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特許7266395食品に粒状食材を付着させるための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】食品に粒状食材を付着させるための組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/30 20160101AFI20230421BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20230421BHJP
   A23G 3/54 20060101ALI20230421BHJP
   A23L 17/50 20160101ALI20230421BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20230421BHJP
【FI】
A23L29/30
A23G3/34 109
A23G3/54
A23G3/34 104
A23L17/50 Z
A23L35/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018223928
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020080793
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】冨山 香里
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 巧
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-223447(JP,A)
【文献】特開2018-183078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/00-29/30
A23G 5/00-5/49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5質量%超45質量%以下の濃度の還元水飴からなる、食品に粒状食材を付着させるための組成物であって、前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~50質量%、二糖が6~55質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%および五糖以上が1~81質量%である、前記組成物
【請求項2】
前記食品が水産物または米菓である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が6~55質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%および五糖以上が~81質量%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記還元水飴が、デキストロース当量が15~70の水飴の還元物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の組成物を用いて食品に粒状物を付着させる工程を有する、粒状物が付着した食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に粒状食材を付着させるための組成物およびそれを用いた食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食味や風味を向上させ、嗜好性を高める目的で、食品の表面に香辛料、調味料、胡麻、魚卵等の粒状の食材を付着させた製品が存在する。それは、明太子を付着させたイカ焼きといった総菜類や、七味をまぶした煎餅といった米菓に多く例示される。係る製品は、食品の表面に粒状食材を付着させる工程を経て製造されるが、当該工程において付着しなかったものは廃棄につながり、製造コストを上昇ないし生産性を低下させることが問題となっている。この点、食品の表面に粒状食材を付着させる技術としては、例えば、特許文献1には、トランスグルタミナーゼおよび増粘剤からなる接着剤を用いて昆布の表面に魚卵を接着させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-125818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の接着剤は、接着強度が高いことは確認されているものの、食品に粒状食材をまぶし付けて製造するような製品において、粒状食材が付着する割合を高め、食材廃棄を低減させうるかは不明である。すなわち、これら特許文献を鑑みても、食品に粒状食材を付着させるための組成物であって、その付着する割合を向上させるものは十分に供給されている状況ではない。
