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  • 特許-ろう接装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】ろう接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/02 20060101AFI20230421BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230421BHJP
   B23K 3/03 20060101ALI20230421BHJP
   B23K 3/04 20060101ALI20230421BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B23K31/02 310F
B23K1/00 A
B23K3/03 B
B23K3/04 Y
G01B11/24 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018099338
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019202338
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000150213
【氏名又は名称】株式会社オプトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】與語 照明
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀行
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-263879(JP,A)
【文献】特開2011-174855(JP,A)
【文献】特開2000-024777(JP,A)
【文献】特開平08-145637(JP,A)
【文献】特開平09-275272(JP,A)
【文献】特開2000-088542(JP,A)
【文献】特開2015-142032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/02
B23K 1/00
B23K 3/03
B23K 3/04
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろう付け箇所に配置されるろう材を加熱可能に構成される加熱部と、
前記ろう材の溶融に伴って前記ろう材の形状が変化したことを検出可能に構成される検出部と、
前記加熱部による加熱出力を制御可能に構成され、前記加熱部による加熱を開始した後、前記検出部によって前記ろう材の形状が変化したことを検出したら、前記加熱部による加熱出力を低下又は停止させる制御部と、
を備え、
前記検出部は、
光を投射して前記ろう材の表面に所定のパターンを投影可能に構成される投光部と、
前記パターンを撮像可能に構成される撮像部と、
を有し、
前記検出部は、前記投光部と前記ろう材との相対位置を変更することなく前記投光部から前記ろう材の表面に前記パターンを投影し続ける状態となり、その状態で前記撮像部によって撮像される前記パターンに基づいて前記ろう材の三次元形状を計測し、その計測値の変化に基づいて、前記ろう材の三次元形状が変化したことを検出可能に構成されている
ろう接装置。
【請求項2】
請求項1に記載のろう接装置であって、
前記投光部は、レーザー光を投射して、その投光先となる前記ろう材の表面に1本のライン状の前記パターンであるレーザーラインを投影可能に構成されている
ろう接装置。
【請求項3】
請求項2に記載のろう接装置であって、
前記投光部の投光方向と前記撮像部の撮像方向との交点を通る鉛直線の位置と前記レーザーラインが照射された高輝度領域の位置とのずれ量に基づき、三角測量の要領で前記鉛直線から前記ろう材の表面までの距離を求めることにより、前記ろう材の三次元形状を計測するように構成されている
ろう接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ろう接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像された置きろうの形状変化を判別し、判別された変化に応答して加熱手段を制御するろう付け装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の技術では、撮像カメラ(30)によって撮像される置きろう(15)の外郭線の形状に、特許文献1の図2又は図4に例示されるような変化が生じたことを制御部(33)が判別して、制御部(33)がバーナー(19)又は加熱コイル(36)による加熱出力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-263879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の図1又は図5に例示されるように、撮像カメラが斜め下方に向けられている場合、その撮像カメラで置きろうの周辺を撮像しても、特許文献1の図2又は図4に例示されるような画像は得られない。すなわち、特許文献1の図2又は図4に例示されるような画像は、置きろうの周辺を略水平な方向から撮像する場合に得られる画像であって、斜め下方に向けられ撮像カメラによって撮像可能な画像ではない。
