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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】超音波接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
B23K20/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019180125
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053677
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】502342716
【氏名又は名称】株式会社シンアペックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和弘
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-335894(JP,A)
【文献】特開2013-63521(JP,A)
【文献】特開昭56-165334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354974(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107262907(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材よりなるワークどうしを重ね合わせ、当該ワーク上に接合ツールを押し当てたまま超音波振動させて接合する超音波接合装置であって、
ベース部より起立形成された起立部に支持されたパルスモータと、
前記パルスモータの回転駆動を直動動作に変換する駆動伝達機構と、
前記駆動伝達機構により駆動伝達されて前記起立部に設けられた第一直動レールに沿って鉛直方向に昇降する第一移動部と、
前記第一移動部に設けられた第二直動レールに沿って鉛直方向に往復動すると共に前記接合ツールを保持する第二移動部と、
前記第一移動部を下降させて当該第一移動部と前記第二移動部との間に介在する弾性部材を弾性変形させることで前記接合ツールを前記ワークに押し当てて目標荷重値となる接合荷重を検出する荷重検出部と、
前記第二移動部の前記第一移動部に対する鉛直方向の位置ずれを計測するリニアスケールと、
前記接合ツールの接合動作及び前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、前記第一移動部が下降して前記接合ツールがワークに押し当てられて前記荷重検出部で検出された接合荷重値が目標荷重値に到達した状態で前記接合ツールを超音波振動させ、前記第一移動部に対する前記第二移動部の鉛直方向の位置ずれを前記リニアスケールの計測値の変化から計測して前記パルスモータを所定方向に所定パルス回転駆動して前記第一移動部を移動させることで、接合荷重値を所定の値に保つように荷重制御することを特徴とする超音波接合装置。
【請求項2】
前記第一移動部に対して前記第二移動部が下方にずれた場合には、前記制御部が前記パルスモータを所定方向に回転させて前記第一移動部を下降させ、前記第一移動部に対して前記第二移動部が上方にずれた場合には、前記制御部が前記パルスモータを逆方向に回転させて前記第一移動部を上昇させて荷重制御が行われる請求項1記載の超音波接合装置。
【請求項3】
前記リニアスケールの計測値が、目標値荷重値に対応する目標パルス数からプラスマイナスで所定パルス範囲を超えた場合に、前記制御部が前記パルスモータを所定方向に回転させて荷重制御を行なう請求項1又は請求項2記載の超音波接合装置。
【請求項4】
前記弾性部材はコイルばねであり、前記第一移動部に前記第二移動部の上限位置及び下限位置を各々検出する位置センサを備え、前記位置センサが前記第二移動部の移動を検出すると前記制御部は前記パルスモータの出力を停止する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の超音波接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば配線接続部や金属端子間接続等に用いる超音波接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用の電装部品として積層バッテリー、車載用モータ、ECUなど多くのパワーデバイスが用いられている。これらの電装部品は基板接続端子としてボンディングワイヤを用いてワイヤボンディング接続することが多い。基板接続端子には50A(アンペア)や100Aなどの大電流を流す大径のボンディングワイヤが用いられる。また、接合する配線材としては銅電線、銅板、ニッケル板、アルミ電線、アルミ板などが用いられる。基板接続端子を接合する方法としては、抵抗溶接(スポット溶接)、はんだ接合、超音波接合等が用いられる。
