(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒及び画像投射装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20230421BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20230421BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/04 D
G03B21/14 D
(21)【出願番号】P 2019068675
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】片方 啓樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 繁
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-146278(JP,A)
【文献】特開2006-215089(JP,A)
【文献】実用新案登録第2510143(JP,Y2)
【文献】特開2017-083637(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108351583(CN,A)
【文献】特開平07-159664(JP,A)
【文献】特開2005-354220(JP,A)
【文献】特開平10-246849(JP,A)
【文献】特開平05-034558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/04
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズ保持部材と、
前記レンズの中心軸を中心に回転する第1回転部材と、
前記中心軸を中心に回転し、前記第1回転部材と接続された第2回転部材と、
前記第1回転部材と前記レンズ保持部材とが連れ回ることなく前記第1回転部材が回転するとともに、前記回転に伴って前記中心軸方向に沿っては前記第1回転部材と前記レンズ保持部材とが一体に移動する第1状態と、前記第1回転部材と前記レンズ保持部材とが一体に移動し、かつ前記第2回転部材の回転に対して相対的に回転する第2状態と、を切替可能な連結部と、
前記第2回転部材とカムで連結された保持部と、を有し、
前記連結部は、前記第1回転部材の側面に開いた空隙部と、前記空隙部に挿入されて前記レンズ保持部材と締結されたネジ部材と、前記第1回転部材と前記レンズ保持部材との間で嵌め合う嵌合部と、を有し、
前記第1状態と前記第2状態とは、前記ネジ部材が前記第1回転部材を締める強度によって切替可能であって、
前記第1状態において前記第1回転部材を前記中心軸の周りで回動させることにより前記レンズ保持部材が前記中心軸方向に沿って移動することで、当該レンズ保持部材に保持されたレンズと前記保持部に取り付けられたレンズと、の間隔を調整し、
前記第2状態において前記第2回転部材を前記中心軸の周りで回動させることにより前記第1回転部材と前記レンズ保持部
材とが一体に移動し、かつ前記第2回転部材の回転に対して相対的に回転することで、前記レンズ保持部材に保持されたレンズと前記保持部に取り付けられたレンズとが前記中心軸方向に連動して移動することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡筒であって、
前記第2回転部材と前記第1回転部材との間の接続部がヘリコイドネジで接続されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒であって、
前記第2回転部材を回転させるための操作部を有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載のレンズ鏡筒であって、
前記第1状態において前記第1回転部材を前記中心軸の周りで回動させることで、前記レンズ保持部材と前記保持部との間隔を制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載のレンズ鏡筒であって、
前記第2回転部材の前方側には前記カムを介して前記保持部が連結されており、
前記第2状態において前記第2回転部材を前記中心軸の周りで回動させることで、前記レンズ保持部材と前記保持部との間隔を制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項3に記載のレンズ鏡筒と、
光源と、を有する画像投射装置であって、