【0005】
撮像カメラが斜め下方に向けられている場合、その撮像カメラで置きろうの周辺を撮像すると、置きろうの外郭線は、被接合部材(12)の上端面に重なる位置に見える。この場合、被接合部材の上端面と置きろうの色が似ていれば、置きろうの外郭線を明確に識別することは難しくなり、置きろうの溶融タイミングを適切に検出できない可能性がある。
【0006】
また、仮に置きろうの外郭線を識別できるとしても、撮像カメラが斜め下方に向けられている場合、溶融前の置きろうは略楕円形のリング状に見え、置きろうの溶融後に形成されるフィレットも略楕円形のリング状に見える。この場合、置きろうの溶融前後で外郭線の位置に大差が生じないことがあるので、その場合、置きろうの溶融タイミングを適切に検出できない可能性がある。
【0007】
以上のような諸問題は、撮像カメラが斜め下方に向けられている場合に想定される問題なので、置きろうの周辺を略水平な方向から撮像可能な位置に撮像カメラを配設可能であれば解決できる可能性はある。しかし、ろう付けされる箇所の周辺には、バーナー又は加熱コイルはもちろんのこと、様々な器機が配置され得る。そのため、他の位置には配置できない器機を順に配置してゆくと、結果として、置きろうの周辺を略水平な方向から撮像可能な位置に撮像カメラを配設することが困難になることがある。
【0008】
また、ろう付される母材(接合材及び被接合材)のサイズ及び形状によっては、その母材が障害物となって、置きろうの周辺を略水平な方向から撮像可能な位置に撮像カメラを配設することが困難になることがある。あるいは、置きろうの周辺を略水平な方向から撮像しようとすると、置きろうの周辺が母材の陰に隠れてしまうことがある。つまり、様々な事情により、置きろうの周辺を略水平な方向から撮像できない可能性がある。
【0009】
本開示の一局面においては、ろう材の周辺を略水平な方向から撮像しなくても、ろう材の形状変化をより的確に認識して適正な加熱制御を実行可能なろう接装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、ろう接装置である。ろう接装置は、加熱部と、検出部と、制御部と、を備える。加熱部は、ろう付け箇所に配置されるろう材を加熱可能に構成される。検出部は、ろう材の溶融に伴ってろう材の形状が変化したことを検出可能に構成される。制御部は、加熱部による加熱出力を制御可能に構成され、加熱部による加熱を開始した後、検出部によってろう材の形状が変化したことを検出したら、加熱部による加熱出力を低下又は停止させる。検出部は、投光部と、撮像部と、を有する。投光部は、光を投射してろう材の表面に所定のパターンを投影可能に構成される。撮像部は、パターンを撮像可能に構成される。検出部は、撮像部によって撮像されるパターンの形状の変化に基づいて、ろう材の形状が変化したことを検出可能に構成されている。
【0011】
このように構成されるろう接装置によれば、加熱部による加熱を開始した後、検出部によってろう材の形状が変化したことを検出したら、加熱部による加熱出力を低下又は停止させる。これにより、ろう材の溶融タイミングに合わせて、加熱部による加熱出力を低下又は停止させることができ、加熱時間の最適化を図ることができる。また、検出部は、撮像部によって撮像されるパターンの形状の変化に基づいて、ろう材の形状が変化したことを検出する。そのため、ろう材の外郭線を撮像するのに適した位置に撮像部を配置できない場合や、撮像された画像中においてろう材の外郭線を明確に判別できない場合であっても、投光部から投影されるパターンを撮像部で適正に撮像できれば、ろう材の形状が変化したことを適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1はろう接装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は第1センサーユニットの撮像方向及びレーザーライン投射方向を示す説明図である。
図3図3Aはワークを構成する母材及びろう材が分解された状態を示す説明図である。図3Bはワークを構成する母材及びろう材が組み付けられた状態を示す説明図である。
図4図4Aはワーク、加熱コイル、第1センサーユニット及び第2センサーユニットを示す説明図である。図4Bはワーク及び加熱コイルを示す説明図である。
図5図5はワークにレーザーライン光が照射された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、上述のろう接装置について、例示的な実施形態を挙げて説明する。図1に示すように、ろう接装置1は、制御装置3、高周波誘導加熱装置5、第1センサーユニット7A、第2センサーユニット7B、加熱コイル可搬ロボット8及びワーク搬入・搬出ロボット9を備える。高周波誘導加熱装置5は、高周波溶接電源装置11、水冷冷却装置13及び加熱コイル15を備える。第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bは、それぞれがレーザーラインジェネレーター17及びCCDカメラ19を備える。
【0014】
制御装置3は、例えば、マイクロプロセッサ及びフラッシュメモリ等を備えたPLC(programmable logic controller)によって構成される。制御装置3は、第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bからの信号を入力可能に構成される。また、制御装置3は、高周波誘導加熱装置5、加熱コイル可搬ロボット8及びワーク搬入・搬出ロボット9に対する制御を実行可能に構成される。
