と第1固定接点11との間及び第2可動接点32と第2固定接点21との間で発生するアークを引き延ばす。カプセルヨーク83,84は、消弧用磁石81,82ごとハウジング7を囲んでいる。言い換えれば、消弧用磁石81,82は、ハウジング7の前後方向の側面とカプセルヨーク83,84との間に挟まれている。一方(前方)の消弧用磁石81は、前後方向における一面(前端面)がカプセルヨーク83,84の一端部と結合し、前後方向における他面(後端面)がハウジング7と接触している。他方(後方)の消弧用磁石82は、前後方向における一面(後端面)がカプセルヨーク83,84の他端部と結合し、前後方向における他面(前端面)がハウジング7と接触している。
【0282】
本実施形態では、消弧用磁石81,82は、上下方向において第1固定接点11及び第2固定接点21と重なる位置に配置されている。つまり、消弧用磁石81と消弧用磁石82との間に生じる磁界内に、第1固定接点11と第1可動接点31との接触点、及び第2固定接点21と第2可動接点32との接触点が含まれることになる。
【0283】
この構成によれば、
図35に示すように、カプセルヨーク83は、一対の消弧用磁石81,82で発生する磁束φ1が通る磁気回路の一部を形成する。同様に、カプセルヨーク84は、一対の消弧用磁石81,82で発生する磁束φ1が通る磁気回路の一部を形成する。これらの磁束φ1は、第1固定接点11と第1可動接点31との接触点、及び第2固定接点21と第2可動接点32との接触点に作用する。
【0284】
図35の例では、ハウジング7の内部空間においては、前向きの磁束φ1が生じており、第1固定端子1から第2固定端子2に向かって電流I1が流れる場合を想定する。この状態で、可動接触子3が下方へ移動して第1固定端子1及び第2固定端子2から引き離されると、第1固定接点11と第1可動接点31との間には、第1固定接点11から第1可動接点31に向けて下向きの放電電流(アーク)が生じる。したがって、磁束φ1によりアークには左向きのローレンツ力F2が作用する(
図35参照)。つまり、第1固定接点11と第1可動接点31との間に発生するアークは、左方に引き延ばされて消弧する。一方、第2固定接点21と第2可動接点32との間には、第2可動接点32から第2固定接点21に向けて上向きの放電電流(アーク)が生じる。したがって、磁束φ1によりアークには右向きのローレンツ力F3が作用する(
図35参照)。つまり、第2固定接点21と第2可動接点32との間に発生するアークは、右方に引き延ばされて消弧する。
【0285】
本変形例では、消弧用磁石81,82によって、第1可動接点31と第1固定接点11との間(第2可動接点32と第2固定接点21との間)に生じるアークを、さらに引き延ばして消弧することができる。
【0286】
なお、変形例22の電路遮断装置100は、磁気回路を形成して接点間に生じる磁束を強めるためにカプセルヨーク83,84を備えているが、カプセルヨーク83,84は必ずしも必要ではない。また、消弧用磁石81,82は、同極(S極同士、又はN極同士)が対向するように配置されてもよい。
【0287】
図36に示す変形例23のように、磁束発生部8は、電流I2が流れる電路片85を備えていてもよい。電路片85は、ハウジング7の左側面に沿って配置され下方へ向かって電流I2が流れる電路片851と、ハウジング7の右側面に沿って配置され上方へ向かって電流I2が流れる電路片852と、を備える。つまり、電路片851を流れる電流I2の向きは、第1固定接点11から第1可動接点31に向かって流れる電流I1の向きと同じである。また、電路片852を流れる電流I2の向きは、第2可動接点32から第2固定接点21に向かって流れる電流I1の向きと同じである。これにより、ハウジング7の内部空間においては、
図35の例と同様に前向きの磁束φ1が生じる。そして、第1固定接点11と第1可動接点31との間に発生するアークは、左方に引き延ばされて消弧する。また、第2固定接点21と第2可動接点32との間に発生するアークは、右方に引き延ばされて消弧する。
【0288】
このように、電路片85を流れる電流I2によって発生する磁界によって、第1可動接点31と第1固定接点11との間(第2可動接点32と第2固定接点21との間)に生じるアークを、さらに引き延ばして消弧することができる。
【0289】
なお、電路片85は、第1電極12又は第2電極22と結合されてもよい。つまり、電路片85を流れる電流I2は、電路遮断装置100内を流れる電流I1と同じであってもよい。例えば、電路片851の上端が、ハウジング7の周りでハウジング7から離れて引き回されて、第2電極22に結合されていてもよい。または、電路片852の上端が、ハウジング7の周りでハウジング7から離れて引き回されて、第1電極12に結合されていてもよい。
【0290】
(2.7)変形例24
変形例24の電路遮断装置100について、
図37を参照して説明する。変形例24の電路遮断装置100は、消弧材80を備えている。消弧材80は、第1可動接点(可動接点)31及び第1固定接点(固定接点)11(第2可動接点32及び第2固定接点21)と同一の空間(収容室70)に配置されている。消弧材80は、第1可動接点(可動接点)31と第1固定接点(固定接点)11との間(第2可動接点32と第2固定接点21との間)に生じるアークの消弧を促進する。
【0291】
消弧材80は、例えば、消弧ガス発生部材86、ガス87、消弧体88のうちの少なくとも一つを備える。消弧ガス発生部材86は、加熱されることによって収容室70に消弧ガスを放出する。ガス87は、消弧性を有し、収容室70内に封入されている。ガス87は、消弧性を有する液体であってもよい。消弧体88は、アークに接触することによってアークを消弧する。
【0292】
消弧ガスは、例えば、収容室70内に放出されることによって、(真空/空気中に比べて)アークの電界強度(単位長さ当たりの電圧)を増加させる。これにより、ある一定電圧がアークの両端にかかっているときに存在し得るアークの長さを短くし、アークの消弧を促進する。消弧ガスは、例えば水素である。
