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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】マンホール用昇降式安全柵
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
E02D29/12 A
E02D29/12 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019154550
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021031990
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】592134125
【氏名又は名称】阿南電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】柿久保 則夫
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124055(JP,A)
【文献】特開平9-279615(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013600(JP,U)
【文献】特開2000-274134(JP,A)
【文献】実開昭61-184751(JP,U)
【文献】特開平8-217073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの内周壁に固定される2本の支柱(11)を有するはしご(10)と、
それぞれの前記支柱(11)に沿って昇降可能に取り付けられる可動支柱(12)と、それぞれの前記可動支柱(12)間に掛け渡される安全柵(20)とを備えるマンホール用昇降式安全柵において、
前記安全柵(20)が前記マンホールの開口部よりも高い位置にある状態で、前記可動支柱(12)が前記支柱(11)に対して保持可能であり、
前記安全柵(20)がそれぞれの前記可動支柱(12)に対して第1ヒンジ部(22)を介して揺動可能に連結される第1柵部(21)と、それぞれの前記第1柵部(21)の間に掛け渡すように第2ヒンジ部(24)を介して揺動可能に連結される第2柵部(23)とを有し、
前記第2柵部(23)が複数の柵体を相互に第3ヒンジ部(25)を介して揺動可能に連結したものであり、
前記安全柵(20)が前記マンホールの開口部よりも高い位置にあるとき、前記安全柵(20)は、前記第1ヒンジ部(22)、第2ヒンジ部(24)および第3ヒンジ部(25)が前記マンホールの開口部の上方に位置する折り畳み状態と、前記第3ヒンジ部(25)が前記マンホールの開口部の外周部分の上方に位置する展開状態とを採るものであり、
前記安全柵(20)は、前記折り畳み状態で前記マンホール内に配置されていることを特徴とするマンホール用昇降式安全柵。
【請求項2】
前記安全柵(20)は、前記展開状態で前記第2ヒンジ部(24)が前記マンホールの開口部の外周部分の上方に位置するものであることを特徴とする請求項1に記載されたマンホール用昇降式安全柵。
【請求項3】
前記支柱(11)が上下方向に延びるスリット(16a)を有する筒状部材から形成され、前記可動支柱(12)が外周部から突出する突出板部(12a)を有し、
前記突出板部(12a)が前記支柱(11)のスリット(16a)から突出する状態で、前記可動支柱(12)が前記支柱(11)内に配置されており、前記突出板部(12a)が上下方向に間隔をおいて固定される複数のガイド体(7)を有し、複数の前記ガイド体(7)のうち、少なくとも1つが前記支柱(11)のスリット(16a)の両縁部に接触する状態となっていることを特徴とする請求項1または2に記載されたマンホール用昇降式安全柵。
【請求項4】
前記複数の柵体が2枚の柵体(23a、23b)であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載されたマンホール用昇降式安全柵。
【請求項5】
