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特許7266318CDCA1由来ペプチドおよびそれを含むワクチン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】CDCA1由来ペプチドおよびそれを含むワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230421BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230421BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20230421BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230421BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230421BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230421BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230421BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230421BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230421BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K7/08 ZNA
C12N5/078
C12N5/10
C07K16/18
C12Q1/02
A61K38/08
A61K39/00 H
A61K39/395 A
A61K39/395 H
A61P37/04
A61P35/00
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C07K7/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021183273
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2019228937の分割
【原出願日】2015-07-31
(65)【公開番号】P2022050382
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2014158922
(32)【優先日】2014-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014158923
(32)【優先日】2014-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014158924
(32)【優先日】2014-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502240113
【氏名又は名称】オンコセラピー・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】角田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大沢 龍司
(72)【発明者】
【氏名】山下 祥子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 朝久
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/025117(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/010229(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/153992(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/037395(WO,A2)
【文献】Hum. Immunol., 2001, Vol.62, No.9, pp.1009-1030
【文献】Immunogenetics, 1999, Vol.50, pp.201-212
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 7/00-16/00
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:38のアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項2】
配列番号:38のアミノ酸配列に対して以下の(a)~(b)からなる群より選択される1または2個の置換がされたアミノ酸配列からなる細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能を有するペプチド:
(a)N末端から2番目のアミノ酸が、ロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、セリンおよびスレオニンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている;および
(b)C末端のアミノ酸が、アルギニン、チロシンおよびフェニルアラニンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている。
【請求項3】
請求項1または2に記載のペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項4】
薬学的に許容される担体と、以下の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの成分とを含む組成物:
(a)請求項1または2に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)請求項1または2に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)請求項1または2に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);
(d)請求項1または2に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム;および
(e)請求項1または2に記載のペプチドを標的とするCTL。
【請求項5】
前記成分が以下の(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1つの成分であり、CTLを誘導するための組成物である、請求項4に記載の組成物:
(a)請求項1または2に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)請求項1または2に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)請求項1または2に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);および
(d)請求項1または2に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム。
【請求項6】
薬学的組成物である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
(i)がんの治療、(ii)がんの予防、および(iii)がんの術後の再発の予防からなる群より選択される1以上の用途のための、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
がんに対する免疫応答を誘導するための、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
がんが、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、および大腸がんからなる群より選択される、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
HLA-A03が陽性である対象への投与のために製剤化される、請求項4~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
以下からなる群より選択される段階を含む、CTL誘導能を有するAPCをインビトロで誘導する方法:
(a)APCを、請求項1または2に記載の1種類もしくは複数種のペプチドとインビトロで接触させる段階;および
(b)請求項1または2に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入する段階。
【請求項12】
以下からなる群より選択される段階を含む、CTLをインビトロで誘導する方法:
(a)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と請求項1または2に記載のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するAPCと共培養する段階;
(b)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と請求項1または2に記載のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するエキソソームと共培養する段階;および
(c)細胞表面上にHLA抗原により提示された請求項1または2に記載のペプチドに結合し得るT細胞受容体(TCR)の各サブユニットをコードするポリヌクレオチドをCD8陽性T細胞に導入する段階。
【請求項13】
HLA抗原と請求項1または2に記載のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するAPC。
【請求項14】
請求項1または2に記載のペプチドを標的とするCTL。
【請求項15】
CTL誘導能を有するペプチドをスクリーニングする方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)配列番号:38のアミノ酸配列からなる元のアミノ酸配列に対して、1個、または2個のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列からなる候補配列を作成する段階;
(b)(a)で作成した候補配列の中からCDCA1以外のいかなる公知のヒト遺伝子産物とも有意な相同性(配列同一性)を有さない候補配列を選択する段階;
(c)(b)で選択した候補配列からなるペプチドと、HLA-A03を発現しているAPCとを接触させる段階;
(d)(c)のAPCとCD8陽性T細胞とを接触させる段階;および
(e)元のアミノ酸配列からなるペプチドよりも同等かまたはより高いCTL誘導能を有するペプチドを選択する段階。
【請求項16】
請求項1または2に記載の1種類もしくは複数種のペプチド、水溶性の担体、および油性アジュバントを含むエマルション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物科学の分野、より具体的にはがん療法の分野に関する。特に本発明は、がんワクチンとして有効な新規ペプチド、該ペプチドを用いた腫瘍の治療および予防のいずれかまたは両方のための方法、ならびに該ペプチドを含む医薬組成物に関する。
【0002】
本出願は、2014年8月4日に出願された日本特許出願(特願2014-158922、特願2014-158923、および特願2014-158924)の恩典を主張し、その全内容が参照によって本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte:CTL)は、主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子上に見出される腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen:TAA)由来のエピトープペプチドを認識し、次いで腫瘍細胞を殺傷することが示されている。メラノーマ抗原(MAGE)ファミリーが発見されて以来、他の多くのTAAが、免疫学的アプローチによって発見されている(非特許文献1:Boon T, Int J Cancer 1993 May 8, 54(2):177-80;非特許文献2:Boon T & van der Bruggen P, J Exp Med 1996 Mar 1, 183(3):725-9)。これらのTAAのうちのいくつかは、免疫療法の標的として、現在臨床開発の過程にある。
【0004】
これらのTAAのいくつかにおいては、CTLに認識され得るエピトープペプチドが同定されており、様々な種類のがんに対する免疫療法への応用が期待されている(非特許文献3:Harris CC, J Natl Cancer Inst 1996 Oct 16, 88(20):1442-55;非特許文献4:Butterfield LH et al., Cancer Res 1999 Jul 1, 59(13):3134-42;非特許文献5:Vissers JL et al., Cancer Res 1999 Nov 1, 59(21):5554-9;非特許文献6:van der Burg SH et al., J Immunol 1996 May 1, 156(9)3308-14;非特許文献7:Tanaka F et al., Cancer Res 1997 Oct 15, 57(20):4465-8;非特許文献8:Fujie T et al., Int J Cancer 1999 Jan 18, 80(2):169-72;非特許文献9:Kikuchi M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3):439-66;非特許文献10:Oiso M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3):387-94)。現在までに、これらのTAA由来CTLエピトープペプチドを使用した臨床試験がいくつか報告されている。残念ながら、それらの臨床試験の多くは低い客観的奏効率しか示していない(非特許文献11:Belli F et al., J Clin Oncol 2002 Oct 15, 20(20):4169-80;非特許文献12:Coulie PG et al., Immunol Rev 2002 Oct, 188:33-42;非特許文献13:Rosenberg SA et al., Nat Med 2004 Sep, 10(9):909-15)。したがって、がん免疫療法に使用し得る新規CTLエピトープの同定が依然として必要とされている。
【0005】
CDCA1(細胞分裂周期関連物1(cell division cycle associated 1);NUF2, NDC80動原体複合体構成要素(NUF2, NDC80 kinetochore complex component):Nuf2とも記載される。;参照配列:GeneBankアクセッション番号NM_145697(配列番号:81)またはGeneBankアクセッション番号NM_031423(配列番号:83))は、CDC2、サイクリン、トポイソメラーゼIIおよび他の細胞周期遺伝子と共発現する遺伝子のメンバーとして同定された(非特許文献14:Walker et al., Curr Cancer Drug Targets 2001 May;1(1):73-83)。CDCA1は有糸分裂中のHela細胞のセントロメアと関連があることが見いだされており、酵母Nuf2の機能的相同体と考えられている(非特許文献15:Wigge PA et al., J Cell Biol 2001 Jan 22; 152(2):349-60)。一方、CDCA1は23,040個の遺伝子を含むゲノムワイドcDNAマイクロアレイを使用する遺伝子発現プロファイル解析により、非小細胞肺がんにおいて上方制御される遺伝子として同定された(非特許文献16:Hayama et al., Cancer Res 2006 Nov 1; 66(21):10339-48;特許文献1:WO2007/013480;特許文献2:WO2005/089735)。CDCA1の発現は腫瘍と腫瘍細胞株の双方において上方制御されていたが、精巣を除く正常器官では発現が検出されなかった(非特許文献16;特許文献1)。さらに、siRNAによるCDCA1発現の下方制御は、CDCA1を発現する肺がん細胞株における細胞増殖抑制を引き起こした(非特許文献16;特許文献1-2)。
【0006】
最近では、CDCA1由来のHLA-A2拘束性CTLエピトープペプチド(非特許文献17:Harao et al., Int J Cancer. 2008:123(11):2616-25;特許文献3:WO2009/025117)およびHLA-A24拘束性CTLエピトープペプチド(特許文献4:WO2009/153992)が同定されている。これらのペプチドは、HLA-A2型またはHLA-A24型を有するがん患者においては有効であるが、これらのHLA型を有さないがん患者に対しては効果を期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2007/013480
【文献】WO2005/089735
【文献】WO2009/025117
【文献】WO2009/153992
【非特許文献】
【0008】
【文献】Boon T, Int J Cancer 1993 May 8, 54(2):177-80
【文献】Boon T & van der Bruggen P, J Exp Med 1996 Mar 1, 183(3):725-9
【文献】Harris CC, J Natl Cancer Inst 1996 Oct 16, 88(20):1442-55
【文献】Butterfield LH et al., Cancer Res 1999 Jul 1, 59(13):3134-42
【文献】Vissers JL et al., Cancer Res 1999 Nov 1, 59(21):5554-9
【文献】van der Burg SH et al., J Immunol 1996 May 1, 156(9):3308-14
【文献】Tanaka F et al., Cancer Res 1997 Oct 15, 57(20):4465-8
【文献】Fujie T et al., Int J Cancer 1999 Jan 18, 80(2):169-72
【文献】Kikuchi M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3):459-66
【文献】Oiso M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3):387-94
【文献】Belli F et al., J Clin Oncol 2002 Oct 15, 20(20):4169-80
【文献】Coulie PG et al., Immunol Rev 2002 Oct, 188:33-42
【文献】Rosenberg SA et al., Nat Med 2004 Sep, 10(9):909-15
【文献】Walker et al., Curr Cancer Drug Targets 2001 May,1(1):73-83
【文献】Wigge PA et al., J Cell Biol 2001 Jan 22,152(2):349-60
【文献】Hayama et al., Cancer Res 2006 Nov 1,66(21):10339-48
【文献】Harao et al., Int J Cancer 2008 Dec 1,123(11):2616-25
【発明の概要】
【0009】
本発明は、CDCA1を発現する細胞に対して特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導し得るペプチドに関する。これらのペプチドが、ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)によって抗原提示細胞(antigen-presenting cell:APC)上に提示されると、CDCA1発現細胞に対して特異的な細胞傷害活性を示すCTLが誘導される。これまでに同定されているCDCA1由来のCTL誘導能を有するペプチドは、HLA-A2拘束性またはHLA-A24拘束性のペプチドであり、これらのHLAを発現していない細胞に対しては、CTLを誘導することができない。そのため、これらのHLAを有さない対象において免疫療法を行う場合には、従来のペプチドは適さない。HLA-A11およびHLA-A33は、アジア人の中でよく見られるアリルであり(Sette A, Sidney J., Immunogenetics 1999, 50:201-12)、HLA-A03は白人の中でよく見られるアリルである(Cao et al., Hum Immunol. 2001;62(9):1009-30)。HLA-A11陽性の対象に対してはHLA-A11拘束性のペプチド、HLA-A33陽性の対象に対してはHLA-A33拘束性のペプチド、およびHLA-A03陽性の対象に対してはHLA-A03拘束性のペプチドを投与することが望まれる。よって、本発明は、HLA-A11、HLA-A33またはHLA-A03拘束性のCDCA1由来ペプチドであって、CTL誘導能を有するペプチドに関する。本明細書に開示された結果から、本発明のペプチドが、CDCA1およびHLA-A11、HLA-A33またはHLA-A03を発現する細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るエピトープペプチドであることが実証される。
【0010】
したがって、HLA-A11、HLA-A33またはHLA-A03拘束性の様式でCTLを誘導し得るCDCA1由来のペプチドを提供することは、本発明の1つの目的である。これらのペプチドは、CTLをインビトロ、エクスビボまたはインビボで誘導するために用いることができ、または、CDCA1を発現するがん細胞に対する免疫応答を誘導する目的で対象に投与するために用いることができる。好ましいペプチドは配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47より選択されるアミノ酸配列を含むものであり、より好ましくはノナペプチドまたはデカペプチドであり、さらに好ましくは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47の中より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドである。
【0011】
本発明のペプチドは、結果として生じる改変ペプチドが元のペプチドのCTL誘導能を保持する限り、1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されているペプチドも包含する。
本発明はまた、本発明のペプチドのいずれか1つをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドは、本発明のペプチドと同様に、CTL誘導能を有するAPCを誘導するために用いることができ、またはCDCA1を発現するがん細胞に対する免疫応答を誘導するために対象に投与することができる。
【0012】
本発明はまた、本発明の1種類もしくは複数種のペプチド、本発明の1種類もしくは複数種のペプチドをコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド、本発明のAPC、本発明のペプチドを提示するエキソソーム、および/または本発明のCTLを含む組成物を提供する。本発明の組成物は好ましくは薬学的組成物である。本発明の薬学的組成物は、がんの治療および/または予防、ならびに術後のその再発の予防のために用いることができる。またがんに対する免疫応答を誘導するために用いることができる。対象に投与した場合、本発明のペプチドは、APCの表面上に提示され、それにより該ペプチドを標的とするCTLが誘導される。したがって、CTLを誘導するための組成物であって、本発明の1種類もしくは複数種のペプチド、本発明の1種類もしくは複数種のペプチドをコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド、本発明のAPC、および/または本発明のペプチドを提示するエキソソームを含む組成物を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0013】
CTL誘導能を有するAPCを誘導する方法であって、APCを本発明の1種類もしくは複数種のペプチドと接触させる段階、または本発明のペプチドのいずれか1つをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入する段階を含む方法を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0014】
本発明はまた、CD8陽性T細胞を、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するAPCと共培養する段階、CD8陽性T細胞を、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するエキソソームと共培養する段階、または細胞表面上にHLA抗原により提示された本発明のペプチドに結合し得るT細胞受容体(T cell receptor:TCR)の各サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含むベクターをCD8陽性T細胞に導入する段階を含む、CTLを誘導する方法を提供する。本発明における好ましいHLA抗原は、HLA-A11、HLA-A33またはHLA-A03である。
【0015】
HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示する単離されたAPCを提供することは、本発明のさらに別の目的である。本発明はさらに、本発明のペプチドを標的とする単離されたCTLを提供する。これらのAPCおよびCTLは、CDCA1を発現するがんに対する免疫療法に用いることができる。本発明において、免疫療法の対象とするがんは、たとえばHLA-A11、HLA-A33またはHLA-A03をホモまたはヘテロに有する患者のがんである。すなわち本発明は、CDCA1と、HLA-A11、HLA-A33およびHLA-A03から選択される少なくとも1つのHLA抗原を発現するがんの免疫療法を提供する。
【0016】
対象においてがんに対する免疫応答を誘導する方法であって、本発明のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明のAPC、本発明のペプチドを提示するエキソソーム、および/または本発明のCTLを含む組成物を該対象に投与する段階を含む方法を提供することは、本発明の別の目的である。さらに、対象においてがんを治療および/または予防、ならびに術後のその再発を予防する方法であって、本発明のペプチド、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明のAPC、本発明のペプチドを提示するエキソソーム、および/または本発明のCTLを該対象に投与する段階を含む方法を提供することは、本発明の別の目的である。
【0017】
上記に加え、本発明の他の目的および特徴は、添付の図表および実施例と併せて以下の詳細な説明を読むことによって、より十分に明らかになる。しかしながら、前述の発明の概要および以下の詳細な説明はいずれも例示的な態様であり、本発明または本発明のその他の代替的な態様を限定するものではないことが理解されるべきである。特に、本発明をいくつかの特定の態様を参照して本明細書において説明するが、その説明は本発明を例証するものであり、本発明を限定するものとして構成されていないことが理解されよう。添付の特許請求の範囲によって記載される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者は様々な変更および適用に想到することができる。同様に、本発明のその他の目的、特徴、利益、および利点は、本概要および以下に記載する特定の態様から明らかになり、当業者には容易に明白になるであろう。そのような目的、特徴、利益、および利点は、添付の実施例、データ、図表、およびそれらから引き出されるあらゆる妥当な推論と併せて上記から、単独で、または本明細書に組み入れられる参考文献を考慮して、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1-1】図1は、CDCA1由来のペプチドを用いて誘導したCTLにおけるIFN-γ酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイの結果を示す写真(a)~(v)から構成される。CDCA1-A11-9-123(配列番号:3)を用いたウェル番号#7(a)、CDCA1-A11-9-105(配列番号:5)を用いたウェル番号#8(b)、CDCA1-A11-9-419(配列番号:6)を用いたウェル番号#1(c)、CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)を用いたウェル番号#4(d)、CDCA1-A11-9-439(配列番号:9)を用いたウェル番号#2(e)、CDCA1-A11-9-343(配列番号:10)を用いたウェル番号#2(f)、CDCA1-A11-9-21(配列番号:12)を用いたウェル番号#8(g)、CDCA1-A11-9-157(配列番号:13)を用いたウェル番号#3(h)、CDCA1-A11-9-244(配列番号:14)を用いたウェル番号#7(i)、CDCA1-A11-9-213(配列番号:17)を用いたウェル番号#6(j)、CDCA1-A11-9-335(配列番号:19)を用いたウェル番号#7(k)、CDCA1-A11-9-25(配列番号:21)を用いたウェル番号#4(l)、CDCA1-A11-10-339(配列番号:30)を用いたウェル番号#3(m)、CDCA1-A11-10-452(配列番号:35)を用いたウェル番号#2(n)、CDCA1-A11-10-400(配列番号:38)を用いたウェル番号#7(o)、CDCA1-A11-10-289(配列番号:39)を用いたウェル番号#6(p)、CDCA1-A11-10-203(配列番号:40)を用いたウェル番号#5(q)、CDCA1-A11-10-156(配列番号:45)を用いたウェル番号#2(r)、CDCA1-A11-10-340(配列番号:53)を用いたウェル番号#2(s)、CDCA1-A11-10-106(配列番号:56)を用いたウェル番号#4(t)およびCDCA1-A11-10-358(配列番号:58)を用いたウェル番号#2(u)におけるCTLは対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。これらの写真のウェル上の四角は、対応するウェルからの細胞を、CTL株を樹立するために増殖させたことを示す。対照的に、特異的なIFN-γ産生を示さなかった典型的な陰性データの例として、CDCA1-A11-10-391(配列番号:33)(v)を示す。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN-γ産生を示し、「-」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN-γ産生を示す。
【0019】
図1-2】図1-1の続きを示す。
【0020】
図2-1】図2は、CDCA1-A11-9-123(配列番号:3)(a)、CDCA1-A11-9-105(配列番号:5)(b)、CDCA1-A11-9-419(配列番号:6)(c)、CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)(d)、CDCA1-A11-9-439(配列番号:9)(e)、CDCA1-A11-9-157(配列番号:13)(f)、CDCA1-A11-9-25(配列番号:21)(g)、CDCA1-A11-10-339(配列番号:30)(h)およびCDCA1-A11-10-358(配列番号:58)(i)で刺激したCTL株のIFN-γ産生を順に実証するIFN-γ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)の結果を示す一連の折れ線グラフ(a)~(i)から構成される。これらの結果は、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTL株が、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示すことを実証している。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN-γ産生を示し、「-」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN-γ産生を示す。R/S比は、応答細胞(Responder cells)であるCTL株の細胞数と刺激細胞(Stimulator cells)である標的細胞の細胞数の比を示す。
【0021】
図2-2】図2-1の続きを示す。
【0022】
図3図3は、CDCA1-A11-9-105(配列番号:5)(a)、CDCA1-A11-9-419(配列番号:6)(b)およびCDCA1-A11-9-219(配列番号:7)(c)で刺激したCTL株から限界希釈によって樹立されたCTLクローンのIFN-γ産生を示す一連の折れ線グラフ(a)~(c)から構成される。これらの結果は、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTLクローンが、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示すことを実証している。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN-γ産生を示し、「-」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN-γ産生を示す。R/S比は、応答細胞(Responder cells)であるCTLクローンの細胞数と刺激細胞(Stimulator cells)である標的細胞の細胞数の比を示す。
【0023】