【0005】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、食品に粒状食材を付着させるための組成物およびこれを用いる粒状食材が付着した食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、還元水飴を用いることにより、粒状食材が食品に付着する割合を高められることを見出した。そこで、この知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
【0007】
(1)本発明に係る組成物は、食品に粒状食材を付着させるための組成物であって、5質量%超65質量%以下の濃度の還元水飴を有効成分とする。
【0008】
(2)本発明に係る組成物において、食品は、水産物または米菓であってよい。
【0009】
(3)本発明に係る組成物において、還元水飴の糖組成は、単糖が1~50質量%、二糖が6~55質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%および五糖以上が1~81質量%であってよい。
【0010】
(4)本発明に係る組成物において、還元水飴は、デキストロース当量が15~70の水飴の還元物であってよい。
【0011】
(5)本発明に係る食品の製造方法は、粒状食材が付着した食品の製造方法であって、本発明に係る組成物を用いて食品に粒状食材を付着させる工程を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い付着率で食品に粒状食材を付着させることができる。よって、粒状食材が付着した食品の製品価値の向上、生産性の向上あるいは製造コストの低下などに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】各種の糖質を調味液に添加して作製した唐辛子付着イカの写真、ならびに焼成歩留まりおよび唐辛子の付着率を示す図である。
図2】各種の糖質を調味液に添加して作製したアオサ付着イカの写真、ならびに焼成歩留まりおよびアオサの付着率を示す図である。
図3】各種の糖質を調味液に添加して作製した胡麻付着タコの写真、ならびに焼成歩留まりおよび胡麻の付着率を示す図である。
図4】各種の糖液を塗布して作製した胡麻付着煎餅の写真および胡麻の付着量を示す図である。
図5】各種の糖液を塗布して作製したクルミ付着煎餅の写真およびクルミの付着量を示す図である。
図6】異なる濃度の糖液を塗布して作製した胡麻付着煎餅の写真および胡麻の付着量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明に係る組成物は、食品に粒状食材を付着させるための組成物であって、還元水飴を有効成分とする。
【0015】
本発明において、粒状食材とは、粒状の食品をいう。その粒径は、例えば、0.25~15mmを挙げることができる。粒状食材として、具体的には、胡麻やビーナッツ、アーモンド、ピスタチオ、クリなどの種実類またはそれを砕いたもの、大豆、小豆、黒豆などの豆類またはそれを砕いたもの、塩やザラメなど調味料の粒、胡椒や唐辛子など香辛料の粒、タラコや明太子、数の子、トビッコなどの魚卵類、ゆかりなどの野菜を砕いたもの、魚介類を砕いたもの、アオサや青のりなど乾燥させた海草類を砕いたもの、アラザンや乾燥果実のフレークなどの菓子用トッピング等を例示することができる。
【0016】
本発明において、粒状食材の付着率とは、食品の製造工程において「当該食品に付着させるために使用した粒状食材」に対する「当該食品に付着した粒状食材」の質量割合または体積割合をいう。以下、粒状食材の付着率を、単に「付着率」という場合がある。
【0017】
粒状食材の付着率が向上したか否かは、食品に付着した粒状食材の質量または体積を測定し、これを比較することにより判断できる。すなわち、一方は本発明の組成物を用いて、他方はこれを用いずに、粒状食材が付着した食品を作製する。そして、当該食品に付着した粒状食材の質量または体積を測定して付着率を算出し、両者を比較する。その結果、本発明の組成物を用いた食品の方が粒状食材の付着率が大きければ、本発明により粒状食材の付着率が向上したと判断することができる。
【0018】
