(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】計量キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20230421BHJP
B65D 47/28 20060101ALI20230421BHJP
B65D 83/04 20060101ALI20230421BHJP
G01F 19/00 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B65D47/20 210
B65D47/20 300
B65D47/28 120
B65D83/04 E
G01F19/00 M
(21)【出願番号】P 2018235676
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000190068
【氏名又は名称】伸晃化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】西東 勲
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067308(JP,A)
【文献】実開平02-093248(JP,U)
【文献】特開2008-239204(JP,A)
【文献】米国特許第04832235(US,A)
【文献】実開平02-048567(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0282053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 47/28
B65D 83/04
G01F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に着脱可能に装着される内キャップであって、装着後に前記容器の内容物を通過させるために前記容器に接続される第1開口部と、前記第1開口部の周囲に周方向に並んで配置され、容積が互いに異なる複数のポケットと、を備える内キャップと、
前記内キャップの少なくとも一部を周方向に取り囲むように前記内キャップに嵌め合わされる外キャップであって、装着後に前記内キャップの第1開口部を介して前記内容物を通過させるための第2開口部を備える外キャップと、
前記外キャップの第2開口部を開閉できるように前記外キャップに取り付けられ、内部に前記内容物を保持するための保持スペースを有する蓋部と、を備え、
前記内キャップに対する前記外キャップの
前記第2開口部の位置を調整することにより、前記複数のポケットのうちの1つが前記外キャップの前記第2開口部に接続されるように選択され、
選択されたポケットが、前記蓋部の前記保持スペースと前記外キャップの第2開口部と前記内キャップの第1開口部を介して前記容器に接続され、
前記蓋部は、前記外キャップの天板部上にスライド可能に取り付けられ、スライドすることによって前記外キャップの第2開口部が閉じた閉状態と開いた開状態とを切り換え、
前記閉状態において、選択されたポケットが、前記蓋部の前記保持スペースと前記外キャップの第2開口部と前記内キャップの第1開口部を介して前記容器に接続され、前記内容物を選択されたポケットに移動させることができ、
前記蓋部は、前記閉状態からスライドすることによって選択されたポケットの直上を通過して、選択されたポケットの上端より上に積み上がった余剰な前記内容物をすり切り、前記外キャップの第2開口部と前記内キャップの第1開口部を介して前記容器内に落とし、スライドを終えて前記開状態に移行し、
前記開状態において、前記内容物を選択されたポケットに移動させることによって、選択されたポケットの容積に相当する量の前記内容物を取り出すための計量キャップ。
【請求項2】
前記外キャップは、前記内キャップに対して周方向に回転不能なように嵌め合わされる、請求項
1に記載の計量キャップ。
【請求項3】
前記外キャップは、前記内キャップに対して周方向に回転可能なように嵌め合わされ、
前記複数のポケットのうちの1つは、前記外キャップが前記内キャップに対して相対的に周方向に回転することにより、前記外キャップの前記第2開口部に接続されるように選択される、
請求項
