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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】間仕切壁構造、及びこの間仕切壁構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20230421BHJP
E04B 2/82 20060101ALI20230421BHJP
【ＦＩ】
E04B2/74 551E
E04B2/82 501D
E04B2/82 511A
【請求項の数】
5
(21)【出願番号】P 2018208595
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020076216
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000135335
【氏名又は名称】株式会社ノザワ
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143122
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 功雄
(72)【発明者】
【氏名】海野 光生
(72)【発明者】
【氏名】岡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小西 健夫
(72)【発明者】
【氏名】小野村 寛
(72)【発明者】
【氏名】名塚 彰
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開２０１４－１１８７７７（ＪＰ，Ａ）
【文献】韓国公開特許第１０－２００８－０００７９０５（ＫＲ，Ａ）
【文献】特開２０１２－０２６１９３（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２０１８－１１５５３１（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２００２－０６１３１６（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開昭４９－００８０２０（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開平１１－２４７３２４（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２０１９－１４３４６６（ＪＰ，Ａ）
【文献】国土交通省住宅局建築指導課 新耐火防火部便覧編集委員会編集，挿入式 新耐火防火構造・材料等便覧，新耐火７２８号，日本，新日本法規出版株式会社，2009年11月13日，第１５５３５－１５５４１頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)
Ｅ０４Ｂ ２／７２－２／８２
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の間仕切りを構成する間仕切壁構造であって、上駆体に互いに離間した並列状態で取り付けられた第１及び第２の上部ランナーと、
下駆体に当該上部ランナーと対をなすように互いに離間した並列状態で取り付けられた第１及び第２の下部ランナーと、
前記第１及び第２の上部ランナーの各々に上部を支持され、かつ前記第１及び第２の下部ランナーの各々に下部を支持され、間仕切方向に沿って並列状態で設けられた第１及び第２の複数のスタッドと、
前記第１の複数のスタッドの表面側に固定され建物の内部空間を仕切る第１下地材と、
前記第２の複数のスタッドの表面側に固定され建物の内部空間を仕切る第２下地材と、を備え、
前記第１及び第２の上部ランナーが、水平片と垂直片とで断面Ｌ字状に構成されていると共に、前記第１及び第２の複数のスタッドの上部が当該第１及び第２の上部ランナーの各々の垂直片で支持されており、
当該第１及び第２の複数のスタッドの各々の上端と、前記上駆体と、が間隔を空けた状態とされ、かつ前記第１及び第２の複数のスタッドの各々の下端と、前記下駆体と、が間隔を空けた状態とされ、
