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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】防犯センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 13/19 20060101AFI20230421BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20230421BHJP
   G01J 1/06 20060101ALI20230421BHJP
   G01V 8/20 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
G08B13/19
G01J1/02 W
G01J1/06 A
G01V8/20 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018170874
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020042662
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】317006258
【氏名又は名称】オプテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐幸
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-506422(JP,A)
【文献】米国特許第05311024(US,A)
【文献】特開2003-240865(JP,A)
【文献】特開2009-002773(JP,A)
【文献】特開2009-128228(JP,A)
【文献】米国特許第05703368(US,A)
【文献】米国特許第07115871(US,B1)
【文献】Disital Sequrity Controls Ltd.,BRAVO 6 DUAL PIR Motion Detector,カナダ,2022年10月26日,http://cms.dsc.com/download.php?t=1&id=12180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J1/00-1/60
11/00
G01V1/00-99/00
G08B13/00-15/02
19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の対象方向に対する視野を有する赤外線検知素子を各々有し、所定の配列方向である上下方向に並ぶ複数のセンサーユニットと、
対応する検知エリアから前記赤外線検知素子の各々へ到達する検知線が透過し、前記所定の配列方向に並ぶ複数の光学系と、
前記赤外線検知素子の各々からの出力信号が入力され、各出力信号に基づいて、検知対象物の検知を示す信号を含む対象物検知信号を出力する対象物検知回路と、
を備えた防犯センサ装置であって、
さらに、
所定の高さ以下の低所に取り付けられて前記検知対象物の検知を行う低所取付検知と、前記所定の高さよりも高い高所に取り付けられて前記検知対象物の検知を行う高所取付検知との、該2つの検知を各々行うために、使用者の操作により、前記複数のセンサーユニットの各々と前記複数の光学系との間の構成を変化させる切り換え部を備え
さらに、所定の前記赤外線検知素子の前記視野の一部を遮る視野制限部材を備え、
前記切り換え部は、前記構成を変化させるために、
一方に切り換えられることで、前記赤外線検知素子と前記視野制限部材との間の前記所定の配列方向における相対的な位置を変化させて、前記赤外線検知素子を前記高所取付検知のための第一位置に位置させて、かつ、前記赤外線検知素子の前記視野を遮らない位置に前記視野制限部材を配置させ、前記光学系を透過する前記検知線とこの検知線が入光する前記赤外線検知素子との位置上の対応を変化させる第一動作を行って、第一方向からの前記検知線を前記視野制限部材で遮ることなく前記赤外線検知素子に到達させ、かつ、前記第一方向とは異なる第二方向からの前記検知線が到達しない前記第一位置に前記赤外線検知素子を位置させ、
前記一方とは別の方向に切り換えられることで、低所取付検知を行うために、前記赤外線検知素子を前記第一位置から上下方向に移動させ、かつ、前記視野制限部材が前記赤外線検知素子の前記視野を遮らない位置を脱することで前記第一方向からの前記検知線を含む一部の前記検知線を遮断して、前記第二方向からの前記検知線を前記赤外線検知素子に到達させ、
さらに、前記検知線を反射させる二次鏡を備え、
前記切り換え部は、前記構成を変化させるために、
前記一方に切り換えられることで、前記赤外線検知素子と前記二次鏡との間の前記所定の配列方向における相対的な位置を変化させて、前記赤外線検知素子を前記高所取付検知のための第二位置に位置させて、かつ、前記赤外線検知素子の前記視野内に含まれる位置に前記二次鏡を配置させ、前記光学系を透過する前記検知線とこの検知線が入光する前記赤外線検知素子との位置上の対応を変化させる第二動作を行って、前記二次鏡で前記視野内に含まれる前記検知線を反射させて前記第一方向からの前記検知線を前記赤外線検知素子に到達させ、かつ、前記第二方向からの前記検知線が到達しない前記第二位置に前記赤外線検知素子を位置させ、
前記別の方向に切り換えられることで、低所取付検知を行うために、前記赤外線検知素子を前記第二位置から上下方向に移動させ、かつ、前記二次鏡を前記視野内に含まれる位置から脱することで前記第一方向からの前記検知線を含む前記二次鏡から反射した前記検知線を前記赤外線検知素子に到達させないようにして、前記第二方向からの前記検知線を前記赤外線検知素子に到達させ、
前記第一方向は、前記第二方向よりも、下方を向く角度が急である、
防犯センサ装置。
【請求項2】
請求項に記載の防犯センサ装置において、
前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記第一動作における前記配置および前記対応の変化を同時に行う、
防犯センサ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防犯センサ装置において、
前記切り換え部によって切り換えられて前記第一動作を行う前記センサーユニットを複数有し、
前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記複数のセンサーユニットの前記第一動作を同時に行う、
防犯センサ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の防犯センサ装置において、
前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記第二動作における前記配置および前記対応の変化を同時に行う、
防犯センサ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の防犯センサ装置において、
前記切り換え部によって切り換えられて前記第二動作を行う前記センサーユニットを複数有し、
前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記複数のセンサーユニットの前記第二動作を同時に行う、
防犯センサ装置。
【請求項6】
所定の対象方向に対する視野を有する赤外線検知素子を各々有し、所定の配列方向である上下方向に並ぶ複数のセンサーユニットと、
対応する検知エリアから前記赤外線検知素子の各々へ到達する検知線が透過し、前記所定の配列方向に並ぶ複数の光学系と、
前記赤外線検知素子の各々からの出力信号が入力され、各出力信号に基づいて、検知対象物の検知を示す信号を含む対象物検知信号を出力する対象物検知回路と、
を備えた防犯センサ装置であって、
さらに、