1に記載の計量キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量キャップに関し、特に、容器に装着され、選択した所望の量の容器の内容物を取り出すための計量キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器内の内容物を所望の量だけ取り出すための容器や容器のキャップの需要は高く、様々な容器およびキャップが開発されてきた。例えば、特許文献1は、容器内に収容された錠剤を決まった数量、例えば3錠だけ一度に取り出すことができる定量取り出し錠剤容器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば医薬品の用量は、患者の年齢、体重、病態、併用薬等を考慮した上で、医師の専門的な判断により決定されるものであり、容器から一度に取り出すべき医薬品の量は、患者によって大きく異なる。特許文献1に記載の発明では、例えば3錠という決まった数量の錠剤を一度に取り出す以外の選択肢はなく、例えば5錠の錠剤を一度に取り出したい場合は、定量取り出し錠剤容器の設計を変更し、新たに5錠用の容器を製造する必要がある。これには多大な設計費用、材料費が必要となり、かつ、様々な数量に対応した容器を準備しておく必要があるため、在庫が多くなる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、複数の量の中から選択した所望の量の容器の内容物を取り出すための計量キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、容器に着脱可能に装着される内キャップであって、装着後に容器の内容物を通過させるために容器に接続される第1開口部と、第1開口部の周囲に周方向に並んで配置され、容積が互いに異なる複数のポケットと、を備える内キャップと、内キャップの少なくとも一部を周方向に取り囲むように内キャップに嵌め合わされる外キャップであって、装着後に内キャップの第1開口部を介して内容物を通過させるための第2開口部を備える外キャップと、外キャップの第2開口部を開閉できるように外キャップに取り付けられ、内部に内容物を保持するための保持スペースを有する蓋部と、を備える計量キャップを提供する。内キャップに対する外キャップの嵌め込み角度を調整することにより、複数のポケットのうちの1つが外キャップの第2開口部に接続されるように選択され、選択されたポケットが、蓋部の保持スペースと外キャップの第2開口部と内キャップの第1開口部を介して容器に接続され、内容物を選択されたポケットに移動させることによって、選択されたポケットの容積に相当する量の内容物を取り出す。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、複数の量の中から選択した所望の量の容器の内容物を取り出すことができる計量キャップを得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る計量キャップを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した計量キャップの分解斜視図である。
【
図3】内キャップの平面図、正面図および右側面図を示す三面図である。
【
図6】
図3の内キャップをVI-VI方向に見た断面図である。
【
図7】
図3の内キャップをVII-VII方向に見た断面図である。
【
図8】外キャップの平面図、正面図および右側面図を示す三面図である。
【
図11】
図8の外キャップをXI-XI方向に見た断面図である。
【
図12】
図8の外キャップをXII-XII方向に見た断面図である。
【
図13】スライド部材の平面図、正面図、右側面図、背面図および底面図を示す図である。
【
図14】
図13のスライド部材をXIV-XIV方向に見た断面図である。
【
図15】容器、内キャップ、外キャップおよびスライド部材を組み立てた計量キャップの組立図である。
【
図16】
図15の計量キャップをXVI-XVI方向に見た断面図である。
【
図17】計量キャップを
図16のXVII-XVII方向に見た断面図である。
【
図18】計量キャップを
図16のXVIII-XVIII方向に見た断面図である。
【
図19】計量キャップを
図16のXIX-XIX方向に見た断面図である。
【
図20】所望の数の錠剤を取り出すための計量キャップ100の動作を示す図である。
【
図21】倒立状態の計量キャップの模式的な断面図である。
【
図22】倒立状態から正立状態に戻った後の計量キャップを示す模式的な断面図である。
【
図23】窓部から見える錠剤を示す計量キャップの正面図である。
【
図24】開状態の計量キャップ100の平面図である。
【
図25】
図24の計量キャップ100の模式的な断面図である。
【
図27】計量キャップの他の変形例を示す図である。
【
図28】計量キャップの変形例のスライド部材の平面図、正面図、右側面図、背面図および底面図を示す図である。
【
