IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人立命館の特許一覧

<>
  • 特許-把持装置 図1
  • 特許-把持装置 図2
  • 特許-把持装置 図3
  • 特許-把持装置 図4
  • 特許-把持装置 図5
  • 特許-把持装置 図6
  • 特許-把持装置 図7
  • 特許-把持装置 図8
  • 特許-把持装置 図9
  • 特許-把持装置 図10
  • 特許-把持装置 図11
  • 特許-把持装置 図12
  • 特許-把持装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018206158
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020069612
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】平井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】王 忠奎
(72)【発明者】
【氏名】鐘江 崚
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-027873(JP,A)
【文献】特開2014-083640(JP,A)
【文献】特開2013-116522(JP,A)
【文献】特開2010-207940(JP,A)
【文献】特開平01-301087(JP,A)
【文献】特開昭59-074036(JP,A)
【文献】実開平04-136687(JP,U)
【文献】実開平06-033689(JP,U)
【文献】実開昭55-050053(JP,U)
【文献】実開昭54-169378(JP,U)
【文献】実開昭57-122387(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 - 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空で気密性を有し、柔軟な素材で形成された袋体からなる膨張体と、剛性を有する素材で形成した外殻と、を有するチャンバーと、
複数の前記チャンバーの間に把持対象部が配置されるよう複数の前記チャンバーを固定する連結手段と、
各前記チャンバー内の前記膨張体に対して気体の給気及び排気が可能な給排気手段と、を備え、
前記外殻は、剛性を有する前記素材で前記膨張体を覆うとともに、開口側面を有し、
前記膨張体は、前記把持対象物に接触する把持部を有するとともに、前記開口側面に前記把持部が形成されるように、前記外殻に対して設けられており、
前記給排気手段によって前記膨張体を膨張させて、複数の方向から前記膨張体の前記把持部を把持対象物に接触させることで前記把持対象物を把持する把持装置であって、
前記複数のチャンバーの前記膨張体の前記把持部のうち少なくとも2つの前記把持部は、上下方向に不均一な厚さを有することで、高さ方向における略中央部と異なる高さの部位が、膨張時に最も突出することを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記チャンバーが、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記チャンバーが、直線状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載に把持装置。
【請求項4】
隣接するチャンバーが相互に連結分離自在であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の把持対象物を把持するための把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、単身世帯や共働き世帯の増加等によって、スーパーやコンビニ等で販売される弁当や総菜等の中食の市場が拡大してきている。そのため、中食を製造する食品工場等の食品産業において、人手不足が深刻化してきており、自動化を進めることが望まれている。しかしながら、食品の多くは柔らかで崩れやすく、食品の形状や特性にはばらつきが大きく、また、食品工場においては、1つのラインで複数種類の食品を取り扱うことも多い。そのため、特に、食品を把持して移動させるという食品ハンドリングの工程では、一般的に自動車や電気製品の製造等の他産業分野で必要とされるほどの精度は要求されないものの、食品の形状や特性のばらつき等に対応することが難しく、自動化は困難とされ、そのほとんどを人手に頼っているのが現状である。
【0003】
