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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】電気外科用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
A61B18/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020561574
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019014542
(87)【国際公開番号】W WO2019147568
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】62/620,551
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519175592
【氏名又は名称】アピックス メディカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー エー. コネスキー
(72)【発明者】
【氏名】クラース フレドリック ヨンソン
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ディー. ローマン
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0130972(US,A1)
【文献】特表2014-519875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0094769(US,A1)
【文献】特表2013-509979(JP,A)
【文献】国際公開第2017/162614(WO,A1)
【文献】特表2014-508580(JP,A)
【文献】特開2012-250039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0237484(US,A1)
【文献】特開2016-101492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/04
A61L 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位先端部を含むアプリケータであって、プラズマを生成し、前記生成されたプラズマを前記遠位先端部から射出するように構成された、アプリケータと、
アプリケータ受容部分と、少なくとも1つのポストと、基部とを含む離間器装置であって、前記少なくとも1つのポストが前記アプリケータ受容部分を前記基部に結合し、前記アプリケータ受容部分は、前記基部が組織表面に接触するときに、前記アプリケータの前記遠位先端部が前記組織表面から所定の固定距離で前記アプリケータ受容部分の開口部を通して配置されるように、前記アプリケータの遠位部分を受容するように構成される、離間器装置と、を含み、
前記基部は、前記基部が前記組織表面に接触するときに、前記組織表面に関連する少なくとも1つの変数を監視するための少なくとも1つのセンサを含む、電気外科用装置。
【請求項2】
前記基部は、開口部を有するリング形状に構成され、前記遠位先端部は、前記基部の前記開口部を通して前記組織表面にプラズマが印加されるように向けられている、請求項1に記載の電気外科用装置。
【請求項3】
前記基部は、前記基部の前記開口部を画定する外周を含み、前記少なくとも1つのポストは前記外周に結合される、請求項2に記載の電気外科用装置。
【請求項4】
前記監視された少なくとも1つの変数に基づいて前記プラズマによって前記組織表面に印加されるエネルギ密度を判定し、前記判定されたエネルギ密度に基づいて前記プラズマの印加電力レベルを調整するように構成された少なくとも1つのコントローラをさらに備える、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記組織表面に印加される前記エネルギ密度が所望の生理学的効果を達成する所定の有益な範囲内に留まるように、前記プラズマの印加電力レベルを調整するように構成される、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの変数に基づいて、前記組織表面に対する前記アプリケータの前記遠位先端部の移動の方向および/または速度の少なくとも1つを判定するように構成された少なくとも1つのコントローラをさらに備える、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのセンサが環状センサである、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセンサが、センサのアレイを含む、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項9】
前記センサのアレイから受信した測定データをシリアル化し、単一のワイヤを介して前記少なくとも1つのコントローラに前記測定データを出力するように構成された回路をさらに備える、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサが温度センサであり、前記少なくとも1つの変数が前記組織表面の温度である、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのセンサが、少なくとも第1および第2の接触電極を含む、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項12】
少なくとも1つのコントローラを含む回路をさらに備え、前記回路は、前記第1および第2の接触電極にプローブ信号を印加し、前記第1および第2の接触電極の電圧および電流を測定するように構成され、前記少なくとも1つのコントローラは、前記第1および第2の接触電極の電圧および電流測定値に基づいて組織インピーダンスを判定し、前記判定された組織インピーダンスに基づいて前記プラズマの印加電力レベルを調整するように構成される、請求項1に記載の電気外科用装置。
【請求項13】
少なくとも1つのコントローラを含む回路をさらに備え、前記回路は、前記第1および第2の接触電極にプローブ信号を印加し、前記第1および第2の接触電極の電圧および電流を測定するように構成され、前記少なくとも1つのコントローラは、前記第1および第2の接触電極の電圧と電流との間の位相シフトを判定し、前記判定された位相シフトに基づいて前記プラズマの印加電力レベルを調整するように構成される、請求項1に記載の電気外科用装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのセンサは、少なくとも第1および第2の音響変換器を含み、前記電気外科用装置は、さらに、前記第1の音響変換器から前記組織表面にアコースティックエミッションが放出され、前記第2の音響変換器によって受け取られるように、前記第1の音響変換器に電気振動を加えるように構成された回路を備え、前記回路は、さらに、前記第1および第2の音響変換器間の距離と、前記第1および第2の音響変換器間で放出されるアコースティックエミッションの飛行時間とに基づいて、前記組織表面の音響インピーダンスを判定し、前記判定された音響インピーダンスに基づいて前記プラズマの印加電力レベルを調整するように構成される、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのセンサが、少なくとも第1および第2の音響変換器を含み、前記電気外科用装置は、さらに、前記第1の音響変換器から前記組織表面にアコースティックエミッションが放出され、前記第2の音響変換器によって受け取られるように、前記第1の音響変換器に電気振動を加えるように構成された回路を備え、前記回路は、さらに、前記第2の音響変換器によって受信された音響信号の大きさに基づいて前記組織表面の音響吸収を判定し、前記判定された音響吸収に基づいて前記プラズマの印加電力レベルを調整するように構成される、請求項に記載の電気外科用装置。
【請求項16】
前記プラズマの電気インピーダンスを判定するための少なくとも1つのセンサと、前記判定された電気インピーダンスに基づいて前記プラズマの印加電力レベルを調整するように構成された少なくとも1つのコントローラとをさらに含む、請求項1に記載の電気外科用装置。
【請求項17】
前記プラズマおよび/または前記組織表面の電圧と電流との間の位相シフトの変化を判定するための回路をさらに備え、前記回路は、前記判定された位相シフトの変化に基づいて前記プラズマの印加電力レベルを調整するように構成された少なくとも1つのコントローラを含む、請求項1に記載の電気外科用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年1月23日に出願された米国仮特許出願第62/620,551号、発明の名称「電気外科用装置のための皮膚状態監視装置およびその方法(SKIN STATUS MONITOR AND METHOD THEREOF FOR ELECTROSURGICAL APPARATUSES)」の優先権を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、電気外科手術ならびに電気外科用システムおよび装置に関する。より詳細には、低温プラズマ用途において電気外科用装置と共に使用するための皮膚状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0003】
高周波電気エネルギは、手術で広く使用されている。電気外科用エネルギを使用して組織が切断され、体液が凝固される。
【0004】
電気外科器具は、一般に、「単極」デバイスまたは「双極」デバイスを含む。単極デバイスは、電気外科器具上にアクティブ電極を含み、リターン電極が患者に取り付けられる。単極電気外科手術では、電気外科用エネルギは、器具のアクティブ電極を通り、患者の身体を通ってリターン電極に流れる。そのような単極デバイスは、組織の切断および凝固が必要であり、かつ浮遊電流が患者に実質的なリスクをもたらさない外科処置において効果的である。
【0005】
双極デバイスは、手術器具上にアクティブ電極およびリターン電極を含む。双極電気外科用デバイスでは、電気外科用エネルギは、アクティブ電極を通って患者の組織に流れ、組織を通ってリターン電極までの短い距離を流れる。電気外科的効果は、外科器具上の2つの電極間に配置される組織の小さな領域に実質的に限定される。双極電気外科用デバイスは、浮遊電流が患者に危険をもたらす可能性がある外科処置、または他の処置上の懸念によりアクティブ電極とリターン電極の近接配置を必要とする外科処置に有用であることがわかっている。双極電気外科手術を含む外科手術は、単極電気外科手術を含む方法および手順とは実質的に異なる方法および手順を必要とすることが多い。
【0006】
ガスプラズマは、電気エネルギを伝導できるイオン化ガスである。プラズマは、患者に電気外科用エネルギを伝導するために外科用デバイスで使用される。プラズマは、比較的低い電気抵抗の経路を提供することによってエネルギを伝導する。電気外科用エネルギは、プラズマを通って追従し、患者の血液または組織を切断、凝固、乾燥、または放電治療する。電極と処置される組織との間に物理的な接触は必要ない。
【0007】
調整されたガスの供給源が組み込まれていない電気外科用システムは、アクティブ電極と患者との間の周囲空気をイオン化する可能性がある。それによって生成されるプラズマは、電気外科用エネルギを患者に伝導するが、プラズマアークは通常、イオン性ガスの流れが調整されたシステムと比較して、空間的に分散して出現する。
【0008】
大気圧放電低温プラズマアプリケータは、表面の滅菌、止血、腫瘍の切除など、様々な用途に使用されている。後者の例では、プロセスが比較的遅く、気化し炭化した組織で大量の有害な煙が発生する可能性があり、高出力の電気外科用エネルギを使用すると、周囲の健康な組織に付随的な損傷を引き起こす可能性がある。プラズマビームの幅により、精度の正確さも問題になることがある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、1つまたは複数の監視された変数に基づいて手術部位への印加エネルギ密度をリアルタイムで感知するための1つまたは複数のセンサを含む皮膚状態監視装置を提供する。本開示の皮膚状態監視装置は、低温プラズマを生成することができる電気外科用デバイスの遠位端部に結合される。感知した印加エネルギ密度に基づいて、低温プラズマビームの印加電力レベルは、手術部位への印加エネルギ密度が手術部位への所望の生理学的効果を達成する有益な範囲内に留まるように調整され得る。