所定の高さ以下の低所に取り付けられて前記検知対象物の検知を行う低所取付検知と、前記所定の高さよりも高い高所に取り付けられて前記検知対象物の検知を行う高所取付検知との、該2つの検知を各々行うために、使用者の操作により、前記複数のセンサーユニットの各々と前記複数の光学系との間の構成を変化させる切り換え部を備え、
さらに、所定の前記赤外線検知素子の前記視野の一部を遮る視野制限部材と、前記検知線を反射させる二次鏡とを備え、
前記切り換え部は、前記構成を変化させるために、
一方に切り換えられることで、前記赤外線検知素子と前記視野制限部材との間の前記所定の配列方向における相対的な位置を変化させて、前記赤外線検知素子を前記高所取付検知のための第一位置に位置させて、かつ、前記赤外線検知素子の前記視野を遮らない位置に前記視野制限部材を配置させ、前記光学系を透過する前記検知線とこの検知線が入光する前記赤外線検知素子との位置上の対応を変化させる第一動作を行って第一方向からの前記検知線を前記視野制限部材で遮ることなく前記赤外線検知素子に到達させ、かつ、前記第一方向とは異なる第二方向からの前記検知線が到達しない前記第一位置に前記赤外線検知素子を位置させ、
前記一方とは別の方向に切り換えられることで、低所取付検知を行うために、前記赤外線検知素子を前記第一位置から上下方向に移動させ、かつ、前記視野制限部材が前記赤外線検知素子の前記視野を遮らない位置を脱することで前記第一方向からの前記検知線を含む一部の前記検知線を遮断して、前記第二方向からの前記検知線を前記赤外線検知素子に到達させ、
かつ、
前記一方に切り換えられることで、前記赤外線検知素子と前記二次鏡との間の前記所定の配列方向における相対的な位置を変化させて、前記赤外線検知素子を前記高所取付検知のための第二位置に位置させて、かつ、前記赤外線検知素子の前記視野内に含まれる位置に前記二次鏡を配置させ、前記光学系を透過する前記検知線とこの検知線が入光する前記赤外線検知素子との位置上の対応を変化させる第二動作を行って前記二次鏡で前記視野内に含まれる前記検知線を反射させて前記第一方向からの前記検知線を前記赤外線検知素子に到達させ、かつ、前記第二方向からの前記検知線が到達しない前記第二位置に前記赤外線検知素子を位置させ、
前記別の方向に切り換えられることで、低所取付検知を行うために、前記赤外線検知素子を前記第二位置から上下方向に移動させ、かつ、前記二次鏡を前記視野内に含まれる位置から脱することで前記第一方向からの前記検知線を含む前記二次鏡から反射した前記検知線を前記赤外線検知素子に到達させないようにして、前記第二方向からの前記検知線を前記赤外線検知素子に到達させ、
前記第一方向は、前記第二方向よりも、下方を向く角度が急であり、
さらに、前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記第一動作および前記第二動作を同時に行う、
防犯センサ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の防犯センサ装置において、
前記赤外線検知素子は、使用者の操作により、対応する前記センサーユニット内で、所定の位置に移動可能であり、
前記使用者の操作により、前記第一動作または前記第二動作が行われた時、
前記赤外線検知素子は、前記所定の位置から、前記第一位置または前記第二位置に移動する、
防犯センサ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の防犯センサ装置において、
前記視野制限部材は、円筒面の一部または多角形筒の一部であり、前記赤外線検知素子よりも前記光学系に近い位置に配置されている、
防犯センサ装置。
【請求項9】
請求項3、5または6に記載の防犯センサ装置において、
複数発生する前記相対的な位置の変化のうち、異なる大きさの位置の変化が含まれる、
防犯センサ装置。
【請求項10】
請求項に記載の防犯センサ装置において、
前記視野制限部材と前記二次鏡とが一体化されている、
防犯センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知線を検知する検知手段を有する防犯センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線等の電磁波である検知線を投光する投光器と受光器とを一対以上有し、投光された赤外線の物体における遮光を利用して物体を検知する能動型赤外線防犯センサ(AIR[Active Infra-Red]センサ)や、検知対象物の生物や人体から発せられる赤外線を検知線として検知する受動型赤外線防犯センサ(PIR[Passive Infra-Red]センサ)を含む防犯センサ装置が知られている。
【0003】
PIRセンサを含む防犯センサ装置として、例えば、次の(1)、(2)の2つの従来技術が知られている。
【0004】
(1)上下2段構成である水平方向約90度の視野角[FOV:Field Of View]の赤外線検知素子を各々有する2つのセンサーユニットと、複数のレンズ片が一体化された半円筒形状のフレネルレンズ等の光学系とを備え、更にそれぞれのセンサーユニットからの出力信号が入力される人体検知回路等が備えられた受動型赤外線人体検知装置(特許文献1)。この受動型赤外線人体検知装置において、該人体検知回路は、上下両方のセンサーユニットからの出力信号の入力があった場合に検知対象物たる人体の検知を示す信号を含む人体検知信号を出力する論理積(AND)回路を有する。以下、複数のセンサーユニット(赤外線検知素子)からの出力信号の入力を受けて、論理積(AND)回路により検知対象物の検知を行うことを、論理積(AND)演算による検知と呼ぶ。
【0005】
この受動型赤外線人体検知装置は、例えば12m程度の水平範囲の人体を検知する目的のため、例えば人の上半身の高さまたは身長程度以下の高さ(典型的には、ヒトの腰から胸の辺りの高さ)である低所に取り付けられることが想定された構成となっている(この場合の検知を、低所取付検知と称する)。すなわち、上下2段のセンサーユニットのうちの上ユニットは、ほぼ水平方向の1つの検知エリアから(具体的には、検知エリア内の検知対象物から)の検知線(水平方向検知線と称する)を受光し、下ユニットは、水平方向よりも下方の1つの検知エリアからの検知線(下方検知線と称する)を受光する構成となっている。この構成により、人体が発した水平方向検知線および下方検知線を上下両ユニットが受光して前記信号を出力し、これらの信号の入力により人体検知回路(AND回路)からの出力たる人体検知信号を出力する。一方で、この受動型赤外線人体検知装置では、例えば遠方のボイラ等の高温発生源は、上ユニットでは検知してしまうが、下ユニットが検知することがなく、また、例えば犬などの小動物や地面の温度上昇は、下ユニットでは検知してしまうが、上ユニットが検知することはない。このように、この受動型赤外線人体検知装置は、人体検知回路のAND回路を含む上記構成により、誤検知を排除し得て、精度よく人体を検知できる。
【0006】
(2)1つのみの赤外線検知素子を有し、低所に取り付けられた場合には、水平方向検知線を受光するように取付モードを切換え(この検知は、低所取付検知である)、また、例えば人の身長程度よりも高い高さ(典型的には2~3m程度の範囲であり、より好ましくは頭上や軒下など2m程度の高さ)である高所に取り付けられた場合には、センサの定格距離内で、遠方から近距離まで検知が可能となる様、複数の下方の検知エリアから複数の下方検知線を受光するように(この場合の検知を高所取付検知と称し、この検知線を高所検知線と称する)、取付モードを切換える機能を有する受動型赤外線人体検知装置。なお、前記高所検知線には、水平方向検知線が含まれてもよい。この受動型赤外線人体検知装置は、例えば12m程度の水平範囲において、低所取付検知では、所定の高さのほぼ水平方向の検知エリアを検知することで原則小動物の検知を排除しつつ、人体の検知を行うことができ、高所取付検知では、小動物と人体との双方、または小動物を排除した人体を検知できる。
