(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】消臭ポットおよび消臭方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/013 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
A61L9/013
(21)【出願番号】P 2021128040
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2022-02-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2021年1月15日より(株)エトワール海渡川崎物流センター等において本願発明の消臭ポット等を提供、2021年6月19日より日本テレビ『ズームイン!!サタデー』等において本願発明の消臭ポットを公開、2021年1月15日よりウェブサイトYoutube等において本願発明の消臭ポットを公開
(73)【特許権者】
【識別番号】591203831
【氏名又は名称】株式会社マーナ
(74)【代理人】
【識別番号】100149711
【氏名又は名称】服部 耕市
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 有里子
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-117373(JP,U)
【文献】特開平07-311878(JP,A)
【文献】特開2004-208891(JP,A)
【文献】特開2011-188888(JP,A)
【文献】登録実用新案第3092074(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L9/00-9/22
B65D1/00-25/56
B65F1/00-1/16
A47J9/00-47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリップ後のコーヒー残渣をドリップに使用したフィルターごと収容
する消臭ポットであって、
前記コーヒー残渣を前記フィルターごと収容する容器本体と、前記容器本体に着脱可能な蓋と、を備え、
前記蓋には、前記容器本体の内部と外部とで空気の流通を可能にし、前記コーヒー残渣に含まれる消臭成分を外部に発散させる開口が設けられており、
前記開口は、前記消臭ポットが倒れたときであっても前記コーヒー残渣入りの前記フィルターの通り抜けを阻止する大きさであって、且つ、前記蓋が嵌め込まれる前記容器本体の上端面の内周よりも小さい孔である
ことを特徴とする消臭ポット。
【請求項2】
前記容器本体は焼き締めの陶磁器又は珪藻土の焼成体によって形成され
ていることを特徴とする請求項1記載の消臭ポット。
【請求項3】
前記蓋の底面には、前記容器本体の内周面に嵌め込まれる凸部が設けられており、前記凸部は弾性材料で形成されていることを特徴とする請求項2記載の消臭ポット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の消臭ポットに、ドリップ後のコーヒー残渣をドリップに使用したフィルターごと収容し、前記コーヒー残渣を消臭剤として使用することを特徴とする消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家庭内等でドリップコーヒーを淹れたときに生じるコーヒー残渣を消臭剤として有効活用できる消臭ポットおよび消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
職場内や家庭内でドリップコーヒーを淹れた後のコーヒー残渣には消臭効果があることが知られており、従来、コーヒー残渣を利用したリサイクル脱臭器がある(特許文献1)。このリサイクル脱臭器を
図8に示す。リサイクル脱臭器101は、水受部102aを有する受部102と、この受部102内の四隅に設けられた支持部102bに支持される網部103と、この網部103を配した受部102の開口部を閉塞自在とする上蓋104を備えている。上蓋104の四隅にはフック106が設けられている。
【0003】
ドリップ直後のコーヒー残渣105はコーヒー液を多く含んでいるので、ドリップ後、しばらく放置されてある程度コーヒー液を落下させた後、コーヒードリップに使用したペーパーフィルターから取り出されて網部103の上に載せられて均一に広げられる。その後、網部103に上蓋104を被せ、フック106を例えば冷蔵庫内の棚に引っ掛けることで、冷蔵庫内にリサイクル脱臭器101が配置される。冷蔵庫内は網部103上のコーヒー残渣105によって脱臭される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のリサイクル脱臭器101では、コーヒー残渣105を脱臭剤として再利用するためにはドリップに使用したペーパーフィルターからコーヒー残渣105を取り出して網部103上に広げる必要があり、その作業に手間がかかっていた。