(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】エンジン駆動発電機
(51)【国際特許分類】
F02D 29/06 20060101AFI20230421BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20230421BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20230421BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20230421BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230421BHJP
H02J 3/40 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
F02D29/06 L
F02D45/00
F02D41/02
H02P9/04 J
H02J3/38 180
H02J3/40
(21)【出願番号】P 2018199952
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 和弘
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-081942(JP,A)
【文献】特開2001-028900(JP,A)
【文献】特開2000-125471(JP,A)
【文献】特開平11-215739(JP,A)
【文献】実開平01-116539(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/06
F02D 45/00
F02D 41/02
H02P 9/04
H02J 3/38
H02J 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機本体と,該発電機本体を駆動するエンジン,該エンジンの動作を制御するエンジンコントロールモジュール,及び前記発電機本体の電圧を制御する自動電圧調整器を備えたエンジン駆動発電機において,
前記エンジンコントロールモジュールを,負荷の変化に拘わらずエンジンの回転速度を一定に制御するアイソクロナス制御と,負荷の増加に対しエンジンの回転速度を低下させる制御を行うドループ制御を選択的に実行可能に構成すると共に,
前記自動電圧調整器を,エンジン駆動発電機を単独運転させる際に行う電圧調整であ
り,検出された前記発電機本体の電圧が設定電圧値となるように制御して前記発電機本体の電圧を一定に制御する単独調整と,他の電力系統と連系運転させる際に行う電圧調整であ
り,系全体の電圧が低下して前記発電機本体の検出電圧が低下しても,該電圧の低下に伴い生じた無効電力の増大分を上乗せする前記検出電圧の補正を行い,補正後の電圧が一定となるよう制御する連系調整を選択的に実行可能に構成し,
前記エンジンコントロールモジュールの設定と,前記自動電圧調整器の設定を連動させて切り換えて,前記エンジンコントロールモジュールを,前記アイソクロナス制御を実行する設定とするとき,前記自動電圧調整器を,前記単独調整を実行する設定とし,前記エンジンコントロールモジュールを,前記ドループ制御を実行する設定とするとき,前記自動電圧調整器を,前記連系調整を実行する設定とする,連動設定手段を設けたことを特徴とするエンジン駆動発電機。
【請求項2】
前記連動設定手段が,前記エンジンコントロールモジュールの設定を,前記アイソクロナス制御と前記ドループ制御とで選択的に切り換える運転モード切換スイッチと,前記運転モード切換スイッチと連動して,前記自動電圧調整器の設定を,前記単独調整と前記連系調整とで選択的に切り換える電圧調整モード切換スイッチを備えた連動スイッチであることを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動発電機。
【請求項3】
連系させる他の電力系統との電圧の位相が一致したことを表示する同期検定器を設け,
前記連動設定手段に,前記エンジンコントロールモジュールが前記ドループ制御を実行する設定のとき,該同期検定器をONとし,前記エンジンコントロールモジュールが前記アイソクロナス制御を実行する設定のとき,前記同期検定器をOFFとする,同期検定器用スイッチを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン駆動発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,エンジン駆動発電機に関し,より詳細には,単独運転の他,他の電力系統(他のエンジン駆動発電機や商用電源等)と並列に接続して連系させた連系運転を行うことができるエンジン駆動発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン駆動発電機は,これを単独で運転する単独運転の他,別途設けたエンジン駆動発電機や商用電源等の他の電力系統と並列に接続して連系させた状態で運転する,連系運転を行う場合がある。