本発明において、粒状食材を付着させる対象となる食品は、飲料や調味料を除く固形の食品である。係る食品としては、農産物(きのこ類、山菜類、穀類、豆類、野菜、果実)、畜産物(肉類、食用鳥卵)、水産物(魚類、貝類、水産動物類、海産ほ乳動物類、海草類)、菓子類(米菓、焼き菓子、和生菓子、洋生菓子、チョコレート類等)などを例示することができる。本発明に係る組成物は、このうち、特に、水産物または米菓に好適に用いることができる。加熱して食する水産物に対して、本発明に係る組成物を加熱工程の前に用いた場合は、加熱による当該水産物の縮みを抑制して焼成歩留まりを向上させるため、より、生産性の向上に寄与することができる。
【0019】
還元水飴は、水飴を還元して得られる糖アルコールの一種である。ここで、水飴はデンプンを酸や酵素などで糖化して得られるものであり、単糖(ブドウ糖)および多糖(オリゴ糖やデキストリンなど)の混合物である。よって、還元水飴も、単糖の糖アルコールおよび多糖(二糖、三糖、四糖または五糖以上)の糖アルコールのうち、2種以上の糖アルコールを含む混合物である。
【0020】
本発明に係る組成物において、還元水飴の濃度は、粒状食材の付着率を向上させる効果を高くする観点から、5質量%超が好ましく、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上または10質量%以上がより好ましい。また、還元水飴は甘味度10~65の甘味をもつため、食品に過剰な甘味を付与せず、当該食品本来の風味や食味を生かす観点から、還元水飴の濃度は、65質量%以下が好ましく、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下または35質量%以下がより好ましい。
【0021】
本発明において、糖組成とは、糖の総質量に占める各糖の質量割合を百分率で示すものをいう。すなわち、糖の総質量を100とした場合の、各糖の質量百分率である。
【0022】
還元水飴は、原料とする水飴の糖化の程度により、高糖化還元水飴(糖組成:単糖アルコールが30~50質量%、二糖アルコールが20~50質量%、三糖以上の糖アルコールが25質量%以下)、中糖化還元水飴(糖組成:単糖アルコールが30質量%未満かつ五糖以上の糖アルコールが50質量%未満)および低糖化還元水飴(糖組成:五糖以上の糖アルコールが50質量%以上)に分けられる場合があるが、本発明においては、これらのいずれも用いることができる。後述する実施例では、単糖が1~50質量%、二糖が6~55質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%および五糖以上が1~81質量%の糖組成の還元水飴を好適に用いているが、粒状食材の付着率を向上させる効果をより高くする観点からは、単糖が1~10質量%、二糖が6~55質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%および五糖以上が5~81質量%がより好ましく、単糖が1~10質量%、二糖が6~20質量%、三糖が7~23質量%、四糖が5~13質量%および5糖以上が50~81質量%がさらに好ましい。
【0023】
糖組成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認することができる。すなわち、還元水飴や水飴を試料としてHPLCに供してクロマトグラムを得る。当該クロマトグラムにおいて、全ピークの面積の総和が「糖の総質量」に、各ピークの面積が「各糖の質量」に相当する。よって、試料における各糖の質量百分率は、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として算出することができる。HPLCの条件は、定法に従って適宜設定することができるが、下記条件を例示することができる。
《HPLCの条件》
カラム;Shodex SUGAR KS-802 HQ(8.0mm ID x 300mm) 2本
溶離液;高純水
流速;1.0mL/分
注入量;200μL
カラム温度;50℃
検出;示差屈折率検出器Shodex RI
【0024】
水飴の糖化の程度の指標は、一般に、デキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)が用いられる。DEは、試料中の還元糖をブドウ糖として測定したときの、当該還元糖の全固形分に対する割合(百分率)である。DEの最大値は100で、固形分の全てがブドウ糖であることを意味し、DEが小さくなるほど少糖類や多糖類が多いことを意味する。後述する実施例では、DEが15~70の水飴の還元物である還元水飴を好適に用いているが、粒状食材の付着率を向上させる効果をより高くする観点からは、DEが15~40の水飴の還元物がより好ましく、DEが15~35の水飴の還元物がさらに好ましい。