前記第１及び第２の複数のスタッドの上部が、上下方向に挿脱自在な係止手段を介して前記第１及び第２の上部ランナーの各々に支持されており、
前記係止手段は、
前記第１及び第２の上部ランナーの垂直片と、
前記第１及び第２の複数のスタッドの上端で当該スタッドの外側に出っ張るように形成されて前記垂直片を嵌め込み可能なツメ部と、で構成されている間仕切壁構造。
【請求項2】
前記第１の複数のスタッドと、前記第１下地材との間、及び前記第２の複数のスタッドと、前記第２下地材との間に、弾性変形していない状態で挟持された弾性体からなる緩衝材を更に備える請求項１に記載の間仕切壁構造。
【請求項3】
前記上駆体に前記第１の上部ランナーを取り付ける複数の取付部と、当該上駆体に前記第２の上部ランナーを取り付ける複数の取付部と、が間仕切方向に沿って互いに千鳥状となっている請求項１又は２に記載の間仕切壁構造。
【請求項4】
建築物の間仕切りを構成する請求項１～３のいずれかに記載の間仕切壁構造の施工方法であって、前記上駆体に前記第１及び第２の上部ランナーを取り付け、
前記下駆体に前記第１及び第２の下部ランナーを取り付け、
前記第１の複数のスタッドの上部の前記ツメ部の溝に前記第１の上部ランナーの垂直片を嵌め込むことで当該スタッドの上部を当該垂直片で支持し、
当該第１の複数のスタッドの下部を、前記第１の下部ランナーで支持し、
当該第１の複数のスタッドの内側に断熱材を設け、
前記第２の複数のスタッドの上部の前記ツメ部の溝に前記第２の上部ランナーの垂直片を嵌め込むことで当該スタッドの上部を当該垂直片で支持し、
当該第２の複数のスタッドの下部を、前記第２の下部ランナーで支持し、
前記第１の複数のスタッドの表面側に前記第１下地材を取り付けると共に、前記第２の複数のスタッドの表面側に前記第２下地材を取り付ける間仕切壁構造の施工方法。
【請求項5】
前記第１の複数のスタッドに、弾性変形していない状態の弾性体からなる緩衝材を予め取り付けておくか又は施工時に取り付け、前記第２の複数のスタッドに、弾性変形していない状態の弾性体からなる前記緩衝材を予め取り付けておくか又は施工時に取り付け、
前記第１の複数のスタッドの表面側に、前記緩衝材を挟持させつつ前記第１下地材を取り付けると共に、前記第２の複数のスタッドの表面側に、前記緩衝材を挟持させつつ前記第２下地材を取り付ける請求項４に記載の間仕切壁構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の内部空間を仕切るための乾式の間仕切壁構造及びその施工方法に関し、特に遮音性、耐火性及び施工性に優れた間仕切壁構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ＲＣ造・ＳＲＣ造の湿式の構造物であるコンクリート構造では、遮音性、耐火性に優れるものの型枠工事が必須であり、多大なコストを要する。建築物の工期短縮、コストダウンなどを目的として、乾式の間仕切壁を施工することが多くなってきている。集合住宅やホテルなどでは、隣り合う居住空間を区画し、遮音性能と耐火性能を有する乾式の耐火遮音間仕切壁が使用されている。
【0003】
乾式の間仕切壁構造として、上下の駆体であるスラブ面（天井面、床面）に取り付けられた上下のランナーに、所定の間隔で金属製の間柱を取り付け、その両面に壁パネルを貼り付けた構造が知られている。特許文献１には、同一壁芯上に間柱中心が整列するように所定間隔をもって複数の間柱を配置し、１つおきの間柱の一方の側面に断熱材スペーサーを介して壁面材を固定し、次いで残りの別の１つおきの間柱の反対側の側面に断熱材スペーサーを介して壁面材を固定し、両側の壁面材を相互に緩衝することなく独立させた間仕切壁構造が記載されている。
【0004】
特許文献２には、建築物の駆体に、空間部を有する独立二重構造からなる間仕切壁を固定する間仕切壁であって、間仕切壁の固定手段を間仕切壁のそれぞれの独立した壁面ごとに分割し、その固定手段と駆体との間に緩衝材を設けた間仕切壁構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭６３－２４７４５１号公報