【0003】
上記接合方法のうち、抵抗溶接を用いれば、接合部分が酸化しやすく発熱するため、近くに半導体デバイスを配置できない。はんだ接合によれば、接合部の信頼性が低く、接合部に接触抵抗が発生して通電により発熱しやすくなる。
これに対して、超音波接合は、金属材料どうしを接合する加工時間が0.5secと瞬間的に接合でき、拡散接合するため接触抵抗が小さく、大電流を流しても発熱が生じ難いため注目されている。超音波接合は、重ね合わせたワークに超音波接合ホーンを押し当てて接合荷重を加えたまま超音波接合部により超音波振動させることで、ワーク表面に形成された酸化膜を破壊し、清浄な金属表面を生成し、金属間化合物が形成されて接合されるものである。
【0004】
上下に重ね合わせた金属材料(ワーク)を接合する方法としては、下側金属材料をアンビル治具などで固定し、上側金属材料を超音波接合ツールのホーンの歯を食い込ませて横振動を伝える。このとき、ワーク接合面に清浄な金属表面を生成させるための適切な押し付け圧(接合荷重)を継続的に維持する必要がある。
適切な押し付け圧より小さい荷重の場合には、摩擦が生じても酸化膜を破壊するほどの摩擦力は発生せず、接合には至らない。
また、適切な押し付け圧より大きい荷重の場合には、金属材料間の摩擦力のみが大きくなり、接合面に摩擦が起こらず、結果として超音波ホーンの歯が上側金属材料を粉砕したり、潰したりするなど、ワークを変形させることにエネルギーが使用され、潰された距離や外形が同じでも接合されていない製品となる。
【0005】
適切な押し付け圧は、ワーク表面の酸化膜の状態、材料の硬度、振動させる材料の質量など多くの要因で変化し、一概には規定できないので、ワークを構成する材料にあったパラメータ、例えば超音波出力、荷重、時間を変化させて実験で最適値を求める。このように、金属接合においては、荷重を一定に保つ制御が重要となる。また荷重の変動により超音波接合に要する電力も変化するので、変動しない荷重を印加することは重要である。
【0006】
ワークに所定の荷重を付与した接合技術として以下のものが提案されている。予めICチップのバンプと回路基板の電極の押圧力プロファイルを作成する。バンプと電極の接触から接合完了までの一定時間で吸着コレットに印加される圧力をロードセルで検出し、この圧力をもとにフックの法則により圧縮コイルばねの変位量を算出し、圧縮コイルばねの変位量の差分を、現在の時間から接合完了までの残り時間との差分で除算して吸着コレットの修正された移動速度を求めてモータ回転数を制御することで、接合完了時に目標押圧力に到達するようにしている(特許文献1:特開2003-318226号公報)。
また、圧着ヘッドを上下動自在に支持する昇降部と、圧着ヘッドの間に介在して圧着ヘッドに作用する荷重を検出するロードセルと、該ロードセルと線形な荷重・変位特性を有するコイルばねを直列に組み合わせて配置することで、ロードセルの変位量を大きくして単位昇降動作あたりの押圧荷重変化量を小さくした熱圧着装置が提案されている(特許文献2:特開2007-335894号公報)。
また、エアアクチュエータの加圧力と、反発力設定用ばねの反発力を直列に協働させて接合ヘッドに加えるばね加圧式接合装置も提案されている(特許文献3:特開2016-107279号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-318226号公報
【文献】特開2007-335894号公報
【文献】特開2016-107279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
たとえば、直径8mm(38sq:芯線の断面積)のアルミ電線を金属端子に接続する場合、仕上がり高さは、おおよそ3mmとなる。これは、1~2秒間の超音波発振動作中にホーンが5mm程度下降することになるので、5mm/secの下降速度に追従して接合荷重を維持できないと、印加する荷重値が下がってしまう。
【0009】