前記第1柵部(21)および前記柵体のうち、いずれか一方にフック(8a)を有するロックバー(8)が揺動可能に取り付けられ、他方のものに前記ロックバー(8)のフック(8a)が着脱可能に係合する受け具(9)が取り付けられており、前記安全柵(20)が前記折り畳み状態または展開状態であるとき、前記ロックバー(8)のフック(8a)が前記受け具(9)に係合可能となっていることを特徴とする請求項4に記載のマンホール用昇降式安全柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地下の下水道や配線設備等の地下施設への保守点検用通路として設けられるマンホールに設置されるマンホール用昇降式安全柵に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地下の下水道や配線設備等の地下施設への保守点検用通路としてマンホールが設けられている。通常、このマンホールは、道路等の地表面に開口しており、その開口部には縦孔を密閉する鋳鉄製の蓋板が設けられている。
【0003】
地下施設の保守点検は、この鋳鉄製の重い蓋板を開け、作業員がマンホール内に入って行ない、通常、作業中は蓋板を開放した状態となっている。従って、作業中に地上での作業員や道路等の通行人が誤ってマンホール内に転落することがあった。
【0004】
このような転落を防止するために、マンホール内部に昇降自在の安全柵を設け、作業時には安全柵を上昇させることによりマンホールの開口部に安全柵を設けるマンホール用昇降式安全柵が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載のマンホール用昇降式安全柵は、マンホールの内周壁に取り付けられたはしごと、はしごの両支柱に昇降自在にそれぞれ設けられた可動支柱と、可動支柱に設けられた安全柵と、安全柵の上端部に設けられた蓋とを有し、可動支柱を降下させて安全柵をマンホール内に収納するものである。
【0006】
安全柵は、それぞれの可動支柱と、それぞれの可動支柱の間に架け渡す状態に上下方向に間隔をおいて複数設けられた円弧状の横桟と、それぞれの横桟に沿って複数設けられた縦桟とから構成されている。
【0007】
特許文献1に記載のマンホール用昇降式安全柵は安全柵の上端部に蓋を設けているので、マンホールの蓋板を外しても、この安全柵の蓋により作業員等のマンホール内への転落を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平9-279615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載のマンホール用昇降式安全柵の安全柵は、横桟がマンホールの開口部に沿って円弧状に形成されている。この安全柵によってマンホールの開口部が狭くなる。
【0010】
マンホールの開口部が狭くなっていると、作業員は身体を縮こませるなどの無理な体勢でマンホールの開口部を出入りする必要があり、作業員が出入りする際にマンホールの開口部を確保することが難しいという問題があった。
【0011】
そこで、この発明の課題は、マンホールの開口部を確保することができるマンホール用昇降式安全柵を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明に係るマンホール用昇降式安全柵は、マンホールの内周壁に固定される2本の支柱を有するはしごと、それぞれの前記支柱に沿って昇降可能に取り付けられる可動支柱と、それぞれの前記可動支柱間に掛け渡される安全柵とを備えるマンホール用昇降式安全柵において、
前記安全柵が前記マンホールの開口部よりも高い位置にある状態で、前記可動支柱が前記支柱に対して保持可能であり、前記安全柵がそれぞれの前記可動支柱に対して第1ヒンジ部を介して揺動可能に連結される第1柵部と、それぞれの前記第1柵部の間に掛け渡すように第2ヒンジ部を介して揺動可能に連結される第2柵部とを有し、前記第2柵部が複数の柵体を相互に第3ヒンジ部を介して揺動可能に連結したものであり、前記安全柵が前記マンホールの開口部よりも高い位置にあるとき、前記安全柵は、前記第1ヒンジ部、第2ヒンジ部および第3ヒンジ部が前記マンホールの開口部の上方に位置する折り畳み状態と、前記第3ヒンジ部が前記マンホールの開口部の外周部分の上方に位置する展開状態とを採るものであり、前記安全柵は、前記折り畳み状態で前記マンホール内に配置されている構成を採用することができる。
【0013】
この構成においては、使用前では安全柵が折り畳み状態でマンホール内に配置されている。使用時に、安全柵がマンホールの開口部よりも高い位置となるように、可動支柱を支柱に対して上昇させる。この安全柵を展開状態にして、第2柵部の複数の柵体をマンホールの開口部の外周部分の上方に位置させることができる。
【0014】
前記安全柵は、前記展開状態で前記第2ヒンジ部が前記マンホールの開口部の外周部分の上方に位置するものである構成を採用することができる。