【0003】
このようにエンジン駆動発電機を連系運転させる場合には,エンジン駆動発電機は,他の電力系統と,
(1) 電圧が一致していること,
(2) 周波数が一致していること,
(3) 電圧の位相が等しいこと,
が必要とされ,電圧の不一致は無効循環電流(無効横流)を発生させ,周波数の不一致は乱調の原因となり,電圧位相の不一致は同期化電流を発生させることから,これらを一致させること,特に乱調の原因となる周波数を一致させることが重要となる。
【0004】
ここで,エンジン駆動発電機におけるエンジンの制御としては,「アイソクロナス制御」と,「ドループ制御」がある。
【0005】
このうちのアイソクロナス制御では,負荷の変化に拘わらず,エンジンの回転速度を一定に保つ制御を行うことから,発電機本体の回転速度も一定となるため,常に一定周波数の電力が出力される。
【0006】
そのため,エンジンの回転速度をアイソクロナス制御とするエンジン駆動発電機を,他の電力系統と連系運転させようとしても,エンジン駆動発電機の出力周波数を,他の電力系統の出力周波数と一致させることができない。
【0007】
そこで,アイソクロナス制御でエンジンを運転するエンジン駆動発電機において,エンジンに対してエンジン回転速度の指令値を出力するエンジンコントローラ自体の内部構造を変更することなく,他のエンジン発電機と並列(連系)運転することができるようにするために,他のエンジン発電機と並列運転を行うときにエンジン回転速度の指令値に負荷に応じた回転速度低下分の減算命令を前記エンジンコントローラに対して外部入力する制御手段を付加することも提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
なお,前述したエンジンの制御方法のうち,「ドループ制御」では,エンジンの負荷の増加に対し回転速度を低下させる制御を行うものであることから,発電機本体の出力変動に伴って発電機本体の回転速度も変化するため,出力周波数も変化する。
【0009】
そのため,他の電力系統と連系させた連系運転を行う場合には,エンジン駆動発電機におけるエンジンの回転速度制御を,前述したアイソクロナス制御からドループ制御に変更すると共に,負荷の分担割合を調整することで,出力電圧の周波数を一致させることができる。
【0010】
このことから,エンジンコントロールモジュール(ECM)を,アイソクロナス制御とドループ制御を選択的に実行できるように構成しておき,エンジン駆動発電機を単独運転する場合にはアイソクロナス制御で,連系運転とする場合には,ドループ制御でエンジンの回転速度を制御できるように構成すれば,前述した特許文献1のように,別途制御手段を追加して複雑な制御を行うことなく,一台のエンジン駆動発電機に,単独運転と,連系運転の双方を行わせることができることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したエンジン駆動発電機には,発電機本体の励磁装置内に,自動電圧調整器(AVR:Automatic Voltage Regulator)が設けられている。
【0013】
このAVRは,発電機本体の電圧を一定に保持することをその基本的な機能とするもので,負荷の変動によっても電圧を一定に維持して,電圧が変化した際には速やかに電圧の回復を行う。
【0014】
しかし,エンジン駆動発電機を他の電力系統と連系させて使用する場合,連系させた系全体の電圧が低下すると,発電機本体の電圧も低下するため,AVRが,発電機本体の電圧を一定に保持するという前述した基本的な機能をそのまま継続して発揮すると,発電機本体の電圧を上昇させるために界磁電流を増やし続けることとなり,過励磁となってしまう。
【0015】
そのため,連系運転時には,系全体の電圧が低下して発電機本体の検出電圧が低下しても,電圧低下に伴い生じた無効電力の増大分を上乗せする,検出電圧の補正を行う等,単独運転時とは異なる電圧調整が必要となる。
【0016】
このように,単一のエンジン駆動発電機を単独運転と連系運転の双方に使用しようとした場合,AVRも,単独運転時に行う電圧調整(単独調整)と,連系運転時に行う電圧調整(連系調整)を選択的に実行できるように構成しておく必要がある。
【0017】
そして,単独運転を行う場合には,ECMがアイソクロナス制御を,AVRが単独調整を行うように設定すると共に,連系運転を行う場合には,ECMがドループ制御を,AVRが連系調整を行うように設定する必要があり,上記組み合わせ以外の組合せで設定が行われた場合,エンジン駆動発電機を正常に動作させることができなくなる。