【0010】
本開示の一態様では、遠位先端部を含むアプリケータであって、プラズマを生成し、生成されたプラズマを遠位先端部から射出するように構成された、アプリケータと、アプリケータ受容部分と、少なくとも1つのポストと、基部とを含む離間器装置であって、少なくとも1つのポストがアプリケータ受容部分を基部に結合し、アプリケータ受容部分は、基部が組織表面に接触するときに、アプリケータの遠位先端部が組織表面から所定の固定距離でアプリケータ受容部分の開口部を通して配置されるように、アプリケータの遠位部分を受容するように構成される、離間器装置とを含む電気外科用装置が提供される。基部は、基部が組織表面に接触するときに、組織表面に関連する少なくとも1つの変数を監視するための少なくとも1つのセンサを含んでいる。
【0011】
電気外科用装置の一態様によれば、基部は、開口部を有するリング形状に構成され、遠位先端部は、基部の開口部を通して組織表面にプラズマが印加されるように向けられる。
【0012】
電気外科用装置の一態様によれば、基部は、基部が組織表面に接触したときに、組織表面に関連する少なくとも1つの変数を監視するための少なくとも1つのセンサを含む。
【0013】
電気外科用装置の一態様によれば、電気外科用装置は、監視された少なくとも1つの変数に基づいてプラズマによって組織表面に印加されるエネルギ密度を判定し、判定されたエネルギ密度に基づいてプラズマの印加電力レベルを調整するように構成された少なくとも1つのコントローラをさらに備える。
【0014】
電気外科用装置の一態様によれば、少なくとも1つのコントローラは、組織表面印加されるエネルギ密度が所望の生理学的効果を達成する所定の有益な範囲内に留まるように、プラズマの印加電力レベルを調整するように構成される。
【0015】
電気外科用装置の一態様によれば、電気外科用装置は、少なくとも1つの変数に基づいて、組織表面に対するアプリケータの遠位先端部の移動の方向および/または速度の少なくとも1つを判定するように構成された少なくとも1つのコントローラをさらに備える。
【0016】
電気外科用装置の一態様によれば、少なくとも1つのセンサは環状センサである。
【0017】
電気外科用装置の一態様によれば、少なくとも1つのセンサは、センサのアレイを含む。
【0018】
電気外科用装置の一態様によれば、電気外科用装置は、センサのアレイから受信した測定データをシリアル化し、単一のワイヤを介して少なくとも1つのコントローラに測定データを出力するように構成された回路をさらに備える。
【0019】
電気外科用装置の一態様によれば、少なくとも1つのセンサは、温度センサであり、少なくとも1つの変数は、組織表面の温度である。
【0020】
電気外科用装置の一態様によれば、少なくとも1つのセンサは、少なくとも第1および第2の接触電極を含む。
【0021】
電気外科用装置の一態様によれば、電気外科用装置は、少なくとも1つのコントローラを含む回路をさらに備え、回路は、第1および第2の接触電極にプローブ信号を印加し、第1および第2の接触電極の電圧および電流を測定するように構成され、少なくとも1つのコントローラは、第1および第2の接触電極の電圧および電流測定値に基づいて組織インピーダンスを判定し、判定された組織インピーダンスに基づいてプラズマの印加電力レベルを調整するように構成される。
【0022】
電気外科用装置の一態様によれば、電気外科用装置は、少なくとも1つのコントローラを含む回路をさらに備え、回路は、第1および第2の接触電極にプローブ信号を印加し、第1および第2の接触電極の電圧および電流を測定するように構成され、少なくとも1つのコントローラは、第1および第2の接触電極の電圧と電流との間の位相シフトを判定し、判定された位相シフトに基づいてプラズマの印加電力レベルを調整するように構成される。
【0023】
電気外科用装置の一態様によれば、少なくとも1つのセンサは、少なくとも第1および第2の音響変換器を含み、電気外科用装置は、さらに、第1の音響変換器から組織表面にアコースティックエミッションが放出され、第2の音響変換器によって受け取られるように、第1の音響変換器に電気振動を加えるように構成された回路を備え、回路は、さらに、第1および第2の音響変換器間の距離と、第1および第2の音響変換器間で放出されるアコースティックエミッションの飛行時間(タイムオブフライト)とに基づいて、組織表面の音響インピーダンスを判定し、判定された音響インピーダンスに基づいてプラズマの印加電力レベルを調整するように構成される。
【0024】
電気外科用装置の一態様によれば、少なくとも1つのセンサは、少なくとも第1および第2の音響変換器を含み、電気外科用装置はさらに、第1の音響変換器から組織表面にアコースティックエミッションが放出され、第2の音響変換器によって受け取られるように、第1の音響変換器に電気振動を加えるように構成された回路を備え、回路は、さらに、第2の音響変換器によって受信された音響信号の大きさに基づいて組織表面の音響吸収を判定し、判定された音響吸収に基づいてプラズマの印加電力レベルを調整するように構成される。
【0025】
電気外科用装置の一態様によれば、電気外科用装置は、プラズマの電気インピーダンスを判定するための少なくとも1つのセンサと、判定された電気インピーダンスに基づいてプラズマの印加電力レベルを調整するように構成された少なくとも1つのコントローラと、をさらに含む。
【0026】
電気外科用装置の一態様によれば、電気外科用装置は、プラズマおよび/または組織表面の電圧と電流との間の位相シフトの変化を判定するための回路をさらに備え、回路は、判定された位相シフトの変化に基づいてプラズマの印加電力レベルを調整するように構成された少なくとも1つのコントローラを含む。
【0039】
本開示の上記および他の態様、特徴、および利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本開示の一実施形態による、例示的な単極電気外科用システムの説明図である。
図2A】本開示の一実施形態による、電気外科用装置の概略図である。
図2B図2Aに示す電気外科用装置の線A-Aに沿った断面図である。
図3A】本開示の一実施形態による、電気外科用装置の拡大断面図である。
図3B図3Aに示す電気外科用装置の線B-Bに沿った正面図である。
図4図3に示す電気外科用装置のブレードを伸ばした拡大断面図である。
図5A】本開示の一実施形態による、低エネルギ密度プロファイルのプラズマビームによって手術部位に生成された組織熱拡散プロファイルの説明図である。
図5B】本開示の一実施形態による、中エネルギ密度プロファイルのプラズマビームによって手術部位に生成された組織熱拡散プロファイルの説明図である。
図5C】本開示の一実施形態による、高エネルギ密度プロファイルのプラズマビームによって手術部位に生成された組織熱拡散プロファイルの説明図である。
図6】本開示の一実施形態による、プラズマビームによって手術部位に生成された組織熱拡散プロファイルの別の説明図である。
図7A】本開示の一実施形態による、電気外科用装置の走査運動によって形成された熱散逸の引きずり跡の説明図である。
図7B】本開示の一実施形態による、電気外科用装置の走査運動によって形成された熱散逸の引きずり跡の説明図である。
図8A】本開示の一実施形態による、電気外科用装置の遠位端部に結合された皮膚状態監視装置の側面図である。
図8B】本開示の一実施形態による、図8Aの皮膚状態監視装置の遠位端部を通る図である。
図9】本開示の一実施形態による、図8Aの皮膚状態監視装置の斜視図である。
図10A】本開示の一実施形態による、図8Aの皮膚状態監視装置の、リングセンサを含む図である。
図10B】本開示の一実施形態による、図8Aの皮膚状態監視装置の複数の個々のセンサを含む図である。
図11A】本開示の一実施形態による、ブレード型電極を有する電気外科用装置によって生成されたプラズマビーム走査の図である。
図11B】本開示の一実施形態による、固定点から見た受信プラズマビーム電力の図11Aに対応するグラフである。
図11C】本開示の一実施形態による、ブレード型電極を有する電気外科用装置によって生成されたプラズマビーム走査の別の図である。
図11D】本開示の一実施形態による、固定点から見た受信プラズマビーム電力の図11Cに対応するグラフである。
図12】本開示の一実施形態による、図8Aの皮膚状態監視装置用の回路のブロック図である。
図13A】本開示の一実施形態による、電気外科用装置によって生成された低温プラズマビームのプラズマインピーダンスおよび目標組織部位の組織インピーダンスの図である。
図13B】本開示の一実施形態による、図13Aに示すプラズマインピーダンスおよび組織インピーダンスの等価回路図である。
図14】本開示の一実施形態による、様々な電気外科的条件下での組織インピーダンスの変化を示すグラフである。
図15】本開示の一実施形態による、回路のブロック図である。
図16】本開示の一実施形態による、離間器の基部上に配置された電極のアレイの図である。
図17】本開示の一実施形態による、組織の電気インピーダンス測定システムのブロック図である。
図18】本開示の一実施形態による、離間器の基部上に配置された音響変換器のアレイの図である。
図19】本開示の一実施形態による、音響インピーダンス測定システムのブロック図である。
図20】本開示の一実施形態による、示差的な音響吸収測定システムのブロック図である。
図21】本開示の一実施形態による、プラズマのアコースティックエミッションを測定するための装置の図である。
図22】本開示の一実施形態による、プラズマ発光スペクトルを測定するための装置の図である。
図23】本開示の一実施形態による、図22に示す装置と共に使用するための光学インターフェースの図である。
図24A】本開示の一実施形態による、例示的な組織由来の光放射の図である。
図24B】本開示の一実施形態による、例示的な組織由来の光放射の図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態について説明する。以下の説明では、不必要な詳細で本開示を不明瞭にすることを避けるために、周知の機能または構成は、詳細には説明されない。図面および以下の説明において、「近位」という用語は、従来どおり、ユーザに近い、器具、装置、アプリケータ、ハンドピース、鉗子などのデバイスの端部を指す。「遠位」という用語は、ユーザから遠い方の端部を指す。本明細書では、「結合された」という語句は、1つまたは複数の中間構成要素を介して直接接続されるか、または間接的に接続されることを意味すると定義される。このような中間構成要素には、ハードウェアベースとソフトウェアベースの構成要素の両方が含まれ得る。
【0042】
図1は、全体として符号10で示される例示的な単極電気外科用システムを示している。単極電気外科用システムは、全体として符号12で示されているとともに電気外科用装置10のための電力を生成する電気外科用発電機(ESU)と、全体として符号14で示されているプラズマ発生器と、を備える。プラズマ発生器14は、プラズマ流16を生成して、導電性プレートまたは支持表面22上に静置されている患者20の外科手術部位または目標領域18に適用する。電気外科用発電機12は、全体として符号24で示される変圧器を含んでいる。変圧器24は、電源(図示せず)に結合された一次側および二次側を含み、プラズマ発生器14に高周波電気エネルギを供給する。典型的には、電気外科用発電機12は、いかなる電位にも関連付けられていない孤立した浮遊電位を含む。したがって、電流は、アクティブ電極とリターン電極との間を流れる。出力が絶縁されていないが「アース」に関連付けられている場合、電流は、接地電位のある領域に流れる可能性がある。これらの領域と患者との接触面が比較的小さい場合、望ましくない火傷が発生する可能性がある。
【0043】
プラズマ発生器14は、電極28を有するハンドピースまたはホルダ26を備えている。電極28は、流体流れハウジング29内に少なくとも部分的に配置され、変圧器24に結合されてそこから高周波電気エネルギを受け取って希ガスを少なくとも部分的にイオン化する。希ガスは、ハンドピースまたはホルダ26の流体流れハウジング29に供給されて、プラズマ流16を生成または創出する。高周波電気エネルギは、変圧器24の二次側からアクティブ導体30を通ってハンドピース26の電極28(まとめてアクティブ電極)に供給され、患者20の外科手術部位18に適用するためのプラズマ流16を創出する。さらに、電流制限コンデンサ25が電極28と直列に設けられて、患者20に送達される電流の量を制限する。