特許文献1の圧縮コイルばねを用いて接合荷重を検出する場合、温度変化によりばね係数が大きく変化するため、ばね係数から接合荷重を求める方法では、繰り返し正確な接合荷重を設定できない。サーボモータで吸着コレットの移動速度を制御する場合、外部からトルクが作用すると、位置決めしたポイントからずれるので、設定された接合荷重が変化して位置ずれ量も変化する。このためゲインを高くして応答性を上げないと目標位置に追従できない。位置ゲインを高く設定すると、発振し易くなるため振動を起こす可能性が増大する。また、出力の大きいモータが必要になり、起動速度が遅くなるため急激な立ち上がり起動には向かない。
特許文献2のようにロードセルにより接合荷重を検出する場合、ロードセルに入力するアナログ信号に乗るノイズ除去のためアンプに積分回路が設けられているので、出力信号の応答が遅く急激な変化を検出できない。よって、荷重変動に対して圧着ヘッドの昇降制御が遅れてしまう。
特許文献3のようにエアアクチュエータ(エアシリンダー)とばねを併用して加圧する場合、加工距離が5mmと大きな場合に、急激な荷重変化に対してばねの伸縮に対してシリンダーが追従できないので、ばねが伸びて加圧力が一時的に下がる。このため、一定の接合荷重を維持する制御はできない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、金属材料どうしを重ね合わせて超音波接合する際に、応答性の良い一定荷重制御を行って加工精度を高めた超音波接合装置を提供することにある。
【0011】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
金属材よりなるワークどうしを重ね合わせ、当該ワーク上に接合ツールを押し当てたまま超音波振動させて接合する超音波接合装置であって、ベース部より起立形成された起立部に支持されたパルスモータと、前記パルスモータの回転駆動を直動動作に変換する駆動伝達機構と、前記駆動伝達機構により駆動伝達されて前記起立部に設けられた第一直動レールに沿って鉛直方向に昇降する第一移動部と、前記第一移動部に設けられた第二直動レールに沿って鉛直方向に往復動すると共に前記接合ツールを保持する第二移動部と、前記第一移動部を下降させて当該第一移動部と前記第二移動部との間に介在する弾性部材を弾性変形させることで前記接合ツールを前記ワークに押し当てて目標荷重値となる接合荷重を検出する荷重検出部と、前記第二移動部の前記第一移動部に対する鉛直方向の移動量を計測するリニアスケールと、前記パルスモータの動作を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記第一移動部が下降して前記接合ツールがワークに押し当てられて前記荷重検出部で検出された接合荷重値が目標荷重値に到達した状態で前記接合ツールを超音波振動させ、前記第一移動部に対する前記第二移動部の鉛直方向の位置ずれを前記リニアスケールの計測値の変化から計測して前記パルスモータを所定方向に所定パルス回転駆動して前記第一移動部を移動させることで、接合荷重値を所定の値に保つように荷重制御することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、制御部は荷重検出部により目標荷重値を設定して接合ツールを超音波振動させ、第一移動部に対する第二移動部の鉛直方向の位置ずれをリニアスケールにより検出し、パルスモータを所定方向に所定パルス回転駆動して第一移動部を移動させることで接合荷重値を所定の値に保つように荷重制御する。よって、リニアスケールの応答は高速であるのでワークに作用する急激な接合荷重変化に対しても、リニアスケールの計測値に応じてパルスモータを所定方向に所定パルス回転駆動することで、応答性の良い一定荷重制御を行って超音波接合を行なうことができる。
特に温度変化によりばね定数が変化したりばね自体が劣化したりするコイルばねによる荷重制御や、荷重変化に対する応答速度の遅いロードセルにより荷重制御を行う場合に比べて、応答性の良い一定荷重制御を実現することができる。
尚、第一移動部と第二移動部との間には弾性部材が介在しているが、荷重ゼロの状態で圧縮されており、温度変化のあるばね定数が荷重制御に影響しない。また、接合荷重として使用する範囲では弾性変形する線形領域を使用するため、荷重制御に影響することはない。
【0013】
前記第一移動部に対して前記第二移動部が下方にずれた場合には、前記制御部が前記パルスモータを所定方向に回転させて前記第一移動部を下降させ、前記第一移動部に対して前記第二移動部が上方にずれた場合には、前記制御部が前記パルスモータを逆方向に回転させて前記第一移動部を上昇させて荷重制御が行われることが望ましい。