【0018】
そこで本発明は,上記のように単独運転と,連系運転のいずれの運転を行う場合においても,前述した組み合わせを間違えることなく,正しい組み合わせで動作設定をすることができ,従って,ECMとAVRを誤った設定の組み合わせとすることにより生じるエンジン駆動発電機の動作不良や故障の発生,及び,接続された負荷の動作不良や故障の発生等を確実に防止することができるエンジン駆動発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0020】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動発電機1は,
発電機本体10と,該発電機本体10を駆動するエンジン20,該エンジン20の動作を制御するエンジンコントロールモジュール(ECM)22,及び前記発電機本体10の電圧を制御する自動電圧調整器(AVR)12を備えたエンジン駆動発電機1において,
前記エンジンコントロールモジュール(ECM)22を,負荷の変化に拘わらずエンジン20の回転速度を一定に制御するアイソクロナス制御と,負荷の増加に対しエンジン20の回転速度を低下させる制御を行うドループ制御を選択的に実行可能に構成すると共に,
前記自動電圧調整器(AVR)12を,エンジン駆動発電機1を単独運転させる際に行う電圧調整であり,検出された前記発電機本体10の電圧が設定電圧値となるように制御して前記発電機本体10の電圧を一定に制御する単独調整と,別途設けたエンジン駆動発電機や商用電源等の,他の電力系統60と連系運転させる際に行う電圧調整であり,系全体の電圧が低下して前記発電機本体10の検出電圧が低下しても,該電圧の低下に伴い生じた無効電力の増大分を上乗せする前記検出電圧の補正を行い,補正後の電圧が一定となるよう制御する連系調整を選択的に実行可能に構成し,
前記エンジンコントロールモジュール(ECM)22の設定と,前記自動電圧調整器(AVR)12の設定を連動させて切り換えて,前記エンジンコントロールモジュール(ECM)22を,前記アイソクロナス制御を実行する設定とするとき,前記自動電圧調整器(AVR)12を,前記単独調整を実行する設定とし,前記エンジンコントロールモジュール(ECM)22を,前記ドループ制御を実行する設定とするとき,前記自動電圧調整器(AVR)12を,前記連系調整を実行する設定とする,連動設定手段40を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0021】
前記連動設定手段40は,前記エンジンコントロールモジュール(ECM)22の設定を,前記アイソクロナス制御と前記ドループ制御とで選択的に切り換える運転モード切換スイッチ41と,前記運転モード切換スイッチ41と連動して,前記自動電圧調整器(AVR)12の設定を,前記単独調整と前記連系調整とで選択的に切り換える電圧調整モード切換スイッチ42を備えた連動スイッチにより構成することができる(請求項2)。
【0022】
更に,連系させる他の電力系統60との電圧の位相が一致したことを表示する同期検定器30を設け,
前記連動設定手段40に,前記エンジンコントロールモジュール(ECM)22が前記ドループ制御を実行する設定のとき,該同期検定器30をONとし,前記エンジンコントロールモジュール(ECM)22が前記アイソクロナス制御を実行する設定のとき,前記同期検定器30をOFFとする,同期検定器用スイッチ43,44を設けるものとしても良い(請求項3)。
【発明の効果】
【0023】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のエンジン駆動発電機1にあっては,以下の効果を得ることができた。
【0024】
エンジンコントロールモジュール(ECM)22の設定と,前記自動電圧調整器(AVR)12の設定を連動させて切り換えて,エンジンコントロールモジュール(ECM)22を,アイソクロナス制御を実行する設定とするとき,自動電圧調整器(AVR)12を,単独運転の際の電圧調整である単独調整を実行する設定とし,前記エンジンコントロールモジュール(ECM)22を,ドループ制御を実行する設定のとき,前記自動電圧調整器(AVR)12を,連系運転の際に行う電圧調整である連系調整を実行する設定とする,連動設定手段40を設けたことで,エンジンコントロールモジュール(ECM)22側と,自動電圧調整器(AVR)12側とが,常に正しい設定の組み合わせに切り換わるように構成されており,これによりエンジン駆動発電機1を単独運転,連系運転のいずれの運転方法で運転した場合であっても,設定の組み合わせの間違いによるエンジン駆動発電機1の作動不良や故障,接続された負荷80の作動不良や故障の発生等を好適に防止することができた。
【0025】