【0044】
電気外科用発電機12への帰路は、患者20の組織および体液、導体板または支持部材22、ならびにリターン導体32(まとめてリターン電極)を通って変圧器24の二次側に至り、孤立した浮遊電位回路が完成する。
【0045】
別の実施形態では、電気外科用発電機12は、いかなる電位にも関連付けられていない孤立した非浮遊電位を含む。電気外科用発電機12に戻るプラズマ電流の流れは、組織および体液ならびに患者20を通る。そこから、リターン電流回路は、プラズマ発生器ハンドピース26、外科医への結合された外部静電容量を介して、および変位電流を介して完成する。静電容量は、とりわけ、患者20の物理的サイズによって決定される。そのような電気外科用装置および発電機は、本発明の譲受人が所有するKoneskyの米国特許第7,316,682号に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
以下の様々な実施形態で説明するように、プラズマ発生器ハンドピース26に変圧器24を配置してもよいことを理解されたい。この構成では、例えば、降圧変圧器、昇圧変圧器、またはそれらの任意の組み合わせなど、ハンドピース内の変圧器に適切な電圧および電流を供給するために、発電機12に他の変圧器を設けてもよい。
【0047】
図2Aを参照すると、本開示による電気外科用装置100が図示されている。一般に、装置100は、近位端部103および遠位端部105を有するハウジング102と、開放遠位端部106およびハウジング102の遠位端部105に結合された近位端部108を有する管104とを含む。ハウジング102は、右側ハウジング110および左側ハウジング112を含み、ボタン114およびスライダ116のための設備をさらに含む。スライダ116が作動すると、管104の開放遠位端部106でブレード118を露出する。ボタン114が作動すると、以下に詳細に説明するように、ブレード118に電気外科用エネルギが印加され、ある特定の実施形態では、流管122を通るガス流を可能にする。
【0048】
さらに、装置100に無線周波数(RF)エネルギ源を結合するために、ハウジングの近位端部103に変圧器120が設けられている。(変圧器を電気外科用発電機内に設置するのではなく)変圧器120を装置100内に設けることにより、装置100用の電力は、変圧器が発電機内に離れて設置される場合に必要とされる電圧および電流よりも高い電圧および低い電流から発生し、より小さい熱化効果をもたらす。対照的に、発電機内にある変圧器は、より大きな熱化効果を有するより低い電圧およびより高い電流でアプリケータ電力を生成する。したがって、装置100内に変圧器120を設けることにより、手術部位での組織への付随的な損傷が最小限に抑えられる。
【0049】
装置102の線A-Aに沿った断面図が図2Bに示されている。ハウジング102および管104内に配置されているのは、装置100の長手方向軸に沿って延びる流管122である。流管122の遠位端部124では、ブレード118が流管122内に保持される。流管122の近位端部126は、管コネクタ128および可撓性管129を介してガス源に結合される。流管122の近位端部126は、また、変圧器120に結合するプラグ130を介してRFエネルギ源に結合される。流管122は、以下で説明するようにプラズマ用途または電気外科的切断に使用されるときにRFエネルギをブレード118に伝導するように、導電性材料、好ましくはステンレス鋼から作られている。外管104は、非導電性材料、例えばLestranで構成されている。スライダ116は、保持カラー132を介して流管122に結合される。プリント回路基板(PCB)134は、ハウジング102内に配置され、ボタン114を介して変圧器120からのRFエネルギの印加を制御する。
【0050】
スライダ116は、直線方向に自由に移動可能であってもよく、または、装置100の操作者がブレード118を過度に伸ばすことを防止するために、例えば、ラチェット移動などの増分移動のための機構を含んでもよいことを理解されたい。ブレード118の増分移動のための機構を採用することにより、操作者は、露出したブレード118の長さをより良く制御して、手術部位の組織への損傷を回避することになる。
【0051】
外管104の遠位端部106の拡大図も、図2Bに図示されている。ここで、ブレード118は、流管122に結合されている。流管122は、少なくとも1つのシール136によって外管104内の適所に保持される。少なくとも1つのシール136は、管104およびハウジング102へのガスの逆流を防止する。円筒形のセラミックインサート138が外管104の遠位端部に配置され、装置100の長手方向軸に沿ってブレードを保持し、ブレードが外管104の遠位端部を超えて露出するときの機械的切断中に構造的支持を提供する。
【0052】
次に、装置100の動作態様を図3Aおよび図3Bに関連して説明する。図3Aは、装置の拡大断面図を示す。図3Bは、装置の正面図を示す。
【0053】
図3Aを参照すると、流管122は、外管104内に配置されている。円筒形の絶縁体140は、流管122の周りに配置されている。スライダ116は、絶縁体140に結合されており、ブレード118を伸長および後退させるために使用される。外管104の遠位端部106では、環状またはリング形状のシール136および円筒形のセラミックインサート138が流管122の周囲に配置される。図3Bから分かるように、ほぼ平面のブレード118は、ブレード118の両側に2つのガス通路142、144が形成されるように、円筒形の流管122の内周に結合される。ガスがハウジングの近位端部103から流管122を通って流れると、ガスは、ブレード118を越えて外管104の遠位端部から出る。
【0054】
図3Aに示すように、ブレードが後退位置にあるとき、装置102は、プラズマを生成するのに適している。後退位置では、RFエネルギは、流管122を介して電気外科用発電機(図示せず)からブレード118の先端部146に伝導される。次に、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスが、電気外科用発電機または外部ガス源のいずれかから流管に供給される。不活性ガスが、高電圧および高周波に保たれたブレード118の鋭いポイント146上を流れると、低温プラズマビームが生成される。
【0055】
図4を参照すると、ブレード118がスライダ116を介して前進するため、先端部146は、外管104の遠位端部106を通過して伸長する。この状態では、ブレード118は、機械的切断と電気外科的切断の2つの切断モードに使用することができる。機械的切断モードでは、RFまたは電気外科用エネルギは、流管122またはブレード118に印加されず、したがって、ブレード118は、非通電状態にある。このモードでは、ブレード118は、機械的切断によって組織を切除するために使用できる。組織が除去された後、ブレード118は、スライダ116を介して後退され得、電気外科用エネルギおよびガスがボタン114を介して印加されて、手術患者部位の焼灼、滅菌および/または止血のための低温プラズマビームを生成してもよい。
【0056】
電気外科的切断モードでは、ブレード118は、通電状態かつ不活性ガス流がある状態で前進および使用される。この構成は、電気外科用エネルギが切断を行う電気外科ナイフのアプローチに似ている。しかしながら、不活性ガス流を追加すると、切断の側壁に沿った付随的な損傷がほとんどなく、切断は事実上焼痂を示さない切断速度はかなり速く、ナイフの刃が電気的に通電されていないとき、すなわち機械的切断モードと比較して、機械的切断抵抗が少ない。この過程で止血も影響を受ける。
【0057】
上記のように、全体として符号14で示されているプラズマ発生器および装置100などの低温プラズマを発生することができる電気外科用デバイスは、電気外科処置で使用して、発生した低温プラズマビームを介して電気外科用エネルギを手術部位(例えば、患者の組織)に印加することができる。以下で説明するように、手術部位に印加されるエネルギ密度は、複数の要因のいずれか1つに基づいて(大幅に)変化する可能性がある。しかしながら、手術部位に印加されるエネルギ密度は、手術部位に所望の生理学的効果を達成するために特定の狭い有益な範囲内に留まることが重要である。本開示は、1つまたは複数の要因に基づいて手術部位への印加エネルギ密度をリアルタイムで感知するように構成されている皮膚状態監視装置を提供する。感知された印加エネルギ密度に基づいて、手術部位への印加エネルギ密度が手術部位への所望の生理学的効果を達成する有益な範囲内に留まるように、低温プラズマビームの印加電力レベルが調整され得る。一実施形態では、本開示の皮膚状態監視装置は、低温プラズマを生成することができる電気外科用デバイスの遠位端部に結合されるように構成される。他の実施形態では、電気外科用装置は、一体型の皮膚状態監視構成要素を含み得る。
【0058】
様々な外科処置は、例えば、上記の装置14および100などであるがこれらに限定されない低温プラズマ発生デバイスを使用することにより、手術部位へのエネルギの蓄積によって影響を受ける可能性がある。より具体的には、所望の生理学的効果を達成するために、手術部位には所与の最小エネルギ密度(例えば、単位面積当たりのジュール)が印加されなければならない。しかしながら、それを超えると手術部位に組織損傷作用が発生する、閾値エネルギ密度が存在する可能性がある。場合によっては、有益な効果と有害な効果との間の閾値が非常に急になることがあり、エネルギ密度の比較的小さな増加がその閾値を超える可能性がある。言い換えれば、印加エネルギ密度のほんの数パーセントの増加が、治療効果と有害な効果の違いを生む可能性がある。
【0059】
いくつかの要因が、手術部位への印加エネルギ密度に影響を与える。これらの要因には、これらに限定されないが、印加領域、プラズマビームの印加電力レベル、エネルギを吸収する印加部位の能力、印加部位からエネルギを除去する冷却係数、および滞留時間が含まれる。上記の装置14および100などの低温プラズマジェットアプリケータの場合、追加の冷却剤として機能するキャリアガスの流量もまた、手術部位への正味の印加エネルギ密度に影響を与える。
【0060】
低温プラズマは、低温プラズマ生成デバイスのアプリケータ先端部(例えば、装置100の遠位端部106および流管122を介してなど)から印加部位に印加される。アプリケータ先端部から印加部位までの距離が、印加エネルギ密度において重要な役割を果たす可能性がある。これは、レーザなどの光学ベースのエネルギアプリケータに特に当てはまる。ここで、印加電力密度は、印加部位からのアプリケータの距離の二乗に反比例してスケーリングされ、アプリケータの距離の比較的小さな変化が、印加電力密度に大きな影響を与える可能性がある。印加電力密度という用語は、単位面積あたりの電力の単位、例えばワット/cmで与えられた、所与の領域に印加されている有効電力の瞬間的な量を指すことに注意されたい。印加エネルギ密度は、印加電力密度に、所与の領域に電力密度が印加されている持続時間を掛けたもので決定される。この持続時間は、滞留時間と呼ばれることもある。印加エネルギ密度の単位は、ワット秒/cmやジュール/cmなど、単位面積あたりのエネルギである。「印加」または「有効な」という用語は、手術部位で吸収される実際の電力密度またはエネルギ密度を示すことを意図し、ガス流による冷却、血流、および/または蒸発冷却など、電力またはエネルギを除去する可能性のある様々なメカニズムを考慮に入れることに注意されたい。
【0061】
多くの処置では、アプリケータビーム(すなわち、低温プラズマ生成デバイスのアプリケータ先端部から射出された低温プラズマビーム)を手術部位の所与の領域で走査する必要がある。次に、手術部位上のアプリケータ先端部の走査速度には滞留時間が関係する。走査速度が速いほど、滞留時間は短くなり、その逆も同様である。印加エネルギ密度は、印加電力密度と滞留時間との積であるため、他のすべての要素が等しい場合、例えば、走査速度が速いほど、手術部位への印加エネルギ密度は低くなる。
【0062】
印加エネルギ密度に影響を与える要因のうち、特に上記の装置14および100の場合のように、アプリケータが手で走査されている場合、走査速度は、容易には制御されない。有益な印加エネルギ密度と有害な印加エネルギ密度との間の閾値が比較的狭い状況では、アプリケータの走査速度の比較的小さな変化がその閾値を超えて、手術部位に望ましくない生理学的影響をもたらす可能性がある。
