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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 52/00 20230101AFI20230421BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
H10N52/00 Z
G01R33/07
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018211558
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020077814
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飛岡 孝明
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-204836(JP,A)
【文献】特開2005-333103(JP,A)
【文献】特開2018-117036(JP,A)
【文献】特開2018-093083(JP,A)
【文献】特開2018-147932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 52/00
G01R 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた縦型ホール素子とを有する半導体装置であって、
前記縦型ホール素子は、
前記半導体基板上に設けられた第2導電型の半導体層と、
前記半導体層の上部に設けられた前記半導体層よりも高濃度の第2導電型の不純物拡散層と、
前記不純物拡散層の表面に設けられ、一直線上に並ぶように配置された前記不純物拡散層よりも高濃度の第2導電型の不純物領域からなる複数の電極と、
前記複数の電極の各電極間にそれぞれ設けられ、前記複数の電極をそれぞれ分離する複数の第1導電型の電極分離拡散層と、
前記半導体基板と前記半導体層との間に設けられ、前記半導体層よりも高濃度で且つ前記不純物拡散層よりも低濃度の第2導電型の不純物領域からなる埋込層とを備え
前記不純物拡散層は、前記表面から前記半導体層へ向かうにつれて低濃度となる濃度分布を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記埋込層は、前記複数の電極分離拡散層それぞれの略真下に位置し、互いに離間して設けられた複数の埋込層を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記不純物拡散層は、前記複数の電極それぞれの周囲に互いに離間して設けられた複数の不純物拡散層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の電極分離拡散層の各々の周囲に形成される空乏層の最下部の位置が前記半導体層の上面と略同じ位置であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層及び前記不純物拡散層は、エピタキシャル層であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記不純物拡散層及び前記電極分離拡散層の表面は、前記電極が設けられている領域を除いて絶縁膜で覆われていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数の電極の数は3つ以上である請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、水平方向の磁界を検知する縦型ホール素子を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、縦型ホール素子は、横型ホール素子に比べて感度を高くするのが困難である。
【0003】
そこで、特許文献1(特に、図3参照)では、P型基板に形成された磁気感受部(Nウェル)に、N型拡散層からなる電極及び隣接する電極間を分離する電極分離拡散層(Pウェル)を設け、磁気感受部が基板表面に最高濃度をもって同表面から深くなるにつれて徐々に低濃度になるような濃度分布を有するようにした構成が提案されている。かかる構成により、形成される空乏層の幅と、基板表面から深くなるにつれて狭くなる電極分離拡散層の幅とが互いに補完し合い、磁気感受部における電流の広がりが抑制され、基板に垂直な方向へ流れる電流成分を相対的に増加させることができ、感度の向上が図られるとしている。
【0004】
しかし、特許文献1の構造において、電極分離拡散層を挟む二つの電極間に電流を供給した場合、電流は、基板表面の一方の電極から基板裏面方向(下方)へ流れた後、電極分離拡散層の下部において基板と平行な方向に流れ、そこから基板表面の他方の電極(上方)へ流れる。このとき、電極分離拡散層の下部において基板と平行な方向に流れる電流は、電極分離拡散層の下部の磁気感受部のなかで最も抵抗の低い(濃度の高い)領域である電極分離拡散層の直下に特に集中して流れることとなる。そして、磁気感受部は、基板裏面側に進むにつれて高抵抗になるため、電極分離拡散層の下部の磁気感受部における基板裏面に近い領域には、電流がほとんど流れない状態となる。したがって、基板と平行な方向に流れる電流の基板の深さ方向における幅が狭くなってしまう。