【0015】
高周波誘導加熱装置5において、高周波溶接電源装置11は、加熱コイル15に対して交流電流を供給する(本実施形態の場合、最大出力20kW、周波数30kHz)。加熱コイル15に交流電流が供給されると、加熱コイル15はワーク21の加熱対象箇所周辺に磁界を発生させて、誘導加熱によってワーク21を加熱する。水冷冷却装置13は、加熱コイル15に対して冷却水を供給する。水冷冷却装置13から供給される冷却水は、加熱コイル15の内部を経て水冷冷却装置13へと循環する。これにより、加熱コイル15において発生する熱やワーク21からの輻射熱によって、加熱コイル15の温度が過剰に上昇するのを抑制する。
【0016】
第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bにおいて、レーザーラインジェネレーター17は、レーザー光を投射して、その投光先となる箇所に1本のライン状のパターン(以下、このライン状パターンのことをレーザーラインとも称する。)を投影可能に構成されている。CCDカメラ19は、ろう材の溶融状態を測定するために設けられた測定用カメラである。CCDカメラ19は、レーザーラインジェネレーター17の投光先となる箇所に向けて配置されている。
【0017】
レーザーラインジェネレーター17による投光方向とCCDカメラ19による撮像方向は、図2に示すように、第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bによる撮像位置(図2中に示すCCDカメラ19からの距離が撮像距離450mm±10mmとなる位置。)で交差する方向となるように構成されている。第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bによる測定領域は、高さ16mm×水平幅20mm×奥行き±10mmの範囲内となる。「高さ」は、図2において紙面に直交する方向の寸法である。なお、図示は省略するが、第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bには、撮像領域の設定を簡易的に行うため、上述のCCDカメラ19とは別に、大視野CCDカメラ(縦70mm×横90mm×奥行き±300mm)も搭載されている。また、図示は省略するが、第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bには、照明用のLED等も搭載されている。
【0018】
加熱コイル可搬ロボット8は、汎用の6軸産業用ロボット(垂直多関節ロボット)によって構成され、その可動部の先端に加熱コイル15が取り付けられている。加熱コイル可搬ロボット8を作動させることにより、ろう接を実施可能な位置(以下、作動位置とも称する。)へ加熱コイル15を移動させたり、ワーク21の搬入・搬出を妨げない位置(以下、待避位置とも称する。)へ加熱コイル15を待避させたりすることができる。ワーク搬入・搬出ロボット9は、汎用の6軸産業用ロボットによって構成され、その可動部の先端に設けられたハンド部でワーク21を把持して、ワーク21を搬入元からろう接を実施可能な位置(以下、ろう接位置とも称する。)へと移動させたり、ワーク21をろう接位置から搬出先へと移動させたりすることができる。
【0019】
次に、ろう接装置1の挙動について説明する。本実施形態では、図3A及び図3Bに示すようなワーク21を例に挙げる。図3A及び図3Bに示すワーク21は、アルミパイプ23(外径16mm、肉厚1.5mm、長さ200mm)と、アルミ製のチャージバルブ25(外径13mm、長さ30mm)とによって構成される。アルミパイプ23の側面には深さ2.5mmの凹み部が形成され、その凹み部の底面に内径8mmの穴が形成されている。この穴にチャージバルブ25の一端が挿し込まれる。ろう材27としてはリングろう(外径13.5mm、内径9.5mm)を使用する。ワーク21は、図3Bに示すような状態に組み付けられて、図示しない固定治具によって固定されて、固定治具とともに一体化される。
【0020】
固定治具と一体化されたワーク21は、人手によって搬入元に設置される。制御装置3において、利用者がろう接開始を指示する操作を実施すると、制御装置3は、ワーク搬入・搬出ロボット9に対してワーク21の搬入を指令する。制御装置3からの指令を受けたワーク搬入・搬出ロボット9は、固定治具と一体化されたワーク21を搬入元からろう接位置へと運搬する。続いて、制御装置3は、加熱コイル可搬ロボット8に対し、加熱コイル15の移動を指令する。制御装置3からの指令を受けた加熱コイル可搬ロボット8は、加熱コイル15を待避位置から作動位置へと移動させる。これにより、加熱コイル15とワーク21は、図4A及び図4Bに示すような相対位置に配置されることになる。
【0021】
