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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】光通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/67 20130101AFI20230421BHJP
   H04B 10/80 20130101ALI20230421BHJP
【FI】
H04B10/67
H04B10/80
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021554803
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2019047640
(87)【国際公開番号】W WO2021090514
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/043896
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】西村 直喜
(72)【発明者】
【氏名】澤 隆雄
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0058814(US,A1)
【文献】特開2016-119375(JP,A)
【文献】特開2007-271882(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079091(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0113768(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0212573(US,A1)
【文献】特開平8-79184(JP,A)
【文献】特開2018-7069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャンネルに対応するように設けられ、通信光を受光する複数の受光素子と、
前記複数の受光素子に対応するように設けられ、前記複数の受光素子に前記通信光を導く複数の光ファイバと、を備え、
前記複数の光ファイバの各々は、前記通信光の入光端部と、前記通信光の出光端部とを含み、
複数の前記出光端部の各々は、前記複数の受光素子の各々の近傍に配置されており、
複数の前記入光端部の各々は、所定の位置および向きに配置可能に構成されており、
前記入光端部は、水中を移動する移動体からの前記通信光が入光されるように構成されている、光通信装置。
【請求項2】
水中に配置され、前記複数の受光素子を収容する保護容器をさらに備え、
前記複数の光ファイバは、前記出光端部が前記保護容器の内部に設けられるとともに、前記入光端部が前記保護容器の外部に設けられるように構成されている、請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
複数の前記入光端部の少なくとも一部は、水中の互いに異なる位置に配置されている、請求項2に記載の光通信装置。
【請求項4】
複数の前記入光端部の少なくとも一部は、水中構造物に取り付けられている、請求項2に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記複数の受光素子は、アレイ状に配置されている、請求項2に記載の光通信装置。
【請求項6】
前記複数の受光素子の各々の近傍において、複数の前記出光端部を保持する出光端部保持部をさらに備える、請求項1に記載の光通信装置。
【請求項7】
前記入光端部に前記通信光を集光するレンズと、
前記入光端部に設けられ、前記レンズを保持するレンズ保持部とをさらに備え、
前記入光端部、前記レンズおよび前記レンズ保持部は、水中に配置されるように構成されており、
前記レンズ保持部は、前記入光端部と前記レンズとの間に設けられ、周囲の水を導入可能な水導入部を含む、請求項1に記載の光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信光により通信を行う光通信装置が知られている。このような光通信装置は、たとえば、特開2018-7069号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2018-7069号公報には、水中を航行する潜水艇に取り付けられた第1光通信機(光通信装置)と、海上の船舶や水中を航行する他の潜水艇に設けられた第2光通信機(光通信装置)とが開示されている。また、上記特開2018-7069号公報には、第1光通信機と第2光通信機との間で、可視光である通信光を用いた光信号が水中を介して伝送されることが開示されている。