前記第2状態において前記操作部を前記中心軸の周りで回動させることで、前記レンズ保持部材と前記保持部との間隔とともに前記光源と前記レンズ鏡筒との間の間隔を調整することを特徴とする画像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及び画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタをはじめとする画像投射装置において、レンズユニットを筐体に取り付ける際に光学性能の調整を行うために、レンズ間の位置調整や光源との位置調整が行われている。
こうした位置調整は、筐体にレンズユニットを取り付けた状態で行われるため、作業スペースが小さく、またレンズユニットの外部側から行うことができる機構であることが求められている。
さらに、このような位置調整機能を複数取り付けることは、画像投射装置の大型化を招いてしまうため、コンパクトかつ1つの位置調整機能で複数個所の位置調整を行えるようなレンズ鏡筒が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上のような課題に基づきなされたものであり、省スペースかつ高性能な位置調整機能を備えたレンズ鏡筒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明にかかるレンズ鏡筒は、複数のレンズを保持するレンズ保持部材と、前記レンズの中心軸を中心に回転する第1回転部材と、前記中心軸を中心に回転し、前記第1回転部材と接続された第2回転部材と、前記第1回転部材と前記レンズ保持部材とが連れ回ることなく前記第1回転部材が回転するとともに、前記回転に伴って前記中心軸方向に沿っては前記第1回転部材と前記レンズ保持部材とが一体に移動する第1状態と、前記第1回転部材と前記レンズ保持部材とが一体に移動し、かつ前記第2回転部材の回転に対して相対的に回転する第2状態と、を切替可能な連結部と、前記第2回転部材とカムで連結された保持部と、を有し、前記連結部は、前記第1回転部材の側面に開いた空隙部と、前記空隙部に挿入されて前記レンズ保持部材と締結されたネジ部材と、前記第1回転部材と前記レンズ保持部材との間で嵌め合う嵌合部と、を有し、前記第1状態と前記第2状態とは、前記ネジ部材が前記第1回転部材を締める強度によって切替可能であって、前記第1状態において前記第1回転部材を前記中心軸の周りで回動させることにより前記レンズ保持部材が前記中心軸方向に沿って移動することで、当該レンズ保持部材に保持されたレンズと前記保持部に取り付けられたレンズと、の間隔を調整し、前記第2状態において前記第2回転部材を前記中心軸の周りで回動させることにより前記第1回転部材と前記レンズ保持部材とが一体に移動し、かつ前記第2回転部材の回転に対して相対的に回転することで、前記レンズ保持部材に保持されたレンズと前記保持部に取り付けられたレンズとが前記中心軸方向に連動して移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のレンズ鏡筒によれば、省スペースかつ高性能な位置調整機能を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態としての画像投射装置の一例を示す図である。
【
図2】本発明を構成するレンズユニットの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図2に示したレンズユニットの断面構成の一例を示す図である。
【
図4】
図2に示したレンズユニットの非締結状態における動作の一例を示す図である。
【
図5】
図2に示したレンズユニットの締結状態における動作の一例を示す図である。
【
図6】本発明を構成するレンズユニットのカバー部の構成の一例を示す図である。
【
図7】従来の画像投射装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の第1の実施形態として、
図1にレンズユニット103を有する画像投射装置100を示す。
なお、以降の説明では、レンズ鏡筒たるレンズユニット103の保持するレンズの光軸方向をZ方向、Z軸に垂直な方向のうち、
図1に示す紙面上方向をY方向、Z方向とY方向とに垂直な方向をX方向とする。また、必要に応じて、レンズユニット103における+Z方向側たる投射面104側を拡大側、-Z方向側たる画像表示素子102側を縮小側と呼ぶ。
【0008】
本発明の画像投射装置100は、
図1に示すように、光源101と、投射するべき画像を表示して光源101からの光束に画像情報を付与する画像表示素子102と、画像表示素子102を透過した光束を投射面104において結像するためのレンズLが複数備えられたレンズユニット103と、を有している。
【0009】
レンズユニット103は、
図2に示すように、複数のレンズLを保持するレンズ保持部材としての第1鏡筒20と、第1鏡筒20と一体に動作する第2鏡筒21と、レンズLの中心軸たるZ軸を中心に回転する筒状の第1回転部材30と、を有している。
