(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】細径ビーム生成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20230421BHJP
G02B 27/09 20060101ALI20230421BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20230421BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B27/09
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2022564615
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2021036398
【審査請求日】2022-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520359848
【氏名又は名称】株式会社テックジェーピー
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100203312
【氏名又は名称】福田 敬孝
(72)【発明者】
【氏名】笠原 健
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-112108(JP,A)
【文献】特開2013-173178(JP,A)
【文献】国際公開第2019/193918(WO,A1)
【文献】特開2019-034343(JP,A)
【文献】特表2017-521877(JP,A)
【文献】特開2017-102474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302396(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
G02B 27/09
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、コリメータ光学系と、アキシコン光学素子と、を含む線光源生成手段と、
前記線光源生成手段により生成される光束を整形するビーム整形手段と、を有し、
前記ビーム整形手段は、集光部を有し、
前記線光源生成手段により生成される線光源は、虚像であり、
前記線光源は、前記集光部の光軸上に配置され、
前記線光源の前記光軸上の中心位置は、前記集光部の焦点位置よりも、前記集光部から離れた位置に配置される、細径ビーム生成装置。
【請求項2】
前記光源と、前記コリメータ光学系と、前記アキシコン光学素子としてのアキシコン面を有するレンズと、を含む前記線光源生成手段を有し、
前記集光部は、非球面を有するレンズであり、
前記アキシコン面を有するレンズと、前記非球面を有するレンズとは、一体のレンズである、請求項1に記載の細径ビーム生成装置。
【請求項3】
前記光源と、前記コリメータ光学系と、前記アキシコン光学素子としてのアキシコン鏡と、を含む前記線光源生成手段を有し、
前記集光部は、放物面鏡を有する、請求項1に記載の細径ビーム生成装置。
【請求項4】
前記コリメータ光学系は、複数の異なる波長の平行光を出射する、請求項1~3のいずれかに記載の細径ビーム生成装置。
【請求項5】
前記コリメータ光学系は、複数の光源から出射される光が入射する複数のコリメータレンズを有し、
前記複数のコリメータレンズから出射する複数の異なる波長の平行光が入射する前記アキシコン光学素子を有する、請求項4に記載の細径ビーム生成装置。
【請求項6】
前記ビーム整形手段は、アパーチャを有する、請求項1~5のいずれかに記載の細径ビーム生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細径ビーム生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ発光素子等の光源を用いたプロジェクタ装置やディスプレイ装置が知られている。例えば、レーザなどの1つまたは複数の光源と、ビーム整形光学素子と、結合光学素子と、MEMSスキャナと、取り付けを容易にし、光学的配置を維持するための光学フレームなどの1つまたは複数の機械構成要素と、を含む統合型フォトニクスモジュールが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年においては、ARやMR、VR等のXRと称される仮想現実画像を視界に入れることが可能なメガネ型表示デバイスが台頭してきている。特に、表示方式がLBS(Laser Beam Steering)と呼ばれるレーザ走査型方式は網膜スキャンディスプレイに対しても適用可能であり、視力が悪い人であっても鮮明な映像を見ることができる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-533715号公報