【0007】
この受動型赤外線人体検知装置は、例えば、水平方向約90度の視野角の1つのみの赤外線検知素子と、複数のレンズ片が一体化された半円筒形状のフレネルレンズ等の光学系を上下に2つと、赤外線検知素子の視野の一部を遮る視野制限板と、検知線を反射し得る二次鏡とを備えるオプテックス社製型番LX-402の検知装置(単素子2モード検知装置と称す)が該当する。この単素子2モード検知装置では、上記取付モードの切換えにおいて、所定の内部カバーを上下方向にスライドさせることで赤外線検知素子の位置が上下方向に変化する。
【0008】
上方向への上記位置の変化が行われる前は、赤外線検知素子は、2つのうちの一方の光学系を透過した水平方向検知線を検知し、単素子2モード検知装置は、低所取付検知が可能である。このとき、単素子2モード検知装置が、2つのうちの他方の光学系を透過した検知線(この検知線は下方検知線)の検知ができないように、視野制限板が、赤外線検知素子の視野の一部を遮っている。一方、上方向への上記位置の変化が行われると、視野制限板が赤外線検知素子の視野の一部を遮ることがなくなり、また赤外線検知素子の位置が各光学系に対して上方へ移動することで、単素子2モード検知装置は、高所取付検知が可能となる。このとき、赤外線検知素子は、2つの光学系を夫々透過した検知線が到達し、2つの下方の検知エリアで検知を行う。この2つの検知線は、赤外線検知素子の位置が各光学系に対して上方へ移動したので、下方検知線となる。
【0009】
更に、高所取付け時では、上記内部カバーのスライドに加えて、別途、手動で二次鏡を赤外線検知素子の視野の一部、具体的には視野の上部分に重なるように移動させる。このように、二次鏡を赤外線検知素子の上部分の視野内に含まれるように移動させることで、この上部分を通る検知線を二次鏡で反射させることにより、当該視野の上部分に、単素子2モード検知装置の下方の直近付近における1つの検知エリアを更に含めることができ、当該下方の直近付近が検知可能となる。以上のように、高所取付検知では、3つの下方の検知エリアで検知を行う。
【0010】
以上のように、単素子2モード検知装置では、赤外線検知素子は、低所取付け時には、検知方向がほぼ水平方向の1つの検知エリアとなるようなフレネルレンズとの位置関係となり、高所取付け時には、検知方向が複数すなわち上記3つの下方の検知エリアの方向を向くようなフレネルレンズ、二次鏡および視野制限板との位置関係となる。すなわち、単素子2モード検知装置は、1台で、高所取付検知と、低所取付検知とを実現する。高所取付検知では、遠近方向における複数の検知エリアの検知を行う必要がある所、上記のように、位置移動、二次鏡および視野制限板により、赤外線検知素子の視野を分割し、本来1つの検知エリアを遠近方向において複数(上記3つ)に分割している。この当初の1つの検知エリアを複数に分割してできた小エリアを分割検知エリアと称する。なお、複数の分割検知エリアの面積の合計が、当初の1つの検知エリアの面積と異なってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第3086406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来技術(1)の受動型赤外線人体検知装置は、上記のように低所取付検知を想定した構成となっているため、この受動型赤外線人体検知装置を、単に高所に取り付けて視野を地面へ向けても、高信頼性の高所取付検知を行うことができない。例えば、この受動型赤外線人体検知装置では、2つのセンサーユニットが夫々対応する2つの検知エリアしかないため、上記AND演算を使用した精度のよい人体検知を実現できる範囲が、各検知エリアの境界付近の1ヶ所という限定的な範囲となって、センサの定格距離内に於いて、検知できる範囲が狭くなり、すなわち警戒エリアのヌケが多くなって、侵入し易くなり、低信頼性となる。
【0013】
一方、従来技術(2)の単素子2モード検知装置は、1つのみの赤外線検知素子で検知を行っていることから、低所取付検知では、遠方の高温発生源の検知による誤検知を排除できない上、小動物の検知を排除しうる精度は従来技術(1)の受動型赤外線人体検知装置と比べて低い。また、高所取付検知では、やはり地面の温度上昇による誤検知の可能性は排除できず、精度が悪い。
【0014】
そこで、本発明は、従来技術の有する上記欠点を解消すべく、1台で高所取付検知と低所取付検知とを実現でき、かつ、誤検知を排除して精度よく人体を検知できる防犯センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0016】
本発明に係る防犯センサ装置は、
所定の対象方向に対する視野を有する赤外線検知素子を各々有し、所定の配列方向に並ぶ複数のセンサーユニットと、
対応する検知エリアから前記赤外線検知素子の各々へ到達する検知線が透過し、前記所定の配列方向に並ぶ複数の光学系と、
前記赤外線検知素子の各々からの出力信号が入力され、各出力信号に基づいて、検知対象物の検知を示す信号を含む対象物検知信号を出力する対象物検知回路と、
を備えた防犯センサ装置であって、さらに、
所定の高さ以下の低所に取り付けられて前記人体の検知を行う低所取付検知と、前記所定の高さよりも高い高所に取り付けられて前記人体の検知を行う高所取付検知との、該2つの検知を各々行うために、使用者の操作により、前記複数のセンサーユニットの各々と前記複数の光学系との間の構成を変化させる切り換え部を備える。
【0017】
この構成によれば、本発明に係る防犯センサ装置は、低所取付検知と高所取付検知との2つの検知を各々行うために、使用者の操作により、前記複数のセンサーユニットの各々と前記複数の光学系との間の構成を変化させる(または、当該構成を切り換える)切り換え部を備えるため、1台で高所取付検知と低所取付検知とを実現できる。さらに、本発明に係る防犯センサ装置は、複数のセンサーユニット各々における赤外線検知素子からの出力信号に基づいて、人体の検知を行い、検知対象物の検知を示す信号を含む対象物検知信号を出力する対象物検知回路を備えるため、誤検知を排除して精度よく人体を検知しうる。
【0018】
上記構成において、さらに、所定の前記赤外線検知素子の前記視野の一部を遮る視野制限部材を備え、前記切り換え部は、前記赤外線検知素子と前記視野制限部材との間の前記所定の配列方向における相対的な位置を変化させて、前記赤外線検知素子を第一位置に位置させて、前記赤外線検知素子の前記視野を遮らない位置に前記視野制限部材を配置させ、前記光学系を透過する前記検知線とこの検知線が入光する前記赤外線検知素子との位置上の対応を変化させる第一動作を行うことが好ましい。これにより、切り換え部は、高所取付検知から低所取付検知への切換えの際に、または、低所取付検知から高所取付検知への切換えの際に、前記赤外線検知素子を前記第一位置に位置させて、前記赤外線検知素子の前記視野を遮らない位置に前記視野制限部材を配置させる。こうした位置の変化や配置によって、高所取付検知において、遠近方向における複数の検知エリアの検知を行うようにしうる。よって、赤外線検知素子と視野制限部材との位置変化および視野制限部材の検知線の遮光効果の有無により、前記赤外線検知素子に対して、前記検知線を水平方向検知線、下方検知線、高所検知線のいずれかに切り換えることが可能となり、防犯センサ装置1台で高所取付検知と低所取付検知とに切り換えて使用できる。
【0019】
上記構成において、前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記第一動作における前記配置および前記対応の変化を同時に行うことが好ましい。使用者の手動で、第一位置へ赤外線検知素子を位置させる作業と、赤外線検知素子の視野を遮らない位置に視野制限部材を配置させる前記対応の変化の作業とを行う場合に、それらのうちの一方を失念した場合には、防犯センサ装置は、1台で高所取付検知と低所取付検知とに切り換える効果を奏することはできない。そこで、前記切り換え部が、前記第一動作における前記配置および前記対応の変化を同時に行うことにより、前記失念を回避することができる。また、使用者が、第一位置へ赤外線検知素子を位置させる作業と、赤外線検知素子の視野を遮らない位置に視野制限部材を配置させる前記対応の変化の作業の二つの作業を行わねばならない煩雑さを解消できる。