前述の連動設定手段40は,相互に連動して開閉する複数のスイッチ(接点)を備えた連動スイッチにより構成することができ,この連動スイッチに設けられているスイッチ(接点)の一つを,ECMの運転モードを切り換えるための運転モード切換スイッチ41とすると共に,他のスイッチ(接点)を,AVRの電圧調整モードを切り換える,電圧調整モード切換スイッチ42とすることで,前述した動作を行う連動設定手段40を容易に実現することができた。
【0026】
更に,同期検定器30を設けたエンジン駆動発電機1では,連系させる他の電力系統60の電圧の位相と発電機本体10の電圧の位相が同期した時に開閉器70を閉じて連系を開始させることができ,これにより突入電流が少なく,衝撃の小さい状態で連系運転を開始させることが可能であると共に,前述の連動設定手段40に,エンジンコントロールモジュール(ECM)22がドループ制御を実行する設定のときに同期検定器30をONとし,エンジンコントロールモジュール(ECM)22がアイソクロナス制御を実行する設定のときに同期検定器30をOFFとする同期検定器用スイッチ43,44を設けたことで,ドループ制御の選択時,従って,連系運転の設定時には自動で同期検定器30を作動させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のエンジン駆動発電機の説明図(単独使用時)。
【
図2】本発明のエンジン駆動発電機の説明図(連系使用時)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に,添付図面を参照しながら本発明のエンジン駆動発電機について説明する。
【0029】
本発明のエンジン駆動発電機1は,
図1及び
図2に示すように,発電機本体10と,該発電機本体10を駆動するエンジン20,前記エンジン20の動作を制御するエンジンコントロールモジュール(ECM)22,及び前記発電機本体10の電圧を調整する自動電圧調整器(AVR)12を備え,発電機本体10で発電した電力を,出力端子盤50を介して外部負荷80に供給することができるように構成されている。
【0030】
前述のECM22は,マイクロプロセッサやマイクロコントローラ等の電子制御装置により構成されるもので,予め記憶されている所定のプログラムを実行することにより,エンジンに搭載された電子ガバナ等に対し所定の制御信号を出力することで,エンジンの動作を制御する。
【0031】
本発明のエンジン駆動発電機1では,このECM22によるエンジンの回転速度制御を,負荷の変化に拘わらずエンジンの回転速度を一定に制御するアイソクロナス制御と,負荷の増加に対しエンジンの回転速度を低下させる制御を行うドループ制御を選択的に実行することができるようにECM22に必要なプログラムを記憶させている。
【0032】
また,前述のAVR12は,発電機本体10の電圧を調整するもので,エンジン駆動発電機1を単独運転する際に行う単独調整と,他の電力系統60と並列に接続して連系運転させる際に行う連系調整を行いことができるように構成されている。
【0033】
このうち,単独運転時に行う単独調整では,AVR12は,検出された発電機本体10の電圧が設定電圧値となるように制御して電圧を一定に調整する。
【0034】
一方,連系運転時には,連系させた系全体の電圧が低下すると発電機本体10の電圧も低下するため,AVR12が発電機本体10の電圧を一定に保持する前述の単独調整をそのまま実行すると,発電機本体10の電圧を上昇させるために界磁電流を増やし続けて過励磁となることから,連系運転時に行う連系調整では,AVR12は,系全体の電圧が低下して発電機本体10の検出電圧が低下しても,電圧低下に伴い生じた無効電力の増大分を上乗せして検出電圧を補正し,補正後の電圧が一定となるよう調整する。
【0035】
なお,
図1及び
図2中の符号30は同期検定器であり,連系運転を行う際に,連系させる他の電力系統60における電圧の位相と,エンジン駆動発電機1の発電機本体10の電圧の位相が同期したことを検定して表示する。
【0036】
本実施形態では,
図1及び
図2に示すように,発電機本体10と出力端子盤50間に開閉器70を設けると共に,開閉器70をバイパスして発電機本体10のU相と出力端子盤のU相間を接続する第1表示灯31と,発電機本体10のW相と出力端子盤のW相間を接続する第2表示灯32を設け,これらの表示灯31,32により,両者の電圧が同期したことを表示できるようにしている。
【0037】
すなわち,上記の構成では,
図2に示すように開閉器70を開いた状態においても出力端子盤50のU相に接続された他の電力系統60のU相が発電機本体10のU相と第1表示灯31を介して接続され,また,他の電力系統60のW相が第2表示灯32を介して発電機本体10のW相と接続された状態となっている。
【0038】