これにより、目標荷重値に対する接合荷重の変動に応じて、応答性の良い一定荷重制御を行うことができる。
【0014】
前記リニアスケールの計測値が、目標値荷重値に対応する目標パルス数からプラスマイナスで所定パルス範囲を超えた場合に、前記制御部が前記パルスモータを所定方向に回転させて荷重制御を行なうようにしてもよい。
これにより、接合ツールの超音波振動により第二移動体を通じたリニアスケールの振動等を考慮して目標パルス数の上下に不制御領域(緩衝領域)を設けることで安定した荷重制御を行うことができる。
【0015】
前記弾性部材はコイルばねであり、前記第一移動部に前記第二移動部の上限位置及び下限位置を各々検出する位置センサを備え、前記位置センサが前記第二移動部の移動を検出すると前記制御部は前記パルスモータの出力を停止することが望ましい。
これにより、第一移動部に対する第二移動部の上下動により印加される荷重が変化しコイルばねの撓み量が変化するところ、コイルばねの撓み量が線形変化する全撓み量の30%~70%の範囲を超える荷重が作用したときに、超音波接合動作を回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
金属材料どうしを重ね合わせて超音波接合する際に、応答性の良い一定荷重制御を行って、加工精度を高めた超音波接合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】超音波接合装置の模式説明図である。
図2】加圧原理を説明する模式説明図である。
図3図2に続く加圧原理を示す模式説明図である。
図4】第一コイルばね及び第二コイルばねの圧縮距離を1mm単位で変化させたときのロードセル(荷重計1)と測定用ロードセル(荷重計2)の測定値を示す表及びグラフ図である。
図5】アルミ電線と銅端子の接合状態を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る超音波接合装置の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。超音波接合装置は金属材よりなるワークどうしを重ね合わせ、当該ワーク上に超音波接合ツールを押し当てたまま超音波接合部により振動させて超音波接合する。ワークとしては、例えば大電流用配線の結合部分に用いられる銅電線、アルミ電線等を銅板、ニッケル板、アルミ板等に重ね合わせて超音波接合する際に用いられる。
【0019】
超音波接合装置の構成例について、図1を参照して説明する。
ベース部1にはワークである銅端子W1を固定する端子固定治具1a(アンビル治具等)が搭載される。端子固定治具1aの上面は、端子の滑り止め用に例えば0.5mm程度のローレット加工が施されている。ベース部1上に起立形成された装置本体部2(起立部)の上端にはパルスモータ3がモータ軸(図示せず)を鉛直下方に向けて支持されている。パルスモータ3は、正逆回転駆動可能なパルスモータが用いられる。パルスモータ3のモータ軸には転造ボールねじ4が連結されている。転造ボールねじ4にはナット5がねじ嵌合しており、パルスモータ3の回転駆動を直動動作に変換する(駆動伝達機構)。
【0020】
ナット5は第一プレート6(第一移動部)に一体に組み付けられている。装置本体部2には第一直動ガイドレール2aが長手方向(鉛直方向)に設けられている。第一プレート6は第一直動ガイド6aを介して第一直動ガイドレール2aと連繋している。転造ボールねじ4が所定方向に回転すると、ナット5と共に第一プレート6が、装置本体部2に設けられた第一直動ガイドレール2aに沿って昇降する。尚、転造ボールねじ4は右ねじであるので、CW方向(時計回り方向)に回転すると第一プレート6は下降し、CCW(反時計回り方向)に回転すると第一プレート6は上昇する。
【0021】
第一プレート6には、第二プレート7(第二移動部)が鉛直方向に往復動可能に組み付けられている。第二プレート7の下端部には、ホーンクランプ7aが設けられ、このホーンクランプ7aにより超音波ホーン8(接合ツール)が保持されている。第一プレート6には鉛直方向で2か所に第一ばね取付部6b及び第二ばね取付部6cが水平方向に突設されている。第一,第二ばね取付部6b,6cには一対の第二直動ガイドレール6dが鉛直方向に設けられている。尚、第二直動ガイドレール6dは第一,第二ばね取付部6b,6cの両側であって第一プレート6上に鉛直方向に設けられていてもよい。第二プレート7は、第二直動ガイド7bを介して第二直動ガイドレール6dと各々連繋している。超音波ホーン8は、ホーン先端部8aが銅端子W1に重ねて配置されたアルミ電線W2に当接したまま超音波発振器9により振動子8bを超音波振動させて超音波接合するようになっている。超音波ホーン8のホーン先端部8aには、アルミ電線W2に押し当てられる面にローレット加工若しくは波形加工が施されている。