【0015】
この構成により、展開状態では、安全柵の第3ヒンジ部と第2ヒンジ部がマンホールの開口部の外周部分の上方に位置するので、マンホールの開口部をより大きく確保することができる。
【0016】
前記支柱が上下方向に延びるスリットを有する筒状部材から形成され、前記可動支柱が外周部から突出する突出板部を有し、前記突出板部が前記支柱のスリットから突出する状態で、前記可動支柱が前記支柱内に配置されており、前記突出板部が上下方向に間隔をおいて固定される複数のガイド体を有し、複数の前記ガイド体のうち少なくとも1つが前記支柱のスリットの両縁部に接触する状態となっている構成を採用することができる。
【0017】
この構成では、ガイド体が支柱のスリットの両縁部に接触しているので、可動支柱の突出板部が支柱のスリット内での揺動を防止することができる。
【0018】
前記複数の柵体が2枚の柵体である構成を採用すると、安全柵が折り畳み状態であるとき、第2柵部の2枚の柵体がマンホールの開口部の中央部分付近に配置される。この2枚の柵体により作業員のマンホール内への落下を防止することができる。
【0019】
前記複数の柵体が2枚の柵体である構成において、前記第1柵部および前記柵体のうち、いずれか一方にフックを有するロックバーが揺動可能に取り付けられ、他方のものに前記ロックバーのフックが着脱可能に係合する受け具が取り付けられており、前記安全柵が前記折り畳み状態または展開状態であるとき、前記ロックバーのフックが前記受け具に係合可能となっている構成を採用することができる。
【0020】
この構成では、ロックバーのフックを受け具に係合させることで、安全柵は折り畳み状態または展開状態で保持される。このため、安全柵の昇降を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、安全柵の一部をマンホールの開口部の外周部分の上方に展開することができるので、マンホールの開口部が確保されて、作業員が無理な体勢をとることなくマンホールを出入りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明に係る第1実施形態のマンホール用昇降式安全柵を示す斜視図
図2】同上のマンホール用昇降式安全柵のマンホール内で折り畳み状態を示す斜視図
図3】同上のマンホール用昇降式安全柵のマンホール内で折り畳み状態を示す平面図
図4】同上の安全柵の展開状態を示す斜視図
図5】同上のロック部材を示す斜視図
図6】同上の支柱と可動支柱とを示す一部切り欠き平面図
図7】同上の支柱と可動支柱とを示す一部切り欠き斜視図
図8】同上のロック部材の動作を示す説明図
図9】同上のロックバーと受け具とを示す側面図
図10】同上の安全柵の展開状態を示す平面図
図11】この発明に係る第2実施形態のマンホール用昇降式安全柵を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1から図10にこの発明の第1実施形態のマンホール用昇降式安全柵を示す。このマンホール用昇降式安全柵1は、マンホールMの内周壁に固定され、作業員がマンホールM内に入る際に使用されるものである。
【0024】
図1図4に示すように、マンホール用昇降式安全柵1は、マンホールMの内周壁Wに固定される2本の支柱11を有するはしご10と、それぞれの支柱11に沿って昇降可能に取り付けられる可動支柱12、12と、それぞれの可動支柱12、12の間に掛け渡される安全柵20とを備えている。
【0025】
はしご10は、上下方向に配置される2本の支柱11と、それぞれの支柱11、11の間に上下方向に間隔をおいて複数架け渡される踏桟11aとを有する。図3に示すように、それぞれの支柱11は長尺の角型筒状部材から形成され、水平方向の断面が矩形をなすものである。
【0026】
それぞれの支柱11は、マンホールMの周縁部寄りに位置する外側面部13と、外側面部13に対向する内側面部14と、はしご10側に位置するはしご側面部15と、はしご側面部15に対向し、安全柵20側に位置する柵側面部16とを有する。
【0027】
外側面部13は、はしご側面部15よりも広い幅を有している。支柱11の下端部および内側面部14の上端部にそれぞれ固定金具2が設けられ、固定金具2に挿通したアンカーボルトで、それぞれの支柱11がマンホールMの内周壁および内底壁に固定される。
【0028】