この第1光通信機および第2光通信機の各々は、1または複数の受光素子を筺体の内部に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-7069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特開2018-7069号公報に記載されたような、従来の光通信装置では、複数の受光素子の各々の設置場所を任意に選択することができないと考えられるため、複数の受光素子の各々の受光の指向性(受光方向、受光範囲など)を自由に調整することが困難であると考えられる。このため、複数の受光素子の全体としての受光の指向性を任意に設定することが困難であるという不都合があると考えられる。また、任意の受光の指向性を実現する方法として、たとえば黒い紙を受光素子の前に置くという古典的な方法や、デジタルミラーデバイスを使うという方法なども考えられる。しかしながら、これらの方法では、受光素子へ到達する光の一部を遮蔽するため、基本的に受光素子の性能(感度)を悪化させるという不都合があると考えられる。これらのため、複数の受光素子のすべての感度をそのままに、複数の受光素子による受光の指向性を任意に設定することが困難であるという問題点があると考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、複数の受光素子のすべての感度をそのままに、複数の受光素子による受光の指向性を任意に設定することが可能な光通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における光通信装置は、複数のチャンネルに対応するように設けられ、通信光を受光する複数の受光素子と、複数の受光素子に対応するように設けられ、複数の受光素子に通信光を導く複数の光ファイバと、を備え、複数の光ファイバの各々は、通信光の入光端部と、通信光の出光端部とを含み、複数の出光端部の各々は、複数の受光素子の各々の近傍に配置されており、複数の入光端部の各々は、所定の位置および向きに配置可能に構成されており、入光端部は、水中を移動する移動体からの通信光が入光されるように構成されている。なお、本願明細書では、複数の受光素子の各々の近傍とは、複数の受光素子の各々の位置そのものと、複数の受光素子の各々の位置の付近との両方を含む広い概念である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記のように、複数の受光素子に通信光を導く複数の光ファイバを設ける。そして、複数の光ファイバの各々を、通信光の入光端部と、通信光の出光端部とを含むように構成する。そして、複数の出光端部の各々を、複数の受光素子の各々の近傍に配置する。そして、複数の入光端部の各々を、所定の位置および向きに配置可能に構成する。これにより、光ファイバを用いることにより、複数の受光素子の各々の設置場所を任意に選択することができる。また、複数の入光端部の位置および向きを調整することにより、複数の受光素子の各々の受光の指向性(受光方向、受光範囲など)を自由に調整することができるので、複数の受光素子の全体としての受光の指向性を任意に設定することができる。また、任意の受光の指向性を実現する方法として、黒い紙を受光素子の前に置くという方法や、デジタルミラーデバイスを使うという方法などを採用する場合と異なり、受光素子へ到達する光の一部を遮蔽することがないので、受光素子の感度を悪化させることもない。これらの結果、複数の受光素子のすべての感度をそのままに、複数の受光素子による受光の指向性を任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態による水中光通信システムの概略を示した模式図である。
図2】第1実施形態による光通信装置の受光部の概略を示した模式図である。
図3】(A)は、第1実施形態による光通信装置の入光端部保持部による光ファイバの入光端部の保持の第1の例を示した模式図である。(B)は、第1実施形態による光通信装置の入光端部保持部による光ファイバの入光端部の保持の第2の例を示した模式図である。
図4】第1実施形態による光通信装置の光ファイバの配置例を示した模式図である。
図5】第2実施形態による光通信装置のレンズおよびレンズ保持部を示した模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
[第1実施形態]
(水中光通信システム)
図1を参照して、第1実施形態による光通信装置を備える水中光通信システム100の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、水中光通信システム100は、第1光通信装置1と、第2光通信装置2とを備える。なお、第1光通信装置1は、特許請求の範囲の「光通信装置」の一例である。
【0013】