【0293】
消弧ガス発生部材86は、例えば、水素を吸蔵した水素吸蔵合金(メタルハイドライド)で構成されている。消弧ガス発生部材86は、例えば、加熱されることによって貯蔵している水素(消弧ガス)を放出する。水素吸蔵合金で構成される消弧ガス発生部材86は、
図37に示すように、第1可動接点31及び第1固定接点11の近傍に位置するように、ハウジング7の左壁の内面に設けられている。また、水素吸蔵合金で構成される消弧ガス発生部材86は、第2可動接点32及び第2固定接点21の近傍に位置するように、ハウジング7の右壁の内面に設けられている。
【0294】
例えば、可動接触子3がパイロアクチュエータ5のピストン53に押されて下方に移動したときに、第1固定接点11-第1可動接点31間にアークが発生すると、アークの熱が、ハウジング7内の気体を介して消弧ガス発生部材86に伝えられる。これにより消弧ガス発生部材86が加熱され、消弧ガス発生部材86から消弧ガス(水素)が放出される。この消弧ガスにより、アークの電界強度を増加させ、またアークを急速に冷却して、迅速に消弧することが可能となる。また、消弧ガス発生部材86は、第1可動接点31及び第1固定接点11の近傍に配置されているので、消弧ガス発生部材86から勢いよく放出される消弧ガスがアークに吹き付けられることでも、アークを消弧することができる。
【0295】
なお、消弧ガスの成分は水素に限定されず、窒素などで構成されていてもよい。消弧ガス発生部材86を構成する材料は、水素吸蔵合金に限定されず、加熱されることによって消弧ガスを放出する材料であればよい。消弧ガス発生部材86を構成する材料は、例えば、フェノール樹脂・水酸化マグネシウムが混入されたナイロン樹脂等の樹脂材料、水素吸蔵金属・水素化チタン等の金属材料、ホウ酸等の無機物であってもよい。
【0296】
ハウジング7の内壁が、消弧ガス発生部材86を兼ねていてもよい。言い換えれば、内筒体71が、加熱されることによって消弧ガスを放出する樹脂材料によって形成されていてもよい。
【0297】
消弧材80としてのガス87は、消弧ガスである。ガス87は、収容室70内に封入されている。消弧ガスとしては、例えば上記の水素、SF6(六フッ化硫黄)等である。ガス87の代わりに、消弧性を有する液体が収容室70内に封入されていてもよい。消弧性を有する液体は、例えば、シリコンオイル等のオイルである。
【0298】
消弧材80としての消弧体88は、例えば、珪砂等の消弧性を有する消弧砂を接着剤等で固めた固化物である。固化物からなる消弧体88は、例えば、第1可動接点31及び第1固定接点11の近傍に位置するように、ハウジング7の左壁の内面に設けられている。また、固化物からなる消弧体88は、第2可動接点32及び第2固定接点21の近傍に位置するように、ハウジング7の右壁の内面に設けられている。例えば、第1可動接点31と第1固定接点11との間にアークが発生すると、アークによって発生した磁束により、アークは消弧体88に向かって引き延ばされる。消弧体88は、引き延ばされたアークに接触することによって、アークを消弧する。
【0299】
消弧体88は、変形例22の消弧用磁石81,82、変形例23の電路片85のうちの少なくとも一方と同時に用いられるのがより好ましい。消弧用磁石81,82、電路片85によって側方に引き延ばされたアークが、消弧体88と接触することによって、アークの消弧がより促進される。
【0300】
なお、消弧体88は、金属板からなる消弧グリッドを複数備える消弧装置であってもよい。消弧装置は、例えば、周知の回路遮断器と同様のものが用いられてもよい。
【0301】
(2.8)変形例25
変形例25の電路遮断装置100について、
図38A、
図38Bを参照して説明する。変形例25の電路遮断装置100は、第1電極12と第2電極22との間を繋ぐ電路に、可動接触子と固定端子との組を複数備えている。
【0302】
具体的には、変形例25の電路遮断装置100は、複数の可動接触子3(第1可動接触子301及び第2可動接触子302)を備えており、また、第1固定端子1及び第2固定端子2に加えて第3固定端子38を備えている。また、変形例25の電路遮断装置100は、第2固定端子2の構造が、実施形態と相違している。変形例25において実施形態の電路遮断装置100と同様の構成については、図示及び詳しい説明は省略する。
【0303】
図38A、
図38Bに示すように、変形例25の電路遮断装置100は、第1固定端子1と、第2固定端子2と、第1可動接触子301と、第2可動接触子302と、電気絶縁性の保持体36と、第3固定端子38と、を備えている。
【0304】
図38Aに示すように、本変形例における第1固定端子1の形状は、実施形態の第1固定端子1と同様である。つまり、本変形例における第1固定端子1は、接続片110、電極片120、連結片130、電路片140を備えており、電極片120が第1電極12として機能する。第1固定端子1は、電極片120がハウジング7の左壁から外部に露出し、連結片130の下端部と接続片110とがハウジング7の内部空間(収容室70)内に収容された状態で、ハウジング7の左壁に固定されている。
【0305】
本変形例における第2固定端子2は、実施形態とは異なり、電極片220及び電路片240を備えていない。第2固定端子2の接続片210の前後方向の寸法は、第1可動接触子301の前後方向の寸法及び第2可動接触子302の前後方向の寸法を合わせた長さよりも、長い。第2固定端子2は、連結片230の下端部と接続片210とがハウジング7の内部空間(収容室70)内に収容された状態で、ハウジング7の右壁に固定されている。
【0306】
第3固定端子38は、導電性の金属材料からなる。第3固定端子38は、第1固定端子1と同様の形状を有している。第3固定端子38は、接続片3810、電極片3820、連結片3830、電路片3840を一体に備えている。第3固定端子38は、第1固定端子1と並ぶように、ハウジング7の左壁に配置されている。第3固定端子38は、電極片3820がハウジング7の左壁から外部に露出し、連結片3830の下端部と接続片3810とがハウジング7の内部空間(収容室70)内に収容された状態で、ハウジング7の左壁に固定されている。電極片3820は、外部の電気回路の第2端に接続される第2電極22として機能する。