【文献】特開平１０－２０５０３０号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献１の構造は、両側の壁面材を、断熱材スペーサーを介して１つおきに間柱に取り付けることで、耐火性、遮音性などを向上させるものである。しかしながら、断熱材スペーサーは非常に薄いものであり、両側の壁面材同士が１つの間柱を介して略連絡された状態となっていることから、振動や熱が伝搬し易く、十分な遮音性及び耐火性を得ることができない。
【0007】
特許文献２の構造では、同文献の図２のように２枚のパネルのそれぞれの内側にこれらのパネルと一体成形されたリブが形成されている。一方のパネルの表面側の振動や熱は一体となったリブにそのまま伝搬し、他方のパネルのリブ、パネルへと伝搬し易く、十分な遮音性能及び耐火性を得ることは困難である。
【0008】
本発明は従来技術の問題点に鑑み、高い遮音性及び耐火性を得ることができる間仕切壁構造、及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の間仕切壁構造は、建築物の間仕切りを構成する間仕切壁構造であって、上駆体に互いに離間した並列状態で取り付けられた第１及び第２の上部ランナーと、下駆体に当該上部ランナーと対をなすように互いに離間した並列状態で取り付けられた第１及び第２の下部ランナーと、前記第１及び第２の上部ランナーの各々に上部を支持され、かつ前記第１及び第２の下部ランナーの各々に下部を支持され、間仕切方向に沿って並列状態で設けられた第１及び第２の複数のスタッドと、前記第１の複数のスタッドの表面側に固定され建物の内部空間を仕切る第１下地材と、前記第２の複数のスタッドの表面側に固定され建物の内部空間を仕切る第２下地材と、を備え、前記第１及び第２の上部ランナーが、水平片と垂直片とで断面Ｌ字状に構成されていると共に、前記第１及び第２の複数のスタッドの上部が当該第１及び第２の上部ランナーの各々の垂直片で支持されており、当該第１及び第２の複数のスタッドの各々の上端と、前記上駆体と、が間隔を空けた状態とされ、かつ前記第１及び第２の複数のスタッドの各々の下端と、前記下駆体と、が間隔を空けた状態とされ、前記第１及び第２の複数のスタッドの上部が、上下方向に挿脱自在な係止手段を介して前記第１及び第２の上部ランナーの各々に支持されており、前記係止手段は、前記第１及び第２の上部ランナーの垂直片と、前記第１及び第２の複数のスタッドの上端で当該スタッドの外側に出っ張るように形成されて前記垂直片を嵌め込み可能なツメ部と、で構成されているものである。
【0010】
本発明によれば、第１及び第２の上部ランナー、第１及び第２の下部ランナーは、それぞれ互いに離間していることから、第１の上部ランナーと第１の下部ランナーに支持された第１の複数のスタッドと、第２の上部ランナーと第２の下部ランナーに支持された第２の複数のスタッドと、が互いに離れた状態となっている。そのため、第１の複数のスタッドの表面側に固定された第１下地材と、第２の複数のスタッドの表面側に固定された第２下地材と、が互いに連絡部分のない完全に独立したものとなり、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬を効果的に抑制できる。
【0011】
前記第１及び第２の複数のスタッドの各々の上端と、前記上駆体と、が間隔を空けた状態とされ、かつ前記第１及び第２の複数のスタッドの各々の下端と、前記下駆体と、が間隔を空けた状態とされている。この場合、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬の抑制効果をさらに向上させることができる。
【0012】
前記第１及び第２の複数のスタッドの上部が、上下方向に挿脱自在な係止手段を介して前記第１及び第２の上部ランナーの各々に支持されている。
【0013】
この場合、スタッドを上部ランナーに嵌め込むだけで簡単に取り付けることができ、施工性が格段に向上する。これによりコストを低減できる。上部ランナーにスタッドが完全には固定されておらず、層間変位時にスタッドが変位に追従し易くなるので、耐震性も向上させることができる。
【0014】
前記第１の複数のスタッドと、前記第１下地材との間、及び前記第２の複数のスタッドと、前記第２下地材との間に弾性変形していない状態で挟持された弾性体からなる緩衝材を更に備えることが好ましい。
【0015】