【0025】
なお、水飴のDEは、下記の方法により測定することができる。
《DEの測定方法》
試料2.5gを正確に量り、水で溶かして200mLとする。この液10mLを量り、1/25mol/L ヨウ素溶液(注1)10mLと1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液(注2)15mLを加えて20分間暗所に放置する。次に、2mol/L塩酸(注3)を5mL加えて混和した後、1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(注4)で滴定する。滴定の終点近くで液が微黄色になったら、デンプン指示薬(注5)2滴を加えて滴定を継続し、液の色が消失した時点を滴定の終点とする。水を用いてブランク値を求め、次式1によりDE値を求める。
式1:DE = (b-a)×f×3.602/(1/1000)/(200/10)/{A×(100-B)/100}×100
a:滴定値(mL)、b:ブランク値(mL)、f:チオ硫酸ナトリウム溶液のファクター値、A:試料の秤取量(g)、B:試料の水分値(%)
(注1)1/25mol/L ヨウ素溶液:ヨウ化カリウム20.4gとヨウ素10.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注2)1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム3.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注3)2mol/L 塩酸:水750mLに塩酸150mLをかき混ぜながら徐々に加える。
(注4)1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液:チオ硫酸ナトリウム20gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注5)デンプン指示薬:可溶性デンプン5gを水500mLに溶解し、これに塩化ナトリウム100gを溶解する。
【0026】
本発明において、還元水飴は、市販されているものをそのまま用いてもよく、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよい。還元水飴の公知の製造方法としては、原料となる水飴(原料糖)に水素を添加する還元反応を挙げることができる。
【0027】
水素添加による還元反応は、例えば、40~75質量%の原料糖水溶液を、還元触媒と併せて高圧反応器中に仕込み、反応器中の水素圧を4.9~19.6MPa、反応液温を70~180℃として、混合攪拌しながら、水素の吸収が認められなくなるまで反応を行なえばよい。その後、還元触媒を分離し、イオン交換樹脂処理、必要であれば活性炭処理等で脱色脱塩した後、所定の濃度まで濃縮すれば、高濃度の還元水飴を作ることができる。
【0028】
還元水飴は、上記所定の濃度となるよう水や調味液に溶解して還元水飴溶液とし、これを食品の表面に塗布することにより用いる。塗布する方法は、還元水飴溶液を当該食品に添加して混合する、還元水飴溶液に当該食品を浸漬する、刷毛塗りやローラーブラシ塗り、エアスプレー、ロールコーティングなど、食品や粒状食材、調味液の種類・形態に応じて種々の方法を用いることができる。
【0029】
粒状食材は、食品に還元水飴溶液を塗布した後に付着させてもよく、還元水飴溶液に粒状食材を添加して、その塗布と同時に付着させてもよく、粒状食材を食品に付着させた後に還元水飴溶液をコーティングするなどしてもよい。食品に粒状食材を付着させる方法もまた、和える、押しつける、吹き付けるなど、食品や粒状食材、調味液の種類・形態に応じて種々の方法を用いることができる。
【0030】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例
【0031】
<試験方法>
本実施例では、特段の記載のない限り、百分率(%)は質量%を示す。また、本実施例において、糖質は表1に記載の市販品を用いた。
【表1】
【0032】
<実施例1>唐辛子付着イカ