【0022】
また、第二プレート7には、第一ばね取付部6bと第二ばね取付部6cとの間に挿入配置される中間プレート7cが水平方向に突設されている。この中間プレート7c上にはロードセル10(荷重計1:荷重検出部)が固定されている。第一ばね取付部6bとロードセル10との間には第一コイルばね11(コイルばね)が伸縮可能に設けられており、中間プレート7cと第二ばね取付部6cとの間には第二コイルばね12(コイルばね)が伸縮可能に設けられている。
【0023】
第二プレート7は、転造ボールねじ4の回転により第一プレート6と共に昇降し、第二プレート7に保持された超音波ホーン8がワークに押し当てられると相対的に上昇し、超音波接合によりワークの厚みが減少すると下降するようになっている。
第一プレート6を下降させて当該第一プレート6と第二プレート7との間に介在する第一コイルばね11及び第二コイルばね12(弾性部材)を弾性変形させることで超音波ホーン8をワークに押し当ててロードセル10によって、目標荷重値となる接合荷重を検出する。
【0024】
また、第一プレート6には、第二プレート7の第一プレート6に対する鉛直方向の位置ずれを計測するリニアスケール13が設けられている。本実例例では後述するように、超音波ホーン8の接合荷重をロードセル10の検出信号によらずリニアスケール13の検出信号に基づいて制御するようになっている。リニアスケール13としては、例えば光学反射式のインクリメンタル型のものが用いられる。
【0025】
制御装置14(制御部:コントローラ)は、超音波ホーン8の接合動作及びパルスモータ3の駆動を制御する。制御装置14は、装置全体の動作を制御するCPU(中央演算処理装置)や制御プログラムを記憶したROM、ROMに記憶した制御プログラムを読み出したり、CPUのワークエリアとして演算を実行したり、入力部(操作パネル)等から入力されたデータの一時的な記憶を行うRAM、パルスモータ3を駆動制御するモータドライバ14aなどを備えている。
制御装置14には、図示しない入力部から入力された入力信号や、ロードセル10により検出された荷重値、リニアスケール13により検出された変位量計測値(カウンター値)が入力され、制御装置14からパルスモータ3の駆動信号や超音波発振器9に対する駆動信号が送出される。
制御装置14は、予めロードセル10によって検出された目標荷重値を記憶したり、入力部からのコマンドに応じて超音波発振器9を起動したり、リニアスケール13の変位検出値に応じてパルスモータ3を所定量所定方向に回転させて接合荷重を目標荷重値になるように制御したりする。
【0026】
制御装置14は、第一プレート6が下降して超音波ホーン8のホーン先端部8aがワーク(アルミ電線W2)に押し当てられ、ロードセル10で検出された荷重値が目標荷重値に到達した状態で、超音波ホーン8を超音波振動させ、第一プレート6に対する第二プレート7の鉛直方向の位置ずれをリニアスケール13の計測値の変化から計測してパルスモータ3を所定方向に所定パルス回転駆動させて第一プレート6を移動させる。これにより、第一コイルばね11及び第二コイルばね12の変位量(撓み量)を所定範囲に保つように荷重制御する。
【0027】
ここで、接合荷重を一定に保つ加圧原理について図2乃至図4を参照して説明する。図2において、端子固定治具1aには、測定用ロードセル15(荷重計2)が設けられている。パルスモータ3を回転駆動して第一プレート6を装置本体部2に沿って下降させると、第二プレート7の先端部(下端部)が測定用ロードセル15に当たる。更に第一プレート6を下降させると、第一コイルばね11が圧縮され、第二コイルばね12が伸びる。この状態から第一コイルばね11及び第二コイルばね12の圧縮又は伸びの変化量を1mm単位で変化させたときのロードセル10(荷重計1)と測定用ロードセル15(荷重計2)の値を図4Aの表と図4Bのグラフに示す。