図29】
図28のスライド部材をXXIX-XXIX方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る計量キャップについて、図面を参照して説明する。各実施形態において、同一の構成には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0010】
[1.構造]
[1-1.概要]
図1は、本発明の実施形態に係る計量キャップ100が容器1に装着された状態を示す斜視図である。
図2は、計量キャップ100の分解斜視図である。
図1および
図2には、説明の便宜のため、中心軸Cを示している。本明細書では、中心軸Cに平行な方向を軸方向と、軸方向に垂直な方向を径方向と、中心軸Cを中心とする円周方向を周方向と呼ぶ。軸方向について、紙面に向かって上向きの方向を正とする。軸方向の正方向を上方向、軸方向の負方向を下方向とも呼ぶ。
【0011】
計量キャップ100は、ねじ式のものであり、容器1に対して中心軸Cを中心として相対的に回転することにより容器1を封止する。容器1内には例えば錠剤が収納されている。計量キャップ100は、ねじによって容器1に着脱可能に装着される内キャップ2と、周方向に回転可能に内キャップ2に嵌め合わされる外キャップ3と、外キャップ3の頂部(後述の天板部301)にスライド可能に装着され、外キャップ3の天板部301の開口部304を開閉できるスライド部材4と、を備える。
【0012】
[1-2.内キャップ]
図3~7を参照しながら、内キャップ2の構造について説明する。
図3は、内キャップ2の三面図である。
図3(a)は、内キャップ2の平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図4は、内キャップ2の背面図である。
図5は、内キャップ2の底面図である。
図6は、
図3(b)の内キャップ2をVI-VI方向に見た断面図である。
図7は、
図3(c)の内キャップ2をVII-VII方向に見た断面図である。
【0013】
内キャップ2は、容器1に装着される際に容器1の円筒形状の口部101(
図2参照)と首部102(
図2参照)の少なくとも一部とを周方向に取り囲む第1周壁220を備える。
図6および
図7に示すように、第1周壁220の径方向内側表面には、容器1の首部102の径方向外側表面に設けられた雄ねじ103(
図2参照)と噛み合う雌ねじ221が形成されている。
【0014】
内キャップ2は、第1周壁220の上部に、円筒形状の第2周壁222を備える。内キャップ2は、例えば射出成形技術によって一体的に形成されるため、第1周壁220と第2周壁222とは一体化している。
【0015】
内キャップ2の頂部224には、中心軸Cを中心とする円形の開口部223が形成されている。これにより、内キャップ2が装着された容器1を倒立させた場合、容器1内の錠剤が内キャップ2の開口部223を通り抜けることができる。
【0016】
内キャップ2の第2周壁222の外周には、頂部224から所定の深さだけ下方に延びた凹部である第1~第12ポケット201~212が設けられている。第1~第12ポケット201~212は、容器1内の錠剤が入る寸法を有する。第1~第12ポケット201~212の深さはそれぞれ異なる。本実施形態では、第nポケットの深さは、n錠の錠剤が入るように設計されている。ここで、nは、1~12の整数である。例えば、錠剤の厚さがT[mm]である場合、第7ポケット207は、7T[mm]の深さを有する(例えば
図25参照)。
【0017】
第1~第12ポケット201~212は、周方向に並んでいる。また、各ポケットは、他のポケットから画されている。すなわち、内キャップ2と外キャップ3とが組み立てられた使用時において、あるポケット内の錠剤は、頂部224を超えなければ他のポケットに移動することはない。また、第1~第12ポケット201~212は、開口部223からも画されている。すなわち、内キャップ2と外キャップ3とが組み立てられた使用時において、容器1内の錠剤は、頂部224を超えなければ第1~第12ポケット201~212に移動することはない。
【0018】
内キャップ2の第2周壁222の外周には、第2周壁222の径方向外側表面から径方向外向きに突出した外周リブ225が形成されている。外周リブ225は、後述の外キャップ3が内キャップ2に対して相対的に上方に移動した場合に、外キャップ3の内周リブ303に接触し、内キャップ2から外キャップ3が容易に分離することを防ぐ機能を有する。
【0019】
