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  • 特許-潤滑油基油組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】潤滑油基油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 145/14 20060101AFI20230421BHJP
   C10M 149/10 20060101ALI20230421BHJP
   C10M 149/06 20060101ALI20230421BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20230421BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20230421BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20230421BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230421BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20230421BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230421BHJP
【FI】
C10M145/14
C10M149/10
C10M149/06
C10N20:00 Z
C10N20:02
C10N20:04
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N40:25
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018044390
(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2019156953
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 保奈美
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 康
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛久
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-004055(JP,A)
【文献】特開2016-053154(JP,A)
【文献】特開2016-065221(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152463(WO,A1)
【文献】特開2015-134913(JP,A)
【文献】特開2014-224243(JP,A)
【文献】特表2018-514621(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174186(WO,A1)
【文献】特開2017-110196(JP,A)
【文献】特開2017-031400(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129732(WO,A1)
【文献】特開2016-169368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油組成物と、金属清浄剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、及び摩耗防止剤から選ばれる添加剤の少なくとも1以上とを含有する潤滑油組成物であって、
潤滑油基油組成物が、
(A)100℃での動粘度1.5~2.7mm/sを有し且つ40℃における動粘度6~15mm/sを有する潤滑油基油、及び
(B)片末端に炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有し、且つ、他の末端に(メタ)アクリロキシ基を有する化合物に由来する単位を有する(共)重合体
を含有し、前記(B)(共)重合体が溶解パラメーター(SP値)9.1~9.5(cal/cm1/2を有し、潤滑油基油組成物の全重量に対する前記(B)(共)重合体の含有量が2~20重量%であり、
潤滑油基油組成物が40℃における動粘度14~25mm/sを有し、[(40℃における動粘度)/(100℃における動粘度)]≦2.0であり、
前記潤滑油組成物が内燃機関用である、潤滑油組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリロキシ基を有する化合物が、下記一般式(1)で表される単量体(a)である、請求項1記載の潤滑油組成物。
【化1】
(式(1)において、Rは水素原子又はメチル基であり、-X-は、-O-、-O(AO)-又は-NH-であり、Aは、互いに独立に、炭素数2~4のアルキレン基であり、mは0~10の整数であり、Aが2以上の互いに異なるアルキレン基である場合に(AO)で示される単位はランダムに結合していてもブロック結合を形成していてもよく、Rはイソブチレン及び/又は1,2-ブチレンを構成単位として含むポリオレフィンの残基であり、及び、pは0又は1の数である)。
【請求項3】
(B)共重合体が、前記単量体(a)に由来する単位と、下記一般式(2)で表される単量体(b)に由来する単位とを有する、請求項2記載の潤滑油組成物
【化2】
(式(2)において、Rは、水素原子又はメチル基であり、-X-は-O-又は-NH-であり、Rは、互いに独立に、炭素数2~4のアルキレン基であり、Rは、炭素数1~8のアルキル基であり、qは1~20の整数であり、Rが2以上の互いに異なるアルキレン基である場合に(RO)で示される単位はランダムに結合していてもブロック構造を有してもよい)。
【請求項4】
(B)共重合体が、前記単量体(a)に由来する単位と、前記単量体(b)に由来する単位と、さらに、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)、炭素数12~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)、及び下記一般式(3)で示される単量体(e)から選ばれる1以上に由来する単位とを有する、請求項3記載の潤滑油組成物
【化3】

(式(3)において、Rは水素原子又はメチル基であり、-X-は-O-又は-NH-であり、Rは互いに独立に、炭素数2~4のアルキレン基であり、R及びRは互いに独立に、炭素数4~24の直鎖アルキル基であり、rは0~20の整数であり、Rが2以上の互いに異なるアルキレン基である場合に(RO)で示される単位はランダムに結合していてもブロック構造を有してもよい)。