【0063】
本開示の一実施形態によれば、手術部位への印加エネルギ密度をリアルタイムで監視するための方法および装置が提供され、その結果、このエネルギ密度に影響を与える要因の変動を補償して、所与の領域に均一な生理学的効果をもたらすことができる。例えば、印加電力レベルは、印加部位で本開示の装置によってリアルタイムで監視される変数に応答して調整され得る。監視された変数が、印加エネルギ密度が所定の損傷閾値に近づいていることを示す場合、アプリケータによって生成される低温プラズマビームの印加電力レベルをその分だけ下げて、印加エネルギ密度を所定の有益な範囲内に維持することができる。同様に、本開示の装置によって、印加エネルギ密度が所定の有益なレベルまたは範囲を下回ったと判定された場合、アプリケータによって生成される低温プラズマビームの印加電力レベルをその分だけ増加させて、印加エネルギ密度を所定の有益な範囲内に維持することができる。変動する走査速度を補償する場合、本開示の装置が、アプリケータの移動が一時的に遅すぎると判定した場合には、印加電力レベルが低減され、本開示の装置が、アプリケータの移動が速すぎると判定した場合には、印加電力レベルが増加され得る。本開示の装置は以下でより詳細に説明されることを理解されたい。
【0064】
印加エネルギ密度を示すいくつかの変数が監視され得る。これらの変数には、組織表面温度、組織の電気インピーダンス、および音響特性が含まれる。ただし、これらの監視される変数の一部は、エネルギ印加プロセスによって妨害される場合がある。例えば、組織の電気インピーダンスを測定するプロセスは、典型的には、その大きさが数ミリボルト程度である試験信号を利用するが、低温プラズマジェットで使用される電圧は、数kV程度であり得る。幸いなことに、このような低温プラズマジェットは、電気的にパルス化され、単調なパルス間周期が電気インピーダンス測定値に使用され得る。同様の議論は、超音波特性を使用するなど、音響モニタリングでも行われることがあり、パルス間周期が音響測定値に使用され得る。温度測定は、組織表面に直接接触するか、赤外線放射を使用することにより実現され得る。後者の場合も、エネルギ印加からの寄与は、フィルタリングして取り除くか、そうでなければ除去する必要がある。本開示の皮膚状態監視装置(図8で最初に示す)は、これらの技術を使用して上記の変数のいずれか1つを監視して、監視されている変数の測定値への電気外科用アプリケータによる干渉をフィルタリングして取り除くように構成され得ることを理解されたい。
【0065】
所与の印加エネルギ密度と組織の特性に対して、組織の深さ、および組織の表面を横方向に横切り、印加ポイントから離れた両方で温度プロファイルが生成される。例えば、図5A図5Cを参照すると、本開示に従って、様々な印加エネルギ密度プロファイル、および手術部位の組織に生成される熱または温度拡散プロファイルに対するそれらの相対的な影響が示されている。図5Aでは、低エネルギ密度のプラズマビームまたはジェット502が、アプリケータ(例えば、上記の装置14、100など)によって患者の組織表面506上の印加ポイント504に印加される。プラズマビーム502による組織表面506への印加エネルギ密度は、印加ポイント504から患者の組織の深さに放射状に広がり、かつ印加ポイント504から離れて組織表面506を横方向に横切る組織熱拡散プロファイル508を生成する。
【0066】
図5Bでは、中程度のエネルギ密度(すなわち、図5Aで印加される低エネルギ密度よりも高い)が患者の組織表面506に印加され、図5Cでは、高エネルギ密度(すなわち、図5Bで印加される中程度のエネルギ密度よりも高い)が患者の組織表面506に印加される。図5A図5Cを検討することにより分かるように、組織表面506のポイント504に印加されるエネルギ密度が増加すると、組織熱拡散プロファイル508は、組織表面506の横方向の両端および組織を貫通する深さの両方で、ポイント504からさらに離れて広がる。このようにして、組織表面506のポイント504へのプラズマビーム502の印加により生成された熱拡散プロファイル508の特定の特性を測定することによって、印加エネルギ密度プロファイルが判定され得る。
【0067】
例えば、図6を参照すると、印加ポイント504から、ポイント504から横方向に配置された組織表面506上のポイント501までの固定距離Bでの温度が測定され、印加エネルギ密度および組織への熱影響ゾーン509の深さを判定するために使用され得る。ポイント504における印加エネルギ密度と共に、ポイント501での測定温度を使用して、ポイント504でのエネルギ密度と熱影響ゾーン509の貫通の深さCの両方を判定できる。原則として、印加エネルギ密度は、印加ポイントから所与の距離だけ離れた位置で測定された表面温度に基づいて計算できる。ただし、熱伝導率、比熱、および損失メカニズム(伝導、蒸発、放射損失を含む)などの変数の値は、概算でのみ知られ、それらの値は温度にも依存し得る。実際には、印加エネルギ密度と表面温度との関係は実験的に決定され、ルックアップテーブルに格納される。
【0068】
皮膚の表面再形成およびしわの除去などのある特定の用途では、熱影響ゾーン509の深さC(すなわち、熱拡散プロファイル508によって定義される組織の体積)を制限することが重要である。根底にある血管新生は、エネルギ蓄積プロセスで損傷してはならない。
【0069】
表面温度測定におけるさらなる複雑さは、温度プロファイル508の径方向の対称性がアプリケータの走査運動によって影響を受ける可能性があることである。この影響は、本開示による図7Aに図示されている。アプリケータの先端部が患者の組織表面506を横切って方向A(図7Aに示されている)に移動されると、熱散逸の引きずり「尾部」510が温度プロファイル508に形成され得る。エネルギ印加ポイント504の熱散逸尾部510における温度測定は、通常の径方向表面熱拡散508およびエネルギ蓄積自体の散逸からの寄与からの両方の寄与を含む。
【0070】
印加エネルギ密度および組織表面までのアプリケータ距離に影響を与える変数の1つは、本開示による図8A図8Bおよび図9に示される離間器装置700を使用することによって制御および固定することができる。以下で説明するように、離間器装置700は、上記の皮膚状態監視装置として使用され得ることを理解されたい。
【0071】
図8A図8Bおよび図9に示すように、離間器700は、アプリケータ600の遠位部分602に結合され得る。アプリケータ600は、上記の装置14、100のいずれか、または低温プラズマを手術部位に印加することができる任意の他の電気外科用装置を代表し得ることを理解されたい。アプリケータ600は、ハンドルハウジング601と、ハウジング601から遠位に延在する遠位アプリケータ先端部またはノズル604とを含む。図示されていないが、一実施形態では、シャフトまたは管が、ハウジング601を遠位先端部604に結合する。アプリケータ600によって生成された低温プラズマは、先端部604の遠位端部605に配置された開口部606(図8Bに示される)から射出され、患者の組織表面506に印加される。電極608を先端部604の内部に配置して、先端部604に供給されたキャリアガスをイオン化して、低温プラズマビームを創出できることを理解されたい。一実施形態では、電極608は、格納可能であり得、上記の装置100のブレード118と同様の方法で平面ブレードとして構成され得る。他の実施形態では、電極608は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の適切な形状、例えば、針、ボール、ワイヤ、または任意の他のタイプの電極で構成されてもよい。
【0072】
離間器700は、離間器700の近位端部701に向かって配置されたアプリケータ受容部分702と、離間器700の遠位端部703に向かって配置された基部706とを含む。基部706は、基部706の外周に結合する1つまたは複数の支持体またはポスト704を介してアプリケータ受容部分702に結合される。図9で最もよく分かるように、受容部分702は、アプリケータ600の遠位部分602を(例えば、端部701から表面705まで延在するチャネルまたはスロットに)受容するように構成されている。その結果、アプリケータ先端部604は、離間器700の表面705の開口部を通して配置される。遠位部分602は、ハウジング601の遠位部分、ハウジング601を先端部604に結合するシャフトもしくは管の遠位部分および/または先端部604の一部を含み得る。一実施形態では、離間器700は、アプリケータ600の遠位部分602が受容部分702によって受容されるときに、離間器700を先端部604および/または遠位部分602に固定するための固定手段(例えば、クランプまたは端部701に配置された他の固定手段)を含み得る。一実施形態では、基部706は、基部706が外周によって画定される開口部708を含むように、リングまたは環状の形状に構成される。図8Bで最もよく分かるように、離間器700がアプリケータ600の遠位部分602に結合されると、先端部604の開口部606と基部706の開口部708は同軸に整列し、その結果、プラズマが先端部604の開口部606を出るときに、プラズマは開口部708に向けられる。
【0073】
図8Aに示すように、基部706は、ポスト704を介して受容部分702から離れて配置され、その結果、基部706が組織表面506と接触するときに、先端部604の遠位端部605は、基部706/組織表面506から固定された所定の距離Dに保持される。このようにして、先端部604の遠位端部605から組織表面506までの距離Dが印加エネルギ密度に及ぼす影響は、一定に保たれる。先端部604の遠位端部605からの距離Dが一定に保たれる一方で、印加エネルギ密度は、より容易に一定に保たれ、以下に説明するように、印加エネルギ密度に影響する残りの要素に焦点を合わせることができる。
【0074】
離間器支持基部706(図8B)は、エネルギ印加中の組織状態のセンサ監視のための便利な場所を提供する。一実施形態では、基部706は、手術部位の組織表面506の様々な特性または性質(例えば、温度)を監視するための1つまたは複数の埋め込まれたセンサを含む。電気外科処置中に基部706が組織表面506と接触すると、基部706内のセンサも組織表面506と接触して、所望の測定値(例えば、一実施形態では温度測定値)を得る。例えば、図10Aおよび図10Bの各々は、本開示による基部706で実装される様々なセンサ構成を伴う、離間器700の遠位端部703を通る図を含む。図10Aでは、リングまたは環状センサ720(例えば、温度センサ)が、基部706に埋め込まれた状態で示されている。図10Bでは、1つまたは複数の別個のまたは個別のセンサ720(すなわち、720A~D)が基部706に埋め込まれた状態で示されている。以下でより詳細に説明するように、各センサ720は、離間器700および/またはアプリケータ600(例えば、コントローラまたはプロセッサ)の1つまたは複数の構成要素に結合され得、センサ720によって得られる任意の測定値が提供され得る。
【0075】
コストと複雑さの観点から、アプリケータ電力レベルの必要なフィードバックを達成するために、可能な限り少ない数のセンサ720を使用することが望ましい。しかしながら、走査されたアプリケータの熱放散「尾部」510(図7Aに示される)の潜在的な影響を考慮して、単一の温度センサは、アプリケータが任意の方向に移動される可能性を考慮するために径方向に対称でなければならない。図10Aに示すように、リングセンサ720は、必要となる径方向に対称な形状を含む。あるいは、図10Bを参照すると、少なくとも2つの温度センサ720のアレイを利用してもよい。温度センサ720が組織表面506で測定される任意の温度変化に迅速に応答し、フィードバックループでそれらの測定値を使用して適時にプラズマビーム502の印加電力レベルを調整できるように、任意の所与の温度センサ720は、低い熱質量を有する必要があることを理解されたい。
【0076】