【0020】
上記構成において、前記切り換え部によって切り換えられて前記第一動作を行う前記センサーユニットを複数有し、前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記複数のセンサーユニットの前記第一動作を同時に行うことが好ましい。この場合、前記複数のセンサーユニットは、前記切り換え部によって切り換えられて前記第一動作を行うセンサーユニットのみとなる。使用者の手動で、それぞれ第一動作を行う場合に、それらのうちの一方を失念した場合には、防犯センサ装置は、1台で高所取付検知と低所取付検知とに切り換える効果を奏しつつ、前記誤検知を排除して精度よく人体を検知する効果を奏することができないか、効果が低下する。そこで、前記切り換え部が、それぞれの第一動作を同時に行うことにより、前記失念を回避することができる。また、使用者が、それぞれの第一動作を行わねばならない煩雑さを解消できる。
【0021】
上記構成において、さらに、前記検知線を反射させる二次鏡を備え、前記切り換え部は、前記赤外線検知素子と前記二次鏡との間の前記所定の配列方向における相対的な位置を変化させて、前記赤外線検知素子を第二位置に位置させて、前記赤外線検知素子の前記視野内に含まれる位置に前記二次鏡を配置させ、前記光学系を透過する前記検知線とこの検知線が入光する前記赤外線検知素子との位置上の対応を変化させる第二動作を行うことが好ましい。これにより、切り換え部は、高所取付検知から低所取付検知への切換えの際に、または、低所取付検知から高所取付検知への切換えの際に、前記赤外線検知素子を前記第二位置に位置させて、前記赤外線検知素子の前記視野内に含まれる位置に前記二次鏡を配置させる。こうした位置の変化や配置によって、高所取付検知において、遠近方向における複数の検知エリアの検知を行うようにしうる。よって、赤外線検知素子と視野制限部材との位置変化および赤外線検知素子の視野内における二次鏡の有無により、前記赤外線検知素子に対して、前記検知線を水平方向検知線、下方検知線、高所検知線のいずれかに切り換えることが可能となり、防犯センサ装置1台で高所取付検知と低所取付検知とに切り換えて使用できる。
【0022】
上記構成において、前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記第二動作における前記配置および前記対応の変化を同時に行うことが好ましい。使用者の手動で、第二位置へ赤外線検知素子を位置させる作業と、赤外線検知素子の視野内に含まれる位置に前記二次鏡を配置させる前記対応の変化の作業とを行う場合に、それらのうちの一方を失念した場合には、防犯センサ装置は、1台で高所取付検知と低所取付検知とに切り換える効果を奏することはできない。そこで、前記切り換え部が、前記第二動作における前記配置および前記対応の変化を同時に行うことにより、前記失念を回避することができる。また、使用者が、第二位置へ赤外線検知素子を位置させる作業と、赤外線検知素子の視野内に含まれる位置に前記二次鏡を配置させる前記対応の変化の作業の二つの作業を行わねばならない煩雑さを解消できる。
【0023】
上記構成において、前記切り換え部によって切り換えられて前記第二動作を行う前記センサーユニットを複数有し、前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記複数のセンサーユニットの前記第二動作を同時に行うことが好ましい。この場合、前記複数のセンサーユニットは、前記切り換え部によって切り換えられて前記第二動作を行うセンサーユニットのみとなる。使用者の手動で、それぞれ第二動作を行う場合に、それらのうちの一方を失念した場合には、防犯センサ装置は、1台で高所取付検知と低所取付検知とに切り換える効果を奏しつつ、前記誤検知を排除して精度よく人体を検知する効果を奏することができないか、効果が低下する。そこで、前記切り換え部が、それぞれの第二動作を同時に行うことにより、前記失念を回避することができる。また、使用者が、それぞれの第二動作を行わねばならない煩雑さを解消できる。
【0024】
上記構成において、さらに、所定の前記赤外線検知素子の前記視野の一部を遮る視野制限部材と、前記検知線を反射させる二次鏡とを備え、前記切り換え部は、前記赤外線検知素子と前記視野制限部材との間の前記所定の配列方向における相対的な位置を変化させて、前記赤外線検知素子を第一位置に位置させて前記赤外線検知素子の前記視野を遮らない位置に前記視野制限部材を配置させ、前記光学系を透過する前記検知線とこの検知線が入光する前記赤外線検知素子との位置上の対応を変化させる第一動作を行い、かつ、前記赤外線検知素子と前記二次鏡との間の前記所定の配列方向における相対的な位置を変化させて、前記赤外線検知素子を第二位置に位置させて前記赤外線検知素子の前記視野内に含まれる位置に前記二次鏡を配置させ、前記光学系を透過する前記検知線とこの検知線が入光する前記赤外線検知素子との位置上の対応を変化させる第二動作を行い、さらに、前記切り換え部は、前記使用者の操作により、前記第一動作および前記第二動作を同時に行うことが好ましい。なお、上記構成には、前記切り換え部によって切り換えられて前記第一動作を行う前記センサーユニットを単数のみならず複数有する構成、および、前記切り換え部によって切り換えられて前記第二動作を行う前記センサーユニットを単数のみならず複数有する構成を含みうる。
【0025】
上記の場合、前記複数のセンサーユニットは、少なくとも1つが前記切り換え部によって切り換えられて前記第一動作を行うセンサーユニットとなり、他の少なくとも1つが前記切り換え部によって切り換えられて前記第二動作を行うセンサーユニットとなる。使用者の手動で、それぞれ第一動作および第二動作を行う場合に、それらのうちの一方を失念した場合には、防犯センサ装置は、1台で高所取付検知と低所取付検知とに切り換える効果を奏しつつ、前記誤検知を排除して精度よく人体を検知する効果を奏することができないか、効果が低下する。そこで、前記切り換え部が、それぞれの第一動作および第二動作を同時に行うことにより、前記失念を回避することができる。また、使用者が、それぞれの第一動作および第二動作を行わねばならない煩雑さを解消できる。また、前記第一動作を行うセンサーユニットおよび前記第二動作を行うセンサーユニットの両種類を有するので、各センサーユニットの特徴を発揮して更なる精密な検知に対応できる。ここで、両種類のセンサーユニットが含まれてさえいれば、前記所定の配列方向における、前記第一動作を行うセンサーユニットおよび前記第二動作を行うセンサーユニットの並ぶ順番は任意である。なお、上記構成において、前記切り換え部が、前記使用者の操作により、前記第一動作および第二動作における前記配置および前記対応の変化を、各々、同時に行ってもよい。
【0026】
また、上記の様な位置の変化や配置によって、高所取付検知において、遠近方向における複数の検知エリアの検知を行うようにしうる。よって、赤外線検知素子と視野制限部材との位置変化および視野制限部材の検知線の遮光効果の有無により、前記赤外線検知素子に対して、前記検知線を水平方向検知線、下方検知線、高所検知線のいずれかに切り換えることが可能となり、また、赤外線検知素子と視野制限部材との位置変化および赤外線検知素子の視野内における二次鏡の有無により、前記赤外線検知素子に対して、前記検知線を水平方向検知線、下方検知線、高所検知線のいずれかに切り換えることが可能となり、防犯センサ装置1台で高所取付検知と低所取付検知とに切り換えて使用できる。
【0027】