図4図4は、CDCA1およびHLA-A*1101の両方を発現する標的細胞に対する特異的CTL活性を示す折れ線グラフである。HLA-A*1101または全長CDCA1遺伝子のいずれか一方をトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)を用いて樹立されたCTLクローンは、CDCA1およびHLA-A*1101の両方をトランスフェクトしたCOS7細胞に対して特異的CTL活性を示した(黒菱形)。一方、HLA-A*1101(三角)またはCDCA1(白丸)のいずれか一方をトランスフェクトした標的細胞に対しては、有意な特異的CTL活性は示さなかった。
【0024】
図5図5は、CDCA1由来のペプチドを用いて誘導したCTLにおけるIFN-γ ELISPOTアッセイの結果を示す写真(a)~(h)から構成される。CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)を用いたウェル番号#2(a)、CDCA1-A33-9-123(配列番号:3)を用いたウェル番号#1(b)、CDCA1-A33-9-108(配列番号:60)を用いたウェル番号#3(c)、CDCA1-A33-9-261(配列番号:28)を用いたウェル番号#2(d)、CDCA1-A33-9-105(配列番号:5)を用いたウェル番号#6(e)、CDCA1-A33-10-10(配列番号:67)を用いたウェル番号#8(f)およびCDCA1-A33-10-260(配列番号:69)を用いたウェル番号#5(g)におけるCTLは対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。これらの図の写真のウェル上の四角は、対応するウェルからの細胞を、CTL株を樹立するために増殖させたことを示す。対照的に、特異的なIFN-γ産生を示さなかった典型的な陰性データの例として、CDCA1-A33-10-122(配列番号:68)(h)を示す。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN-γ産生を示し、「-」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN-γ産生を示す。
【0025】
図6図6は、CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)(a)、CDCA1-A33-9-123(配列番号:3)(b)、CDCA1-A33-10-10(配列番号:67)(c)およびCDCA1-A33-10-260(配列番号:69)(d)で刺激したCTL株のIFN-γ産生を順に実証するIFN-γ ELISAの結果を示す一連の折れ線グラフ(a)~(d)から構成される。これらの結果は、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTL株が、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示すことを実証している。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN-γ産生を示し、「-」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN-γ産生を示す。R/S比は、応答細胞(Responder cells)であるCTL株の細胞数と刺激細胞(Stimulator cells)である標的細胞の細胞数の比を示す。
【0026】
図7図7は、CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)(a)、およびCDCA1-A33-9-123(配列番号:3)(b)で刺激したCTL株から限界希釈によって樹立されたCTLクローンのIFN-γ産生を示す一連の折れ線グラフ(a)~(b)から構成される。これらの結果は、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTLクローンが、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示すことを実証している。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN-γ産生を示し、「-」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN-γ産生を示す。R/S比は応答細胞(Responder cells)であるCTLクローンの細胞数と刺激細胞(Stimulator cells)である標的細胞の細胞数の比を示す。
【0027】
図8図8は、CDCA1およびHLA-A*3303の両方を発現する標的細胞に対する特異的CTL活性を示す折れ線グラフである。HLA-A*3303または全長CDCA1遺伝子のいずれか一方をトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)を用いて樹立されたCTLクローンは、CDCA1およびHLA-A*3303の両方をトランスフェクトしたCOS7細胞に対して特異的CTL活性を示した(黒菱形)。一方、HLA-A*3303(白三角)またはCDCA1(白丸)のいずれか一方をトランスフェクトした標的細胞に対しては、有意な特異的CTL活性は示さなかった。
【0028】
図9図9は、CDCA1由来のペプチドを用いて誘導したCTLにおけるIFN-γ ELISPOTアッセイの結果を示す写真(a)~(d)から構成される。CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)を用いたウェル番号#3(a)、CDCA1-A03-10-400(配列番号:38)を用いたウェル番号#1(b)およびCDCA1-A03-10-257(配列番号:47)を用いたウェル番号#2(c)におけるCTLは、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。これらの写真のウェル上の四角は、対応するウェルからの細胞を、CTL株を樹立するために増殖させたことを示す。対照的に、特異的なIFN-γ産生を示さなかった典型的な陰性データの例として、CDCA1-A03-9-343(配列番号:10)(d)を示す。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN-γ産生を示し、「-」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN-γ産生を示す。
【0029】
図10図10は、CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)(a)、CDCA1-A03-10-400(配列番号:38)(b)およびCDCA1-A03-10-257(配列番号:47)(c)で刺激したCTL株のIFN-γ産生を実証するIFN-γ ELISAアッセイの結果を示す一連の折れ線グラフ(a)~(c)から構成される。これらの結果は、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTL株が、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示すことを実証している。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN-γ産生を示し、「-」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN-γ産生を示す。R/S比は、応答細胞(Responder cells)であるCTL株の細胞数と刺激細胞(Stimulator cells)である標的細胞の細胞数の比を示す。
【0030】
図11図11は、CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)(a)、CDCA1-A03-10-400(配列番号:38)(b)およびCDCA1-A03-10-257(配列番号:47)(c)で刺激したCTL株から限界希釈によって樹立されたCTLクローンのIFN-γ産生を示す一連の折れ線グラフ(a)~(c)から構成される。これらの結果は、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTLクローンが、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示すことを実証している。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN-γ産生を示し、「-」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN-γ産生を示す。R/S比は、応答細胞(Responder cells)であるCTLクローンの細胞数と刺激細胞(Stimulator cells)である標的細胞の細胞数の比を示す。
【0031】
図12図12は、CDCA1およびHLA-A*0301の両方を発現する標的細胞に対する特異的CTL活性を示す一連の折れ線グラフ(a)~(b)から構成される。HLA-A*0301または全長CDCA1遺伝子のいずれか一方をトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)(a)およびCDCA1-A03-10-400(配列番号:38)(b)を用いて樹立されたCTLクローンは、CDCA1およびHLA-A*0301の両方をトランスフェクトしたCOS7細胞に対して特異的CTL活性を示した(黒菱形)。一方、HLA-A*0301(白三角)またはCDCA1(白丸)のいずれか一方をトランスフェクトした標的細胞に対しては、有意な特異的CTL活性は示さなかった。
【発明を実施するための形態】
【0032】
態様の説明
本発明の態様を実施または試験するにあたって、本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは同等の任意の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法、装置、および材料をここに記載する。しかしながら、本発明の材料および方法について記載する前に、本明細書に記載の特定の大きさ、形状、寸法、材料、方法論、プロトコール等は慣例的な実験法および最適化に応じて変更可能であるため、本発明がこれらに限定されないことが理解されるべきである。本記載に使用する専門用語は特定の型または態様のみを説明する目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することは意図されないことも、また理解されるべきである。
【0033】
I.定義
本明細書で用いる「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」という単語は、他に特記されない限り「少なくとも1つの」を意味する。
物質(例えば、ペプチド、抗体、ポリヌクレオチド等)に関して用いる「単離された」および「精製された」という用語は、該物質がそうでなければ天然源中に含まれ得る少なくとも1種の物質を実質的に含まないことを示す。したがって、単離または精製されたペプチドは、そのペプチドが由来する細胞もしくは組織源からの他の細胞材料、例えば糖質、脂質、および他の混入タンパク質を実質的に含まないペプチドを指す。またはペプチドが化学合成される場合には、単離または精製されたペプチドは前駆体物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないペプチドを指す。「細胞材料を実質的に含まない」という用語は、それが単離された細胞または組換え産生された細胞の細胞成分から、ペプチドが分離されたペプチドの調製物を含む。したがって、細胞材料を実質的に含まないペプチドは、約30%、20%、10%、または5%、3%、2%または1%(乾燥重量ベース)未満の他の細胞材料を含有する、ペプチドの調製物を包含する。ペプチドを組換え産生する場合、単離または精製されたペプチドは、培養培地も実質的に含まず、培養培地を実質的に含まないペプチドは、培養培地をペプチド調製物の容量の約20%、10%、または5%、3%、2%または1%(乾燥重量ベース)未満で含有する、ペプチドの調製物を包含する。ペプチドを化学合成によって生成する場合、単離または精製されたペプチドは、前駆体物質および他の化学物質を実質的に含まず、前駆体物質および他の化学物質を実質的に含まないペプチドは、前駆体物質および他の化学物質をペプチド調製物の容量の約30%、20%、10%、5%、3%、2%または1%(乾燥重量ベース)未満で含有する、ペプチドの調製物を包含する。特定のペプチド調製物が単離または精製されたペプチドであることは、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲルのクーマシーブリリアントブルー染色等の後の単一バンドの出現によって確認することができる。好ましい態様では、本発明のペプチドおよびポリヌクレオチドは単離または精製されている。
【0034】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、天然型アミノ酸ポリマーのほか、1個もしくは複数個の非天然型アミノ酸残基を含む非天然型アミノ酸ポリマーにも適用される。非天然型アミノ酸には、アミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体などが含まれる。
【0035】
本明細書で用いる「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、および細胞内で翻訳後に修飾されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンなど)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造(水素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素)を有するが、修飾されたR基または修飾された骨格を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシドおよびメチオニンメチルスルホニウムなど)を指す。「アミノ酸模倣体」という語句は、一般的なアミノ酸とは異なる構造を有するが、アミノ酸と同様の機能を有する化合物を指す。アミノ酸はL-アミノ酸またはD-アミノ酸のいずれであってもよいが、本発明のペプチドは、L-アミノ酸のポリマーであることが好ましい。
【0036】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、ヌクレオチドのポリマーを指す。
【0037】
本明細書で使用する「組成物」という用語は、特定量の特定成分を含む生成物、および特定量の特定成分の組み合わせから直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。組成物が薬学的組成物である場合には、組成物という用語は、有効成分および不活性成分とを含む生成物、ならびに任意の2つもしくはそれ以上の成分の組み合わせ、複合体形成、もしくは凝集から、1つもしくは複数の成分の解離から、または1つもしくは複数の成分の他の種類の反応もしくは相互作用から直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。したがって、本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物または細胞と薬学的または生理学的に許容される担体とを混合することにより作製される任意の組成物を包含する。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」または「生理学的に許容される担体」という語句は、液体もしくは固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒および封入材料を含むがこれらに限定されない、薬学的または生理学的に許容される材料、組成物、物質、または媒体を意味する。
【0038】
特記しない限り、「がん」という用語は、CDCA1遺伝子を過剰発現するがんを指し、その例としては、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、および大腸がんなどが含まれるが、これらに限定されない。また、例示的な態様において、「がん」は、CDCA1とHLA-A11、HLA-A33および/またはHLA-A03を発現するがんである。
【0039】
特記しない限り、「細胞傷害性Tリンパ球」、「細胞傷害性T細胞」、および「CTL」という用語は本明細書において互換的に用いられ、特に別段の定めのない限り、非自己細胞(例えば、腫瘍/がん細胞、ウイルス感染細胞)を認識し、そのような細胞の死滅を誘導することができるTリンパ球の亜群を指す。
【0040】
特記しない限り、「HLA-A11」という用語は、HLA-A*1101、HLA-A*1102、HLA-A*1103、HLA-A*1104などのサブタイプを含むHLA-A11型を指す。
【0041】
特記しない限り、「HLA-A33」という用語は、HLA-A*3303、HLA-A*3301、HLA-A*3304などのサブタイプを含むHLA-A33型を指す。
【0042】
特記しない限り、「HLA-A03」という用語は、HLA-A*0301、HLA-A*0302、HLA-A*0305などのサブタイプを含むHLA-A03型を指す。
【0043】
対象または患者との関連において、本明細書で使用される「対象の(または患者の)HLA抗原はHLA-A11である」という表現は、対象または患者がMHC(主要組織適合複合体)クラスI分子としてのHLA-A11抗原遺伝子をホモ接合的またはヘテロ接合的に保有し、かつHLA-A11抗原が対象または患者の細胞においてHLA抗原として発現されることを指す。同様に、本明細書で使用される「対象の(または患者の)HLA抗原はHLA-A33である」および「対象の(または患者の)HLA抗原はHLA-A03である」という表現は、それぞれ、対象または患者がMHC(主要組織適合複合体)クラスI分子としてのHLA-A33抗原遺伝子をホモ接合的またはヘテロ接合的に保有し、かつHLA-A33抗原が対象または患者の細胞においてHLA抗原として発現されること、および対象または患者がMHC(主要組織適合複合体)クラスI分子としてのHLA-A03抗原遺伝子をホモ接合的またはヘテロ接合的に保有し、かつHLA-A03抗原が対象または患者の細胞においてHLA抗原として発現されることを指す。
【0044】
本発明の方法および組成物ががんの「治療」との関連において有用である限り、治療が臨床的利点、例えば対象におけるがんの大きさ、広がり、もしくは転移能の減少、がんの進行遅延、がんの臨床症状の緩和、生存期間の延長、術後再発の抑制等をもたらす場合に、治療は「有効である」とみなされる。治療を予防的に適用する場合、「有効な」とは、治療によって、がんの形成が遅延されるもしくは妨げられるか、またはがんの臨床症状が妨げられるもしくは緩和されることを意味する。有効性は、特定の腫瘍の種類を診断または治療するための任意の公知の方法と関連して決定される。
【0045】
本発明の方法および組成物ががんの「予防」との関連において有用である限り、「予防」という用語は本明細書において、がんによる死亡率または罹患率の負荷を軽減させる任意の働きを含む。予防は、「第一次、第二次、および第三次の予防レベル」で行われ得る。第一次の予防は疾患の発生を回避するのに対し、第二次および第三次レベルの予防は、疾患の進行および症状の出現を予防することに加え、機能を回復させ、かつ疾患関連の合併症を減少させることによって、既存の疾患の悪影響を低下させることを目的とした働きを包含する。あるいは、予防は、特定の障害の重症度を緩和すること、例えば腫瘍の増殖および転移を減少させることを目的とした広範囲の予防的治療を含み得る。
【0046】
本発明との関連において、がんの治療および/もしくは予防、ならびに/または術後のその再発の予防は、がん細胞の増殖阻害、腫瘍の退行または退縮、寛解の誘導およびがんの発生の抑制、腫瘍退縮、ならびに転移の低減または阻害、がんの術後の再発抑制、および生存期間の延長などの事象のいずれかを含む。がんの効果的な治療および/または予防は、死亡率を減少させ、がんを有する個体の予後を改善し、血中の腫瘍マーカーのレベルを低下させ、かつがんに伴う検出可能な症状を緩和する。例えば、症状の軽減または改善は効果的な治療および/または予防を構成し、10%、20%、30%、もしくはそれ以上の軽減もしくは症状が安定した状態を含む。
【0047】
本発明との関連において、「抗体」という用語は、指定のタンパク質またはそのペプチドと特異的に反応する免疫グロブリンおよびその断片を指す。抗体には、ヒト抗体、霊長類化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、他のタンパク質または放射標識と融合させた抗体、および抗体断片が含まれ得る。さらに、本明細書において「抗体」は広義で使用され、具体的にはインタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、2以上のインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を包含し、また所望の生物活性を示す限り、抗体断片を包含する。「抗体」は、いずれのクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)の抗体であってもよい。
【0048】
特記しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解されている用語と同じ意味を有する。
【0049】
II.ペプチド
HLA-A11およびHLA-A33は、アジア人の中でよく見られるアリルであり(Sette A, Sidney J., Immunogenetics 1999, 50:201-12)、HLA-A03は白人の中でよく見られるアリルである(Cao et al., Hum Immunol. 2001;62(9):1009-30)。そのため、HLA-A11、HLA-A33またはHLA-A03によって拘束されるCDCA1由来のCTL誘導性ペプチドを提供することにより、多くのアジア人または白人に、CDCA1を発現するがんの有効な治療方法を提供することができる。よって、本発明は、HLA-A11、HLA-A33またはHLA-A03拘束性の様式でCTLを誘導し得るCDCA1由来のペプチドを提供する。
【0050】
本発明のペプチドは、HLA-A11、HLA-A33またはHLA-A03拘束性の様式でCTLを誘導し得るCDCA1由来のペプチドである。HLA-A11拘束性の様式でCTLを誘導し得るペプチドとしては、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられる。HLA-A33拘束性の様式でCTLを誘導し得るペプチドとしては、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられる。HLA-A03拘束性の様式でCTLを誘導し得るペプチドとしては、配列番号:7、38および47の中より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられる。
【0051】
これらのペプチドでパルスした樹状細胞(dendritic cell; DC)によるT細胞のインビトロでの刺激により、これらのペプチドに特異的な細胞傷害活性を有するCTLが樹立され得る。樹立されたCTLは、各ペプチドをパルスした標的細胞に対して特異的細胞傷害活性を示す。
【0052】
CDCA1遺伝子は、がん細胞、例えば、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、および大腸がんなどのがん細胞で過剰発現しているが、ほとんどの正常器官では発現しないため、免疫療法のための優れた標的である。したがって本発明のペプチドは、がんの免疫療法のために好適に用いることができる。好ましいペプチドは、ノナペプチド(アミノ酸残基9個からなるペプチド)またはデカペプチド(アミノ酸残基10個からなるペプチド)であり、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47の中より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドがより好ましい。例えば、配列番号:7に記載のアミノ酸配列を有するペプチドは、HLA-A11とCDCA1とを発現する細胞に対して特異的な細胞傷害活性を示すCTLの誘導に適しており、HLA-A11陽性患者におけるがんの免疫療法のために好適に使用することができる。また例えば、配列番号:27に記載のアミノ酸配列を有するペプチドは、HLA-A33とCDCA1とを発現する細胞に対して特異的な細胞傷害活性を示すCTLの誘導に適しており、HLA-A33陽性患者におけるがんの免疫療法のために好適に用いることができる。また例えば、配列番号:7および38の中より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドは、HLA-A03とCDCA1とを発現する細胞に対して特異的な細胞傷害活性を示すCTLの誘導に適しており、HLA-A03陽性患者におけるがんの免疫療法のために好適に使用することができる。より好ましい態様では、本発明のペプチドは、配列番号:7、27および38の中より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドである。
【0053】
本発明のペプチドは、結果として生じるペプチドが元のペプチドCTL誘導能を保持する限り、本発明のペプチドのアミノ酸配列に付加的なアミノ酸残基を隣接させることができる。付加的なアミノ酸残基は、それらが元のペプチドのCTL誘導能を損なわない限り、任意の種類のアミノ酸から構成され得る。したがって本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47の中より選択されるアミノ酸配列を含む、CTL誘導能を有するペプチドを包含する。そのようなペプチドは、例えば約40アミノ酸未満であり、多くの場合には約20アミノ酸未満であり、通常は約15アミノ酸未満である。したがって、本発明のペプチドは、元のペプチドがノナペプチドであれば、当該ペプチドに付加的なアミノ酸を隣接させることによって生じる10アミノ酸長、または11~40アミノ酸長のペプチドを包含する。また、元のペプチドが、デカペプチドであれば、11~40アミノ酸長のペプチドを包含する。そのようなペプチドは、例えば、11~20アミノ酸長のペプチドであることができ、11~15アミノ酸長のペプチドであることができる。付加的なアミノ酸残基の好ましい例は、CDCA1の全長アミノ酸配列(例えば、配列番号:82または84)において本発明のペプチドのアミノ酸配列に隣接するアミノ酸残基である。したがって、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47の中より選択されるアミノ酸配列を含む、CDCA1のペプチド断片であって、CTL誘導能を有するペプチドを包含する。
【0054】
一般的に、あるペプチド中の1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸の改変は該ペプチドの機能に影響を及ぼさず、場合によっては元のペプチドの所望の機能を増強することさえある。実際に、改変ペプチド(すなわち、元の参照配列と比較して、1個、2個、または数個のアミノ酸残基が改変された(すなわち、置換、欠失、挿入および/または付加された)アミノ酸配列から構成されるペプチド)は、元のペプチドの生物活性を保持することが知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci USA 1984, 81: 5662-6;Zoller and Smith, Nucleic Acids Res 1982, 10: 6487-500;Dalbadie-McFarland et al., Proc Natl Acad Sci USA 1982, 79: 6409-13)。したがって、一態様において、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47の中より選択されるアミノ酸配列に対して1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、かつCTL誘導能を有するペプチドであり得る。
【0055】
当業者は、元のアミノ酸側鎖の特性の保存をもたらす傾向がある、単一のアミノ酸またはわずかな割合のアミノ酸を変更する、アミノ酸配列に対する個々の置換を認識することができる。したがって、それらはしばしば「保存的置換」または「保存的改変」と称され、「保存的置換」または「保存的改変」によるタンパク質の改変は、元のタンパク質と類似の機能を有する改変タンパク質を生じ得る。機能的に類似しているアミノ酸を提示する保存的置換の表は、当技術分野において周知である。機能的に類似しているアミノ酸側鎖の特性の例には、例えば、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、ならびに以下の官能基または特徴を共通して有する側鎖が含まれる:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシル基含有側鎖(S、T、Y);硫黄原子含有側鎖(C、M);カルボン酸およびアミド含有側鎖(D、N、E、Q);塩基含有側鎖(R、K、H);および芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)。加えて、以下の8群はそれぞれ、相互に保存的置換であるとして当技術分野で認められているアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins 1984を参照されたい)。
【0056】
このような保存的改変ペプチドもまた、本発明のペプチドに包含される。しかしながら、本発明のペプチドはこれらに限定されず、改変ペプチドが元のペプチドのCTL誘導能を保持する限り、非保存的な改変を含み得る。さらに、改変ペプチドは、CDCA1の多型変異体、種間相同体、および対立遺伝子由来のCTL誘導可能なペプチドを排除しない。
【0057】
元のペプチドのCTL誘導能を保持する限り、少数の(例えば、1個、2個、または数個の)またはわずかな割合のアミノ酸を改変する(すなわち、置換、欠失、挿入および/または付加する)ことができる。本明細書において、「数個」という用語は、5個またはそれ未満のアミノ酸、例えば4個もしくは3個またはそれ未満を意味する。改変するアミノ酸の割合は、好ましくは20%もしくはそれ未満、より好ましくは15%もしくはそれ未満、さらにより好ましくは10%もしくはそれ未満、または1~5%である。
【0058】
免疫療法との関連で用いられた場合、本発明のペプチドは、好ましくはHLA抗原との複合体として、細胞またはエキソソームの表面上に提示される。したがって、本発明のペプチドは、HLA抗原に対する高い結合親和性を有することが好ましい。そのため、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加によってペプチドを改変して、結合親和性が改善された改変ペプチドを得てもよい。HLA抗原への結合によって提示されるペプチドの配列の規則性は既知であることから(Falk, et al., Immunogenetics 1994 40 232-41; Chujoh, et al., Tissue Antigens 1998: 52: 501-9; Takiguchi, et al., Tissue Antigens 2000: 55: 296-302.)、そのような規則性に基づいた改変を本発明のペプチドに導入することができる。
【0059】
例えば、HLAクラスIに対する結合性を有するペプチドでは、一般に、N末端から2番目のアミノ酸およびC末端のアミノ酸がHLAクラスIへの結合に関与するアンカー残基であることが多い(Rammensee HG, et al., Immunogenetics. 1995;41(4):178-228.)。例えば、HLA-A11では、N末端から2番目のアミノ酸としてスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンが、C末端のアミノ酸としてリジンおよびアルギニンが、HLA-A11に対する結合親和性が高いアンカー残基として知られている(Falk, et al., Immunogenetics 1994 40 232-41; Chujoh, et al., Tissue Antigens 1998: 52: 501-9)。さらに、HLA-A11では、N末端から3番目および7番目の位置に補助的なアンカー残基を有し、N末端から3番目のアミノ酸としてはロイシン、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、およびアラニンが好ましく、N末端から7番目のアミノ酸としてはロイシン、イソロイシン、チロシン、バリンおよびフェニルアラニンが好ましいことが知られている(Falk, et al., Immunogenetics 1994 40 232-41; Chujoh, et al., Tissue Antigens 1998: 52: 501-9)。そのため、HLA-A11結合親和性を維持または増大させるためには、N末端から2番目のアミノ酸をスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンもしくはチロシンで置換すること、および/またはC末端のアミノ酸をリジンもしくはアルギニンで置換することが望ましい可能性がある。さらに、N末端から3番目のアミノ酸をロイシン、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、もしくはアラニンで置換すること、および/またはN末端から7番目のアミノ酸をロイシン、イソロイシン、チロシン、バリンもしくはフェニルアラニンで置換することも望ましい可能性がある。したがって、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から2番目のアミノ酸がスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンもしくはチロシンで置換されている、N末端から3番目のアミノ酸がロイシン、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、アラニンで置換されている、N末端から7番目のアミノ酸がロイシン、イソロイシン、チロシン、バリンもしくはフェニルアラニンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がリジンもしくはアルギニンで置換されている、アミノ酸配列を含むCTL誘導能を有するペプチドは、本発明のペプチドに包含される。好ましい態様では、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から2番目のアミノ酸がスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンもしくはチロシンで置換されている、N末端から3番目のアミノ酸がロイシン、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンもしくはアラニンで置換されている、N末端から7番目のアミノ酸がロイシン、イソロイシン、チロシン、バリンもしくはフェニルアラニンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がリジンもしくはアルギニンで置換されている、アミノ酸配列からなるCTL誘導能を有するペプチドであり得る。すなわち、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列において、以下の(a)~(d)の中より選択される1個以上の置換を有するアミノ酸配列を含む、CTL誘導能を有するペプチドを包含する:
(a)N末端から2番目のアミノ酸がスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンまたはチロシンで置換されている;
(b)N末端から3番目のアミノ酸がロイシン、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンまたはアラニンで置換されている;
(c)N末端から7番目のアミノ酸がロイシン、イソロイシン、チロシン、バリンまたはフェニルアラニンで置換されている;および
(d)C末端のアミノ酸がリジンまたはアルギニンで置換されている。
【0060】
好ましい態様では、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列に対して、上記(a)~(d)の中より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列からなる、CTL誘導能を有するペプチドであり得る。本発明において、好ましい置換の数は、上記(a)~(d)から選択される1個、2個、3個または4個の置換である。
【0061】
また、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から2番目のアミノ酸がスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンもしくはチロシンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がリジンもしくはアルギニンで置換されている、アミノ酸配列を含むCTL誘導能を有するペプチドであり得る。好ましくは、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から2番目のアミノ酸がスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンもしくはチロシンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がリジンもしくはアルギニンで置換されている、アミノ酸配列からなるCTL誘導能を有するペプチドであり得る。すなわち、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列に対して、以下の(a)および(b)の中より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列を含む、CTL誘導能を有するペプチドであり得る:
(a)N末端から2番目のアミノ酸がスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンまたはチロシンで置換されている;および
(b)C末端のアミノ酸がリジンまたはアルギニンで置換されている。
【0062】
好ましい態様では、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列に対して、上記(a)~(b)の中より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列からなる、CTL誘導能を有するペプチドであり得る。より好ましい態様では、N末端から2番目のアミノ酸はスレオニン、バリン、イソロイシンまたはロイシンで置換されている。
【0063】
HLA-A33では、N末端から2番目のアミノ酸としてフェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシンおよびバリンが、C末端のアミノ酸としてアルギニンおよびリジンが、HLA-A33に対する結合親和性が高いアンカー残基として知られている(Falk, et al., Immunogenetics 1994 40 232-41; Takiguchi, et al., Tissue Antigens 2000: 55: 296-302.)。さらに、HLA-A33では、N末端から1番目のアミノ酸残基もアンカー残基として機能することが知られており、N末端から1番目のアミノ酸としてアスパラギン酸およびグルタミン酸が好ましいことが知られている(Falk, et al., Immunogenetics 1994 40 232-41; Takiguchi, et al., Tissue Antigens 2000: 55: 296-302.)。そのため、HLA-A33結合親和性を維持または増大させるためには、N末端から1番目のアミノ酸をアスパラギン酸もしくはグルタミン酸で置換すること、N末端から2番目のアミノ酸をフェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシンもしくはバリンで置換すること、および/またはC末端のアミノ酸をアルギニンもしくはリジンで置換することが望ましい可能性がある。したがって、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から1番目のアミノ酸がアスパラギン酸もしくはグルタミン酸で置換されている、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシンもしくはバリンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がアルギニンもしくはリジンで置換されている、アミノ酸配列を含むCTL誘導能を有するペプチドは、本発明のペプチドに包含される。好ましい態様では、本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から1番目のアミノ酸がアスパラギン酸もしくはグルタミン酸で置換されている、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシンもしくはバリンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がアルギニンもしくはリジンで置換されている、アミノ酸配列からなるCTL誘導能を有するペプチドであり得る。すなわち、本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列に対して、以下の(a)~(c)の中より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列を含む、CTL誘導能を有するペプチドを包含する:
(a)N末端から1番目のアミノ酸がアスパラギン酸またはグルタミン酸で置換されている;
(b)N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシンまたはバリンで置換されている;および
(c)C末端のアミノ酸がアルギニンまたはリジンで置換されている。
【0064】
好ましい態様では、本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列に対して、上記(a)~(c)の中より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列からなる、CTL誘導能を有するペプチドであり得る。本発明において、好ましい置換の数は、上記(a)~(c)から選択される1個、2個、または3個の置換である。
【0065】
また、本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシンもしくはバリンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がアルギニンもしくはリジンで置換されている、アミノ酸配列を含むCTL誘導能を有するペプチドであり得る。好ましくは、本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシンもしくはバリンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がアルギニンもしくはリジンで置換されている、アミノ酸配列からなるCTL誘導能を有するペプチドであり得る。すなわち、本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列に対して、以下の(a)および(b)の中より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列を含む、CTL誘導能を有するペプチドであり得る:
(a)N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシンもしくはバリンで置換されている;および
(b)C末端のアミノ酸がアルギニンまたはリジンで置換されている。
【0066】
好ましい態様では、本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列に対して、上記(a)および(b)の中より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列からなる、CTL誘導能を有するペプチドであり得る。より好ましい態様では、N末端から2番目のアミノ酸はフェニルアラニンまたはチロシンで置換されている。
【0067】
HLA-A03では、N末端から2番目のアミノ酸としてロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、イソロイシン、セリン、およびスレオニンが、C末端のアミノ酸としてアルギニン、リジン、チロシン、およびフェニルアラニンが、HLA-A03に対する結合親和性が高いアンカー残基として知られている(Kubo RT. et al., J Immunol. 1994 Apr 15;152(8):3913-24; Sidney J et al., Hum Immunol. 1996 Feb;45(2):79-93; Gambacorti-Passerini C et al., Clin Cancer Res. 1997 May;3(5):675-83)。そのため、HLA-A03結合親和性を維持または増大させるためには、N末端から2番目のアミノ酸をロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、イソロイシン、セリン、もしくはスレオニンで置換すること、および/またはC末端のアミノ酸をアルギニン、リジン、チロシン、もしくはフェニルアラニンで置換することが望ましい可能性がある。したがって、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から2番目のアミノ酸がロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、イソロイシン、セリン、またはスレオニンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がアルギニン、リジン、チロシン、またはフェニルアラニンで置換されている、アミノ酸配列を含むCTL誘導能を有するペプチドは、本発明のペプチドに包含される。好ましい態様では、本発明のペプチドは、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列において、N末端から2番目のアミノ酸がロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、イソロイシン、セリン、もしくはスレオニンで置換されている、および/またはC末端のアミノ酸がアルギニン、リジン、チロシン、もしくはフェニルアラニンで置換されている、アミノ酸配列からなるCTL誘導能を有するペプチドであり得る。すなわち、本発明のペプチドは、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列に対して、以下の(a)および(b)の中より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列を含む、CTL誘導能を有するペプチドを包含する:
(a)N末端から2番目のアミノ酸がロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、イソロイシン、セリン、またはスレオニンで置換されている;および
(b)C末端のアミノ酸がアルギニン、リジン、チロシン、またはフェニルアラニンで置換されている。
【0068】
好ましい態様では、本発明のペプチドは、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列に対して、上記(a)および(b)の中より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列からなる、CTL誘導能を有するペプチドであり得る。本発明において、好ましい置換の数は、上記(a)および(b)から選択される1個または2個の置換である。
【0069】
より好ましい態様では、N末端から2番目のアミノ酸はロイシン、メチオニン、またはバリンで置換されている。
【0070】
アンカー部位のアミノ酸においてだけでなく、ペプチドの潜在的なT細胞受容体(TCR)認識部位においても、置換を導入することができる。いくつかの研究は、例えばCAP1、p53(264-272)、Her-2/neu(369-377)、またはgp100(209-217)など、アミノ酸置換を有するペプチドが元のペプチドと同等の活性を有するかまたはより優れた活性を有し得ることを実証している(Zaremba et al. Cancer Res. 57, 4570-7, 1997、T. K. Hoffmann et al. J Immunol. (2002) Feb 1;168(3):1338-47.、S. O. Dionne et al. Cancer Immunol immunother. (2003) 52: 199-206、およびS. O. Dionne et al. Cancer Immunology, Immunotherapy (2004) 53, 307-14)。
【0071】
本発明はまた、本発明のペプチド(例えば、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47の中から選択されるアミノ酸配列からなるペプチド)のN末端および/またはC末端に、1個、2個、または数個のアミノ酸を付加することができることを企図する。CTL誘導能を保持するそのような改変ペプチドもまた、本発明に含まれる。例えば、配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなるペプチドのN末端および/またはC末端に1個、2個、または数個のアミノ酸が付加されたペプチドは、APCに接触させると、APC内に取り込まれてプロセッシングを受け、配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなるペプチドとなる。その後、抗原提示経路を経て、APCの細胞表面に提示されることにより、CTLを誘導し得る。すなわち本発明のペプチドは、N末端およびC末端の、いずれか、または両方に1個、2個、または数個のアミノ酸が付加されたペプチドであることができる。
【0072】
しかしながら、ペプチドのアミノ酸配列が、異なる機能を有する内因性または外因性タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一である場合、自己免疫障害および/または特定の物質に対するアレルギー症状などの副作用が誘発される可能性がある。したがって、ペプチドのアミノ酸配列が他のタンパク質のアミノ酸配列と一致する状況を回避するために、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を行うことが好ましい。相同性検索から、対象ペプチドと比較して1個または2個のアミノ酸が異なるペプチドさえも存在しないことが明らかになった場合には、そのような副作用の危険を伴うことなしに、HLA抗原とのその結合親和性を増大させるため、および/またはそのCTL誘導能を増大させるために、該対象ペプチドを改変することができる。
【0073】
本発明のペプチドの1個、2個、または数個のアミノ酸が改変されたペプチドは、元のペプチドのCTL誘導能を保持し得ると予測されるが、改変ペプチドに関してCTL誘導能を確認することが好ましい。本明細書において「CTL誘導能を有するペプチド」とは、そのペプチドで刺激されたAPCによって、CTLが誘導されるペプチドを指す。「CTLの誘導」には、CTLへの分化誘導、CTL活性化の誘導、CTL増殖の誘導、CTLの細胞傷害活性の誘導、CTLによる標的細胞の溶解の誘導、およびCTLのIFN-γ産生増加の誘導が含まれる。
【0074】
CTL誘導能の確認は、HLA抗原を保有するAPC(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞)を誘導し、ペプチドで刺激した後、CD8陽性T細胞と混合し、その後、標的細胞に対してCTLによって放出されたIFN-γを測定することにより行うことができる。APCは、好ましくは、ヒト末梢血単核白血球由来の樹状細胞を使用することができる。反応系として、HLA抗原を発現するように作製されたトランスジェニック動物を用いることもできる。また、例えば、標的細胞を51Cr等で放射標識し、標的細胞から放出された放射活性からペプチドで誘導されたCTLの細胞傷害活性を算出することができる。あるいは、ペプチドで刺激したAPCの存在下で、CTLによって産生および放出されたIFN-γを測定し、抗IFN-γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻止帯を可視化することによって、CTL誘導能を評価することができる。
【0075】
上記の改変に加えて、本発明のペプチドは、結果として生じる連結ペプチドがCTL誘導能を保持する限り、他のペプチドに連結させることもできる。本発明のペプチドと連結させる適切なペプチドの例としては、TAAに由来するCTL誘導性ペプチドが挙げられる。また、本発明のペプチド同士を連結させることもできる。ペプチド間の連結に使用できる適切なリンカーは当技術分野で公知であり、例えばAAY(P. M. Daftarian et al., J Trans Med 2007, 5:26)、AAA、NKRK(配列番号:85)(R. P. M. Sutmuller et al., J Immunol. 2000, 165: 7308-15)、またはK(S. Ota et al., Can Res. 62, 1471-6、K. S. Kawamura et al., J Immunol. 2002, 168: 5709-15)のようなリンカーを使用することができる。ペプチドは、様々な配置(例えば、連鎖状、重複など)で連結することができ、3つ以上のペプチドを連結することもできる。
【0076】
本発明のペプチドはまた、結果として生じる連結ペプチドがCTL誘導能を保持する限り、他の物質に連結させることもできる。本発明のペプチドと連結させる適切な物質の例としては、例えば、ペプチド、脂質、糖もしくは糖鎖、アセチル基、および天然もしくは合成のポリマー等が挙げられる。本発明のペプチドは、CTL誘導能が損なわれない限り、糖鎖付加、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を行うこともできる。このような種類の修飾を行って、付加的な機能(例えば、標的化機能および送達機能)を付与すること、またはペプチドを安定化することができる。
【0077】
例えば、ペプチドのインビボ安定性を高めるために、D-アミノ酸、アミノ酸模倣体、または非天然アミノ酸を導入することが当技術分野において公知であり、この概念を本発明のペプチドに適合させることもできる。ペプチドの安定性は、いくつかの方法でアッセイすることができる。例えば、ペプチダーゼ、ならびにヒトの血漿および血清などの様々な生体媒質を用いて、安定性を試験することができる(例えば、Verhoef et al., Eur J Drug Metab Pharmacokin 1986, 11: 291-302を参照されたい)。
【0078】
さらに、上述したように、1個、2個、または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加された改変ペプチドの中から、元のペプチドと比較して同じかまたはそれよりも高い活性を有するものをスクリーニングまたは選択することができる。したがって本発明はまた、元のものと比較して同じかまたはそれよりも高い活性を有する改変ペプチドをスクリーニングまたは選択する方法を提供する。具体的には、本発明は、CTL誘導能を有するペプチドをスクリーニングする方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
(a)配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47の中から選択されるアミノ酸配列からなる元のアミノ酸配列に対して、1個、2個、または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなる候補配列を作成する段階;
(b)(a)で作成した候補配列の中からCDCA1以外のいかなる公知のヒト遺伝子産物とも有意な相同性(配列同一性)を有さない候補配列を選択する段階;
(c)(b)で選択した候補配列からなるペプチドと、APCとを接触させる段階;
(d)(c)のAPCとCD8陽性T細胞とを接触させる段階;および
(e)元のアミノ酸配列からなるペプチドよりも同等かまたはより高いCTL誘導能を有するペプチドを選択する段階。
【0079】
本明細書において、本発明のペプチドはまた、「CDCA1ペプチド」または「CDCA1ポリペプチド」とも記載される。
【0080】
III.本発明のペプチドの調製
周知の技法を用いて、本発明のペプチドを調製することができる。例えば、組換えDNA技術または化学合成を用いて、本発明のペプチドを調製することができる。本発明のペプチドは、個々に、または2つもしくはそれ以上のペプチドを含むより長いポリペプチドとして、合成することができる。組換えDNA技術を用いて宿主細胞内で産生させた後、または化学合成した後、宿主細胞または合成反応物から、本発明のペプチドを単離することができる。すなわち、他の宿主細胞タンパク質およびそれらの断片、または他のいかなる化学物質も実質的に含まないように、本発明のペプチドを精製または単離することができる。
【0081】
本発明のペプチドは、修飾によって元のペプチドの生物活性が損なわれない限り、糖鎖付加、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含み得る。他の例示的な修飾には、例えば当該ペプチドの血清半減期を延長させるために用いることができる、D-アミノ酸または他のアミノ酸模倣体の取り込みが含まれる。
【0082】
選択されたアミノ酸配列に基づいた化学合成によって、本発明のペプチドを得ることができる。該合成に適合させることのできる従来のペプチド合成法の例には、以下のような文献に記載の方法が含まれる:
(i)Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966;
(ii)The Proteins, Vol. 2, Academic Press, New York, 1976;
(iii)「ペプチド合成」(日本語), 丸善, 1975;
(iv)「ペプチド合成の基礎と実験」(日本語), 丸善, 1985;
(v)「医薬品の開発」(日本語), 続第14巻(ペプチド合成), 広川書店, 1991;
(vi)WO99/67288;および
(vii)Barany G. & Merrifield R.B., Peptides Vol. 2, Solid Phase Peptide Synthesis, Academic Press, New York, 1980, 100-118。
【0083】
あるいは、ペプチドを産生するための任意の公知の遺伝子工学的方法を適合させて、本発明のペプチドを得ることもできる(例えば、Morrison J, J Bacteriology 1977, 132: 349-51;Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology (Wu et al.) 1983, 101: 347-62)。例えば、最初に、本発明のペプチドを発現可能な形態で(例えば、プロモーター配列に相当する調節配列の下流に)コードするポリヌクレオチドを含む適切なベクターを調製し、適切な宿主細胞に形質転換する。次いで、該宿主細胞を培養して、本発明のペプチドを産生させる。あるいは、インビトロ翻訳系を用いて、本発明のペプチドをインビトロで作製することもできる。
【0084】
IV.ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明のペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。これらには、天然CDCA1遺伝子(例えば、GenBankアクセッション番号NM_145697(配列番号:81)またはGenBankアクセッション番号NM_031423(配列番号:83))由来のポリヌクレオチド、およびその保存的に改変されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。本明細書において「保存的に改変されたヌクレオチド配列」という語句は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、数多くの機能的に同一の核酸が任意の特定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、あるコドンによってアラニンが指定される任意の位置において、コードされるポリペプチドを変化させることなく、該コドンを前記の対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸の変異は「サイレント変異」であり、保存的に改変された変異の一種である。ペプチドをコードする本明細書中のあらゆる核酸配列は、該核酸のあらゆる可能なサイレント変異をも表す。核酸中の各コドン(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一の分子を得ることができることを、当業者は認識するであろう。したがって、ペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、開示した各配列において非明示的に記載されている。
【0085】
本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNA、およびそれらの誘導体から構成され得る。DNAはA、T、C、およびGなどの塩基から適切に構成され、RNAではTはUに置き換えられる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドは、介在するアミノ酸配列を間に伴って、または伴わずに、本発明の複数のペプチドをコードし得る。例えば、介在するアミノ酸配列は、ポリヌクレオチドまたは翻訳されたペプチドの切断部位(例えば、酵素認識配列)を提供し得る。さらに、ポリヌクレオチドは、本発明のペプチドをコードするコード配列に対する任意の付加的配列を含み得る。例えば、ポリヌクレオチドは、ペプチドの発現に必要な調節配列を含む組換えポリヌクレオチドであってよく、またはマーカー遺伝子等を有する発現ベクター(例えば、プラスミド)であってもよい。一般に、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いる従来の組換え技法によりポリヌクレオチドを操作することによって、そのような組換えポリヌクレオチドを調製することができる。
【0087】
組換え技法および化学合成技法のいずれを用いても、本発明のポリヌクレオチドを作製することができる。例えば、適切なベクターに挿入することによってポリヌクレオチドを作製することができ、これはコンピテント細胞にトランスフェクトした場合に発現され得る。あるいは、PCR技法または適切な宿主内での発現を用いて、ポリヌクレオチドを増幅することもできる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989を参照されたい)。あるいは、Beaucage SL & Iyer RP, Tetrahedron 1992, 48: 2223-311;Matthes et al., EMBO J 1984, 3: 801-5に記載されている固相技法を用いて、ポリヌクレオチドを合成することもできる。
【0088】
V.エキソソーム
本発明はさらに、本発明のペプチドとHLA抗原との間に形成された複合体を自身の表面上に提示する、エキソソームと称される細胞内小胞を提供する。エキソソームは、例えば特表平11-510507号およびWO99/03499に詳述されている方法を用いて調製することができ、治療および/または予防の対象となる患者から得られたAPCを用いて調製することができる。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様の様式で、ワクチンとして接種することができる。
【0089】
前記複合体中に含まれるHLA抗原の型は、治療および/または予防を必要とする対象のものと一致しなければならない。例えばHLA-A11(例えば、HLA-A*1101)およびHLA-A33(例えば、HLA-A*3303)はアジア人集団で広く一般的に見られるアリルであり、これらのHLA抗原の型はアジア人患者の治療に適していると考えられる。またHLA-A03(例えば、HLA-A*0301)は白人集団で広く一般的に見られるアリルであり、白人患者の治療に適していると考えられる。典型的には、臨床において、治療を必要とする患者のHLA抗原の型を予め調べることにより、特定のHLA抗原に対して高レベルの結合親和性を有する、または特定のHLA抗原を介した抗原提示によるCTL誘導能を有するペプチドの適切な選択が可能となる。
【0090】
本発明のエキソソームは、本発明のペプチドとHLA-A11、HLA-A33またはHLA-A03との複合体をその表面上に提示する。本発明のペプチドと複合体を形成するHLAがHLA-A11である場合、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドであることが好ましく、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその改変ペプチドであることがより好ましい。また、本発明のペプチドと複合体を形成するHLAがHLA-A33である場合、本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドであることが好ましく、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ配列からなるペプチドまたはその改変ペプチドであることがより好ましい。また、本発明のペプチドと複合体を形成するHLAがHLA-A03である場合、本発明のペプチドは、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドであることが好ましく、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその改変ペプチドであることがより好ましい。
【0091】
VI.抗原提示細胞(APC)
本発明はまた、HLA抗原と本発明のペプチドとの間に形成される複合体を自身の表面上に提示するAPCを提供する。あるいは、本発明は、HLA抗原と本発明のペプチドとの間に形成された複合体をその細胞表面上に有するAPCを提供する。本発明のAPCは、単離されたAPCであり得る。細胞(APC、CTL等)に関して用いられる場合、「単離された」という用語は、該細胞が他の種類の細胞から分離されていることを指す。本発明のAPCは、治療および/または予防の対象となる患者に由来するAPCから誘導されたものであってもよく、かつ単独で、または本発明のペプチド、エキソソーム、もしくはCTLを含む他の薬物と併用して、ワクチンとして投与することができる。
【0092】
本発明のAPCは特定の種類の細胞に限定されず、リンパ球によって認識されるように自身の細胞表面上にタンパク質性抗原を提示することが知られている細胞、例えば樹状細胞(dendritic cell:DC)、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞、および活性化T細胞が含まれる。DCは、APCの中で最も強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCであるため、DCは本発明のAPCとして好ましく使用され得る。本発明において、好ましいDCは、ヒト由来の単離されたDCである。また本発明のAPCは、抗原提示機能を有する複数種類の細胞の混合物であってもよく、それぞれ異なる本発明のペプチドを提示するAPCの混合物であってもよい。
【0093】
例えば、末梢血単核球からDCを単離し、次にそれらをインビトロで本発明のペプチドで刺激することによって、本発明のAPCを得ることができる。本発明のペプチドを対象に投与した場合、本発明のペプチドを提示するAPCが該対象の体内で誘導される。したがって、本発明のAPCは、本発明のペプチドを対象に投与した後、該対象からAPCを回収することによって得ることができる。あるいは、本発明のAPCは、対象から回収されたAPCを本発明のペプチドと接触させることによって得ることもできる。
【0094】
対象において、CDCA1を発現するがん細胞に対する免疫応答を誘導するために、本発明のAPCを単独で、または本発明のペプチド、エキソソーム、もしくはCTLを含む他の薬剤と併用して、対象に投与することができる。例えば、エクスビボ投与は以下の段階を含み得る:
(a)第1の対象からAPCを回収する段階、
(b)段階(a)のAPCをペプチドと接触させる段階、および
(c)段階(b)のAPCを第2の対象に投与する段階。
【0095】
第1の対象と第2の対象は同一の個体であってもよく、または異なる個体であってもよい。第1の対象と第2の対象が異なる個体である場合、第1の対象と第2の対象のHLAは同一の型であることが好ましい。上記の段階bによって得られたAPCは、がんを治療および/または予防するためのワクチンとなり得る。
【0096】
上記のような方法によって得られた、本発明のAPCは、CTL誘導能を有する。APCに関して用いられる「CTL誘導能」という用語は、CD8陽性T細胞と接触させたときに、CTLを誘導することができるAPCの能力を指す。さらに、「CTL誘導能」には、CTL活性化を誘導するAPCの能力、CTL増殖を誘導するAPCの能力、CTLによる標的細胞の溶解を促進するAPCの能力、および、CTLによるIFN-γ産生を増加させるAPCの能力が含まれる。本発明のAPCによって誘導されたCTLは、CDCA1に特異的なCTLであり、CDCA1発現細胞に対して特異的な細胞傷害活性を示す。
【0097】
本発明のAPCは、上記の方法に加え、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをインビトロでAPCに導入することによって調製することもできる。導入するポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAの形態であってよい。導入の方法の例には、特に限定されることなく、リポフェクション、エレクトロポレーション、およびリン酸カルシウム法などの、当分野において従来実施されている様々な方法が含まれる。より具体的には、Cancer Res 1996, 56: 5672-7;J Immunol 1998, 161: 5607-13;J Exp Med 1996, 184: 465-72;公表特許公報第2000-509281号に記載されているような方法を用いることができる。本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入することによって、該ポリヌクレオチドは細胞内で転写、翻訳等を受け、次いで、生じたペプチドはMHCクラスIによってプロセシングされて、提示経路を経て本発明のペプチドがAPCの細胞表面に提示される。
【0098】
好ましい態様において、本発明のAPCは、HLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)またはHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)と本発明のペプチドとの間に形成される複合体を、自身の細胞表面上に提示している。本発明のペプチドと複合体を形成するHLAがHLA-A11である場合、本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドであることが好ましく、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドであることがより好ましい。本発明のペプチドと複合体を形成するHLAがHLA-A33である場合、本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドであることが好ましく、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ配列からなるペプチドであることがより好ましい。本発明のペプチドと複合体を形成するHLAがHLA-A03である場合、本発明のペプチドは、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドであることが好ましく、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドであることがより好ましい。
【0099】
また、本発明のAPCは、好ましくは、以下の(a)または(b)に記載される段階を含む方法によって誘導されるAPCである:
(a)HLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)およびHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)の中より選択される少なくとも1つのHLAを発現しているAPCを本発明のペプチドと接触させる段階;
(b)HLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)およびHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)の中より選択される少なくとも1つのHLAを発現しているAPCに、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入する段階。
【0100】
HLA-A11を発現しているAPCと接触させる本発明のペプチドは、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドであることが好ましく、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドであることがより好ましい。
【0101】
HLA-A33を発現しているAPCと接触させる本発明のペプチドは、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドであることが好ましく、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ配列からなるペプチドであることがより好ましい。
【0102】
HLA-A03を発現しているAPCと接触させる本発明のペプチドは、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドであることが好ましく、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドであることがより好ましい。
【0103】
また、本発明によれば、CTL誘導能を有するAPCを誘導する薬学的組成物を製造するための本発明のペプチドの使用が提供される。加えて、本発明は、CTL誘導能を有するAPCを誘導する薬学的組成物を製造するための方法または工程を提供する。さらに、本発明はまた、CTL誘導能を有するAPCを誘導するための本発明のペプチドを提供する。
【0104】
VII.細胞傷害性Tリンパ球(CTL)
本発明のペプチドによって誘導されたCTLは、インビボでCDCA1を発現するがん細胞を標的とする免疫応答を増強するため、本発明のペプチドと同様にワクチンとして用いることができる。したがって本発明は、本発明のペプチドによって誘導または活性化された、CTLを提供する。本発明のCTLは、本発明のペプチドを標的とするCTLであり、本発明のペプチドとHLA抗原との複合体に結合することができるCTLである。該複合体へのCTLの結合は、CTLの細胞表面上に存在するT細胞受容体(TCR)を介して行われる。本発明のCTLは、単離されたCTLであり得る。好ましいCTLは、ヒト由来の単離されたCTLである。また本発明のCTLはそれぞれ異なる本発明のペプチドを標的とするCTLの混合物であってもよい。
【0105】
本発明のCTLは、(1)本発明のペプチドを対象に投与すること、または(2)対象由来のAPC、およびCD8陽性T細胞、もしくは末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)をインビトロで本発明のペプチドで刺激すること、または(3)CD8陽性T細胞もしくはPBMCを、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するAPCもしくはエキソソームとインビトロで接触させること、または(4)細胞表面上にHLA抗原により提示された本発明のペプチドに結合し得るT細胞受容体(TCR)の各サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含むベクターをCD8陽性T細胞に導入すること、によって得ることができる。上記(2)または(3)の方法で使用されるエキソソームおよびAPCは、それぞれ「V.エキソソーム」および「VI.抗原提示細胞(APC)」の章に記載の方法によって調製することができ、上記(4)の方法の詳細は「VIII.T細胞受容体(TCR)」の章において記載する。
【0106】
本発明のCTLは、治療および/または予防の対象となる患者に対して、単独で投与することができ、または効果を調節する目的で本発明のペプチド、APCもしくはエキソソームを含む他の薬物と併用して投与することができる。また、本発明のCTLは、該CTLの投与対象となる患者に由来するCD8陽性T細胞から誘導されたCTLであり得る。本発明のCTLは、本発明のペプチド、例えば本発明のCTLの誘導に用いたものと同一のペプチドを提示する標的細胞に対して特異的に作用する。標的細胞は、がん細胞のようにCDCA1を内因的に発現する細胞、またはCDCA1遺伝子をトランスフェクトした細胞であってよい。本発明のペプチドによる刺激によって該ペプチドを細胞表面上に提示する細胞もまた、本発明のCTLの攻撃の標的となり得る。また、本発明のCTLの標的細胞は、好ましくは、HLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)およびHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)の少なくとも1つが陽性の細胞である。
【0107】
好ましい態様において、本発明のCTLは、HLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)およびHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)の中より選択される少なくとも1つのHLAとCDCA1の両方を発現している細胞を特異的に標的とする。本発明において、CTLが標的とする細胞は、HLA-A11、HLA-A33およびHLA-A03アリルのいずれかを、ホモまたはヘテロに有する細胞であることができる。
【0108】
本明細書において、CTLが細胞を「標的とする」とは、HLAと本発明のペプチドとの複合体を細胞表面に提示している細胞をCTLが認識して、該細胞に対して細胞傷害活性を示すことをいう。また、「特異的に標的とする」とは、CTLが該細胞に対して細胞傷害活性を示すが、それ以外の細胞に対しては傷害活性を示さないことをいう。また、CTLとの関連では、「細胞を認識する」という用語は、細胞表面に提示されるHLAと本発明のペプチドとの複合体にそのTCRを介して結合し、該細胞に対して特異的な細胞傷害活性を示すことを指す。したがって、本発明のCTLは、好ましくは、細胞表面上に提示されたHLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)またはHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)と本発明のペプチドとの間に形成される複合体に、TCRを介して結合することができるCTLである。
【0109】
また、本発明のCTLは、好ましくは、以下の(a)または(b)に記載される段階を含む方法によって誘導されたCTLである:
(a)CD8陽性T細胞を、HLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)またはHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するAPCまたはエキソソームとインビトロで接触させる段階;
(b)CD8陽性T細胞に、細胞表面上にHLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)またはHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)により提示された本発明のペプチドに結合し得るTCRの各サブユニットをコードするポリヌクレオチドを導入する段階。
【0110】
VIII.T細胞受容体(TCR)
本発明はまた、細胞表面上にHLA抗原により提示された本発明のペプチドに結合し得るTCRの各サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む組成物、およびそれを使用する方法を提供する。該ポリヌクレオチドは、細胞表面上にHLA抗原により細胞表面上に提示された本発明のペプチドに結合し得るTCRを発現させることにより、CDCA1を発現するがん細胞に対する特異性をCD8陽性T細胞に付与する。当技術分野における公知の方法を用いることにより、本発明のペプチドで誘導されたCTLのTCRサブユニットとしてのα鎖およびβ鎖をコードするポリヌクレオチドを同定することができる(WO2007/032255、およびMorgan et al., J Immunol, 171, 3288 (2003))。例えば、TCRを分析するためにはPCR法が好ましい。分析のためのPCRプライマーは、例えば、次の5'側プライマーに、以下の3'側プライマーを組み合わせて増幅用プライマーセットとすることができるが、これらに限定されない。
5'側プライマー:
5'-Rプライマー(5'-gtctaccaggcattcgcttcat-3')(配列番号:77)
3'側プライマー:
TCRα鎖C領域に特異的:
3-TRa-Cプライマー(5'-tcagctggaccacagccgcagcgt-3')(配列番号:78)
TCRβ鎖C1領域に特異的:
3-TRb-C1プライマー(5'-tcagaaatcctttctcttgac-3')(配列番号:79)、または
TCRβ鎖C2領域に特異的:
3-TRβ-C2プライマー(5'-ctagcctctggaatcctttctctt-3')(配列番号:80)
同定されたポリヌクレオチドをCD8陽性T細胞に導入することによって形成されるTCRは、本発明のペプチドを提示する標的細胞と高い結合力で結合することができ、かつ、本発明のペプチドを提示する標的細胞の効率的な殺傷をインビボおよびインビトロで媒介する。
【0111】
TCRの各サブユニットをコードするポリヌクレオチドは、適切なベクター、例えばレトロウイルスベクターに組み込むことができる。これらのベクターは、当技術分野において周知である。該ポリヌクレオチドまたはそれらを発現可能な形態で含むベクターを、CD8陽性T細胞、例えば患者由来のCD8陽性T細胞に導入することができる。本発明は、患者自身のT細胞(または別の対象由来のT細胞)の迅速な改変により、優れたがん細胞殺傷特性を有する改変T細胞を迅速かつ容易に作製することを可能にする既成の組成物を提供する。
【0112】
本明細書において、特異的TCRとは、該TCRがCD8陽性T細胞の表面上に存在する場合に、標的細胞表面上に提示された本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を特異的に認識して、標的細胞に対する特異的な細胞傷害活性を付与し得るTCRである。上記複合体の特異的認識は任意の公知の方法によって確認することができ、その好ましい例には、HLA分子および本発明のペプチドを用いるHLA多量体染色分析、ならびにELISPOTアッセイ法が含まれる。ELISPOTアッセイを行うことにより、上記ポリヌクレオチドを導入したT細胞がTCRによって標的細胞を特異的に認識すること、およびシグナルが細胞内で伝達されることを確認することができる。上記TCRがCD8陽性T細胞表面上に存在する場合に、該TCRが、CD8陽性T細胞に対して、標的細胞特異的な細胞傷害活性を付与し得るという確認もまた、公知の方法によって行うことができる。好ましい方法には、例えば、クロム放出アッセイ法などにより標的細胞に対する細胞傷害活性を測定することが含まれる。
【0113】
また本発明は、HLA-A11との関連では、例えば配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドに結合するTCRの各サブユニットをコードするポリヌクレオチドを、CD8陽性T細胞に形質導入することによって調製されるCTLを提供する。
【0114】
また本発明は、HLA-A33との関連では、例えば配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドに結合するTCRの各サブユニットをコードするポリヌクレオチドを、CD8陽性T細胞に形質導入することによって調製されるCTLを提供する。
【0115】
また本発明は、HLA-A03との関連では、例えば配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドに結合するTCRの各サブユニットをコードするポリヌクレオチドを、CD8陽性T細胞に形質導入することによって調製されるCTLを提供する。
【0116】
形質導入されたCTLは、インビボでホーミングすることができ、かつ周知のインビトロ培養法によって増殖させることができる(例えば、Kawakami et al., J Immunol., 142, 3452-61 (1989))。本発明のCTLは、治療または予防を必要としている患者における疾患の治療または予防に有用な免疫原性組成物を形成するために使用することができる(その内容が参照により本明細書に組み入れられるWO2006/031221を参照されたい)。
【0117】
IX.薬学的組成物
本発明はまた、以下の中から選択される少なくとも1つの有効成分を含む、組成物または薬学的組成物を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のAPC;
(d)本発明のエキソソーム;
(e)本発明のCTL。
【0118】
本発明の薬学的組成物は、上記の有効成分に加えて、医薬品に通常用いられる担体、賦形剤等を特に制限なく必要に応じて含み得る。本発明の薬学的組成物に使用可能な担体の例としては、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液等が挙げられる。したがって、本発明はまた、以下の(a)~(e)から選択される少なくとも1つの有効成分と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のAPC;
(d)本発明のエキソソーム;
(e)本発明のCTL。
【0119】
さらに、本発明の薬学的組成物は、必要に応じて、安定剤、懸濁液、保存剤、界面活性剤、溶解補助剤、pH調整剤、凝集抑制剤等を含み得る。
CDCA1の発現は、正常組織と比較して、がん細胞において、有意に上昇する。そのため、本発明のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを、がんの治療および/もしくは予防、ならびに/または術後のその再発の予防に用いることができる。したがって本発明は、がんの治療および/もしくは予防、ならびに/または術後のその再発の予防のための薬学的組成物であって、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドの1種類または複数種を有効成分として含む組成物を提供する。あるいは、薬学的組成物として用いるために、本発明のペプチドを、エキソソームまたはAPCの表面上に提示させることができる。加えて、本発明のペプチドのいずれか1つを標的とする本発明のCTLもまた、本発明の薬学的組成物の有効成分として用いることができる。本発明の薬学的組成物は、治療的有効量または薬学的有効量の上記有効成分を含み得る。
【0120】
本発明の薬学的組成物はまた、ワクチンとして使用され得る。本発明との関連において、「ワクチン」(「免疫原性組成物」とも称される)という語句は、動物に接種した際に、抗腫瘍作用をもたらす免疫応答を誘導する機能を有する組成物を指す。したがって、本発明の薬学的組成物は、抗腫瘍作用をもたらす免疫応答を誘導するために用いることができる。本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APC、CTLおよび薬学的組成物によって誘導される免疫応答は、抗腫瘍作用をもたらす免疫応答であれば特に限定されないが、例示的には、がん細胞に特異的なCTLの誘導、およびがん細胞に特異的な細胞傷害活性の誘導を含む。
本発明の薬学的組成物は、ヒトである対象または患者において、がんを治療および/もしくは予防するため、ならびに/または術後のその再発を予防するために用いることができる。本発明の薬学的組成物は、HLA-A11、HLA-A33およびHLA-A03の中より選択される少なくとも1つのHLAが陽性の対象に対して、好ましく使用することができる。また、本発明の薬学的組成物は、HLA-A11、HLA-A33およびHLA-A03の中より選択される少なくとも1つのHLAならびにCDCA1を発現するがんを治療および/もしくは予防するため、ならびに/または術後のその再発を予防するために、好ましく用いることができる。
【0121】
別の態様において、本発明はまた、がんを治療または予防するための薬学的組成物の製造における、以下の中より選択される有効成分の使用を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0122】
あるいは、本発明はさらに、がんの治療または予防において用いるための、以下の中より選択される有効成分を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0123】
あるいは、本発明はさらに、がんを治療または予防するための薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、以下の中より選択される少なくとも1つの有効成分と、薬学的にまたは生理学的に許容される担体とを製剤化する段階を含む方法または工程を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0124】
別の態様において、本発明はまた、がんを治療または予防するための薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、以下の中より選択される有効成分を薬学的にまたは生理学的に許容される担体と混合する段階を含む方法または工程を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0125】
別の態様において、本発明はまた、がんを治療または予防するための方法であって、以下の中より選択される少なくとも1つの有効成分を対象に投与する段階を含む方法を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0126】
本発明において、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドは、強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA-A11拘束性エピトープペプチドとして見出された。したがって、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドの少なくとも1つを含む本発明の薬学的組成物は、HLA抗原としてHLA-A11(例えば、HLA-A*1101)を有する対象への投与に特に適している。同じことが、これらのペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチド)、これらのペプチドを提示するAPCまたはエキソソーム(すなわち、本発明のAPCまたはエキソソーム)、およびこれらのペプチドを標的とするCTL(すなわち、本発明のCTL)を含む薬学的組成物にも当てはまる。すなわち、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドに関連する有効成分を含む薬学的組成物は、HLA-A11を有する対象(すなわち、HLA-A11陽性の対象)への投与に適している。より好ましい態様では、本発明の薬学的組成物は、配列番号:7のアミノ酸配列を有するペプチドを含む薬学的組成物である。
【0127】
同様に、本発明において、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドは、強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA-A33拘束性エピトープペプチドとして見出された。したがって、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドの少なくとも1つを含む本発明の薬学的組成物は、HLA抗原としてHLA-A33(例えば、HLA-A*3303)を有する対象への投与に特に適している。同じことが、これらのペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチド)、これらのペプチドを提示するAPCまたはエキソソーム(すなわち、本発明のAPCまたはエキソソーム)、およびこれらのペプチドを標的とするCTL(すなわち、本発明のCTL)を含む薬学的組成物にも当てはまる。すなわち、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドに関連する有効成分を含む薬学的組成物は、HLA-A33を有する対象(すなわち、HLA-A33陽性の対象)への投与に適している。より好ましい態様では、本発明の薬学的組成物は、配列番号:27のアミノ酸配列を有するペプチドを含む薬学的組成物である。
【0128】
同様に、本発明において、配列番号:7、38および47の中より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドは、強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA-A03拘束性エピトープペプチドとして見出された。したがって、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドの少なくとも1つを含む本発明の薬学的組成物は、HLA抗原としてHLA-A03(例えば、HLA-A*0301)を有する対象への投与に特に適している。同じことが、これらのペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチド)、これらのペプチドを提示するAPCまたはエキソソーム(すなわち、本発明のAPCまたはエキソソーム)、およびこれらのペプチドを標的とするCTL(すなわち、本発明のCTL)を含む薬学的組成物にも当てはまる。すなわち、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドに関連する有効成分を含む薬学的組成物は、HLA-A03を有する対象(すなわち、HLA-A03陽性の対象)への投与に適している。より好ましい態様では、本発明の薬学的組成物は、配列番号:7または38のアミノ酸配列を有するペプチドを含む薬学的組成物である。
【0129】
本発明の薬学的組成物によって治療および/または予防されるがんは、CDCA1を発現するがんであれば特に限定されず、各種がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、および大腸がんなどを含む。また本発明の薬学的組成物は、HLA-A11、HLA-A33およびHLA-A03から選択されるHLAアリルをホモまたはヘテロで有する対象に使用することが好ましい。
【0130】
本発明の薬学的組成物は、前述の有効成分に加えて、がん細胞に対してCTLを誘導する能力を有するその他のペプチド(例えば他のTAA由来のCTL誘導性ペプチド)、該その他のペプチドをコードするその他のポリヌクレオチド、該その他のペプチドを提示するその他の細胞等を含み得る。
【0131】
本発明の薬学的組成物は、本発明のペプチドなどの上記有効成分の抗腫瘍効果が阻害されない限り、その他の治療物質もまた有効成分として任意に含み得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、抗炎症組成物、鎮痛剤、化学療法薬等を任意に含み得る。本発明の薬学的組成物自体にその他の治療物質を含めることに加えて、本発明の薬学的組成物を、1つまたは複数のその他の薬学的組成物と連続してまたは同時に投与することもできる。本発明の薬学的組成物およびその他の薬学的組成物の投与量は、例えば、使用する薬学的組成物の種類、治療する疾患、ならびに投与のスケジュールおよび経路に依存する。
【0132】
本明細書において具体的に言及される成分に加えて、本発明の薬学的組成物は、製剤の種類を考慮して、当技術分野において慣例的なその他の成分も含み得ることが理解されるべきである。
【0133】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物を含む製品またはキットを提供する。本発明の製品またはキットは、本発明の薬学的組成物を収容した容器を含み得る。適切な容器の例としては、ボトル、バイアル、および試験管が挙げられるが、これらに限定されない。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器には、ラベルが貼付されていてもよく、ラベルには、本発明の薬学的組成物が使用されるべき疾患または疾患の状態を記載することができる。ラベルはまた、投与等に関する指示も示し得る。
【0134】
本発明の製品またはキットは、本発明の薬学的組成物を収容した容器に加えて、任意で、薬学的に許容される希釈剤を収容した第2の容器をさらに含み得る。本発明の製品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、注射針、シリンジ、および使用説明を記載した添付文書などの、商業上の観点および使用者の観点から望ましいその他の材料をさらに含み得る。
【0135】
必要に応じて、有効成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含み得るパックまたはディスペンサー装置にて、本発明の薬学的組成物を提供することができる。該パックは、例えば、ブリスターパックのように金属ホイルまたはプラスチックホイルを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与に関する説明書が添付され得る。
【0136】
(1)有効成分としてペプチドを含む薬学的組成物
本発明のペプチドを含む薬学的組成物は、必要であれば、従来の製剤化法によって製剤化することができる。本発明の薬学的組成物は、本発明のペプチドに加えて、医薬品に通常用いられる担体、賦形剤等を特に制限なく必要に応じて含み得る。本発明の薬学的組成物に使用可能な担体の例としては、滅菌水(例えば、注射用水)、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、0.3%グリシン、培養液等が挙げられる。さらに、本発明の薬学的組成物は、必要に応じて、安定剤、懸濁液、保存剤、界面活性剤、溶解補助剤、pH調整剤、凝集抑制剤等を含み得る。本発明の薬学的組成物は、CDCA1を発現するがん細胞に対して特異的な免疫を誘導することができるため、がんの治療または予防の目的に用いることができる。
【0137】
例えば、本発明の薬学的組成物は、滅菌水(例えば、注射用水)、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水等の薬学的または生理学的に許容される水溶性の担体に溶解し、必要に応じて、安定剤、懸濁液、保存剤、界面活性剤、溶解補助剤、pH調整剤、凝集抑制剤等を添加した後、該ペプチド溶液を滅菌することにより調製することができる。ペプチド溶液の滅菌方法は、特に限定されないが、ろ過滅菌により行うことが好ましい。ろ過滅菌は、例えば、0.22μm以下の孔径のろ過滅菌フィルターを用いて行うことができる。ろ過滅菌後のペプチド溶液は、これに限定されないが、例えば、注射剤として対象に投与することができる。また、本発明の薬学的組成物は、上記ペプチド溶液を凍結乾燥することにより、凍結乾燥製剤として調製してもよい。凍結乾燥製剤は、上記のように調製したペプチド溶液をアンプル、バイアル、またはプラスチック容器等の適切な容器に充填した後、凍結乾燥を行い、復圧後に滅菌洗浄したゴム栓等で容器を封入することにより調製することができる。凍結乾燥製剤は、投与前に、滅菌水(例えば、注射用水)、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水等の薬学的または生理学的に許容される水溶性の担体に再溶解した後、対象に投与することができる。本発明の薬学的組成物の好ましい例には、このようなろ過滅菌されたペプチド溶液の注射剤、および該ペプチド溶液を凍結乾燥した凍結乾燥製剤が含まれる。さらに、このような凍結乾燥製剤と再溶解液とを含むキットもまた本発明に包含される。また、本発明の薬学的組成物である凍結乾燥製剤が収容されている容器と、その再溶解液が収納されている容器とを含むキットもまた本発明に包含される。
【0138】
本発明の薬学的組成物は、本発明のペプチドの2種類またはそれ以上の種類の組み合わせを含むこともできる。ペプチドの組み合わせは、ペプチドが混合されたカクテルの形態をとってよく、または標準的な技法を用いてペプチドを互いに結合させてもよい。例えば、ペプチドを化学的に結合させても、または単一の融合ポリペプチド配列として発現させてもよい。本発明のペプチドを投与することによって、該ペプチドはHLA抗原によってAPC上に高密度で提示され、次いで、提示されたペプチドと該HLA抗原との間に形成された複合体に対して特異的に反応するCTLが誘導される。あるいは、対象からAPC(例えば、DC)を取り出し、次に本発明のペプチドにより刺激して、本発明のペプチドのいずれかを自身の細胞表面上に提示するAPCを得る。これらのAPCを対象に再度投与して、該対象においてCTLを誘導し、結果として、CDCA1を発現するがん細胞に対する攻撃性を増大させることができる。
【0139】