【0307】
第1可動接触子301及び第2可動接触子302の各々は、導電性を有する金属材料からなる板状の部材であって、左右方向に長く形成されている。第1可動接触子301及び第2可動接触子302は、互いに平行に配置されている。
【0308】
第1可動接触子301は、その長手方向の第1端(左端部)に第1可動接点31を有し、第2端(右端部)に第2可動接点32を有する。第1可動接触子301は、その長手方向(左右方向)の両端部を接続片110及び接続片210に対向させるように、第1固定端子1及び第2固定端子2の下方に配置されている。第1固定端子1(の接続片110)の下面において、第1可動接点31に接触する部分が、第1固定接点11である。第2固定端子2(の接続片210)の下面において、第2可動接点32に接触する部分が、第2固定接点21である。
【0309】
第2可動接触子302は、その長手方向の第1端(右端部)に第3可動接点33を有し、第2端(左端部)に第4可動接点34を有する。第2可動接触子302は、その長手方向(左右方向)の両端部を接続片210及び接続片3810に対向させるように、第2固定端子2及び第3固定端子38の下方に配置されている。第2固定端子2(の接続片210)の下面において、第3可動接点33に接触する部分が、第3固定接点23である。第3固定端子38(の接続片3810)の下面において、第4可動接点34に接触する部分が、第4固定接点381である。
【0310】
保持体36は、樹脂等の絶縁材料から前後方向に延びる直方体状に形成されている。保持体36は、第1可動接触子301及び第2可動接触子302を保持している。保持体36の後端部(
図38Bの上端部)における上下方向の中央を、第1可動接触子301が貫通し、保持体36の前端部(
図38Bの下端部)における上下方向の中央を、第2可動接触子302が貫通している。保持体36の上面は、パイロアクチュエータ5のピストン53の第2端532と対向している。保持体36の下面には、接圧ばね41の第2端412を受ける嵌合凹部360が形成されている。
【0311】
変形例25の電路遮断装置100では、保持体36がピストン53に押されると、複数の可動接点(第1可動接点31~第4可動接点34)が、(ほぼ)同時に複数の固定接点(第1固定接点~第4固定接点)から引き離される。具体的には、変形例25の電路遮断装置100は、点火器51で発生したガスの圧力に連動して、第1可動接触子301及び第2可動接触子302が、収容室70内で第1固定端子1、第2固定端子2及び第3固定端子38に対して移動される。これにより、第1可動接点31が第1固定接点11から引き離され、第2可動接点32が第2固定接点21から引き離され、第3可動接点33が第3固定接点23から引き離され、第4可動接点34が第4固定接点381から引き離される。
【0312】
このように、本変形例の電路遮断装置100は、直列接続された複数(4つ)の接点組(可動接点と固定接点との組)を備え、複数の接点組が(ほぼ)同時に開かれる。この場合、各接点組を構成する可動接点-固定接点間に、それぞれアークが発生するため、一つのアーク当たりのアーク電圧は小さくなる(本変形例では、接点組が2つの上記実施形態に比べて、約半分となる)。これにより、アークの消弧が促進される。
【0313】
(2.9)変形例26~変形例29
変形例26~変形例29の電路遮断装置100について、
図39~
図42を参照して説明する。変形例26~変形例29の電路遮断装置100の各々は、収容室70内に設けられたロック機構19を備えている。ロック機構19は、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から引き離された隔離位置で可動接触子3を保持する。変形例26~変形例29の電路遮断装置100の各々は、ロック機構9によって、可動接触子3が第1固定端子1及び第2固定端子2側に戻る(跳ね返る)のを防止することが可能となる。変形例26~変形例29の電路遮断装置100におけるその他の構成は、実施形態と同様なので、図示及び詳しい説明は省略する。
【0314】
変形例26の電路遮断装置100は、
図39に示すように、ロック機構19として永久磁石191を備えている。具体的には、変形例26の電路遮断装置100では、内筒体71の底面(内面)において、可動接触子3の左右方向の両端と上下方向においてそれぞれ対向する位置に、一対の永久磁石191が固定されている。また、可動接触子3の下面(内筒体71の底面と対向する面)において、一対の永久磁石191と上下方向においてそれぞれ対向する位置に、磁性材料からなる板状の一対の磁性部材、詳しくは鉄片192が固定されている。
【0315】
図39の点線で示すように、可動接触子3は、パイロアクチュエータ5によって下方に押された後、鉄片192が永久磁石191と磁力によって結合されて位置固定される。これにより、可動接触子3の跳ね返りが防止される。
【0316】
なお、変形例26の電路遮断装置100において、永久磁石191は一つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0317】
変形例27の電路遮断装置100は、
図40に示すように、ロック機構19として、可動接触子3と機械的に結合して可動接触子3の固定端子(第1固定端子)1に向かう向きの移動を規制する規制部193を備えている。
【0318】
規制部193は、例えば樹脂材料から形成されており、収容体1931と、一対の爪1932と、を備えている。収容体1931は、左右方向(可動接触子3の長手方向;
図40の紙面の法線方向)に長い直方体状であって、その上面に左右方向に延びる溝を有している。溝の幅は、第1ヨーク61の前後方向(
図40の左右方向)の寸法とほぼ等しい。一対の爪1932は、収容体1931の溝の上端から、内方(
図40の左右方向の内側)に突出している。
【0319】