上記構成において、前記赤外線検知素子は、使用者の操作により、対応する前記センサーユニット内で、所定の位置に移動可能であり、前記使用者の操作により、前記第一動作または前記第二動作が行われた時、前記赤外線検知素子は、前記所定の位置から、前記第一位置または前記第二位置に移動することが好ましい。赤外線検知素子は、前記センサーユニット内で所定の位置に移動可能であるので、この所定の位置に応じた検知距離に微調整可能となる。さらに、前記第一動作または前記第二動作の一方または両方を含む複数の動作が行われた時、赤外線検知素子が前記所定の位置から前記第一位置または前記第二位置に移動するので、前記複数動作を失念することなく全て行うことができる。また、使用者が、前記第一動作または前記第二動作の一方または両方が含まれる複数動作を全て行わねばならない煩雑さを解消できる。
【0028】
上記構成において、前記視野制限部材は、円筒面の一部または多角形筒の一部であり、前記赤外線検知素子よりも前記光学系に近い位置に配置されていることが好ましい。これにより、光学系の形状に近い形とできる上、光学系に対する視野制限部材による検知線の、距離に依存する回折の影響等を低減できる。
【0029】
上記構成において、複数発生する前記相対的な位置の変化のうち、異なる大きさの位置の変化が含まれる。これにより、複数のセンサーユニットにおける、一のセンサーユニットでの第一動作または第二動作における赤外線検知素子の前記相対的な位置の変化と、他のセンサーユニットでの第一動作または第二動作における赤外線検知素子の前記相対的な位置の変化とを異ならせることができる。すなわち、例えば、一方のセンサーユニットが第一動作を行うセンサーユニットで(視野制限部材を使用)、他方のセンサーユニットが第二動作を行うセンサーユニットである(二次鏡を使用)場合に、第一動作における赤外線検知素子の前記相対的な位置の変化における移動距離と、第二動作における赤外線検知素子の前記相対的な位置の変化における移動距離とは、主に異なるものであるので、こうした異なる移動距離に対応できる。なお、赤外線検知素子を第一位置に位置させて、赤外線検知素子の視野を遮らない位置に視野制限部材を配置させる、または、赤外線検知素子を第二位置に位置させて、赤外線検知素子の視野内に含まれる位置に二次鏡を配置させる際に、赤外線検知素子のみを移動させてもよく、視野制限部材または二次鏡のみを移動させてもよく、また、赤外線検知素子および、視野制限部材または二次鏡の両方を移動させてもよい。赤外線検知素子および、視野制限部材または二次鏡の両方を移動させると、各々の移動距離は小さくても、全体として所望の距離の移動を行うことができる。これにより、例えば前記所定の配列方向における装置のダウンサイズ化を図れる。
【0030】
上記構成において、前記視野制限部材と前記二次鏡とが一体化されていることが好ましい。これにより、視野制限部材と二次鏡との間の無駄な隙間を排除でき、例えば前記所定の配列方向における装置のダウンサイズ化を図れる。前記視野制限部材と前記二次鏡との一体化では、一体成形などにより同一の部材で構成されていてもよく、また視野制限部材と前記二次鏡とが貼り付けられるなどして1つの部材を構成していてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る防犯センサ装置は、1台で高所取付検知と低所取付検知とを実現でき、かつ、誤検知を排除して精度よく人体を検知できる防犯センサ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る防犯センサ装置の分解斜視図である。
図2】同防犯センサ装置のカバーユニットの上方斜視図である。
図3】同防犯センサ装置の視野制限部材および二次鏡の下方斜視図である。
図4】同防犯センサ装置のベースユニットの上方斜視図である(高所取付時)。
図5】同防犯センサ装置のベースユニットの上方斜視図である(低所取付時)。
図6】(A)は、同防犯センサ装置の高所取付検知を説明するための平面図であり、(B)は、図6(A)のVIB-VIB線に沿った断面図である。
図7】(A)は、同防犯センサ装置の低所取付検知を説明するための平面図であり、(B)は、図7(A)のVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
図8】同防犯センサ装置の高所取付検知の作用を説明するための側面図である。
図9】同防犯センサ装置の低所取付検知の作用を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号は、同一または相当部分を示し、特段変更等の説明がない限り、適宜その説明を省略する。
【0034】
図1に、本発明の一実施形態に係る防犯センサ装置1の分解斜視図を示す。本実施形態では、検知線として赤外線特に遠赤外線(以下、まとめて単に赤外線と呼ぶ)が使用される。防犯センサ装置1は、検知線センサとして、所定の対象方向に対する視野を有するPIRセンサの赤外線検知素子232A,232B,242A,242Bを有し、屋内外での検知対象物たる人体等の検知、すなわち侵入者探知等に使用される。ここで、所定の対象方向とは、例えば、使用者が検知対象物の検知を所望する検知エリアの方向である。防犯センサ装置1の外形は、半円柱状に近く、上方視では、円弧を含む曲線状の部分と三つの直線状の部分とから形成された形状である。防犯センサ装置1は、カバーユニット100と、壁等へ取り付けるための取付台300を含むベースユニット200を備える。防犯センサ装置1は、さらに、ベースユニット200の本体部210に取り付けられる視野制限部材220を備える。取付台300は、ねじのような取付具により、柱や壁等に取り付け可能である。カバーユニット100は、ベースユニット200の前面つまり検知対象物に向く面を覆い、視野制限部材220は、ベースユニット200の前面に取り付けられ、カバーユニット100内部に配置される。
【0035】
カバーユニット100は、対応する検知エリアから赤外線検知素子232A,232B,242A,242Bの各々へ到達する検知線が透過する検知用レンズ120を有する。カバーユニット100の下半部には、開口部110が設けられており、該開口部110は、検知用レンズ120で封じられる。図2に示すカバーユニット100を内側から見た上方斜視図のように、検知用レンズ120は、赤外線透過率の高い光学部材からなり右から左へ向けて配置されたレンズ部120A、120Bと、その間に存在する連結部120Cとを有する。連結部120Cは、ほぼ矩形状の平面または多少湾曲した面を有する。検知用レンズ120は、後述のレンズ部120A、120Bと、連結部120Cとが一体化された形態で成型され、防犯センサ装置1の外観からは、レンズ部120A,120Bと、連結部120Cの境界の判別がつかない均一な面となっている。検知用レンズ120は、検知線として利用する電磁波の波長域(本実施例では、赤外線、特に遠赤外線)に対し、透過率の良い材質であり、例えば、ポリエチレン樹脂である。
【0036】
レンズ部120A、120Bは、各々、前記所定の配列方向である上下方向が長手方向となっている矩形状のレンズ片を複数有し、該複数のレンズ片が左右に隣接して並んだ状態で一体化された多分割レンズである。レンズ片では、複数のフレネルレンズ(本実施形態では3つのフレネルレンズの例)が、同方向に並んでいる。このように、本実施形態において、所定の配列方向に並ぶ複数の光学系とは、左右方向に任意の数(レンズ片の数)だけ存在し、上下に並ぶ3つのフレネルレンズである。各レンズ部120Aおよび120B中に、3つのフレネルレンズとして、各々、上から順にフレネルレンズ120A1、120A2、120A3およびフレネルレンズ120B1、120B2、120B3が並んでいる。
【0037】