本発明の薬学的組成物は、細胞性免疫を効率的に確立することが知られているアジュバントもまた含み得る。アジュバントとは、免疫学的活性を有する抗原と共に(または連続して)投与した場合に、該抗原に対する免疫応答を増強する化合物を指す。アジュバントとしては、例えばClin Microbiol Rev 1994, 7: 277-89等の文献に記載されている公知のものを使用することができる。適切なアジュバントの例には、アルミニウム塩(リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム等)、ミョウバン、コレラ毒素、サルモネラ毒素、不完全フロイントアジュバント(IFA)、完全フロイントアジュバント(CFA)、ISCOMatrix、GM-CSFその他の免疫刺激性サイトカイン、CpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチド(CpG7909等)、水中油型エマルション、サポニンもしくはその誘導体(QS21等)、リピドAもしくはその誘導体等のリポ多糖(MPL、RC529、GLA、E6020等)、リポペプチド、ラクトフェリン、フラジェリン、二本鎖RNAもしくはその誘導体(ポリIC等)、バクテリアDNA、イミダゾキノリン(イミキモド(Imiquimod)、R848等)、C型レクチンリガンド(トレハロースジベヘン酸(trehalose-6,6'-dibehenate:TDB)等)、CD1dリガンド(α-ガラクトシルセラミド等)、スクアレンエマルション(MF59、AS03、AF03等)、PLGA等が含まれるが、これらに限定されない。アジュバントは、本発明の薬学的組成物を含むキットにおいて、本発明のペプチドを含む薬学的組成物とは別の容器に収容されていてもよい。この場合、該アジュバントと該薬学的組成物は、連続して対象に投与されてもよく、対象への投与直前に混合されてもよい。このような本発明のペプチドを含む薬学的組成物とアジュバントとを含むキットもまた、本発明によって提供される。本発明の薬学的組成物が凍結乾燥製剤である場合には、該キットはさらに再溶解液を含むことができる。また、本発明は、本発明の薬学的組成物が収容されている容器と、アジュバントが収納されている容器とを含むキットを提供する。該キットは、必要に応じて、再溶解液が収納されている容器をさらに含み得る。
【0140】
アジュバントとして油性アジュバントを用いる場合には、本発明の薬学的組成物は、エマルションとして調製されてもよい。エマルションは、例えば、上記のように調製したペプチド溶液と油性アジュバントとを混合・攪拌することにより調製することができる。ペプチド溶液は、凍結乾燥後に再溶解したものであってもよい。エマルションは、W/O型エマルションおよびO/W型エマルションのいずれであってもよいが、高い免疫応答増強効果を得るためにはW/O型エマルションであることが好ましい。油性アジュバントとしてはIFAを好ましく用いることができるが、これに限定されない。エマルションの調製は対象に投与される直前に行われてもよく、この場合には、本発明の薬学的組成物は、本発明のペプチド溶液および油性アジュバントを含むキットとして提供されてもよい。本発明の薬学的組成物が凍結乾燥製剤である場合には、該キットはさらに再溶解液を含むことができる。
【0141】
さらに、本発明の薬学的組成物は、本発明のペプチドを封入したリポソーム製剤、直径数マイクロメートルのビーズにペプチドが結合している顆粒製剤、またはペプチドに脂質が結合している製剤であってもよい。
【0142】
本発明の別の態様において、本発明のペプチドはまた、薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。塩の好ましい例には、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウムなど)との塩、アルカリ土類金属との塩(カルシウム、マグネシウムなど)、その他の金属(銅、鉄、亜鉛、マンガンなど)との塩、有機塩基との塩、アミンとの塩、有機酸(酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸など)との塩、および無機酸(塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸など)との塩が含まれる。本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という語句は、その化合物の生物学的、生理学的、薬理学的または薬学的な有効性および特性を保持する塩を指す。したがって、本発明のペプチドの薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物もまた、本発明に包含される。また「本発明のペプチド」には、遊離体のペプチドのほか、その薬学的に許容される塩も包含される。
【0143】
いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、CTLを刺激する成分をさらに含み得る。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLを刺激し得る物質として同定された。例えば、パルミチン酸残基をリジン残基のεアミノ基およびαアミノ基に付着させ、次に本発明のペプチドに連結させることができる。次いで、脂質付加したペプチドを、ミセルもしくは粒子の状態で直接投与するか、リポソーム中に取り込ませて投与するか、またはアジュバント中に乳化させて投与することができる。CTL応答の脂質による刺激の別の例として、適切なペプチドに共有結合している場合、トリパルミトイル-S-グリセリルシステイニル-セリル-セリン(P3CSS)などの大腸菌(E.coli)リポタンパク質を用いてCTLを刺激することができる(例えば、Deres et al., Nature 1989, 342: 561-4を参照されたい)。
【0144】
本発明のペプチドまたは薬学的組成物の適切な投与方法の例には、経口、皮内、皮下、筋肉内、骨内、腹膜および静脈内注射等、ならびに全身投与または標的部位の近傍への局所投与が含まれるが、これらに限定されない。好ましい投与方法としては、腋窩または鼠頸部等のリンパ節近傍への皮下注射が挙げられる。投与は、単回投与によって行うこともできるし、または複数回投与によってブーストすることもできる。本発明のペプチドは、がんを治療するための治療的もしくは薬学的有効量またはCDCA1を発現するがん細胞に対する免疫(より具体的にはCTL)を誘導するための治療的もしくは薬学的有効量で、対象に投与することができる。本発明のペプチドの用量は、治療される疾患、患者の年齢、体重、投与方法等に応じて適宜調整することができ、これは各本発明のペプチドに関して、通常0.001mg~1000mg、例えば0.01mg~100mg、例えば0.1mg~30mg、例えば0.1mg~10mgであり、例えば0.5mg~5mgであることができる。また、投与間隔は数日~数ヶ月に1度であることができ、例えば週に1回の間隔で投与することができる。当業者は、適切な投与量(用量)を適宜選択することができる。
【0145】
好ましい態様において、本発明の薬学的組成物は、治療的有効量の本発明のペプチドと、薬学的または生理学的に許容される担体を含む。別の態様では、本発明の薬学的組成物は、治療的有効量の本発明のペプチド、薬学的または生理学的に許容される担体、およびアジュバントを含む。本発明の薬学的組成物は、本発明のペプチドを、0.001mg~1000mg、好ましくは0.01mg~100mg、より好ましくは0.1mg~30mg、さらに好ましくは0.1mg~10mg、例えば0.5mg~5mg含むことができる。また、本発明の薬学的組成物が注射剤である場合には、本発明のペプチドを、0.001mg/ml~1000mg/ml、好ましくは0.01mg/ml~100mg/ml、より好ましくは0.1mg/ml~30mg/ml、さらに好ましくは0.1mg/ml~10mg/ml、例えば0.5mg/ml~5mg/mlの濃度で含むことができる。この場合、例えば、0.1~5ml、好ましくは0.5ml~2mlの本発明の薬学的組成物を、注射により対象に投与することができる。
【0146】
または、本発明は、治療的有効量の本発明のペプチドまたは本発明の薬学的組成物を対象に投与することを含む、がんを治療および/もしくは予防するため、ならびに/または術後のその再発を予防するための方法を提供する。本発明のペプチドは、上記のとおり、通常0.001mg~1000mg、例えば0.01mg~100mg、例えば0.1mg~30mg、例えば0.1mg~10mgであり、例えば0.5mg~5mgを1回の投与において対象に投与することができる。好ましい態様においては、本発明のペプチドは、アジュバントとともに対象に投与される。また、投与間隔は、数日~数ヶ月に1度、好ましくは数日~1か月に1度の間隔であることができ、例えば、週に1回または2週に1回の間隔であることができる。
【0147】
(2)有効成分としてポリヌクレオチドを含む薬学的組成物
本発明の薬学的組成物はまた、本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチドを含み得る。本明細書において、「発現可能な形態で」という語句は、ポリヌクレオチドが、細胞に導入された場合に、本発明のペプチドが発現されることを意味する。例示的な態様において、本発明のポリヌクレオチドの配列は、本発明のペプチドの発現に必要な調節エレメントを含む。本発明のポリヌクレオチドには、標的細胞のゲノムへの安定した挿入が達成されるために必要な配列を備えさせることができる(相同組換えカセットベクターの説明に関しては、例えばThomas KR & Capecchi MR, Cell 1987, 51: 503-12を参照されたい)。例えば、Wolff et al., Science 1990, 247: 1465-8;米国特許第5,580,859号;第5,589,466号;第5,804,566号;第5,739,118号;第5,736,524号;第5,679,647号;およびWO98/04720を参照されたい。DNAに基づく送達技術の例には、「naked DNA」、促進された(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性の送達が含まれる(例えば、米国特許第5,922,687号を参照されたい)。
【0148】
ウイルスベクターまたは細菌ベクターによって、本発明のペプチドを発現させることもできる。発現ベクターの例には、ワクシニアウイルスまたは鶏痘ウイルスなどの弱毒化ウイルス宿主が含まれる。例えば、本発明のペプチドを発現させるためのベクターとして、ワクシニアウイルスを使用することができる。宿主に導入すると、組換えワクシニアウイルスは免疫原性ペプチドを発現し、それによって免疫応答を誘発する。免疫化プロトコールに有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターはBCG(カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al., Nature 1991, 351: 456-60に記載されている。治療的な投与または免疫化に有用である多種多様な他のベクター、例えばアデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、無毒化炭疽毒素ベクター等が明らかである。例えば、Shata et al., Mol Med Today 2000, 6: 66-71;Shedlock et al., J Leukoc Biol 2000, 68: 793-806;Hipp et al., In Vivo 2000, 14: 571-85を参照されたい。
【0149】
本発明のポリヌクレオチドの患者内への送達は、直接的であってもよく、この場合には本発明のポリヌクレオチドを保有するベクターに患者を直接曝露することができる。または間接的であってもよく、この場合にはまずインビトロで細胞を本発明のポリヌクレオチドを保有するベクターで形質転換し、次いで該細胞を患者内に移植する。これら2つのアプローチはそれぞれ、インビボおよびエクスビボの遺伝子治療として公知である。
【0150】
遺伝子治療の方法の一般的な総説に関しては、Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 1993, 12: 488-505;Wu and Wu, Biotherapy 1991, 3: 87-95;Tolstoshev, Ann Rev Pharmacol Toxicol 1993, 33: 573-96;Mulligan, Science 1993, 260: 926-32;Morgan & Anderson, Ann Rev Biochem 1993, 62: 191-217;Trends in Biotechnology 1993, 11(5): 155-215を参照されたい。本発明にも用いることのできる、組換えDNA技術の分野において一般に公知の方法は、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY, 1993;およびKrieger, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY, 1990に記載されている。
【0151】
ペプチドの投与と同様に、ポリヌクレオチドの投与が、経口、皮内、皮下、静脈内、筋肉内、骨内、および/または腹膜注射等によって行われる場合がある。また、ポリヌクレオチドの投与は、全身投与または標的部位近傍への局所投与であってよい。投与は、単回投与によって行うこともできるし、または複数回投与によってブーストすることもできる。本発明のポリヌクレオチドは、がんを治療するための治療的もしくは薬学的有効量またはCDCA1を発現するがん細胞に対する免疫(より具体的にはCTL)を誘導するための治療的もしくは薬学的有効量で、対象に投与することができる。適切な担体中のポリヌクレオチドの用量、または本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換された細胞中のポリヌクレオチドの用量は、治療される疾患、患者の年齢、体重、投与方法等に応じて適宜調整することができ、これは通常0.001mg~1000mg、例えば0.01mg~100mg、例えば、0.1mg~30mg、例えば0.1mg~10mg、例えば0.5mg~5mgであることができる。投与間隔は数日に1度~数ヶ月に1度であることができ、例えば週に1回の間隔で投与することができる。当業者は、適切な投与量(用量)を適宜選択することができる。
【0152】
X.ペプチド、エキソソーム、APC、およびCTLを用いる方法
本発明のペプチドおよびポリヌクレオチドを用いて、APCおよびCTLを誘導することができる。本発明のエキソソームおよびAPCを用いて、CTLを誘導することもできる。本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、およびAPCは、それらのCTL誘導能が阻害されない限り、任意の他の化合物と組み合わせて用いることができる。したがって、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APCおよびエキソソームのいずれかを含む薬学的組成物を用いて本発明のCTLを誘導することができる。また、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドを含む薬学的組成物を用いて本発明のAPCを誘導することができる。
【0153】
(1)APCを誘導する方法
本発明は、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドを用いて、CTL誘導能を有するAPCを誘導する方法を提供する。
【0154】
本発明の方法は、APCを本発明のペプチドとインビトロ、エクスビボ、またはインビボで接触させる段階を含む。例えば、APCを該ペプチドとエクスビボで接触させる方法は、以下の段階を含み得る:
(a)対象からAPCを回収する段階;および
(b)段階(a)のAPCを本発明のペプチドと接触させる段階。
前記APCは特定の種類の細胞に限定されず、リンパ球によって認識されるように自身の細胞表面上にタンパク質性抗原を提示することが知られているDC、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞、および活性化T細胞を用いることができる。DCはAPCの中で最も強力なCTL誘導能を有するため、好ましくはDCを用いることができる。本発明の任意のペプチドを単独で、または本発明の他のペプチドと共に用いることができる。また、本発明のペプチドと、他のCTL誘導性ペプチド(例えば、他のTAA由来のCTL誘導性ペプチド)とを組み合わせて用いることもできる。
【0155】
一方、本発明のペプチドを対象に投与した場合、APCは該ペプチドとインビボで接触し、結果的に、高いCTL誘導能を有するAPCが該対象の体内で誘導される。したがって本発明の方法は、本発明のペプチドを対象に投与する段階を含み得る。同様に、本発明のポリヌクレオチドを発現可能な形態で対象に投与した場合、本発明のペプチドがインビボで発現し、これがAPCとインビボで接触し、結果的に、高いCTL誘導能を有するAPCが該対象の体内で誘導される。したがって本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを対象に投与する段階を含み得る。
【0156】
本発明はまた、CTL誘導能を有するAPCを誘導するために、本発明のポリヌクレオチドをAPCに導入する段階を含み得る。例えば、本方法は以下の段階を含み得る:
(a)対象からAPCを回収する段階;および
(b)本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを段階(a)のAPCに導入する段階。
段階(b)は、「VI.抗原提示細胞(APC)」の章に上述したように行うことができる。
【0157】
したがって、一態様において、本発明は、以下の(a)または(b)の段階を含む、CTL誘導能を有するAPCを誘導する方法を提供する:
(a)APCを本発明のペプチドで接触させる段階;
(b)本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入する段階。
【0158】
また、本発明は、以下の(a)または(b)の段階を含む、CTL誘導能を有するAPCを調製する方法を提供する:
(a)APCを本発明のペプチドで接触させる段階;
(b)本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入する段階。
【0159】
上記の方法は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボのいずれでも行うことができるが、インビトロまたはエクスビボで行うことが好ましい。上記方法で使用されるAPCは、誘導されたAPCの投与が予定されている対象に由来するものであってもよいが、異なる対象に由来するものであってもよい。投与が予定されている対象とは異なる対象(ドナー)に由来するAPCを使用する場合、投与対象者とドナーのHLA型は、同一である必要がある。本発明の方法において、本発明のペプチドとして配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドを使用する場合、投与対象者とドナーのHLA型は、いずれもHLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)であることが好ましい。あるいは、上記の方法で使用するAPCは、HLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)を発現しているAPCであることが好ましい。同様に、本発明のペプチドとして配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドを使用する場合、投与対象者とドナーのHLAは、いずれもHLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)であることが好ましい。あるいは、上記の方法で使用するAPCは、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)を発現しているAPCであることが好ましい。同様に、本発明のペプチドとして配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドを使用する場合、投与対象者とドナーのHLA型は、いずれもHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)であることが好ましい。あるいは、上記の方法で使用するAPCは、HLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)を発現しているAPCであることが好ましい。APCは、ドナーから採取された血液から比重遠心分離法等によりPBMCを分離した後、該PBMCから公知の方法を用いて調製することができる。
【0160】
別の態様において、本発明はまた本発明のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、CTL誘導能を有するAPCを誘導するための薬学的組成物を提供する。
【0161】
あるいは、本発明はさらに、CTL誘導能を有するAPCを誘導するための薬学的組成物の製造における、本発明のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0162】
あるいは、本発明はさらに、CTL誘導能を有するAPCの誘導において用いるための、本発明のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0163】
あるいは、本発明はさらに、APCを誘導するための薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、本発明のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、薬学的にまたは生理学的に許容される担体とを製剤化する段階を含む方法または工程を提供する。
【0164】
別の態様において、本発明はまた、CTL誘導能を有するAPCを誘導するための薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、本発明のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを薬学的にまたは生理学的に許容される担体と混合する段階を含む方法または工程を提供する。
本発明の方法によって誘導されたAPCは、CDCA1に特異的なCTL(すなわち本発明のCTL)を誘導することができる。
【0165】
(2)CTLを誘導する方法
本発明はまた、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、またはAPCを用いてCTLを誘導する方法を提供する。本発明はまた、本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を認識し得るT細胞受容体(TCR)を形成し得るポリペプチド(すなわち、TCRサブユニット)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを使用してCTLを誘導する方法を提供する。好ましくは、CTLを誘導する方法は、以下の中より選択される少なくとも1つの段階を含む:
(a)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示する抗原提示細胞と接触させる段階;
(b)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するエキソソームと接触させる段階;および
(c)本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を認識することができるTCRを形成し得るポリペプチドをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドをCD8陽性T細胞に導入する段階。
【0166】
本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、またはAPCを対象に投与すると、該対象の体内でCTLが誘導され、CDCA1を発現するがん細胞を標的とする免疫応答の強度が増強される。したがって本発明の方法は、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APC、またはエキソソームを対象に投与する段階を含み得る。
【0167】
あるいは、それらをインビトロまたはエクスビボで用いることによってCTLを誘導することもできる。例えば、本発明の方法は以下の段階を含み得る:
(a)対象からAPCを回収する段階、
(b)段階(a)のAPCを本発明のペプチドと接触させる段階、および
(c)段階(b)のAPCをCD8陽性T細胞と共培養する段階。
誘導されたCTLは、その後対象に戻してもよい。
【0168】
上記の段階(c)においてCD8陽性T細胞と共培養するAPCは、「VI.抗原提示細胞(APC)」の章に上述したように、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入することによって調製することもできる。しかしながら、本発明の方法で用いられるAPCはこれに限定されず、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示する任意のAPCを用いることができる。
【0169】
本発明の方法では、そのようなAPCの代わりに、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するエキソソームを用いることもできる。すなわち、本発明の方法は、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するエキソソームとを共培養する段階を含み得る。そのようなエキソソームは、「V.エキソソーム」の章に上述した方法によって調製することができる。
【0170】
さらに、細胞表面上にHLA抗原により提示された本発明のペプチドに結合し得るTCRの各サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含むベクターをCD8陽性T細胞に導入することによって、CTLを誘導することもできる。そのような形質導入は、「VIII.T細胞受容体(TCR)」の章に上述したように行うことができる。
【0171】
したがって、一態様において、本発明は、以下の中より選択される段階を含む、CTLを誘導する方法を提供する:
(a)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するAPCと共培養する段階;
(b)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するエキソソームと共培養する段階;および
(c)細胞表面上にHLA抗原により提示された本発明のペプチドに結合し得るTCRの各サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを、CD8陽性T細胞に導入する段階。
【0172】
上記の方法は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボのいずれでも行うことができるが、インビトロまたはエクスビボで行うことが好ましい。上記方法で使用されるAPCもしくはエキソソーム、およびCD8陽性T細胞は、誘導されたCTLの投与が予定されている対象に由来するものであってもよいが、異なる対象に由来するものであってもよい。投与が予定されている対象とは異なる対象(ドナー)に由来するAPCもしくはエキソソーム、およびCD8陽性T細胞を使用する場合、投与対象者とドナーのHLA型は、同一である必要がある。例えば、本発明のペプチドとして配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドを用いる場合、投与対象者とドナーのHLA型は、いずれもHLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)であることが好ましい。あるいは、上記の方法で使用するAPCまたはエキソソームは、HLA-A11(より好ましくはHLA-A*1101)と本発明のペプチド(配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチド)との複合体を自身の表面上に提示するAPCまたはエキソソームであることが好ましい。この場合、誘導されたCTLは、HLA-A11と本発明のペプチドとの複合体を提示する細胞(例えば、CDCA1を発現するHLA-A11陽性細胞)に対して、特異的な細胞傷害活性を示す。また例えば、本発明のペプチドとして配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドを用いる場合、投与対象者とドナーのHLAは、いずれもHLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)であることが好ましい。あるいは、上記の方法で使用するAPCまたはエキソソームは、HLA-A33(より好ましくはHLA-A*3303)と本発明のペプチド(配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチド)との複合体を自身の表面上に提示するAPCまたはエキソソームであることが好ましい。この場合、誘導されたCTLは、HLA-A33と本発明のペプチドとの複合体を提示する細胞(例えば、CDCA1を発現するHLA-A33陽性細胞)に対して、特異的な細胞傷害活性を示す。また例えば、本発明のペプチドとして配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチドを用いる場合、投与対象者とドナーのHLA型は、いずれもHLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)であることが好ましい。あるいは、上記の方法で使用するAPCまたはエキソソームは、HLA-A03(より好ましくはHLA-A*0301)と本発明のペプチド(配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその改変ペプチド)との複合体を自身の表面上に提示するAPCまたはエキソソームであることが好ましい。この場合、誘導されたCTLは、HLA-A03と本発明のペプチドとの複合体を提示する細胞(例えば、CDCA1を発現するHLA-A03陽性細胞)に対して、特異的な細胞傷害活性を示す。
【0173】
別の態様において、本発明はまた、以下の中より選択される少なくとも1つの有効成分を含む、CTLを誘導するための組成物または薬学的組成物を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;および
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム。
【0174】
別の態様において、本発明はまた、CTLを誘導するための組成物または薬学的組成物の製造における、以下の中より選択される有効成分の使用を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;および
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム。
【0175】
あるいは、本発明はさらに、CTLの誘導において用いるための、以下の中より選択される有効成分を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;および
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム。
【0176】
あるいは、本発明はさらに、CTLを誘導するための組成物または薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、以下の中より選択される有効成分と、薬学的にまたは生理学的に許容される担体とを製剤化する段階を含む方法または工程を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;および
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム。
【0177】
別の態様において、本発明はまた、CTLを誘導するための組成物または薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、以下の中より選択される有効成分を薬学的にまたは生理学的に許容される担体と混合する段階を含む方法または工程を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;および
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム。
【0178】
XI.免疫応答を誘導する方法
さらに本発明は、CDCA1を発現するがんに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。適用可能ながんには、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、および大腸がんなどが含まれるが、これらに限定されない。また、がんは、HLA-A11、HLA-A33およびHLA-A03の中より選択される少なくとも1つのHLAを発現していることが好ましい。
【0179】
本発明はまた、CDCA1を発現するがん細胞に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。CDCA1は、上記のような各種のがんにおいて、過剰発現していることが認められる。そのため、CDCA1を発現するがん細胞に対する免疫応答が誘導されると、その結果として、がん細胞の増殖が阻害される。したがって、本発明はまた、CDCA1を発現するがん細胞の増殖を阻害する方法も提供する。本発明の方法は特に、CDCA1とHLA-A11、HLA-A33およびHLA-A03の中より選択される少なくとも1つのHLAを発現するがん細胞の増殖阻害に適している。
【0180】
本発明の方法は、本発明のペプチドのいずれかまたはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む組成物を投与する段階を含み得る。本発明の方法はまた、本発明のペプチドのいずれかを提示するエキソソームまたはAPCの投与を企図する。詳細については、「IX.薬学的組成物」の項、特に本発明の薬学的組成物のワクチンとしての使用について記載している部分を参照されたい。加えて、免疫応答を誘導するために本発明の方法に使用することができるエキソソームおよびAPCは、前記の「V.エキソソーム」、「VI.抗原提示細胞(APC)」、ならびに「X.ペプチド、エキソソーム、APC、およびCTLを用いる方法」の(1)および(2)の項において詳述されている。
【0181】
別の態様において、本発明はまた、CDCA1を発現するがんに対する免疫応答を誘導するための薬学的組成物またはワクチンであって、以下の中より選択される有効成分を含む、薬学的組成物またはワクチンを提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0182】