【0005】
ホール素子の磁気感度は、流れる電流の幅に比例して高くなることが知られているが、特許文献1の構造では、上述のとおり、基板と平行な方向に流れる電流の幅が狭いため、結果として、感度をあまり向上させることができないという問題がある。
【0006】
かかる問題に対し、本発明者は、特許文献2において、半導体基板上に濃度分布が一定のN型の半導体層を設け、半導体層上に半導体層よりも高濃度のN型の不純物拡散層を設け、不純物拡散層の表面に不純物拡散層よりも高濃度のN型の不純物領域からなる複数の電極を一直線上に設け、複数の電極の各電極間にそれぞれ複数の電極を分離する複数のP型の電極分離拡散層を設けた構成の縦型ホール素子を提案している。
【0007】
特許文献2の縦型ホール素子によれば、N型の半導体層内の抵抗が均一であるため、所定の電極間に電流を供給したときに半導体基板と平行な方向に流れる電流は、半導体層全体に亘って流れることとなり、磁気感度を向上することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-333103号公報
【文献】特開2018-93083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者がさらに研究を重ねた結果、特許文献2で提案した縦型ホール素子の構成では、半導体基板と平行な方向に流れる電流は、半導体層全体に亘って完全に均一には流れ難いことが判明した。これは、半導体基板と平行な方向に流れる電流のうち、半導体層における半導体基板付近、すなわち半導体層の深い部分を流れる電流経路は、その始端と終端に半導体基板と略垂直な方向の経路を含むことから、当該電流経路全体の長さが長くなる。そのため、その長さ分、当該電流経路の抵抗が高くなり、電流が流れ難くなる。よって、特許文献2の縦型ホール素子は、特許文献1に比べれば十分に磁気感度が向上するものの、さらに磁気感度を向上させる余地があるといえる。
【0010】
したがって、本発明は、基板と平行な方向に流れる電流による感度を向上させた縦型ホール素子を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に設けられた縦型ホール素子とを有する半導体装置であって、前記縦型ホール素子は、前記半導体基板上に設けられた第2導電型の半導体層と、前記半導体層の上部に設けられた前記半導体層よりも高濃度の第2導電型の不純物拡散層と、前記不純物拡散層の表面に設けられ、一直線上に並ぶように配置された前記不純物拡散層よりも高濃度の第2導電型の不純物領域からなる複数の電極と、前記複数の電極の各電極間にそれぞれ設けられ、前記複数の電極をそれぞれ分離する複数の第1導電型の電極分離拡散層と、前記半導体基板と前記半導体層との間に設けられ、前記半導体層よりも高濃度で且つ前記不純物拡散層よりも低濃度の第2導電型の不純物領域からなる埋込層とを備え、前記不純物拡散層は、前記表面から前記半導体層へ向かうにつれて低濃度となる濃度分布を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体基板と半導体層との間に第2導電型の埋込層が存在することにより、二つの電極間に電流を供給した場合に流れる電流は、一方の電極から半導体基板の裏面方向(下方)へ向かって流れた後、磁気感受部となる半導体層及び埋込層内全体に亘って基板と平行な方向に流れ、そこから他方の電極(上方)へ流れる。
【0013】
すなわち、半導体層よりも低抵抗の埋込層が半導体層の下部に存在していることにより、電流は、半導体層の上部の領域において半導体基板と平行な方向に流れる経路を通るだけでなく、不純物拡散層内から引き続き埋込層へ向かって下方に流れた後に埋込層内を流れる経路も通ることになる。よって、半導体基板と平行な方向に流れる電流は、一部に偏って流れることなく、半導体層及び埋込層内全体に亘って均一に流れることになる。
【0014】
したがって、半導体基板と平行な方向に流れる電流の深さ方向における幅を広くすることができ、これにより、ホール素子の磁気感度を高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の平面図であり、(b)は、(a)のL-L’線に沿った断面図である。
図2図1(b)の拡大図である。
図3】本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の断面図である。
図4】本発明の第3の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の縦型ホール素子100を有する半導体装置を説明するための図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は、図1(a)のL-L’線に沿った断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置は、第1導電型であるP型の半導体基板10と、半導体基板10上に設けられた縦型ホール素子100と、縦型ホール素子100の周囲を取り囲むように設けられたP型の素子分離拡散層80とを備えている。
【0019】