踏桟11aは、上下方向に所定間隔をおいて、それぞれの支柱11のはしご側面部15間に架け渡されている。内側面部14の上端縁の柵側面部16寄りの位置には、係合片14aが設けられている。係合片14aは上方に延び出しており、後述するロック部材6のフック6aが係合する。柵側面部16は、幅方向中央に全長に渡り上下方向に形成されるスリット16aを有する。
【0029】
支柱11内の上部には滑車3が取り付けられている。外側面部13と内側面部14との間に軸体3aが配置され、滑車3は軸体3aを中心に回転する。支柱11内にバランスウエイト4が昇降可能に収納されている。
【0030】
バランスウエイト4と可動支柱12とにワイヤ5の端部がそれぞれ接合される。ワイヤ5は滑車3に巻き掛けられている。それぞれの支柱11内のバランスウエイト4は、それぞれの可動支柱12と安全柵20の総重量の1/2の重量を有している。
【0031】
可動支柱12は長尺の筒状部材であり、筒状部材の外周部から全長にわたって突出する突出板部12aを有する。突出板部12aが支柱11のスリット16aから外部に突出する状態となっている。可動支柱12は、支柱11内を昇降可能に配置されている。なお、可動支柱12は中実の棒状部材であってもよい。可動支柱12が筒状部材であれば、軽量化を図ることができる。
【0032】
安全柵20がマンホールMの開口部よりも高い位置にあるとき、ワイヤ5の可動支柱12との接合位置は滑車3よりも低い位置にある。安全柵20がマンホールMの開口部よりも低い位置にあるとき、ワイヤ5のバランスウエイト4との接合位置が滑車3よりも低い位置にある。
【0033】
図5~7に示すように、突出板部12aは内側面部14側の表面に取り付けられるロック部材6および取手12cを有する。取手12cは、ロック部材6に対して突出板部12aの突出方向外側に配置されている。
【0034】
図1に示すように、それぞれの取手12cの間に規制部材17が掛け渡されている。規制部材17は鎖やロープ等から形成され、いずれか一方の取手12cに対して着脱可能に取り付けられている。規制部材17により作業員以外のマンホール内への侵入が規制される。
【0035】
ロック部材6は軸状部材からなり、突出板部12aの上部に上下方向に間隔をおいて固定される2つの支持片12bを介して、回転可能に支持されている。ロック部材6の下端部に直角に折り曲げたフック6aが設けられ、ロック部材6の上端部に直角に延び出すレバー6bが固定されている。ロック部材6の外周部に上部ストッパリング6cおよび下部ストッパリング6dが固定されている。
【0036】
ロック部材6は2つの支持片12bを貫通している。上部ストッパリング6cが上側の支持片12bに載る状態にあり、下部ストッパリング6dが下側の支持片12bの直下に位置する状態となっている。
【0037】
図5に示すように、ロック部材6は、可動支柱12の突出板部12aとの間にばね部材6eが取り付けられている。ばね部材6eはつるまきばねを有し、つるまきばねの弾性復元力によってフック6aを支柱11の内側面部14へ向かう方向に付勢している。フック6aとレバー6bとの位置関係は、平面視において、ロック部材6の上下方向中間部分を中心として45度~60度に設定されている。
【0038】
可動支柱12が上昇し、安全柵20がマンホールMの開口部よりも高い位置にあるとき、ロック部材6のフック6aは支柱11の上端面に載り、かつ、係合片14aに係合している。これにより、図8の実線に示すように、可動支柱12の降下が規制され、可動支柱12は支柱11に対して保持される。
【0039】
突出板部12aには、上下方向に間隔をおいて複数(この実施形態では2つ)のガイド体7が固定されている。上側のガイド体7はロック部材6のレバー6bよりも上方に配置され、下側のガイド体7はロック部材6のフック6aよりも下方に配置されている。
【0040】
図6、7に示すように、それぞれのガイド体7は矩形をなす樹脂製の一対の板片7aから形成される。一対の板片7aが突出板部12aの両側からボルトおよびナットにより挟んだ状態で、突出板部12aに固定されている。
【0041】
一対の板片7aの支柱11側の端縁部がスリット16aの両縁部にそれぞれ線状に接している。ガイド体7は支柱11のスリット16a内での突出板部12aの揺動を規制している。なお、ガイド体7の数は3つ、4つ・・・と複数であればよい。少なくとも1つのガイド体7が支柱11のスリット16aの両縁部に接していればよい。
【0042】
図1に示すように、安全柵20は、それぞれの可動支柱12に対して第1ヒンジ部22を介して揺動可能に連結される2枚の第1柵部21と、それぞれの第1柵部21の間に掛け渡すように第2ヒンジ部24を介して揺動可能に連結される第2柵部23とを有している。