第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bは、図4Aに示すように、ろう接位置へと運搬されたワーク21を、ろう材27の斜め上方から撮像可能な位置に配置されている。第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bによる撮像位置(図2参照。)には、チャージバルブ25及びろう材27が配置される。第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bは、レーザーラインジェネレーター17からレーザー光を投射する。これにより、チャージバルブ25及びろう材27の表面には、図5に示すように、チャージバルブ25及びろう材27の表面に沿って略上下方向へと延びるレーザーラインが投影される。第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bは、CCDカメラ19で上述の測定領域(高さ16mm×水平幅20mm×奥行き±10mmの範囲。)を撮像する。なお、測定領域内において、ろう材27に投影されるレーザーラインが存在する範囲を、あらかじめ任意の大きさで絞り込んでおき、その範囲をろう接検出領域として指定しておくことができる。
【0022】
続いて、制御装置3は、高周波誘導加熱装置5に対し加熱開始を指令する。制御装置3からの指令を受けた高周波誘導加熱装置5は、高周波溶接電源装置11によって加熱コイル15の出力を高出力(本実施形態の場合、例えば最大出力の80%程度。)に調節し、ワーク21の加熱を開始する。加熱コイル15は、出力を大きくするほど加熱時間を短縮できる。ただし、加熱コイル15の出力を過度に大きくすると(本実施形態の場合、例えば最大出力の100%程度にすると)、母材に熱歪や凹みが生じやすくなる傾向がある。また、加熱コイル15の出力を過度に小さくすると(本実施形態の場合、例えば最大出力の60%程度にすると)、ろう材27の溶融に至るまでの時間のばらつきが大きくなる傾向がある。したがって、本実施形態では、加熱コイル15の出力を、上述の通り、最大出力の80%程度に調節した。
【0023】
第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bは、ろう接検出領域内に投影されるレーザーラインの形状変化を0.1秒単位で検出し、ろう材27の溶融状態を監視する。ろう材27の表面形状が変化した場合には、レーザーラインの形状が変化する。第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bは、レーザーラインの形状が変化した際、その旨の信号を制御装置3へと出力する。本実施形態の場合、第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bは、レーザーラインが照射されたろう材27の表面の三次元形状を検出し、その三次元形状が変化した際に、制御装置3へ信号を出力する。
【0024】
レーザーラインジェネレーター17の配設位置及び投光方向と、CCDカメラ19の配設位置及び撮像方向とが既知なので、上記撮像方向と上記投光方向との交点を通る鉛直線の位置とレーザーラインが照射された高輝度領域の位置とのずれ量に基づき、三角測量の要領で、上記鉛直線からろう材27の表面までの距離を求めることができる。これにより、ろう材27の表面の三次元座標値を算出することができ、その三次元座標値が変化した場合に、レーザーラインが照射された範囲の三次元形状が変化したことを検出することができる。本実施形態の場合は、加熱開始後20~23秒程度でレーザーラインの形状変化が検出された。なお、レーザーラインの形状変化は、上述のように三次元座標を算出した上で、その座標値の変化を検出してもよいが、三次元座標を算出することなく、レーザーラインが照射された高輝度領域の形状変化を検出するようにしてもよい。
【0025】
第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bがレーザーラインの形状変化を検出したら、制御装置3は、高周波誘導加熱装置5に対し加熱出力の低減を指令する。制御装置3からの指令を受けた高周波誘導加熱装置5は、高周波溶接電源装置11によって加熱コイル15の出力を低出力(本実施形態の場合、例えば最大出力の30%程度。)に調節し、ろうの溶け込みを促す。本実施形態の場合、加熱コイル15の出力を低出力に切り替えた状態を3秒保持して、その後は加熱コイル15の出力を停止させる。この保持時間は、ワーク21の形状や材質等に応じて変わり得るので、どの程度の保持時間が最適であるのかは、ワーク21ごとに試行して決定すればよい。続いて、制御装置3は、ワーク搬入・搬出ロボット9に対してワーク21の搬出を指令する。制御装置3からの指令を受けたワーク搬入・搬出ロボット9は、固定治具と一体化されたワーク21をろう接位置から搬出先へと運搬する。
【0026】
[効果]
以上説明したろう接装置1によれば、加熱コイル15(本開示でいう加熱部の一例に相当。)による加熱を開始した後、第1センサーユニット7A(本開示でいう検出部の一例に相当。)及び第2センサーユニット7B(本開示でいう検出部の一例に相当。)によってろう材27の形状が変化したことを検出したら、加熱コイル15による加熱出力を低下させる。これにより、ろう材27の溶融タイミングに合わせて、加熱コイル15による加熱出力を低下させることができ、加熱時間の最適化を図ることができる。
【0027】
また、第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bは、CCDカメラ19(本開示でいう撮像部の一例に相当。)によって撮像されるレーザーライン(本開示でいうパターンの一例に相当。)の形状の変化に基づいて、ろう材27の形状が変化したことを検出する。そのため、ろう材27の外郭線を撮像するのに適した位置にCCDカメラ19を配置できない場合や、撮像された画像中においてろう材27の外郭線を明確に判別できない場合であっても、レーザーラインジェネレーター17(本開示でいう投光部の一例に相当。)から投影されるレーザーラインをCCDカメラ19で適正に撮像できれば、ろう材27の形状が変化したことを適切に検出することができる。