図40の二点鎖線で示すように、可動接触子3及び第1ヨーク61は、パイロアクチュエータ5によって下方に押された後、第1ヨーク61の上面に一対の爪1932が引っ掛かって、この位置で規制部193によって保持される。これにより、可動接触子3の跳ね返りが防止される。
【0320】
なお、変形例27の電路遮断装置100において、一対の爪1932は、第1ヨーク61ではなく可動接触子3に引っ掛かる形状であってもよい。例えば、一対の爪1932は、可動接触子3の長手方向(左右方向)の両端に引っ掛かるように、収容体1931の左右方向の両端に設けられていてもよい。或いは、一対の爪1932は、内筒体71の内側面に設けられていてもよい。例えば、内筒体71の左側面及び右側面から内方に突出し互いの間隔が可動接触子3の左右方向の長さよりも狭い一対の爪が、内筒体71に設けられていてもよい。
【0321】
変形例28の電路遮断装置100は、
図41に示すように、ロック機構19として、可動接触子3の衝突により変形する樹脂部材194を備えている。変形例9の樹脂部材194は、可動接触子3の衝突により塑性変形して第1ヨーク61と一体化される変形部1941である。
【0322】
変形部1941は、左右方向(可動接触子3の長手方向;
図41の紙面の法線方向)に長い直方体状であって、その上面に左右方向に延びる溝を有している。溝は、前後方向(
図41の左右方向)において下側ほど狭くなるテーパ状となっている。前後方向(
図41の左右方向)において、溝の上端の幅は第1ヨーク61の幅よりも大きく、溝の下端の幅は第1ヨーク61の幅よりも小さい。
【0323】
図41の二点鎖線で示すように、可動接触子3及び第1ヨーク61は、パイロアクチュエータ5によって下方に押されると、変形部1941の溝の内側面を変形させながら下方に移動する。これにより、変形部1941が第1ヨーク61と一体化されて、第1ヨーク61及び可動接触子3が上方へ戻るのが防止される。
【0324】
変形例29の電路遮断装置100は、
図42に示すように、ロック機構19として、可動接触子3の衝突により変形する樹脂部材194を備えている。また、変形例29の電路遮断装置100では、可動接触子3が、樹脂部材94に向かう向きに突出する突起195を備えている。また、変形例29の電路遮断装置100では、内筒体71の左側面及び右側面に設けられ、移動された可動接触子3の上面に接触する一対の爪196を備えている。
【0325】
樹脂部材194は、内筒体71の底面(内面)において、可動接触子3の左右方向の両端と上下方向においてそれぞれ対向する位置に固定されている(
図42では、左側のみ図示)。また、可動接触子3の下面(内筒体71の底面と対向する面)において、一対の樹脂部材194と上下方向においてそれぞれ対向する位置に、樹脂材料からなる一対の突起195が設けられている(
図42では、左側のみ図示)。
【0326】
パイロアクチュエータ5によって可動接触子3及び第1ヨーク61が下方に押されると、可動接触子3の左右方向の両端が一対の樹脂部材194にそれぞれ衝突して樹脂部材194を変形させる。これにより、可動接触子3及び第1ヨーク61の運動エネルギーが、樹脂部材194に吸収されて、可動接触子3及び第1ヨーク61の速度が低下する。例えば、可動接触子3及び第1ヨーク61が高速で内筒体71の底面まで到達すると、内筒体71の底面で跳ね返される可能性がある。これに対し、本変形例では、樹脂部材194で可動接触子3及び第1ヨーク61の運動エネルギーが吸収されるので、可動接触子3及び第1ヨーク61の跳ね返りが防止される。なお、
図42の二点鎖線では、樹脂部材194が変形した後に元の形状に戻った位置での可動接触子3及び第1ヨーク61を示している。
【0327】
つまり、変形例29の樹脂部材194は、可動接触子3の衝突のエネルギー(運動エネルギー)を吸収する衝撃吸収部材(クッション材)1942である。
【0328】
なお、ロック機構19は、永久磁石191、規制部193、樹脂部材194以外の他のロック構造を備えていてもよい。また、ロック機構19は、永久磁石191、規制部193、樹脂部材194及び他のロック構造のうちの2つ以上を同時に(例えば、永久磁石191と規制部193とを同時に)備えていてもよい。また、電路遮断装置100は、パイロアクチュエータ5の戻り止め機構、及びケース52内に充満するガスの圧力によって、可動接触子3の跳ね返りを防止することができれば、ロック機構19を備えていなくてもよい。
【0329】
(2.10)その他の変形例
電路遮断装置100の用途は、車両300用のヒューズに限定されない。電路遮断装置100は、例えば短絡電流等の大きな電流が流れる可能性がある任意の電気回路を遮断する用途に用いられてよい。
【0330】
パイロアクチュエータ5は、ピストン53を介して可動接触子3を移動させる構成に限定されない。例えば、電路遮断装置100は、点火器51で発生したガスの圧力を可動接触子3が直接受ける(可動接触子3が加圧室520の外壁の一部を構成する)構成であって、可動接触子3がガスの圧力によって直接移動される構成等であってもよい。
【0331】
ピストン53の移動前において、加圧室520は収容室70と繋がっていてもよいが、収容室70と分離されていることが好ましい。
【0332】
ピストン53は、可動接触子3に接触していてもよい。例えば、ピストン53のピン535は、第2ヨーク62よりも下方に突出して可動接触子3の上面に直接接触していてもよいし、スペーサを介して可動接触子3の上面に間接的に接触していてもよい。
【0333】
ハウジング7の収容室70内に、可動接触子3の移動方向を案内するガイドが形成されていてもよい。ガイドは、可動接触子3の移動方向に沿って可動接触子3の側面に接触するように、収容室70の内壁に上下方向に長く形成される。これにより、可動接触子3がパイロアクチュエータ5によって移動されるときに、可動接触子3が傾きにくくなる。ガイドは、収容室70の底面から上方に延びて可動接触子3を貫通するロッドであってもよい。
【0334】