スタッドと下地材との間に挟持された緩衝材によって振動が吸収され、振動の伝搬をさらに低減できる。スタッドと下地材とが異なる材質である場合に、これらの伸縮率の違いによる反りの発生を防止できる。
【0016】
前記上駆体に前記第１の上部ランナーを取り付ける複数の取付部と、当該上駆体に前記第２の上部ランナーを取り付ける複数の取付部と、を間仕切方向に沿って互いに千鳥状としてもよい。この場合、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬の抑制効果を高めることができ、施工性を高めることができる。
【0017】
本発明の間仕切壁の施工方法は、建築物の間仕切りを構成する上記のいずれかに記載の間仕切壁構造の施工方法であって、前記上駆体に前記第１及び第２の上部ランナーを取り付け、前記下駆体に前記第１及び第２の下部ランナーを取り付け、前記第１の複数のスタッドの上部の前記ツメ部の溝に前記第１の上部ランナーの垂直片を嵌め込むことで当該スタッドの上部を当該垂直片で支持し、当該第１の複数のスタッドの下部を、前記第１の下部ランナーで支持し、当該第１の複数のスタッドの内側に断熱材を設け、前記第２の複数のスタッドの上部の前記ツメ部の溝に前記第２の上部ランナーの垂直片を嵌め込むことで当該スタッドの上部を当該垂直片で支持し、当該第２の複数のスタッドの下部を、前記第２の下部ランナーで支持し、前記第１の複数のスタッドの表面側に前記第１下地材を取り付けると共に、前記第２の複数のスタッドの表面側に前記第２下地材を取り付けるものである。
【0018】
本発明の施工方法によれば、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬を効果的に抑制できる。
【0019】
前記第１及び第２の複数のスタッドの上部を、上下方向に挿脱自在な係止手段を介して前記第１及び第２の上部ランナーの各々で支持する。この場合、スタッドを上部ランナーに嵌め込むだけで簡単に取り付けることができ、施工性が格段に向上する。これによりコストを低減できる。例えばＬ型に形成した上部ランナーの垂直片にスタッドの上部に設けたツメ部を嵌め込むようにして当該スタッドを支持すればよい。このようにすれば、上部ランナーにスタッドが完全に固定されることはなく、層間変位時にスタッドが変位に追従し易くなるので、耐震性も向上させることができる。
【0020】
前記第１の複数のスタッドに、弾性変形していない状態の弾性体からなる緩衝材を予め取り付けておくか又は施工時に取り付け、前記第２の複数のスタッドに、弾性変形していない状態の弾性体からなる前記緩衝材を予め取り付けておくか又は施工時に取り付け、前記第１の複数のスタッドの表面側に、前記緩衝材を挟持させつつ前記第１下地材を取り付けると共に、前記第２の複数のスタッドの表面側に、前記緩衝材を挟持させつつ前記第２下地材を取り付けることが好ましい。
【0021】
スタッドと下地材との間に、弾性変形していない状態で挟持された緩衝材を設けるため、振動が吸収され、振動の伝搬をさらに低減できる。スタッドと下地材とが異なる材質である場合に、これらの伸縮率の違いによる反りの発生を防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のとおり、第１下地材と、第２下地材と、が互いに連絡部分のない完全に独立したものとなり、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬を効果的に抑制でき、極めて高い遮音性及び耐火性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る間仕切壁構造を示す斜視図である。
【図2】間仕切壁構造の縦断面図である。
【図3】間仕切壁構造の横断面図である。
【図4】スタッドの上部と、スタッドと上部ランナーとの係止形態を示す斜視図である。
【図5】間仕切壁構造の下部の断面図である。
【図6】下地材を横張りとした間仕切壁構造を示す斜視図である。
【図7】スタッドに下地材を留め付けるための留付部材を用いた例の斜視図である。
【図8】スタッドの上部の係止部分の変形例と、そのスタッドと上部ランナーとの係止形態を示す斜視図である。