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、ドリップコーヒーを淹れたときに生じるコーヒー残渣を手間をかけずに消臭剤として再利用できる消臭ポットおよび消臭方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の消臭ポットは、ドリップ後のコーヒー残渣をドリップに使用したフィルターごと収容するものであって、コーヒー残渣をフィルターごと収容する容器本体と、容器本体に着脱可能な蓋と、を備え、蓋には、容器本体の内部と外部とで空気の流通を可能にし、コーヒー残渣に含まれる消臭成分を外部に発散させる開口が設けられており、開口は、消臭ポットが倒れたときであってもコーヒー残渣入りのフィルターの通り抜けを阻止する大きさであって、且つ、蓋が嵌め込まれる容器本体の上端面の内周よりも小さい孔とされている。したがって、例えば、家庭内でハンドドリップによりコーヒーを淹れた後、コーヒードリッパーからコーヒー残渣をフィルターごと取り出して(持ち上げて)消臭ポットに移すことで、コーヒー残渣をそのまま消臭剤として使用することができる。
【0008】
また、本発明の消臭ポットは、容器本体を焼き締めの陶磁器又は珪藻土の焼成体によって形成しても良い。したがって、容器本体が多孔質になり、コーヒー残渣及びフィルターに含まれるコーヒー液を吸収してコーヒー残渣及びフィルターの乾燥を促進することができる。コーヒー残渣に含まれる消臭成分は主に蓋の開口から発散する。
【0009】
また、本発明の消臭ポットは、蓋の底面に容器本体の内周面に嵌め込まれる凸部が設けられると共に、凸部は弾性材料で形成されていても良い。したがって、容器本体に蓋を被せると、凸部が容器本体の内周面に嵌め込まれる。このとき、凸部が弾性材料で形成されているので、凸部が容器本体の内周面の内側に圧入されることになり、蓋の外れがしっかりと防止されると共に、消臭ポットが倒れた場合の容器本体と蓋との間からのコーヒー液の漏れが防止される。
【0010】
また、本発明の消臭ポットは、蓋の開口が、コーヒー残渣入りのフィルターの通り抜けを阻止する大きさの孔でも良い。したがって、消臭ポットが倒れた場合に容器本体からフィルターが出てしまうのを防止する。
【0011】
さらに、本発明の消臭方法は、本発明の消臭ポットに、ドリップ後のコーヒー残渣をドリップに使用したフィルターごと収容し、コーヒー残渣を消臭剤として使用するものである。したがって、例えば、家庭内でハンドドリップによりコーヒーを淹れた後、コーヒードリッパーからコーヒー残渣をフィルターごと取り出して(持ち上げて)消臭ポットに移すことで、コーヒー残渣をそのまま消臭剤として使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハンドドリップでコーヒーを淹れた後に生じるコーヒー残渣を消臭剤として有効活用することができる。ハンドドリップ後のコーヒー残渣をフィルターごとそのまま消臭ポットに移せば良いので、例えば、コーヒー残渣を作業台の上に広げて乾燥させてから消臭剤として使用するような手間のかかる作業が不要になり、大変便利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の消臭ポットの実施形態の一例を示す断面図である。
【
図3】
図2の消臭ポットの容器本体を示す斜視図である。
【
図4】
図2の消臭ポットの蓋を示し、底面を上にした状態の斜視図である。
【
図5】本発明の消臭方法を示し、ドリップ後のコーヒー残渣をフィルターごと容器本体に移す様子を説明するための図である。
【
図7】本発明の消臭ポットの他の実施形態を示し、別のタイプのフィルターを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る消臭ポットの実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
図1~
図4に、本発明に係る消臭ポットを示す。消臭ポット1は、ドリップ後のコーヒー残渣2をドリップに使用したフィルター3ごと収容し、コーヒー残渣2を消臭剤として使用することを可能にするものである。消臭ポット1は、コーヒー残渣2をフィルター3ごと収容する容器本体4と、容器本体4に着脱可能な蓋5とを備えている。
【0015】
容器本体4は多孔質の容器、すなわち多孔質材料で形成された容器である。本実施形態では、容器本体4を焼き締めの陶磁器によって形成することで、本体容器4を多孔質にしている。容器本体4を多孔質にすることで、ドリップ後のコーヒー残渣2及びフィルター3から染み出たコーヒー液を吸収してコーヒー残渣2及びフィルター3の乾燥を促進させることができ、コーヒー残渣2の消臭効果が高まるまでの時間を短縮することができる。すなわち、コーヒー残渣2及びフィルター3を完全に乾燥させなくても使用可能になる。また、多孔質の容器本体4はいわゆる呼吸(コーヒー液やコーヒー液から放出された成分を吸収したり、吸収した成分を放出したりする)を行い、消臭効果を高めることができる。
【0016】
容器本体4は例えば底を有する円筒型のカップ形状を成しており、ドリップ後のコーヒー残渣2をフィルター3ごと収容できる大きさとなっている。本実施形態では、容器本体4の大きさ(幅方向のサイズ)を、容器本体4に収容されたフィルター3が容器本体4の内周面4aに接触する大きさにしており、内周面4aでもコーヒー液を吸収してコーヒー残渣2及びフィルター3の乾燥をより促進させることができる。ただし、容器本体4の大きさ(幅方向のサイズ)を、容器本体4に収容されたフィルター3が容器本体4の内周面4aに接触しない大きさにしても良い。また、本実施形態では、容器本体4の大きさ(高さ方向のサイズ)を、容器本体4に収容されたフィルター3の上部が容器本体4から若干はみ出す大きさにしているが、はみ出さない大きさにしても良い。