【0043】
図2に示すように、それぞれの第1柵部21は矩形の枠部材である。第1柵部21の上下方向中央部分に中桟21aが水平方向に配置されている。第1柵部21の上部に取手21bが取り付けられている。取手21bは、第1柵部21の上端面よりも高い位置と、第1柵部21の上端面よりも低い位置との間で上下動可能となっている。
【0044】
図4に示すように、第1ヒンジ部22はトップヒンジ部22aおよびボトムヒンジ部22bとからなる。第1ヒンジ部22のヒンジ軸が上下方向の同一直線上に配置されている。第1ヒンジ部22は公知の上下一対のキャビネットヒンジを使用することができる。
【0045】
トップヒンジ部22aは突出板部12aの上端部と第1柵部21の上端部との間に配置されている。ボトムヒンジ部22bは突出板部12aの上下方向途中位置と第1柵部21の下端部との間に配置されている。
【0046】
トップヒンジ部22aおよびボトムヒンジ部22bのヒンジ軸は可動支柱12の突出板部12aおよび第1柵部21の間であって、これらから離れた位置に設けられている。第1柵部21は可動支柱12に対して水平方向に揺動する。
【0047】
第2柵部23は複数(この実施形態では2枚)の柵体23a、23bを相互に第3ヒンジ部25を介して揺動可能に連結したものである。柵体23a、23bは第1柵部21と同一の矩形の枠部材である。なお、第2柵部23の柵体の数は、複数であれば2枚に限られず、3枚、4枚、5枚・・・であってもよい。
【0048】
2枚のうちの一方の第1柵部21と、柵体23aとが第2ヒンジ部24を介して相互に水平方向に揺動可能に連結されている。同様に、他方の第1柵部21と、柵体23bとが第2ヒンジ部24を介して相互に水平方向に揺動可能に連結されている。
【0049】
第2ヒンジ部24は、トップヒンジ部24aとボトムヒンジ部24bとからなる。第2ヒンジ部24のヒンジ軸が上下方向の同一直線上に配置されている。第2ヒンジ部24は公知の上下一対のバタフライヒンジを使用することができる。
【0050】
トップヒンジ部24aが一方の第1柵部21の幅方向外端面と柵体23aの幅方向外端面との間の上部に取り付けられる。ボトムヒンジ部24bが一方の第1柵部21の幅方向外端面と柵体23aの幅方向外端面との間の下部に取り付けられている。同様に、他方の第1柵部21と柵体23bとの間にも、トップヒンジ部24aおよびボトムヒンジ部24bが取り付けられている。第2ヒンジ部24のヒンジ軸は第1柵部21の内側(安全柵20の展開状態での内側)に位置している。
【0051】
第3ヒンジ部25はトップヒンジ部25aおよびボトムヒンジ部25bとからなる。第3ヒンジ部25のヒンジ軸が上下方向の同一直線上に配置されている。第3ヒンジ部25は公知の上下一対のピボットヒンジまたはキャビネットヒンジを使用することができる。
【0052】
第3ヒンジ部25のヒンジ軸は、安全柵20が展開する状態において、柵体23aおよび柵体23bから離れた位置であって、柵体23aと柵体23bの外側に位置している。
【0053】
それぞれの第1柵部21の上端部の内側にロックバー8が揺動可能に取り付けられている。柵体23aおよび柵体23bの上端部の内側に受け具9が取り付けられている。
【0054】
ロックバー8は、軸状部材を屈曲して形成したものである。ロックバー8は両端部が同方向へ直角に屈曲しており、一方の屈曲部にフック8aが形成れ、他方の屈曲部に軸部8bが形成されている。フック8aは軸部8bよりも短い。
【0055】
ロックバー8は第1柵部21に固定された支持片8cに軸部8bが回転可能に支持されている。軸部8bの下端にストッパリング8dが固定されている。ストッパリング8dによりロックバー8が支持片8cから抜け出ないようになっている。
【0056】
受け具9は板部材の長さ方向中央部を湾曲させたものであり、その湾曲部9aにロックバー8のフック8aが上方から着脱可能に係合する。
【0057】
図3に示すように、安全柵20が折り畳み状態のとき、2枚のうちの一方の第1柵部21のロックバー8は、その一方の第1柵部21と隣接しない柵体23bの受け具9に係合する。他方の第1柵部21のロックバー8は、その他方の第1柵部21と隣接しない柵体23aの受け具9に係合する。
【0058】
この係合によって、相互に隣接しない一方の第1柵部21と柵体23bとが柵体23aを跨いて揺動不能となるように保持される。また、相互に隣接しない他方の第1柵部21と柵体23aとが柵体23bを跨いで揺動不能となるように保持される。すなわち、ロックバー8により、安全柵20は折り畳み状態で保持されるものとなる。