あるいは、本発明はさらに、CDCA1を発現するがん細胞に対する免疫応答を誘導するための薬学的組成物またはワクチンであって、以下の中より選択される有効成分を含む、薬学的組成物またはワクチンを提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0183】
あるいは、本発明はさらに、CDCA1を発現するがん細胞の増殖を阻害するための薬学的組成物またはワクチンであって、以下の中より選択される有効成分を含む、薬学的組成物またはワクチンを提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0184】
別の態様において、本発明はまた、CDCA1を発現するがんに対する免疫応答を誘導するための薬学的組成物またはワクチンの製造における、以下の中より選択される有効成分の使用を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0185】
あるいは、本発明はさらに、CDCA1を発現するがん細胞に対する免疫応答を誘導するための薬学的組成物またはワクチンの製造における、以下の中より選択される有効成分の使用を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0186】
あるいは、本発明はさらに、CDCA1を発現するがん細胞の増殖を阻害するための薬学的組成物またはワクチンの製造における、以下の中より選択される有効成分の使用を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0187】
本発明はまた、CDCA1を発現するがんに対する免疫応答を誘導する薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドを薬学的に許容される担体と共に混合または製剤化する段階を含み得る方法を提供する。
【0188】
あるいは、本発明は、以下の中より選択される有効成分を含むワクチンまたは薬学的組成物を対象に投与する段階を含む、CDCA1を発現するがん細胞の増殖を阻害するための方法、またはCDCA1を発現するがんに対する免疫応答を誘導する方法を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本発明のペプチドを発現可能な形態でコードするポリヌクレオチド;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPC;
(d)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するエキソソーム;および
(e)本発明のCTL。
【0189】
本発明との関連において、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APC、エキソソームおよび/またはCTLを投与することにより、CDCA1を発現するがんを治療することができる。あるいは、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APC、エキソソームおよび/またはCTLを投与することにより、CDCA1を発現するがんに対する免疫応答を誘導することができる。そのようながんの例には、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、および大腸がんなどが含まれるが、これらに限定されない。また、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APC、エキソソームおよび/またはCTLを投与することにより、CDCA1を発現するがん細胞に対する免疫応答を誘導することができる。したがって、上記の有効成分を含むワクチンまたは薬学的組成物を投与する前に、治療する対象の疾患部位におけるCDCA1の発現レベルが増強されているかどうかを確認することが好ましい。
【0190】
したがって一態様において、本発明は、CDCA1を発現するがんの治療を必要とする患者において該がんを治療する方法を提供し、そのような方法は以下の段階を含む:
i)がんを有する対象の疾患部位から採取された生体試料中のCDCA1の発現レベルを測定する段階;
ii)i)で測定されたCDCA1の発現レベルに基づいて、CDCA1を発現するがんを有する対象を特定する段階;および
iii)上記の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を、正常対照と比較してCDCA1を過剰発現するがんを有する対象に投与する段階。
【0191】
あるいは、本発明はまた、CDCA1を発現するがんを有する対象に投与するための、上記の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分を含むワクチンまたは薬学的組成物を提供する。本発明はさらに、上記の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分で治療する対象を特定または選択する方法を提供し、そのような方法は以下の段階を含む:
i)がんを有する対象の疾患部位から採取された生体試料中のCDCA1の発現レベルを測定する段階;
ii)i)で測定されたCDCA1の発現レベルに基づいて、CDCA1を発現するがんを有する対象を特定する段階;および
iii)ii)で特定された対象を、上記の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分で治療され得る対象として特定または選択する段階。
【0192】
上記の方法においてCDCA1の発現レベルを測定するために対象から採取される生体試料は特に限定されないが、例えば、生検等により採取されたがん細胞を含む組織試料を好ましく用いることができる。
生体試料中のCDCA1の発現レベルは公知の方法で測定することができ、例えば、CDCA1遺伝子の転写産物をプローブやPCR法により検出する方法(例えば、cDNAマイクロアレイ法、ノーザンブロット法、RT-PCR法など)、CDCA1遺伝子の翻訳産物を抗体等により検出する方法(例えば、ウェスタンブロット法、免疫染色法など)等を用いることができる。また、生体試料は血液試料であってもよく、この場合には、CDCA1またはその断片に対する抗体の血中レベルを測定し、該血中レベルに基づいて疾患部位におけるCDCA1の発現レベルを評価してもよい。CDCA1に対する抗体の血中レベルの測定は公知の方法を用いて行うことができ、例えば、CDCA1タンパク質や本発明のペプチドを抗原として用いた酵素免疫測定法(EIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、および放射免疫測定法(RIA)等を用いることができる。
【0193】
通常、CDCA1を発現しない組織および細胞においては、CDCA1の転写産物および翻訳産物はほとんど検出されない。したがって、対象から採取したがん細胞またはがん細胞を含む組織試料において、CDCA1の転写産物または翻訳産物が検出された場合には、該対象のがんはCDCA1を発現していると判断することができる。また、CDCA1を発現するがんを有しない対象の血液試料では、CDCA1またはその断片に対する抗体はほとんど検出されない。したがって、対象から採取した血液試料において、CDCA1またはその断片に対する抗体が検出された場合には、該対象のがんはCDCA1を発現していると判断することができる。なお、対象の有するがんがCDCA1を発現しているか否かの判断は、該対象の非がん性部位から採取された同種の生体材料またはがんを有しない対象から採取された同種の生体材料(正常対照試料)における測定結果との比較により行ってもよい。すなわち、正常対照試料における測定対象物のレベル(正常対照レベル)と比較して、試験対象の生体試料における該レベルが上昇している場合には、該対象のがんはCDCA1を発現していると判断することができる。たとえば、正常対照レベルと比較して、少なくとも10%以上測定対象物の検出量が増大した場合には、該対象のがんはCDCA1を発現していると判断してもよい。好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上正常対照レベルよりも測定対象物の検出量が増大していることが望ましい。またCDCA1の転写産物または翻訳産物の検出量は、β-アクチン、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素およびリボソームタンパク質P1などの公知のハウスキーピング遺伝子の検出量に対して正規化して評価してもよい。
【0194】
好ましい態様では、上記の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分を投与する前に、対象のHLA型を確認することが好ましい。例えば、配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドに関連する有効成分の投与対象としては、HLA-A11陽性の対象を選択することが好ましい。また、配列番号:27、3、60、28、5、67および69の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドに関連する有効成分の投与対象としては、HLA-A33陽性の対象を選択することが好ましい。また、配列番号:7、38および47の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドに関連する有効成分の投与対象としては、HLA-A03陽性の対象を選択することが好ましい。
【0195】
本発明はまた、本発明のペプチドとHLAとの複合体を提供する。前記本発明の複合体は、単量体であっても多量体であってもよい。本発明の複合体が多量体である場合、重合数は特に限定されず、任意の重合数の多量体であることができる。例としては、四量体、五量体、六量体等が挙げられるが、これらに限定されない。また、デキストラマー(WO2002/072631)、ストレプタマー(Knabel M et al., Nat Med. 2002 Jun;8(6):631-7.)もまた本発明の多量体に包含される。本発明のペプチドとHLAとの複合体は、公知の方法に従って調製することができる(例えば、Altman JD et al., Science.1996,274(5284):94-6、WO2002/072631、WO2009/003492、Knabel M et al., Nat Med. 2002 Jun;8(6):631-7.等)。本発明の複合体は、例えば、本発明のペプチドに特異的なCTLの定量に用いることができる。例えば、本発明の薬学的組成物を投与した対象から血液試料を採取し、PBMCを分離した後CD4陰性細胞を調製し、蛍光色素を結合させた本発明の複合体と該CD4陰性細胞とを接触させる。その後、フローサイトメトリーで解析することにより、本発明のペプチドに特異的なCTLの割合を測定することができる。例えば、本発明の薬学的組成物の投与前、投与中、および/または投与後に、本発明のペプチドに特異的なCTLを測定することにより、本発明の薬学的組成物による免疫応答誘導効果をモニタリングすることができる。
【0196】
XII.抗体
本発明はさらに、本発明のペプチドに結合する抗体を提供する。好ましい抗体は本発明のペプチドに特異的に結合し、本発明のペプチドではないものには結合しない(または弱く結合する)。別の態様において、そのような抗体は、HLA分子との関連でペプチドを認識する抗体、すなわちペプチド-MHC複合体に結合する抗体を含み得る。抗体の結合特異性は、阻害試験で確認することができる。すなわち、分析する抗体と全長CDCA1ポリペプチドとの間の結合が、本発明のペプチドの存在下で阻害される場合、この抗体が本発明のペプチドに特異的に結合することが示される。本発明のペプチドに対する抗体は、疾患の診断および予後診断のアッセイ、ならびに本発明の薬学的組成物の投与対象の選択および本発明の薬学的組成物のモニタリングにおいて使用され得る。
【0197】
本発明はまた、本発明のペプチドもしくはその断片を検出および/または定量するための様々な免疫学的アッセイ法を提供する。そのような免疫学的アッセイ法は、放射免疫測定法、免疫クロマトグラフ法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、酵素結合免疫蛍光測定法(ELIFA)等を含むがこれらに限定されない、当技術分野で周知の様々な免疫学的アッセイ形式の範囲内で行われる。
【0198】
本発明の抗体は、CDCA1を発現する疾患を検出し得る免疫学的画像化法に用いることができ、その例には、本発明の標識抗体を使用する放射性シンチグラフィー画像化法が含まれるが、これに限定されない。そのようなアッセイ法は、CDCA1を発現するがんの検出、モニタリング、および予後診断において臨床的に使用され、そのようながんの例には、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、および大腸がんなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0199】
本発明の抗体は、例えばモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体などの任意の形態で用いることができ、ウサギなどの動物を本発明のペプチドで免疫することにより得られる抗血清、すべてのクラスのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ヒト抗体、ならびに遺伝子組換えにより作製されたキメラ抗体およびヒト化抗体をさらに含み得る。
【0200】
抗体を得るための抗原として用いられる本発明のペプチドもしくはその断片は、本明細書に開示するアミノ酸配列に基づいて、化学合成により、または遺伝子工学的手法により得ることができる。
【0201】
免疫抗原として用いられるペプチドは、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドの断片であってよい。また、免疫原性を高めるために、ペプチドを担体と結合または連結させてもよい。担体として、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が周知である。KLHとペプチドを結合する方法もまた、当技術分野において周知である。
【0202】
任意の哺乳動物を前記抗原で免疫することができるが、モノクローナル抗体を作製する場合には、細胞融合に用いられる親細胞との適合性を考慮に入れることが好ましい。一般に、齧歯目(Rodentia)、ウサギ目(Lagomorpha)、または霊長目(Primate)の動物を使用することができる。齧歯目科の動物には、例えばマウス、ラット、およびハムスターが含まれる。ウサギ目科の動物には、例えばウサギが含まれる。霊長目科の動物には、例えばカニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル、マントヒヒ、およびチンパンジーなどの狭鼻下目(Catarrhini)(旧世界ザル)のサルが含まれる。
【0203】
動物を抗原で免疫する方法は、当技術分野で公知である。抗原の腹腔内注射または皮下注射は、哺乳動物を免疫するための標準的な方法である。より具体的には、抗原を適量のリン酸緩衝食塩水(PBS)、生理食塩水等で希釈し、懸濁させる。必要に応じて、抗原懸濁液を、フロイント完全アジュバントなどの適量の標準的アジュバントと混合し、乳化した後、哺乳動物に投与することができる。その後、適量のフロイント不完全アジュバントと混合した抗原を、4~21日ごとに数回投与することが好ましい。免疫化には、適切な担体を用いてもよい。上記のように免疫した後、血清を、所望の抗体の量の増加に関して標準的方法で調べることができる。
【0204】
本発明のペプチドに対するポリクローナル抗体は、免疫後に血清中の所望の抗体レベルの上昇が確認された哺乳動物から血液を回収し、任意の従来法により血液から血清を分離することによって、調製することができる。ポリクローナル抗体はポリクローナル抗体を含む血清であってもよく、またポリクローナル抗体を含む画分を該血清から単離してもよい。免疫グロブリンGまたはMは、本発明のペプチドのみを認識する画分から、例えば、本発明のペプチドを結合させたアフィニティーカラムを用いた上で、この画分をプロテインAまたはプロテインGカラムを用いてさらに精製して、調製することができる。
【0205】
モノクローナル抗体を調製するには、免疫後に血清中の所望の抗体レベルの上昇を確認した上で、哺乳動物から免疫細胞を回収し、細胞融合に供する。細胞融合に用いる免疫細胞は、好ましくは脾臓から得ることができる。上記の免疫細胞と融合させるもう一方の親細胞には、例えば、哺乳動物の骨髄腫細胞、好ましくは薬物による融合細胞の選択のための特性を獲得した骨髄腫細胞を用いることができる。
【0206】
公知の方法、例えば、Milstein et al.(Galfre and Milstein, Methods Enzymol 73: 3-46 (1981))の方法に従って、上記の免疫細胞と骨髄腫細胞を融合させることができる。
【0207】
細胞融合によって得られたハイブリドーマは、それらをHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む培地)などの標準的な選択培地中で培養することによって選択することができる。細胞培養は典型的に、HAT培地中で、所望のハイブリドーマを除く他のすべての細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な期間(例えば数日間から数週間)にわたって継続する。その後、標準的な限界希釈を行い、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞をスクリーニングおよびクローニングすることができる。
【0208】
ハイブリドーマを調製するために非ヒト動物を抗原で免疫する上記の方法に加えて、EBウイルスに感染したリンパ球などのヒトリンパ球を、ペプチド、ペプチドを発現している細胞、またはそれらの溶解物でインビトロにおいて免疫することもできる。次いで、免疫後のリンパ球を、U266などの無限に分裂可能なヒト由来骨髄腫細胞と融合させて、該ペプチドに結合し得る所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる(特開昭63-17688号)。
【0209】
続いて、得られたハイブリドーマをマウスの腹腔内に移植し、腹水を抽出する。得られたモノクローナル抗体は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、プロテインAもしくはプロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、または本発明のペプチドを結合させたアフィニティーカラムにより精製することができる。
【0210】
あるいは、免疫したリンパ球などの、抗体を産生する免疫細胞をがん遺伝子によって不死化し、モノクローナル抗体の調製に用いることもできる。
【0211】
このようにして得られるモノクローナル抗体は、遺伝子操作技法を用いて組換えにより調製することもできる(例えば、MacMillan Publishers LTD (1990)により英国で刊行された、Borrebaeck and Larrick, Therapeutic Monoclonal Antibodiesを参照されたい)。例えば、抗体をコードするDNAを、抗体を産生するハイブリドーマまたは免疫化リンパ球などの免疫細胞からクローニングし、適切なベクターに挿入した上で、宿主細胞に導入して、組換え抗体を調製することができる。本発明はまた、上記のようにして調製された組換え抗体を提供する。
【0212】
さらに、本発明の抗体は、本発明のペプチドに結合する限り、抗体の断片または修飾抗体であってもよい。例えば、抗体断片は、抗体の抗原結合部位を含むことが望ましい。具体的には、抗体断片は、Fab、F(ab')2、Fv、またはH鎖およびL鎖由来のFv断片が適切なリンカーによって連結されている一本鎖Fv(scFv)であってよい(Huston et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 5879-83 (1988))。より具体的には、抗体断片は、抗体をパパインまたはペプシンなどの酵素で処理することにより作製することができる。あるいは、抗体断片をコードする遺伝子を構築し、発現ベクターに挿入し、適切な宿主細胞内で発現させることができる(例えば、Co et al., J Immunol 152: 2968-76 (1994);Better and Horwitz, Methods Enzymol 178: 476-96 (1989);Pluckthun and Skerra, Methods Enzymol 178: 497-515 (1989);Lamoyi, Methods Enzymol 121: 652-63 (1986);Rousseaux et al., Methods Enzymol 121: 663-9 (1986);Bird and Walker, Trends Biotechnol 9: 132-7 (1991)を参照されたい)。
【0213】
抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)などの様々な分子との結合によって修飾することができる。本発明は、そのような修飾抗体を提供する。修飾抗体は、抗体を化学的に修飾することによって得ることができる。これらの修飾法は、当技術分野で慣例的である。
【0214】
あるいは、本発明の抗体は、非ヒト抗体に由来する可変領域とヒト抗体に由来する定常領域との間のキメラ抗体として、または非ヒト抗体に由来する相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体に由来するフレームワーク領域(FR)および定常領域とを含むヒト化抗体として得ることもできる。そのような抗体は、公知の技術に従って調製することができる。ヒト化は、非ヒト抗体のCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって行うことができる(例えば、Verhoeyen et al., Science 239:1534-6 (1988)を参照されたい)。したがって、そのようなヒト化抗体は、実質的に完全には満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されたキメラ抗体である。
【0215】
ヒトのフレームワーク領域および定常領域に加えて、ヒト可変領域をも含む完全なヒト抗体を用いることもできる。そのような抗体は、当技術分野で公知の様々な技法を用いて作製することができる。例えば、インビトロの方法には、バクテリオファージ上に提示されたヒト抗体断片の組換えライブラリーの使用が含まれる(例えば、Hoogenboom & Winter, J. Mol. Biol. 227: 381 (1991))。同様に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたトランスジェニック動物、例えばマウスに導入することによって、ヒト抗体を作製することもできる。このアプローチは、例えば米国特許第6,150,584号、第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号に記載されている。
【0216】
上記のようにして得られた抗体は、均一になるまで精製してもよい。例えば、一般的なタンパク質に対して用いられる分離法および精製法に従って、抗体の分離および精製を行うことができる。例えば、これらに限定されないが、アフィニティークロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、および等電点電気泳動の使用を適切に選択しかつ組み合わせることにより、抗体を分離および単離することができる(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988))。プロテインAカラムおよびプロテインGカラムをアフィニティーカラムとして使用することができる。用いられるべき例示的なプロテインAカラムには、例えば、Hyper D、POROS、およびSepharose F.F.(Pharmacia)が含まれる。
【0217】
例示的なクロマトグラフィーには、アフィニティークロマトグラフィー以外に、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が含まれる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1996))。クロマトグラフィー手順は、HPLCおよびFPLCなどの液相クロマトグラフィーによって行うことができる。
【0218】
例えば、吸光度の測定、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、および/または免疫蛍光法(IF)を用いて、本発明の抗体の抗原結合活性を測定することができる。ELISAの場合、本発明の抗体をプレート上に固定化し、本発明のペプチドを該プレートに添加し、次に抗体産生細胞の培養上清または精製抗体といった所望の抗体を含む試料を添加する。次いで、一次抗体を認識し、アルカリホスファターゼなどの酵素で標識された二次抗体を添加し、プレートをインキュベートする。続いて洗浄後に、p-ニトロフェニルリン酸などの酵素基質を該プレートに添加し、吸光度を測定して、試料の抗原結合活性を評価する。抗体の結合活性を評価するために、C末端またはN末端断片などのペプチドの断片を抗原として用いてもよい。本発明の抗体の活性を評価するために、BIAcore(Pharmacia)を用いてもよい。
【0219】
本発明の抗体を本発明のペプチドを含むと考えられる試料に対して曝露し、該抗体と該ペプチドとによって形成される免疫複合体を検出または測定することにより、上記のような方法によって本発明のペプチドの検出または測定が可能になる。
例えば、本発明の抗体は、対象の血液試料(例えば血清試料)中に存在する本発明のペプチドを検出するために用いることもできる。あるいは、逆に、対象の血液試料(例えば血清試料)中に存在する本発明の抗体を、本発明のペプチドを用いて検出することもできる。対象の血液試料中において本発明のペプチドまたは本発明の抗体を測定した結果は、本発明の薬学的組成物の投与対象の選択、または本発明の薬学的組成物の効果のモニタリングに役立てることができる。そのほか、たとえばワクチンとして投与するペプチドに対する抗体を有する患者は、ワクチンに対する応答性が高い場合があることが報告されている。したがって、本発明のペプチドは、当該ペプチドをワクチンとして投与したときに、応答性の高い患者の抗体を指標とすることによって選択するためのイムノアッセイ用抗原として利用することができる。
【0220】
XIII.ベクターおよび宿主細胞
本発明はまた、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターおよび該ベクターが導入された宿主細胞を提供する。本発明のベクターは、宿主細胞中に本発明のポリヌクレオチドを保持するため、宿主細胞に本発明のペプチドを発現させるため、または遺伝子治療用に本発明のポリヌクレオチドを投与するために使用され得る。
【0221】
大腸菌が宿主細胞であり、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、またはXL1-Blue)内で増幅して大量に生成する場合、ベクターは、大腸菌内で増幅するための「複製起点」と、形質転換された大腸菌を選択するためのマーカー遺伝子(例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール等の薬物によって選択される薬物耐性遺伝子)とを有する必要がある。例えば、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Script等を用いることができる。加えて、pGEM-T、pDIRECT、およびpT7もまた上記のベクターと同様にクローニングのために用いることができる。ベクターを本発明のペプチドの産生に用いる場合には、発現ベクターが使用され得る。例えば、大腸菌内で発現させる発現ベクターは、大腸菌内で増幅するために上記の特徴を有する必要がある。JM109、DH5α、HB101、またはXL1-Blueなどの大腸菌を宿主細胞として用いる場合、ベクターは、大腸菌内で所望の遺伝子を効率的に発現し得るプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Ward et al., Nature 341: 544-6 (1989);FASEB J 6: 2422-7 (1989))、araBプロモーター(Better et al., Science 240: 1041-3 (1988))、T7プロモーター等を有する必要がある。この点に関して、例えば、pGEX-5X-1(Pharmacia)、「QIAexpressシステム」(Qiagen)、pEGFP、およびpET(この場合、宿主は好ましくはT7 RNAポリメラーゼを発現するBL21である)を上記のベクターの代わりに用いることができる。さらにベクターは、ペプチド分泌のためのシグナル配列を含んでもよい。ペプチドを大腸菌のペリプラズムに分泌させる例示的なシグナル配列は、pelBシグナル配列(Lei et al., J Bacteriol 169: 4379 (1987))である。ベクターを標的宿主細胞に導入する手段には、例えば塩化カルシウム法およびエレクトロポレーション法が含まれる。
【0222】
大腸菌に加えて、例えば、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3(Invitrogen)、およびpEGF-BOS(Nucleic Acids Res 18(17): 5322 (1990))、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば、「Bac-to-BACバキュロウイルス発現系」(GIBCO BRL)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えば、pMH1、pMH2)、動物ウイルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウイルス由来の発現ベクター(例えば、pZIpneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「ピキア(Pichia)発現キット」(Invitrogen)、pNV11、SP-Q01)、および枯草菌(Bacillus subtilis)由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)を、本発明のポリペプチドの産生に使用することができる。
【0223】
ベクターをCHO、COS、またはNIH3T3細胞などの動物細胞内で発現させるためには、ベクターはこのような細胞における発現に必要なプロモーター、例えば、SV40プロモーター(Mulligan et al., Nature 277: 108 (1979))、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushima et al., Nucleic Acids Res 18: 5322 (1990))、CMVプロモーター等、および好ましくは形質転換体を選択するためのマーカー遺伝子(例えば、薬物(例えば、ネオマイシン、G418)によって選択される薬物耐性遺伝子)を有する必要がある。これらの特徴を有する公知のベクターの例には、例えばpMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、およびpOP13が含まれる。
【0224】
上記説明に基づく本発明の態様を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されない。
[1]以下の群より選択されるアミノ酸配列を含む、細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能を有する15アミノ酸未満のペプチド:
(a)配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47からなる群より選択されるアミノ酸配列;および
(b)配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されているアミノ酸配列。
[2]以下の(i)~(iii)からなる群より選択される、[1]に記載のペプチド:
(i)配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56および58からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して以下の(a)~(d)からなる群より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列を含むペプチド:
(a)N末端から2番目のアミノ酸が、スレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている;
(b)N末端から3番目のアミノ酸が、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンおよびアラニンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている;
(c)N末端から7番目のアミノ酸が、ロイシン、イソロイシン、チロシン、バリンおよびフェニルアラニンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている;および
(d)C末端のアミノ酸が、リジンおよびアルギニンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている。
(ii)配列番号:27、3、60、28、5、67および69からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して以下の(a)~(c)からなる群より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列を含むペプチド:
(a)N末端から1番目のアミノ酸が、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群より選択されるアミノ酸に置換されている;
(b)N末端から2番目のアミノ酸が、フェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている;および