【文献】特開平11-064782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような網膜スキャンディスプレイ等のデバイスを好適に実現するためには、網膜という非常に小さい領域に対して高精細な画像を投影する必要がある。このため、網膜を走査するビームは非常に小さい径(例えば、20μm程度)であることが好ましい。しかし、従来の技術においては、例えばガウシアンビームの径は300μm程度以下の平行ビームとすることが不可能であるため、特定距離で集光するスポットビームを代替手段として使用していた。スポットビームは特定距離では非常に小さなビーム径になるが、焦点距離の前後の位置でのビーム径は大きくなってしまうため、メガネ型表示デバイスにおいて、メガネの着用者の個体差で画像が網膜に到達する距離が異なるため、その距離を調整するための繊細な調整機構が必要である。一方で、アキシコン等で生成されるベッセルビームは、非常にアキシコン等に近接した位置にしか生成させることができず、プロジェクタ装置に適用できないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、任意の光源から発せられる光に基づき、任意の位置に所定の径の大きさ以下の細径ビームを生成できる、細径ビーム生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、線光源を整形するビーム整形手段を有し、前記ビーム整形手段は、集光部を有し、前記線光源は、前記集光部の光軸上に配置され、前記線光源の前記光軸上の中心位置は、前記集光部の焦点位置よりも、前記集光部から離れた位置に配置される、細径ビーム生成装置に関する。
【0008】
(2) 光源と、コリメータ光学系と、アキシコン光学素子と、を含む線光源生成手段を有する、(1)に記載の細径ビーム生成装置。
【0009】
(3) 光源と、コリメータ光学系と、アキシコン面を有するレンズと、を含む線光源生成手段を有し、前記集光部は、非球面を有するレンズであり、前記アキシコン面を有するレンズと、前記非球面を有するレンズとは、一体のレンズである、(1)に記載の細径ビーム生成装置。
【0010】
(4) 光源と、コリメータ光学系と、アキシコン鏡と、を含む線光源生成手段を有し、前記集光部は、放物面鏡を有する、(1)に記載の細径ビーム生成装置。
【0011】
(5) 前記コリメータ光学系は、複数の異なる波長の平行光を出射する、(2)~(4)のいずれかに記載の細径ビーム生成装置。
【0012】
(6) 前記コリメータ光学系は、複数の光源から出射される光が入射する複数のコリメータレンズを有し、前記複数のコリメータレンズから出射する複数の異なる波長の平行光が入射するアキシコン光学素子を有する、(5)に記載の細径ビーム生成装置。
【0013】
(7) 前記ビーム整形手段は、アパーチャを有する、(1)~(6)のいずれかに記載の細径ビーム生成装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、任意の光源から発せられる光に基づき、任意の位置に所定の径の大きさを有する細径ビームを生成できる、細径ビーム生成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る細径ビーム生成装置の構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る細径ビーム生成装置の光学シミュレーションの条件を示す拡大模式図である。
【
図3】
図2の条件において波長520nmの光を観測したシミュレーション結果を示す図である。
【
図4】
図2の条件において、波長450nmの光を観測したシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】
図2の条件において、波長638nmの光を観測したシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る細径ビーム生成装置の構成及び光学シミュレーションの条件を示す拡大模式図である。
【
図7】
図6の条件において波長520nmの光を観測したシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】
図6の条件において、波長450nmの光を観測したシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】
図6の条件において、波長638nmの光を観測したシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】第3実施形態に係る細径ビーム生成装置の構成及び光学シミュレーションの条件を示す拡大模式図である。
【
図11】