【図9】上部ランナーの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
【0025】
本実施形態の間仕切壁構造１は、建築物の間仕切壁を構成するものであり、上駆体５０に互いに離間した並列状態で取り付けられた第１及び第２の上部ランナー２、３と、下駆体５１に当該上部ランナー２、３と対をなすように互いに離間した並列状態で取り付けられた第１及び第２の下部ランナー４、５と、第１及び第２の上部ランナー２、３の各々に上部を支持され、かつ第１及び第２の下部ランナー４、５の各々に下部を支持され、間仕切方向に沿って並列状態で設けられた上下方向に長い第１及び第２の複数のスタッド６、７とを備えている。建物の内部空間を仕切る一方の第１下地材８が、第１の複数のスタッド６の表面側に固定され、建物の内部空間を仕切る他方の第２下地材９が、第２の複数のスタッド７の表面側に固定されている。
【0026】
第１及び第２の上部ランナー２、３及び第１及び第２の下部ランナー４、５は、いずれも間仕切方向に長いＬ型鋼材である。上駆体５０に、第１及び第２の上部ランナー２、３が、垂直片ｓ１に対して水平片ｓ２を内側に向けるようにしてボルトや鋲などで固定されている。下駆体５１に、第１及び第２の下部ランナー４、５が垂直片ｃ１に対して水平片ｃ２を外側に向けるようにしてボルトや鋲などで固定されている。
【0027】
本実施形態の第１及び第２下地材８、９は、図示のように正面視長方形状に形成された板材である。各下地材８、９の形状、寸法は限定されないが、施工場所の大きさに合わせて割り付けた形状、寸法に設定される。各下地材８、９を形成する材料は、建物の仕切りとして使用できる不燃性のものであれば限定されず、例えば厚みが３～１５ｍｍ程度のセメント系のフレキシブルボード、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、中質繊維板、パーティクルボード、木質系合板、硬質繊維板、鋼板などが挙げられる。
【0028】
各下地材８、９としては無機系の繊維強化セメント板や石膏ボードを用いることができる。無機系の材料を選択する場合の比重は０．５～１．８ｇ／ｃｍ３程度のものが好適である。一般的な集合住宅の階高を考慮した場合の各下地材８、９の最大長さは３０００ｍｍ程度とされるが、繊維強化セメント板のように厚みが３～１０ｍｍ程度の薄い下地では、この長さのものを小端建てした際に、１．３ｇ／ｃｍ３以上の比重のものを用いれば、施工時に曲がらないようにすることができる。また１．８ｇ／ｃｍ３以下の比重のものを用いることで、重量が大きくなり過ぎるのを防ぐことができる。
【0029】
図２のように第１及び第２下地材８、９の上下にシーリング材１０が設けられている。第１及び第２下地材８、９の表面側には、それぞれビス、ステイプルなどで石膏ボードなどの第１及び第２の仕上げ材１１、１２が取り付けられ、各仕上げ材１１、１２の表面に壁紙が貼り付けられる。グラスウール、ロックウールなどの吸音・断熱材１３が、第１及び第２の複数のスタッド６、７の間に挟まれるように取り付けられている。
【0030】
第１及び第２の複数のスタッド６、７は、間仕切方向に沿って一定間隔をおいて立設されている。本実施形態の各スタッド６、７は、鉄、ステンレス、アルミなどを断面矩形状に形成した薄板の鋼材からなる。各スタッド６、７は不燃性のものであれば金属製に限定されず、各下地材８、９の補強効果を発揮でき、間仕切壁とした際に自立できるものであればよい。各スタッド６、７を各下地材８、９と同じ材料で形成してもよい。
【0031】
図４は各スタッド６、７の上部と、各スタッド６、７と各上部ランナー２、３との係止形態を示す斜視図である。第１及び第２の上部ランナー２、３の各々に、上下方向に挿脱自在な係止手段１４を介して、第１及び第２の複数のスタッド６、７の上部が嵌め込まれるようにして係止されている。各スタッド６、７の上部の一部を加工することで、ツメ部１５が形成されており、このツメ部１５と各上部ランナー２、３の垂直片ｓ１とで係止手段１４が構成されている。同図のように各スタッド６、７のツメ部１５の溝に、各上部ランナー２、３の垂直片ｓ１を嵌め込むことで、各上部ランナー２、３に各スタッド６、７が支持されている。
【0032】