【0017】
蓋5は容器本体4の上端面4bとほぼ同径の円板状をなしており、例えばシリコーンゴム等のゴム、樹脂、プラスチック等の弾性材料によって形成されている。蓋5には、容器本体4の内部と外部とで空気の流通を可能とする開口5aが設けられている。開口5aは、コーヒー残渣2入りのフィルター3が通り抜けることができない大きさの孔、換言すると、コーヒー残渣2入りのフィルター3の通り抜けを阻止する大きさの孔であり、消臭ポット1が倒れても容器本体4からフィルター3が出ないようになっている。蓋5に開口5aを設けることで、コーヒー残渣2及びフィルター3を収容する容器本体4の内部を外部に開放することができ、コーヒー残渣2に含まれる成分を外部に発散させることができる。
【0018】
蓋5の底面5cには、容器本体4の内周面4aに嵌め込まれる凸部5bが設けられている。本実施形態では、凸部5bは蓋5の本体部分と一体成形されており、これによって凸部5bが弾性材料で形成される。凸部5bは底面5cの縁から若干内側の位置に全周にわたり連続して設けられており、蓋5を容器本体4に被せると、凸部5bが容器本体4の内周面4aの内側に全周にわたり嵌め込まれる。このとき、凸部5bが弾性材料で形成されているので、凸部5bが容器本体4の内周面4aの内側に圧入されることになり、蓋5の外れをしっかりと防止することができると共に、消臭ポット1が倒された場合に容器本体4と蓋5との間からコーヒー液が漏れないようにシールすることができる。蓋5の凸部5bは容器本体4の内周面4aの内側に圧入されるので、容器本体4に蓋5を被せた状態では凸部5bを外部から見えないように隠すことができ、消臭ポット1の外観デザインの悪化を防止することができる。また、容器本体4に蓋5を被せることで、外部から容器本体4内のフィルター3を見え難くすることができる。
【0019】
次に、
図5及び
図6に基づき、消臭方法について説明する。コーヒーサーバー、コーヒーカップ、マグカップ等の容器7にコーヒードリッパー6を載せ、ペーパーフィルター等のフィルター3をセットし、コーヒー粉末を所定量入れてお湯を注ぐハンドドリップでコーヒーを淹れると、コーヒー残渣2が生じる。本発明の消臭方法は、消臭ポット1に、ドリップ後のコーヒー残渣2をドリップに使用したフィルター3ごと収容し、コーヒー残渣2を消臭剤として使用するものである。
【0020】
図5に、ハンドドリップ後のコーヒー残渣2をフィルター3ごとコーヒードリッパー6から取り出し、蓋5を外した状態の容器本体4に移す様子を示す。ハンドドリップ後、コーヒー残渣2及びフィルター3をしばらくの間そのまま放置することで、コーヒー残渣2及びフィルター3に含まれるコーヒー液をある程度落下させることができる。そのため、ハンドドリップした後、しばらく放置してからコーヒー残渣2をフィルター3ごと容器本体4に移すことが好ましい。
【0021】
コーヒー残渣2をフィルター3ごと容器本体4に移動させた状態では、フィルター3の上部が容器本体4から若干はみ出している。このはみ出し部分を内側に折り込んでコーヒー残渣2を包み込むようにしながら、容器本体4に蓋5を被せる。これにより消臭ポット1として使用可能になる。消臭ポット1は所望の場所に置かれて消臭に使用される。
【0022】
容器本体4に蓋5を被せることで、外部からフィルター3が見え難くなり、インテイリアとしての美感を向上させることができる。また、蓋5の凸部5bが容器本体4の内周面4aに全周にわたり嵌まり込むので、蓋5の脱落が防止されると共に、消臭ポット1が倒されても容器本体4と蓋5との間からコーヒー液が漏れないようにシールすることができる。
【0023】
このように、コーヒー残渣2を消臭剤として有効活用することができる。ハンドドリップ後のコーヒー残渣2をフィルター3ごとそのまま消臭ポット1に移せば良いので、例えば、コーヒー残渣をフィルターから取り出したり、フィルターから取り出したコーヒー残渣を網や作業台等の上に広げるような手間のかかる作業が不要になり、大変便利である。
【0024】
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例であるがこれに限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の説明では、容器本体4を焼き締めの陶磁器により形成していたが、これに限るものではない。例えば、容器本体4を珪藻土の焼成体により形成しても良い。この場合にも容器本体4を多孔質にすることができる。
【0025】
また、コーヒー残渣2及びフィルター3の乾燥を促さなくても良い場合等には、容器本体4を多孔質にしなくても良い。
【0026】
さらに、上述の説明では、フィルター3はコーヒードリッパー6にセットするタイプのフィルターであったが、これに限るものではない。例えば
図7に示すように、コーヒーカップやマグカップ等の容器7の縁に引っ掛ける係止部3aを有し、コーヒードリッパー6を使用せずに容器7の内側に直接吊り下げることができるタイプのフィルター3でも良い。
【符号の説明】
【0027】
1 消臭ポット
2 コーヒー残渣
3 フィルター
4 容器本体
5 蓋
5a 開口
5b 凸部