縦型ホール素子100は、半導体基板10上に設けられた第2導電型であるN型の半導体層20と、N型半導体層20上に設けられたN型の不純物拡散層30と、N型不純物拡散層30の表面に一直線上に設けられたN型の不純物領域からなる駆動電流供給用及びホール電圧出力用の電極となる電極51~55と、N型不純物拡散層30の表面において、電極51~55のそれぞれの間に設けられ、電極51~55をそれぞれ分離するP型の電極分離拡散層61~64と、P型半導体基板10とN型半導体層20との間に設けられたN型半導体層20よりも高濃度で且つN型不純物拡散層30よりも低濃度のN型の埋込層40とを備えて構成されている。
【0020】
さらに、縦型ホール素子100においては、N型不純物拡散層30の表面の電極51~55が設けられている領域を除く領域を覆うように、例えばSiO2膜からなる絶縁膜70が設けられている。これにより、N型不純物拡散層30表面において、半導体基板10と平行に流れる電流を抑制することができる。
【0021】
図1(b)の右側には、P型半導体基板10、N型埋込層40、N型半導体層20、及びN型不純物拡散層30に含まれる不純物の濃度プロファイルを示してある。
【0022】
この濃度プロファイルからわかるように、N型不純物拡散層30は、その表面近傍を最高濃度とし、表面から半導体層20へ進むにつれて低濃度となる濃度分布を有し、N型半導体層20は、不純物の濃度分布が一定であり、N型埋込層40は、N型半導体層20よりも高濃度で且つN型不純物拡散層30よりも低濃度となる濃度分布を有している。
【0023】
かかる構成は、例えば、以下のようにして形成される。
まず、半導体基板10の埋込層40を形成したい領域にN型不純物を選択的に注入した後、その上にN型半導体層20となるエピタキシャル層を形成し、注入したN型不純物を拡散させることにより、半導体基板10とN型半導体層20との間にN型埋込層40を形成する。エピタキシャル層の形成後、エピタキシャル層の不純物拡散層30を形成したい領域にN型不純物を選択的に注入し、注入したN型不純物を所定の深さまで拡散させることにより、エピタキシャル層の上部にN型不純物拡散層30を形成する。N型不純物拡散層30の下部にN型不純物が拡散されずに残ったエピタキシャル層がN型半導体層20となる。
【0024】
このように形成されることにより、N型半導体層20の濃度は、N型不純物拡散層30の最下部の濃度よりも低い濃度で一定となる。
【0025】
ここで、磁気感受部となるN型半導体層20及びN型埋込層40のトータルの厚さは、磁気感度を高くするためには厚いほど好ましく、例えば、6μm以上であることが望ましい。さらに、N型半導体層20の不純物濃度は、1×1015~1×1017atoms/cm3程度であることが好ましい。N型不純物拡散層30の表面付近の不純物濃度は、1×1017~1×1018atoms/cm3程度、N型不純物拡散層30の深さは3~5um程度と浅いことが好ましい。また、N型埋込層40の不純物濃度は、1×1016~5×1017atoms/cm3程度であることが好ましい。
【0026】
また、P型電極分離拡散層61~64は、例えば、N型不純物拡散層30内にP型の不純物を選択的に拡散することにより形成される。
【0027】
電極51~55は、例えば、P型電極分離拡散層61~64形成後に、P型電極分離拡散層61~64上を覆い、電極51~55を形成する領域を残すように絶縁膜(SiO2膜)70を例えばLOCOS法により形成し、これをマスクとしてN型不純物を導入することにより形成される。このとき、電極51~55の深さは、P型電極分離拡散層61~64の深さと同等か、P型電極分離拡散層61~64よりも浅くなるように形成される。
【0028】
次に、本実施形態の半導体装置における縦型ホール素子100において、半導体基板10と平行な方向の磁界成分を検知する原理について、図2を参照して説明する。
【0029】
図2は、図1(b)の断面図を拡大した図であり、電極53から電極51及び55へ電流が流れるように電極51、53及び55に駆動電流を供給したときの電流の流れる様子を模式的に示している。
【0030】
磁界は、図2においてBで示すように、半導体基板10と平行な方向に、紙面の奥側から手前側へかかっているものとする。
【0031】
図2に示すように、P型電極分離拡散層61~64の周囲には、それぞれ破線で示すように空乏層D1~D4が形成され、これら空乏層D1~D4の最下部の位置がN型半導体層20の上面と略同じ位置となっている。
【0032】
すなわち、本実施形態の縦型ホール素子100では、空乏層D1~D4の最下部の位置がN型半導体層20の上面と略同じ位置となるよう、P型電極分離拡散層61~64の深さ及び濃度、並びにN型不純物拡散層30の深さ及び濃度が設定されている。なお、空乏層はP型電極分離拡散層61~64の内側にも形成されるが、図2では省略している。
【0033】
かかる構成の縦型ホール素子100において、電極53から電極51及び55へ電流を流すと、電流は、まず、電極53から、矢印Iv1で示すように、半導体基板10に垂直に、半導体基板10の裏面方向(下方)へ向かってN型不純物拡散層30内、N型半導体層20内、及びN型埋込層40内を流れる。
【0034】