電路遮断装置100は、ピストン53と可動接触子3との間に、ピストン53の移動を妨げるストッパを備えていてもよい。ストッパは、点火器51で発生したガスの圧力によりピストン53が移動すると、移動するピストン53から加えられる力によって破断され、破断されるまでの間、ピストン53が可動接触子3に力を加えることを妨げる(可動接触子3を押すことを妨げる)。この場合、ストッパが無い場合と比較して、加圧室520内の圧力がより大きくなってから、ピストン53が可動接触子3を押すことになる。そのため、より大きな力でピストン53に押されることによって、可動接触子3がより勢いよく移動し、可動接点31と固定接点11との間に発生するアークが急速に引き延ばされる。これにより、電路遮断装置100の消弧性能が向上する。
【0335】
(3)態様
以上説明した実施形態及び変形例から明らかなように、第1の態様の電路遮断装置(100)は、固定端子(1)と、可動接触子(3)と、保持部(4)と、点火器(51)と、を備える。固定端子(1)は、固定接点(11)を有する。可動接触子(3)は、可動接点(31)を有する。可動接触子(3)は、固定端子(1)と別体に形成される。保持部(4)は、可動接点(31)が固定接点(11)に接続されるように可動接触子(3)を保持する。点火器(51)は、燃焼によりガスを発生させる。電路遮断装置(100)では、点火器(51)で発生したガスの圧力に連動して、可動接触子(3)が固定端子(1)から離れる向きに移動して可動接点(31)が固定接点(11)から引き離される。
【0336】
第1の態様によれば、点火器(51)で発生するガスのエネルギーを用いて、可動接触子(3)を固定端子(1)に対して高速で移動させる(引き離す)ことによって、電路が遮断される。したがって、可動接点(31)と固定接点(11)との間で発生するアークは、可動接触子(3)が移動するのと同じ程度に長い距離だけ、急速に引き延ばされて消弧される。これにより、アークを短時間で消弧させることが可能となり、電流の遮断性能を向上させることが可能となる。
【0337】
第2の態様の電路遮断装置(100)は、第1の態様において、保持部(4)は、可動接点(31)が固定接点(11)に接続される向きに可動接触子(3)を付勢する弾性部(接圧ばね41)を備える。
【0338】
第2の態様によれば、保持部(4)は、可動接点(31)が固定接点(11)に接続されるように可動接触子(3)を保持することが可能となる。
【0339】
第3の態様の電路遮断装置(100)は、第1又は第2の態様において、保持部(4)は、永久磁石(421;422)を備える。
【0340】
第3の態様によれば、保持部(4)は、可動接点(31)が固定接点(11)に接続されるように可動接触子(3)を保持することが可能となる。
【0341】
第4の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第3のいずれかの態様において、保持部(4)は、可動接触子(3)を機械的に保持するラッチ機構(43)を備える。
【0342】
第4の態様によれば、保持部(4)は、可動接点(31)が固定接点(11)に接続されるように可動接触子(3)を保持することが可能となる。
【0343】
第5の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第4のいずれかの態様において、可動接点(31)は、固定接点(11)に接触している。
【0344】
第5の態様によれば、可動接点(31)の固定接点(11)からの引き離しに必要な力が小さくなる。
【0345】
第6の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第4のいずれかの態様において、可動接点(31)は、固定接点(11)に溶着されている。
【0346】
第6の態様によれば、可動接点(31)と固定接点(11)との間の接触面が大きくなり、可動接点(31)と固定接点(11)との間の接圧が向上する。
【0347】
第7の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第6のいずれかの態様において、加圧室(520)と、ピストン(53)と、を備える。加圧室(520)は、点火器(51)で発生したガスの圧力を受ける。ピストン(53)は、第1端(531)で加圧室(520)内の圧力を受けて動かされ、第2端(532)で固定端子(1)から離す向きの力を可動接触子(3)に与えて可動接触子(3)を移動させる。
【0348】
第7の態様によれば、ピストン(53)によって可動接触子(3)が移動されるので、可動接触子(3)がガスの圧力を直接受ける場合に比べて、ガスの圧力を可動接触子(3)に効率よく伝えることができる。
【0349】
第8の態様の電路遮断装置(100)は、第7の態様において、ピストン(53)は、第2端(532)で可動接触子(3)を押す。
【0350】
第8の態様によれば、ピストン(53)によって、ガスの圧力を可動接触子(3)に効率よく伝えることができる。
【0351】
第9の態様の電路遮断装置(100)は、第7又は第8の態様において、可動接触子(3)が移動する向きは、ピストン(53)が移動する向きと交差する向きである。
【0352】
第9の態様によれば、電路遮断装置(100)の設計の自由度が高くなる。
【0353】
第10の態様の電路遮断装置(100)は、第7の態様において、ピストン(53)の第2端(532)は、可動接触子(3)に結合されている。ピストン(53)は、第2端(532)で可動接触子(3)を引く。
【0354】
第10の態様によれば、ピストン(53)によって、ガスの圧力を可動接触子(3)に効率よく伝えることができる。
【0355】
第11の態様の電路遮断装置(100)は、第7~第10のいずれかの態様において、戻り止め機構(第3筒部)を備える。戻り止め機構は、可動接触子(3)を移動させた後にピストン(53)を機械的に保持して、ピストン(53)が元の位置に戻るのを防止する。
【0356】
第11の態様によれば、ピストン(53)が元の位置に戻るのが防止され、また、ピストン(53)によって移動された可動接触子(3)が元の位置に戻るのが防止される。