内キャップ2の第1周壁220の径方向外側表面には、位置合わせマーク226が形成されている。位置合わせマーク226は、後述の外キャップ3の位置合わせマーク326と協働して、ユーザが取り出す錠剤の数を設定する際の目印となる。位置合わせマーク226として、例えば、取り出す錠剤の数を示す1~12の数字が記される。例えば、7錠の錠剤を収納可能な第7ポケット207の中心の下方に、「7」を示す位置合わせマーク226が形成される。
【0020】
[1-3.外キャップ]
図8~12を参照しながら、外キャップ3の構造について説明する。
図8は、外キャップ3の三面図である。
図8(a)は、外キャップ3の平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図9は、外キャップ3の背面図である。
図10は、外キャップ3の底面図である。
図11は、
図8(b)の外キャップ3をXI-XI方向に見た断面図である。
図12は、
図8(c)の外キャップ3をXII-XII方向に見た断面図である。
【0021】
外キャップ3は、中心軸Cを中心とする円板形状の天板部301と、天板部301の周縁から下方に延びた円筒形状の周壁302とを備える。外キャップ3の周壁302は、内キャップ2に嵌め合わされた際に、内キャップ2の第2周壁222を周方向に取り囲む。周壁302の下端302aは、内キャップ2に嵌め合わされた際に、内キャップ2の第1周壁220の上端220a(
図3、4、6および7参照)に接触する。これにより、外キャップ3は、内キャップ2の第1周壁220の上端220aに支持されて、内キャップ2に対して所定の位置より下方に移動しない。
【0022】
周壁302の下端302a付近には、周壁302の径方向内側表面から径方向内向きに突出した内周リブ303が形成されている。内周リブ303は、外キャップ3が内キャップ2に対して相対的に上方に移動した場合に、内キャップ2の外周リブ225(
図3、4、6および7参照)に接触し、内キャップ2から外キャップ3が容易に分離することを防ぐ機能を有する。
【0023】
以上のような構成により、内キャップ2に嵌め合わされた外キャップ3は、内キャップ2に対して相対的に周方向に回転可能であり、かつ、内キャップ2から容易に分離しない。
【0024】
外キャップ3の天板部301には、錠剤を通すための開口部304が形成されている。開口部304の寸法は、容器1に収納される錠剤の寸法に応じて設計される。開口部304は、外キャップ3が容器1に装着された内キャップ2に嵌め合わされた場合に、容器1内の錠剤が内キャップ2の開口部223(
図3、5~7参照)と外キャップ3の開口部304とを通って、内キャップ2の第1~第12ポケット201~212(
図3~7参照)のうちの1つに移動することができるような形状を有する。例えば、特に
図8および
図10に示すように、外キャップ3の開口部304は、径方向を長軸とし、錠剤の幅よりわずかに大きい幅(短軸の長さ)を有する略長方形の形状を有する。内キャップ2の第1~第12ポケット201~212への錠剤の経路を確保するために、開口部304は、径方向に周壁302の位置まで延びている。
【0025】
外キャップ3は、周壁302の開口部304の正面に、内キャップ2の第1~第12ポケット201~212(
図3~7参照)に収納された錠剤の数を確認するための透明な窓部305を備える。あるいは、外キャップ3は、その全体が透明な材料で形成されてもよい。
【0026】
外キャップ3には、周壁302の径方向外側表面に、滑り止めのためのローレットが形成されてもよい。ただし、ローレットが付された部分の透明度は下がり、ローレットを通して内キャップ2の第1~第12ポケット201~212(
図3~7参照)に収納された錠剤の数を確認することは困難であるため、ローレットは窓部305を避けて形成されることが好ましい。
【0027】
外キャップ3の天板部301には、開口部304の両外側に、後述のスライド部材4の爪401を挿入するための取付穴306が設けられている。
【0028】
外キャップ3の径方向外側表面には、位置合わせマーク326が形成されている。位置合わせマーク326は、前述の内キャップ2の位置合わせマーク226と協働して、ユーザが取り出す錠剤の数を設定する際の目印となる。
【0029】
[1-4.スライド部材]
図13および
図14を参照しながら、スライド部材4の構造について説明する。
図13は、スライド部材4の(a)平面図、(b)正面図、(c)右側面図、(d)背面図および(e)底面図である。
図14は、
図13(b)のスライド部材4をXIV-XIV方向に見た断面図である。
【0030】
スライド部材4は、外キャップ3にスライド可能に取り付けられ、径方向にスライドすることによって外キャップ3の開口部304が閉じた閉状態と開いた開状態とを切り換える。スライド部材4は、閉状態において、外キャップ3の天板部301(