第1光通信装置1は、海中などの水中に配置されている。具体的には、第1光通信装置1は、水中に固定された固定体80に設けられている。固定体80は、保持部材81を介して水底90に設置されることにより、水中に固定されている。
【0014】
第2光通信装置2は、海中などの水中に配置されている。具体的には、第2光通信装置2は、水中を移動する移動体82に設けられている。移動体82は、たとえば、AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人潜水機)を含む。
【0015】
第1実施形態では、水中光通信システム100は、第1光通信装置1から発光された通信光を第2光通信装置2が受光することにより、第1光通信装置1と第2光通信装置2との間において光通信を行うとともに、第2光通信装置2から発光された通信光を第1光通信装置1が受光することにより、第2光通信装置2と第1光通信装置1との間において光通信を行うことが可能なように構成されている。なお、図1では、第2光通信装置2が通信光を発光している例を図示している。
【0016】
第1実施形態では、移動体82が海中を移動することにより、たとえば、海底に敷設された構造物の検査を行う。第2光通信装置2は、移動体82に設けられた検知部(図示せず)によって取得された検査結果を、通信光によって第1光通信装置1に送信するように構成されている。また、第1光通信装置1は、第2光通信装置2から送信された検査結果を受信するとともに、受信した検査結果を、陸上、または母船などに設けられた通信装置に送信するように構成されている。なお、第1光通信装置1と第2光通信装置2との間において光通信を行う場合には、移動体82を通信可能領域まで移動させ、光通信を行う。
【0017】
図2に示すように、第1光通信装置1は、複数の受光素子11を備える。複数の受光素子11は、通信光を受光するように構成されている。複数の受光素子11は、複数のチャンネルに対応するように設けられている。チャンネルの数は、特に限られないが、図2に示す例では、第1光通信装置1は、25個のチャンネルを備える。このため、図2に示す例では、第1光通信装置1は、25個の受光素子11を備える。
【0018】
複数の受光素子11は、たとえば、光電子増倍管により構成されている。この場合、複数の受光素子11の各々は、光電変換部と、電子増倍部とを含む。光電変換部は、通信光を電子に変換するように構成されている。電子増倍部は、変換された電子を増倍するように構成されている。また、複数の受光素子11は、アレイ状に配置されている。なお、アレイ状とは、列状、マトリクス状などを含む広い概念である。図2に示す例では、複数の受光素子11は、5×5のマトリクス状に配置されている。
【0019】
また、第1光通信装置1は、複数の光ファイバ12を備える。複数の光ファイバ12は、複数の受光素子11に通信光を導くように構成されている。複数の光ファイバ12は、複数の受光素子11に対応するように設けられている。すなわち、図2に示す例では、複数の光ファイバ12は、25個設けられている。また、複数の光ファイバ12の各々は、通信光の入光端部12a(集光端部)と、通信光の出光端部12bとを含む。
【0020】
ここで、第1実施形態では、複数の出光端部12bの各々は、複数の受光素子11の各々の近傍に配置されている。複数の出光端部12bの各々は、複数の受光素子11の受光面に対向するように配置されている。また、複数の入光端部12aの各々は、所定の位置および向きに配置可能に構成されている。複数の入光端部12aの各々は、互いに異なる位置および向きに配置可能に構成されている。すなわち、複数の入光端部12aの少なくとも一部は、互いに異なる位置および向きに配置されることが可能である。なお、複数の入光端部12aの各々には、通信光を集光する小型のレンズが設けられていてもよい。この場合、レンズにより入光端部12aに通信光を集光することができるので、より確実に光通信を行うことができる。
【0021】
また、第1光通信装置1は、保護容器13(二点鎖線により示す)を備える。保護容器13は、水中に配置され、複数の受光素子11を収容するように構成されている。保護容器13は、密閉耐圧容器である。保護容器13は、複数の受光素子11を外部環境から隔離するように構成されている。保護容器13は、たとえば、円筒形状を有する。
【0022】
複数の光ファイバ12は、出光端部12bが保護容器13の内部に設けられるとともに、入光端部12aが保護容器13の外部(すなわち、水中)に設けられるように構成されている。複数の入光端部12aの各々は、保護容器13の外部(水中)において、所定の位置および向きに配置可能に構成されている。複数の光ファイバ12は、保護容器13の挿通部13aを介して、保護容器13の内部から外部に跨るように配置されている。挿通部13aは、保護容器13の内部空間13bを密閉状態(水密状態)に維持しつつ、複数の光ファイバ12を挿通可能に構成されている。
【0023】