【請求項5】
前記(B)が、(B)共重合体の重量に基づいて、単量体(a)由来の繰り返し単位を1~50重量%、単量体(b)由来の繰り返し単位を1~80重量%、単量体(c)由来の繰り返し単位を0~50重量%、単量体(d)由来の繰り返し単位を0~40重量%及び単量体(e)由来の繰り返し単位を0~40重量%で含有する、請求項3又は4記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記(B)(共)重合体が重量平均分子量(Mw)100,000~1,000,000を有する、請求項1~5のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
粘度指数300以上を有する、請求項1~6のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
粘度指数500以上を有する、請求項1~6のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記(B)共重合体を潤滑油組成物全体の重量に対して3~8重量%で有する、請求項1~8のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基油及び特定の共重合体を含有する潤滑油基油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO排出量低減及び石油資源保護等の実現のために、自動車の省燃費化がより一層要求されている。省燃費化の一つとして、例えばエンジン油の低粘度化による粘性抵抗の低減が挙げられる。しかし、低粘度化すると液漏れや焼付きといった問題が生じてくる。また、寒冷地では低温始動性が求められる。この問題に対しては、米国SAEのエンジン油用粘度規格(SAEJ300)に定められており、0W-20グレードにおいては、高温高せん断下での150℃HTHS粘度(ASTM D4683又はD5481)がMin.2.6に規定されている。また、同グレードは、寒冷地での始動性保証のために-40℃下の低温粘度が60,000mPa・s以下及び降伏応力無きこと(ASTM D4684)が規定されている。省燃費化については、上記規格を満たした上で、80℃又は100℃の実効温度域でのHTHS粘度がより低いエンジン油が求められ、従来から各種の粘度指数向上剤が提案されている。潤滑油組成物の低粘度化による一層の省燃費化はエンジン油用のみならず、駆動油用潤滑油組成物においても求められている。一方、CO排出量低減及び石油資源保護等の実現のために、ハイブリッド車や電気自動車の普及が急速に進んでいる。中でもハイブリッド車の普及に伴い、エンジンの運転頻度が減り、低油温で運転する頻度が高くなってきている。そのため、低温側の粘度低減が燃費向上に重要となる一方で、頻度は少ないながら高速運転等での信頼性の観点から高温側の信頼性も必要となる。従って、高温側でも適切な高粘度の確保が必要となる(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-147608号公報
【文献】再公表2015-129732号公報
【文献】特開2017-57378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の潤滑油基油は低温下において粘度が上昇する。低温粘度を低減し、且つ、高温での比較的高い粘度を確保するには限界があった。
本発明は、燃費の低減を目的とし、低温粘度を低減し、且つ、高温での比較的高い粘度を確保し、及び、低温下での粘度と高温下での粘度の差が小さい潤滑油基油組成物を提供することを目的とする。より詳細には、低温(例えば40℃)下においては粘度上昇が抑えられ、且つ、高温(例えば100℃)においては従来品と同等の比較的高い粘度を確保する潤滑油基油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討した結果、長鎖の非極性構造を有する(メタ)アクリロイルモノマーを重合させて成る(共)重合体を、基油に配合することにより、低温(例えば40℃)下においては粘度上昇が抑えられ、且つ、高温(例えば100℃)においては従来品と同等の比較的高い粘度を確保でき、低温における基油粘度と高温における基油粘度の差を小さくすることができることを見出した。
より詳細には、潤滑油基油と、片末端に炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有し、且つ、他の末端に(メタ)アクリロキシ基を有する化合物に由来する単位を有する(共)重合体を含有する潤滑油組成物であって、溶解パラメータ9.1~9.5(cal/cm31/2を有する共重合体を特定量で含む潤滑油基油組成物が、高温での比較的高い粘度を確保し、且つ、低温での粘度上昇が抑制され低粘度を有することを見出し、本発明を成すに至った。
【0006】
即ち本発明は、
(A)潤滑油基油、及び
(B)片末端に炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有し、且つ、他の末端に(メタ)アクリロキシ基を有する化合物に由来する単位を有する(共)重合体
を含有する潤滑油基油組成物であって、前記(B)(共)重合体が溶解パラメーター(SP値)9.1~9.5(cal/cm31/2を有し、潤滑油基油組成物の全重量に対する前記(B)(共)重合体の含有量が2~20重量%である、前記潤滑油基油組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の潤滑油基油組成物は、高温での比較的高い粘度を確保し、且つ、低温粘度を低減できる。より詳細には、低温(例えば40℃)下においては粘度上昇が抑えられ、且つ、高温(例えば100℃)においては従来品と同等の比較的高い粘度を確保する、該40℃における粘度と100℃における粘度の差が低い潤滑油基油を提供することができる。また、特には、本発明の潤滑油基油組成物は、300を超える優れた粘度指数を有する。本発明の潤滑油基油組成物は燃費が低減された潤滑油組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1及び2の潤滑油基油組成物について40℃における動粘度と100℃における動粘度との差を示すグラフ(実線)、及び比較例2及び4の潤滑油基油組成物について40℃における動粘度と100℃における動粘度との差を示すグラフ(点線)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の潤滑油基油組成物は、潤滑油基油(A)と、片末端に炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有し、且つ、他の末端に(メタ)アクリロキシ基を有する化合物に由来する単位を有する(共)重合体(B)とを含有してなる潤滑油基油組成物において、溶解パラメータが9.1~9.5(cal/cm31/2である共重合体からなる潤滑油基油組成物である。以下、各成分をより詳細に説明する。
