(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】軸流ファン装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/52 20060101AFI20230421BHJP
F04D 25/16 20060101ALI20230421BHJP
F04D 29/64 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
F04D29/52 B
F04D29/52 D
F04D25/16
F04D29/64 C
(21)【出願番号】P 2019103292
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】増尾 聡
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0111372(US,A1)
【文献】特開2009-264343(JP,A)
【文献】特開2004-278371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸流ファン及び第2軸流ファンが軸線方向に結合されている軸流ファン装置であって、
前記第1軸流ファンは、複数の羽根を有する第1インペラ及び前記第1インペラを回転させる第1モータを収容する第1ケース、を備え、
前記第1ケースは、
前記第1インペラの外周を囲むように形成されている第1周壁と、
前記第1周壁の底面に設けられていて前記第1モータを支持する第1ベース部と、
前記第1ベース部から前記軸線方向において外側に突出した位置であり軸線に関して対称である位置に2組設けられていて、径方向に段差が形成されている第1係合部と、
を備え、
前記第2軸流ファンは、複数の羽根を有する第2インペラ及び前記第2インペラを回転させる第2モータを収容する第2ケース、を備え、
前記第2ケースは、
前記第2インペラの外周を囲み、外周面の少なくとも一部が軸線を中心とした円弧状に形成されている第2周壁と、
前記第2周壁の底面に設けられていて前記第2モータを支持する第2ベース部と、
前記第2周壁の前記軸線に関して対称である位置に2組設けられていて、
前記第2周壁の外周面であって、径方向に段差が形成されている第2係合部と、
を備え、
前記第1ケースは、
前記第1ベース部の表面から前記軸線方向において外側に突出して設けられた第1係合フランジ部を備え、
前記第1係合フランジ部は、前記第2周壁に沿った前記軸線を中心とした略円弧状に形成されている内周面と、前記内周面から径方向内側に突出して形成された前記第1係合部と、周方向端部に形成された切欠部と、を有し、
前記第2ケースは、
前記第2周壁に設けられた外周面と、前記外周面から径方向外側に突出して形成された前記第2係合部と、周方向において前記第2係合部に連接して設けられた段差部と、前記第1係合フランジ部の端面と接触する接合部と、前記接合部の軸方向端面から周方向に延在する突起部と、を含んだ第2係合フランジ部を備え、
前記突起部は、第2ベース部の表面から前記軸線方向において外側に突出して設けられ、
前記第2係合部は、前記第2周壁の周方向において前記第1係合部と対応する位置に設けられ、
前記第1ケースと前記第2ケースとは、前記第1ケースの端面と前記第2ケースの端面とを接触させて周方向に回動させることで前記第1係合部が前記第2係合部を乗り越えて係合して周方向の位置が固定され、
前記第1係合フランジ部の前記切欠部が前記第2係合フランジ部の前記接合部に接触した状態で、
前記第2係合フランジ部の前記突起部と前記第1係合フランジ部は互いに軸方向で重なる軸流ファン装置。
【請求項2】
前記第1係合フランジ部は、
前記軸線方向に貫通する貫通孔を有
し、前記第1係合フランジ部と前記第2係合フランジ部が互いに軸方向で重なった時、締結材は前記貫通孔のみ、貫通する、
請求項
1に記載の軸流ファン装置。
【請求項3】
前記第1係合部は、前記第1係合フランジ部の前記切欠部に近接配置される、