荷重計1の値を荷重計2の値(印加荷重値)に変換する方法としては、ホーン先端部8aが測定用ロードセル15から離れているときに、荷重計2が零を示すばね圧縮距離位置で荷重計1の値をシフト値(150N)として用いる。荷重計2が例えば500Nを示すまで第一プレート6を下降させるときの荷重計1の傾きを求める。荷重計1の傾きがa1で荷重計2の傾きがa2とすると、傾き倍率はa2/a1となり、荷重変換式は荷重計1の値からシフト値を減算して傾き倍率を乗算する。図4Bでは、シフト値が150Nであるので、荷重計1の値をF1とすると、荷重計2の印加荷重値F2に変換するには
F2=(F1-150N)×(a2/a1)となる。
【0028】
尚、第一コイルばね11及び第二コイルばね12の撓み量(圧縮距離)を荷重に換算すると、設計上では全撓み量の30%~70%の範囲で使用するように考慮しなければならない。これは、ばね定数が直線を示す領域が、30%以下では小さく、70%以上では大きくなるためである。本実施例では、ばねの使用領域(上端及び下端)を超える一対の位置センサ16(例えばフォトセンサ)を第一プレート6に設けて、第二プレート7が上記いずれかの位置センサ16に検出されるとパルスモータ3への出力を遮断するようになっている。
また、荷重零の状態で第一コイルばね11及び第二コイルばね12がともに圧縮されており、装置で使用する荷重範囲内でばね定数の直線領域を使用する設計となっている。尚、第一プレート6には、第一コイルばね11の撓み量を予め調整する荷重調整ねじが設けられていてもよい。
【0029】
次に上述した超音波接合装置を用いた接合動作について説明する。
図1に示すように、端子固定治具1aにセットされた銅端子W1の上にアルミ電線W2を置き、ホーン先端部8aで下向き荷重を加える。荷重値は上述したようにロードセル10(荷重計1)で計測された荷重値を演算した値であり、加圧荷重値と同じ値である。この加圧荷重値が目標荷重値(例えば500N)となるまでパルスモータ3をCW方向(時計回り方向)に回転させると、第一プレート6は下降し、ホーン先端部8aがアルミ電線W2に当たると第二プレート7は第一プレート6と連繋している第二直動ガイドレール6d上を滑り、第一プレート6との相対位置がずれる。このとき第一コイルばね11は圧縮され、第二コイルばね12は伸びる。アルミ電線W2はホーン先端部8aで印加された荷重により潰された後、第一プレート6はそれ以上下降しない。第一,第二プレート6,7間の相対位置がずれるときに、リニアスケール13の出力パルスが送出され、カウンター値を変化させる。例えば、パルスモータ3が0.72°/plsの1回転500パルス、転造ボールねじ4のリードが2mmであるとすると、250パルスで1mm、1パルス当たり0.004mm移動する。
【0030】
ロードセル10で検出される荷重値が目標荷重値(例えば500N)に到達し、アルミ電線W2が荷重により潰される距離が変化しなくなった状態で、制御装置14は、リニアスケール13により検出されるカウンター値を目標パルス数として設定し、以下の制御を実行する。第一プレート6と第二プレート7間の相対位置がずれるときには、リニアスケール13から0.001mmごとにパルスが発生しているので、このパルスを(1/4)分周してモータドライバ14aに加える(0.004mm相当のパルスとなる)。リニアスケール13の出力パルス0.001mm/plsを(1/4)分周すると、0.004mm/plsであるので、パルスモータ3による第一プレート6の移動パルス幅と等しくなり、目標荷重到達後にプレート間のずれを生じさせないように制御することができる。
【0031】
第一プレート6に対して第二プレート7が下方(圧力が減る方向)にずれた場合には、制御装置14は目標パルス数からマイナスにずれるので、モータドライバ14aのCW回転方向(時計回り方向)に所定パルスを加えて第一プレート6を下降させる。また、第一プレート6に対して第二プレート7が上方(圧力が増加する方向)にずれた場合には、制御装置14は目標パルス数からプラスにずれるので、モータドライバ14aのCCW回転方向(反時計回り方向)に所定パルスを加えて第一プレート6を上昇させる。
【0032】
この状態で、制御装置14は超音波発振器9を発振させて振動子8bによりホーン先端部8aを横振動させると、アルミ電線W2は潰れてアルミの塊となり、銅端子W1との間で金属間化合物を形成して接合される。アルミ線W2を銅端子W1に接合した状態を図5の写真図に示す。
このとき、超音波ホーン8のホーン先端部8aは、所定速度(5mm/sec)で下降するが、第一,第二プレート6,7間のずれをリニアスケール13が検出して出力パルスを送出し、制御装置14はその出力パルスよりパルスモータ3の駆動を制御しているので、第一,第二プレート6,7間のずれは一定となる。即ち、接合荷重値を一定に保つことができる。