【0010】
(A)潤滑油基油
本発明において潤滑油基油は特に制限されるものでない。鉱油及び合成油のいずれであってもよく、これらを単独で、または2種以上を併用することができる。
【0011】
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、および水素化精製等の処理の1つ以上に付して精製したもの、或いは、ワックス異性化鉱油、GTL(Gas to Liquid)基油、ATL(Asphalt to Liquid)基油、植物油系基油またはこれらの混合基油を挙げることができる。
【0012】
合成油としては、例えば、ポリブテン又はその水素化物;1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー等のポリ-α-オレフィン又はその水素化物;ラウリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル等のモノエステル;ジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ-n-オクタノエート、ネオペンチルグリコールジ-n-デカノエート、トリメチロールプロパントリ-n-オクタノエート、トリメチロールプロパントリ-n-デカノエート、ペンタエリスリトールテトラ-n-ペンタノエート、ペンタエリスリトールテトラ-n-ヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラ-2-エチルヘキサノエート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
【0013】
潤滑油基油(A)の40℃における動粘度(mm/s)は5~40mm/sで、好ましくは6~30mm/sであり、より好ましくは6.5~25mm/sであり、さらに好ましくは7.0~20mm/sであり、最も好ましくは8.0~15mm/sである。潤滑油基油(A)の100℃における動粘度(mm/s)は1~5mm/sで、好ましくは1.2~4.7mm/sであり、より好ましくは1.5~4.5mm/sであり、さらに好ましくは1.8~4.3mm/sであり、最も好ましくは2.0~4.1mm/sである。
【0014】
潤滑油基油の粘度指数(VI)は特に制限されないが、好ましくは100以上であり、より好ましくは120以上、最も好ましくは125以上である。このような粘度指数を有する基油を用いることにより、低温での粘度を低減しつつ、高温での粘度をより確保することができるため好ましい。
【0015】
(B)共重合体
本発明における(B)成分は、片末端に炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有し、且つ、他の末端に(メタ)アクリロキシ基を有する化合物に由来する単位を有する(共)重合体である。本発明は、(共)重合体が、炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有することを特徴とする。炭素数50~1,000のポリオレフィン構造は長鎖の非極性構造である。該構造を有することにより、該(共)重合体は、低温(例えば40℃)下においては(共)重合体の主鎖構造が纏まり基油中で分散して基油の粘度上昇を抑制できる。また、高温(例えば100℃)になると(共)重合体の主鎖構造がほどけて、従来の基油粘度を維持することができる。これにより、低温(例えば40℃)下における基油の粘度を低減しながら、高温(例えば100℃)での比較的高い粘度を確保することができ、且つ、低温における基油粘度と高温における基油粘度の差を小さくすることができる。
【0016】
上記において、「(メタ)アクリル」は、メタクリル又はアクリルを意味する。片末端に炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有し、他の末端に(メタ)アクリロキシ基を有する化合物とは、例えば、ポリオレフィン構造と(メタ)アクリロキシ構造が、アミド結合やエーテル結合を有する骨格により連結していればよい。例えば、炭化水素重合体(ポリオレフィン)に水酸基を導入した水酸基含有炭化水素(共)重合体(例えば、水素化ポリブタジエン及びポリブテンに水酸基を導入した水酸基含有重合体等)と、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られる単量体、及び炭化水素重合体(ポリオレフィン)にアミノ基を導入したアミノ基含有(共)重合体と、(メタ)アクリル酸とのアミド化反応により得られる単量体等が挙げられる。これら炭化水素重合体(ポリオレフィン)の水酸基及びアミノ基の数は、HTHS粘度及び粘度指数の観点から1つであることが好ましい。
【0017】
上記の通り、ポリオレフィン構造は、炭素数50~1,000を有する。好ましくは炭素数100~900、より好ましくは炭素数200~800、更に好ましくは炭素数300~700を有するのがよい。炭素数50~1,000のポリオレフィン構造とは、例えば、以下の(1)~(3)から選ばれる単量体を重合した構造である。ポリオレフィンは、ブロック重合体を有していてもよい。ポリオレフィン構造が、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。
(1)脂肪族不飽和炭化水素[炭素数2~36のオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、1-ブテン、2-ブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン及びトリコセン等)、炭素数2~36のジエン(例えば1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)等]
(2)脂環式不飽和炭化水素[例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等]
(3)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等)等が挙げられる。
これらのうち、HTHS粘度及び粘度指数の観点から、好ましくは脂肪族不飽和炭化水素であり、より好ましくは炭素数2~36のオレフィン及び炭素数2~36のジエンであり、更に好ましくは炭素数2~16のオレフィン及び炭素数2~10のジエンであり、特に好ましくはイソブテン、1-ブテン、2-ブテン又は1,3-ブタジエンを重合して成る構造が好ましい。
【0018】