図10の条件において波長520nmの光を観測したシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】第4実施形態に係る細径ビーム生成装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の内容は以下の実施形態の記載に限定されない。
【0017】
《第1実施形態》
<細径ビーム生成装置の構成>
本実施形態に係る細径ビーム生成装置1は、
図1に示すように、光源2と、コリメータ光学素子3と、アキシコンレンズ4と、集光レンズ5と、アパーチャA1及びA2と、を有する。本実施形態において、光源2、コリメータ光学素子3、及びアキシコンレンズ4が線光源L1を生成する線光源生成手段に該当し、集光部としての集光レンズ5、並びにアパーチャA1及びA2がビーム整形手段に該当する。
【0018】
本実施形態において、コリメータ光学素子3、アキシコンレンズ4、及び集光レンズ5は光軸がほぼ同一の光軸Xとなるように配置される。光軸X上に生成された線光源L1は、集光レンズ5によって整形され、予め設定された位置に細径ビームL2が生成される。上記細径ビームL2が生成される予め設定された位置は、例えば、集光レンズ5から数十mm以上離隔した任意の位置とすることができ、細径ビームL2の長さは原理的には無限遠であることから、細径ビームL2が生成される位置は実質的に任意の位置とすることが可能である。なお、線光源L1の光軸中心は、必ずしも光軸Xの軸中心にある必要はなく、多少の軸のズレがあってもよい。
【0019】
上記細径ビームL2を生成できる細径ビーム生成装置1の用途としては、特に限定されず、細径ビームL2の径の大きさや生成位置も任意に設計することが可能であるため、様々なプロジェクタ装置、ディスプレイ装置、レーザ加工装置、照明装置、光通信装置、光メモリ装置、光情報処理装置等に対して細径ビーム生成装置1を適用できる。特に、細径ビームL2のビーム径の大きさは所定の大きさ以下とすることができ、かつ光軸X方向の所定の長さ(原理的には無限遠まで)において殆ど発散せず焦点位置の調整が不要である。このため、細径ビーム生成装置1は網膜スキャンディスプレイに対して好ましく適用できる。細径ビームL2のビーム径は、例えば、50μm以下とすることができ、20μm以下とすることもでき、10μm以下とすることもできる。
【0020】
光源2は、例えば半導体レーザ(LD)、LED、面光源等の任意の光源である。光源2としては特に限定されず、空間的コヒーレンス性、及び時間的コヒーレンス性のいずれも要求されないため、任意の光源を用いることができる。光源2は、電源となる光源ドライバーなどにより光強度を調整、変調可能であってもよい。光源2としては、同一又は異なる波長の光を発する光源が複数設けられていてもよい。例えば、後述する第4実施形態のように、複数の光源を用い、RGBの光を合波した光源としてもよい。
【0021】
コリメータ光学系としてのコリメータ光学素子3は、光源2から発せられた光が入射する光学素子である。コリメータ光学素子3は、上記入射する光を光軸Xに略平行な平行光に変換して射出する。コリメータ光学系としてのコリメータ光学素子3としては、コリメータレンズ、ミラー、回折光学素子(DOE)等が挙げられる。回折光学素子は、表面に微細な凹凸構造を有し、光の回折現象を利用することで光を空間的に分岐させ、所望のパターン、形状の光を出力できる素子である。コリメータ光学素子3は、光源2が複数設けられる場合には、光源2の数に応じて複数設けられる。なお、発散特性のある光源に対してはコリメータ光学系が用いられるが、発散特性が無い光源においてはコリメータ光学系を用いず、直に又はビームエクスパンダーを使用して後段の光学系に合わせて入射させてもよい。
【0022】
アキシコンレンズ4は、コリメータ光学素子3により生成された平行光が垂直に入射するレンズであり、出射側に形成されたアキシコン面の頂点から光を射出する。アキシコンレンズ4から出射された光はリング状に光軸Xに集光し、アキシコン面の頂点から光軸Xに沿った所定の長さの線光源L1を射出する。なお、アキシコンレンズ4に代えて、同様の光学特性を有する回折光学素子(DOE)レンズを用いてもよい。本実施形態において、線光源生成手段により生成される線光源L1は実像であるが、上記線光源L1には虚像も含まれる。
【0023】
線光源生成手段としては、線光源L1を生成できる手段であればよく、上記の光源2、コリメータ光学素子3、及びアキシコンレンズ4には限定されない。例えば、後述の他の実施形態に係る線光源生成手段であってもよい。上記以外に、線光源生成手段として、発光ファイバ等の線状の発光源を用いてもよい。
【0024】
集光部としての集光レンズ5は、ビーム整形手段であり、
アキシコンレンズ4により生成される光束である、アキシコンレンズ4から射出された光源L1を整形して任意の位置に細径ビームL2を生成する。集光レンズ5としては、入射光に対して集光作用を有するレンズであれば特に限定されないが、例えば