図10Bの実施形態に示すように、複数のセンサ720を使用することにより、少なくとも1つまたは複数のセンサ720が、アプリケータ600の運動によって創出される下流の熱放散「尾部」510内にあるため、アプリケータの運動方向の検出が可能になる。下流の熱放散「尾部」510内のセンサ720によって得られる測定値は、印加ポイント504に配置された残りのセンサ720によって得られる他の測定値と比較して、より高い温度を有する。このようにして、散逸「尾部」510内のセンサ720によって測定されたより高い温度を使用して、「尾部」510の方向が判定され得る。「尾部」510の方向が得られると、アプリケータ600の運動方向もまた、「尾部」510の方向と反対方向になるため判定され得る。例えば、温度センサ720Aによって感知された温度が温度センサ720B~Dによって感知された温度よりも高い場合、「尾部」510がセンサ720Aから離れて表面506に沿った方向Dに向いていること、およびアプリケータ600の運動が表面506に沿った方向E(Dの反対)であることが判定され得る。
【0077】
所与の電力設定に対する上流温度と下流温度との間の非対称の程度(すなわち、図7Aの510)を使用して、アプリケータの速度が推測され得る。例えば、所与の電力設定でアプリケータを比較的ゆっくりと動かすと、印加エネルギ密度が高くなるため、そのエネルギを放散するのに必要な時間が長くなる。結果として、図7Aに示されるように、非対称性はより大きくなり、より長い「尾部」510が生成される。比較すると、アプリケータ600がより速く移動される場合、印加エネルギ密度はより低くなり、「尾部」510は、図7Bに示されるようにより短くなる。
【0078】
複数の個別センサ720を含めることにより、非対称なエネルギ印加プロファイルの潜在的な補償も可能になる。低温プラズマジェットアプリケータ600の場合、アプリケータ電極608は、その厚みよりも広い(上記のような)ブレードの形態であり得る。これにより、楕円形のエネルギ印加プロファイルが生じる。例えば、図11Aを参照すると、平面ブレード形状の電極608を含むアプリケータ600によって生成されたプラズマビーム502によって組織表面506上に生成されたプラズマビーム502のビームフットプリント503が本開示に従って示されている。アプリケータ600は、ビーム502が組織表面506を方向Aで走査するように移動されている。ビーム502が組織表面506を走査するにつれて、ビーム502によって走査された経路に沿って、ビーム502が既に走査した所に処置された組織505が存在し、ビーム502はまだ通過していないが、ビームフットプリント503が同じ方向に移動し続けると通過する所に未処置の組織507が存在する。図11Aに示すように、アプリケータ600がビームフットプリント503の楕円短軸554に沿った方向Aに走査される場合、エネルギは、より広い領域にわたって走査される。さらに、図11Bに示すグラフ550で示されるように、瞬間滞留時間は、ビーム502がその上を走査されるときに(すなわち、フットプリント503によって示される)目標組織上の所与のポイントから分かるように、より短くなる。これは、移動方向Aでは、移動方向Aと整列する軸の長さ(すなわち、楕円短軸554)が最小化されるためである。アプリケータ600の移動方向Aと整列する楕円短軸554から生成されるより広い経路とより短い滞留時間が組み合わさって、全体的な印加エネルギ密度を低減する。
【0079】
逆に、図11Bに示すように、アプリケータ600が楕円長軸556に沿った方向Bに走査される場合、エネルギは、(図11Aに示すように、楕円短軸554上を走査したときに生成される経路と比較して)より狭い経路に広がる。図11Dのグラフ552に示すように、このシナリオにおける瞬間滞留時間は、移動方向Bにおいて移動方向Bと整列する軸の長さ(すなわち、楕円長軸556)が最大化されるという事実によって、より長くなる。アプリケータ600の移動方向Bと整列する楕円長軸556から生成される経路が狭く、滞留時間が長いために、図11Aおよび図11Bに示す各シナリオで印加電力レベルおよび走査速度が同じであっても、印加エネルギ密度は高くなる。離間器700の基部706に含まれる複数のセンサ720は、これらの2つの向き、またはそれらの間の向きの検出、および一定の印加エネルギ密度に対する印加電力レベルの調整を可能にする。
【0080】
ビームフットプリントの楕円の例は、短軸が1mm、長軸が2mmで考える。個々のセンサの間隔は、これらの2つの軸の違いを確実に検出できるように十分に近くなければならない。この例では、少なくとも0.5mmのセンサ間隔で十分であろう。短軸に沿って走査すると、短軸に沿って走査するよりもビームの幅が広いため、より多くのセンサが温度上昇を示すことになる。さらに、短軸に沿った走査で、他の条件が同じであれば、少数のセンサ間に高い温度上昇分布が生成されるのに比べて、短軸に沿って走査すると、多数のセンサ間に低い温度上昇分布(すなわち、低い印加エネルギ密度)が生成されることになる。
【0081】
しかしながら、複数のセンサ720の使用は、アプリケータ600とアプリケータ600に電力を供給する発電機ユニットとを結合するケーブル内の相互接続ワイヤの数を実質的に増やす必要がある。この配置のコストと複雑さは、ケーブル内の電力導体からの高電圧のいかなる偶発的なピックアップも防ぐために、発電機ユニットの各センサ720に1つずつ終端回路を必要とすることによって、さらに増加する。
【0082】
一実施形態では、離間器700および/またはアプリケータ600は、センサ720が上記の問題を解決するためのセンサデータサンプリング、A/D変換およびシリアル化回路を含む。このようにして、離間器700に含まれる任意の数のセンサ720に対して、発電機ユニットをアプリケータ600に接続するケーブルに必要なワイヤは1本だけである。
【0083】
例えば、図12を参照すると、回路750が本開示に従って示されている。回路750の構成要素のいくつかまたはすべてが、離間器700、アプリケータ600、または両方のデバイス600および700の組み合わせに配置され得ることを理解されたい。回路750は、1線式インターフェース752、アナログデジタル(A/D)コンバータ754、コントローラまたはプロセッサ756、マルチプレクサ758、および1つまたは複数のセンサ720を含む。コントローラ756は、1線式インターフェース752、A/Dコンバータ754、およびマルチプレクサ758の各々に結合される。また、A/Dコンバータ754は、1線式インターフェース752およびマルチプレクサ758に結合される。また、マルチプレクサ758は、各センサ720およびA/Dコンバータ754に結合される。回路750は、1線式インターフェース752を介して外部インターフェース(例えば、ESU12などの電気外科用発電機)に結合される。
【0084】
使用中、各センサ720からの出力は、マルチプレクサ758によって、順次または他の所定の配置でサンプリングされる。次に、所与の選択されたセンサ720からのマルチプレクサ758の出力は、A/Dコンバータ754によってデジタル化され、次に、受信したデジタル化センサデータをシリアル化するように構成されている1線式インターフェース752に送られる。コントローラ756は、コントローラ756に格納された命令またはコントローラ756に結合されたメモリに基づいて、回路750の各構成要素を制御するように構成される。センサ720の測定値に関連するデジタル化されたデータは、1線式インターフェース752によってシリアル化されるため、アプリケータ600を発電機ユニット(例えば、ESU12)に結合するケーブルには、1線式インターフェース752に結合された追加の導体が1つだけ必要であり、発電機ユニットには終端回路が1つだけ必要である。回路750が離間器装置700に含まれる場合、離間器700とアプリケータ600との間の一対の電気接点を介して、通信および回路電力が確立され得る。例えば、一実施形態では、電気接点は、離間器700の受容部分702と配置または一体化され、アプリケータ600の遠位部分602上の対応する接点と嵌合するように構成されてもよい。次に、アプリケータ600は、離間器700に電力を供給し、かつアプリケータ600および離間器700に含まれる電気接点を介して離間器700からの通信(例えば、センサデータ)を受信するように構成される。あるいは、離間器回路700は、別個の電源(例えば、電池)に結合され得、RFまたは光無線手段を介して発電機ユニットに直接通信し得る。
【0085】
センサ720からサンプリングされたセンサデータは、アプリケータ600のコントローラもしくはプロセッサおよび/またはアプリケータ600に結合された発電器ユニットのコントローラもしくはプロセッサに供給されてもよいことを理解されたい。上記のように、センサデータからの測定値は、アプリケータ600および/または発電機ユニットのコントローラによって使用されて、患者の組織表面506上の印加ポイント504におけるプラズマビーム502の印加エネルギ密度を判定し得る。判定された印加エネルギ密度に基づいて、アプリケータ600および/または発電機ユニットのコントローラは、プラズマビーム502の電力レベルを(すなわち、電極608に印加される電力を調整することによって)調整して、所定の印加エネルギ密度を維持し得る。
【0086】
上記のように、印加ポイント504における組織表面506の温度のセンサ720から得られた温度測定値は、アプリケータ600および/またはアプリケータ600に結合された発電機ユニットのコントローラによって使用されて、患者の目標組織への印加エネルギ密度をリアルタイムで判定し得る。センサ720から得られた温度測定値は、また、コントローラによって使用されて、アプリケータ600の電極608によるビームプリント503(例えば、いくつかの実施形態では楕円)の形状、組織表面506に対するアプリケータ600の先端部604の移動方向、および組織表面506に対するアプリケータ600の先端部604の移動速度を判定し得る。印加ポイント504における組織表面506上の判定された温度は、目標組織およびプラズマビーム502の他の既知の性質(例えば、印加電力レベル、ガス流量、遠位先端部604と組織表面506との間の固定距離など)と併せて使用されて、目標組織への印加エネルギ密度を所望の生理学的効果を生み出すために有益な範囲内に維持し得る。温度データを取得し、最終的にはアプリケータ600の適切な電力設定を計算して、望ましい生理学的効果を有益な範囲内に維持するために使用され得る、いくつかの物理的関係がある。ただし、この計算集約型のアプローチでは、特にリアルタイムの応答が不可欠であるため、かなりのCPU速度が必要になる。好ましいアプローチは、様々な温度データ/電力設定関係をルックアップテーブルに(例えば、アプリケータ600またはESU12のメモリに)格納して、高速リアルタイム応答を可能にすることである。このルックアップテーブルの内容は、計算集約的なアプローチ、実験データ、またはそれらのいくつかの組み合わせによって、オフラインで事前に決定され得る。
【0087】
例えば、現在の印加エネルギ密度が有益な範囲または所定の値もしくは閾値を下回ったとコントローラによって判定された場合、コントローラは、発電機ユニットに信号を送信して、印加エネルギ密度が増加して有益な範囲内になるまで、プラズマビーム502への印加電力を増加させるように構成される。代替として、現在の印加エネルギ密度が有益な範囲を超えたことがコントローラによって判定された場合、コントローラは、発電機ユニットに信号を送信して、印加エネルギ密度が減少して有益な範囲内になるまで、プラズマビーム502への印加電力を減少させるように構成される。このようにして、コントローラは、印加エネルギ密度をリアルタイムで継続的に判定し、印加エネルギ密度を有益な範囲内に維持するために、判定された印加エネルギ密度に基づいて、必要に応じて、(発電機ユニットにプラズマビーム502の印加電力レベルを増減するように指示することにより)印加エネルギ密度を増減するように構成される。有益な範囲は、異なる処置および目標組織によって異なり得ることを理解されたい。所与の処置および目標組織のための有益な範囲は、予め決定され得、アプリケータ600および/または発電機ユニットのいずれかのメモリに保存され得る。
【0088】
低温プラズマビーム502自体の伝導性によって組織インピーダンスの変化を測定することにより、低温プラズマジェットアプリケータ600で目標組織部位へのエネルギ蓄積の影響を監視するための別のアプローチが使用できる。これには、プラズマビームの電圧と電流の測定が必要である。理想的には、これらの測定は発電機ユニット12で都合よく行うことができる。しかしながら、周囲環境におけるケーブルの位置および場所に応じて、ケーブルワイヤ30および32における可変損失により、プラズマビームの電圧および電流測定はアプリケータ600で直接行う必要があり得る。
【0089】