その後、電流は、矢印Ih1及びIh2で示すように、半導体基板10と平行な方向(左右方向)に流れる。このとき、半導体基板10と平行な方向に流れる電流は、電極53の両側にP型電極分離拡散層62、63と空乏層D2、D3が存在していることにより、N型不純物拡散層30内には流れることができず、矢印Ih1及びIh2で示すように、N型半導体層20及びN型埋込層40内を流れることになる。
【0035】
従来(特許文献2)の縦型ホール素子では、N型半導体層の不純物の濃度分布が一定であるため、N型半導体層内の抵抗は均一であるものの、電極は半導体基板10の表面に形成されていることから、N型半導体層内の半導体基板付近、すなわちN型半導体層の深い部分を通る電流経路は、その長さが長くなる。そのため、当該電流経路の抵抗が高くなり、電流が流れにくくなっていた。これに対し、本実施形態では、N型半導体層20の下部にN型半導体層20よりも高濃度のN型埋込層40を形成していることにより、半導体基板10近傍の深い部分の抵抗が低くなっている。これにより、N型半導体層20よりも深い部分であるN型埋込層40を通る長い電流経路の抵抗が低くなるため、N型半導体層20及びN型埋込層40内を流れる矢印Ih1及びIh2で示す電流は、N型半導体層20表面に偏って流れることなく、図示のように、N型半導体層20及びN型埋込層40内全体に亘って均一に流れることになる。
【0036】
電流は、その後、矢印Iv21、Iv22で示すように、半導体基板10に垂直に、N型不純物拡散層30の表面方向(上方)へ向かってN型埋込層40、N型半導体層20、及びN型不純物拡散層30内を流れ、電極51及び55に流れ込む。
【0037】
このように流れる電流Iv1、Iv21、Iv22、Ih1、Ih2それぞれに対し、磁界の作用により、電流と磁界の双方に垂直な方向に起電力が発生する。すなわち、電流Iv1に対しては、電極53から電極52へ向かう方向(左方向)、電流Iv21に対しては、電極51から電極52へ向かう方向(右方向)、電流Iv22に対しては、電極55からP型電極分離拡散層64と反対側へ向かう方向(右方向)、電流Ih1に対しては、N型半導体層20及びN型埋込層40から電極52へ向かう方向(上方向)、電流Ih2に対しては、N型半導体層20及びN型埋込層40から半導体基板10へ向かう方向(下方向)にそれぞれローレンツ力が発生する。
【0038】
特に、本実施形態では、主に半導体基板10と平行な方向に流れる電流Ih1及びIh2によって、これらと垂直な方向の磁界に対して大きなローレンツ力が発生し、これにより、電極52と電極54とに電位差が生じ、この電位差によって磁界を検知することができる。
【0039】
ここで、本実施形態では、上述のとおり、半導体基板10と平行な方向に流れる電流Ih1、Ih2は、N型半導体層20及びN型埋込層40内全体に亘って流れることになるため、その深さ方向における幅を広くすることができる。ホール素子の磁気感度は、流れる電流の幅に比例することから、本実施形態によれば、磁気感度を向上させることが可能となる。このため、上述のとおり、N型半導体層20とN型拡散層40のトータルの厚さは、厚いほど好ましい。
【0040】
本実施形態では、不純物濃度の低いN型半導体層20において半導体基板10と平行な方向に電流が流れることから、N型半導体層20における移動度が高くなる。また、N型埋込層40は、N型半導体層20よりも高濃度ではあるが、N型不純物拡散層30よりも低濃度であることから、N型埋込層40における移動度は、さほど大きくは低下しない。ホール素子の磁気感度は、移動度にも比例して高くなることから、本実施形態によれば、さらに磁気感度を高くすることができる。
【0041】
また、N型半導体層20と半導体基板10との間にN型半導体層20よりも高濃度のN型埋込層40を形成していることにより、高温時のリーク電流を抑制することができるため、高温時のオフセット電圧の増大を抑制できるという効果も得られる。
【0042】
このように、本実施形態によれば、高感度且つオフセット電圧の小さい縦型ホール素子を有する半導体装置を実現することができる。
【0043】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、低抵抗であるN型埋込層40を半導体層20の下部全体に設けている、すなわちN型埋込層40領域が大きいため、消費電流が増大する可能性がある。そこで、本発明の第2の実施形態として、消費電流の増大を抑制させた縦型ホール素子を備えた半導体装置について説明する。
【0044】
図3は、本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子200を有する半導体装置の断面図である。なお、図1に示す縦型ホール素子100を有する半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0045】
本実施形態の縦型ホール素子200を有する半導体装置は、第1の実施形態の縦型ホール素子100におけるN型埋込層40が削除され、代わりに、電極51~55をそれぞれ分離するP型の電極分離拡散層61~64各々の下部において半導体基板10と半導体層20との間に設けられたN型半導体層20よりも高濃度のN型の埋込層41~44を備えて構成されている。
【0046】
ここで、N型埋込層41~44のそれぞれは、電極分離拡散層61~64各々の略真下に配置され互いに離間している。
【0047】