請求項1に記載の軸流ファン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンピュータやサーバ等の電子機器は、筐体内部の電子部品を冷却するためにファン装置を備えている。このようなファン装置として、例えば、モータを駆動源とする2つの軸流ファンが、軸線方向において一方の軸流ファンの回転方向と他方の軸流ファンの回転方向とが反転して配置されている二重反転式軸流送風機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の二重反転式軸流送風機は、複数のファンを軸線方向に結合して使用するために、第1の軸流ファン(単体軸流送風機)の第1のケースに4つの嵌合溝が形成され、第2の軸流ファン(単体軸流送風機)の第2のケースに4つのフックが形成されている。この二重反転式軸流送風機は、4つのフックを4つの嵌合溝に挿入した状態で第1のケースと第2のケースを相互に回転させることで各フックが嵌合溝に係合し、軸線方向においてフックの抜け止めが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の二重反転式軸流送風機のように、複数の軸流ファンのケースを係合する係合部を備える軸流ファン装置は、使用時においては複数のケースが強固に結合されていることが求められるとともに、分解作業などを考慮して容易に着脱可能であることも求められる。
【0006】
しかしながら、複数の軸流ファンのケースを係合する係合部を備える従来のファン装置において、複数のケースが強固に結合されていることと、分解作業などを考慮して容易に着脱可能であることとを両立することは難しかった。また、上述した二重反転式軸流送風機は、2つのケースを回転して結合する際、2つのケースに生じるトルクの偏心によって、4つのフックのうちのいずれかに力が集中して、フックが折れる虞があった。このように、複数の軸流ファンのケースを係合する係合部を備える従来のファン装置において、係合部が容易に着脱可能であるとともに係合部の破損を抑制することで、係合部の有用性を向上することが求められている。
【0007】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、複数の軸流ファンのケースを係合する係合部の有用性を向上することができる軸流ファン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る軸流ファン装置は、第1軸流ファン及び第2軸流ファンが軸線方向に結合されている軸流ファン装置であって、前記第1軸流ファンは、複数の羽根を有する第1インペラ及び前記第1インペラの中心軸を回転させる第1モータを収容する第1ケース、を備え、前記第1ケースは、前記第1インペラの外周を囲むように形成されている第1周壁と、前記第1周壁の底面に設けられていて前記第1モータを支持する第1ベース部と、前記第1ベース部から前記軸線方向において外側に突出した位置であり軸線に関して対称である位置に2組設けられていて、径方向に段差が形成されている第1係合部と、を備え、前記第2軸流ファンは、複数の羽根を有する第2インペラ及び前記第2インペラの中心軸を回転させる第2モータを収容する第2ケース、を備え、前記第2ケースは、前記第2インペラの外周を囲み、外周面の少なくとも一部が軸線を中心とした円弧状に形成されている第2周壁と、前記第2周壁の底面に設けられていて前記第2モータを支持する第2ベース部と、前記第2周壁の前記軸線に関して対称である位置に2組設けられていて、径方向に段差が形成されている第2係合部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る軸流ファン装置において、前記第2係合部は、前記第2周壁の周方向において前記第1係合部と対応する位置に設けられていて、前記第1ケースと前記第2ケースとは、前記第1ケースの端面と前記第2ケースの端面とを接触させて周方向において回動させることで前記第1係合部が前記第2係合部を乗り越えて係合して周方向の位置が固定される。
【0010】
本発明の一態様に係る軸流ファン装置において、前記第1ケースは、前記第1ベース部の表面から前記軸線方向において外側に突出して設けられていて、内周面が前記第2周壁に沿った前記軸線を中心とした円弧状に形成されている第1係合フランジ部を備え、前記第1係合部は、前記第1係合フランジ部に設けられている。
【0011】
本発明の一態様に係る軸流ファン装置において、前記第1係合フランジ部は、軸線方向に貫通する貫通孔を有する。
【0012】
本発明の一態様に係る軸流ファン装置において、前記第2ケースは、前記第2ベース部の表面から前記軸線方向において外側に突出して設けられている第2係合フランジ部を備える。
【0013】
本発明の一態様に係る軸流ファン装置において、前記第2係合フランジ部は、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合した状態において前記第1係合フランジ部と当接する。
【0014】