【0357】
第12の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第11のいずれかの態様において、外部の電気回路の第1端及び第2端にそれぞれ接続される第1電極(12)及び第2電極(22)を備える。電路遮断装置(100)は、第1電極(12)と第2電極(22)との間を繋ぐ電路に、可動接点(31)と固定接点(11)との組を一つのみ備える。
【0358】
第12の態様によれば、電磁反発力によって接続が不安定となる可能性のある箇所が1箇所となり、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化、つまり第1電極(12)と第2電極(22)との導通状態の安定化を図ることができる。
【0359】
第13の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第12のいずれかの態様において、可動接触子(3)は板状である。電路遮断装置(100)は、可動接触子(3)において可動接点(31)が位置する面とは反対の面に固定されたヨーク(第1ヨーク61)を備える。
【0360】
第13の態様によれば、可動接触子(3)に電流が流れたとき、この電流によって発生する磁界が第1ヨーク(61)内を通過するように、この磁界に作用する。可動接触子(3)を流れる電流に作用する磁界は、その中心が、可動接触子(3)において可動接点(31)がある面側に誘導され、この結果、可動接点(31)と固定接点(11)との接続が維持される向きの力が生じる。これにより、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることができる。
【0361】
第14の態様の電路遮断装置(100)は、第13の態様において、第2ヨーク(62)を更に備える。第2ヨーク(62)は、可動接触子(3)を挟んで第1ヨーク(61)と対向する位置に可動接触子(3)と離れて固定されている。
【0362】
第14の態様によれば、可動接触子(3)に電流が流れたときに第1ヨーク(61)と第2ヨーク(62)との間に吸引力が発生し、可動接触子(3)に、可動接点(31)と固定接点(11)との接続が維持される向きの力が生じる。これにより、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることができる。
【0363】
第15の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第14のいずれかの態様において、固定接点(11)と電気的に接続されており可動接触子(3)を流れる電流の方向に沿って延びる電路片(第4電路片1404,2404)を備える。可動接触子(3)は、可動接点(31)と固定接点(11)とが対向する方向において、電路片(第4電路片1404,2404)と固定接点(11)との間に位置する。電路片を流れる電流の向きが、可動接触子(3)を流れる電流の向きと反対である。
【0364】
第15の態様によれば、可動接触子(3)と電路片(第4電路片1404,2404)との間には、斥力が発生する。このため、可動接触子(3)には、電路片(第4電路片1404,2404)から離れる向きの力がかかる。これにより、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることができる。
【0365】
第16の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第15のいずれかの態様において、温度上昇により湾曲して可動接点(31)から固定接点(11)に向かう向きに可動接触子(3)を押すバイメタル(65)を備える。
【0366】
第16の態様によれば、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることができる。
【0367】
第17の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第16のいずれかの態様において、各々が可動接点(31)を有する可動接触子(3)を複数備える。
【0368】
第17の態様によれば、各可動接触子(3)に流れる電流が低減されるので、電磁反発力が低減される。これにより、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることができる。
【0369】
第18の態様の電路遮断装置(100)は、第17の態様において、複数の可動接点(31)は、点火器(51)で発生したガスの圧力に連動して、複数の固定接点(11)から異なるタイミングで引き離される。
【0370】
第18の態様によれば、複数の可動接触子(3)を、異なるタイミングで固定端子(1)から引き離すことが可能となる。これにより、アークの発生を、最後に可動接点(31)が固定接点(11)から引き離される可動接触子(3)と固定端子(1)との間にのみとすることが可能となる。
【0371】
第19の態様の電路遮断装置(100)は、第17又は第18の態様において、複数の可動接点(31)は、異なる材料で形成されている。
【0372】
第19の態様によれば、用途に応じて、耐アーク性の高い材料、通電性能の高い材料等を、可動接触子(3)の可動接点(31)ごとに使い分けることが可能となる。
【0373】
第20の態様の電路遮断装置(100)は、第17又は第18の態様において、複数の可動接点(31)は、同一の材料で形成されている。
【0374】
第20の態様によれば、複数の可動接触子(3)の可動接点(31)を同一の材料とすることで、コストを抑えることができる。また、複数の可動接触子(3)の可動接点(31)を、複数の固定接点(11)から同時に引き離すことで、各可動接触子(3)に流れる電流が分配されて低減されるので、電磁反発力が低減される。これにより、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることができる。