図8~12参照)上に、外キャップ3の開口部304を塞ぐように配置される。したがって、スライド部材4は、第1に、計量キャップ100が組み立てられた状態において外キャップ3の開口部304を塞ぎ、埃等の外部物質が容器1の中に入ることを防止する機能を有する。
【0031】
スライド部材4は、閉状態において外キャップ3の開口部304を塞ぐために、平面視において外キャップ3の開口部304より大きい寸法を有する。スライド部材4は、その下端に、対向配置された2つの爪401を備える。爪401は、外キャップ3の取付穴306に挿入され、スナップフィットによって取付穴306の周囲の天板部301にひっかかり、スライド部材4が外キャップ3に対して相対的に上方に移動することを防止する。
【0032】
スライド部材4が外キャップ3に取り付けられた状態では、爪401は、径方向から垂直に、外側に延びている。
【0033】
スライド部材4は、第2に、閉状態において計量キャップ100が取り付けられた容器1を倒立させた場合に、容器1から出た錠剤を一時的に多数(例えば12錠以上)保持する機能を有する。したがって、スライド部材4は、多数の錠剤を保持できる保持スペースを形成するため、ある程度の高さを有する。
【0034】
スライド部材4は、第3に、閉状態において計量キャップ100が取り付けられた容器1を倒立状態から元の状態(正立状態)に戻した際に、保持スペースに保持された錠剤を内キャップ2の第1~第12ポケット201~212のうちの1つに導く機能を有する。この機能を効果的に発揮するために、スライド部材4は、組立後に径方向外側となる側に、幅の狭い絞り部402を有してもよい。絞り部402の幅は、容器1に収納される錠剤の寸法に応じて設計される。絞り部402の幅の最大値は、錠剤の幅より大きい必要があり、かつ、錠剤の幅の2倍未満であることが好ましい。
【0035】
計量キャップ100が取り付けられた容器1を倒立状態から正立状態に戻した際に、保持スペースに保持された錠剤の向きを整列させるために、絞り部402の周方向内側表面にリブ403が設けられてもよい。リブ403は、絞り部402の周方向内側表面の両方に対向配置される。対向配置されたリブ403間の距離は、錠剤の幅より小さい。したがって、錠剤が水平である状態では、錠剤は両リブ403の上に乗る。対向配置されたリブ403のセットは、複数あってもよい。
図14には、対向配置されたリブ403のセットが上下に2組設けられた例を示している。
【0036】
スライド部材4は、第4に、内キャップ2の第1~第12ポケット201~212からあふれた余剰な錠剤をすり切る機能を有する。この機能は、スライド部材4を外キャップ3に対して径方向にスライドさせて、計量キャップ100を閉状態から開状態に移行させることによって実現される。閉状態から開状態への移行の際、スライド部材4は、第1~第12ポケット201~212のうち選択されたポケットの直上を通過して、選択されたポケットの上端より上に積み上がった余剰な錠剤をすり切り、外キャップ3の開口部304と内キャップ2の開口部223を介して容器1内に錠剤を掻き落とす。
【0037】
[1-5.組立状態]
図15は、計量キャップ100の組立図であり、容器1、内キャップ2、外キャップ3およびスライド部材4を組み立てた状態を示している。
図15(a)は、計量キャップ100の平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図16は、
図15(b)の計量キャップ100をXVI-XVI方向に見た断面図である。
図17は、計量キャップ100を
図16のXVII-XVII方向に見た断面図である。
図19は、キャップを
図16のXIX-XIX方向に見た断面図である。
【0038】
[2.動作]
図20~25を参照して、計量キャップ100の動作例について説明する。
図20は、所望の数の錠剤を取り出すための計量キャップ100の動作を示す図である。まず、計量キャップ100を錠剤の入った容器1に取り付ける(S1)。これにより、容器1および計量キャップ100は、
図1および
図15~17に示すような状態となる。
【0039】
次に、ユーザは、外キャップ3を周方向に回転させて、取り出す錠剤の数を設定する(S2)。具体的には、設定された数の錠剤が入る内キャップ2のポケット(図示の例では第7ポケット207)の直上に外キャップ3の開口部304が配置される。この際、内キャップ2の位置合わせマーク226と、外キャップ3の位置合わせマーク326とを利用する。例えば、一度に7錠の錠剤を取り出したい場合、ユーザは、外キャップ3を周方向に回転させて、
