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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】植物由来のエキソソームを含む産物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/899 20060101AFI20230421BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 36/8962 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20230421BHJP
【FI】
A61K36/899
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/20
A61K36/8962
A61K36/9068
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K127:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019541724
(86)(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 TR2018050034
(87)【国際公開番号】W WO2019027387
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】2017/01544
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512081166
【氏名又は名称】イェディテペ・ウニヴェルシテシ
【氏名又は名称原語表記】YEDITEPE UNIVERSITESI
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】フィクレッティン・シャヒン
(72)【発明者】
【氏名】メルヴェ・ユルドゥルム
(72)【発明者】
【氏名】ポレン・コチャク
(72)【発明者】
【氏名】ビュルゲ・ウルカン
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-531932(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103479682(CN,A)
【文献】特開2010-111587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0045448(US,A1)
【文献】国際公開第2016/166716(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/157652(WO,A1)
【文献】Gastroenterology,2016年04月,Vol. 150, No. 4,S-1091, Sa1671
【文献】International Journal of Chemical Studies,2014年,Vol. 2, No. 4,pp. 27-34
【文献】Journal of Dental Research, Dental Clinics, Dental Prospects,2015年,Vol. 9, No. 4,pp. 267-273
【文献】Biomaterials,2016年,Vol. 101,pp. 321-340
【文献】International Journal of Chemical Studies,2014年,Vol. 2, No. 4,pp. 27-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/899
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/107
A61K 9/20
A61K 36/8962
A61K 36/9068
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
A61K 127/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された植物エキソソームを含むことを特徴とする、癌処置において使用するための製剤であって、植物由来のエキソソーム供給源が小麦の草(wheatgrass)である、製剤。
【請求項2】
植物由来のエキソソーム供給源が小麦の草、ショウガおよびニンニクの組合せで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
セラム(serum)、シロップ剤、錠剤、ゲルまたはクリームの形態であることを特徴とする、請求項1から2のいずれかに記載の製剤。
【請求項4】
前立腺、乳房、腎臓、膵臓、肝臓、骨、皮膚、脳、肺、胸膜、子宮、卵巣、胃、腸、膀胱、血液、リンパ、または甲状腺癌型に対して活性であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本願発明は、癌処置および創傷治癒において使用され得る植物由来のエキソソームを含む産物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多細胞生物体において、細胞から放出されるタンパク質の別の細胞の表面上の受容体への結合の結果として実現される伝達は、細胞間伝達の基本原則である。それらについて多くの情報は知られていないが、エキソソームは、今日では実質的に要求される主要な伝達分子である(1-3)。