従って,第1表示灯31には他の電力系統60のU相電圧と発電機本体10のU相電圧との差分の電圧が,第2表示灯32には他の電力系統60のW相電圧と発電機本体10のW相電圧との差分の電圧がそれぞれ加わることから,他の電力系統60の電圧と発電機本体10の電圧の位相が一致していない状態では第1表示灯31,第2表示灯32のいずれも点滅を繰り返し,位相が一致すると,いずれも消灯することから,この消灯が生じたタイミングで開閉器70を閉じることで,突入電流が少なく,衝撃を小さくした状態でエンジン駆動発電機1を他の電力系統60と連系させることができるようになっている。
【0039】
なお,図示の実施形態では,他の電力系統60と発電機本体10の同相間を第1,第2表示灯31,32で接続する構成としたが,この構成に代えて,他の電力系統60と,発電機本体10の異なる相間を第1及び第2表示灯31,32で接続する構成としても良く,あるいは,一方の表示灯で同相間,他方の表示灯で異なる相間を接続する構成としても良い。
【0040】
第1,第2表示灯31,32共に異なる相間を接続する構成とした場合,他の電力系統60の電圧と発電機本体10の電圧間に位相差が生じている場合には,第1,第2表示灯31,32共に点滅し,位相が一致した場合,第1,第2表示灯31,32共に同じ明るさで点灯する。
【0041】
また,一方の表示灯で同相間,他方の表示灯で異なる相間を接続した場合,他の電力系統60の電圧と発電機本体10の電圧間に位相差が生じている場合には,第1,第2表示灯31,32共に点滅し,位相が一致した場合,同相間を接続する表示灯は消灯し,異なる相間を接続する表示灯は点灯する。
【0042】
従って,これらの点灯(消灯)の状態によって位相の一致が表示された際に,開閉器70を閉じて連系を開始させることができる。
【0043】
以上のように構成されたECM22,AVR12,及び同期検定器30は,連動設定手段40によって相互に連動させてその動作モードの設定を切り換えることができるように構成されており,ECM22をアイソクロナス制御に設定すると,同時にAVR12が単独調整,同期検定器30がOFFとなるように構成されていると共に,ECM22をドループ制御に設定すると,同時にAVR12が連系調整,同期検定器30がONとなるように構成されている。
【0044】
図示の実施形態では,このような連動設定手段40として,連動動作する多数のスイッチ(接点)を備えた連動スイッチ(4連スイッチ)を設け,この連動スイッチの接点の一つをECM22に接続して,ECM22の設定をアイソクロナス制御とドループ制御間で切り換える,運転モード切換スイッチ41と成すと共に,他の接点の一つをAVR12に接続して,AVR12の電圧調整モードを単独調整と連系調整間で切り換える,電圧調整モード切換スイッチ42と成すと共に,残りの接点を,同期検定器30の第1表示灯31と第2表示灯32をON,OFFする同期検定器用スイッチ43,44として割り当て,例えば操作つまみ等である各スイッチ41~44に共通の操作部45をひねる等の操作を行うことで,全てのスイッチ41~44を同時に動作させることができるように構成されている。
【0045】
これにより,
図1に示すようにエンジン駆動発電機1を単独運転する場合には,同期検定器用スイッチ43,44をOFF位置,運転モード切換スイッチ41をアイソクロナス制御位置(図示の例では「開」位置),電圧調整モード切換スイッチ42を単独調整位置(図示の例では「閉」位置)に同期して操作することができる。
【0046】
一方,
図2に示すように,エンジン駆動発電機1を他の電力系統60に並列に接続して連系運転させる場合には,操作部45の1回の操作により,同期検定器用スイッチ43,44をON位置,運転モード切換スイッチ41をドループ制御位置(図示の例では「閉」位置),電圧調整モード切換スイッチ42を連系調整位置(図示の例では「開」位置)に同期して操作することができる。
【0047】
このように,本発明のエンジン駆動発電機1では,ECM22とAVR12の設定変更と,同期検定器30のON,OFF操作が連動設定手段40により同時に,しかも常に正しい組み合わせとなるように行われるように構成されていることから,エンジン駆動発電機1を単独運転,連系運転のいずれの運転方法で運転した場合にも,これらの組み合わせが正しく設定されていないことによるエンジン駆動発電機1の作動不良や故障,接続された負荷80の作動不良や故障等の発生等を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 エンジン駆動発電機
10 発電機本体
12 自動電圧調整器(AVR)
20 エンジン
22 エンジンコントロールモジュール(ECM)
30 同期検定器
31 第1表示灯
32 第2表示灯
40 連動設定手段
41 運転モード切換スイッチ
42 電圧調整モード切換スイッチ
43,44 同期検定器用スイッチ
45 操作部(操作つまみ)
50 出力端子盤
60 他の電力系統
70 開閉器
80 負荷