(c)C末端のアミノ酸が、アルギニンおよびリジンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている;
(iii)配列番号:7、38および47からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して以下の(a)~(b)からなる群より選択される1個以上の置換がされたアミノ酸配列を含むペプチド:
(a)N末端から2番目のアミノ酸が、ロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、イソロイシン、セリンおよびスレオニンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている;および
(b)C末端のアミノ酸が、アルギニン、リジン、チロシンおよびフェニルアラニンからなる群より選択されるアミノ酸に置換されている。
[3]配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、[1]に記載のペプチド。
[4][1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
[5]薬学的に許容される担体と、以下の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの成分とを含む組成物:
(a)[1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);
(d)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム;および
(e)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを標的とするCTL。
[6]前記成分が以下の(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1つの成分であり、CTLを誘導するための組成物である、[5]に記載の組成物:
(a)[1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);および
(d)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム。
[7]薬学的組成物である、[5]に記載の組成物。
[8](i)がんの治療、(ii)がんの予防、および(iii)がんの術後の再発の予防からなる群より選択される1以上の用途のための薬学的組成物である、[7]に記載の組成物。
[9]がんに対する免疫応答を誘導するための、[7]に記載の組成物。
[10]がんが、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、および大腸がんからなる群より選択される、[8]または[9]に記載の組成物。
[11]HLA-A11、HLA-A33およびHLA-A03からなる群より選択される少なくとも1つのHLAが陽性である対象への投与のために製剤化される、[5]~[10]のいずれか一項に記載の組成物。
[12]以下からなる群より選択される段階を含む、CTL誘導能を有するAPCを誘導する方法:
(a)APCを、[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとインビトロ、エクスビボ、またはインビボで接触させる段階;および
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入する段階。
[13]以下の(a)~(c)からなる群より選択される段階を含む、CTLを誘導する方法:
(a)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するAPCと共培養する段階;
(b)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するエキソソームと共培養する段階;および
(c)細胞表面上にHLA抗原により提示された[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドに結合し得るT細胞受容体(TCR)の各サブユニットをコードするポリヌクレオチドをCD8陽性T細胞に導入する段階。
[14]HLA抗原と[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するAPC。
[15][12]に記載の方法によって誘導される、[14]に記載のAPC。
[16][1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを標的とするCTL。
[17][13]に記載の方法によって誘導される、[16]に記載のCTL。
[18]以下の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を対象に投与する段階を含む、がんに対する免疫応答を誘導する方法:
(a)[1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);
(d)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム;および
(e)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを標的とするCTL。
[19]以下の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を対象に投与する段階を含む、がんを治療および/もしくは予防する、ならびに/または術後のその再発を予防する方法:
(a)[1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);
(d)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム;および
(e)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを標的とするCTL。
[20][1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドに結合する抗体。
[21]CTL誘導能を有するペプチドをスクリーニングする方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)配列番号:3、5~7、9、10、12~14、17、19、21、30、35、38~40、45、53、56、58、27、60、28、67、69および47からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる元のアミノ酸配列に対して、1個、2個、または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなる候補配列を作成する段階;
(b)(a)で作成した候補配列の中からCDCA1以外のいかなる公知のヒト遺伝子産物とも有意な相同性(配列同一性)を有さない候補配列を選択する段階;
(c)(b)で選択した候補配列からなるペプチドと、APCとを接触させる段階;
(d)(c)のAPCとCD8陽性T細胞とを接触させる段階;および
(e)元のアミノ酸配列からなるペプチドよりも同等かまたはより高いCTL誘導能を有するペプチドを選択する段階。
[22]がんに対する免疫応答を誘導するための組成物の製造における、以下の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分の使用:
(a)[1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);
(d)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム;および
(e)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを標的とするCTL。
[23]がんの治療および/もしくは予防、ならびに/または術後のその再発の予防のための薬学的組成物の製造における、以下の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの成分の使用:
(a)[1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);
(d)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム;および
(e)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを標的とするCTL。
[24]がんに対する免疫応答を誘導するための、以下の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの成分の使用:
(a)[1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);
(d)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム;および
(e)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを標的とするCTL。
[25]がんを治療および/もしくは予防する、ならびに/または術後のその再発を予防するための、以下の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの成分の使用:
(a)[1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);
(d)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム;および
(e)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを標的とするCTL。
[26]以下の(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を対象に投与する段階を含む、CDCA1を発現する細胞に対する細胞傷害活性を誘導する方法:
(a)[1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド;
(b)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを発現可能な形態でコードする1種類もしくは複数種のポリヌクレオチド;
(c)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示する抗原提示細胞(APC);
(d)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドとHLA抗原との複合体を自身の細胞表面上に提示するエキソソーム;および
(e)[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを標的とするCTL。
[27][1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチドを含む凍結乾燥製剤。
[28][1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチドを水溶性の担体に溶解し、ろ過滅菌することを含む方法で調製された、薬学的組成物。
[29][1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチドと水溶性の担体とを含む水溶液であって、ろ過滅菌された水溶液。
[30][1]~[3]のいずれか一項に記載の1種類もしくは複数種のペプチド、水溶性の担体、および油性アジュバントを含むエマルション。
[31][5]~[11]のいずれか一項に記載の組成物が収容されている容器、およびアジュバントが収容されている容器を含むキット。
[32][1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチドを含む凍結乾燥製剤が収納されている容器、アジュバントが収納されている容器、および凍結乾燥製剤のための再溶解液が収納されている容器を含むキット。
【0225】
本発明をその特定の態様に関して本明細書において詳細に説明してきたが、前述の説明は事実上、例示的かつ説明的なものであって、本発明およびその好ましい態様を説明することを意図していることが理解されるべきである。当業者は、慣例的な実験を通して、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更および修正がその中でなされ得ることを容易に理解するであろう。したがって本発明は、上記の説明によって規定されるのではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって規定されることが意図される。
【0226】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に記載する。しかしながら、以下の材料、方法および実施例は、本発明のある形態の作製および使用において当業者を支援するために役立ち得る一方、本発明の局面を説明するためのものにすぎず、したがって本発明の範囲を決して限定することを意図しない。当業者は、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができる。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0227】
実施例1
材料および方法
細胞株
HLA-AおよびHLA-B陰性ヒトBリンパ芽球様細胞株であるC1R、ならびにアフリカミドリザル腎細胞株であるCOS7は、ATCCから購入した。
【0228】
HLA-A * 1101を安定的に発現する刺激細胞の作成
HLA-A*1101を安定的に発現するC1R(C1R-A11)は、刺激細胞として使用された。HLA-A*1101のオープンリーディングフレームをコードするcDNAはPCRで増幅され、発現ベクターへクローニングされた。C1R細胞は発現ベクターで形質転換され、その後、G418(Invitrogen)を用いて2週間選択された。G418選択細胞はG418が添加された培養培地を含む96ウェルプレートのウェルへ蒔かれ、さらに30日培養された。外来性HLA-A*1101のC1R細胞における発現はフローサイトメトリー解析で確認された。
【0229】
CDCA1由来のペプチドの候補選択
HLA-A*1101分子に結合するCDCA1由来の9merおよび10merのペプチドを、結合予測サーバー「NetMHC 3.2」(www.cbs.dtu.dk/services/NetMHC/) (Buus et al., Tissue Antigens. 2003 Nov, 62(5):378-84; Nielsen et al., Protein Sci. 2003 May, 12(5):1007-17, Bioinformatics. 2004 Jun 12:20(9):1388-97)を用いて予測した。
【0230】
ペプチドの合成
これらのペプチドは、Biosynthesis(Lewisville,Texas)により、標準的な固相合成法に従って合成し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。該ペプチドの純度(>90%)および同一性は、それぞれ分析用HPLCおよび質量分析によって分析した。ペプチドはジメチルスルホキシドに20mg/mlで溶解し、-80℃で保存した。
【0231】
インビトロでのCTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)を抗原提示細胞として使用し、ヒト白血球抗原(HLA)上に提示されたペプチドに対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導した。他所に記載されているように、DCはインビトロで作製した(Nakahara S et al.,Cancer Res 2003,63(14):4112-8)。具体的には、Ficoll-Paque plus(Pharmacia)溶液によって健常なボランティア(HLA-A*1101陽性)から単離した末梢血単核細胞を、プラスチック製の組織培養ディッシュ(Becton Dickinson)へ付着させることによって分離し、それらを単球画分として濃縮した。2%の加熱不活化した自己血清(AS)を含むAIM-V培地(Invitrogen)中、1000 IU/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(R&D System)および1000 IU/mlのインターロイキン(IL)-4(R&D System)の存在下で、単球が濃縮された集団を培養した。7日間の培養後、サイトカインで誘導したDCに、AIM-V培地中で37℃で3時間、3μg/mlのβ2-ミクログロブリンの存在下で20μg/mlの各合成ペプチドをパルスした。作製された細胞は、自身の細胞表面上にCD80、CD83、CD86、およびHLAクラスIIなどのDC関連分子を発現しているようであった(データは示さず)。次いで、ペプチドパルスしたこれらのDCをX線照射(20Gy)によって不活化し、CD8 Positive Isolation Kit(Dynal)を用いた陽性選択によって得られた自己CD8+T細胞と1:20の比率で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)中に播種した。各ウェルは、0.5mlのAIM-V/2%AS培地中に、1.5 x 104個のペプチドパルスしたDC、3 x 105個のCD8+T細胞および10ng/mlのIL-7(R&D System)を含むようにした。3日後、これらの培養物に、IL-2(CHIRON)を最終濃度20IU/mlまで添加した。7日目および14日目に、ペプチドパルスした自己DCでT細胞をさらに刺激した。DCは上記と同一の方法によって毎回調製した。21日目に、3回目のペプチド刺激後、ペプチドパルスしたC1R-A11細胞に対してCTLをヒト インターフェロン(IFN)-γ 酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイにて試験した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001, 84(1): 94-9; Umano Y et al., Br J Cancer 2001, 84(8): 1052-7; Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006, 97(5): 411-9; Watanabe T et al., Cancer Sci 2005, 96(8): 498-506)。
【0232】
CTL増殖手順
Riddellら(Walter EA et al., N Engl J Med 1995, 333(16): 1038-44; Riddell SR et al., Nat Med 1996, 2(2): 216-23)によって記載されている方法と類似の方法を使用して、CTLを培養下で増殖させた。CTLを、5 x 106個細胞/フラスコのマイトマイシンCによって処理された2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、および40ng/mlの抗CD3抗体とともに、総量25mlの5%AS含有AIM-V(AIM-V/5%AS)培地中で共培養した。培養開始1日後に、120IU/mlのIL-2を該培養物に添加した。5、8および11日目に、30IU/mlのIL-2を含む新鮮なAIM-V/5%AS培地を、該培養物に添加した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001, 84(1): 94-9; Umano Y et al., Br J Cancer 2001, 84(8): 1052-7, Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006, 97(5): 411-9, Watanabe T et al., Cancer Sci 2005, 96(8): 498-506)。
【0233】
CTLクローンの樹立
96丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)においてCTL 0.3個、1個、および3個細胞/ウェルとなるように、希釈を行った。CTLを、1 x 104個細胞/ウェルのマイトマイシンCによって処理された2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、30ng/mlの抗CD3抗体、および125IU/mlのIL-2とともに、総量150μl/ウェルのAIM-V/5%AS培地中で培養した。10日後、50μl/ウェルのIL-2を、IL-2の最終濃度が125IU/mlに達するように該培地に添加した。14日目にCTL活性を試験し、上記と同一の方法を使用してCTLクローンを増殖させた(Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006, 97(5): 411-9; Watanabe T et al., Cancer Sci 2005, 96(8)): 498-506)。
【0234】
特異的CTL活性
特異的CTL活性を調べるために、IFN-γ ELISPOTアッセイおよびIFN-γ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を実施した。具体的には、ペプチドパルスしたC1R‐A11(1 x 104個細胞/ウェル)を刺激細胞として調製した。誘導したCTL、すなわちCTL株およびCTLクローンを応答細胞として使用した。IFN-γ ELISPOTアッセイおよびIFN-γ ELISAは、製造業者の手順に従って実施した。
【0235】
標的遺伝子およびHLA-A * 1101を強制発現させた標的細胞の樹立
標的遺伝子またはHLA-A*1101のオープンリーディングフレームをコードするcDNAをPCRによって増幅した。PCR増幅産物を発現ベクターにクローニングした。製造業者の推奨する手順に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、標的遺伝子およびHLAの陰性細胞株であるCOS7に標的遺伝子の発現ベクターおよびHLA-A*1101の発現ベクターのいずれかまたは両方をトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後、トランスフェクトした細胞をベルセン(Invitrogen)を用いて回収し、CTL活性アッセイのための標的細胞(5 x 104個細胞/ウェル)として使用した。
【0236】
結果
CDCA1由来のHLA-A * 1101結合ペプチドの予測
表1aおよび表1bは、HLA-A*1101への結合が予測されたCDCA1由来の9merペプチドおよび10merペプチドを結合親和性の高い順に示す。HLA-A*1101結合能を有する可能性のある合計58種のペプチドを、エピトープペプチドを決定するために選択し、調べた。
【0237】
【表1a】
【0238】
【表1b】
【0239】
HLA-A * 1101拘束性のCDCA1由来予測ペプチドによるCTLの誘導
CDCA1由来のペプチドに対するCTLを、「材料および方法」に記載したプロトコールに従って作製した。IFN-γ ELISPOTアッセイによって、ペプチド特異的なCTL活性を測定した(図1)。CDCA1-A11-9-123(配列番号:3)を用いたウェル番号#7(a)、CDCA1-A11-9-105(配列番号:5)を用いたウェル番号#8(b)、CDCA1-A11-9-419(配列番号:6)を用いたウェル番号#1(c)、CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)を用いたウェル番号#4(d)、CDCA1-A11-9-439(配列番号:9)を用いたウェル番号#2(e)、CDCA1-A11-9-343(配列番号:10)を用いたウェル番号#2(f)、CDCA1-A11-9-21(配列番号:12)を用いたウェル番号#8(g)、CDCA1-A11-9-157(配列番号:13)を用いたウェル番号#3(h)、CDCA1-A11-9-244(配列番号:14)を用いたウェル番号#7(i)、CDCA1-A11-9-213(配列番号:17)を用いたウェル番号#6(j)、CDCA1-A11-9-335(配列番号:19)を用いたウェル番号#7(k)、CDCA1-A11-9-25(配列番号:21)を用いたウェル番号#4(l)、CDCA1-A11-10-339(配列番号:30)を用いたウェル番号#3(m)、CDCA1-A11-10-452(配列番号:35)を用いたウェル番号#2(n)、CDCA1-A11-10-400(配列番号:38)を用いたウェル番号#7(o)、CDCA1-A11-10-289(配列番号:39)を用いたウェル番号#6(p)、CDCA1-A11-10-203(配列番号:40)を用いたウェル番号#5(q)、CDCA1-A11-10-156(配列番号:45)を用いたウェル番号#2(r)、CDCA1-A11-10-340(配列番号:53)を用いたウェル番号#2(s)、CDCA1-A11-10-106(配列番号:56)を用いたウェル番号#4(t)およびCDCA1-A11-10-358(配列番号:58)を用いたウェル番号#2(u)におけるCTLは、対照ウェルと比較して強力なIFN-γ産生を示した。一方、表1aおよび表1bに示される他のペプチドは、HLA-A*1101との結合活性を有する可能性があるにもかかわらず、それらのペプチドでの刺激によっては、特異的なCTL活性が測定されなかった。典型的な陰性データの例であるが、CDCA1-A11-10-391(配列番号:33)で刺激したCTLからは特異的IFN-γ産生が観察されなかった(v)。結果としてCDCA1に由来する21種のペプチドが、強力なCTLを誘導することができるペプチドとして選択されることが示された。
【0240】
HLA-A * 1101拘束性のCDCA1由来ペプチドに対するCTL株およびクローンの樹立
IFN-γ ELISPOTアッセイにてペプチド特異的CTL活性を示したCDCA1-A11-9-123(配列番号:3)を用いたウェル番号#7(a)、CDCA1-A11-9-105(配列番号:5)を用いたウェル番号#8(b)、CDCA1-A11-9-419(配列番号:6)を用いたウェル番号#1(c)、CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)を用いたウェル番号#4(d)、CDCA1-A11-9-439(配列番号:9)を用いたウェル番号#4(e)、CDCA1-A11-9-157(配列番号:13)を用いたウェル番号#3(f)、CDCA1-A11-9-25(配列番号:21)を用いたウェル番号#4(g)、CDCA1-A11-10-339(配列番号:30)を用いたウェル番号#3(h)、CDCA1-A11-10-358(配列番号:58)を用いたウェル番号#2(i)におけるCTLを増殖させ、CTL株を樹立した。これらのCTL株のCTL活性をIFN-γ ELISAによって測定した(図2)。これらのCTL株は、ペプチドをパルスしなかった標的細胞と比較して、対応するペプチドをパルスした標的細胞に対して強力なIFN-γ産生を示した。さらに、上記の「材料および方法」の章に記載された通りCTL株から限界希釈によってCTLクローンを樹立し、ペプチドをパルスしたC1R-A11に対するCTLクローンからのIFN-γ産生をIFN-γ ELISAによって測定した。CDCA1-A11-9-105(配列番号:5)(a)、CDCA1-A11-9-419(配列番号:6)(b)およびCDCA1-A11-9-219(配列番号:7)(c)で刺激したCTLクローンから強力なIFN-γ産生が観察された(図3)。
【0241】
CDCA1およびHLA-A * 1101を発現する標的細胞に対する特異的CTL活性
CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)に対して樹立されたCTLクローンを、CDCA1およびHLA-A*1101分子を発現する標的細胞を認識する能力に関して調べた。全長CDCA1およびHLA-A*1101遺伝子の両方をトランスフェクトしたCOS7細胞(CDCA1およびHLA-A*1101遺伝子を発現する標的細胞の特異的モデル)を標的細胞として調製した。全長CDCA1またはHLA-A*1101のいずれかをトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)で刺激したCTLクローンが、CDCA1およびHLA-A*1101の両方を発現するCOS7細胞に対して強力なCTL活性を示した(図4)。一方、対照細胞に対して有意な特異的CTL活性は検出されなかった。これらのデータにより、CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)が、CDCA1の内因的プロセシングにより生じるペプチドであり、かつHLA-A*1101分子とともに標的細胞上に提示されてCTLによって認識されることが明確に実証された。これらの結果は、CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)が、CDCA1を発現するがんを有する患者に対するがんワクチンとして適している可能性を示している。
【0242】
抗原ペプチドの相同性解析
CDCA1-A11-9-123(配列番号:3)、CDCA1-A11-9-105(配列番号:5)、CDCA1-A11-9-419(配列番号:6)、CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)、CDCA1-A11-9-439(配列番号:9)、CDCA1-A11-9-343(配列番号:10)、CDCA1-A11-9-21(配列番号:12)、CDCA1-A11-9-157(配列番号:13)、CDCA1-A11-9-244(配列番号:14)、CDCA1-A11-9-213(配列番号:17)、CDCA1-A11-9-335(配列番号:19)、CDCA1-A11-9-25(配列番号:21)、CDCA1-A11-10-339(配列番号:30)CDCA1-A11-10-452(配列番号:35)、CDCA1-A11-10-400(配列番号:38)、CDCA1-A11-10-289(配列番号:39)、CDCA1-A11-10-203(配列番号:40)、CDCA1-A11-10-156(配列番号:45)、CDCA1-A11-10-340(配列番号:53)、CDCA1-A11-10-106(配列番号:56)およびCDCA1-A11-10-358(配列番号:58)で刺激したCTLは、有意かつ特異的なCTLの活性を示した。これらの結果は、CDCA1-A11-9-123(配列番号:3)、CDCA1-A11-9-105(配列番号:5)、CDCA1-A11-9-419(配列番号:6)、CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)、CDCA1-A11-9-439(配列番号:9)、CDCA1-A11-9-343(配列番号:10)、CDCA1-A11-9-21(配列番号:12)、CDCA1-A11-9-157(配列番号:13)、CDCA1-A11-9-244(配列番号:14)、CDCA1-A11-9-213(配列番号:17)、CDCA1-A11-9-335(配列番号:19)、CDCA1-A11-9-25(配列番号:21)CDCA1-A11-10-339(配列番号:30)、CDCA1-A11-10-452(配列番号:35)、CDCA1-A11-10-400(配列番号:38)、CDCA1-A11-10-289(配列番号:39)、CDCA1-A11-10-203(配列番号:40)、CDCA1-A11-10-156(配列番号:45)、CDCA1-A11-10-340(配列番号:53)、CDCA1-A11-10-106(配列番号:56)およびCDCA1-A11-10-358(配列番号:58)の配列が、ヒト免疫系を感作することが知られている他の分子に由来するペプチドと相同であるという事実に起因する可能性がある。この可能性を排除するために、BLASTアルゴリズム(blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて、これらのペプチドの配列をクエリーとして相同性解析を行った。その結果、CDCA1-A11-9-123(配列番号:3)、CDCA1-A11-9-105(配列番号:5)、CDCA1-A11-9-419(配列番号:6)、CDCA1-A11-9-219(配列番号:7)、CDCA1-A11-9-439(配列番号:9)、CDCA1-A11-9-343(配列番号:10)、CDCA1-A11-9-21(配列番号:12)、CDCA1-A11-9-157(配列番号:13)、CDCA1-A11-9-244(配列番号:14)、CDCA1-A11-9-213(配列番号:17)、CDCA1-A11-9-335(配列番号:19)、CDCA1-A11-9-25(配列番号:21)CDCA1-A11-10-339(配列番号:30)、CDCA1-A11-10-452(配列番号:35)、CDCA1-A11-10-400(配列番号:38)、CDCA1-A11-10-289(配列番号:39)、CDCA1-A11-10-203(配列番号:40)、CDCA1-A11-10-156(配列番号:45)、CDCA1-A11-10-340(配列番号:53)、CDCA1-A11-10-106(配列番号:56)およびCDCA1-A11-10-358(配列番号:58)の配列に対して有意な相同性を有する配列は認められなかった。したがって、本発明者らの知る限りでは、これらのペプチドが、他の関連のない分子に対して意図しない免疫応答を引き起こす可能性はほとんどないと考えられる。結論として、CDCA1由来の新規HLA-A11拘束性エピトープペプチドが同定された。さらに、CDCA1由来のエピトープペプチドは、がん免疫療法に適用し得ることが示された。
【0243】
実施例2
材料および方法
細胞株
HLA-AおよびHLA-B陰性ヒトBリンパ芽球様細胞株であるC1R、ならびにアフリカミドリザル腎細胞株であるCOS7は、ATCCから購入した。
【0244】
HLA-A * 3303を安定的に発現する刺激細胞の作成