【0028】
また、本実施形態の場合、制御装置3(本開示でいう制御部の一例に相当。)は、加熱コイル15による加熱を開始する際には、加熱コイル15を最大出力の80%(本開示でいう第一の加熱出力の一例に相当。)で作動させ、その後、第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bによってろう材27の形状が変化したことを検出したら、加熱コイル15を最大出力の30%(本開示でいう第二の加熱出力の一例に相当。)で作動させ、その後、3秒(本開示でいう所定の時間の一例に相当。)が経過したら、加熱コイル15による加熱を停止させるように構成されている。したがって、加熱コイル15を最大出力の30%で作動させる3秒間でろうの溶け込みを促して適切なろう付けを実施することができる。
【0029】
また、本開示の場合、誘導加熱によって加熱対象を加熱可能な加熱コイル15を採用しているので、他の加熱手段を用いる場合に比べ、加熱出力の制御を容易に実施することができる。
【0030】
[他の実施形態]
以上、ろう接装置1について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0031】
例えば、上記実施形態では、第1センサーユニット7A及び第2センサーユニット7Bでろう材27の形状変化を検出していたが、このようなセンサーユニットの数は、1つでも3つ以上でもよい。また、複数のセンサーユニットを設ける場合は、いずれか1つのセンサーユニットでろう材27の形状変化を検出した時点で加熱コイル15の出力を低下させてもよいし、所定数以上のセンサーユニットでろう材27の形状変化を検出した時点で加熱コイル15の出力を低下させてもよい。これらの制御は、ワーク21の形状やワーク21及びろう材27の材質等によって最適なものを選択すればよい。
【0032】
また、上記実施形態では、誘導加熱によって加熱対象を加熱可能な加熱コイル15を採用していたが、他の加熱手段を用いてもよい。他の加熱手段の例としては、例えば、ガスバーナーを挙げることができる。この場合は、ガスバーナーへ供給されるガスの流量を制御することにより、ガスバーナーの加熱出力を調節することができる。また、上記実施形態では、加熱コイル可搬ロボット8及びワーク搬入・搬出ロボット9を備える例を示したが、これらのロボットを設けるか否かは任意である。
【0033】
また、上記実施形態では、ろう接対象となる母材としてアルミ製の母材(アルミパイプ23及びアルミ製チャージバルブ25)を例示したが、母材の材質についても任意である。ろう材27の材質は、母材の材質に応じて最適なものを選べばよい。また、ろう材27の形態は粉末状、ペースト状等であってもよい。ろう接対象となる母材についても、パイプ及びチャージバルブに限定されない。
【0034】
また、上記実施形態では、ろう材27の表面に1本のレーザーラインを投影する例を示したが、ろう材27の表面に投影されるパターンの形状や数は、ろう材27の表面形状に変化があったことを検出できるパターンであれば、1本のレーザーラインに限定されない。例えば、複数本のラインで構成される縞模様を投影してもよいし、複数本のラインが縦横に並ぶ格子模様を投影してもよい。あるいは、複数のドットを投影してもよいし、その他の任意の形状を有する模様を投影してもよい。また、上記実施形態では、ろう材27の表面に投影されるパターンは特定の位置から移動しないパターンとなっていたが、所定の走査方向へ移動するラインを投影してもよい。
【0035】
以上の他、上記各実施形態における1つの構成要素によって実現していた機能を、複数の構成要素によって実現するように構成してもよい。また、複数の構成要素によって実現していた機能を1つの構成要素によって実現するように構成してもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0036】
[補足]
なお、以上説明した例示的な実施形態から明らかなように、本開示のろう接装置は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
【0037】
本開示の一態様では、制御部は、加熱部による加熱を開始する際には、加熱部を第一の加熱出力で作動させ、その後、検出部によってろう材の形状が変化したことを検出したら、加熱部を第一の加熱出力よりも低出力となる第二の加熱出力で作動させ、その後、加熱部を第二の加熱出力で作動させてから所定の時間が経過したら、加熱部による加熱を停止させるように構成されていてもよい。
【0038】
本開示の一態様では、加熱部が、誘導加熱によって加熱対象を加熱可能な加熱コイルによって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…ろう接装置、3…制御装置、5…高周波誘導加熱装置、7A…第1センサーユニット、7B…第2センサーユニット、8…加熱コイル可搬ロボット、9…ワーク搬入・搬出ロボット、11…高周波溶接電源装置、13…水冷冷却装置、15…加熱コイル、17…レーザーラインジェネレーター、19…CCDカメラ、21…ワーク、23…アルミパイプ、25…チャージバルブ、27…ろう材。
図1
図2
図3
図4
図5