図2に示すような片側非球面の平凸レンズや、両側非球面の両凸レンズを用いることができる。また、集光部としては、集光レンズに限定されず、後述する他の実施形態におけるような放物面鏡を用いてもよい。
【0025】
上記線光源生成手段により生成される線光源L1の光軸X上の中心位置Cは、集光部としての集光レンズ5の焦点位置Fよりも、集光レンズ5から離れた位置に配置される。これにより、細径ビームL2が発散することなく、所定の大きさ以下の径を有する細径ビームL2を生成することができる。細径ビームL2は、その発生位置から光軸X方向の所定の長さ(原理的には無限遠まで)において殆ど発散せず、所定の大きさ以下の径が維持される。仮に線光源L1の中心位置Cを、焦点位置Fよりも集光レンズ5の近くに配置した場合、集光レンズ5から出射した光が発散し、細径ビームを効率よく生成することができない。なお、中心位置Cと集光レンズ5との距離を遠ざけるほど、細径ビームL2を集光レンズ5の近傍に生成することができるため、中心位置Cと焦点位置Fとの相対的な位置を調整することにより、任意の位置を細径ビームL2の発生位置とすることができる。
【0026】
アパーチャA1及びA2は、線光源L1が透過する孔部(光透過部)を有する部材であり、線光源L1を整形するビーム整形手段である。アパーチャA1及びA2により、アキシコンレンズ4から出射される不要な光を除去することができる。アパーチャA1は、例えば、光軸X方向において中心位置Cに対応する位置に配置することができ、アパーチャA1の孔部は、アキシコンレンズ4から出射される線光源L1の径と同一の径とすることができる。アパーチャA2は、リング状に発散する線光源L1が透過可能なリング状の孔部を有する。アパーチャA2は、例えば集光レンズ5の表面の一部をリング状にマスキングすることで実現できる。
図1において、アパーチャA2は、集光レンズ5の出射側に設けられているが、アパーチャA2は、集光レンズ5の入射側に設けられていてもよい。上記アパーチャはアパーチャA1、及びアパーチャA2のいずれか一方のみを用いてもよい。
【0027】
<光学シミュレーション結果>
図2は、第1実施形態に係る細径ビーム生成装置1を用いて、光学設計ソフトウェアZEMAX(登録商標)(ZEMAX Development Corporation社製)を使用し、光学シミュレーションを行った条件を示す図である。
【0028】
図2に示すアキシコンレンズ4は、傾角が33°のものを用いた。集光レンズ5としては、片側非球面の平凸レンズ(有効径3.0mm)を用いた。
図2に示すように、光軸X上のアキシコンレンズ4の長さは1.0mmであり、光軸X上の集光レンズ5の長さは1.707mmである。アキシコンレンズ4と集光レンズ5の間隔は1.575mmである。集光レンズ5の焦点位置Fは、集光レンズ5の入射面(平面)から左に0.93mmの光軸X上に位置する。線光源L1はアキシコンレンズ4の頂点から右に光軸X上0.9mmの長さに亘って分布する。このため、線光源L1の中心位置Cは、アキシコンレンズ4の頂点から右に0.45mmの光軸X上(集光レンズ5の入射面(平面)から左に1.125mmの光軸X上)に存在する。よって、線光源L1の中心位置Cは集光レンズ5の焦点位置Fよりも、集光レンズ5から離れた位置に配置されている。
【0029】
図3~
図5は、集光レンズ5の出射側端面からの距離Dがそれぞれ10mm、20mm、40mm、80mm、160mmの位置において、光軸Xに垂直な面上にディテクタを設置し上記光学シミュレーションにより放射照度分布を出力した結果を示す図である。
図3は、アキシコンレンズ4に入射するコリメータレンズからの平行光束(ビーム径:1.0mm)の波長を520nmとし、
図4は、同様に波長を450nm、
図5は、同様に波長を638nmとした。
図3~
図5はディテクタに対する入射光強度に比例した、放射照度の分布を示し、色の明るい箇所ほど放射照度が高いことを意味する。
図3~
図5の各出力結果における縦軸及び横軸は、ディテクタサイズ(一辺20μm)に対応し(単位:mm)、中心(縦軸=0、横軸=0)が光軸Xの位置に対応する。
【0030】
図3~
図5の結果から、生成される細径ビームはいずれも光軸Xを中心とした数μmの範囲に放射照度の大部分が集中するスポットを形成していることが明らかである。また、スポットの径は集光レンズ5からの距離に依らずほぼ一定である。これにより、集光レンズ5からの距離Dが少なくとも10mm~160mmの範囲において、数μmの径を有する細径ビームが生成されることが確認された。また、波長520nm、450nm、及び638nmのいずれにおいても同様の現象が得られ、緑色、青色、及び赤色の光により細径ビームを生成できることが確認された。
【0031】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。上記第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
【0032】
《第2実施形態》
<細径ビーム生成装置の構成>