表2に示す配合の調味液1~7番を作製した。生イカの軟甲を除去し、1口大に切って水洗いした。12~13切れ(約400g)のイカを1つの試験区分として7試験区分を設定し、重量を測定して、これを素材重量とした。素材重量の50%量の調味液にイカを一晩(約16時間)浸漬した後、ザルにあげて約1分間置くことにより水分をきって重量を測定し、これを浸漬後重量とした。これをボウルに移し、素材重量の3%量の唐辛子粉末を添加して、イカと唐辛子を和えた。イカの皮面を上に網に並べて230℃のオーブンにて5分間焼成して唐辛子付着イカを作製した。
【表2】
【0033】
また、焼成後の重量を測定し、これを焼成後重量とした。次式1により、焼成歩留まりを算出した。
式1:焼成歩留まり(%)=(焼成後重量(g)÷浸漬後重量(g))×100
続いて、イカに付着した唐辛子を分離し、減圧乾燥機にて乾燥させた後、重量を測定し、これを付着乾燥唐辛子量とした。付着乾燥唐辛子量(g)を、使用した唐辛子の固形分率(0.863)で除して付着唐辛子量(g)を算出した。次式2により、唐辛子の付着率を算出した。なお、使用唐辛子量は素材重量の3%量である。
式2:唐辛子の付着率(%)=(付着唐辛子量(g)÷使用唐辛子量(g))×100
【0034】
焼成歩留まりおよび唐辛子の付着率の算出結果を表3に示す。また、唐辛子付着イカの写真を図1に示す。
【表3】
【0035】
図1および表3に示すように、1番(調味液に糖質を添加しなかったもの)の唐辛子の付着率は32.15%と最も小さく、2番(上白糖を添加したもの)、4番(直鎖オリゴ糖を添加したもの)および5番(水飴を添加したもの)の付着率も30%台とあまり大きくなかった。これに対して、3番(高糖化還元水飴を添加したもの)、6番(低糖化還元水飴(エスイー30)を添加したもの)および7番(低糖化還元水飴(エスイー100)を添加したもの)の付着率はいずれも40%を超えており、顕著に大きかった。これらの結果から、還元水飴は、水産物における粒状食材の付着率を向上させることが明らかになった。また、焼成歩留まりも、1番(調味液に糖質を添加しなかったもの)は84.69%と最も小さく、2番(上白糖を添加したもの)および4番(直鎖オリゴ糖を添加したもの)も86%台とあまり大きくなかった。これに対して、3番(高糖化還元水飴を添加したもの)、6番(低糖化還元水飴(エスイー30)を添加したもの)および7番(低糖化還元水飴(エスイー100)を添加したもの)はいずれも87%を超えており、顕著に大きかった。これらの結果から、還元水飴は、水産物の焼成歩留まりを向上させる効果をも有することが明らかになった。
【0036】
<実施例2>アオサ付着イカ
表2に示す配合の調味液のうち、2、3、5および7番を用意した。実施例1に記載の方法によりアオサ付着イカを作製し、焼成歩留まりおよびアオサの付着率を算出した。ただし、8~9切れ(約260~300g)のイカを1つの試験区分として4試験区分を設定した。また、「3%量の唐辛子粉末」を「2%量のアオサ」に代えた。また、アオサの固形分率は0.9149とした。その結果を表4に示す。また、アオサ付着イカの写真を図2に示す。
【表4】
【0037】
図2および表4に示すように、5番(水飴を添加したもの)のアオサの付着率は81.71%と最も小さく、2番(上白糖を添加したもの)の付着率も84.21%とあまり大きくなかった。これに対して、3番(高糖化還元水飴を添加したもの)および7番(低糖化還元水飴(エスイー100)を添加したもの)の付着率はいずれも85%を超えており、顕著に大きかった。これらの結果から、還元水飴は、水産物における粒状食材の付着率を向上させることが明らかになった。また、焼成歩留まりも、2番(上白糖を添加したもの)および5番(水飴を添加したもの)は84%台であったのに対して、3番(高糖化還元水飴を添加したもの)および7番(低糖化還元水飴(エスイー100)を添加したもの)はいずれも86%を超えており、顕著に大きかった。これらの結果から、還元水飴は、水産物の焼成歩留まりを向上させる効果をも有することが明らかになった。
【0038】
<実施例3>胡麻付着タコ
表2に示す配合の調味液のうち、2、4および7番を用意した。1口大サイズの冷凍の茹でダコを流水にて解凍した。約180~190g分のタコを1つの試験区分として3試験区分を設定し、重量を測定して、これを素材重量とした。素材重量の50%量の調味液にタコを一晩(約16時間)浸漬した後、ザルにあげて約1分間置くことにより水分をきって重量を測定し、これを浸漬後重量とした。ボウルに移し、素材重量の5%量の黒胡麻を添加して、タコと和えた。これを網に並べて230℃のオーブンにて5分間焼成して胡麻付着タコを作製した。また、焼成後の重量を測定し、これを焼成後重量とした。実施例1の式1により、焼成歩留まりを算出した。また、タコに付着した胡麻を分離し、減圧乾燥機にて乾燥させた後、重量を測定し、これを付着乾燥胡麻量とした。付着乾燥胡麻量(g)を、使用した胡麻の固形分率(0.9882)で除して付着胡麻量(g)を算出した。実施例1の式2に準じて、胡麻の付着率(%)を算出した。その結果を表5に示す。また、胡麻付着タコの写真を図3に示す。