図1および
図15(b)に示すように、外キャップ3の位置合わせマーク326を、「7」を示す内キャップ2の位置合わせマーク226の位置に合わせる。
【0040】
次に、ユーザは、スライド部材4をスライドさせて計量キャップ100を閉状態にする(S3)。あるいは、計量キャップ100を閉状態であることを確認する。なお、外キャップ3を周方向に回転させて取り出す錠剤の数を設定するステップS2は、ステップS3の前でなく、ステップS3の後に行われてもよい。
【0041】
次に、ユーザは、計量キャップ100が取り付けられた容器1を倒立させる(S4)。これにより、
図21に示すように、容器1内の錠剤が、外キャップ3の開口部304と内キャップ2の開口部223を介して、スライド部材4の保持スペース内に移動し、そこに保持される。
【0042】
次に、ユーザは、倒立状態の容器1を正立状態に戻す(S5)。これにより、
図22に示すように、スライド部材4の保持スペース内に保持されていた錠剤が、設定された数の錠剤が入る内キャップ2のポケット(図示の例では第7ポケット207)の中に落下する。
【0043】
次に、ユーザは、外キャップ3の透明な窓部305を覗いて、内キャップ2のポケットの中に設定された数の錠剤があるか否かを確認する(S6)。
図23に示した例では、ユーザは、内キャップ2の第7ポケット207の中に7錠の錠剤があるか否かを確認する。この際、ポケットの中で錠剤が傾いている場合は、ユーザは、計量キャップ100を左右に振る等して錠剤を整列させる。
【0044】
設定された数の錠剤がない場合(S6でNo)、ステップS4に戻り、ある場合(S6でYes)、ステップS7に進む。
図23の例では、内キャップ2の第7ポケット207の中に7錠の錠剤があるため、ステップS7に進む。なお、
図23の例では、第7ポケット207の中の7錠の錠剤の上に、更に2錠の錠剤が乗っているが、内キャップ2の第7ポケット207の中に7錠の錠剤があることに変わりはないため、ステップS7に進む。
【0045】
次に、ユーザは、スライド部材4をスライドさせて、計量キャップ100を開状態にする(S7)。
図24は、開状態の計量キャップ100の平面図である。
図25は、
図24の計量キャップ100の模式的な断面図である。
図25は、
図16と同一の断面を示している。スライド部材4をスライドさせて計量キャップ100を開状態にすると、
図25に示すように、スライド部材4が、内キャップ2の第7ポケット207の直上を通過する。したがって、内キャップ2の第7ポケット207の上端より上に積み上がった余剰な錠剤をすり切り、容器1に掻き落とすことができる。
【0046】
次に、ユーザは、容器を倒立させて内キャップ2のポケット内の錠剤を取り出す。これにより、ステップS2で設定された数の錠剤を取り出すことができる。
【0047】
[3.効果等]
以上のように、本実施形態に係る計量キャップ100は、容器1に着脱可能に装着される内キャップ2と、内キャップ2の少なくとも一部を周方向に取り囲むように内キャップ2に嵌め合わされる外キャップ3と、外キャップ3の第2開口部304を開閉できるように外キャップ3に取り付けられ、内部に容器1の内容物を保持するための保持スペースを有する蓋部4と、を備える。内キャップ2は、内容物を通過させるために容器1に接続される第1開口部223と、第1開口部223の周囲に周方向に並んで配置され、容積が互いに異なる複数のポケット201~212と、を備える。内キャップ2に対する外キャップ3の嵌め込み角度を調整することにより、複数のポケット201~212のうちの1つのみが外キャップ3の第2開口部304に接続されるように選択される。選択されたポケットが、蓋部4の保持スペースと外キャップ3の第2開口部304と内キャップ2の第1開口部223を介して容器1に接続される。内容物を選択されたポケットに移動させることによって、選択されたポケットの容積に相当する量の内容物を取り出すことができる。
【0048】
ここで、「接続される」とは、容器1の内容物が移動可能であることを意味する。したがって、例えば、「ポケット201が、蓋部4の保持スペースと外キャップ3の第2開口部304と内キャップ2の第1開口部223を介して容器1に接続される」とは、容器1の内容物が、ポケット201と容器1との間を、蓋部4の保持スペースと外キャップ3の第2開口部304と内キャップ2の第1開口部223を介して移動可能であることを意味する。
【0049】
この構成により、ユーザは、選択されたポケットの容積に相当する量の内容物を取り出すことができる。例えば、容器1の内容物としての錠剤を1錠のみ取り出し、または12錠取り出すことができる。