図1の視野制限部材220は、所定の赤外線検知素子の視野の一部を遮る。視野制限部材220は、前述のように水平方向の断面が半円形状または上方視で前記曲線状の部分および前記直線状の部分からなる形状である光学系120A1-A3、120B1-B3の形状に近いように、円筒面の一部または多角形筒の一部の形状である。視野制限部材220は、当該形状により、カバーユニット100、ベースユニット200、および視野制限部材220を組み合わせた場合に、赤外線検知素子232A、232B、242A、242Bよりも検知用レンズ120に近い位置に配置されうる。本実施形態では、視野制限部材220は、円筒面の一部の形状である。さらに本実施形態の視野制限部材220は、図3に示す下方斜視図のように、無蓋、無底の半円筒部222の内部に、扇形の中心付近を切り欠いた形状を2つ隣り合わせた節のような平板状の節部224を有する形状をしている。節部224の裏面(下部)には、後述の2枚の二次鏡226A、226Bが備えられており、視野制限部材220と二次鏡226A、226Bとが一体化たとえば接合された構成となっている。
【0038】
図1に示すベースユニット200は、そこから着脱可能な本体部210と、本体部210に収納される人体検知回路280とを有する。人体検知回路280は、図5の赤外線検知素子232A,232B,242A,242Bの各々からの出力信号が入力され、各出力信号に基づいて、検知対象物たる人体の検知を示す信号を含む人体検知信号を出力する。具体的には、人体検知回路280は、後述のように左右方向においてほぼ同じ方向に検知中心方向(後述)が向く赤外線検知素子232Aと赤外線検知素子242Aとの出力信号の論理積(AND)演算を行う論理積(AND)回路を有する。よって、人体検知回路280は、赤外線検知素子232Aと赤外線検知素子242Aとが、例えば検知対象物たる人体を検知した出力信号をほぼ同時刻に出力した場合に、この人体を検知したことを表す信号である人体検知信号を出力する。同様に、人体検知回路280は、左右方向においてほぼ同じ方向に検知中心方向が向く赤外線検知素子232Bと赤外線検知素子242Bとの出力信号の論理積(AND)演算を行う論理積(AND)回路を有し、上記赤外線検知素子232A、242Aの場合と同様の動作をする。人体検知回路280は、例えばベースユニット200内の本体部210の上部に存在するPCB収納部281に収納される。
【0039】
本実施形態の本体部210には、赤外線検知素子232A,232B、および赤外線検知素子242A,242Bを各々有する、上下の2つのセンサーユニット(第1センサーユニット230、第2センサーユニット240)が取り付けられる。本実施形態では、第1センサーユニット230、第2センサーユニット240は、この順に上から並んでいる。
【0040】
第1センサーユニット230は、図6(A)に示すように、FOV(視野角)が90度の赤外線検知素子232A、232Bが、図6(B)に示す単一の金属ケース231内に収納され、固定されたものである。その第1センサーユニット230は、図4または図5に示すほぼ三角柱状の単一のケース260に覆われて保持されている。赤外線検知素子232A、232Bは、各々の検知中心方向P1,P2が90度をなす向きに配置されており、具体的には、上下方向に直交する断面において直角二等辺三角形の斜辺を除く2辺上に外向きに配置されている。ここで、上記検知中心方向とは、赤外線検知素子に正対する方向、赤外線検知素子のFOVのほぼ中心の方向、または、検知感度が最大となる方向のことである。これにより、該2つの赤外線検知素子232A、232Bで全体としてFOVが180度となる。なお、本実施形態では、第1センサーユニット230、赤外線検知素子232A、232Bは、ベースユニット200に対して、回転しないように固定されている。また、第1センサーユニット230は、ベースユニット200に対して、上下に移動可能となっている。
【0041】
第2センサーユニット240は、FOVが90度の赤外線検知素子242A、242Bが、図6(B)に示すそれぞれ独立した保持ケース241、241内に収納され、固定されたものであり、上記赤外線検知素子232A、242Aの場合と同様に配置されている。第2センサーユニット240は、同様にほぼ三角柱状の単一のケース260に覆われて保持されている。このとき、第2センサーユニット240は、ベースユニット200に対して、上下に移動可能となっている。
【0042】
さらに、赤外線検知素子242A、242Bは、本実施形態では、使用者が図5のスライドつまみ244A、244Bを有するスライド操作部244を各々上下方向に操作することにより、図5に示すほぼ三角柱状の単一のケース260内で、第2センサーユニット240が、左右独立で、上下方向に、所定の位置に移動可能となっている。赤外線検知素子242A、242Bが、図5に示すほぼ三角柱状の単一のケース260内で所定の位置に移動可能であるので、この所定の位置に応じた検知距離(警戒距離)に微調整可能である。
【0043】
以上の構成により、左右方向において、図6(A)の赤外線検知素子232Aと赤外線検知素子242Aとは、ほぼ同じ方向に検知中心方向P1が向いており、赤外線検知素子232Bと赤外線検知素子242Bとは、ほぼ同じ方向に検知中心方向P2が向いている。ここで、赤外線検知素子232A(232B)は、図2のレンズ部120A(120B)に含まれる、図6(B)に示す各レンズ片中のフレネルレンズ120A1(120B1)および120A2(120B2)からの赤外線の集光が可能な位置に位置している。また、赤外線検知素子242A(242B)は、上記レンズ部120A(120B)の各レンズ片中のフレネルレンズ120A3(120B3)からの集光が可能な位置に位置している。
【0044】
本実施形態に係る防犯センサ装置1は、1台で、所定の高さ以下の低所に取り付けられて前記人体の検知を行う低所取付検知と、前記所定の高さよりも高い高所に取り付けられて前記人体の検知を行う高所取付検知との、該2つの検知を各々行う。そのために、使用者の操作により、前記複数のセンサーユニット230,240の各々と前記複数の光学系120A1-A3、120B1-B3との間の構成を変化させるための切換え動作が可能である。防犯センサ装置1は、この切換え動作のための切り換え部Kを備える。
【0045】
具体的には、本実施形態の視野制限部材220は、例えばその上半分部分において、所定の赤外線検知素子すなわち第1センサーユニット230の赤外線検知素子232A、232Bの視野の一部(詳しくは、その下部分)を遮りうる。このとき、切り換え部Kは、前記複数のセンサーユニット230,240の各々と前記複数の光学系120A1-A3、120B1-B3との間の構成を変化させるために、赤外線検知素子232A、232Bと視野制限部材220との間の上下の配列方向における相対的な位置を変化させる。これにより、赤外線検知素子232A、232Bを第一位置PO1に位置させて、赤外線検知素子232A、232Bの視野を遮らない位置に視野制限部材220を配置させ、検知用レンズ120を透過する検知線とこの検知線が入光する赤外線検知素子232A、232Bとの位置上の対応を変化させる第一動作を行う。この状態の時、防犯センサ装置1は、下方の検知エリアを有する高所取付検知を行うことができる。加えて、本実施形態の切り換え部Kは、使用者の操作により、この第一動作における前記配置および前記対応の変化を同時に行う。
【0046】
また、本実施形態では、2枚の二次鏡226A、226B(図3)は、各々、第2センサーユニット230の赤外線検知素子242A、242Bへと向かう検知線を反射させうる。すなわち、二次鏡226A、226Bが、各々、赤外線検知素子242A、242Bの視野の一部にかかっている。このとき、切り換え部Kは、前記複数のセンサーユニット230,240の各々と前記複数の光学系120A1-A3、120B1-B3との間の構成を変化させる。これにより、赤外線検知素子242A、242Bと二次鏡226A、226Bとの間の上下の配列方向における相対的な位置を変化させて、赤外線検知素子242A、242Bを第二位置PO2に位置させて、赤外線検知素子242A、242Bの視野内に含まれる位置に二次鏡226A、226Bを配置させ、検知用レンズ120を透過する検知線とこの検知線が入光する赤外線検知素子242A、242Bとの位置上の対応を変化させる第二動作を行う。この状態の時、防犯センサ装置1は、高所取付検知を行うことができる。加えて、本実施形態の切り換え部Kは、使用者の操作により、この第二動作における前記配置および前記対応の変化を同時に行う。