【0375】
第21の態様の電路遮断装置(100)は、第17~第20のいずれかの態様において、複数の可動接触子(3)は、並列に配置された2つの可動接触子3(第1可動接触子301、第2可動接触子302)を備える。2つの可動接触子3(第1可動接触子301、第2可動接触子302)が移動する向きは、互いに異なる。
【0376】
第21の態様によれば、一方の可動接触子(3)に流れる電流には、他方の可動接触子(3)に流れる電流によって発生する磁界によって、ローレンツ力がかかる。このローレンツ力によって、電磁反発力を低減することが可能となり、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることが可能となる。
【0377】
第22の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第21のいずれかの態様において、可動接触子(3)は、可動接点(31)としての第1可動接点(31)に加えて、第2可動接点(32)を有する。電路遮断装置(100)は、固定接点(11)としての第1固定接点(11)を有する固定端子(1)としての第1固定端子(1)に加えて、第2固定接点(21)を有する第2固定端子(2)を備える。可動接触子(3)は、第1可動接点(31)が第1固定接点(11)に接触し、第2可動接点(32)が第2固定接点(21)に接触するように、第1固定端子(1)と第2固定端子(2)との間に挟持される。
【0378】
第22の態様によれば、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることができる。
【0379】
第23の態様の電路遮断装置(100)は、第22の態様において、第1固定接点(11)と第1可動接点(31)とが対向する向きと、第2固定接点(21)と第2可動接点(32)とが対向する向きとが、反対向きである。
【0380】
第23の態様によれば、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることができる。
【0381】
第24の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第23のいずれかの態様において、固定接点(11)と可動接点(31)のうち一方を第1接点、他方を第2接点として、第2接点を複数備える。1つの第1接点に対して、複数の第2接点が接続される。
【0382】
第24の態様によれば、固定端子(1)と可動接触子(3)との接続箇所を複数にすることで、各接続箇所での電磁反発力を低減することが可能となる。
【0383】
第25の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第24のいずれかの態様において、可動接触子(3)と別体であって可動接触子(3)と直列に接続される追加可動接触子(9)を備える。可動接触子(3)と追加可動接触子(9)とが、並列に配置される。可動接触子(3)が移動する向きと追加可動接触子(9)が移動する向きとが、互いに異なる。
【0384】
第25の態様によれば、可動接触子(3)に流れる電流には、追加可動接触子(9)に流れる電流によって発生する磁界によって、ローレンツ力がかかる。このローレンツ力によって、電磁反発力を低減することが可能となり、可動接点(31)と固定接点(11)との接続状態の安定化を図ることが可能となる。
【0385】
第2~25の態様に係る構成については、電路遮断装置(100)の必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0386】
第26の態様の電路遮断装置(100)は、固定端子(1)と、可動接触子(3)と、点火器(51)と、収容室(70)と、を備える。固定端子(1)は、固定接点(11)を有する。可動接触子(3)は、固定端子(1)と別体に形成されている。可動接触子(3)は、固定接点(11)に接続される可動接点(31)を有する。点火器(51)は、燃焼によりガスを発生させる。収容室(70)は、固定接点(11)及び可動接触子(3)を収容する。電路遮断装置(100)では、点火器(51)で発生したガスの圧力に連動して、可動接触子(3)が収容室(70)内で固定端子(1)から離れる向きに移動して、可動接点(31)が固定接点(11)から引き離される。
【0387】
第26の態様によれば、点火器(51)で発生するガスのエネルギーを用いて、可動接触子(3)を収容室(70)内で固定端子(1)に対して高速で移動させる(引き離す)ことによって、電路が遮断される。したがって、接点間で発生するアークは、収容室(70)内での可動接触子(3)の移動距離分だけ引き延ばされて、消弧される。これにより、電路遮断装置(100)は、アークを引き延ばして消弧させることが可能となり、電流の遮断性能を向上させることが可能となる。
【0388】
第27の態様の電路遮断装置(100)は、第26の態様において、加圧室(520)と、ピストン(53)と、を備える。加圧室(520)は、点火器(51)で発生したガスの圧力を受ける。ピストン(53)は、第1端(531)で加圧室(520)内の圧力を受けて動かされ、第2端(532)で固定端子(1)から離す向きの力を可動接触子(3)に与えて可動接触子(3)を移動させる。
【0389】
第27の態様によれば、ピストン(53)によって可動接触子(3)が移動されるので、可動接触子(3)がガスの圧力を直接受ける場合に比べて、ガスの圧力を可動接触子(3)に効率よく伝えることができる。
【0390】
第28の態様の電路遮断装置(100)は、第27の態様において、ピストン(53)は、第2端(532)で可動接触子(3)を押す。
【0391】
第28の態様によれば、ピストン(53)によって、ガスの圧力を可動接触子(3)に効率よく伝えることができる。
【0392】
第29の態様の電路遮断装置(100)は、第27の態様において、ピストン(53)の第2端(532)は、可動接触子(3)に結合されている。ピストン(53)は、第2端(532)で可動接触子(3)を引く。