レンズユニット103はまた、Z軸を中心に回転し、第1回転部材30とヘリコイドネジ41を介して接続された第2回転部材40と、第2回転部材40とカムピン51を介して連結された保持部50と、を有している。
レンズユニット103は、最外部を構成し画像投射装置100の筐体に取り付けられるカバー部60と、カバー部60とは別部材であって同様に筐体に取り付けられる第2カバー部54と、を有している。
【0010】
保持部50には、レンズL’が取り付けられており、後述するように第1回転部材30の動作に従って第1鏡筒20に取り付けられたレンズLとの間隔が調整される。なお、本実施形態ではレンズLとレンズL’との間隔を調整するとしたが、レンズL、L’はそれぞれがレンズ群を形成していても良く、またかかるレンズ群の群構成も適宜設定されるものであって良い。
第2鏡筒21は、外周側に形成された凹状の溝部22と、溝部22よりも拡大側に形成されたネジ穴23と、を有している。
【0011】
第1回転部材30は、
図3、
図4(a)(b)に示すように、外周面に沿って外周から内周を貫通するように形成された空隙部31と、空隙部31に挿通されてネジ穴23へと嵌り合う固定部材としてのネジ32と、内周側に向かって凸に形成された突起部33と、を有している。
第1回転部材30はまた、外周側に形成されて棒状の突起あるいは調整部材105と嵌合することで第1回転部材30をZ軸中心に回転させるための操作部として、複数の溝が等間隔に形成された凹条34を有している。
第1回転部材30は、ネジ32が締め付けられたときには、ネジ穴23とネジ32との間で第1回転部材30が挟み込まれるように締め付けられる第2状態たる締結状態となる。
第1回転部材30は、ネジ32が緩められたときには、ネジ32が締め付けられない第1状態たる非締結状態となる。すなわち、非締結状態において第1回転部材30が回転するときには、ネジ32が空隙部31に沿って滑りながら移動するから、第1回転部材30の回転に対して第2鏡筒21は連れ回ることがない。
第1回転部材30は、溝部22と嵌り合うように内周側に向かって凸に形成された突起部33を有している。
溝部22と突起部33とが嵌合していることで、第1回転部材30がZ方向に移動するときには、第2鏡筒21も第1回転部材30とともにZ方向に移動する。また、本実施形態では第2鏡筒21は、-X方向側の外周面に、Z方向に沿って突出した凸条部24を有し、かかる凸条部24が後述するカバー部60の内周側にZ方向に沿って形成されたキー溝62と嵌り合うことで、XY平面において回転することなくZ方向にのみスライド可能に支持される。すなわち、第1回転部材30の回転に対して連れ回ることなく、Z方向にのみ従動する。
このように、本実施形態においては、ネジ32と突起部33と溝部22とによって第1回転部材30と第2鏡筒21とが締結状態と非締結状態とを切り替え可能に連結されており、かかるネジ32と突起部33と溝部22とが連結部としての機能を有している。
すなわち、レンズユニット103は、『第1回転部材30と第2鏡筒21とが連れ回ることなく第1回転部材30が回転する』とともに、『当該回転に伴ってZ軸方向に沿っては第1回転部材30と第2鏡筒21とが一体に移動する』第1状態と、『第1回転部材30と第2鏡筒21とが一体に移動し、かつ第2回転部材40の回転に対して相対的に回転する』第2状態と、をかかるネジ32の締結状態と非締結状態とで切替可能になっている。
【0012】
第2回転部材40は、外周側に形成されたヘリコイドネジ41と、操作部たる操作部42と、カム溝43とを有している。なお、本実施形態においては、かかる操作部42を穴に対して不図示の突起を嵌合させることで回動させるような構成としたが、かかる構成に限定されるものではなく、例えば把持部としてレバーを有するような構成であっても良い。また、ヘリコイドネジ41は第2回転部材40側に雄ネジが、第1回転部材30側に雌ネジが形成される構成としたが、第1回転部材30側に雄ネジを形成するとしても良く、また第1回転部材30と第2回転部材40との関係は、どちらが内周側に嵌り合うものであっても良い。
カム溝43には、保持部50からカムピン51が挿入されており、カムピン51に沿ってカム溝43が回動することで、第2回転部材40に対して保持部50がZ方向に前後移動する。
【0013】
保持部50は、第2回転部材40とカムピン51を介して接続されており、さらにレンズL’を保持する第2のレンズ保持部たる第3鏡筒53とピン52によって連結されている。
かかる構成により、カムピン51とカム溝43との噛み合わせ状態が変化することで保持部50がZ軸に沿って移動し、レンズL’が繰り出される。