第2実施形態に係る細径ビーム生成装置1aは、
図6に示すように、入射面S1が凹アキシコン面であり、出射面S2が非球面である一体のレンズ6を有する。上記以外の細径ビーム生成装置1aの構成は、第1実施形態と同様である。即ち、入射面S1に対しては、第1実施形態と同様の光源及びコリメータ光学系により生成された平行光が入射する。本実施形態において、レンズ6は線光源生成手段と集光部としての機能を兼ねる。また、レンズ6により生成される線光源L1はレンズ6よりも入射側に生成される虚像である。本実施形態においても、線光源L1の光軸X上の中心位置Cは、集光部としての出射面S2の焦点位置Fよりも、出射面S2から離れた位置に配置される。これにより、細径ビームL2が発散することなく、所定の大きさ以下の径を有する細径ビームL2を生成することができる。
【0033】
<光学シミュレーション結果>
図6は、第2実施形態に係る細径ビーム生成装置1aの構成を示すと共に、細径ビーム生成装置1aを用いて、光学設計ソフトウェアZEMAX(登録商標)(ZEMAX Development Corporation社製)を使用し、光学シミュレーションを行った条件を示す図である。
【0034】
図6に示すレンズ6は、有効径が2.0mmであり、入射面S1(凹アキシコン面)は、傾角が19°とした。入射面S1(凹アキシコン面)の頂点と出射面S2の出射端面との距離は、
図6に示すように1.9mmである。出射面S2の焦点位置Fは、入射面S1(凹アキシコン面)の頂点から左に1.4mmの光軸X上に位置する。虚像である線光源L1は入射面S1(凹アキシコン面)の頂点から左に光軸X上4.4mmの長さに亘って分布する。このため、線光源L1の中心位置Cは、入射面S1(凹アキシコン面)の頂点から左に2.2mmの光軸X上に存在する。よって、線光源L1の中心位置Cは集光部の焦点位置Fよりも、集光部から離れた位置に配置されている。
【0035】
図7~
図9は、
図3~
図5と同様に、出射面S2の出射端面からの距離Dがそれぞれ10mm、20mm、40mm、80mm、160mmの位置において、光軸Xに垂直な面上にディテクタを設置し上記光学シミュレーションにより放射照度分布を出力した結果を示す図である。
図7は、入射面S1(凹アキシコン面)に入射するコリメータレンズからの平行光束(ビーム径:1.0mm)の波長を520nmとし、
図8は、同様に波長を450nm、
図9は、同様に波長を638nmとした。他の条件は
図3~
図5と同様である。
【0036】
図7~
図9の結果から、
図3~
図5と同様に、細径ビーム生成装置1aにより生成される細径ビームはいずれも光軸Xを中心とした数μmの範囲に放射照度の大部分が集中するスポットを形成していることが明らかである。また、スポットの径は出射面S2からの距離に依らずほぼ一定である。これにより、出射面S2からの距離Dが少なくとも10mm~160mmの範囲において、数μmの径を有する細径ビームが生成されることが確認された。また、波長520nm、450nm、及び638nmのいずれにおいても同様の現象が得られ、緑色、青色、及び赤色の光により細径ビームを生成できることが確認された。
【0037】
《第3実施形態》
<細径ビーム生成装置の構成>
第3実施形態に係る細径ビーム生成装置1bは、
図10に示すように、凸型アキシコン鏡4aと、放物面鏡5aと、を有する。上記以外の細径ビーム生成装置1bの構成は、第1実施形態と同様である。即ち、凸型アキシコン鏡4aに対しては、第1実施形態と同様の光源及びコリメータ光学系により生成された平行光が入射する。放物面鏡5aには、
凸型アキシコン鏡4aにより生成される光束である、凸型アキシコン鏡4aにより反射された光が入射する。本実施形態において、凸型アキシコン鏡4aは線光源生成手段であり、放物面鏡5aは、ビーム整形手段における集光部である。本実施形態において、凸型アキシコン鏡4aにより生成される線光源L1は、凸型アキシコン鏡4aの反射光とは逆側に生成される虚像である。本実施形態においても、線光源L1の光軸X上の中心位置Cは、集光部としての放物面鏡5aの焦点位置Fよりも、放物面鏡5aから離れた位置に配置される。これにより、細径ビームL2が発散することなく、所定の大きさ以下の径を有する細径ビームL2を生成することができる。
【0038】
<光学シミュレーション結果>
図10は、第3実施形態に係る細径ビーム生成装置1bの構成を示すと共に、細径ビーム生成装置1aを用いて、光学設計ソフトウェアZEMAX(登録商標)(ZEMAX Development Corporation社製)を使用し、光学シミュレーションを行った条件を示す図である。
【0039】
図10に示す凸型アキシコン鏡4aは、有効径が1.0mmであり、アキシコン面の傾角は5.66°である。放物面鏡5aは、有効径が3.0mmである。凸型アキシコン鏡4aの頂点と放物面鏡5aの入射面との距離は、
図10に示すように4.5mmである。凸型アキシコン鏡4aの入射面と逆側の端面と、放物面鏡5aの入射面と逆側の端面との距離は、