それらは、最初に発見されたとき、細胞によって望ましくない物質として、および細胞廃棄物として、名付けられたが、エキソソームが免疫系において実質的な役割を果たすことが、行われた研究の結果として証明された(4)。エキソソームは、血漿内の全ての細胞によって産生され、細胞外に放出される、20-130nmのサイズ(ナノサイズ)を有する小胞である(5)。最近発見されたように、これらの小胞は、内分泌系において役割を果たし、自己分泌および傍分泌シグナルを局所または遠位宿主細胞に提供する。これらのエキソソームは、タンパク質、脂肪、核酸物質(全てのRNA型)を運び、それらをレシピエント細胞に移動する役割も関与する。このように、細胞から伝達されるメッセージは他の隣接細胞に伝達される(3)。テトラスパニンファミリーは、エキソソーム表面上で最も頻繁に遭遇されるタンパク質グループである。このファミリーは、CD9、BCD63、CD81、CD82、CD83タンパク質を含む。テトラスパニンファミリータンパク質は、MHCおよびインテグリンタンパク質と相互作用する能力を有する(6)。いくら一般化しようと試みても、エキソソームタンパク質プールはかなり細胞特異的であるので、放出される細胞に依存する。したがって、種々の(熱ショック)タンパク質がこのプールのメンバーである(hsp70)。同時に、細胞骨格において見いだされるタンパク質、すなわちβ-アクチン、チューブリン、ミオシン、コフィリン、塩基性組織適合性成分クラスI-II分子およびグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼは、エキソソームタンパク質プールの主要な一般的なタンパク質である。エキソソームが運搬される細胞に受け取られるためには、他の細胞の細胞表面受容体を刺激するはずである。したがって、Wnt-β-カテニンシグナルタンパク質、ノッチリガン、デルタ様4タンパク質およびインターロイキンはエキソソーム表面上であるべきである。そうでなければ、エキソソームがメッセージを伝達する宿主細胞を刺激することは不可能であろう。
【0003】
研究において、哺乳動物細胞から得られるエキソソームが癌処置において使用される可能性があるという事実が証明されている(Reghu et al. 2016)。これに加えて、エキソソームが哺乳動物の癌細胞に対して抗発癌活性を有することが示された(Ohno et al. 2013)。同様に行われた別の研究において、脳上皮から得られるエキソソームが脳癌に対して活性を示すことが決定された(Reriro et al. 2015)。
【0004】
小麦(Triticum Aestivum)は、植物ベースの食事分類内でヒト食事において重要な役割を果たす。行われた疫学的試験にしたがって、慢性地中海貧血(thalassemia)および癌患者において保護的役割を果たすことが証明された。小麦(小麦の草(wheatgrass)または種子(胚))の多くの形態が、癌処置における使用のために開発された。同様に、ショウガ(ginger)およびニンニク(garlic)もまた、抗酸化物質である。実施された試験において、動物由来のエキソソームは、種々の適用のために使用されている。加えて、植物由来のエキソソームが抗酸化物質であることが決定されているが、それらについての研究が非常に不足していることが観察される。知られている限りでは、植物エキソソームは、哺乳動物エキソソームと同様の特性を示す。
【0005】
分裂細胞を標的とする外科手術、放射線治療および化学療法などの処置方法は、何度も、癌の再発または多くの副作用の発生を引き起こす(Kubota, 2012)。
【0006】
米国特許出願US2016346334は、乳癌の処置における使用のための健常細胞から単離されたエキソソーム細胞について記載している。
【0007】
本願発明のおかげで、処置の代替方法は、植物エキソソームを含む産物の手段により健常細胞に害を与えることなく癌性細胞の死を引き起こすように開発されている。その上、エキソソームが無細胞産物であるという事実は、細胞療法によって引き起こされ得る問題を防止することを可能にしている。エキソソームはすぐに使える治療剤である。それらは、毒性の冷凍保存剤および超低温フリーザーの使用を必要とせず低い温度で貯蔵することができ、患者に安全に送達することができる。この情報に基づいて、癌処置および創傷治癒において代替療法において使用される小麦の草、ニンニクおよびショウガを使用することを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本願発明の目的は、癌処置において使用することができる植物由来のエキソソームを含む産物を提供することである。
【0009】
本願発明の別の目的は、人体において毒性効果を引き起こない産物を提供することである。
【0010】
本願発明のさらなる目的は、創傷治癒および損傷した組織修復において有効である産物を提供することである。
【0011】
本願発明の別の目的は、使用中、化学療法処置において生じる副作用が経験されない産物を提供することである。
【0012】
本願発明の別の目的は、癌処置の過程中、健常細胞において損傷を引き起こさない産物を提供することである。
【0013】
本願発明のさらなる目的は、放射線治療または手術などの処理を必要としないため感染リスクをもたらさない産物を提供することである。
【0014】
本願発明の別の目的は、低コストの産物を提供することである。
【0015】
本願発明のさらなる目的は、合成薬物のために体内で生じる化学的汚染が経験されない天然産物を提供することである。
【0016】
本願発明の別の目的は、処理に使用される植物が容易に生長し、エキソソームの相当量が短期間において得られるため、実用的なおよびアクセス容易な産物を提供することである。
【0017】
発明の詳細な説明