本発明の一態様に係る軸流ファン装置において、前記第2係合フランジ部は、前記径方向に延びるように形成されている面を有し前記第1係合フランジ部と接合する接合部と、前記接合部の軸線方向において外側の端部から回動方向とは反対方向に向かって延びるように形成されている突起部と、を有する。
【0015】
本発明の一態様に係る軸流ファン装置において、前記第1係合部は、前記径方向において内側に突出していて、前記第2係合部は、前記径方向において外側に突出している。
【0016】
本発明の一態様に係る軸流ファン装置において、前記第1ベース部及び前記第2ベース部は、複数の固定翼を有し、前記第1ベース部の複数の固定翼と前記第2ベース部の複数の固定翼とは、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合した状態において周方向において互いの位置が対応している。
【0017】
本発明に係る軸流ファン装置によれば、複数の軸流ファンのケースを係合する係合部の有用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る軸流ファン装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示す軸流ファン装置の第1ケースと第2ケースの構成を概略的に示す斜視図であり、第1ケースの吸込口側から見た状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す軸流ファン装置の第1ケースと第2ケースの構成を概略的に示す斜視図であり、第2ケースの吐出口側から見た状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す第1ケースを吐出口側から見た状態を示す平面図である。
【
図6】
図5に示す第1ケースの第1係合フランジ部を示す拡大平面図である。
【
図8】
図7に示す第2ケースを吸込口側から見た状態を示す平面図である。
【
図9】
図8に示す第2ケースの第2係合フランジ部を示す拡大平面図である。
【
図10】
図1に示す軸流ファン装置において、第1ケースの第1係合部と第2ケースの第2係合部とが係合する前の状態を概略的に示す平面図である。
【
図11】
図1に示す軸流ファン装置において、第1ケースの第1係合部と第2ケースの第2係合部とが係合した状態を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る軸流ファン装置1について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る軸流ファン装置1の構成を概略的に示す断面図である。
【0021】
以下の説明では、便宜上、軸線x方向において矢印a方向を上側aとし、矢印b方向を下側bとする。また、軸線xに垂直な径方向において、軸線xから遠ざかる方向(
図1の矢印c方向)を外周側cとし、軸線xに向かう方向(
図1の矢印d方向)を内周側dとする。以下の説明では、軸線xを中心として円を描く方向を周方向とする。以下の説明では、便宜上、
図1に示す方向を軸流ファン装置1の側面とする。また、以下の説明では、便宜上、軸流ファン装置1を上側aから下側bに向かって見る方向を正面、下側bから上側aに向かって見る方向を底面とする。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に係る軸流ファン装置1は、第1軸流ファン10及び第2軸流ファン20が軸線x方向に結合されている。第1軸流ファン10は、複数の羽根112を有する第1インペラ11及び第1インペラ11の中心軸としてのシャフト12を回転させる第1モータ13を収容する第1ケース14を備える。第1ケース14は、第1インペラ11の外周を囲むように形成されている第1周壁141と、第1周壁141の底面に設けられていて第1モータ13を支持する第1ベース部16と、第1ベース部16から軸線x方向において外側に突出した位置であり軸線xに関して対称である位置に2組設けられていて、径方向に段差が形成されている第1係合部152と、を備える。第2軸流ファン20は、複数の羽根212を有する第2インペラ21及び第2インペラ21の中心軸としてのシャフト22を回転させる第2モータ23を収容する第2ケース24、を備える。第2ケース24は、第2インペラ21の外周を囲み、外周面の少なくとも一部が軸線xを中心とした円弧状に形成されている第2周壁241と、第2周壁241の底面に設けられていて第2モータ23を支持する第2ベース部26と、第2周壁241の軸線xに関して対称である位置に2組設けられていて、径方向に段差が形成されている第2係合部252とを備える。以下、軸流ファン装置1の構成及び動作を具体的に説明する。