図５は間仕切壁構造１の下部の断面図である。第１の下部ランナー４の垂直片ｃ１に１の複数のスタッド６が側からビス留めされている。第２の下部ランナー５の垂直片ｃ１に２の複数のスタッド７がスタッドを通じて外側からビス留めされている。このようなビス留め形態は、第１及び第２の下部ランナー４、５の取り付け工程に伴うものであり、適宜変更される。施工現場の状況に合わせて第１及び第２の下部ランナー４、５の向きを変え、当該両側のスタッド６、７とも外側から留め付けるようにしてもよい。
【0033】
図４及び図５に示すように、第１及び第２の複数のスタッド６、７の各々の上端と、第１及び第２の上部ランナー２、３の水平片ｓ２との間に間隔１６が空けられている。第１及び第２の複数のスタッド６、７の各々の下端と、第１及び第２の下部ランナー４、５の水平片ｃ２との間に間隔１６が空けられている。これにより、第１及び第２の複数のスタッド６、７の各々の上端と、上駆体５０と、が間隔１６を空けた状態とされ、かつ第１及び第２の複数のスタッド６、７の各々の下端と、下駆体５１と、が間隔１６を空けた状態とされ、各スタッド６、７と上下駆体５０、５１との間に十分な空間が保たれている。これにより、各スタッド６、７を介して第１及び第２下地材８、９から伝搬する振動を効果的に防止することができる。
【0034】
図１及び図４に示すように、第１の複数のスタッド６と第１下地材８との間、及び第２の複数のスタッド７と第２下地材９との間に、弾性変形していない状態で挟持された弾性体からなる緩衝材１７が、上下方向に間隔を空けて設けられている。
【0035】
各スタッド６、７と各下地材８、９に挟持されている緩衝材１７は、所要の寸法にカットされたシート状となっている。緩衝材１７の寸法、厚みは適宜変更できる。緩衝材１７は弾性体からなり、弾性変形していない状態で挟持されている。これにより、各スタッド６、７と各下地材８、９との間に生じる振動を吸収できる。
【0036】
各スタッド６、７と各下地材８、９との間の振動が吸収されることで、振動の伝搬が抑えられ遮音効果を格段に向上させることができる。さらに、各スタッド６、７と各下地材８、９との間にかかる力が緩和されることで、両部材の伸縮率の差が許容され、各下地材８、９の反りを抑制することができる。
【0037】
緩衝材１７を圧縮しないように取り付ける点が重要である。緩衝材１７を弾性変形させないような、各スタッド６、７と各下地材８、９との間隔は緩衝材１７の厚み分となる。従って各スタッド６、７と各下地材８、９とは、緩衝材１７の厚み分の間隔を空けて取り付けられている。緩衝材１７を挟持した状態で取り付ける方法として、本実施形態ではビス留めが用いられている。
【0038】
ビス留めの他、各スタッド６、７と各下地材８、９との間隔を保つことができれば、ピン、リベットなど、どのような形態でもよい。各スタッド６、７を各下地材８、９に取り付ける際には、緩衝材１７を圧縮しないように、緩衝材１７と同じ厚みのスレートや塩ビなどのパッキン材を、予め各スタッド６、７と各下地材８、９との間に挟んでおき、取り付けが完了した後、これを除去すればよい。
【0039】
接着剤を用いる場合、緩衝材１７の表裏に接着剤を塗布して、各下地材８、９と緩衝材１７、緩衝材１７と各スタッド６、７を互いに密着させて固定する。接着剤を用いれば、緩衝材１７を押す力は作用しないため、確実に圧縮しない状態で取り付けることができる。
【0040】
緩衝材１７を形成する材料として、例えば天然ゴム、合成ゴム、スチレン－ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、これらの発泡体などが挙げられる。
【0041】
緩衝材１７の硬度は、タイプＡのデュロメータで２０～８０が好ましく、より好ましくは３０～６０である。緩衝材１７の硬度を２０以上とすることで、ビス留めの際に緩衝材１７が圧縮されにくくなり、高い遮音性を得ることができる。緩衝材１７の硬度を８０以下とすることで、緩衝材１７に伝わる音の振動が大きくなり過ぎず、高い遮音性を維持することができる。
【0042】