HLA-A*3303を安定的に発現するC1R(C1R-A33)は、刺激細胞として使用された。HLA-A*3303のオープンリーディングフレームをコードするcDNAはPCRで増幅され、発現ベクターへクローニングされた。C1R細胞は発現ベクターで形質転換され、その後、G418(Invitrogen)を用いて2週間選択された。G418選択細胞はG418が添加された培養培地を含む96ウェルプレートのウェルへ蒔かれ、さらに30日培養された。外来性HLA-A*3303のC1R細胞における発現はフローサイトメトリー解析で確認された。
【0245】
CDCA1由来のペプチドの候補選択
HLA-A*3303分子に結合するCDCA1由来の9merおよび10merのペプチドを、結合予測サーバー「NetMHC pan2.8」(www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCpan/) (Nielsen et al., PLoS One. 2007;29;2(8):e796; Hoof et al., Immunogenetics. 2009;61(1): 1-13)を用いて予測した。
【0246】
ペプチドの合成
ペプチドは、Biosynthesis(Lewisville,Texas)により、標準的な固相合成法に従って合成し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。該ペプチドの純度(>90%)および同一性は、それぞれ分析用HPLCおよび質量分析によって分析した。ペプチドはジメチルスルホキシドに20mg/mlで溶解し、-80℃で保存した。
【0247】
インビトロでのCTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)を抗原提示細胞として使用し、ヒト白血球抗原(HLA)上に提示されたペプチドに対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導した。他所に記載されているように、DCはインビトロで作製した(Nakahara S et al.,Cancer Res 2003,63(14):4112-8)。具体的には、Ficoll-Paque plus (Pharmacia)溶液によって健常なボランティア(HLA-A*3303陽性)から単離した末梢血単核細胞を、プラスチック製の組織培養ディッシュ(Becton Dickinson)へ付着させることによって分離し、それらを単球画分として濃縮した。2%の加熱不活化した自己血清(AS)を含むAIM-V培地(Invitrogen)中、1000 IU/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(R&D System)および1000 IU/mlのインターロイキン(IL)-4(R&D System)の存在下で、単球が濃縮された集団を培養した。7日間の培養後、サイトカインで誘導したDCに、AIM-V培地中で37℃で3時間、3μg/mlのβ2-ミクログロブリンの存在下で20μg/mlの各合成ペプチドをパルスした。作製された細胞は、自身の細胞表面上にCD80、CD83、CD86、およびHLAクラスIIなどのDC関連分子を発現しているようであった(データは示さず)。次いで、ペプチドパルスしたこれらのDCをX線照射(20Gy)によって不活化し、CD8 Positive Isolation Kit(Dynal)を用いた陽性選択によって得られた自己CD8+T細胞と1:20の比率で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)中に播種した。各ウェルは、0.5mlのAIM-V/2%AS培地中に、1.5 x 104個のペプチドパルスしたDC、3 x 105個のCD8+T細胞および10ng/mlのIL-7(R&D System)を含むようにした。3日後、これらの培養物に、IL-2(CHIRON)を最終濃度20IU/mlまで添加した。7日目および14日目に、ペプチドパルスした自己DCでT細胞をさらに刺激した。DCは上記と同一の方法によって毎回調製した。21日目に、3回目のペプチド刺激後、ペプチドパルスしたC1R-A33細胞に対してCTLをヒト インターフェロン(IFN)-γ 酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイにて試験した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001, 84(1): 94-9; Umano Y et al., Br J Cancer 2001, 84(8): 1052-7; Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006, 97(5): 411-9; Watanabe T et al., Cancer Sci 2005, 96(8): 498-506)。
【0248】
CTL増殖手順
Riddellら(Walter EA et al., N Engl J Med 1995, 333(16): 1038-44; Riddell SR et al., Nat Med 1996, 2(2): 216-23)によって記載されている方法と類似の方法を使用して、CTLを培養下で増殖させた。CTLを、5 x 106個細胞/フラスコのマイトマイシンCによって処理された2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、および40ng/mlの抗CD3抗体とともに総量25mlの5%AS含有AIM-V(AIM-V/5%AS)培地中で共培養した。培養開始1日後に、120IU/mlのIL-2を該培養物に添加した。5、8および11日目に、30IU/mlのIL-2を含む新鮮なAIM-V/5%AS培地を、該培養物に添加した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001, 84(1): 94-9; Umano Y et al., Br J Cancer 2001, 84(8): 1052-7, Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006, 97(5): 411-9, Watanabe T et al., Cancer Sci 2005, 96(8): 498-506)。
【0249】
CTLクローンの樹立
96丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)においてCTL 0.3個、1個、および3個細胞/ウェルとなるように、希釈を行った。CTLを、1 x 104個細胞/ウェルのマイトマイシンCによって処理された2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、30ng/mlの抗CD3抗体、および125IU/mlのIL-2とともに、総量150μl/ウェルのAIM-V/5%AS培地中で培養した。10日後、50μl/ウェルのIL-2を、IL-2の最終濃度が125IU/mlに達するように該培地に添加した。14日目にCTL活性を試験し、上記と同一の方法を使用してCTLクローンを増殖させた(Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006, 97(5): 411-9; Watanabe T et al., Cancer Sci 2005, 96(8)): 498-506)。
【0250】
特異的CTL活性
特異的CTL活性を調べるために、IFN-γ ELISPOTアッセイおよびIFN-γ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を実施した。具体的には、ペプチドパルスしたC1R‐A33(1 x 104個細胞/ウェル)を刺激細胞として調製した。誘導したCTL、すなわちCTL株およびCTLクローンを応答細胞として使用した。IFN-γ ELISPOTアッセイおよびIFN-γ ELISAは、製造業者の手順に従って実施した。
【0251】
標的遺伝子およびHLA-A * 3303を強制発現させた標的細胞の樹立
標的遺伝子またはHLA-A*3303のオープンリーディングフレームをコードするcDNAをPCRによって増幅した。PCR増幅産物を発現ベクターにクローニングした。製造業者の推奨する手順に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、標的遺伝子およびHLAの陰性細胞株であるCOS7に標的遺伝子の発現ベクターおよびHLA-A*3303の発現ベクターのいずれかまたは両方をトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後、トランスフェクトした細胞をベルセン(Invitrogen)を用いて回収し、CTL活性アッセイのための標的細胞(5 x 104個細胞/ウェル)として使用した。
【0252】
結果
CDCA1由来のHLA-A * 3303結合ペプチドの予測
表2aおよび表2bは、HLA-A*3303への結合が予測されたCDCA1由来の9merペプチドおよび10merペプチドを結合親和性の高い順に示す。HLA-A*3303結合能を有する可能性のある合計32種のペプチドを、エピトープペプチドを決定するために選択し、調べた。
【0253】
【表2a】
【0254】
【表2b】
【0255】
HLA-A * 3303拘束性のCDCA1由来予測ペプチドによるCTLの誘導
CDCA1由来のペプチドに対するCTLを、「材料および方法」に記載したプロトコールに従って作製した。IFN-γ ELISPOTアッセイによって、ペプチド特異的なCTL活性を測定した(図5)。CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)を用いたウェル番号#2(a)、CDCA1-A33-9-123(配列番号:3)を用いたウェル番号#1(b)、CDCA1-A33-9-108(配列番号:60)を用いたウェル番号#3(c)、CDCA1-A33-9-261(配列番号:28)を用いたウェル番号#2(d)、CDCA1-A33-9-105(配列番号:5)を用いたウェル番号#6(e)、CDCA1-A33-10-10(配列番号:67)を用いたウェル番号#8(f)およびCDCA1-A33-10-260(配列番号:69)を用いたウェル番号#5(g)におけるCTLは、対象と比較して強力なIFN-γ産生を示した。一方、表2aおよび表2bに示される他のペプチドは、HLA-A*3303との結合活性を有する可能性があるにもかかわらず、それらのペプチドでの刺激によっては、特異的なCTL活性が測定されなかった。典型的な陰性データの例ではあるが、CDCA1-A33-10-122(配列番号:68)で刺激したCTLからは特異的IFN-γ産生が観察されなかった(h)。結果としてCDCA1に由来する7種のペプチドを、強力なCTLを誘導することができるペプチドとして選択した。
【0256】
HLA-A 3303拘束性のCDCA1由来ペプチドに対するCTL株およびクローンの樹立
IFN-γ ELISPOTアッセイにおいてペプチド特異的CTL活性を示したCDCA1-A33-9-43(配列番号:27)を用いたウェル番号#2(a)、CDCA1-A33-9-123(配列番号:3)を用いたウェル番号#1(b)、CDCA1-A33-10-10(配列番号:67)を用いたウェル番号#8(c)およびCDCA1-A33-10-260(配列番号:69)を用いたウェル番号#5(d)におけるCTLを増殖させ、CTL株を樹立した。これらのCTL株のCTL活性をIFN-γ ELISAによって測定した(図6)。これらのCTL株は、ペプチドをパルスしなかった標的細胞と比較して、対応するペプチドをパルスした標的細胞に対して強力なIFN-γ産生を示した。さらに、上記の「材料および方法」の章に記載された通りCTL株から限界希釈によってCTLクローンを樹立し、ペプチドをパルスしたC1R-A33に対するCTLクローンからのIFN-γ産生をIFN-γ ELISAによって測定した。CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)(a)、およびCDCA1-A33-9-123(配列番号:3)(b)で刺激したCTLクローンから強力なIFN-γ産生が観察された(図7)。
【0257】
CDCA1およびHLA-A 3303を発現する標的細胞に対する特異的CTL活性
CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)に対して樹立されたCTLクローンを、CDCA1およびHLA-A3303分子を発現する標的細胞を認識する能力に関して調べた。全長CDCA1およびHLA-A3303遺伝子の両方をトランスフェクトしたCOS7細胞(CDCA1およびHLA-A3303遺伝子を発現する標的細胞の特異的モデル)を標的細胞として調製した。全長CDCA1またはHLA-A3303のいずれかをトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)で刺激したCTLクローンが、CDCA1およびHLA-A3303の両方を発現するCOS7細胞に対して強力なCTL活性を示した(図8)。一方、対照細胞に対して有意な特異的CTL活性は検出されなかった。これらのデータにより、CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)が、CDCA1の内因的プロセシングにより生じるペプチドであり、かつHLA-A3303分子とともに標的細胞上に提示されてCTLによって認識されることが明確に実証される。これらの結果は、CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)が、CDCA1を発現するがんを有する患者に対するがんワクチンとして適している可能性を示している。
【0258】
抗原ペプチドの相同性解析
CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)、CDCA1-A33-9-123(配列番号:3)、CDCA1-A33-9-108(配列番号:60)、CDCA1-A33-9-261(配列番号:28)、CDCA1-A33-9-105(配列番号:5)、CDCA1-A33-10-10(配列番号:67)およびCDCA1-A33-10-260(配列番号:69)の配列が、ヒト免疫系を感作することが知られている他の分子に由来するペプチドと相同であるという事実に起因する可能性がある。この可能性を排除するために、BLASTアルゴリズム(blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて、これらのペプチドの配列をクエリーとして相同性解析を行った。その結果、CDCA1-A33-9-43(配列番号:27)、CDCA1-A33-9-123(配列番号:3)、CDCA1-A33-9-108(配列番号:60)、CDCA1-A33-9-261(配列番号:28)、CDCA1-A33-9-105(配列番号:5)、CDCA1-A33-10-10(配列番号:67)およびCDCA1-A33-10-260(配列番号:69)の配列に対して有意な相同性を有する配列は認められなかった。したがって、本発明者らの知る限りでは、これらのペプチドが、他の関連のない分子に対して意図しない免疫応答を引き起こす可能性はほとんどないと考えられる。結論として、CDCA1由来の新規HLA-A33拘束性エピトープペプチドが同定された。さらに、CDCA1由来のエピトープペプチドはがん免疫療法に適用し得ることが示された。
【0259】
実施例3
材料および方法
細胞株
HLA-AおよびHLA-B陰性ヒトBリンパ芽球様細胞株であるC1R、ならびにアフリカミドリザル腎細胞株であるCOS7は、ATCCから購入した。
【0260】
HLA-A * 0301を安定的に発現する刺激細胞の作成
HLA-A*0301を安定的に発現するC1R(C1R-A03)は、刺激細胞として使用された。HLA-A*0301のオープンリーディングフレームをコードするcDNAはPCRで増幅され、発現ベクターへクローニングされた。C1R細胞は発現ベクターで形質転換され、その後、G418(Invitrogen)を用いて2週間選択された。G418選択細胞はG418が添加された培養培地を含む96ウェルプレートのウェルへ蒔かれ、さらに30日培養された。外来性HLA-A*0301のC1R細胞における発現はフローサイトメトリー解析で確認された。
【0261】
CDCA1由来のペプチドの候補選択
HLA-A*0301分子に結合するCDCA1由来の9merおよび10merのペプチドを、結合予測サーバー「NetMHC 3.2」(www.cbs.dtu.dk/services/NetMHC/) (Buus et al., Tissue Antigens. 2003 Nov, 62(5):378-84; Nielsen et al., Protein Sci. 2003 May, 12(5):1007-17, Bioinformatics. 2004 Jun 12:20(9):1388-97)を用いて予測した。
【0262】
ペプチドの合成
ペプチドは、Biosynthesis(Lewisville,Texas)により、標準的な固相合成法に従って合成し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。該ペプチドの純度(>90%)および同一性は、それぞれ分析用HPLCおよび質量分析によって分析した。ペプチドはジメチルスルホキシドに20mg/mlで溶解し、-80℃で保存した。
【0263】
インビトロでのCTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)を抗原提示細胞として使用し、ヒト白血球抗原(HLA)上に提示されたペプチドに対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導した。他所に記載されているように、DCはインビトロで作製した(Nakahara S et al.,Cancer Res 2003,63(14):4112-8)。具体的には、Ficoll-Paque plus (Pharmacia)溶液によって健常なボランティア(HLA-A*0301陽性)から単離した末梢血単核細胞を、プラスチック製の組織培養ディッシュ(Becton Dickinson)へ付着させることによって分離し、それらを単球画分として濃縮した。2%の加熱不活化した自己血清(AS)を含むAIM-V培地(Invitrogen)中、1000 IU/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(R&D System)および1000 IU/mlのインターロイキン(IL)-4(R&D System)の存在下で、単球が濃縮された集団を培養した。7日間の培養後、サイトカインで誘導したDCに、AIM-V培地中で37℃で3時間、3μg/mlのβ2-ミクログロブリンの存在下で20μg/mlの各合成ペプチドをパルスした。作製された細胞は、自身の細胞表面上にCD80、CD83、CD86、およびHLAクラスIIなどのDC関連分子を発現しているようであった(データは示さず)。次いで、ペプチドパルスしたこれらのDCをX線照射(20Gy)によって不活化し、CD8 Positive Isolation Kit(Dynal)を用いた陽性選択によって得られた自己CD8+T細胞と1:20の比率で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)中に播種した。各ウェルは、0.5mlのAIM-V/2%AS培地中に、1.5 x 104個のペプチドパルスしたDC、3 x 105個のCD8+T細胞および10ng/mlのIL-7(R&D System)を含むようにした。3日後、これらの培養物に、IL-2(CHIRON)を最終濃度20IU/mlまで添加した。7日目および14日目に、ペプチドパルスした自己DCでT細胞をさらに刺激した。DCは上記と同一の方法によって毎回調製した。21日目に、3回目のペプチド刺激後、ペプチドパルスしたC1R-A03に対してCTLをヒト インターフェロン(IFN)-γ 酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイにて試験した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001, 84(1): 94-9; Umano Y et al., Br J Cancer 2001, 84(8): 1052-7; Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006, 97(5): 411-9; Watanabe T et al., Cancer Sci 2005, 96(8): 498-506)。
【0264】
CTL増殖手順
Riddellら(Walter EA et al., N Engl J Med 1995, 333(16): 1038-44; Riddell SR et al., Nat Med 1996, 2(2): 216-23)によって記載されている方法と類似の方法を使用して、CTLを培養下で増殖させた。CTLを、5 x 106個細胞/フラスコのマイトマイシンCによって処理された2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、および40ng/mlの抗CD3抗体とともに、総量25mlの5%AS含有AIM-V(AIM-V/5%AS)培地中で共培養した。培養開始1日後に、120IU/mlのIL-2を該培養物に添加した。5、8および11日目に、30IU/mlのIL-2を含む新鮮なAIM-V/5%AS培地を、該培養物に添加した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001, 84(1): 94-9; Umano Y et al., Br J Cancer 2001, 84(8): 1052-7, Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006, 97(5): 411-9, Watanabe T et al., Cancer Sci 2005, 96(8): 498-506)。
【0265】
CTLクローンの樹立
96丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)においてCTL 0.3個、1個、および3個細胞/ウェルとなるように、希釈を行った。CTLを、1 x 104個細胞/ウェルのマイトマイシンCによって処理された2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、30ng/mlの抗CD3抗体、および125IU/mlのIL-2とともに、総量150μl/ウェルのAIM-V/5%AS培地中で培養した。10日後、50μl/ウェルのIL-2を、IL-2の最終濃度が125IU/mlに達するように該培地に添加した。14日目にCTL活性を試験し、上記と同一の方法を使用してCTLクローンを増殖させた(Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006, 97(5): 411-9; Watanabe T et al., Cancer Sci 2005, 96(8)): 498-506)。
【0266】
特異的CTL活性
特異的CTL活性を調べるために、IFN-γ ELISPOTアッセイおよびIFN-γ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を実施した。具体的には、ペプチドパルスしたC1R‐A03(1 x 104個細胞/ウェル)を刺激細胞として調製した。誘導したCTL、すなわちCTL株およびCTLクローンを応答細胞として使用した。IFN-γ ELISPOTアッセイおよびIFN-γ ELISAは、製造業者の手順に従って実施した。
【0267】
標的遺伝子およびHLA-A * 0301を強制発現させた標的細胞の樹立
標的遺伝子またはHLA-A*0301のオープンリーディングフレームをコードするcDNAをPCRによって増幅した。PCR増幅産物を発現ベクターにクローニングした。製造業者の推奨する手順に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、標的遺伝子およびHLAの陰性細胞株であるCOS7に標的遺伝子の発現ベクターおよびHLA-A*0301の発現ベクターのいずれかまたは両方をトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後、トランスフェクトした細胞をベルセン(Invitrogen)を用いて回収し、CTL活性アッセイのための標的細胞(5 x 104個細胞/ウェル)として使用した。
【0268】
結果
CDCA1由来のHLA-A * 0301結合ペプチドの予測
表3aおよび表3bは、HLA-A*0301への結合が予測されたCDCA1由来の9merペプチドおよび10merペプチドを結合親和性の高い順に示す。HLA-A*0301結合能を有する可能性のある合計24種のペプチドを、エピトープペプチドを決定するために選択し、調べた。
【0269】
【表3a】
【0270】
【表3b】
【0271】
HLA-A * 0301拘束性のCDCA1由来予測ペプチドによるCTLの誘導
CDCA1由来のペプチドに対するCTLを、「材料および方法」に記載したプロトコールに従って作製した。IFN-γ ELISPOTアッセイによって、ペプチド特異的なCTL活性を測定した(図9)。CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)を用いたウェル番号#3(a)、CDCA1-A03-10-400(配列番号:38)を用いたウェル番号#1(b)およびCDCA1-A03-10-257(配列番号:47)を用いたウェル番号#2(c)におけるCTLは、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。一方、表3aおよび表3bに示される他のペプチドは、HLA-A*0301との結合活性を有する可能性があるにもかかわらず、それらのペプチドでの刺激によっては、特異的なCTL活性が測定されなかった。典型的な陰性データの例であるが、CDCA1-A03-9-343(配列番号:10)で刺激したCTLからは特異的IFN-γ産生が観察されなかった(d)。結果として、CDCA1に由来する3種のペプチドを、強力なCTLを誘導することができるペプチドとして選択した。
【0272】
HLA-A * 0301拘束性のCDCA1由来ペプチドに対するCTL株およびクローンの樹立
IFN-γ ELISPOTアッセイにてペプチド特異的CTL活性を示したCDCA1-A03-9-219(配列番号:7)を用いたウェル番号#3(a)、CDCA1-A03-10-400(配列番号:38)を用いたウェル番号#1(b)およびCDCA1-A03-10-257(配列番号:47)を用いたウェル番号#2(c)におけるCTLを増殖させ、CTL株を樹立した。これらのCTL株のCTL活性をIFN-γ ELISAによって測定した(図10)。これらのCTL株は、ペプチドをパルスしなかった標的細胞と比較して、対応するペプチドをパルスした標的細胞に対して強力なIFN-γ産生を示した。さらに、上記の「材料および方法」の章に記載された通りCTL株から限界希釈によってCTLクローンを樹立し、ペプチドをパルスしたC1R-A03に対するCTLクローンからのIFN-γ産生をIFN-γ ELISAによって測定した。CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)(a)、CDCA1-A03-10-400(配列番号:38)(b)およびCDCA1-A03-10-257(配列番号:47)(c)で刺激したCTLクローンから強力なIFN-γ産生が観察された(図11)。
【0273】
CDCA1およびHLA-A 0301を発現する標的細胞に対する特異的CTL活性
CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)(a)およびCDCA1-A03-10-400(配列番号:38)(b)に対して樹立されたCTLクローンを、CDCA1およびHLA-A0301分子を発現する標的細胞を認識する能力に関して調べた。全長CDCA1およびHLA-A0301遺伝子の両方をトランスフェクトしたCOS7細胞(CDCA1およびHLA-A0301遺伝子を発現する標的細胞の特異的モデル)を標的細胞として調製した。全長CDCA1またはHLA-A0301のいずれかをトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)(a)およびCDCA1-A03-10-400(配列番号:38)(b)で刺激したCTLクローンが、CDCA1およびHLA-A0301の両方を発現するCOS7細胞に対して強力なCTL活性を示した(図12)。一方、対照細胞に対して有意な特異的CTL活性は検出されなかった。これらのデータにより、CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)およびCDCA1-A03-10-400(配列番号:38)が、CDCA1の内因的プロセシングにより生じるペプチドであり、かつHLA-A0301分子とともに標的細胞上に提示されてCTLによって認識されることが明確に実証される。これらの結果は、CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)およびCDCA1-A03-10-400(配列番号:38)が、CDCA1を発現するがんを有する患者に対するがんワクチンとして適している可能性を示している。
【0274】
抗原ペプチドの相同性解析
CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)、CDCA1-A03-10-400(配列番号:38)およびCDCA1-A03-10-257(配列番号:47)で刺激したCTLは、有意かつ特異的なCTL活性を示した。この結果は、CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)、CDCA1-A03-10-400(配列番号:38)およびCDCA1-A03-10-257(配列番号:47)の配列が、ヒト免疫系を感作することが知られている他の分子に由来するペプチドと相同であるという事実に起因する可能性がある。この可能性を排除するために、BLASTアルゴリズム(blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて、これらのペプチドの配列をクエリーとして相同性解析を行った。その結果、CDCA1-A03-9-219(配列番号:7)、CDCA1-A03-10-400(配列番号:38)およびCDCA1-A03-10-257(配列番号:47)の配列に対して有意な相同性を有する配列は認められなかった。したがって、本発明者らの知る限りでは、これらのペプチドが、他の関連のない分子に対して意図しない免疫応答を引き起こす可能性はほとんどないと考えられる。結論として、本発明者は、CDCA1由来の新規HLA-A03拘束性エピトープペプチドが同定された。さらに、CDCA1由来のエピトープペプチドは、がん免疫療法に適用し得ることが示された。
【0275】
実施例4
エマルション製剤の調製
ペプチドを注射用水または滅菌生理食塩水に1.0~10.0mg/mlとなるように溶解し、シリンジに採取する。これを注射用水または生理食塩水と等量のIFAを充填したシリンジとコネクタにより連結し、連結した2本のシリンジのシリンジプランジャを交互に押圧することによって撹拌する。数分間撹拌した後、ドロップテスト法により、エマルションの完成を評価する。ドロップテスト法は、撹拌したサンプル1滴を水面上に滴下することによって行うことができる。水面上に滴下したサンプルが直ちに水中に拡散しない場合にはエマルション完成と評価し、ただちに水中に拡散する場合にはエマルション未完成と評価する。エマルション未完成と評価された場合には、さらに撹拌を行ってエマルションを完成させる。完成したエマルションは、皮下注射により、がん患者に投与することができる。投与対象のがん患者としては、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、または大腸がん等に罹患している患者を選択することができる。
【0276】
凍結乾燥製剤の調製
ペプチドを注射用水に1.0~10.0mg/mlとなるように溶解し、ろ過滅菌を行う。これを滅菌バイアルに充填し、滅菌したゴム栓を半打栓する。このバイアルを凍結乾燥した後、全打栓およびアルミキャップの巻き締めを行うことにより、凍結乾燥製剤を作成する。使用の際には、バイアルに注射用水または滅菌生理食塩水を注入して凍結乾燥粉末を再溶解する。シリンジを用いてバイアル中の再溶解液を採取し、採取した再溶解液と等量のIFAを充填したシリンジとコネクタにより連結する。連結した2本のシリンジのシリンジプランジャを交互に押圧することによって撹拌する。数分間撹拌した後、ドロップテスト法により、エマルションの完成を評価する。完成したエマルションは、皮下注射により、がん患者に投与することができる。投与対象のがん患者としては、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、または大腸がん等に罹患している患者を選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0277】
本発明は、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導し、したがって幅広いがんの種類に対する適用性を有し得る、CDCA1由来の新規HLA-A11拘束性、HLA-A33拘束性、およびHLA-A03拘束性エピトープペプチドを提供する。本発明のペプチド、組成物、APC、およびCTLは、CDCA1を発現するがん、例えば、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、骨肉腫、前立腺がん、腎がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、軟部組織腫瘍、および大腸がんに対するペプチドワクチンとして使用され得る。
【0278】
本明細書において、本発明をその特定の態様に関して詳細に説明しているが、前述の説明は本質的に例示的かつ説明的なものであって、本発明およびその好ましい態様を説明することを意図していることが理解されるべきである。慣例的な実験を通して、当業者は、その境界および限界が添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および改変がその中でなされ得ることを容易に認識する。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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