一方、他産業分野でのハンドリングにおいては、柱状の物体を把持するためのエアチューブチャックが、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。このエアチューブチャックは、ドーナツ状のエアチューブを柱状の物体に外嵌した後に、エアチューブ内部に圧縮空気を送り込んでこれを内側に膨出させることによって、柱状の物体を中心軸方向に押圧して把持するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-33689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のようなエアチューブチャックは、把持対象物の表面形状に合わせてエアチューブが変形することができるので、把持対象物が表面形状にばらつきがある食品の場合でも把持することができると考えられる。しかしながら、このような従来のエアチューブチャックでは、エアチューブの厚さは一様で均一な厚さに形成されており、エアチューブが把持対象物に向かって膨出する際、その膨出面の略中央部が最も突出するようになっていた。そのため、把持対象物の高さがエアチューブの膨出面の略中央部より低いような場合には、エアチューブの膨出面が把持対象物に与える力は下向きとなり、把持することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、形状や特性にばらつきのある把持対象物や、様々な大きさの把持対象物でも対応して把持することができる把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る把持装置は、内部が中空で気密性を有し、柔軟な素材で形成された袋体からなる膨張体と、剛性を有する素材で形成した外殻と、を有するチャンバーと、複数の前記チャンバーの間に把持対象部が配置されるよう複数の前記チャンバーを固定する連結手段と、各前記チャンバー内の前記膨張体に対して気体の給気及び排気が可能な給排気手段と、を備え、
前記外殻は、剛性を有する前記素材で前記膨張体を覆うとともに、開口側面を有し、前記膨張体は、前記把持対象物に接触する把持部を有するとともに、前記開口側面に前記把持部が形成されるように、前記外殻に対して設けられており、前記給排気手段によって前記膨張体を膨張させて、複数の方向から前記膨張体の前記把持部を把持対象物に接触させることで前記把持対象物を把持する把持装置であって、
前記複数のチャンバーの前記膨張体の前記把持部のうち少なくとも2つの前記把持部は、上下方向に不均一な厚さを有することで、高さ方向における略中央部と異なる高さの部位が、膨張時に最も突出することを特徴とする。
【0008】
また、好ましくは、前記チャンバーが、円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、好ましくは、前記チャンバーが、直線状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、好ましくは、隣接するチャンバーが相互に連結分離自在であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る把持装置は、内部が中空で気密性を有し、柔軟な素材で形成された袋体からなる膨張体と、剛性を有する素材で形成した外殻と、を有するチャンバーと、複数の前記チャンバーの間に把持対象部が配置されるよう複数の前記チャンバーを固定する連結手段と、各前記チャンバー内の前記膨張体に対して気体の給気及び排気が可能な給排気手段と、を備え、前記外殻は、剛性を有する前記素材で前記膨張体を覆い、開口側面を前記把持対象物に接触する前記膨張体の把持部で形成し、前記給排気手段によって前記膨張体を膨張させて、複数の方向から前記膨張体の前記把持部を把持対象物に接触させることで前記把持対象物を把持する把持装置であって、
前記複数のチャンバーの前記膨張体の前記把持部のうち少なくとも2つの前記把持部は、膨張時に略中央部と異なる高さで最も突出するよう上下方向に不均一な厚さを有することを特徴としており、把持部が柔軟で弾性を有するため、把持部が把持対象物の表面形状に合わせて変形して把持対象物に面で接触することができ、また、それによって把持対象物にかかる単位面積当たりの力を小さくすることができる。そのため、把持対象物の形状や特性にばらつきがあっても把持することができる。
【発明の効果】
【0012】
そして把持部が膨張する際、均一な厚さの把持部の場合は、略中央部が最も突出するように膨張するのに対して、本願発明のように把持部の上下方向に傾斜した厚さが不均一な場合には、把持部の厚さによって伸縮のしやすさが異なるため、略中央部以外の部位を最も突出するように膨張させることができる。そのため、均一な厚さの把持部では把持できないような大きさの把持対象物でも、その把持対象物の大きさに、膨張時の最も突出する部位が合う不均一な厚さを有する把持部によって把持することができるので、様々な大きさの把持対象物にも対応することができる。
【0013】
前記チャンバーが、円弧状に形成されていると、把持対象物の外形状が丸みを帯びている場合に把持面との接触面積が大きくなり、持ち上げる際に摩擦力が大きくなって持ち上げやすい。
【0014】
また、前記チャンバーが、直線状に形成されていると、中空円筒状に形成され中央の円筒中空部に入らないような長尺棒状の把持対象物でも把持することができる。
【0015】
隣接するチャンバーが相互に連結分離自在であれば、連結することによって把持部の面積が大きくなり大きな把持対象物を把持することができる。また、チャンバーが破損した場合には、当該破損したチャンバーのみを分離して取り換えできるので一体型の場合に較べて修理が簡易である。更にまた、把持対象物の形状や特性等に合わせて、把持部の厚さの態様が異なるチャンバーの組み合わせや配置を変更することができ、様々な把持対象物に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る把持装置の概略斜視図。