間仕切壁構造１は例えば次のようにして施工される。上駆体５０に第１及び第２の上部ランナー２、３を取り付け、下駆体５１に第１の下部ランナー４を取り付ける。第１の複数のスタッド６の上部のツメ部１５に、第１の上部ランナー２の垂直片ｓ１を嵌め込むようにして当該スタッド６を係止させる。第１の複数のスタッド６の下部を、第１の下部ランナー４にビス留めして固定する。その際、第１の複数のスタッド６に、緩衝材１７を予め取り付けておくか又は施工時に取り付ける。
【0043】
第１の複数のスタッド６の内側に吸音・断熱材１３を取り付け、下駆体５１に第２の下部ランナー５を取り付ける。第２の複数のスタッド７の上部のツメ部１５に、第２の上部ランナー３の垂直片ｓ１を嵌め込むようにして当該スタッド７を係止させる。第２の複数のスタッド７の下部を、第２の下部ランナー５にビス留めして固定する。その際、第２の複数のスタッド７に、緩衝材１７を予め取り付けておくか又は施工時に取り付ける。緩衝材のスタッドへの取り付けは、接着剤や両面テープで行う。
【0044】
第１の複数のスタッド６の表面側に、緩衝材１７を変形させないように第１下地材８を取り付ける。第２の複数のスタッド７の表面側に、緩衝材１７を変形させないように第２下地材９を取り付ける。第１及び第２下地材８、９の上側及び下側の隙間に、シーリング材１０を充填する。その後、第１及び第２下地材８、９の表面に第１及び第２の仕上げ材である石膏ボード１１、１２を取り付け、更に壁紙を貼り付けて仕上げる。これらの施工手順は一例を示したものであり、間仕切壁構造１の形態に応じて任意に設定できる。
【0045】
本実施形態の間仕切壁構造１及びその施工方法によれば、第１及び第２の上部ランナー２、３、第１及び第２の下部ランナー４、５は、それぞれ互いに離間していることから、第１の上部ランナー２と第１の下部ランナー４に支持された第１の複数のスタッド６と、第２の上部ランナー３と第２の下部ランナー５に支持された第２の複数のスタッド７と、が互いに離れた状態となっている。そのため、第１の複数のスタッド６の表面側に取り付けられた第１下地材８と、第２の複数のスタッド７の表面側に取り付けられた第２下地材９と、が互いに連絡部分のない完全に独立したものとなる。これにより、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬を効果的に抑制できる。
【0046】
第１及び第２の複数のスタッド６、７の上部が、上下方向に挿脱自在な係止手段１４を介して第１及び第２の上部ランナー２、３の各々に支持されているため、各スタッド６、７を各上部ランナー２、３に嵌め込むだけで簡単に取り付けることができ、施工性が格段に向上する。これによりコストを低減できる。また、各上部ランナー２、３の垂直片ｓ１に各スタッド６、７の上部のツメ部１５を嵌め込むだけで、当該各スタッド６、７が支持された状態となる。そのため、各上部ランナー２、３に各スタッド６、７が完全に固定されることはなく、層間変位時に各スタッド６、７が変位に追従し易くなるので、耐震性も向上させることができる。
【0047】
第１及び第２の複数のスタッド６、７の各々の上端と、上駆体５０と、が間隔１６を空けた状態とされ、かつ第１及び第２の複数のスタッド６、７の各々の下端と、下駆体５１と、が間隔１６を空けた状態とされていることで、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬の抑制効果をさらに向上させることができる。
【0048】
第１の複数のスタッド６と、第１下地材８との間、及び第２の複数のスタッド７と、第２下地材９との間に弾性変形していない状態で挟持された弾性体からなる緩衝材１７を備えるため、振動が緩衝材１７で吸収され、振動の伝搬をさらに低減できる。各スタッド６、７と各下地材８、９とが異なる材質となっている場合に、これらの伸縮率の違いによる反りの発生を防止できる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限定されず、スタッド、下地材、上部及び下部ランナーの形状、寸法、取り付け方法などは、建物の内部空間を仕切る仕様に応じて適宜変更できる。上記実施形態では、図１のように各下地材８、９を縦張りとしているが、図６のように下地材２１を横張りとしてもよい。下地材２１を横張りとする場合、各スタッド６、７に下地材２１を留め付けるための図７に示す留付部材２２を用いてもよい。この留付部材２２は、ネジ部を有するＳ型本体２２ａと、このＳ型本体２２ａから互いに逆向きの２つの嵌込ツメ２２ｂからなる。各嵌込ツメ２２ｂに隣り合う下地材２１の端部を嵌め込むことで、各スタッド６、７に下地材２１を簡単に留め付けることができる。