【0033】
パルスモータ3の1パルスあたりのプレート間移動量を荷重に換算すると、ばね定数が64N/mmであるので、およそ4パルス(3.9パルス)で1N変化する。0.25N以内の荷重ずれを押さえられる計算であるが、実際には、超音波ホーン8の超音波振動による機械振動がリニアスケール13の振動となって伝達されるため、目標パルス数の上下に荷重換算で±1N~±5N程度の緩衝領域(不制御領域)を設けることで、安定した一定荷重制御を実現している。
【0034】
具体的には、パルスモータ3の自起動周波数で起動できる回転数は300rpmであり1秒間に5回転する。実際には負荷がかかっているのでモータが回転できる速さはその1/5とすると1秒間に1回転程度は回転可能と考えられる。パルスモータ3の1回転は500パルスなので500パルスを荷重に換算すると、500/4=125Nとなる。リニアスケール13の出力パルスを直接モータドライバ14aに入力した場合、1秒間に125Nの荷重変化に追従できる計算となる。超音波ホーン8の下降速度は5mm/secであるので、1秒間に2.5回転であり、パルスモータ3の起動速度のままでは荷重が減ってしまうので短時間で2.5倍まで加速しなければならないが、倍率が低いので実現可能なことがわかる。荷重が低下する初期の段階で、1N低下したとすると4パルスを加えると荷重低下を防ぐことができる。リニアスケール13の検出信号をモータドライバ14aに直接に接続すれば、1パルスからモータ制御できるので荷重低下は無くすことができるが、実用上は装置構成部品の歪みやばねの振動、超音波ホーン8のたわみ、直動ガイドのガタ等が生ずるので、荷重値が上下する振動を起こしてしまう。これを解決するため、リニアスケール13の出力パルスで目標パルス数に±数パルス(±4パルス~20パルス)程度の不動作帯を設定しておくと振動が抑えられる。
【0035】
また、超音波ホーン8を支持するホーンクランプ7aは質量を大きく設計することが望ましい。超音波ホーン8が加工中に横振動するのでそれを支える部品の質量が小さいと振動エネルギーが消失してしまう。しかしながら、ホーンクランプ7aを重く設計することは重い質量の部品を高速で動かすことになり、モータ出力が必要となるが、ボールねじ4にてモータトルクを増大させて推力(荷重)に変えるので、パルスモータ3のプルアウトトルク以内であれば、起動推力が不足することはない。超音波接合装置の各部品は共振を避けるため、ホーン固有振動数の(1/2)λ(35kHzは約75mm、40kHzは約125mm)を避けた寸法で設計する必要がある。
【0036】
上述した実施例は、目標荷重値を500Nで設計したが、これに限定されたものではなく、コイルばねのばね定数を小さなものに変更してパルスモータ3の分解能を上げることにより、より軽い荷重で精度の高い制御を行なうことも可能であるし、コイルばねのばね定数を大きなものに変更してより重い荷重で精度の高い制御を行なってもよい。また、アルミ電線W2を銅端子W1に接合する場合を例示したが、銅線を銅端子やニッケル端子に接合する場合等、他のワークどうしの超音波接合に用いても良い。
【0037】
以上説明したように、ワークに作用する急激な接合荷重変化に対しても、リニアスケール13の計測値に応じてパルスモータ3を所定方向に所定パルス回転駆動することで、応答性の良い一定荷重制御を行って超音波接合を行なうことができる。
特に温度変化によりばね定数が変化したりばね自体が劣化したりするコイルばねによる荷重制御や、荷重変化に対する応答速度の遅いロードセルにより荷重制御を行う場合に比べて、応答性の良い荷重制御を実現することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ベース部 1a 端子固定治具 W1 銅端子 W2 アルミ電線 2 装置本体部 2a 第一直動ガイドレール 3 パルスモータ 4 転造ボールねじ 5 ナット 6 第一プレート 6a 第一直動ガイド 6b 第一ばね取付部 6c 第二ばね取付部 6d 第二直動ガイドレール 7 第二プレート 7a ホーンクランプ 7b 第二直動ガイド 7c 中間プレート 8 超音波ホーン 8a ホーン先端部 8b 振動子 9 超音波発振器 10 ロードセル 11 第一コイルばね 12 第二コイルばね 13 リニアスケール 14 制御装置 14a モータドライバ 15 測定用ロードセル 16 位置センサ
図1
図2
図3
図4
図5