なお、本実施形態においては、第3鏡筒53をピン52によって保持部50が保持する構成について述べるが、第2回転部材40の回転によってレンズL’をZ軸に沿って移動可能な構成であれば良く、例えば第3鏡筒53が保持部50と一体に構成されているとしても良い。
【0014】
さて、このような構成のレンズユニット103を用いて、レンズL、L’の位置調整を行う場合のレンズユニット103を構成する各部材の動作について説明する。
【0015】
まず、レンズユニット103の各部材、第1鏡筒20、第2鏡筒21、第1回転部材30、第2回転部材40、保持部50が組み上げられた状態において、ネジ32が緩められた第1状態たる非締結状態について述べる。
かかる第1状態において、第1回転部材30が回転するときには、
図4(a)、(b)に示すようにネジ32が空隙部31に沿って滑りながら移動するから、第1回転部材30の回転に対しては第2鏡筒21は独立している。すなわち、第1回転部材30の回転に対して連れ回ることなく、Z方向にのみ従動する。
このとき、組み立てを行うものが、第1回転部材30の外周に形成された凹条34に嵌合するように調整部材105を用いて
図4中に示したA方向に第1回転部材を回転させると、第1回転部材30の回転に伴ってヘリコイドネジ41によって第2回転部材40に対してZ軸方向へ相対的に移動する。
溝部22が突起部33と嵌り合っているから、第1回転部材30のZ方向への移動に伴って第2鏡筒21及び第1鏡筒20はZ方向に移動することになる。
従って、第1回転部材30を回転させることで、レンズLがZ軸方向を移動するので、レンズL’とレンズLとの間隔Z
0が調整される。
【0016】
かかる調整は、本実施形態においては、縮小側の焦点である画像表示素子102とレンズ最後端であるレンズLの後端部までの距離の調整として行われ、このような調整をバックフォーカス調整と呼ぶ。
バックフォーカス調整は実際には工場出荷時に行われ、最初にレンズユニット103の組み立てが成された後には一般的には変更されるものではない。従って、非締結状態においてバックフォーカス調整が行われたのち、組み立てを行うものはネジ32を締め付けることで第2状態たる締結状態へと切り替えを行うが、かかる工程に限定されるものではない。
【0017】
次に、ネジ32が締め付けられた第2状態たる締結状態について説明する。締結状態においては、第2回転部材40の操作部42に不図示の棒状の操作手段等を用いて回動させて
図5(a)、(b)、(c)に示すようにB方向へ回転する場合を考える。第1回転部材30と第2回転部材40とがヘリコイドネジ41を介して接続されており、第1回転部材30と第2鏡筒21とは、ネジ32によって締結されるとともに第1回転部材30の突起部33と第2鏡筒21の溝部22との嵌合によって回転しないから、第2回転部材40の回転により第1回転部材30と第2回転部材40とがZ方向に相対的に移動する。すなわち締結状態においては『第1回転部材30と第2鏡筒21とが一体に移動し、かつ第2回転部材40の回転に対して相対的に回転する』構成となる。本実施形態においては第2回転部材40を能動的に回転させることで、回転しない第1回転部材30と第2鏡筒21とが第2回転部材40に対して相対的に回転するとしたが、どちらを能動的に回転させるかは設計事項である。
なお、本実施形態では、第2回転部材40の拡大側(前方側)にはカム溝43がついており、第2回転部材40を回すことでカム溝43の働きにより、レンズL’がZ方向側に移動する。同時に、かかる第2回転部材40がヘリコイドネジ41を介して第1回転部材30に接続されているから、第2回転部材40の回転に伴いレンズLもZ方向側に移動する。
すなわち+Z方向側においては、第2回転部材40とカム溝43、カムピン51との嵌合によって保持部50がZ軸に沿って繰り出され相対的に移動する。かかる相対的な移動によってレンズLとレンズL’とが連動して移動することとなる。
このときレンズLとレンズL’との移動距離は、ヘリコイド41とカム溝43、カムピン51の形状によって第2回転部材40を回動させる位相角と対応させることができる。したがって、第2回転部材40を回動させる角度に応じて、レンズLとレンズL’との間の距離Z
0を変更することができる。
このような調整により、フローティング調整が行われる。
かかるフローティング調整は、一般には投射面104上の4隅のボケ調整を行うためのものであり、本実施形態においては特に上側の外縁部におけるボケ調整を行うものである。
このように、本発明においてはフローティング調整によってもレンズLと画像表示素子102との間隔が変化するが、本実施形態においてはこのようなフローティング調整時にバックフォーカス距離の変動があるときにも収差等の各種光学設計値の変化を低減することができる。
【0018】
また、本実施形態においては、
図6に示すように、レンズユニット103の筐体たるカバー部60には、操作部42及び凹条34に外部からアクセス可能なようにアクセス用の空隙61が設けられている。