また、第1光通信装置1は、出光端部保持部14を備える。出光端部保持部14は、複数の受光素子11の各々の近傍において、複数の出光端部12bを保持するように構成されている。出光端部保持部14は、複数の受光素子11の各々および複数の出光端部12bの各々に対応するように、複数設けられている。図2に示す例では、複数の出光端部保持部14は、25個設けられている。複数の出光端部保持部14の各々は、複数の受光素子11の受光面に一体的に設けられている。複数の出光端部保持部14の各々は、挿通孔14aを有する。挿通孔14aは、出光端部12bが挿入されるように構成されている。複数の出光端部12bの各々は、挿通孔14aに挿通された状態で、出光端部保持部14により保持されるように構成されている。
【0024】
また、図3(A)(B)に示すように、第1光通信装置1は、入光端部保持部15を備える。入光端部保持部15は、複数の入光端部12aの少なくとも一部を保持するように構成されている。入光端部保持部15が保持する入光端部12aの数は、特に限られないが、図3(A)(B)に示す例では、入光端部保持部15が5つの入光端部12aを保持する例を図示している。入光端部保持部15は、入光端部12aが所定の向きに配置されるように、入光端部12aを保持するように構成されている。
【0025】
受光素子11による受光の指向性を広くする場合(広範囲において通信光を受光したい場合)、たとえば、図3(A)に示す配置例のように、入光端部12aを配置することができる。図3(A)に示す例では、複数の入光端部12aの少なくとも一部が、互いに異なる向きに配置されている。また、受光素子11による受光の指向性を狭くする場合(特定の方向からの通信光を受光したい場合)、たとえば、図3(B)に示す配置例のように、入光端部12aを配置することができる。図3(B)に示す例では、複数の入光端部12aの少なくとも一部が、互いに同じ向きに配置されている。
【0026】
(光通信装置の使用例)
次に、図4を参照して、第1光通信装置1の水中の使用例について説明する。
【0027】
図4に示すように、複数の入光端部12aの少なくとも一部は、水中の互いに異なる位置に配置されている。入光端部12aの配置位置の数は、特に限られないが、図4に示す例では、複数の入光端部12aが、互いに異なる5つの位置に配置されている例を図示している。この場合、移動体82は、互いに異なる5つの位置において光通信を行うことができる。
【0028】
また、複数の入光端部12aの少なくとも一部は、水中構造物83に取り付けられている。水中構造物83は、特に限られないが、たとえば、柱、棒、壁などであり得る。水中構造物83としては、第1光通信装置1用に構造物を設けてもよいし、既設の構造物を利用してもよい。入光端部12aは、固定具を介して、水中構造物83に取り付けられている。
【0029】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0030】
第1実施形態では、上記のように、第1光通信装置1に、複数の受光素子11に通信光を導く複数の光ファイバ12を設ける。そして、複数の光ファイバ12の各々を、通信光の入光端部12aと、通信光の出光端部12bとを含むように構成する。そして、複数の出光端部12bの各々を、複数の受光素子11の各々の近傍に配置する。そして、複数の入光端部12aの各々を、所定の位置および向きに配置可能に構成する。これにより、光ファイバ12を用いることにより、複数の受光素子11の各々の設置場所を任意に選択することができる。また、複数の入光端部12aの位置および向きを調整することにより、複数の受光素子11の各々の受光の指向性(受光方向、受光範囲など)を自由に調整することができるので、複数の受光素子11の全体としての受光の指向性を任意に設定することができる。また、任意の受光の指向性を実現する方法として、黒い紙を受光素子11の前に置くという方法や、デジタルミラーデバイスを使うという方法などを採用する場合と異なり、受光素子11へ到達する光の一部を遮蔽することがないので、受光素子11の感度を悪化させることもない。これらの結果、複数の受光素子11のすべての感度をそのままに、複数の受光素子11による受光の指向性を任意に設定することができる。
【0031】
また、第1実施形態では、上記のように、第1光通信装置1を、水中に配置され、複数の受光素子11を収容する保護容器13を備えるように構成する。これにより、複数の受光素子11が単一の保護容器13に収容されるので、複数の受光素子11を複数の保護容器13に分散して配置する場合と異なり、複数の受光素子11に用いるケーブル類(電力ケーブル、信号ケーブルなど)を1つにまとめることができるとともに、保護容器13の数を減らすことができる。また、合計重量も減らすことができる。また、入光端部12aは小型で軽量であることから、保護容器13の設置が難しい場所にも設置可能であるので、入光端部12aを密集して一箇所に設置して感度を向上させることもできる。これらの効果は、水中において光通信が行われる場合に、特に効果的である。また、複数の光ファイバ12を、出光端部12bが保護容器13の内部に設けられるとともに、入光端部12aが保護容器13の外部に設けられるように構成する。これにより、複数の受光素子11が保護容器13に収容されている場合にも、保護容器13の外部において光ファイバ12の複数の入光端部12aを、任意の位置および向きに配置することができるので、複数の受光素子11による受光の指向性の調整の自由度を容易に確保することができる。