この原理は、図13Aおよび図13Bに示されており、図13Aは、アプリケータ先端部604で測定された総インピーダンスが、低温プラズマビームインピーダンスと組織インピーダンスの合計であることを示している。図13Bは、等価回路770である。一実施形態では、ビームインピーダンスは、アプリケータ先端部604内に配置された1つまたは複数のセンサ(例えば、電圧および/または電流センサ)によってアプリケータ先端部604で測定または感知されることを理解されたい。別の実施形態では、ビームインピーダンスは、電気外科用発電機(例えば、ESU12)によってアプリケータ600に出力される電流および電圧をサンプリングすることによって、アプリケータ600に結合された電気外科用発電機内のセンサによって測定または感知される。どちらの場合でも、このアプローチの潜在的な問題は、低温プラズマビームインピーダンスが、アプリケータ先端部604と目標組織部位の表面506との間の距離に非常に敏感であることである。この距離が短くなると、プラズマインピーダンスが低下する。しかしながら、本開示の固定距離離間器装置700を使用することによって、アプリケータ600と組織との間の距離も固定されたままであり、これは既知である。印加電力レベル、キャリアガス流量、およびアプリケータ600の遠位先端部604と組織表面506との間の距離における所与の一連の条件について、組織インピーダンスを計算するためにアプリケータ先端部604またはESU12から測定された総インピーダンス(プラズマと組織インピーダンスの合計)から、(例えば、アプリケータ600またはESU12のコントローラ/プロセッサによって)既知のプラズマインピーダンスを差し引くことができる。
【0090】
図14を参照すると、グラフ902および904が本開示に従って示されている。グラフ902および904は、80ワット(グラフ902)および40ワット(グラフ904)を使用した電気外科条件下での組織インピーダンスの典型的な変化を示す。目標組織部位506にエネルギが印加されると、組織は徐々に乾燥し、そのインピーダンスが上昇する。このインピーダンスの変化をアプリケータ600および/または発電機ユニットのコントローラによって使用して、特にアプリケータ600が走査されている間に、一定の生理学的効果を維持するためにビーム502の印加電力レベルを変更したり、固定のアプリケータモードで所望の生理学的エンドポイントに達したときに、エネルギのさらなる印加を停止したりすることができる。例えば、計算されたインピーダンスの合計が増加すると、印加電力は減少する。
【0091】
本開示の別の実施形態において、低温プラズマビームを使用して印加エネルギ下での微妙な組織変化を測定する別の方法は、プラズマビーム502の電圧と電流との間の位相シフトの変化を監視することである。一実施形態では、プラズマビーム502の電圧および電流は、アプリケータ先端部604に配置された1つまたは複数のセンサ(例えば、電圧および/または電流センサ)によってアプリケータ先端部604で測定または感知されることを理解されたい。別の実施形態では、プラズマビーム502の電圧および電流は、電気外科用発電機(例えば、ESU12)によってアプリケータ600に出力される電流および電圧をサンプリングすることによって、アプリケータ600に結合された電気外科用発電機内のセンサによって測定または感知される。いずれの場合でも、プラズマビーム502の電圧と電流との間の位相シフトは、取得された電圧および電流測定値に基づいて、アプリケータ600または電気外科用発電機のコントローラによって計算される。
【0092】
プラズマビーム502の電圧と電流の位相関係は、目標組織部位の等価誘電率に依存する。等価誘電率は、乾燥のレベルと印加部位のバルク組織温度の両方で変化する。所望の生理学的効果についての所定の予想される位相関係との比較を使用して、測定された位相シフトをフィードバック信号として使用して、(例えば、アプリケータ600および/または発電機ユニットのコントローラによって)印加電力を調整することができる。未処置の組織は、固定位相シフトを生成する抵抗性成分と容量性成分の組み合わせを有し、その実際の値はプラズマビームの周波数に依存する。低い周波数のプラズマビームでは容量性成分が支配的であり、高い周波数のプラズマビームでは抵抗性成分が支配的である。これは、容量性リアクタンスが周波数に反比例して変化するためである。周波数が高くなると、容量性リアクタンスは小さくなる。ただし、組織が乾燥するにつれて、組織はますます容量性になる。したがって、所与のプラズマビーム周波数に対して、組織が乾燥するにつれて、位相シフトは増加する。
【0093】
例えば、図15を参照すると、回路800のブロック図が本開示に従って示されている。回路800は、電流測定モジュール802、位相比較器804、電圧測定モジュール806、プラズマビームインピーダンスモジュール808、組織インピーダンスモジュール810、データ取得および分析モジュールまたはプロセッサ812、フィードバック制御モジュール816ならびに低温プラズマ電源814を含む。回路800の構成要素の一部またはすべてが、アプリケータ600、デバイス700および/またはアプリケータ600に結合された発電機ユニット(例えば、ESU12)に配置され得ることを理解されたい。
【0094】
電力は、低温プラズマ電源814(例えば、電気外科用発電機)を介してアプリケータ600に供給され、プラズマビーム502を生成する。電流測定モジュール802(例えば、電流センサ)および電圧測定モジュール(例えば、電圧センサ)806は、低温プラズマ電源814によってアプリケータ600に供給される電力に基づいて、組織部位506に印加されているプラズマビーム502の電流および電圧をそれぞれ測定するように構成される。次に、モジュール806、802の電圧および電流測定値が、位相比較器804に提供される。位相比較器804は、プラズマビーム502の電圧と電流との間の位相シフトを判定し、判定された位相シフトをデータ取得および分析モジュール812に提供するように構成される。位相比較器804から受信した位相シフトデータに基づいて、モジュール812は、プラズマビーム502の印加エネルギ密度の変化を示す位相シフトの所定の変化が、プラズマビーム502の電圧と電流との間に発生したかどうかを判定するように構成される。モジュール812によって位相シフトの所定の変化が発生したと判定された場合、位相シフトの変化を示す信号が、モジュール812によってフィードバック制御816に供給される。モジュール812は、プラズマビーム502の電力レベルを変更する必要がある量、すなわち、所望のレベルの印加エネルギ密度を維持するために電力レベルを増減する必要がある量を判定し得ることを理解されたい。フィードバック制御816に供給される信号は、モジュール812によるこの判定を含み得る。フィードバック制御816に供給される信号に基づいて、低温プラズマ電源814によってアプリケータ600に供給される電力は、目標組織部位に対する所望の生理学的効果を維持するために、所望に応じて印加エネルギ密度を増加または減少するように調整され得る。フィードバック制御モジュール816は、特定のベースライン電力設定およびガス流量が与えられると、特定の位相シフト値を印加電力レベルの変化に変換するルックアップテーブルを含み得る。例えば、低電力設定での小さな位相シフトは、印加電力のわずかな調整を必要とするのみであり得るが、高い印加電力設定での同じ位相シフトは、所望の生理学的効果を維持するためにはるかに大きな調整を必要とし得る。
【0095】
モジュール808および810は、それぞれプラズマビームと組織の実際の電気インピーダンス特性を表し、図13Bに相当する。組織インピーダンス810の位相シフトは、プラズマビームインピーダンス808を介して測定されるため、位相比較器804によって測定される総位相シフトは、プラズマビームインピーダンス808および組織インピーダンス810によって導入される位相シフトの合計になる。しかしながら、プラズマビーム502は、一般的に、アプリケータ600と目標組織部位504との間に連続的な導電性プラズマチャネルが存在する直接放電付属ビームモードで動作する。この条件下で、プラズマビームインピーダンス808は本質的に抵抗性であり、それ自体は追加の位相シフトをほとんどまたはまったく導入しない。したがって、位相比較器804によって測定される位相シフトは、主に組織インピーダンス810のものである。一方、プラズマビーム502が直接接触モードで動作せず、抵抗性成分と容量性成分の両方を示す状況があり得る。これにより、組織インピーダンス810の位相シフトに加えて、プラズマビームインピーダンス808からの位相シフトが導入される。非接触モードでプラズマビームインピーダンス808により導入される位相シフトは実験的に決定され、次にデータ取得および分析812によって保存され、位相比較器804によって提供される測定値から差し引かれる。非接触プラズマビームによって導入される追加の位相シフトは、電力レベル、ガス流量、およびアプリケータから組織表面までの距離など、所与の一連の動作条件では固定されたままである。これらの条件が固定されたままである場合、プラズマビームの追加の位相シフトは、乾燥組織の可変位相シフトに対する固定オフセットと見なすことができる。
【0096】
別の実施形態では、電気組織インピーダンスは、直接接触電極またはインピーダンスセンサによって測定することができる。図16は、離間器900の基部906上に置かれるか配置され得、皮膚と直接接触する電極920(例えば、電極A、B、C、D、E、F、G、H)のアレイを図示する。離間器900は、離間器700と同じように構成される(例えば、受容部分、ポスト、および基部を含む)ことを理解されたい。それに加えて、図16は、矢印Fによって示されるように、デバイスが右に走査されるときの典型的なプラズマビームフットプリント903および処置された組織の関連する軌跡905を含む。電気組織インピーダンスは、電極920の特定のペアを選択することによって判定される。例えば、図16の電極AおよびEを選択することにより、この経路に沿った他の組織に加えて、ビームフットプリント903の真下の電気インピーダンスが調べられ得る。電極CおよびGを選択すると、ビームフットプリント903の下の組織と、処置された組織の軌跡905の両方が調べられる。電極の組み合わせBとC、CとD、またはBとDでは、ビームの経路の前にある未処置の組織を調べることができる。電極HおよびFは、ビームが通過した後の処置された組織のみを調べることができる。このようにして、アプリケータの方向および向きは、電極920と通信するアプリケータまたは電気外科用発電機内のコントローラによって判定され得る。アプリケータの速度は、また、組織の電気インピーダンスの変化と印加エネルギ密度との間の以前に決定された関係(例えば、実験的、計算的または両方)を使用して、コントローラによって導出され得る。印加エネルギ密度は、印加電力レベルおよび滞留時間、すなわち、アプリケータ速度に依存するため、電気インピーダンスおよび印加電力レベルの変化を知ると、アプリケータ速度は、以下に説明するように、例えば、コントローラまたは測定システム950(図17に示す)によって判定され得る。処置された組織と未処置の組織との間の電気インピーダンスの変化は、アプリケータ600またはESU12のコントローラによって使用されて、生理学的に有益な、不十分なまたは有害な効果に関連付けられ、印加電力レベルが有益な効果の範囲内に留まるように修正するためにフィードバック信号を供給する。
【0097】
組織の電気インピーダンス測定システム950のブロック図が図17に示されている。皮膚センサアレイ内の、例えば、電極アレイ920からの一対の電極が、マルチプレクサ958によって選択される。励起発振器960からのプローブ信号は、マルチプレクサ958を介して電極の選択されたペアに印加され、一方で、それぞれ電流測定モジュール962および電圧測定モジュール964を介して、電極の選択されたペアの電流測定および電圧測定の両方を行う。プローブ信号は、通常、数百ミリボルト程度である。周波数は、数kHzから数MHzの範囲であり得る。特定の励起電圧振幅および周波数は、コントローラ956によって選択され、変化する条件下でプローブ信号を最適化するように調整され得る。例えば、乾燥した皮膚は、乾燥度の高い組織と同様に、より高い振幅、より高い周波数のプローブ信号を必要とする。生理食塩水が皮膚に塗布される場合、より低い振幅、より低い周波数が好ましいであろう。
【0098】