片末端に炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有し、他の末端に(メタ)アクリロキシ基を有する化合物は、剪断安定性及びHTHS粘度の観点から好ましくは、数平均分子量(以下Mnと略記する)1,000~20,000を有し、更に好ましくは1,500~15,000を有し、特に好ましくは2,000~10,000を有し、最も好ましくは2,500~8,000を有する。
なお、上記数平均分子量(Mn)、及び、後述する共重合体(B)の重量平均分子量(以下Mwと略記する)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより以下の条件で測定することができる。また、上記片末端のポリオレフィン構造の炭素数は、該数平均分子量をCH2の分子量14で割り算して得られる値とした。
<ポリオレフィン系単量体のMn、及び(B)共重合体のMwの測定条件>
装置 :「HLC-802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0019】
(a)ポリオレフィン構造及び(メタ)アクリロキシ基を有する化合物として好ましくは、下記一般式(1)で示される化合物(以下、単量体(a)という)である。
【化1】
(式(1)において、Rは水素原子又はメチル基であり、-X-は、-O-、-O(AO)-又は-NH-であり、Aは、互いに独立に、炭素数2~4のアルキレン基であり、mは0~10の整数であり、Aが2以上の互いに異なるアルキレン基である場合に(AO)で示される単位はランダムに結合していてもブロック結合を形成していてもよく、Rはイソブチレン及び/又は1,2-ブチレンを構成単位として含むポリオレフィンの残基であり、及び、pは0又は1の数である)。
【0020】
一般式(1)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち、実効温度域でのHTHS粘度の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0021】
一般式(1)における-X-は、-O-、-O(AO)-又はNH-である。
Aは炭素数2~4のアルキレン基である。
炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基が挙げられる。
mは0~10の整数であり、実効温度域でのHTHS粘度の観点から好ましくは0~4の整数、更に好ましくは0~2の整数である。
mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよく、Aが2以上の互いに異なるアルキレン基である場合に(AO)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
-X-のうち、実効温度域でのHTHS粘度の観点から好ましいのは、-O-及び-O(AO)-であり、更に好ましくは-O-及び-O(CHCHO)-である。
【0022】
pは0又は1の数である。
【0023】
一般式(1)におけるRは、イソブチレン及び/又は1,2-ブチレンを構成単位として含むポリオレフィンの残基である。
イソブチレン及び/又は1,2-ブチレンを構成単位として含むポリオレフィンとしては、イソブテン、1-ブテン及び2-ブテンを構成単量体とする重合体、並びに1,3-ブタジエンを重合した1,2-付加物の末端二重結合を水素化した重合体等が挙げられる。
ポリオレフィンは、ブロック重合体でもランダム重合体であってもよい。
イソブチレン及び/又は1,2-ブチレンを構成単位として含むポリオレフィンは、イソブチレン及び/又は1,2-ブチレン以外の構成単位を更に含んでもよい。構成単量体としては、イソブテン、1-ブテン及び2-ブテンを除く、上記の(1)脂肪族不飽和炭化水素、(2)脂環式不飽和炭化水素及び(3)芳香族基含有不飽和炭化水素等が挙げられる。ポリオレフィンが、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。
【0024】
ポリオレフィンの合計構成単位数に基づき、HTHS粘度と粘度指数と剪断安定性の観点から好ましくはイソブチレン及び/又は1,2-ブチレンとの合計が30モル%以上であり、更に好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上、最も好ましくは60モル%以上である。
【0025】
ポリオレフィンの合計構成単位数に基づき、イソブチレンと1,2-ブチレンとの合計は、炭化水素重合体を13C-核磁気共鳴スペクトルにより分析し、下記数式(1)を用いて計算し決定することができる。13C-核磁気共鳴スペクトルにおいて、イソブチレンのメチル基に由来するピークが30-32ppmの積分値(積分値A)、1,2-ブチレンの分岐メチレン基(-CH-CH(CHCH)-)に由来するピークが26-27ppmの積分値(積分値B)に現れる。上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から求めることができる。
【0026】
【数1】
【0027】
一般式(1)で示される単量体(a)は、ポリオレフィンに水酸基を導入した水酸基含有(共)重合体又はポリオレフィンにアミノ基を導入したアミノ基含有(共)重合体と、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応又はアミド化反応により得ることができる。
【0028】
水酸基含有(共)重合体及びアミノ基含有(共)重合体(Y)の具体例としては、以下の水酸基含有共重合体(Y1)~(Y4)及びアミノ基含有(共)重合体(Y5)が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(Y1);上記(1)脂肪族不飽和炭化水素、(2)脂環式不飽和炭化水素及び(3)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えば炭素数2~36のオレフィン等)等をイオン重合触媒(ナトリウム触媒等)存在下に重合して得られたポリオレフィンに、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等)を付加して得られたもの等。
ヒドロホウ素化物(Y2);炭化水素重合体のヒドロホウ素化反応物(例えばUS4,316,973号に記載のもの)等。
無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3);二重結合を有する炭化水素重合体と無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物を、アミノアルコールでイミド化して得られたもの等。
ヒドロホルミル-水素化物(Y4);二重結合を有する炭化水素重合体をヒドロホルミル化し、次いで水素化反応して得られたもの(例えば特開昭63-175096号に記載のもの)等。