図2図1のA-A断面図。
図3図2のB-B断面図。
図4図2のC-C断面図。
図5図3で把持部が膨張した様子を示す図。
図6図4で把持部が膨張した様子を示す図。
図7図3で把持対象物を把持する様子を示す図。
図8図3で、図7とは異なる把持対象物を把持しようとする様子を示す図。
図9図4で、図8の把持対象物を把持する様子を示す図。
図10】本発明の第2実施形態に係る把持装置で、図2のC-C断面図に対応する断面図。
図11図10で把持部が膨張した様子を示す図。
図12】本発明の第3実施形態に係る把持装置で、図1のA-A断面図に対応する断面図。
図13】本発明の第4実施形態に係る把持装置の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る把持装置のいくつかの実施形態について、以下、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
第1実施形態に係る把持装置1について、図1図9を参照しつつ説明する。本実施形態に係る把持装置1は、図1図2に示すように、外形の略等しい4つのチャンバー2を備え、4つのチャンバー2によって中空円筒状に形成されている。この中空円筒状の把持装置1の中心軸を軸Yとすると、各チャンバー2は、軸Yを含む平面と、該平面に垂直な軸Yを含む平面と、によって中空円筒を略4等分したような形となっている。以下では、中空円筒状の把持装置1の中心軸である軸Yの図1における上方向を上、下方向を下として説明する。
【0020】
各チャンバー2は、外殻3と、膨張体4とを備える。外殻3は、図3図4に示すように、側板部31と、上板部32と、下板部33とを備え、軸Yを含む平面による切断面において、断面略コ字状となっており、硬質な剛性を有する素材により形成されている。側板部31は、軸Yを中心とした中心角が略直角で軸Yに沿った円弧状面となっており、4つのチャンバー2が中空円筒状に配置された際に、図1図2に示すように、中空円筒の外周面を形成する。上板部32は、側板部31の上辺から側板部31に略垂直に軸Yに近づく方向に延出する面であり、4つのチャンバー2が中空円筒状に配置された際に、上板部32は、中空円筒の上面を形成し、上板部32の延出端辺は、中空円筒の外周の半径よりも小さい半径の軸Yを中心とした円を形成する。下板部33は、側板部31の下辺から、上板部32と同様に、側板部31に略垂直に軸Yに近づく方向に延出する面であり、4つのチャンバー2が中空円筒状に配置された際に、下板部33は中空円筒の下面を形成し、下板部33の延出端辺は、上板部32の延出端辺と半径が略等しい軸Yを中心とした円を形成する。
【0021】
また、側板部31は、側板部31の側辺から側板部31に略垂直に軸Yから遠ざかる方向に延出する取付片部34を側板部31の両側辺部にそれぞれ備える。取付片部34には、上下2か所にボルト挿通孔が設けられており、4つのチャンバー2が中空円筒状に配置された際に、図1に示すように、隣接するチャンバー2のそれぞれの片方の取付片部34も隣接し、隣接する2つの取付片部34のボルト挿通孔の位置は略一致するようになっており、ボルト35及びナット36によって隣接する2つの取付片部34を締結することで、隣接するチャンバー2は着脱自在に固定される。このように、チャンバー2は、外殻3の取付片部34によって互いに着脱自在となっており、中空円筒状に配置された4つのチャンバー2は、それぞれ隣接するチャンバー2同士が着脱自在に固定されている。
【0022】
膨張体4は、内部が中空で気密性を有する袋体で、柔軟で弾性を有する素材により形成されており、膨張体4の外形は、外殻3の断面略コ字状の内側と略等しい形状となっている。チャンバー2は、膨張体4が外殻3の断面略コ字状の内側に取り付けられて構成されており、図3図4に示すように、膨張体4は、外殻3の側板部31、上板部32及び下板部33にそれぞれ当接し、外殻3の断面略コ字状の開口側面には、膨張体4の膜状の把持部40が形成されるような形になっている。4つのチャンバー2が中空円筒状に配置された際、図2に示すように、把持部40によって中空円筒の内周面が形成されるようになっている。
【0023】
本実施形態では、把持装置1が備える4つのチャンバー2のうち、2つがチャンバー2aで、もう2つがチャンバー2bとなっており、チャンバー2aとチャンバー2bとが隣接して、2つのチャンバー2aと2つのチャンバー2bとはそれぞれ対向する位置に配置されるようになっている。チャンバー2aは、外殻3と膨張体4aとを備え、膨張体4aの把持部41が外殻3の断面略コ字状の開口側面を形成する。チャンバー2bは、外殻3と膨張体4bとを備え、膨張体4bの把持部42が外殻3の断面略コ字状の開口側面を形成する。チャンバー2aとチャンバー2bとは、把持部41と把持部42とが異なるだけで、それ以外は同一の構成となっている。チャンバー2aの把持部41は、図2図3に示すように、一定の厚さに形成されており、均一な厚さを有する膜状の部位となっている。チャンバー2bの把持部42は、図4に示すように、膨張体4bの内部側が下から上に掛けて徐々に厚くなるように一定の傾きに傾斜して形成されており、傾斜した厚さを有する膜状の部位となっている。把持部42の左右方向、つまり、軸Yに対しての円周方向については、図2に示すように、略等しい厚さとなっている。チャンバー2bの把持部42は、膨張体4bの内部側が傾斜して形成されることで厚さが変化するため、図2に示すように、チャンバー2aとチャンバー2bとの外形は略等しく、把持部41と把持部42によって中空円筒の内周面が形成される。