本願発明の目的を果たすために開発された「植物由来のエキソソームを含む産物」は、添付の図面において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1-Aは、A498腎臓癌細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図1-Bは、Annexin V 染色を有するA498腎臓癌細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図1-Cは、PI 染色を有するA498腎臓癌細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図1-Dは、15mg/mlの小麦エキソソームが適用されたA498腎臓癌細胞のフローサイトメトリーの死の値(death value)の図である。図1-Eは、15mg/mlのショウガエキソソームが適用されたA498腎臓癌細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図1-Fは、15mg/mlのニンニクエキソソームが適用されたA498腎臓癌細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。
【0019】
図2図2-Aは、HEK293腎臓上皮性細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図2-Bは、PI 染色を有するHEK293腎臓上皮性細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図2-Cは、Annexin V 染色を有するHEK293腎臓上皮性細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図2-Dは、15mg/mlの小麦エキソソームが適用されたHEK293腎臓上皮性細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図2-Eは、15mg/mlのショウガエキソソームが適用されたHEK293腎臓上皮性細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図2-Fは、15mg/mlのニンニクエキソソームが適用されたHEK293腎臓上皮性細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。
【0020】
図3図3-Aは、22RV1前立腺癌細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図3-Bは、Annexin V 染色を有する22RV1前立腺癌細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図3-Cは、PI 染色を有する22RV1前立腺癌細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図3-Dは、15mg/mlの小麦エキソソームが適用された22RV1前立腺癌細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図3-Eは、15mg/mlのショウガエキソソームが適用された22RV1前立腺癌細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図3-Fは、15mg/mlのニンニクエキソソームが適用された22RV1前立腺癌細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。
【0021】
図4図4-Aは、PNT1A前立腺上皮性細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図4-Bは、PI 染色を有するPNT1A前立腺上皮性細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図4-Bは、Annexin V 染色を有するPNT1A前立腺上皮性細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図4-Dは、15mg/mlの小麦エキソソームが適用されたPNT1A前立腺上皮性細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図4-Eは、15mg/mlのショウガエキソソームが適用されたPNT1A前立腺上皮性細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図4-Fは、15mg/mlのニンニクエキソソームが適用されたPNT1A前立腺上皮性細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。
【0022】
図5図5-Aは、MCF7乳癌細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図5-Bは、Annexin V 染色を有するMCF7乳癌細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図5-Cは、PI 染色を有するMCF7乳癌細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図5-Dは、15mg/mlの小麦エキソソームが適用されたMCF7乳癌細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図5-Eは、15mg/mlのショウガエキソソームが適用されたMCF7乳癌細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図5-Fは、15mg/mlのニンニクエキソソームが適用されたMCF7乳癌細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。