無水マレイン酸-エン-エチレンジアミン付加物(Y5);二重結合を有する炭化水素重合体と無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物を、エチレンジアミンでイミド化して得られたもの等。
(Y)のうちHTHS粘度及び粘度指数の観点から好ましいのは、(Y1)、(Y2)及び(Y3)であり、更に好ましいのは、(Y1)である。
【0029】
水酸基含有(共)重合体及びアミノ基含有(共)重合体(Y)の数平均分子量は、剪断安定性及びHTHS粘度の観点から好ましくは1,000~20,000であり、更に好ましくは1,500~15,000、特に好ましくは2,000~10,000、最も好ましいのは2,500~8,000である。
【0030】
本発明の(B)成分は、好ましくは、上述した単量体(a)に由来する単位と、(b)アルキル(ポリ)オキシアルキレン構造及び(メタ)アクリロキシ基を有する化合物に由来する単位とを有する共重合体であるのが好ましい。アルキル(ポリ)オキシアルキレン構造及び(メタ)アクリロキシ基を有する化合物(以下、単量体(b)という)は、好ましくは、下記一般式(2)で表される。
【化2】
(式(2)において、Rは、水素原子又はメチル基であり、-X-は-O-又は-NH-であり、Rは、互いに独立に、炭素数2~4のアルキレン基であり、Rは、炭素数1~8のアルキル基であり、qは1~20の整数であり、Rが2以上の互いに異なるアルキレン基である場合に(RO)で示される単位はランダムに結合していてもブロック構造を有してもよい)。
【0031】
一般式(2)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0032】
一般式(2)における-X-は、-O-又は-NH-である。これらのうち、粘度指数の観点から好ましいのは-O-である。
【0033】
一般式(2)におけるRは、炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基が挙げられる。
【0034】
一般式(2)におけるqは1~20の整数であり、粘度指数及び低温粘度の観点から、好ましくは1~5の整数であり、更に好ましくは1~2の整数である。
qが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよく、(RO)q部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0035】
一般式(2)におけるRは、炭素数1~8のアルキル基である。粘度指数の観点から好ましいのは炭素数1~6のアルキル基であり、さらに好ましいのは炭素数1~5のアルキル基であり、最も好ましいのは炭素数4のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ペンチル基及びn-オクチル基が挙げられる。
【0036】
上記式(2)で表される化合物としては、例えば、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシヘプチル(メタ)アクリレート、メトキシヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシペンチル(メタ)アクリレート、メトキシオクチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、エチキシヘプチル(メタ)アクリレート、エトキシヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシペンチル(メタ)アクリレート、エトキシオクチル(メタ)アクリレート、プロキシメチル(メタ)アクリレート、プロキシエチル(メタ)アクリレート、プロキシプロピル(メタ)アクリレート、プロキシブチル(メタ)アクリレート、プロキシヘプチル(メタ)アクリレート、プロキシヘキシル(メタ)アクリレート、プロキシペンチル(メタ)アクリレート、プロキシオクチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘプチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘキシル(メタ)アクリレート、ブトキシペンチル(メタ)アクリレート、ブトキシオクチル(メタ)アクリレート、及び炭素数1~8のアルコールにエチレンオキサイド~ブチレンオキサイドを2~20モル付加したものと(メタ)アクリル酸のエステル等が挙げられる。
単量体(b)のうち、粘度指数の観点から好ましいのは、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0037】
本発明における共重合体(B)は、前記単量体(a)に由来する単位と、前記単量体(b)に由来する単位に加えて、さらに、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)、炭素数12~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)、及び下記一般式(3)で示される炭素数12~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(e)から選ばれる1以上に由来する単位を有することが、実効温度でのHTHS粘度の観点から好ましい。
【0038】
炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。中でも、HTHS粘度と粘度指数の観点から好ましいのは、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸ブチルであり、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸ブチルである。
【0039】
炭素数12~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)としては、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸n-イコシル、(メタ)アクリル酸n-テトラコシル、(メタ)アクリル酸n-トリアコンチル及び(メタ)アクリル酸n-ヘキサトリアコンチル等が挙げられる。
中でも、HTHS粘度と粘度指数の観点から好ましいのは、炭素数12~32の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましいのは炭素数12~28の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、特に好ましいのは炭素数12~22の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