【0047】
さらに、本実施形態では、上述のような第1センサーユニット230および第2センサーユニット240において、切り換え部Kは、使用者の操作により、これらの第一動作および第二動作を同時に行う。この使用者の操作は、使用者が、ほぼ三角柱状の単一のケース260に取り付けられているつまみ250(図4)をつまんで、所定の配列方向である上下方向に移動させることで、一体化された第1センサーユニット230、第2センサーユニット240を上下方向にスライド移動させることである。
【0048】
さらに詳説すると、防犯センサ装置1が低所取付検知が可能な状態のとき、第1センサーユニット230においては、つまみ250を上昇させた場合に、赤外線検知素子232A、232Bは、上方へ移動して高所取付検知のための第一位置PO1に位置し、同時に、視野制限部材220は、高所取付検知のための、赤外線検知素子232A、232Bの視野を遮らない位置へと下方へ移動する(図4参照)。また、つまみ250を下降させた場合には、高所取付検知が可能な状態から低所取付検知が可能な状態へ向けて、赤外線検知素子232A、232Bは、下方へ移動し、同時に、視野制限部材220は、赤外線検知素子232A、232Bの視野を遮らない位置を脱して上方へ移動する(図5参照)。なお、視野制限部材220の、赤外線検知素子232A、232Bの視野を遮らない位置には、後述の本実施形態の効果を著しく損なう場合を除き、赤外線検知素子232A、232Bの視野のごく一部を遮ってしまうような位置が含まれていてもよい。
【0049】
同様に、防犯センサ装置1が低所取付検知が可能な状態のとき、第2センサーユニット240においては、つまみ250を上昇させた場合に、赤外線検知素子242A、242Bは、使用者のスライド操作部244の操作で、上下移動により検知距離(警戒距離)の調整を行った任意の位置に応じて、上方もしくは下方へ移動して高所取付検知のための第二位置PO2に固定され、同時に、二次鏡226A,226Bは、上記視野制限部材220の移動に合わせて、高所取付検知のための、赤外線検知素子242A、242Bの視野内に含まれる位置へと下方へ移動する(図4参照)。また、つまみ250を下降させた場合には、高所取付検知が可能な状態から低所取付検知が可能な状態へ向けて、赤外線検知素子242A、242Bは、第二位置PO2の位置に於いて、位置固定が解除され、同時に、二次鏡226A,226Bは、上記視野制限部材220の移動に合わせて、赤外線検知素子242A、242Bの視野内に含まれる位置を脱して上方へ移動する(図5参照)。
【0050】
上述のように、赤外線検知素子242A、242Bは、使用者が図5のスライドつまみ244A、244Bを上下方向に操作することにより、第2センサーユニット240として、ほぼ三角柱状の単一のケース260に覆われた内側で、各々独立で、上下方向に、任意の位置に移動するが、本実施形態では、低所取付検知の場合に使用可能となる。すなわち、使用者の操作により、後述の第一動作および第二動作が行われ高所取付検知の状態となった時、図6(B)の第2センサーユニット240において、赤外線検知素子242A、242Bは、前記任意の位置から、前記第二位置PO2に移動する。具体的には、本実施形態では、使用者のつまみ250を使用した操作により、前記第二動作が行われた時、赤外線検知素子242A、242Bは、前記任意の位置から、前記第二位置PO2に移動する。
【0051】
視野制限部材220は、より具体的には、この使用者によるつまみ250の上下方向の操作により、ベースユニット200の本体部210に沿って、赤外線検知素子232A、232Bの視野を遮らない下方の位置と、赤外線検知素子232A、232Bの視野の一部を遮りうる上方の位置との間を、上下方向に移動する。さらに、視野制限部材220は、二次鏡226A,226Bを有するので、この使用者によるつまみ250の上下方向の操作により、より具体的には、ベースユニット200の本体部210に沿って、二次鏡226A,226Bが赤外線検知素子242A、242Bの視野内に含まれる下方の位置と、赤外線検知素子242A、242Bの視野内に含まれる位置を脱した上方の位置との間を、上下方向に移動する。図5の切り換え部Kは、本実施形態では、後述のつまみ250(図4)、および、上記第一位置PO1および第二位置PO2と上記下方の位置との間で上下2ヶ所に節動して位置決めするための不図示の構造で構成される。切り換え部Kが、上記の様な、使用者のつまみ250を使用した操作により、第一動作および第二動作を同時に行いうる構造、さらに、赤外線検知素子242A、242Bを前記所定の位置から前記第二位置PO2に移動させうる構造は、例えばスライド構造、節動構造等を用いた公知の任意の方法で実現できるものである。
【0052】
[作用、効果]
本実施形態の防犯センサ装置について、その作用と効果を説明する。本実施形態の防犯センサ装置は、上記のAND演算を行うAND回路(人体検知回路280)を有するので、誤検知を排除して精度よく人体を検知できるうえ、以上の第一動作および第二動作等による後述の作用により、高所取付検知と従来の低所取付検知とが切り換え可能となっている。なお、左右方向において図6(A)に示すほぼ同じ一の方向に検知中心方向P1が向く赤外線検知素子232A,242Aに関する説明と、左右方向においてほぼ同じ他の方向に検知中心方向P2が向く赤外線検知素子232B,242Bに関する説明は、左右方向で対象方向が異なるだけで、上下方向、前後方向では、酷似しているため、以下では、赤外線検知素子232A,242Aおよびこれらに関係する右方の構成物(例えばレンズ部120A等)について主に説明し、赤外線検知素子232B,242Bおよびこれらに関係する左方の構成物(例えばレンズ部120B等)については説明を省略する。
【0053】
[高所取付検知]
図5のつまみ250を上昇させることで、第1センサーユニット230において、赤外線検知素子232Aが上方へ移動して第一位置PO1に位置し、同時に、視野制限部材220が赤外線検知素子232Aの視野を遮らない位置へと下方へ移動すると、図6(B)に示すように、赤外線検知素子232AのFOVには、対象方向H1を含む水平方向に近いやや下方の1つの検知エリアRH1の方向(この場合の検知線をH1方向検知線と呼ぶ)および対象方向H3を含む水平方向よりも下方の1つの検知エリアRH3の方向(この場合の検知線は上記下方検知線であり、H3方向検知線と呼ぶ)からの検知線が含まれる。なお、検知エリアRH1は水平方向よりも下方の1つの検知エリアであってもよい。H1方向検知線は、フレネルレンズ120A1を透過して、赤外線検知素子232Aに到達する。その一方で、H3方向検知線は、フレネルレンズ120A2を透過して、同じく赤外線検知素子232Aに到達する。ここで、図6(B)は、図6(A)のVIB-VIB線断面に沿った断面図である。なお、図6(B)では、見易さの観点から、ベースユニット200内の右半分において詳細な構造の図示を省略し、赤外線検知素子付近のみ図示している。
【0054】