図10に示すように5.2mmである。放物面鏡5aの焦点位置Fは、凸型アキシコン鏡4aの頂点から右に0.3mmの光軸X上に位置する。虚像である線光源L1は凸型アキシコン鏡4aの頂点から右に光軸X上2.5mmの長さに亘って分布する。このため、線光源L1の中心位置Cは、凸型アキシコン鏡4aの頂点から右に1.25mmの光軸X上に存在する。よって、線光源L1の中心位置Cは集光部の焦点位置Fよりも、集光部から離れた位置に配置されている。
【0040】
図11は、
図3と同様に、凸型アキシコン鏡4aの入射面と逆側の端面からの距離Dがそれぞれ10mm、20mm、40mm、80mm、160mmの位置において、光軸Xに垂直な面上にディテクタを設置し上記光学シミュレーションにより放射照度分布を出力した結果を示す図である。
図11は、凸型アキシコン鏡4aに入射するコリメータレンズからの平行光束(ビーム径:1.0mm)の波長を520nmとした。なお反射光学系の光学的特性は入射光波長に依存しないため、他の波長のシミュレーション結果は省略する。
【0041】
図11の結果から、
図3と同様に、細径ビーム生成装置1bにより生成される細径ビームはいずれも光軸Xを中心とした数μmの範囲に放射照度の大部分が集中するスポットを形成していることが明らかである。また、スポットの径は凸型アキシコン鏡4aからの距離に依らずほぼ一定である。これにより、凸型アキシコン鏡4aからの距離Dが少なくとも10mm~160mmの範囲において、数μmの径を有する細径ビームが生成されることが確認された。
【0042】
《第4実施形態》
<細径ビーム生成装置の構成>
本実施形態に係る細径ビーム生成装置1cは、
図12に示すように、複数の光源2a、2b、及び2cと、複数のコリメータ光学素子3a、3b、及び3cと、合波手段としてのダイクロイックミラー7a、7b、及び7cと、アキシコンレンズ4と、集光レンズ5と、を有する。
【0043】
複数の光源2a、2b、及び2cは、例えば、それぞれRGBに相当する光源であり、異なる波長の光を出射する光源である。細径ビーム生成装置1cは、線光源生成手段として、複数の光源2a、2b、及び2cと、複数のコリメータ光学素子3a、3b、及び3cと、合波手段としてのダイクロイックミラー7a、7b、及び7cと、を有し、異なる波長の光を合波して、単一のアキシコンレンズ4に入射させる。これにより、異なる波長の光を合波することが可能となる。更に、アキシコンレンズ4から射出される光は、複数のコリメータ光学素子3a、3b、及び3cから射出される平行光の光軸が互いに多少ズレていた場合であっても、アキシコン面の頂点から光軸Xに沿って出射される、ズレが無い光である。このため、細径ビーム生成装置1cをプロジェクタ装置として用いた場合に、ズレの補正を要さず、極めて鮮明な画像を得ることができる。
【0044】
合波手段としてのダイクロイックミラー7a、7b、及び7cは、光の干渉を利用し、特定の波長領域の光を透過し、残りの波長領域の光を反射する。合波手段としては、上記ダイクロイックミラーに限定されず、他の合波手段である、例えばダイクロイックプリズム、PLC(平面光回路)、反射ミラー、光ファイバ等を用いてもよい。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
【0046】
上記実施形態では、第2実施形態及び第3実施形態において要部のみを説明したが、上記に限定されず、第1実施形態又は第4実施形態で説明した構成との組み合わせも可能である。例えば、第2実施形態及び第3実施形態の構成に複数の光源及び合波手段や、アパーチャA1及びA2を組み合わせてもよい。
【0047】
上記実施形態では、細径ビーム生成装置により生成される細径ビームL2のビーム径は、例えば、50μm以下とすることができる、として説明したが、上記に限定されない。上記実施形態に係る細径ビーム生成装置の細径ビーム生成の仕組みを利用し、細径化目的外の用途として、ビーム径を維持した遠距離ビーム生成装置としても利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1、1a、1b、1c 細径ビーム生成装置
2 光源
3 コリメータ光学素子(コリメータ光学系)
4 アキシコンレンズ
4a 凸型アキシコン鏡(アキシコン鏡)
5 集光レンズ(集光部)
5a 放物面鏡(集光部)
6 一体のレンズ
S1 凹アキシコン面(アキシコン面)
S2 非球面
A1、A2 アパーチャ
L1 線光源
L2 細径ビーム
X 光軸
【要約】
任意の光源から発せられる光に基づき、任意の位置に所定の径の大きさ以下の細径ビームを生成できる、細径ビーム生成装置を提供する。
線光源を整形するビーム整形手段を有し、ビーム整形手段は、集光部を有し、線光源は、集光部の光軸上に配置され、線光源の前記光軸上の中心位置は、集光部の焦点位置よりも、集光部から離れた位置に配置される、細径ビーム生成装置。