【0040】
炭素数12~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(e)とは、一般式(3)で表される化合物である。
【化3】
(式(3)において、Rは水素原子又はメチル基であり、-X-は-O-又は-NH-であり、Rは互いに独立に、炭素数2~4のアルキレン基であり、R及びRは互いに独立に、炭素数4~24の直鎖アルキル基であり、rは0~20の整数であり、Rが2以上の互いに異なるアルキレン基である場合に(RO)で示される単位はランダムに結合していてもブロック構造を有してもよい)。
【0041】
一般式(3)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0042】
一般式(3)における-X-は、-O-又は-NH-である。これらのうち、粘度指数の観点から好ましいのは-O-である。
【0043】
一般式(3)におけるRは、炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基が挙げられる。
【0044】
一般式(3)におけるrは0~20の整数であり、粘度指数の観点から、好ましくは0~5の整数であり、更に好ましくは0~2の整数である。
rが2以上の場合は、Rは同一でも異なっていてもよく、Rが2以上の互いに異なるアルキレン基である場合に(RO)r部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0045】
一般式(3)におけるR、Rは、それぞれ独立に、炭素数4~24の直鎖アルキル基である。粘度指数の観点から好ましくは、炭素数6~24の直鎖アルキル基であり、更に好ましいのは炭素数6~20の直鎖アルキル基であり、特に好ましいのは炭素数8~16の直鎖アルキル基である。例えば、n-ブチル基、n-ヘプチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基及びn-テトラコシル基等が挙げられる。
【0046】
上記式(3)で表される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-オクチルデシル、エチレングリコールモノ-2-オクチルペンタデシルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル、(メタ)アクリル酸2-オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-n-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2-ドデシルペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-ヘプタデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-エイコシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-テトラコシルヘキサコシル及びN-2-オクチルデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記の中でも、粘度指数の観点から好ましいのは、炭素数12~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましいのは炭素数14~32の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、特に好ましいのは炭素数16~28の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0047】
なお、上述した単量体(b)~(e)は、炭化水素基含有化合物の末端ヒドロキシ基又はアミノ基を、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる。これらは、末端に炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有するものではなく、上記(a)成分とは異なる。また、炭素数1~8のアルコールに、エチレンオキサイドやブチレンオキサイドを2~20モル付加したものや、炭素数10~50の分岐アルキル基を有するアルコールにエチレンオキサイドやブチレンオキサイドを1~20モル付加したものも、炭化水素重合体ではないため、ポリオレフィン系単量体に該当しない。
【0048】
共重合体(B)を構成する単量体(a)由来の繰り返し単位の割合は、実効温度域でのHTHS粘度の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、好ましくは1~50重量%であり、更に好ましくは3~40重量%、特に好ましくは5~30重量%、最も好ましいのは8~20重量%である。
共重合体(B)を構成する単量体(b)由来の繰り返し単位の割合は、実効温度域でのHTHS粘度の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、好ましくは1~80重量%であり、更に好ましくは5~75重量%、特に好ましくは10~70重量%、最も好ましいのは15~65重量%である。
共重合体(B)を構成する単量体(a)と単量体(b)との合計の割合は、実効温度域でのHTHS粘度の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは15~90重量%、特に好ましくは20~80重量%、最も好ましいのは25~75重量%である。
共重合体(B)を構成する単量体(c)由来の繰り返し単位の割合は、実効温度域でのHTHS粘度観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、好ましくは0~50重量%であり、更に好ましくは5~40重量%、特に好ましくは10~40重量%である。
共重合体(B)を構成する単量体(d)由来の繰り返し単位の割合は、実効温度域でのHTHS粘度の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、好ましくは0~40重量%であり、更に好ましくは1~35重量%、特に好ましくは2~30重量%、最も好ましくは5~20重量%ある。
共重合体(B)を構成する単量体(e)由来の繰り返し単位の割合は、実効温度域でのHTHS粘度及び低温粘度の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、好ましくは0~40重量%であり、更に好ましくは1~30重量%、特に好ましくは1~20重量%である。
【0049】