【0024】
各チャンバー2の外殻3には、外殻3の上板部32から膨張体4の内部の中空部まで貫通する給排気口5が設けられており、各給排気口5と給排気手段6とが不図示のホースを介して接続されている。給排気手段6から各膨張体4の内部の中空部までは気密性が保たれるようになっている。給排気手段6は、空気等の気体を膨張体4の内部の中空部に対して給気及び排気を行うことによって、膨張体4の内部の気圧を調節することが可能な手段であり、例えば、コンプレッサや圧力調整弁等の公知の手段によって構成される。
【0025】
また、本実施形態に係る把持装置1は、図1に示すように、連結手段9を備える。連結手段9は、アーム部91と、連結部92とによって構成される。アーム部91は、逆U字状に形成された長手状部材で、上下方向に略平行に立設する2つの垂直部と、垂直部の上端同士を結ぶ横架部とから成る。図2に示すように、アーム部91の垂直部は、それぞれ軸Yに垂直方向断面略コ字状に形成されており、隣接するチャンバー2を固定する際の当接する2つの取付片部34に外嵌できるようになっている。アーム部91の垂直部には、当接する2つの取付片部34に外嵌した際に、取付片部34に設けられているボルト挿通孔と略同位置となる位置に、ボルト挿通孔が設けられている。アーム部91の2つの垂直部を、中空円筒状に配置された4つのチャンバー2の4組存在する当接する2つの取付片部34のうち同一平面上に存在する2組に、それぞれ外嵌してボルト35及びナット36によって締結することで、アーム部91とチャンバー2とが着脱自在に固定される。また、アーム部92の横架部には、連結部92が固定されている。連結部92は、不図示のロボットアームの先端部と連結可能となっており、連結部92を介して、把持装置1はロボットアームに取り付けられる。把持装置1は、ロボットアームによって、任意の位置への移動や、任意の姿勢への制御、つまり、中空円筒状の把持装置1の中心軸である軸Yを地面に対して任意の角度に制御することが可能となっている。ロボットアームについては、公知のものを用いてよい。ロボットアームは、把持装置1の上側に取り付けられ、チャンバー2と給排気手段6との接続も、外殻3の上板部31に設けられた給排気口5を介して、把持装置1の上側で接続されているため、把持装置1の下側から把持対象物Tに対して把持装置1を接近させることができるようになっている。
【0026】
以上のような構成を有する把持装置1の作用及び効果について以下で説明する。把持装置1によって把持対象物Tを把持しようとする際には、まず、ロボットアームによって、把持対象物Tが把持装置1の中空円筒の中空部に配置されるように、把持装置1を移動させる。そして、給排気手段6によって、膨張体4に給気を行うことによって、膨張体4の内部の気圧を上昇させる。膨張体4は、柔軟で弾性を有する素材により形成されているため、外気圧より膨張体4の内部の気圧が高くなると、内部の気圧の上昇に伴って膨張しようとする。しかし、膨張体4は、把持部40を除いて、剛性を有する外殻3、及び隣接する膨張体4に囲まれており、それらによって膨張が制限されており、把持部40のみが膨張するようになっている。そのため、膨張体4の内部の気圧の上昇が小さくても把持部40を大きく膨張させることができる。把持部40は、把持装置1の中空円筒の内周面を形成しており、把持部40は軸Yの略垂直方向に膨張する。給排気手段6によって把持部40を膨張させて把持対象物Tに接触させ、把持部40で把持対象物Tを挟み込むようにすることで把持対象物Tを把持することができる。
【0027】
把持対象物Tを把持した後、給排気手段6によって膨張体4の内部の圧力を把持対象物Tを把持した状態に保ったまま、ロボットアームによって把持装置1を目的の場所まで移動させる。そして、給排気手段6によって膨張体4から排気を行うと、膨張体4の内部の気圧が下がり、膨張していた把持部40が収縮して把持対象物Tから離れ、把持対象物Tが把持部40による把持から解放されることで、把持対象物Tが目的の場所に載置される。給排気手段6による排気によって膨張体4の内部の気圧が外気圧と等しくなると、把持部40は元の把持装置1の中空円筒の内周面を形成する位置にまで戻る。以上のようにして、把持装置1によって把持対象物Tを把持してハンドリングを行うことができる。
【0028】
本実施形態に係る把持装置1は、4つのチャンバー2によって中空円筒状に形成され、4つのチャンバー2は、2つのチャンバー2aと2つのチャンバー2bとによって構成され、2つのチャンバー2aと2つのチャンバー2bとはそれぞれが対向するように配置されている。チャンバー2aの把持部41は、均一な厚さを有するため、把持部41が膨張する際には、図5に示すように、把持部41の略中央部が最も突出するように膨張するようになっている。チャンバー2bの把持部42は、下から上に掛けて徐々に厚くなるような傾斜した厚さを有するため、把持部42が膨張する際には、厚さの厚い上側ほど変形しにくく、厚さの薄い下側ほど変形しやすくなっているため、図6に示すように、把持部42の下部が最も突出するように膨張するようになっている。