【0393】
第29の態様によれば、ピストン(53)によって、ガスの圧力を可動接触子(3)に効率よく伝えることができる。
【0394】
第30の態様の電路遮断装置(100)は、第27~第29のいずれかの態様において、戻り止め機構(第3筒部)を備える。戻り止め機構は、可動接触子(3)を移動させた後にピストン(53)を機械的に保持して、ピストン(53)が元の位置に戻るのを防止する。
【0395】
第30の態様によれば、ピストン(53)が元の位置に戻るのが防止され、また、ピストン(53)によって移動された可動接触子(3)が元の位置に戻るのが防止される。
【0396】
第31の態様の電路遮断装置(100)は、第26~第30のいずれかの態様において、磁束発生部(8)を備える。磁束発生部(8)は、可動接点(31)と固定接点(11)との間に生じるアークを引き延ばす磁束を収容室(70)内に発生させる。
【0397】
第31の態様によれば、可動接点(31)と固定接点(11)との間に生じるアークの消弧が促進される。
【0398】
第32の態様の電路遮断装置(100)は、第26~第31のいずれかの態様において、消弧材(80)を備える。消弧材(80)は、収容室(70)に配置されている。消弧材(80)は、可動接点(31)と固定接点(11)との間に生じるアークの消弧を促進する。
【0399】
第32の態様によれば、可動接点(31)と固定接点(11)との間に生じるアークの消弧が促進される。
【0400】
第33の態様の電路遮断装置(100)は、第32の態様において、消弧材(80)は、消弧ガス発生部材(86)を備える。消弧ガス発生部材(86)は、加熱されることによって収容室(70)に消弧ガスを放出する。
【0401】
第33の態様によれば、可動接点(31)と固定接点(11)との間に生じるアークの消弧が促進される。
【0402】
第34の態様の電路遮断装置(100)は、第32又は第33の態様において、消弧材(80)は、ガス(87)又は液体を備える。ガス(87)又は液体は、収容室(70)内に封入され、消弧性を有する。
【0403】
第34の態様によれば、可動接点(31)と固定接点(11)との間に生じるアークの消弧が促進される。
【0404】
第35の態様の電路遮断装置(100)は、第32~第34のいずれかの態様において、消弧材(80)は、消弧体(88)を備える。消弧体(88)は、収容室(70)内に配置されて、アークに接触することによってアークを消弧する。
【0405】
第35の態様によれば、可動接点(31)と固定接点(11)との間に生じるアークの消弧が促進される。
【0406】
第36の態様の電路遮断装置(100)は、第26~第35のいずれかの態様において、外部の電気回路の第1端及び第2端にそれぞれ接続される第1電極(12)及び第2電極(22)を備える。電路遮断装置(100)は、第1電極(12)と第2電極(22)との間を繋ぐ電路に、可動接触子と固定端子との組を複数(第1可動接触子301と第1固定端子1、第2可動接触子302と第2固定端子2)備える。
【0407】
第36の態様によれば、それぞれ可動接点と固定接点からなる複数の接点組の各々で、それぞれアークが発生するため、一つのアーク当たりのアーク電圧は小さくなる。これにより、アークの消弧が促進される。
【0408】
第37の態様の電路遮断装置(100)は、第26~第36のいずれかの態様において、ロック機構(19)を備える。ロック機構(19)は、可動接点(31)が固定接点(11)から引き離された隔離位置で可動接触子(3)を保持する。
【0409】
第37の態様によれば、ロック機構(19)によって、可動接触子(3)が固定端子(1)側に戻る(跳ね返る)のを防止することが可能となる。
【0410】
第38の態様の電路遮断装置(100)は、第37態様において、ロック機構(19)は、永久磁石(191)を備える。
【0411】
第38の態様によれば、可動接触子(3)が固定端子(1)側に戻るのを防止することが可能となる。
【0412】
第39の態様の電路遮断装置(100)は、第37又は第38の態様において、ロック機構(19)は、規制部(193)を備える。規制部(193)は、可動接触子(3)と機械的に結合して可動接触子(3)の固定端子(1)に向かう向きの移動を規制する。
【0413】
第39の態様によれば、可動接触子(3)が固定端子(1)側に戻るのを防止することが可能となる。
【0414】
第40の態様の電路遮断装置(100)は、第37~第39のいずれかの態様において、ロック機構(19)は、樹脂部材(194)を備える。樹脂部材(194)は、可動接触子(3)の衝突により変形する。
【0415】
第40の態様によれば、可動接触子(3)が固定端子(1)側に戻るのを防止することが可能となる。
【0416】
第41の態様の電路遮断装置(100)は、第40の態様において、可動接触子(3)は、樹脂部材(194)に向かう向きに突出する突起(195)を備える。
【0417】
第41の態様によれば、突起(195)が樹脂部材(194)に刺さることで、可動接触子(3)が固定端子(1)側に戻るのを防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0418】
100 電路遮断装置
1 第1固定端子(固定端子)
11 第1固定接点(固定接点)
12 第1電極
1404 第4電路片(電路片)
2 第2固定端子
21 第2固定接点
22 第2電極
2404 第4電路片(電路片)
3 可動接触子
31 第1可動接点(可動接点)
32 第2可動接点
4 保持部
41 接圧ばね(弾性部)
421、422 永久磁石
43 ラッチ機構
51 点火器
520 加圧室
53 ピストン
531 第1端
532 第2端
61 第1ヨーク
62 第2ヨーク
65 バイメタル
9 追加可動接触子
70 収容室
8 磁束発生部
80 消弧材
86 消弧ガス発生部材
87 ガス
88 消弧体
19 ロック機構
191 永久磁石
193 規制部
194 樹脂部材
195 突起