かかる構成により、レンズユニット103の組み立て後においても、ネジ32を締める(あるいは緩める)ことができるから、第1状態と第2状態とを容易に切り替えることが可能である。
【0019】
さて、従来の画像投射装置の例として示す画像投射装置300においては、
図7に示すように、カム301と、ヘリコイドネジ302とを用いて所謂バックフォーカス調整(レンズLと画像表示素子102との間の距離の調整)と、フローティング調整(鏡筒301に保持される光学系302のうちレンズLとレンズL’との距離Z
0の調整)とに用いられる機構が、独立して別途に設けられる構成が考えられる。
しかしながら、このような構成においては、調整を行う機構が複数存在することになってしまい、複雑化するという問題が生じてしまう懸念があった。
【0020】
そこで本実施形態では、レンズLを保持する第2鏡筒21と、レンズの中心軸を中心に回転する第1回転部材30と、『第1回転部材30と第2鏡筒21とが連れ回ることなく第1回転部材30が回転する』とともに、『当該回転に伴ってZ軸方向に沿っては第1回転部材30と第2鏡筒21とが一体に移動する』第1状態と、『第1回転部材30と第2鏡筒21とが一体に移動し、かつ第2回転部材40の回転に対して相対的に回転する』第2状態と、をネジ32を締める(あるいは緩める)ことによって切替可能な連結部として機能するネジ32を有している。
かかるネジ32が第1状態と第2状態とを切り替える連結部として機能することにより、バックフォーカス調整と、フローティング調整とを簡易な構造で行うことが可能であるとともに、バックフォーカス調整を行ったレンズL、レンズL’の間隔Z0が調整された状態でフローティング調整を行うことができるので、レンズユニット103の光学性能の向上に寄与する。
【0021】
また本実施形態では、第2回転部材40と第1回転部材30との間の接続部がヘリコイドネジ41で接続されている。かかる構成により、第1回転部材30と第2回転部材40との間で互いに相対的に回転するときにも、バックラッシが少なく第1回転部材30と第2回転部材40との間の回転の位相角に対してZ軸方向への移動量を大きくすることができる。
【0022】
また、本実施形態では、連結部は、第1回転部材30の側面に開いた空隙部31と、空隙部31に挿入されて第2鏡筒21と締結されたネジ32と、第1回転部材30と第2鏡筒21との間で嵌め合う溝部22と、を有し、第1状態と第2状態とは、ネジ32が第1回転部材30を締める強度によって非締結状態と締結状態としてそれぞれ切替可能である。
かかる構成により、1つの機構によって第1状態と第2状態とを切り替えて動作させることで、2つの動作状態のそれぞれで異なる光学設計値の調整を行うことができるから、省スペースかつ高性能な位置調整機能を備えたレンズ鏡筒を提供することができる。
【0023】
本実施形態では、レンズユニット103は、第2回転部材40に取り付けられた操作部42を有する。
かかる構成により、操作部42を回動させることで第2回転部材40をカバー部60の外側から間接的に回転させることができて、省スペースかつ高性能な位置調整を容易に行うことができる。
【0024】
また、本実施形態では、レンズユニット103は非締結状態において第1回転部材30をZ軸の周りで回動させることで、第2鏡筒21と保持部50との間隔を制御する。
かかる構成により、レンズLとレンズL’との間の間隔が調整されて、非締結状態においてレンズユニット103はフローティング調整を行うことができる。
【0025】
また本実施形態では、画像投射装置100は、画像表示素子102と、レンズユニット103と、を有し、締結状態において操作部42をZ軸の周りで回動させることで、第2鏡筒21と保持部50との間隔を調整するとともに画像表示素子102と第2鏡筒21との間の間隔を調整する。かかる構成により、第2状態たる締結状態において、レンズLとレンズL’との距離を調整するとともに、レンズLと画像表示素子102との間の距離を調整するバックフォーカス調整を行うことができる。
【0026】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0027】
20 第1鏡筒(レンズ保持部材)
21 第2鏡筒(レンズ保持部材)
30 第1回転部材
31 (連結部)空隙部
32 (連結部)ネジ
40 第2回転部材
41 ヘリコイドネジ
42 操作部
43 カム溝
50 保持部
51 カムピン
52 ピン
53 第3鏡筒
100 画像投射装置
Z 光軸方向(軸方向)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】特許第4790264号公報
【文献】特許第5570330号公報