【0032】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の入光端部12aの少なくとも一部を、水中の互いに異なる位置に配置する。これにより、水中の互いに異なる位置において通信光を受光することができるので、複数の光通信装置を設けなくても、1つの第1光通信装置1だけで水中の互いに異なる位置において光通信を行うことができる。その結果、複数の光通信装置を設ける場合に比べて、水中の光通信を簡単に行うことができる。
【0033】
また、本実施形態では、上記のように、入光端部12aを、水中を移動する移動体82からの通信光が入光されるように構成する。これにより、移動体82は、水中の互いに異なる位置のうちの任意の位置において光通信を行うことができるので、移動体82との間の水中の光通信を簡単に行うことができる。
【0034】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の入光端部12aの少なくとも一部を、水中構造物83に取り付ける。これにより、入光端部12aを水中構造物83に固定することができるので、入光端部12aの位置を定位置に固定することができる。その結果、入光端部12aの位置が定位置に固定されていない場合に比べて、水中の光通信を簡単に行うことができる。また、既設の水中構造物83を用いれば、専用の固定のための構造物が不要である。
【0035】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の受光素子11を、アレイ状に配置する。これにより、保護容器13の内部において受光素子11を整列させることができるので、保護容器13の内部において受光素子11をコンパクトに収めることができる。
【0036】
また、第1実施形態では、上記のように、第1光通信装置1を、複数の受光素子11の各々の近傍において、複数の出光端部12bを保持する出光端部保持部14を備えるように構成する。これにより、出光端部12bの位置を保持することができるので、出光端部12bと受光素子11との相対位置を保持することができる。その結果、出光端部12bからの通信光を受光素子11に正確に受光させることができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、上記第1実施形態の構成に加えて、レンズとレンズ保持部とをさらに備える例について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、図中において同じ符号を付して図示し、その説明を省略する。
【0038】
(第1光通信装置の構成)
第2実施形態では、第1光通信装置101は、図5に示すように、レンズ16と、レンズ保持部17とをさらに備える点で、上記第1実施形態の第1光通信装置1と相違する。なお、第1光通信装置101は、請求の範囲の「光通信装置」の一例である。
【0039】
レンズ16は、光ファイバ12の入光端部12aに通信光を集光するように構成されている。レンズ16は、入光端部12aの入光面にA方向に対向するように設けられている。
【0040】
レンズ保持部17は、入光端部12aに設けられ、レンズ16を保持するように構成されている。光ファイバ12の入光端部12a、レンズ16およびレンズ保持部17は、水中(海中)に配置されるように構成されている。
【0041】
レンズ保持部17は、本体部17aと、支持部17bと、入光開口部17cと、水導入部17dとを含んでいる。
【0042】
本体部17aは、A方向に沿って延びる柱形状を有している。具体的には、本体部17aは、円柱形状を有している。より具体的には、本体部17aは、中空の円筒形状を有している。本体部17aは、A1方向の端部に光ファイバ12の入光端部12aを本体部17aの内部に挿入するための挿入開口部(図示せず)を有している。本体部17aは、挿入開口部を介して内部に挿入された光ファイバ12の入光端部12aを保持するように構成されている。また、本体部17aは、A2方向の端部に入光開口部17cを有している。
【0043】