【0059】
一方、図4に示すように、安全柵20が展開状態のとき、2枚のうちの一方の第1柵部21のロックバー8はその一方の第1柵部21と隣接する柵体23aの受け具9に係合する。また、他方の第1柵部21のロックバー8はその他方の第1柵部21と隣接する柵体23bの受け具9に係合する。
【0060】
この係合によって、相互に隣接する一方の第1柵部21と柵体23aとが揺動不能となるように保持される。また、相互に隣接する他方の第1柵部21と柵体23bとが揺動不能となるように保持される。すなわち、ロックバー8により、安全柵20は展開状態で保持されるものとなる。
【0061】
なお、この実施形態において、第2柵部23の柵体23aおよび柵体23bにロックバー8を取り付け、2枚の第1柵部21のそれぞれに受け具9を取り付けてもよい。
【0062】
安全柵20がマンホールMの開口部よりも高い位置にあるとき、安全柵20は第1ヒンジ部22、第2ヒンジ部24および第3ヒンジ部25がマンホールの開口部の上方に位置する折り畳み状態と、第2ヒンジ部24および第3ヒンジ部25がマンホールMの開口部の外周部分の上方に位置する展開状態とを採るものである。
【0063】
図3に示すように、安全柵20の折り畳み状態では2枚の第1柵部21、第2柵部23の柵体23aおよび柵体23bがマンホールMの開口部の上方に位置している。一方、図10に示すように、安全柵20の展開状態では第2柵部23の柵体23aおよび柵体23bがマンホールMの開口部の外周部分の上方に位置している。
【0064】
この実施形態のマンホール用昇降式安全柵1は、以上のように構成される。次に、マンホール用昇降式安全柵1の使用方法について説明する。
【0065】
まず、図2に示すように、使用前ではそれぞれの可動支柱12がマンホールMの開口よりも低い位置にあり、かつ安全柵20がマンホールMの開口部よりも低い位置で折り畳み状態にある。このとき、バランスウエイト4は、支柱11内の最も高い位置に引き上げられた状態にある。
【0066】
次に、作業員PがマンホールMの蓋(図示省略)を外す。このとき、ロックバー8により、安全柵20は折り畳み状態で保持されている。図3に示すように、安全柵20の折り畳み状態では第2柵部23の柵体23a、23bがマンホールMの直径方向に沿って配置されている。このため、マンホールM内への作業員等の転落を防止することができる。
【0067】
続いて、それぞれの第1柵部21の取手21bを掴み、安全柵20と共に2本の可動支柱12を上昇させる。このとき、バランスウエイト4により、比較的軽い力で上昇させることができる。
【0068】
ここで、ロック部材6のフック6aは支柱11の内側面部14へ向かう方向へ付勢されている。このため、フック6aは支柱11に接触しながら上昇する。
【0069】
さらに、可動支柱12を上昇させると、フック6aが支柱11の係合片14aを乗り越えて、可動支柱12に接触する状態となる。その後、可動支柱12を降下させることで、フック6aが支柱11の上端面に載る状態となる。
【0070】
この状態では、安全柵20がマンホールMの開口部よりも高い位置にある。このとき、ロック部材6のレバー6bを回動させても、フック6aが係合片14aに係合する。このロック部材6により、安全柵20がマンホールMの開口部よりも高い位置にある状態で、可動支柱12を支柱11に対して保持することができる。
【0071】
次に、ロックバー8を受け具9から抜き出し安全柵20を展開する。その後、ロックバー8のフック8aを受け具9に係合し、一方の第1柵部21とその一方の第1柵部21に隣接する柵体23aとの間、および他方の第1柵部21とその他方の第1柵部21に隣接する柵体23bとの間を揺動不能に保持する。これにより、安全柵20は展開状態で保持される。
【0072】
この展開状態では、安全柵20の第2ヒンジ部24および第3ヒンジ部25がマンホールMの開口部の外周部分の上方に位置している。すなわち、第2柵部23の柵体23aおよび柵体23bがマンホールMの開口部の外周部分の上方に位置する。
【0073】
この位置関係により、図10に示すように、作業員Pはその両肩と安全柵20との間にすき間がある状態ではしご10を昇降することができ、マンホールMの開口部をより大きく確保することができる。
【0074】