【0023】
図6図6-Aは、MCF 10A乳房上皮性細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図6-Bは、PI 染色を有するMCF 10A乳房上皮性細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図6-Cは、Annexin V 染色を有するMCF 10A乳房上皮性細胞のコントロールグループのフローサイトメトリー値の図である。図6-Dは、15mg/mlの小麦エキソソームが適用されたMCF 10A乳房上皮性細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図6-Eは、15mg/mlのショウガエキソソームが適用されたMCF 10A乳房上皮性細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。図6-Fは、15mg/mlのニンニクエキソソームが適用されたMCF 10A乳房上皮性細胞のフローサイトメトリーの死の値の図である。
【0024】
図7図7は、小麦植物から得られた植物エキソソームの存在が決定される電子顕微鏡像である。
【0025】
図8図8は、小麦植物から得られた植物エキソソームの存在がHSP 70表面マーカーによって決定されるフローサイトメトリーの図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
これらの結果にしたがって、植物エキソソームが癌細胞に死を引き起こすアポトーシスを導くが、健常細胞において細胞死を引き起こさないことが示される。
【実施例
【0027】
実験的試験
植物由来のエキソソームの調製
植物由来のエキソソームを含む発明の産物において;小麦の草、ショウガおよびニンニクを、植物供給源として単独でまたは組み合わせて使用することができる。実験研究において好ましく選択された小麦の草は、Turkey, Adana Ceyhan 69種子から得られた。予備的サンプル調製のための試験中、種子が1.5週間にわたって生長することが適切であると決定された。
【0028】
回収された小麦の草を、最初に1% PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中で粉砕し、次にろ過した。得られた濾液の小麦の草を、10分間1000xgで、20分間3200xgで、60分間15000xgで遠心し、次に、細胞培養物をエキソソーム単離キットを使用することによって単離した。単離されたエキソソームを0.9%等張セラム(serum)に溶解した。
【0029】
単離され、セラム形態である発明の産物エキソソームを、走査型電子顕微鏡を使用することによって観察した(図7)。次に、それらをHSP 70 マーカーによってインキュベートし、フローサイトメトリーにおいてエキソソームの存在を観察した。
【0030】
処置の開発
細胞毒性の決定
調製された発明の産物の毒性効果を、文献に記載されているMTS方法を使用することによって決定された(Yalvac et al., 2009)。
【0031】
化学的分子を特定の濃度で培地中で調製し、計算することによって96-ウェル培養プレート(5000細胞/ウェル)上に播種されたHEK(ヒト腎臓上皮性細胞)、MCF 10A(ヒト哺乳動物上皮性細胞)およびPNT1A(ヒト前立腺上皮性細胞)細胞系上に適用した。化学物質の毒性に対する細胞の反応を、4日間、細胞生存能力を測定することによって決定した。細胞生存能力分析を、MTS方法にしたがって行った。MTSは、ミトコンドリア酵素活性を測定するために使用される比色方法である。種々の用量をあらかじめウェルにおいて播種された細胞に適用し、決定された期間内の生存能力に対する適用される物質の効果を試験した。培地と混合されるときに適用されたMTS剤は、生存細胞の数の増加時に暗色を帯びる。得られる色の変化を、ELISAプレートリーダーを使用することによって吸光度測定に基づいて評価した。本願発明の範囲において開発された産物を、健常細胞において24、48、72および96時間で5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml濃度の結果を成し遂げるように調製する。
【0032】
癌細胞死の分析
癌に対する発明の産物の効果を試験するために、自殺メカニズムであるアポトーシスの経路の最も重要なタンパク質の1つであるAnnexin V タンパク質の存在が試験されている。PI(ヨウ化プロピジウム)染色を使用して、壊死の存在を決定した。
【0033】
22RV1(前立腺癌細胞)、MCF 7(乳癌細胞)、A498(腎臓癌細胞)細胞を、300,000細胞/ウェルで6ウェル培養プレートにおいて播種した。10% FBS(ウシ胎児セラム)および1% PSA(ペニシリンストレプトマイシンアンホテリシン)を、22RVI 細胞系に対してRPMIおよびMCF 7およびA498細胞系に対してDMEMの高グルコース培地に加え、それにより細胞を増殖させた。特定された濃度で処置された細胞の死亡率を24時間後に調べた。結果は、Annexin V 抗体に結合した細胞がアポトーシスを受けたかまたはアポトーシスを受けようとしていたこと、およびPI抗体に結合した細胞が壊死を引き起こしたかまたは壊死を引き起こそうとしていたことを示している。これらの抗体の存在を考慮して、適用された処置が細胞を死滅させることが決定された。
【0034】
同じ実験プロトコールを、健常細胞系であるMCF10-A、PNT1-AおよびHEK細胞系にも適用した。