かかるN型埋込層41~44は、例えば、半導体基板10の埋込層41~44を形成したい領域にN型不純物を選択的に注入した後、その上にN型半導体層20となるエピタキシャル層を形成し、注入したN型不純物を拡散させることにより、半導体基板10とN型半導体層20との間に形成される。
【0048】
このように、N型埋込層41~44を電極分離拡散層61~64の略真下のみに形成することにより、例えば、電極53から電極51及び55へ電流が流れるように電極51、53及び55に駆動電流を供給した場合、電極53から、N型不純物拡散層30、N型半導体層20を通った後、N型埋込層42及び41を通って電極51へ流れる電流経路の抵抗と、N型埋込層43及び44を通って電極55へ流れる電流経路の抵抗を低くなりすぎないようにすることができるため、消費電流の増加を抑制することができる。
【0049】
また、電極52及び54の真下においては、電流は、不純物濃度の低い、すなわち移動度の高いN型半導体層20内を通ることとなる。ホール素子の磁気感度は、移動度に比例して高くなることから、本実施形態によれば、さらに磁気感度を高くすることができる。
【0050】
なお、N型埋込層41~44は、電極51~55の真下には形成されていないことが望ましい。かかる構成によれば、電流経路の垂直成分、例えば、上述の例において電極53から下方へ向かう成分が完全に垂直に下方へ向かうのではなく、埋込層42及び43へ向かうため、若干斜めの方向で下方へ向かうようになる。これにより、この若干斜めとなる電流経路の垂直成分は、ホール電圧出力電極となる電極52及び54との距離がそれぞれ近くなる。よって、電流経路の垂直成分から得られるホール電圧を大きくすることができる。
【0051】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態として、上記第2の実施形態とは異なる構成により消費電流の増大を抑制させた縦型ホール素子を備えた半導体装置について説明する。
【0052】
図4は、本発明の第3の実施形態の縦型ホール素子300を有する半導体装置の断面図である。なお、図1に示す縦型ホール素子100を有する半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0053】
本実施形態の縦型ホール素子300を有する半導体装置は、第1の実施形態の縦型ホール素子100におけるN型不純物拡散層30が削除され、代わりに、電極51~55それぞれの周囲に互いに離間して設けられたN型不純物拡散層31~35を備えて構成されている。N型不純物拡散層31~35は、電極51~55よりも深く、すべて同一の深さを有し、また、電極51~55よりも大きく形成されている。N型不純物拡散層31~35は、第1の実施形態におけるN型不純物拡散層30と同様、表面近傍を最高濃度とし、表面から半導体層20へ進むにつれて低濃度となる濃度分布を有し、N型半導体層20よりも高濃度である。
【0054】
上記構成のN型不純物拡散層31~35は、例えば、半導体基板10上にN型埋込層40及びエピタキシャル層からなるN型半導体層20を形成した後、エピタキシャル層の不純物拡散層31~35を形成したい領域にN型不純物を選択的に注入し、注入したN型不純物を所定の深さまで拡散させることにより形成される。
【0055】
また、本実施形態では、P型電極分離拡散層61~64の深さをN型不純物拡散層31~35よりも十分に浅く形成している。
【0056】
かかる構成によれば、P型電極分離拡散層61~64の下部には、不純物濃度の低いN型半導体層20が存在することとなり、P型電極分離拡散層61~64の周囲に形成される空乏層D1~D4の底部からN型不純物拡散層31~35の底部までの間の図中に点線で示された領域も電流経路となる。この電流経路は、不純物濃度の低いN型半導体層20を含むため、抵抗が高くなる。したがって、消費電流を抑制することができる。また、この電流経路の移動度が大きくなるため、本実施形態によれば、さらに磁気感度を高くすることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0058】
例えば、第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせた構成としてもよく、これによりさらに消費電流を抑制させることが可能である。
【0059】
また、第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明したが、導電型を入れ替えて、第1導電型をN型、第2導電型をP型としても構わない。
【0060】
また、上記実施形態では、電極の数は5つとしたが、スピニングカレント法によるオフセットキャンセルが不要な程度にオフセット電圧が小さくできる、又は許容できる場合等には、駆動電流供給用に2つと、ホール電圧出力用に1つの合計3つ以上の電極があればよい。
【符号の説明】
【0061】
10 半導体基板
20 N型半導体層
30、31、32、33、34、35 N型不純物拡散層
40、41、42、43、44 N型埋込層
51、52、53、54、55 電極
61、62、63、64 電極分離拡散層
70 絶縁膜
80 素子分離拡散層
100、200、300 縦型ホール素子
D1、D2、D3、D4 空乏層
図1
図2
図3
図4