安全柵20が展開状態で保持されていることを確認後、作業員Pははしご10を使って、マンホール内に降りて行き、例えば、下水道や地下施設の配線設備の保守点検等の作業を行う。
【0075】
作業員Pが地下で作業中においては、それぞれの可動支柱12の取手12cの間に規制部材17を掛け渡し、マンホールM内への通行人等の立ち入りを規制する。
【0076】
作業の終了後、はしご10で地上近くまで登った作業員Pは規制部材17を外し、マンホールMの開口部から地上へ出る。その後、作業員Pは、ロックバー8のフック8aを受け具9から取り外し、安全柵20を折り畳む。
【0077】
安全柵20の折り畳みは、まず、第3ヒンジ部25を2本の可動支柱12の間に向かって移動させつつ、第2ヒンジ部24をマンホールMの開口部の上方へ移動させる。さらに、第2柵部23の柵体23aと柵体23bとを重ね合う状態とする。この状態で、それぞれのロックバー8のフック8aを受け具9に差し込み、安全柵20を折り畳み状態に保持する。
【0078】
続いて、図8の一点鎖線に示すように、取手21bを持って、安全柵20を少し持ち上げる。この状態でそれぞれの可動支柱12のロック部材6のレバー6bを第1柵部21へ向かって回動させる。
【0079】
レバー6bの回動によりフック6aが回動する。フック6aは平面視で支柱11の上端面から外れ、係合片14aから外れた状態となる。このとき、取手21bを持って安全柵20をマンホールMの開口部よりも低い位置に降下させる。最後にマンホールMの開口部に蓋を嵌め合せて、作業を終了する。
【0080】
このように使用されるマンホール用昇降式安全柵1は、安全柵20の第2柵部23の2枚の柵体23a、23bをマンホーMの開口部の外周部の上方に展開することができる。このため、マンホールMの開口部が確保されて、作業員Pが無理な姿勢を採ることなく、マンホールを出入りすることができる。
【0081】
次に、この発明に係る第2実施形態のマンホール用昇降式安全柵を図11に示す。この実施形態のマンホール用昇降式安全柵1は、第2柵部23が柵体23a、柵体23b、柵体23cおよび柵体23dの4枚の柵体からなる点、並びに安全柵20が展開状態で第2ヒンジ部24がマンホールMの開口部の上方に位置する点で上述の第1実施形態と相違する。第1実施形態と同様の構成は同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
図11の一点鎖線に示すように、この実施形態のマンホール用昇降式安全柵1では、第1柵部21は、第1実施形態での第1柵部よりも水平方向の幅が小さいものを使用している。
【0083】
第2柵部23の柵体23a、柵体23b、柵体23cおよび柵体23dは、同じ大きさの矩形の枠部材であり、相互に第3ヒンジ部25を介して揺動可能に連結されている。2枚のうち一方の第1柵部21と柵体23aが第2ヒンジ部24を介して相互に揺動可能に連結される。他方の第1柵部21と柵体23dが第2ヒンジ部24を介して相互に揺動可能に連結される。
【0084】
第2実施形態での第1ヒンジ部22は安全柵20の折り畳み状態において、マンホールMの開口部の上方に位置するものとなる(図11の一点鎖線参照)。一方、図11の実線に示すように、安全柵20の展開状態においては、第3ヒンジ部25のみがマンホールMの開口部の外周部分の上方に位置するものとなる。
【0085】
第2実施形態では、安全柵20が展開状態であるとき、第2柵部23の柵体23cおよび柵体23dがマンホールMの開口部の外周部分の上方に位置する。このため、作業中において、作業員Pはその両肩と安全柵20との間にすき間がある状態ではしご10を昇降することができ、マンホールMの開口部をより大きく確保することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 マンホール用昇降式安全柵
2 固定金具
3 滑車
4 バランスウエイト
5 ワイヤ
6 ロック部材
6a フック
6b レバー
6e ばね部材
7 ガイド体
7a 板片
8 ロックバー
8a フック
9 受け具
10 はしご
11 支柱
12 可動支柱
12a 突出板部
13 外側面部
14 内側面部
14a 係合片
15 はしご側面部
16 柵側面部
16a スリット
17 規制部材
20 安全柵
21 第1柵部
22 第1ヒンジ部
23 第2柵部
23a、23b、23c、23d 柵体
24 第2ヒンジ部
25 第3ヒンジ部
M マンホール
P 作業員
W 内周壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11