電圧および電流測定値は、データ取得モジュール966によってデジタル化され、コントローラ956に供給される。コントローラ956は、電圧と電流の比として組織インピーダンスを計算する。ピーク電圧の相対タイミングおよび/または電圧および電流測定のゼロ交差に注目することにより、2つの測定の間の位相シフトは、コントローラ956によって判定することができる。インピーダンス変化および/または生理学的効果を伴う位相シフトの間の以前に決定された関係を使用して、コントローラ956によってフィードバック信号が生成される。フィードバック信号は、発電機によって生成されてアプリケータの電極に印加される印加電力レベルを調整するために使用される。例えば、コントローラ956によって判定されたインピーダンス変化が小さすぎて、生理学的に不十分な効果を示している場合、コントローラ956は、フィードバック信号を発電機に送信して、アプリケータ600への印加電力レベルを増加させる。コントローラ956によって判定されたインピーダンス変化が大きすぎて、生理学的損傷効果を示している場合、コントローラ956は、フィードバック信号を発電機に送信して、アプリケータ600への印加電力レベルを低減させる。回路950の構成要素の一部またはすべてが、アプリケータ600、デバイス700および/またはアプリケータ600に結合された発電機ユニット(例えば、ESU12)内に配置され得ることを理解されたい。
【0099】
音響インピーダンスは、組織に印加されたプラズマエネルギの生理学的効果の程度を評価するために使用できる別の測定形式である。組織の収縮が生じることがあり、組織密度、音響インピーダンスおよび音の伝播速度が増加する。この最後のパラメータ、すなわち組織内の音の伝播速度が最も簡単に測定され、生理学的効果の程度の代表として使用される。
【0100】
図18は、離間器1000の基部1006の周りに配置された音響変換器1020の配置を含む離間器装置1000を図示している。離間器1000の基部1006が組織表面と接触しているときに、音響変換器1020は、組織表面と直接接触している。離間器1000は、上記の離間器700と同じように構成される(例えば、受容部分、ポスト、および基部を含む)ことを理解されたい。図18には、例えば矢印Gで示すようなビームの運動方向で、アプリケータが組織表面を横切って走査されるときの、代表的なプラズマビームフットプリント1003および処置された組織の関連する軌跡1005も示されている。電気インパルスまたは振動が所与の変換器1020に印加され、変換器1020にアコースティックエミッションを発生させる。次に、第2の選択された変換器1020は、このアコースティックエミッションを受け取り、アコースティックエミッションを電気信号に変換して戻し、それがその後増幅される。これらの変換器間の距離と、これらの間のアコースティックエミッションの飛行時間(タイムオブフライト)を知ると、その経路に沿った音響速度をアプリケータ600またはESU12のコントローラによって計算することができる。様々なエミッタおよびレシーバ変換器の組み合わせを選択することにより、それらの間の組織を通る様々な経路を音響的に特徴付けることができる。例えば、図18の変換器AおよびEを選択することにより、この経路に沿った他の組織に加えて、ビームフットプリント1003の真下の音響インピーダンスの特徴が現れる。変換器CおよびGを選択すると、ビームフットプリント1003の下の組織と、処置された組織の軌跡1005の両方の特徴が現れる。変換器の組み合わせBとC、CとD、またはBとDは、ビームの経路の前にある未処置の組織の特徴が現れる。変換器HおよびFは、ビームが通過した後の処置された組織のみを調べることができる。上記の電気インピーダンスアプローチと同様に、現在の音響変換器のアプローチでは、アプリケータの方向および向きは、音響変換器1020を介して取得された音響インピーダンスデータを使用して、コントローラによって判定され得る。アプリケータの速度はまた、組織の音響インピーダンスの変化と印加エネルギ密度との間の以前に決定された関係(例えば、実験的、計算的、または両方)を使用して、コントローラによって導出され得る。印加エネルギ密度は、印加電力レベルおよび滞留時間、したがってアプリケータ速度に依存するため、音響インピーダンスおよび印加電力レベルの変化を知ると、アプリケータ速度を判定することができる。処置された組織と未処置の組織との間の音響インピーダンスの変化は、コントローラによって使用されて、生理学的に有益な、不十分なまたは有害な効果に関連付けられ、印加電力レベルが有益な効果の範囲内に留まるように修正するために、発電機またはESU12にフィードバック信号を供給する。
【0101】
飛行時間音響特性に加えて、様々な音響変換器ペアに沿った示差的な音響吸収をコントローラにより使用して、その経路に沿った組織の生理学的状態を評価できる。処置された組織は、処置の程度に応じて、未処置の組織とは異なる音響吸収特性を有する場合がある。音響吸収がより多い経路に沿って送信された音響信号は、吸収がより少ない経路に沿って送信された信号に比べて、受信変換器で弱く見える。次に、この異なる程度の音響信号の弱化をコントローラで使用して、未処置の組織に対する処置された組織の生理学的状態を判定し、ESU12に供給されるフィードバック信号を生成して、アプリケータ600への発電機の印加電力レベルを調整することができる。
【0102】
離間器1000と共に使用するための音響インピーダンス測定システム1050のブロック図が、本開示に従って図19に示されている。マルチプレクサ1058は、コントローラ1056の指示の下で、変換器アレイ1020から所与のエミッタおよびレシーバ変換器ペアを選択し、例えば、A~H(図18に示す)を変換する。次に、コントローラ1056は、送信発振器1060を起動して、ペアの選択されたエミッタ変換器に信号を送信すると同時に、飛行時間測定モジュール1062も起動して、本質的にタイマを開始する。ペアとして選択されたレシーバ変換器がアコースティックエミッションを拾うと、この信号は、レシーバ増幅器1064によって増幅された後、飛行時間タイマを停止するために使用される。次に、飛行時間値は、飛行時間測定モジュール1062のためにコントローラ1056に送信され、コントローラ1056は、以前に決定された関係(例えば、ルックアップテーブルに格納されている)を使用して、フィードバック信号1066を生成する。フィードバック信号1066は、発電機またはESU12に供給され、発電機は、必要に応じて印加電力レベルを調整する。回路1050の構成要素の一部またはすべてが、アプリケータ600、デバイス700および/またはアプリケータ600に結合された発電機ユニット(例えば、ESU12)内に配置され得ることを理解されたい。
【0103】
離間器装置1000と共に使用して、示差的な音響吸収を測定するためのシステム1150のブロック図が、本開示に従って図20に示されている。マルチプレクサ1158は、コントローラ1156の指示の下で、変換器アレイ1120から所与のエミッタおよびレシーバ変換器ペアを選択する。次に、コントローラ1156は、送信発振器1160を起動して、ペアとして選択されたエミッタ変換器に信号を送信する。ペアとして選択されたレシーバ変換器は、その出力がレシーバ増幅器1164によって増幅され、次に、A/Dコンバータ1162によってデジタル化され、コントローラ1156に送られる。コントローラ1156は、様々な変換器ペアを選択し、選択された変換器ペア間の経路の音響吸収を、その経路に沿って受信された音響信号の振幅(すなわち、強度)を比較することによって特徴付ける。処置された組織および未処置の組織の経路に沿った示差的な音響吸収に基づいて、フィードバック信号1166が生成され、コントローラ1156によって発電機またはESU12に供給され、発電機によって生成される印加電力レベルが調整される。回路1150の構成要素の一部またはすべてが、アプリケータ600、デバイス700および/またはアプリケータ600に結合された発電機ユニット(例えば、ESU12)に配置され得ることを理解されたい。
【0104】
以下でより詳細に説明するように、本開示の他の実施形態では、生成されたプラズマビームおよび/または組織表面に関連する放出物(例えば、アコースティックエミッション、光学スペクトル)を収集するように構成された放出物収集器(例えば、音響管、光ファイバなど)を有するアプリケータが提供され得る。収集された放出物は、コントローラまたはプロセッサ(例えば、アプリケータまたはアプリケータに結合された電気外科ユニットに配置されている)によって使用され、電気外科用発電機にフィードバック信号を出力して、収集された放出物に基づいてプラズマビームの印加電力レベルを調整する。
【0105】
例えば、やや異なるアプローチでは、プラズマビーム自体のアコースティックエミッションを使用して、プラズマビーム下の組織の生理学的状態を評価することができる。これらのアコースティックエミッションの周波数は、フィードバック信号を生成して、発電機の印加電力レベル、ひいては、プラズマビームの印加電力レベルを調整するために使用され得る。
【0106】
プラズマビームの電力設定、ガス流量および印加面からのアプリケータ先端部の距離における様々な条件下で、プラズマビームによってアコースティックエミッションが生成されることが観察されている。ある特定の条件下では、このアコースティックエミッションは可聴である。さらに、アプリケータ先端部から印加面までの距離が短くなると、アコースティックエミッションの周波数は上昇する。アプリケータの距離、電力設定およびガス流量が一定に保たれている場合、処置中の組織からの気化水や他の気化組織成分を追加すると、このプラズマアコースティックエミッションの周波数を変えることができる。この周波数の変化は、処置中の組織の生理学的状態を監視するために使用され得、また、コントローラによって生成されるフィードバック信号を生成して、有益な生理学的効果を維持するために発電機の電力設定を調整するためにも使用され得る。
【0107】
プラズマビームのアコースティックエミッションは、プラズマ放電によって生成される流れ抵抗効果から発生する可能性がある。ガスのみが流れ、プラズマが存在しない場合、プラズマアプリケータの背圧は低くなることが観察されている。プラズマビームがアクティブになると、電力設定に応じて、背圧が数パーセント増加する可能性がある。プラズマの電力設定が高いほど、背圧が大きくなる。アプリケータノズルから流れるガスの塊(パーセル)は、この背圧効果によって、特に目標印加面の近くで、プラズマビームの中心に閉じ込められる可能性がある。通常、アプリケータノズルから流れるガスは、プラズマビームと短時間だけ相互作用した後、印加部位から流出する。プラズマビームを流れるこのガスは、ノズルと目標表面との間を通過する時間中にプラズマ加熱を短時間だけ受ける。しかしながら、一部のガスがプラズマの拘束によって閉じ込められると、このガス膨張圧力がプラズマによる拘束の背圧以上になるまで、ガスは、加熱および膨張し続ける。この時点で、閉じ込められたガスの塊(パーセル)がプラズマ拘束壁を通り抜け、その過程でアコースティックエミッションを生成する。この背圧が緩和された後、プロセスは、ガスの新しい塊(パーセル)で再び始まり、拘束、圧力上昇および排出の同じサイクルを経る。このプロセスは、緩和発振器と呼ばれる。この繰り返しサイクルの周期性により、プラズマによる拘束の強度(すなわち、印加電力設定)とガス流量(すなわち、閉じ込められたガスパーセルの膨張率)に依存するプラズマアコースティックエミッション周波数が発生する。アプリケータノズルから目標表面までの距離を短くすると、プラズマビームのインピーダンスも減少し、閉じ込められたガスがより速く加熱されることにより、プラズマアコースティックエミッション周波数も上昇する。しかしながら、アプリケータの距離、印加電力設定、およびガス流量が一定に保たれている場合、プラズマアコースティックエミッション周波数は、固定周期の緩和振動プロセスにより一定である。
【0108】
閉じ込められたガスパーセルに追加のガス源が追加されると、膨張率が増加し(すなわち、膨張するガスが増える)、緩和期間が短縮されるため、プラズマアコースティックエミッション周波数は上昇する。プラズマビームが組織表面と相互作用すると、水蒸気、気化した組織成分など、組織の揮発性成分が放出される。これらの揮発成分は、閉じ込められたガスパーセルへの追加のガス源として機能し、プラズマアコースティックエミッション周波数を上昇させる。周波数上昇の程度は、揮発成分の導入率に比例する。このようにして、プラズマアコースティックエミッション周波数の変化は、コントローラによって生理学的効果の指標として使用され、コントローラによって使用されてフィードバック信号を導出し、有益な効果を維持するために発電機の印加電力設定を調整し得る。
【0109】