【0050】
これにより、必要以上の数の錠剤を取り出すことを防止できる。必要以上の数の錠剤が取り出された場合に錠剤を手指を使って容器1の内部へ戻す事態を防止でき、衛生上の悪影響を防止することができる。
【0051】
また、一度に所望の量(例えば12錠)の容器1の内容物を取り出すことができ、1錠ずつ容器1から取り出す場合や容器1の口から大雑把に取り出す場合に比べて、内容物を数える手間を省くことができる。これは、例えば、薬剤師等の医療従事者が容器に入った錠剤を分包する際に有利である。
【0052】
さらに、患者の状態に応じて、一度に取り出される容器1の内容物の量を医師や薬剤師等が柔軟にかつ簡単に変更できる。
【0053】
蓋部4は、スライド部材4であることが好ましい。スライド部材4は、外キャップ3の天板部上にスライド可能に取り付けられ、スライドすることによって外キャップ3の第2開口部304が閉じた閉状態と開いた開状態とを切り換える。閉状態において、選択されたポケットが、スライド部材4の保持スペースと外キャップ3の第2開口部304と内キャップ2の第1開口部223を介して容器1に接続され、内容物を選択されたポケットに移動させることができ、スライド部材4は、閉状態からスライドすることによって選択されたポケットの直上を通過して、選択されたポケットの上端より上に積み上がった余剰な内容物をすり切り、外キャップ3の第2開口部304と内キャップ2の第1開口部223を介して容器1内に落とし、スライドを終えて開状態に移行し、開状態において、選択されたポケットの容積に相当する量の内容物を取り出す。
【0054】
この構成により、スライド部材4をスライドさせることによって余剰な錠剤等をすり切ることができ、簡単な操作によって所望の量(例えば12錠)の容器1の内容物を取り出すことができる。
【0055】
外キャップ3は、内キャップ2に対して周方向に回転可能なように嵌め合わされてもよい。複数のポケット201~212のうちの1つは、外キャップ3が内キャップ2に対して相対的に周方向に回転することにより、外キャップ3の第2開口部304に接続されるように選択される。
【0056】
この構成により、ユーザが外キャップ3を内キャップ2に対して相対的に周方向に回転させるという簡単な操作により、一度に取り出す内容物の量(例えば1錠または12錠)を選択することができる。
【0057】
[4.変形例]
以上、本発明の実施形態について説明した。もっとも、上記の説明は本発明の例示であり、本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明の実施形態には改良や変形を行うことができる。
【0058】
[4-1.変形例1]
上記の実施形態では、ねじ式の計量キャップ100について説明した。しかしながら、本発明の計量キャップは、容器1を封止できるものであればよく、ねじ式のものに限定されない。例えば、計量キャップの内キャップは、打栓によって容器1に嵌め込まれる打栓式のキャップであってもよい。
【0059】
[4-2.変形例2]
図19に示した計量キャップ100の断面と異なり、
図26に示すように、内キャップ2の第2周壁222の径方向外側表面に1つ以上の板ばね部227を設けるとともに、外キャップ3の周壁302の径方向内側表面に、径方向内向きに突出した12個の突出部307を設けてもよい。突出部307は、内周リブ303(
図11および
図12参照)の下方に形成される。
図26では、12個の板ばね部227が形成されている。
【0060】
図26と
図18とを見比べてわかるように、内キャップ2の各板ばね部227は、内キャップ2の各ポケット201~212に対応する位置に形成される。例えば、内キャップ2の第4ポケット204に対応する板ばね部227は、第4ポケット204の下方に、具体的には、中心軸Cと第4ポケット204の中心とを通る平面が外キャップ3の周壁302の径方向内側表面と交差する位置に、形成される。
【0061】
以上のような板ばね部227と突出部307とによりダイヤルクリック機構(クリックストップ機構)が形成され、ユーザは、外キャップ3を周方向に回転させた際に板ばね部227が突出部307に引っかかることによる抵抗力と、弾性により板ばね部227が撓んで突出部307を乗り越えることによる抵抗力からの解放と、を感じることによりクリック感を得ることができ、および/または、クリック音を聞くことができる。このクリック感および/またはクリック音は、外キャップ3の開口部304が内キャップ2の各ポケット201~212の直上に到達する度に得られる。これにより、ユーザは、外キャップ3の開口部304が内キャップ2の各ポケット201~212の直上に到達したことを知ることができ、外キャップ3の開口部304が2つのポケットの上に跨がり、ポケット内に錠剤が入らないという事態を防ぐことができる。