本発明において、共重合体(B)の溶解パラメータ(以下SP値と略記する)は、粘度指数及び基油への溶解性の観点から、好ましくは9.1~9.5(cal/cm31/2であり、更に好ましくは9.1~9.4(cal/cm31/2、特に好ましくは9.1~9.3(cal/cm31/2である。
共重合体(B)のSP値が、上記下限未満だと求められる温度-粘度特性が得られず、上記上限を超えると基油への溶解性が悪化するという問題がある。
なお、共重合体(B)のSP値は、Fedors法(PolymerEngineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)に記載の方法で算出される値である。
【0050】
共重合体(B)のSP値は、共重合体(B)を構成する単量体それぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体のSP値を、構成単量体単位のモル分率に基づいて平均した値である。
共重合体(B)のSP値は、使用する単量体のSP値、モル分率を適宜調整することにより調整することができる。
【0051】
共重合体(B)のMwは、実効温度域でのHTHS粘度及び低温粘度の観点から、好ましくは100,000~1,000,000であり、更に好ましくは200,000~900,000であり、特に好ましくは300,000~800,000であり、最も好ましくは400,000~700,000である。
【0052】
共重合体(B)の結晶化温度は、潤滑油基油組成物の低温粘度の観点から好ましくは-30℃以下であり、更に好ましくは-40℃以下、特に好ましくは-50℃以下、最も好ましくは-60℃以下である。
【0053】
共重合体(B)は、公知の製造方法によって得ることができる。例えば、上記した各単量体化合物を溶剤中にて、重合触媒存在下に溶液重合することにより得られる。例えば、特許文献2(再公表2015-129732号公報)記載の方法により製造することができる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン及び鉱物油等が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、工業化の観点から好ましくは25~140℃であり、更に好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により共重合体(B)を得ることができる。
共重合体の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0054】
本発明の潤滑油基油組成物は、潤滑油基油(A)と共重合体(B)の他に、(B)以外のアルキル(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(C)を併用してもよい。
(C)としては、(B)以外のアルキル(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体であれば特に限定しないが、炭素数1~18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体等が挙げられる。
(C)としては、例えば、メタクリル酸n-オクタデシル/メタクリル酸n-ドデシル(モル比10~30/90~70)共重合体、メタクリル酸n-テトラデシル/メタクリル酸n-ドデシル(モル比10~30/90~70)共重合体、メタクリル酸n-ヘキサデシル/メタクリル酸n-ドデシル/メタクリル酸メチル(モル比20~40/55~75/0~10)共重合体及びアクリル酸n-ドデシル/メタクリル酸n-ドデシル(モル比10~40/90~60)共重合体等が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0055】
共重合体(B)と共重合体(C)を併用する場合の(C)の使用量は、低温粘度の観点から好ましくは、(B)成分100重量部に対して0.01~30重量部であり、更に好ましくは0.01~20重量部、特に好ましくは0.01~10重量部、最も好ましくは0.01~5重量部である。
【0056】
本発明の潤滑油基油組成物における(B)の含有量は、潤滑油基油組成物全体の重量に対して2~20重量%であり、好ましくは2.5~15重量%であり、より好ましくは3~10重量%であり、最も好ましくは4~8重量%である。
【0057】
潤滑油基油組成物
本発明の潤滑油基油組成物の40℃における動粘度(mm/s)は10~40mm/sで、好ましくは12~35mm/sであり、より好ましくは13~30mm/sであり、更に好ましくは14~25m/sであり、最も好ましくは15~20mm/sである。本発明の潤滑油基油組成物の100℃における動粘度(mm/s)は4~20mm/sで、好ましくは4.5~18mm/sであり、より好ましくは5~16mm/sであり、さらに好ましくは5.5~14mm/sであり、最も好ましくは6~12mm/sである。この潤滑油基油(A)と共重合体(B)と混合した際に、本発明の特徴を有する潤滑油基油組成物を得ることができる。
【0058】
本発明の潤滑油基油組成物の40℃における動粘度(mm/s)と100℃における動粘度(mm/s)の比[(40℃における動粘度(mm/s))/(100℃における動粘度(mm/s))]は3.3以下であることが好ましい。より好ましくは3.2以下、更には3.0以下、更に好ましくは2.8以下、特に好ましくは2.5以下、最も好ましくは2.0以下である。この比が上記上限を超えると求められる粘度-温度特性が得られず好ましくない。
【0059】
本発明の潤滑油基油組成物の粘度指数は300以上が好ましい。より好ましくは350以上、さらに好ましくは400以上、さらに好ましくは500以上、特に好ましくは600以上、最も好ましくは700以上である。
なお、本発明の潤滑油基油組成物は基油を含有しているため、共重合体(B)と基油との混合比率によっては、本発明の潤滑油基油組成物自身が潤滑油組成物として機能しうる。
【0060】
本発明の潤滑油基油組成物は、以下に示す各種添加剤の1種以上と混合して潤滑油組成物として使用することができる。
添加剤の配合量は特に制限されず、適宜調整されればよい。本発明の潤滑油基油組成物は上述した通り、低温下での粘度上昇を抑制し、低温下での粘度と高温下での粘度との粘度差を小さくすることができる。該潤滑油基油組成物と添加剤とを含む潤滑油組成物においても、同等の効果を奏することが期待できる。
【0061】
添加剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)摩擦調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)、アミド系及びアミン系化合物等;
(6)摩耗防止剤:
ジアルキルジチオリン酸亜鉛、リン酸化合物等