【0035】
創傷治癒の試験
癌処置において本願発明の産物の使用に加えて、創傷治癒におけるその使用も試験した。この目的のために行われた実験的試験において、健常細胞系HEK細胞を6ウェル培養プレートにおいて播種した。創傷モデルをウェルの中心を通るように引っ掻くことによって形成した。エキソソームを含む産物を、創傷モデルが形成された細胞に適用した。細胞を、15ng/ml濃度での産物および2% FBSを含むDMEM培地中で48時間インキュベートした。創傷治癒プロセスを、顕微鏡下で毎日写真を撮ることによって段階的に観察した。
【0036】
実験結果
開発された単離方法の手段により、エキソソームを、好ましくは小麦の草を使用することによって得た。この産物を特性化実験に付し、その癌および創傷治癒特性の活性を結果によって証明された。電子顕微鏡像において得られたデータにおいて、観察された小胞は、文献中のエキソソームの電子顕微鏡像と類似性を示すことが見出された(図7)。フローサイトメトリーにおける結果は、エキソソームが84.16%によって表面マーカーを発現することを示している。これは、我々が得ている分子がエキソソームであることを提供する証拠の1つである(図8)。
【0037】
植物エキソソームセラムへの健常細胞の暴露が細胞における増殖を引き起こすことが、MTS結果により証明された。ネガティブコントロールと比較して増加している吸光度の量が生存能力が増加していることを示している。したがって、行われた分析は、小麦エキソソームが健常細胞における細胞分裂速度を増加したことを証明した(図3)。
【0038】
24時間後、22RV1細胞を5μg/ml、10μg/ml、15μg/mlの濃度でのセラムで処置した;細胞死を観察するために、Annexin V方法を、フローサイトメトリーを使用することによって適用した。これらの結果にしたがって、壊死およびアポトーシスの比率を計算したとき、26.02%、40.08%および34.36%の細胞死比率がそれぞれ、上記濃度で観察された(図3)。
【0039】
24時間後、PNT1A細胞を5μg/ml、10μg/ml、15μg/mlの濃度でのセラムで処置した;細胞死を観察するために、Annexin V方法を、フローサイトメトリーを使用することによって適用した。これらの結果にしたがって、壊死およびアポトーシスの比率を計算したとき、1.81%、3.26%および3.22%の細胞死比率がそれぞれ観察された(図4)。
【0040】
24時間後、MCF-7細胞を5μg/ml、10μg/ml、15μg/mlの濃度でのセラムで処置した;細胞死を観察するために、Annexin V方法を、フローサイトメトリーを使用することによって適用した。これらの結果にしたがって、壊死およびアポトーシスの比率を計算したとき、24.96%、31.13%および23.49%の細胞死比率がそれぞれ観察された(図5)。
【0041】
24時間後、MCF-10A細胞を5μg/ml、10μg/ml、15μg/mlの濃度でのセラムで処置した;細胞死を観察するために、Annexin V方法を、フローサイトメトリーを使用することによって適用した。これらの結果にしたがって、壊死およびアポトーシスの比率を試験したとき、1.57%、1.25%および2.74%の細胞死比率がそれぞれ観察された(図6)。24時間後、A498細胞を5μg/ml、10μg/ml、15μg/mlの濃度でのセラムで処置した;細胞死を観察するために、Annexin V方法を、フローサイトメトリーを使用することによって適用した。これらの結果にしたがって、壊死およびアポトーシスの比率を計算したとき、51.05%、38.01%および42.76%の細胞死比率がそれぞれ観察された(図1)。
【0042】
24時間後、HEK293細胞を5μg/ml、10μg/ml、15μg/mlの濃度でのセラムで処置した;細胞死を観察するために、Annexin V方法を、フローサイトメトリーを使用することによって適用した。これらの結果にしたがって、壊死およびアポトーシスの比率を試験したとき、1.79%、1.63%および3.16%の細胞死比率がそれぞれ観察された(図2)。
【0043】
実験研究の結果として、本願発明の産物が、癌細胞の死を引き起こす体内で細胞自殺メカニズムを誘発することが証明された。本願産物で適用される処置が、化学療法処置において頻繁に遭遇される、癌細胞を死滅させるが健常細胞を損傷する不利益を除去していることが観察された。
【0044】
MTS結果に基づいて形成される創傷モデルの結果として、本願発明の産物で処置された細胞における創傷モデルが、未処置コントロール細胞と比較してはるかに速い治癒を示すことが証明された。これは、得られた産物、特に小麦エキソソーム由来の産物が、創傷治癒および組織修復モデルにおけるプロセスに積極的に影響を及ぼし、促進することを示している。
【0045】
本願発明の適用
本願発明は、前立腺癌、乳癌、腎臓癌において主に適用されるが、膵臓、肝臓、骨、皮膚、脳、肺、胸膜、子宮、卵巣、胃、腸、膀胱、血液、リンパ、甲状腺癌型においても活性である。
【0046】
本願発明の産物は、主に、液体状態においてセラム形態にて生産することができるが、それは、固形またはヒドロゲル形態にて生産することもできる。これらは、セラム(serum)、シロップ剤、錠剤、薬物、ゲルおよびクリームの形態であることができる。さらに、別の活性な物質(例えば薬物、化学物質)は、ナノキャリア分子を使用することによって細胞に運ぶことができる。この運ぶ方法は、上記のとおり、種々の形態および製剤において使用することができる。
【0047】
文献
【表1】
【表2】
図1
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図5
図6
図7
図8