【0062】
[4-3.変形例3]
図19に示した計量キャップ100の断面と異なり、
図27に示すように、内キャップ2の第2周壁222の径方向外側表面に、径方向外向きに突出した12個の突出部228を設けるとともに、外キャップ3の周壁302の径方向内側表面に、径方向内向きに突出した12個の突出部308を設けてもよい。
【0063】
このロック機能付き構成では、外キャップ3は、内キャップ2に嵌め合わされた後、内キャップ2に対して相対的に周方向に回転できない。例えば、医師または薬剤師が一度に取り出せる錠剤の数が「7」になるように外キャップ3を内キャップ2に嵌め合わせた後、計量キャップが装着された容器1を患者に手渡す。患者は、ロック機能のため、一度に取り出せる錠剤の数を「7」以外に変更することはできない。この構成により、患者の誤操作等によって一度に取り出せる錠剤の数が変更されることを防止できる。
【0064】
[4-4.変形例4]
図28および
図29は、スライド部材の変形例4aを示す図である。
図28は、スライド部材4aの(a)平面図、(b)正面図、(c)右側面図、(d)背面図および(e)底面図である。
図29は、
図28(b)のスライド部材4aをXXIX-XXIX方向に見た断面図である。
【0065】
上記の実施形態のスライド部材4は、保持スペースに保持された錠剤を内キャップ2の第1~第12ポケット201~212のうちの1つに効率的に導く第3の機能を達成するために、絞り部402やリブ403を備えるものであった(
図13および
図14参照)。変形例4では、スライド部材4aは、第3の機能を達成するために、絞り部402およびリブ403に代えて、錠剤を保持する保持スペースの上に、錠剤整列部404を備える。
【0066】
ステップS4(
図20参照)において容器1を倒立させると、容器1内の錠剤がスライド部材4aの錠剤整列部404内に落ちる。ユーザは、倒立状態のまま計量キャップおよび容器1を振ることにより、錠剤整列部404の中で錠剤を同一方向に整列させることができる。整列させた後、容器1を正立状態に戻す(ステップS5)ことによって、整列したまま錠剤を内キャップ2のポケットの中に収納することができる。
【0067】
[4-5.他の変形例]
上記の実施形態では、内キャップ2の第1~第12ポケット201~212に円板形状の錠剤が厚さ方向に並んで積み上げられる例について説明した(
図21~25参照)。しかしながら、内キャップ2の第1~第12ポケット201~212は、錠剤が錠剤の直径方向または長軸方向に並ぶように設計されてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態では、計量キャップ100が適用される容器1の内容物について、円板形状の錠剤を例示した(
図21~25参照)。しかしながら、本発明の計量キャップが適用される容器1の内容物は円板形状の錠剤に限定されない。例えば、本発明の計量キャップが適用される容器1の内容物は、球状の丸剤であってもよい。また、本発明の計量キャップが適用される容器1の内容物は、固形の錠剤や丸剤に限られず、顆粒、粉末状の粉剤等であってもよい。
【0069】
上記の実施形態では、スライド部材4は、外キャップ3の開口部304を塞ぐ第1の機能を有するものであった。これに加えて更に気密性が必要である場合は、計量キャップ100は、容器1の口部101(
図2参照)と内キャップ2と外キャップ3とスライド部材4の全体を包み込んで気密性を確保するフードまたはねじ式キャップなどを備えてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 容器
2 内キャップ
3 外キャップ
4 スライド部材(蓋部)
100 計量キャップ
201 第1ポケット
202 第2ポケット
203 第3ポケット
204 第4ポケット
205 第5ポケット
206 第6ポケット
207 第7ポケット
208 第8ポケット
209 第9ポケット
210 第10ポケット
211 第11ポケット
212 第12ポケット
220 第1周壁
222 第2周壁
223 第1開口部
224 頂部
225 外周リブ
226 マーク
227 板ばね部
228 突出部
301 天板部
302 周壁
303 内周リブ
304 第2開口部
305 窓部
306 取付穴
307 突出部
308 突出部
326 マーク
401 爪
402 絞り部
403 リブ
404 錠剤整列部