図21は、本開示に従って、プラズマのアコースティックエミッションを監視し、フィードバック制御信号を導出するために使用することができる装置1200を示す。図21の装置では、ノズルまたは遠位先端部1201、音響変換器1202および音響管1204を含むアプリケータ1206が提供される。音響変換器1202は、音響管1204を介して受け取ったアコースティックエミッションのプラズマアコースティックエミッション周波数を電気信号に変換し、通常ミリボルト程度の比較的低レベルの電気出力を生成するように構成される。通常数百から数千ボルトで動作するプラズマビームから放射された放出物の干渉を最小限に抑えるために、アプリケータ1206に結合された非導電性音響管1204を使用して、プラズマのアコースティックエミッションをプラズマビーム1208から、遠隔に位置する(すなわち、プラズマビーム1208から離れた)音響変換器1202に伝える。音響管1204および変換器1202は、ハウジングの外部部分に配置および/または一体化され得る。管1204の近位端部は、アコースティックエミッションを受けるための開放端部を有し、管の遠位端部は音響変換器1002に結合される。変換器1202は、アプリケータ1206または独立した電源(例えば、電池、外部電源など)によって電力を供給されてもよい。音響変換器1202からの出力は、(例えば、増幅器により)増幅され、(例えば、A/Dコンバータにより)デジタル化され、その後、発電機に供給するフィードバック信号を生成するためにコントローラによって使用される。増幅器、A/Dコンバータおよびコントローラは、音響変換器1202と同じ場所に配置され得、アプリケータ1206を発電機ユニットに接続するケーブルに追加される必要がある追加のワイヤの数を最小限に抑える。
【0110】
別の実施形態では、プラズマビームからの発光スペクトルがコントローラによって使用されて、フィードバック信号を生成することができ、フィードバック信号によって発電機の印加電力レベルを調整し、ひいては、プラズマビームの印加電力レベルを調整して、生理学的効果を有益な範囲内に維持する。プラズマビームが目標組織と相互作用し、揮発性組織成分が放出されると、一部の揮発性組織成分がプラズマビームと相互作用してイオン化される。電子がこれらのイオンと再結合すると、特徴的な光学スペクトルが生成される。場合によっては、所与のスペクトル成分が存在するだけで、印加エネルギ密度が高すぎるという信号として機能するのに十分であろう。他の場合では、揮発性組織成分由来の発光スペクトルの強度を使用して、フィードバック信号を導出し、発電機の印加電力レベルを制御することができる。例えば、これらの発光スペクトルが弱すぎる場合、印加電力レベルは増加され、逆も同様である。
【0111】
ヘリウムやアルゴンなどのキャリアガスの輝線、またはプラズマビームと周囲空気との相互作用によって生成される輝線と混同されないように、選択された発光スペクトル線を選択することが重要である。これには酸素種、窒素種、オキシ窒素種、ヒドロキシルラジカルなどが含まれる。
【0112】
図22は、本開示による、アプリケータノズル先端部1302および光ファイバ1304を有するアプリケータ1306を含む装置1300を示している。光ファイバ1304は、先端部または端部1307を含んでいる。先端部または端部1307は、アプリケータノズル先端部1302の近傍から発光スペクトルを収集し、かつアプリケータ1306またはアプリケータ1306に結合された発電機もしくはESU12内の光信号プロセッサ1305に発光スペクトルを提供するために使用される。プラズマビーム1308の周りのガス流の乱流効果により、ノズル1302の外周の周りにおけるファイバ1304の光ファイバ先端部1307の特定の場所は、組織由来の発光スペクトルがプラズマビームのフットプリントに均一に分布する傾向があるため、重要ではない。しかしながら、ファイバ1304の光ファイバ先端部1307をアプリケータノズル1302の出口の近くに置くことは、ファイバ1304の先端部1307の光収集能力を最大にするために重要である。図22の光ファイバ1304は、アプリケータ1306の外部(例えば、アプリケータ1306のハウジングまたはハンドルの外側)に位置するように示されているが、いくつかの実施形態では、ファイバ1304は、アプリケータアセンブリに組み込まれる。光ファイバ1304は、非導電性であるため、アプリケータ1306内に存在するプラズマビームまたは高電圧構成要素と相互作用せず、偶発的な電気ピックアップの干渉を受けない。一実施形態では、光ファイバ1304は、アプリケータ1306から発電機ユニットまで延出し、発電機ユニットからアプリケータ1306に電力およびガス流を供給するケーブルに埋め込まれ得る。
【0113】
一実施形態では、光ファイバ1304は、図23に示す光インターフェース1400を備えた発生器ユニットで終端する。一実施形態では、光インターフェース1400は、光学スペクトルを含む光信号をファイバ1304から取得し、それをビームスプリッタ1402に通す。ビームスプリッタ1402は、それを2つの経路1404、1406に分割する。一方の経路1404は、基準信号用に使用される。バンドパスフィルタ1408は、スプリッタ1402から受信した光信号をフィルタリングし、光検出器1410に渡されるキャリアガス(図23では例としてヘリウムが使用されている)に関連する輝線または構成要素の少なくとも1つを選択する。次に、光検出器1410は、この光学基準信号(キャリアガスの選択された輝線を有するフィルタリングされた信号を含む)を電気基準信号に変換する。ビームスプリッタ1402からの他の光路1406は、組織由来の放射成分の少なくとも1つを監視し、光検出器1414に送るように選択された第2のバンドパスフィルタ1412を通過する。経路1406の第2の光検出器1414は、この光信号(組織由来の輝線または成分を有するフィルタリングされた信号を含む)を電気信号に変換する。検出器1410によって生成された電気信号の各々は、インターフェース1400のコントローラまたはプロセッサ(例えば、プロセッサ1305など)によって使用されて、印加電力レベルを調整するためのフィードバック信号を生成する。場合によっては、プラズマビームの変動が組織由来の発光スペクトルに変動を引き起こすことがあり、プラズマビームに対する生理学的応答の変化と混同されることがある。キャリアガス放出強度および組織由来放出強度の両方を同時に監視することにより、プラズマビームの変動を、光学インターフェース1400のコントローラまたはプロセッサ(例えば、プロセッサ1305など)によって補償することができる。
【0114】
単に組織由来の輝線の出現が、印加電力レベルを低減するのに十分である場合、ビームスプリッタ1402、基準バンドパスフィルタ1408および関連する光検出器1410は省かれてもよい。組織由来の放射バンドパスフィルタ1412およびその光検出器1414のみが必要である。
【0115】
図23には示されていないものは、光検出器の電気出力をデジタル化するためのA/Dコンバータおよび組織由来の光放射の補償された強度に基づいて、発電機の印加電力レベルを調整するためのフィードバック信号を生成するコントローラまたはプロセッサである。コントローラまたはプロセッサは、アプリケータ1300の中もしくは上または発電機内に配置され得るプロセッサ1305であり得る。
【0116】
光インターフェース1400は、電気外科用発電機に配置されるものとして説明されている。他の実施形態では、光インターフェース1400の構成要素の一部またはすべては、アプリケータ1300またはアプリケータ1300に結合されたデバイスに配置され得る。
【0117】
組織由来の光放射の例を図24Aおよび図24Bに示す。アプリケータノズル先端部が試験組織(ニワトリ)の5mm上に置かれ、20ワットの印加電力レベルに設定された、毎分4Lで流れるヘリウムを使用するプラズマビームは、毎秒4mmの一定速度で組織表面全体を走査する。観察された発光スペクトルの一部が図24Aに示されている。図24Aは、約587.5ナノメートルを中心とするヘリウムの強い輝線のみを示している。アプリケータの走査速度が毎秒1mmに減少し、印加エネルギ密度が4倍に増加すると、図24Bに示すように、新しい組織由来の発光スペクトルの特徴が現れる。これらの新しい特徴は、それぞれ約589ナノメートルと589.6ナノメートルのいわゆるナトリウム「D」線である。アプリケータの走査速度を毎秒4mmの速度に戻し、印加エネルギ密度を以前の値に下げると、これらの新しい特徴は消える。塩化ナトリウム(塩)の存在は、ほとんどの組織タイプで遍在しているため、組織由来の発光スペクトルの特徴としてナトリウム「D」線を使用すると有用である。
【0118】
上記の実施形態では、プラズマ放電によって生成されたノイズは、離間器700、アプリケータ600またはESU発電機12において、個別に、または様々な組み合わせのいずれかで除去することができる。さらに、以下で説明する測定タイミング期間の選択は、ノイズフィルタリングを提供し得、単独で、または離間器700、アプリケータ600、もしくはESU発電機12でのフィルタリングと組み合わせて、やはり個別に、または様々な組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0119】
上記のように、アプリケータ600によるエネルギ印加プロセスは、処置中に印加エネルギ密度をモニタリングする際に、離間器装置700および/またはアプリケータ600によって得られる測定値にノイズを導入し得る。印加エネルギ密度に関連する測定値(例えば、組織表面506の温度、ビーム502および目標組織の電気インピーダンスなど)を収集する際に、アプリケータ600またはアプリケータ600に結合された発電機ユニットのいずれかに配置されたコントローラは、得られた測定値を受け取り、エネルギ印加プロセスによって生成される測定値内のノイズをフィルタリングして取り除くように構成されている。例えば、コントローラは、ビーム502のパルス間期間中に得られた電気インピーダンスまたは音響測定値のみを使用し、パルス間期間外で得られた測定値を無視するように構成されてもよい。コントローラは、また、信号からノイズを除去するための他のフィルタリング技術で構成されてもよく、そのような技術は、本開示の範囲内であることを理解されたい。
【0120】
図示および説明される様々な特徴は交換可能であり、すなわち、一実施形態に示される特徴は、別の実施形態に組み込まれ得ることを理解されたい。
【0121】
本開示を、ある特定の好ましい実施形態を参照して示し説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更が行われ得ることを当業者は理解するであろう。
【0122】
さらに、前述の本文では、多数の実施形態の詳細な説明を記載しているが、本発明の法的範囲は、本特許の最後に記載されている特許請求の範囲の言葉によって定義されることを理解されたい。詳細な説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、すべての可能な実施形態を説明することは、不可能ではないにしても非現実的であるため、すべての可能な実施形態を説明しているわけではない。現在の技術または本特許の出願日以降に開発された技術のいずれかを使用して、数多くの代替実施形態を実装することができ、これらは依然として本特許請求の範囲に含まれる。
【0123】
また、本特許で「ここで使用されているように、用語「 」は・・・を意味するように本明細書によって定義されている」または同様の文を使用して用語が明示的に定義されていない限り、明示的または黙示的のいずれかで、明白なまたは通常の意味を超えてその用語の意味を限定する意図はなく、そのような用語は、本特許の任意のセクション(特許請求の範囲の言語以外)で行われた説明に基づいて範囲内に限定されると解釈されるべきではないことも理解されたい。本特許の末尾にある特許請求の範囲に記載されている任意の用語が、本特許で単一の意味と一致する方法で言及されている限り、それは読者を混乱させないように明確にするためにのみ行われ、そのような特許請求の範囲の用語は、含意またはその他によって、その単一の意味に限定されることを意図していない。最後に、クレーム要素がいかなる構造の記載もなく「手段」という言葉と機能を記載することによって定義されていない限り、合衆国法典第35巻、第112条、第6段落の適用に基づいて任意のクレーム要素の範囲を解釈することは意図されていない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B