【表5】
【0039】
図3および表5に示すように、胡麻の付着率は、7番(低糖化還元水飴(エスイー100)を添加したもの)が89.61%で最も大きく、2番(上白糖を添加したもの)は85.61%、4番(直鎖オリゴ糖を添加したもの)は80.71%と、それより小さかった。この結果から、還元水飴は、水産物における粒状食材の付着率を向上させることが明らかになった。また、焼成歩留まりも、2番(上白糖を添加したもの)および4番(直鎖オリゴ糖を添加したもの)は67%台であったのに対して、7番(低糖化還元水飴(エスイー100)を添加したもの)は68%を超えており、それより大きかった。この結果から、還元水飴は、水産物の焼成歩留まりを向上させる効果をも有することが明らかになった。
【0040】
<実施例4>胡麻付着煎餅
70%上白糖水溶液ならびに固形分濃度70%の水飴、中糖化還元水飴および低糖化還元水飴(製品名「スイートNT」および「エスイー100」)の計5種類の糖液を用意した。市販の塩味の煎餅(「ソフトサラダ」(亀田製菓))に刷毛で糖液を3g/1枚あたり塗布した後、重量を測定し、これを付着前重量とした。適量の黒胡麻を入れたトレーに煎餅を塗布面を下にした状態で入れ、10回押しつけた。煎餅を取り出し、軽くはたいて付着不十分の胡麻を除去した。胡麻が付着した面を上にした状態で煎餅を置き、常温で約4時間乾燥させて、胡麻付着煎餅を作製した。その写真を図4に示す。続いて、胡麻付着煎餅の重量を測定し、これを付着後重量とした。次式3により、胡麻の付着量を算出した。本実験は各糖液につき3枚の煎餅にて行い、胡麻の付着量は3枚の煎餅の平均値を算出した。算出した付着量を図4に示す。
式3:胡麻の付着量(g)=付着後重量(g)-付着前重量(g)
【0041】
図4に示すように、胡麻の付着量は、上白糖水溶液を塗布したものが3.19gと最も小さく、水飴を塗布したものも3.83gとあまり大きくなかった。これに対して、中糖化還元水飴を塗布したものならびに低糖化還元水飴(スイートNTおよびエスイー100)を塗布したものでは、いずれも4gを超えており、顕著に大きかった。これらの結果から、還元水飴は、煎餅における粒状食材の付着率を向上させることが明らかになった。
【0042】
<実施例5>クルミ付着煎餅
市販のクルミを適当な大きさに砕いた。黒胡麻をクルミに代えて、実施例4に記載の方法によりクルミ付着煎餅を作製し、クルミの付着量(3枚の煎餅の平均値)を算出した。その結果を図5に示す。
【0043】
図5に示すように、クルミの付着量は、上白糖水溶液を塗布したものが3.64gと最も小さく、水飴を塗布したものも4.60gとあまり大きくなかった。これに対して、中糖化還元水飴を塗布したものならびに低糖化還元水飴(スイートNTおよびエスイー100)を塗布したものでは、いずれも5gを超えており、顕著に大きかった。これらの結果から、還元水飴は、煎餅における粒状食材の付着率を向上させることが明らかになった。
【0044】
<実施例6>有効濃度の検討
上白糖ならびに低糖化還元水飴(製品名「スイートNT」および「エスイー100」)について、濃度が35%、15%、10%および5%となるよう水に溶解して糖液を作製した。市販の塩味の煎餅(「ソフトサラダ」(亀田製菓))の重量を測定し、これを煎餅重量とした。煎餅に刷毛で糖液を約1g/1枚あたり塗布した後、重量を測定し、測定結果から煎餅重量を減ずることにより糖液塗布量を算出した。実施例4に記載の方法により胡麻付着煎餅を作製した。続いて、胡麻付着煎餅の重量を測定し、これを付着後重量とした。次式4により、胡麻の付着量を算出した。本実験は各糖液につき3枚の煎餅にて行い、胡麻の付着量は3枚の煎餅の平均値を算出した。胡麻付着煎餅の写真および胡麻の付着量を図6に示す。
式4:胡麻の付着量(g)=付着後重量(g)-煎餅重量(g)-糖液塗布量(g)
【0045】
図6に示すように、糖液の濃度が35%、15%および10%の場合はいずれも、低糖化還元水飴の方が、上白糖水溶液と比較して、胡麻の付着量が顕著に大きかった。一方、糖液の濃度が5%の場合は、胡麻の付着量は、低糖化還元水飴と上白糖水溶液とで同等であった。これらの結果から、還元水飴は、5%超の濃度で用いた場合に、粒状食材の付着率を向上させるという特有の効果を奏することが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6