【0029】
図7には、把持装置1の2つのチャンバー2aの把持部41によって把持対象物T1を把持する時の様子を示している。把持対象物T1を把持する際は、給排気手段6によって対向する2つのチャンバー2aの膨張体4aに給気して把持部41を膨張させて、膨張した把持部41を把持対象物T1に接触させる。把持部41は柔軟な素材により形成されているため、把持対象物T1がその表面に不規則な凹凸を有する場合でも、その不規則な凹凸に合わせて把持部41が変形して、把持部41を把持対象物T1に面で接触させることができるため、把持対象物T1の把持に必要な力が分散して、単位面積当たりに把持対象物T1にかかる力を小さくすることができる。そのため、把持対象物T1が変形しやすく崩れやすいような材料で形成されているような場合でも、把持装置1によると把持対象物T1の変形や破壊を抑えながら把持することが可能となる。また、チャンバー2aの膨張体4aは、剛性を有する外殻3により覆われており、把持部41を除いて膨張が制限されているため、膨張体4aの内部の気圧の上昇が把持部41の膨張に無駄なく利用され、大きな把持力を把持対象物T1に加えることもできるため、把持対象物T1がある程度の重量物である場合でも把持することができる。また、把持部41を把持対象物T1に面で接触させることができるので、把持した後の安定性が高く、把持対象物T1を把持したまま、ロボットアームによって把持装置1を任意の姿勢に制御することも可能である。
【0030】
なお、2つのチャンバー2aの把持部41ではなく、2つのチャンバー2bの把持部42によって、把持対象物T1を把持することも可能である。把持部41の場合と同様に、給排気手段6によって膨張体4bに給気して把持部42を膨張させて、膨張した把持部42で把持対象物T1を挟み込むことで、把持対象物T1を把持できる。ただし、把持部42は傾斜した厚さを有し、厚さの厚くなっている上部は膨張しにくくなっているため、膨張体4aと膨張体4bの内部の気圧が同程度の場合、把持部42は、把持部41より膨張度合いが小さくなるので、把持部41で把持可能な場合は、把持部41で把持させる方が好ましい。また、2つのチャンバー2aの把持部41と、2つのチャンバー2bの把持部42とを同時に膨張させて把持対象物T1を把持するようにしてもよい。この場合は、把持対象物T1に対して、把持部40を接触させる方向が4方向に増えて、また、接触面積も大きくすることができるので、より安定して把持することができる。
【0031】
次に、図8には、高さが把持部40の中央部よりも低い把持対象物T2を、2つのチャンバー2aの把持部41によって把持させようとした場合の様子を示している。把持部41は膨張時に略中央部が最も突出するように膨張するため、把持部41の略中央部よりも下部の傾斜面で把持対象物T2と接触することになる。そのため、2つの対向する把持部41から把持対象物T2に与えられる力は下向きとなり、把持対象物T2を把持することができない。膨張体4aの内部の気圧をさらに上昇させて、把持部41の膨張度合いを高めることで、把持部41と把持対象物T2の側面との接触面を大きくして、把持部41が把持対象物T2に与える横向きの力を大きくすることで把持させることは不可能ではないかもしれないが、その場合、把持部41を大きく膨張させる分、膨張体4aの気圧の上昇に耐えるように把持部41や外殻3の強度を高める必要があるので製造コストが増加し、また、把持対象物T2にかかる力も大きくなってしまうため、把持対象物T2が変形しやすい脆弱な材料で形成されている場合、把持対象物T2の変形や破壊が起こる可能性がある。従って、均一な厚さを有する把持部41では、把持部41の略中央部よりも高さの低い把持対象物T2を把持することは難しい。そこで、2つのチャンバー2bの把持部42によって把持対象物T2を把持させる。把持部42は、下から上に掛けて徐々に厚くなる傾斜した厚さを有し、膨張時には厚さの薄い下部が最も突出するように膨張するため、図9に示すように、把持部42の中央部よりも高さの低い把持対象物T2に対して、把持部42の下部の最も突出する部位で横方向から接触することができる。そのため、2つのチャンバー2bの把持部42によって、把持対象物T2を把持することができる。把持部42も、把持部41と同様に、柔軟で弾性を有する素材によって形成されているので、把持対象物T2の表面が不規則な凹凸を有する場合であっても、その不規則な凹凸に合うように把持部42が変形するため、把持部42を把持対象物T2に面で接触させることができ、またそのために、把持対象物T2の変形や破壊を抑制しながら安定して把持することができる。