また、つまみ250(図5)を上昇させることで、第2センサーユニット240において、赤外線検知素子242Aが、つまみ250上昇前の任意の位置に応じて、上方へ移動して第二位置PO2に位置し、同時に、二次鏡226Aは、上記視野制限部材220の移動に合わせて、赤外線検知素子242Aの視野内に含まれる位置へと下方へ移動すると、図6(B)に示すように、赤外線検知素子242AのFOVには、対象方向H2を含む水平方向よりも下方の1つの検知エリアRH2の方向および対象方向H4を含む検知エリアRH4の方向(これらの場合の検知線は上記下方検知線となり、各々、H2方向検知線、H4方向検知線と呼ぶ)からの検知線が含まれる。H2方向検知線、H4方向検知線は、両方とも、フレネルレンズ120A3を透過して、赤外線検知素子242Aに到達する。ここで、検知エリアRH4は、検知エリアRH2よりも防犯センサ装置1の近くに位置しており、H4方向検知線は、フレネルレンズ120A3を透過した後、二次鏡226Aで反射してから赤外線検知素子242Aに到達する。
【0055】
図6(B)では、H1方向検知線~H4方向検知線は、各々、赤外線検知素子232A,242Aとフレネルレンズ120A1~120A3の中心とを通るように示されている。図8に示すように、検知エリアRH1~RH4は、防犯センサ装置1に遠い側からこの順番に位置しており、その結果、H1方向検知線~H4方向検知線は、この順番に、垂直方向(上下方向)に対する下方を向く角度が急峻になる。このように、検知エリアRH1~RH4は、複数の分割検知エリアとなっており、検知エリアRH1~RH4に対応するH1方向検知線~H4方向検知線により、高所検知線を実現できる。よって、赤外線検知素子232Aに到達するH1方向検知線およびH3方向検知線と、赤外線検知素子242Aに到達するH2方向検知線およびH4方向検知線とが、垂直方向(または上下方向、紙面の縦方向)で交互に隣り合うことから(このような高所検知線を交互高所検知線と称する)、前述の検知線を捕捉する隣り合う検知エリアが、誤検知を排除したい床面(地面)上の小動物に対して十分なスキマを有していることと、AND演算による検知とにより、精度のよい高所取付検知を実現できる。
【0056】
[低所取付検知]
図5のつまみ250を下降させることで、第1センサーユニット230において、高所取付検知が可能な状態から低所取付検知が可能な状態へ向けて、赤外線検知素子232Aは下方へ移動し、同時に、視野制限部材220は、赤外線検知素子232A、232Bの視野を遮らない位置を脱して上方へ移動すると、図7(B)に示すように、赤外線検知素子232AのFOVには、対象方向L1を含むほぼ水平方向の1つの検知エリアRL1の方向(この場合の検知線は、水平方向検知線であり、L1方向検知線と呼ぶ)のみからの検知線が含まれる。L1方向検知線は、フレネルレンズ120A1を透過して、ほぼ水平方向で、赤外線検知素子232Aに到達する。すなわち、視野制限部材220は、赤外線検知素子232Aの視野の下側の一部を遮る位置となり、具体的にはフレネルレンズ120A2を透過する検知線が赤外線検知素子232Aに到達するのを遮断する。ここで、図7(B)は、図7(A)のVIIB-VIIB線断面に沿った断面図である。なお、図7(B)では、見易さの観点から、ベースユニット200内の右半分において詳細な構造の図示を省略し、赤外線検知素子付近のみ図示している。
【0057】
また、つまみ250(図5)を下降させることで、第2センサーユニット240において、高所取付検知が可能な状態から低所取付検知が可能な状態へ向けて、赤外線検知素子242Aは位置固定が解除され、スライドつまみ244A(スライド操作部244)が上下方向に操作可能となる。同時に、二次鏡226Aは、上記視野制限部材220の移動に合わせて、赤外線検知素子242Aの視野内に含まれる位置を脱して上方へ移動すると、図7(B)に示すように、赤外線検知素子242AのFOVには、対象方向L2を含む水平方向よりも下方の1つの検知エリアRL2の方向(この場合の検知線は上記下方検知線となり、L2方向検知線と呼ぶ)のみからの検知線が含まれる。L2方向検知線は、フレネルレンズ120A3を透過して、赤外線検知素子242Aに到達する。すなわち、二次鏡226Aは、赤外線検知素子242Aの視野外の位置となり、具体的には検知対象物からの検知線が二次鏡226Aで反射しても赤外線検知素子242Aには至らない。
【0058】
図7(B)では、L1方向検知線、L2方向検知線は、各々、赤外線検知素子232A,242Aとフレネルレンズ120A1、120A3の中心を通るように示されている。図9に示すように、検知エリアRL1、RL2は、防犯センサ装置1に遠い側からこの順番に位置しており、その結果、L1方向検知線、L2方向検知線は、この順番に、垂直方向(上下方向)に対する下方を向く角度が急になる。上述のように、図7(B)のL1方向検知線が赤外線検知素子232Aに到達し、L2方向検知線が赤外線検知素子242Aに到達することから、検知エリアRL1~RL2に対するAND演算による検知対象物の検知が行われる。
【0059】
図8に示すように、本実施形態の高所取付検知では、後述の低所取付検知に比べて、検知エリア数が増加している。さらに、本実施形態の高所取付検知では、後述の低所取付検知に比べて、各検知線の垂直方向(上下方向)に対する下方を向く角度が急になっている。
【0060】
なお、上記第一動作および第二動作により複数発生する前記相対的な位置の変化のうち、第一動作により発生する前記相対的な位置の変化と、第二動作により発生する前記相対的な位置の変化とでは、それらの位置の変化は、異なる大きさであってよい。これは、赤外線検知素子232A、232Bが第一位置PO1に移動し、視野制限部材220が赤外線検知素子232A、232Bの視野を遮らない位置へと移動する際の相対的な位置の変化における第1距離と、赤外線検知素子242A、242Bが第二位置PO2に移動し、二次鏡226A,226Bが赤外線検知素子242A、242Bの視野内に含まれる位置へと移動する際の相対的な位置の変化における第2距離とは、大抵の場合、同じ長さではないからであり、また上記交互高所検知線を実現するための上記第1距離と上記第2距離とは、大抵の場合、同じ長さではないからである。
【0061】
以上のように、本実施形態の防犯センサ装置1は、前記従来技術の有する前記欠点を解消し、1台で高所取付検知と低所取付検知とを実現でき、かつ、誤検知を排除して精度よく人体を検知できる。
【0062】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。例えば、以下のような構成を含み得る。
【0063】
上で説明した実施形態では、切り換え部Kによって切り換えられて前記第一動作を行うセンサーユニット230と、切り換え部Kによって切り換えられて前記第二動作を行う前記センサーユニット240とを備えていたが、センサーユニット230、240が、両方とも、切り換え部Kによって切り換えられて前記第一動作を行うセンサーユニットであってもよく、この場合に、切り換え部Kは、使用者の操作により、センサーユニット230、240の前記第一動作を同時に行ってもよい。また、センサーユニット230、240が、両方とも、切り換え部Kによって切り換えられて前記第二動作を行うセンサーユニットであってもよく、この場合に、切り換え部Kは、使用者の操作により、センサーユニット230、240の前記第二動作を同時に行ってもよい。また、センサーユニット230、240の上下の位置関係が逆でもよく、さらに、センサーユニットの数は2つに限られず、3つ以上であってもよい。この場合に、3つ以上のセンサーユニットは、各々、切り換え部Kによって切り換えられて前記第一動作を行うセンサーユニット、および切り換え部Kによって切り換えられて前記第二動作を行う前記センサーユニットのいずれかを取り得る。
【符号の説明】
【0064】
1、1A 防犯センサ装置
100 カバーユニット
120A1、120A2、120A3 フレネルレンズ((複数の)光学系)
120B1、120B2、120B3 フレネルレンズ((複数の)光学系)
200 ベースユニット
220 視野制限部材
226A,226B 二次鏡
232A、232B 赤外線検知素子
242A、242B 赤外線検知素子
280 人体検知回路
K 切り換え部
PO1 第一位置
PO2 第二位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9