(7)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(8)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(9)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(10)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
なお、各添加剤をコンポーネント添加剤といい、コンポーネント添加剤を2種以上混合したものをパッケージ添加剤ということもある。
【実施例
【0062】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
下記実施例及び比較例にて使用した(A)基油は以下の通りである。
基油(A-1):鉱油(100℃の動粘度:2.2mm/s、粘度指数:109)
基油(A-2):GTL基油(100℃の動粘度:2.7mm/s、粘度指数:115)
基油(A-3):GTL基油(100℃の動粘度:4.1mm/s、粘度指数:129)
【0064】
(B)共重合体
実施例及び比較例にて使用した各共重合体における単量体(a)~(e-2)由来の単位の比率を下記表に示す。
【表1】
【0065】
上記表1に記載の単量体(a)~(e-2)は、以下に記載した通りである。
(a):下記(Y1)のメタクリル酸エステル化物[Mn:5,000]
(Y1):水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(商品名;KrasolHLBH-5000M、Cray Valley製、1,2-ブチレン比率;65モル%、水酸基価;10.4mgKOH/g)[(Y1)の合計構成単位数に基づく、イソブチレン及び1,2-ブチレンの合計は65モル%、(Y1)の結晶化温度-60℃以下]
(b):ブトキシエチルメタクリレート
(c-1):メタクリル酸メチル
(c-2):メタクリル酸ブチル
(d-1):メタクリル酸n-ドデシル
(d-2):メタクリル酸n-テトラデシル
(e-1):メタクリル酸2-n-デシルテトラデシル
(e-2):メタクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル
【0066】
<実施例1>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、基油(A-1)400重量部、単量体(a)~(e-2)を上記表1に記載の共重合体(B1)の組成にて合計100重量部となる量、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し、共重合体(B1)及び基油(A-1)を含有する潤滑油基油組成物を得た。得られた共重合体(B1)のSP値を上記の方法で計算し、Mwを上記の方法で測定した。また、40℃における動粘度、100℃における動粘度、及び粘度指数を下記の方法にて測定した。結果を表2に示す。
【0067】
<実施例2>
潤滑油基油組成物全体の重量に対する共重合体(B1)の含有量が7.5重量%となるように、基油(A-1)及び単量体(a)~(e-2)の配合量を調整した以外は実施例1の手順を繰り返して重合反応を行い、共重合体(B1)及び基油(A-1)を含有する潤滑油基油組成物を得た。SP値、Mw、40℃における動粘度、100℃における動粘度、及び粘度指数を下記の方法にて測定した。結果を表2に示す。
【0068】
<実施例3及び4、参考例5~11>
実施例3及び4、並びに参考例5~11で調製した潤滑油基油組成物における共重合体(B1)~(B5)の単量体(a)~(e-2)の構成は、上記表1に記載の通りである。実施例3及び4、並びに参考例5~11の各潤滑油基油組成物における基油(A-1)~(A-3)及び共重合体(B1)~(B5)の構成は下記表2に記載の通りである。表1及び2に記載の各構成となるように各単量体(a)~(e-2)を基油(A-2)又は(A-3)に配合した他は上記実施例1の手順を繰り返して重合反応を行い、各実施例及び参考例における潤滑油基油組成物を調製した。重合時間は適宜調整された。
なお、表2に記載の共重合体の添加量は、潤滑油基油組成物全体の量を100重量%とした、共重合体の重量割合である。
各潤滑油基油組成物について、SP値、Mw、40℃における動粘度、100℃における動粘度、及び粘度指数を下記の方法にて測定した。結果を表2に示す。
【0069】
<比較例1及び比較例4>
比較例1は共重合体(B)を含有せず、基油(A-3)に粘度指数向上剤(Mw=350,000のポリメタクリレート)を表1の添加量含有した組成物であり、比較例4は基油(A-3)のみの比較例である。 各潤滑油基油組成物について、SP値、Mw、40℃における動粘度、100℃における動粘度、及び粘度指数を下記の方法にて測定した。結果を表3に示す。
【0070】
<比較例2~3、比較例5>
比較例2及び比較例3は基油(A-3)及びSP値が9.0である共重合体(B6)からなる潤滑油基油組成物である。比較例5は共重合体(B1)の含有量が本発明の範囲未満の潤滑油基油組成物である。各潤滑油基油組成物について、SP値、Mw、40℃における動粘度、100℃における動粘度、及び粘度指数を下記の方法にて測定した。結果を表3に示す。
【0071】
<潤滑油基油組成物の動粘度及び粘度指数の計算方法>
動粘度は、ASTM D 445に準拠する方法にて40℃及び100℃にて測定した。また、粘度指数はASTM D 2270に準拠する方法にて計算した。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
上記表2と表3の対比からわかるとおり、本発明の潤滑油基油組成物は、高温(100℃)での粘度を維持しつつ、低温(40℃)での粘度が低減されている。それにより、(40℃における動粘度)/(100℃における動粘度)の値が3.3以下となる。
実施例1及び2の潤滑油基油組成物について40℃における動粘度と100℃における動粘度との差を示すグラフ(実線)、及び比較例2及び4の潤滑油基油組成物について40℃における動粘度と100℃における動粘度との差を示すグラフ(点線)を図1に示す。図1からもわかる通り、本発明の潤滑油基油組成物では、低温(40℃)での動粘度と高温(100℃)での動粘度の差が、比較例の潤滑油基油組成物における粘度差に比較して小さい。当該潤滑油基油組成物は、燃費の低減を可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の潤滑油基油組成物は、駆動系潤滑油(MTF、デファレンシャルギヤ油、ATF及びbelt-CVTF等)、作動油(機械の作動油、パワーステアリング油及びショックアブソーバー油等)、エンジン油(ガソリン用及びディーゼル用等)及びトラクション油の基油として好適である。
図1