【0050】
各スタッドを各上部ランナーに上下方向に挿脱自在に係止させる係止手段は、施工し易くかつ確実に係止できるものであればよい。図８は各スタッド２５の上部の係止部分の変形例と、その各スタッド２５と各上部ランナー２、３との係止形態を示す斜視図である。この例では、各スタッド２５の小口に切り欠き２５ａを形成し、この切り欠き２５ａに各上部ランナー２、３の垂直片ｓ１を差し込むようにしている。この係止手段２６を用いた場合も、各スタッド２５を簡単に取り付けることができ、施工性を格段に向上させることができる。さらに上部ランナー２、３の変位に各スタッド２５を追従させることができ、耐震性を向上させることができる。
【0051】
図９は第１及び第２の上部ランナー２７、２８の変形例を示す図である。各上部ランナー２７、２８は、間仕切方向に長いランナー本体ｅ１と、このランナー本体ｅ１に等間隔をおいて形成された複数の凸部ｅ２とからなる。各凸部ｅ２にはネジ孔が貫通形成されている。第１の上部ランナー２７と第２の上部ランナー２８とが、複数の凸部ｅ２を互いに向かい合わせとした状態で、図１の上駆体５０にネジ留めされて固定される。
【0052】
第１の上部ランナー２７を取り付ける複数の凸部ｅ２（取付部）と、第２の上部ランナー２８を取り付ける複数の凸部ｅ２（取付部）と、が間仕切方向に沿って互いに千鳥状となるように、当該両部材２７、２８を配設する。凸部ｅ２の形状、箇所、数は変更可能である。この場合、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬の抑制効果を高めることができ、さらに施工性も高めることができる。
【0053】
上記実施形態ではスタッドを断面矩形状としているが、断面コ型、Ｌ型、Ｃ型、円型、三角型、多角型など緩衝材を取り付けることができる形状であればどのような断面形状としてもよい。断面コ型又はＣ型のスタッドを用いる場合には、２つのスタッドの開口が互いに向かい合うように当該スタッドを取りつける。それら２つのスタッドの間に断熱材を取りつければよい。スタッドをより長く形成して、これを下地材に対して斜め方向に向けるようにしてもよい。スタッドを斜め方向に取り付ければ、取り付け本数が少なくなり施工性が向上する。
【0054】
本発明に係る間仕切壁構造、及びその施工方法は、特許請求の範囲に記載した技術的範囲において変更可能である。間仕切壁構造、その施工方法に、必要に応じて設けられる他の部材、他の工程は本発明の効果を損なわない限りにおいてどのような形態のものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
１ 間仕切壁構造
２ 第１の上部ランナー
３ 第２の上部ランナー
ｓ１ 垂直片
ｓ２ 水平片
４ 第１の下部ランナー
５ 第２の下部ランナー
ｃ１ 垂直片
ｃ２ 水平片
６ 第１の複数のスタッド
７ 第２の複数のスタッド
８ 第１下地材
９ 第２下地材
１０ シーリング材
１１ 第１の仕上げ材
１２ 第２の仕上げ材
１３ 吸音・断熱材
１４、２６ 係止手段
１５ ツメ部
１６ 間隔
１７ 緩衝材
２１ 下地材
２２ 留付部材
２２ａ Ｓ型本体
２２ｂ 嵌込ツメ
２５ スタッド
２５ａ 切り欠き
２７ 第１の上部ランナー
２８ 第２の上部ランナー
ｅ１ ランナー本体
ｅ２ 凸部
２ 第１の上部ランナー
３ 第２の上部ランナー
ｓ１ 垂直片
ｓ２ 水平片
４ 第１の下部ランナー
５ 第２の下部ランナー
ｃ１ 垂直片
ｃ２ 水平片
６ 第１の複数のスタッド
７ 第２の複数のスタッド
８ 第１下地材
９ 第２下地材
１０ シーリング材
１１ 第１の仕上げ材
１２ 第２の仕上げ材
１３ 吸音・断熱材
１４、２６ 係止手段
１５ ツメ部
１６ 間隔
１７ 緩衝材
２１ 下地材
２２ 留付部材
２２ａ Ｓ型本体
２２ｂ 嵌込ツメ
２５ スタッド
２５ａ 切り欠き
２７ 第１の上部ランナー
２８ 第２の上部ランナー
ｅ１ ランナー本体
ｅ２ 凸部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】