【0023】
軸流ファン装置1は、
図1において上側aである吸気側に位置する第1軸流ファン10と、下側bである排気側に位置する第2軸流ファン20とが軸線x方向に結合されている。軸流ファン装置1は、複数の軸流ファンである第1軸流ファン10の回転方向と第2軸流ファン20の回転方向とが反転している二重反転式軸流送風機である。軸流ファン装置1は、第1軸流ファン10の第1ベース部16と第2軸流ファン20の第2ベース部26とが背合わせになるように配置されて結合している。
【0024】
[第1軸流ファンの概略構成]
次に、軸流ファン装置1が備える第1軸流ファン10の構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、第1軸流ファン10は、第1インペラ11と、第1モータ13と、第1ケース14と、第1係合フランジ部15と、第1ベース部16と、第1固定翼17とを備える。
【0026】
第1インペラ11は、第1ケース14の内部において軸線xを中心に配置されている。第1インペラ11は、下側bに向かって開放されているカップ状のハブ111と、ハブ111の外周面から周方向に向かって均等に配置されている複数(例えば、5枚)の羽根112を有している。第1インペラ11は、ハブ111と羽根112が樹脂の一体成形にて形成されている。
【0027】
第1モータ13は、例えば、アウターロータ形の3相ブラシレスモータである。第1モータ13は、シャフト12、軸受ホルダ121、軸受122、ステータコア131、及び、ロータ132を備える。ロータ132は、その内周面にロータマグネットが取り付けられ、シャフト12の一端側に結合している。
【0028】
シャフト12は、軸受ホルダ121に装着されている一対の軸受122により回転可能に支持されている。
【0029】
軸受ホルダ121は、第1ベース部16のボス部162に装着されている。軸受ホルダ121は、金属製(例えば、真鍮)の内周部に空間を有している円筒状の部材である、軸受ホルダ121は、樹脂製の第1ベース部16にインサート成形などの適宜な方法により装着されている。軸受ホルダ121の内周部の空間には第1モータ13のシャフト12を回転自在に支持する一対の軸受122が装着されている。
【0030】
ステータコア131は、軸受ホルダ121の外周に装着されている。ステータコア131は、その下側bに例えばドーナッツ形状の回路基板133が取り付けられている。第1インペラ11のハブ111はロータ132の外周面に装着されている。第1モータ13において、ロータ132が回転するのに伴って第1インペラ11も回転する。
【0031】
[第1ケースの構成]
次に、第1軸流ファン10が備える第1ケース14の構成について説明する。
【0032】
図2は、軸流ファン装置1の第1ケース14と第2ケース24の構成を概略的に示す斜視図であり、第1ケース14の吸込口142側から見た状態を示す斜視図である。また、
図3は、
図1に示す軸流ファン装置1の第1ケース14と第2ケース24の構成を概略的に示す斜視図であり、第2ケース24の吐出口側から見た状態を示す斜視図である。また、
図4は、第1ケース14の斜視図である。また、
図5は、第1ケース14を吐出口143側から見た状態を示す平面図である。さらに、
図6は、第1ケース14の第1係合フランジ部15を示す拡大平面図である。
【0033】
図1乃至
図5に示すように、第1ケース14は、第1周壁141と、吸込口142と、吐出口143と、風洞部144とを備える。
【0034】
第1周壁141は、第1インペラ11を外周側cから囲むように円筒状または略円筒状に形成されている。第1周壁141の外周面には、第1周壁141を補強する補強リブ147が軸線x方向及び周方向に形成されている。第1周壁141の内周面には、第1インペラ11を配置するための中空円筒状の風洞部144が形成されている。また、第1ケース14は、回路基板133に接続される配線(不図示)を通すための引出溝1411を備える。
【0035】
吸込口142は、風洞部144の上側aの端部に形成されている。吐出口143は、風洞部144の下側bの端部に形成されている。吸込口142は、風洞部144と外部とを連通する。吐出口143は、風洞部144と後述する第2軸流ファン20の吸込口242とを連通する。吸込口142の周縁は、直線的な形状に限らず、空気が吸い込まれ易いように、例えば曲面により形成されていてもよい。