また、チャンバー2bにおいても、膨張体4bは剛性を有する外殻3で覆われ、把持部42を除いて膨張が制限されているため、膨張体4bの内部の気圧の上昇が無駄なく把持部42の膨張に利用されるので、把持部42でも把持力を大きくすることができ、ある程度の重量を持つ把持対象物T2でも把持することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る把持装置1は、中央部が最も突出するように膨張する把持部41を備えるチャンバー2aと、下部が最も突出するように膨張する把持部42を備えるチャンバー2bと、を備えているので、把持部41の中央部よりも高さが高いような把持対象物T1の場合は把持部41を膨張させて把持し、把持部41の中央部よりも高さが低く把持部41での把持が困難な把持対象物T2の場合でも把持部42を膨張させて把持することができるので、様々な大きさの把持対象物Tに対応することができる。また、把持部41及び把持部42は柔軟で弾性を有するため、把持対象物Tの表面形状に合わせて把持部41及び把持部42が変形して面で接触することができるので、変形や破壊を起こしやすい把持対象物Tであっても、変形や破壊させることなく安定して把持することができる。従って、把持装置1によると、把持対象物Tが形状や特性にばらつきのある食品であっても把持することができ、また、1つのラインで複数種の把持対象物Tを扱う必要がある場合でも、把持装置1は様々な大きさの把持対象物Tに対応できるので、段取り換えの作業を省略することができる。
【0033】
また、把持部40を把持対象物Tに面で接触させて把持するため、把持時の安定性が高く、把持装置1の姿勢によらず把持対象物Tを把持することができるので、例えば、床に縦方向に載置された円柱状の把持対象物Tを把持し、把持対象物Tを把持した状態でロボットアームによって把持装置1の姿勢を90度変化させて、横方向に開口した棚に把持対象物Tを載置するといったようなことも可能である。
【0034】
また、本実施形態では、把持部42の膨張体4bの内部側を下から上に掛けて一定の傾きに傾斜させることで、把持部42は傾斜した厚さを有するようになっており、把持部42の膨張体4bの外部側は、外殻3の断面略コ字状の開口側面と略一致し、把持部41と共に中空円筒状の把持装置1の内周面を形成するようになっている。把持部42を、膨張体4bの内部側ではなく、膨張体4bの外部側を下から上に掛けて一定の傾きに傾斜させることによって、把持部42の厚さを変化させてもよいが、その場合、把持部42の厚さの薄い下部を外殻3の下板部33の延出端辺に合わせると、把持部42の厚さの厚い上部が外殻3の上板部32の延出端辺よりも中空円筒状の把持装置1の中空部側に突出して、その分把持可能な把持対象物Tの大きさが小さくなり、また、把持部42の厚さの厚い上部を外殻3の上板部32の延出端辺と合わせると、把持部42の厚さの薄い下部が外殻3の下板部33の延出端辺よりもチャンバー2bの内側に入り込んでしまうので、その分把持部42の膨張時に最も突出する下部を把持対象物Tに接触させるために余分に膨張させなければならない。従って、把持部42の厚さは、膨張体4bの内部側、つまりチャンバー2bの内部側で変化させるほうが好ましい。
【0035】
また、本実施形態では、把持部42を一定の傾きの傾斜状に厚さを変化させているが、それに限らない。把持部40の厚さを厚くすると膨張しにくく、薄くすると膨張しやすく、把持部40の厚さの変化によって、把持部40の任意の部位を最も突出するようにできるので、必要な把持部40の膨張特性が得られるように把持部40の厚さは任意に変化させればよい。
【0036】
また、各チャンバー2は、互いに着脱自在に固定されるため、例えば、1つの把持部40が破損した場合に、把持装置1全体を取り換えることなく、破損した把持部40を有するチャンバー2だけを交換することで対応することができるため、簡単に短時間で修復することができる。また、把持装置1では、2つのチャンバー2aと2つのチャンバー2bとをそれぞれ対向するように配置しているが、それに限らず、チャンバーの配置やチャンバーが有する把持部は、自由に組み合わせるようにしてよい。
【0037】
また、本実施形態では、把持装置1の連結手段9は把持装置1の上側に設けられ、また、把持装置1と給排気手段6との接続も、チャンバー2の外殻3の上板部32に設けられた給排気口5を介して、把持装置1の上側に設けられており、そのため、把持装置1の下側から把持対象物T等に接近可能なようになっているが、それに限らない。例えば、給排気口5を各チャンバー2の外殻3の側板部31に設けて、連結手段9についても把持装置1の側方に設けるようにすることで、把持装置1の上側と下側とのどちらも把持対象物T等に接近可能なように構成してもよい。このように構成した場合は、床に載置されている把持対象物Tに把持装置1の下側から接近させて外嵌して把持し、把持装置1を180度回転させて、把持装置1の上側を床に向けて把持対象物Tを解放して載置するというように、把持装置1によって把持対象物Tを反転させることもできる。
【0038】