支持部17bは、レンズ16を支持するように構成されている。支持部17bは、本体部17aのA2方向の端部からA2方向に突出するように設けられている。支持部17bは、レンズ16を本体部17aのA2方向の端部とA2方向に離間した位置で支持するように構成されている。このため、A方向においてレンズ16と本体部17a(入光開口部17c)との間には、空間18が形成されている。支持部17bは、複数(図5では、4つ)設けられている。
【0044】
入光開口部17cは、レンズ16により集光された通信光を本体部17aの内部に入光させるように構成されている。
【0045】
ここで、第2実施形態では、レンズ保持部17は、入光端部12aとレンズ16との間に水が入る形状を有している。すなわち、レンズ保持部17は、入光端部12a(入光開口部17c)とレンズ16との間に設けられ、周囲の水(海水など)を導入可能な水導入部17dを含んでいる。具体的には、水導入部17dは、周囲と空間18とを連通するように設けられている。水導入部17dは、水中に配置された場合に、周囲から空間18に水を導入することにより、入光端部12a(入光開口部17c)とレンズ16との間に水を導入するように構成されている。水導入部17dは、互いに隣り合う支持部17bと支持部17bとの間に設けられている。水導入部17dは、複数(図5では、4つ)設けられている。
【0046】
また、第2実施形態では、レンズ保持部17は、水の屈折率を前提とした構造を有している。具体的には、レンズ保持部17は、水の屈折率を前提とした位置にレンズ16を保持するように構成されている。すなわち、レンズ保持部17は、空気の屈折率を前提とした場合に比べて、A2方向に遠い位置(入光端部12aから離間した位置)にレンズ16を保持するように構成されている。すなわち、レンズ保持部17は、空気の屈折率を前提とした場合の入光端部12aとレンズ16との間のA方向の離間距離よりも、入光端部12aとレンズ16との間のA方向の離間距離が大きくなるように形成されている。これにより、水中でも正しく入光端部12aの位置に通信光を集光することができる。
【0047】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0049】
第2実施形態では、上記のように、第1光通信装置101を、入光端部12aに通信光を集光するレンズ16と、入光端部12aに設けられ、レンズ16を保持するレンズ保持部17とを備えるように構成する。また、入光端部12a、レンズ16およびレンズ保持部17を、水中に配置されるように構成する。また、レンズ保持部17を、入光端部12aとレンズ16との間に設けられ、周囲の水を導入可能な水導入部17dを含むように構成する。これにより、入光端部12a、レンズ16およびレンズ保持部17を水中に配置する場合にも、レンズ保持部17を耐圧構造(水圧に耐える構造)にする必要がないので、レンズ保持部17を耐圧構造にする場合に比べて、レンズ保持部17の小型化および軽量化を図ることができる。
【0050】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0051】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0052】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、光通信装置が、海中において用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、光通信装置が、海中以外の水中(湖、ダムなど)において用いられてもよい。また、光通信装置が、水中以外の環境(陸上など)において用いられてもよい。
【0053】
また、上記第1および第2実施形態では、受光素子が、光電子増倍管により構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、受光素子が、アバランシェフォトダイオードにより構成されていてもよい。
【0054】
また、上記第1および第2実施形態では、光通信装置が、入光端部保持部を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光通信装置が、入光端部保持部を備えなくてもよい。この場合、たとえば、複数の入光端部が、所定の向きに配置されるように、水中構造物などの取付対象に取り付けられてもよい。
【0055】
また、上記第1および第2実施形態では、複数の入光端部の少なくとも一部が、水中の互いに異なる位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の入光端部の全部が、水中の1つの位置に配置されてもよい。
【0056】
また、上記第1および第2実施形態では、複数の入光端部の少なくとも一部が、固定体以外の水中構造物に取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の入光端部の少なくとも一部が、固定体、保護容器などに取り付けられてもよい。