また、本実施形態に係る把持装置1では、剛性を有する外殻3に、柔軟で弾性を有する膨張体4を取り付けることでチャンバー2を構成しているが、外殻3の剛性は、把持装置1で扱う膨張体4の内部の気圧の範囲内において、外殻3が膨張体4から受ける力に対して剛性を有していればよく、また、膨張体4の弾性は、把持装置1で扱う膨張体4の内部の気圧の範囲内において、加圧時に膨張した把持部40が元の形状に戻るように弾性を有していればよい。膨張体4の柔軟性については、把持部40が、把持対象物Tの表面形状に合わせて変形可能な程度に柔軟であればよい。このような外殻3及び膨張体4に用いることができる素材の一例として、外殻3には、樹脂材料「Vero White」、膨張体4には、ゴムライク樹脂「Agilus30」を用いることができる。これらは3Dプリンタで利用可能な素材であるので、3Dプリンタを用いて外殻3及び膨張体4を製造してもよい。また、本実施形態では、断面略コ字状の外殻3に、外殻3の内側の形状と略等しい外形を有する膨張体4を取り付けることで、膨張体4が備える膜状の把持部40が外殻3の断面略コ字状の開口側面を形成するような形になっているが、剛性を有する外殻3の断面略コ字状の開口側面に、柔軟で弾性を有する膜状の把持部40が形成されていればよいので、例えば、異なる2種類の材料を扱える3Dプリンタを用いる等によって、外殻3と把持部40とを一体成形することでチャンバー2を形成するようにしてもよい。
【0039】
以下では、さらにいくつかの実施形態について説明する。第2実施形態に係る把持装置201について図10及び図11を参照して説明する。第2実施形態に係る把持装置201は、第1実施形態に係る把持装置1の2つのチャンバー2bのうちの1つがチャンバー2cによって置き換わった構成となっており、それ以外は把持装置1と同一の構成となっている。チャンバー2cは外殻3と膨張体4cとによって構成され、膨張体4cが備える把持部43は、膨張体4cの内部側が上から下に掛けて徐々に厚くなるような一定の傾きに傾斜して形成されており、膨張体4cに給排気手段6によって給気すると、把持部43は厚さの薄い上部が最も突出するように膨張するようになっている。チャンバー2cとチャンバー2bとは、チャンバー2cの把持部43とチャンバー2bの把持部42とが上下逆向きの関係で、その他は同一の構成となっている。図10には、把持装置201によって、円柱状の把持対象物T3を把持した時の様子を示している。ここでは、把持対象物T3は、把持部40の高さより高く、2つのチャンバー2aの把持部41によって把持されている。このとき、給排気手段6によってチャンバー2b及びチャンバー2cに給気を行い、把持部42及び把持部43を膨張させると、把持部42及び把持部43の膨張方向は、把持対象物T3を把持している把持部41の膨張方向と略垂直で、把持部42は下部が、把持部43は上部がそれぞれ最も突出するため、把持部42及び把持部43によって把持対象物T3には偶力が働き、図11に示すように、把持対象物T3を回転させることができる。このように、膨張時の最も突出する部位の異なる把持部42及び把持部43を組み合わせることで、把持対象物T3の把持姿勢を任意の角度に変化させることができる。例えば、把持装置201によると、床に縦向きに載置されている把持対象物T3を把持して、把持対象物T3の把持姿勢の角度を変化させて、床に横向きに寝かせて載置する、といったようなこともできる。
【0040】
以上のように、第2実施形態に係る把持装置201は、中央部が最も突出して膨張する2つの対向する把持部41と、それらに略垂直な方向で対向する上部及び下部が最も突出して膨張する把持部42及び把持部43と、の4つの把持部40を組み合わせることで、把持対象物T3の把持姿勢を、把持部42及び把持部43の膨張方向に任意の角度で変化させることができるように構成しているが、把持装置を構成するチャンバーの数を増やしたり、最も突出する部位が異なるように態様の異なる厚さを有する把持部を備えるチャンバーの組み合わせや配置等を変化させる等によって、様々な方向や位置から把持部が把持対象物に接触するように構成し、把持対象物の把持姿勢をより細かく制御できるように構成してもよい。
【0041】
次に、第3実施形態に係る把持装置301について図12を参照して説明する。第3実施形態に係る把持装置301は、3つのチャンバー302aと3つのチャンバー302bとの合計6つのチャンバーによって中空円筒状に形成されている。把持装置301は、チャンバーの数が異なる以外は、第1実施形態に係る把持装置1と同一または対応する構成となっている。チャンバー302aは、外殻303及び膨張体304aを備え、膨張体304aは最も突出する部位が略中央部である厚さが均一な把持部3041を備え、把持装置1のチャンバー2aに対応する。チャンバー302bは、外殻303及び膨張体304bを備え、膨張体304bは最も突出する部位が下部になるように膨張体304bの内部側が傾斜した厚さを有する把持部3042を備え、把持装置1のチャンバー2bに対応する。把持装置301のチャンバー302aとチャンバー302bとは、それぞれ交互に配置されて、隣接する取付片部3042をボルト35及びナット36で締結することで着脱自在に固定されている。
【0042】
図12は、チャンバー302aの把持部3041によって把持対象物T4を把持している様子を示している。第1実施形態に係る把持装置1では、2つのチャンバー2aと2つのチャンバー2bとがそれぞれ対向するように配置されており、それぞれの対向する2つのチャンバー2の把持部40によって把持対象物Tを挟み込むようにして把持することができるようになっていたが、把持装置301では、3つのチャンバー302aは対向する位置には配置されておらず、同一円周上に3つ等間隔に配置された形になっている。また、3つのチャンバー302bも同様に、3つ等間隔に配置されている。従って、把持装置301で把持対象物T4を把持する際は、図12に示すように、等間隔に配置された3つのチャンバー302aの把持部3041を膨張させることによって、把持部3041によって把持対象物T4に加えられる力を釣り合わせて把持することができる。把持対象物T4の高さが低い場合には、3つのチャンバー302bの把持部3042によって把持することができる。このように、把持部は対向して配置されていなくても、複数の方向から把持部によって把持対象物Tに加えられる力を釣り合わせるように配置されていればよい。把持装置301を構成するチャンバーも、チャンバー302a及びチャンバー302bの2種類だけでなく、さらに他の膨張態様を示す把持部を有するチャンバーを用いて3種類以上のチャンバーによって構成してもよいし、チャンバー302bのみ等1種類のチャンバーで構成してもよいし、把持対象物Tの形状や特性等に合わせて任意にチャンバーを配置したり組み合わせてよい。また、把持装置を構成するチャンバーの数も、4つや6つだけではなく、例えば、中空円筒状に形成した1つのチャンバーによって構成されていてもよいし、中空円筒を8等分したような8つのチャンバーによって構成してもよいし、中空円筒を8等分したようなチャンバー4つとそれと同一の中空円筒を4等分したようなチャンバー2つとを組み合わせて構成する等、任意の数のチャンバーよって構成するようにしてもよい。
【0043】
次に、第4実施形態に係る把持装置401について図13を参照して説明する。第4実施形態に係る把持装置401は、2つのチャンバー402aと2つのチャンバー402bとを備え、それらのチャンバーが略平行な2列の直線状に配置された構成となっている。チャンバー402a及びチャンバー402bは、それぞれ第1実施形態に係る把持装置1のチャンバー2a及びチャンバー2bに対応し、把持装置1は中空円筒状に形成されているため、チャンバー2a及びチャンバー2bは円弧状に形成されていたものが、把持装置401は直線状に形成されるので、チャンバー402a及びチャンバー402bは直方体状に形成されている。チャンバー402aは、外殻403と膨張体404aとを備え、膨張体404aは、厚さが均一で略中央部が最も突出する把持部4041を備える。チャンバー402bは、外殻403と膨張体404bとを備え、膨張体404bは、下から上に掛けて徐々に厚くなるように膨張体404b内部側が一定の傾きで傾斜して形成された傾斜した厚さを有する把持部4042を備え、把持部4042は下部が最も突出するように膨張する。外殻403は両側に取付片部4034を備え、隣接させた取付片部4034をボルト35及びナット36で締結することで、チャンバー402a及び/またはチャンバー402bは着脱自在に固定される。把持装置401によると、中空円筒状の把持装置1の円筒中空部に入らないような長尺棒状の把持対象物T5でも、把持装置401の略平行の2列の直線状のチャンバーの間に把持対象物T5が配置されるように把持装置401を移動させて、給排気手段6により、他対向する2つの把持部4041及び/または対向する2つの把持部4042を膨張させることによって把持対象物T5を把持することができる。把持部4042は、下部が最も突出するように膨張するため、高さの低い把持対象物Tにも対応することが可能である。
【0044】
第4実施形態に係る把持装置401では、4つのチャンバーを略平行の2列直線状に配置され、2つの把持部4041及び2つの把持部4042がそれぞれ対向するようになっており、把持部4041及び/または把持部4042で把持対象物Tを挟み込むことで把持する構成となっているが、チャンバーの数は4つに限らず、4つ以上でも以下でもよい。例えば、1つのチャンバーによって構成し、そのチャンバーを平面略U字状に形成する等でもよいし、略平行な2列直線状の一方を2つのチャンバーで構成して他方を1つのチャンバーで構成する等でもよい。また、チャンバーの配置についても、2つの把持部4041及び2つの把持部4042をそれぞれ対向するように配置するだけでなく、把持部4041と把持部4042とが交互に千鳥状になるように配置する等でもよいし、中央部や下部や上部等、最も突出する部位が異なる複数種の把持部を組み合わせることによって、把持対象物Tの把持姿勢を制御するように構成してもよい。
【0045】
上記はあくまで本発明に係る把持装置のいくつかの実施形態を示したものであるため、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る把持装置は、ロボットアーム等に取り付けることによって、工場等における把持対象物のハンドリング工程の自動化、特に、食品のハンドリングの自動化に貢献することができる。また、本発明に係る把持装置は、把持装置の姿勢によらず安定して把持対象物を把持することができるので、例えば、長尺な棒の先端に本発明に係る把持装置を取り付ける等によって、手の届かないような高所の把持対象物の把持、例えば、果実の収穫等、に利用することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 把持装置
2 チャンバー
3 外殻
4(4a、4b) 膨張体
40(41、42) 把持部
5 給排気口
6 給排気手段
9 連結手段
T 把持対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13