【0057】
また、上記第1および第2実施形態では、入光端部に、水中を移動する移動体からの通信光が入光される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、入光端部に、別の固定体からの通信光が入光されてもよい。
【0058】
また、上記第1および第2実施形態では、光通信装置が水中に固定された固定体に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、光通信装置が水中を移動する移動体に設けられていてもよい。この場合、複数の入光端部の少なくとも一部が、移動体の互いに異なる位置に配置されてもよいし、複数の入光端部の全部が、移動体の1つの位置に配置されてもよい。
【0059】
また、上記第1および第2実施形態では、複数の受光素子が、単一の保護容器に収容される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の受光素子が、複数の保護容器に分散して収容されてもよい。ただし、光通信装置の構造を簡素化する観点からは、複数の受光素子が、単一の保護容器に収容されることが好ましい。
【0060】
また、上記第1および第2実施形態では、複数の受光素子が、アレイ状に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の受光素子が、分散して配置されてもよい。
【0061】
また、上記第1および第2実施形態では、出光端部保持部が、複数設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、出光端部保持部が、複数の出光端部を保持する1つの部材であってもよい。
【0062】
また、上記第1および第2実施形態では、移動体がAUVである例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、移動体は、有人潜水艇(HOV: Human Occupied Vehicle)であってもよい。また、移動体は、ケーブルを介して人が操縦する遠隔操縦ロボット(ROV: Remotely Operated Vehicle)であってもよい。また、移動体は、その他の船舶であってもよい。
【0063】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0064】
(項目1)
複数のチャンネルに対応するように設けられ、通信光を受光する複数の受光素子と、
前記複数の受光素子に対応するように設けられ、前記複数の受光素子に前記通信光を導く複数の光ファイバと、を備え、
前記複数の光ファイバの各々は、前記通信光の入光端部と、前記通信光の出光端部とを含み、
複数の前記出光端部の各々は、前記複数の受光素子の各々の近傍に配置されており、
複数の前記入光端部の各々は、所定の位置および向きに配置可能に構成されている、光通信装置。
【0065】
(項目2)
水中に配置され、前記複数の受光素子を収容する保護容器をさらに備え、
前記複数の光ファイバは、前記出光端部が前記保護容器の内部に設けられるとともに、前記入光端部が前記保護容器の外部に設けられるように構成されている、項目1に記載の光通信装置。
【0066】
(項目3)
複数の前記入光端部の少なくとも一部は、水中の互いに異なる位置に配置されている、項目2に記載の光通信装置。
【0067】
(項目4)
前記入光端部は、水中を移動する移動体からの前記通信光が入光されるように構成されている、項目3に記載の光通信装置。
【0068】
(項目5)
複数の前記入光端部の少なくとも一部は、水中構造物に取り付けられている、項目2~4のいずれか1項に記載の光通信装置。
【0069】
(項目6)
前記複数の受光素子は、アレイ状に配置されている、項目2~5のいずれか1項に記載の光通信装置。
【0070】
(項目7)
前記複数の受光素子の各々の近傍において、複数の前記出光端部を保持する出光端部保持部をさらに備える、項目1~6のいずれか1項に記載の光通信装置。
【0071】
(項目8)
前記入光端部に前記通信光を集光するレンズと、
前記入光端部に設けられ、前記レンズを保持するレンズ保持部とをさらに備え、
前記入光端部、前記レンズおよび前記レンズ保持部は、水中に配置されるように構成されており、
前記レンズ保持部は、前記入光端部と前記レンズとの間に設けられ、周囲の水を導入可能な水導入部を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の光通信装置。
【符号の説明】
【0072】
1、101 第1光通信装置(光通信装置)
11 受光素子
12 光ファイバ
12a 入光端部
12b 出光端部
13 保護容器
14 出光端部保持部
16 レンズ
17 レンズ保持部
17d 水導入部
82 移動体
83 水中構造物
図1
図2
図3
図4
図5