【0036】
吸込口142の外周側cの縁部には、径方向において外方に向かって延在するフランジ部148が複数、例えば4箇所に形成されている。フランジ部148は、第1軸流ファン10を不図示の筐体に取り付けるための締結部材(例えば、ボルト)を挿通するための貫通孔149が形成されている。吐出口143の端面には、径方向において外方に向かって延在する4箇所の第1係合フランジ部15が形成されている。
【0037】
図4乃至
図6に示すように、第1係合フランジ部15は、内周面151と、第1係合部152と、切欠部153と、貫通孔154とを備える。第1係合フランジ部15は、第1ベース部16の本体部161の表側の面(以下「表面」という。)から軸線x方向外側(
図2及び
図4における下側b)に突出して設けられている。
【0038】
内周面151は、後述する第2ケース24の第2周壁と向かい合うことができるように、この第2周壁の形状に対応して軸線xを中心とした円弧状または略円弧状に形成されている。
【0039】
第1係合部152は、第1ベース部16の本体部161の表面から軸線x方向において外側に突出した位置であり軸線xに関して対称である位置に2組設けられている。第1係合部152は、内周面151において、径方向内側に向かって突出して形成されている段差である。第1係合部152は、例えば、内周面151における周方向における一方の端部に設けられている。内周面151の一方の端部に設けられた第1係合部152は軸線x方向に延在しており、内周面151から径方向内側に向かって、緩やかに傾斜して突出し、突出した頂点から径方向外側に向かって傾斜して切欠部153に連接している。なお、第1係合部152の形状は、径方向内側に向かって突出して形成されていれば、上述した形状には限定されない。
【0040】
切欠部153は、第1係合フランジ部15における周方向の一方の端部、つまり第1係合部152が設けられている側の端部に設けられている。切欠部153は、第1係合フランジ部15の一部が、径方向に延びる略直線状に切り取られたように形成され、平面を形成している。貫通孔154は、第1軸流ファン10を不図示の筐体に取り付けるための締結部材(例えば、ボルト)を挿通するために、軸線x方向に貫通している孔である。
【0041】
第1ベース部16は、第1ケース14の吐出口143側に配置されている。第1ベース部16は、円板状の本体部161と、本体部161の中央(軸線xの中心位置)に形成され軸線x方向に立設する中空円筒状のボス部162と、本体部161の外周縁に形成され軸線x方向に延在する円筒状の外周壁163を有する。また、第1ベース部16は、本体部161の上側a(吸込口142側)の面であってボス部162と外周壁163との間に複数のリブ164が放射状に形成されている。リブ164は、第1ベース部16の強度を向上するために形成されている。
【0042】
第1固定翼17は、吐出口143に面して周方向に均等配置された複数(例えば、6枚)配置されている翼形状の部材である。第1固定翼17は、軸線x方向に対して所定の角度で傾斜している。第1固定翼17は、第1ベース部16の外周壁163と風洞部144の内周面との間を連結している。
【0043】
第1軸流ファン10において、第1ケース14と、第1係合フランジ部15と、第1ベース部16と、第1固定翼17は、樹脂(例えば、PBT樹脂)の一体成形にて形成されている。
【0044】
[第2軸流ファンの概略構成]
次に、軸流ファン装置1が備える第2軸流ファン20の構成について説明する。
【0045】
図1に示すように、第2軸流ファン20は、第2インペラ21と、第2モータ23と、第2ケース24と、第2係合フランジ部25と、第2ベース部26と、第2固定翼27とを備える。
【0046】
第2インペラ21は、第2ケース24の内部において軸線xを中心に配置されている。第2インペラ21は、上側aに向かって開放されているカップ状のハブ211と、ハブ211の外周面から周方向に向かって均等に配置されている複数(例えば、5枚)の羽根212を有している。第2インペラ21は、ハブ211と羽根212が樹脂の一体成形にて形成されている。
【0047】
第2モータ23は、例えば、アウターロータ形の3相ブラシレスモータである。第2モータ23は、シャフト22、軸受ホルダ221、軸受222、ステータコア231、及び、ロータ232を備える。ロータ232は、その内周面にロータマグネットが取り付けられ、シャフト22の一端側に結合している。
【0048】
シャフト22は、軸受ホルダ221に装着されている一対の軸受222により回転可能に支持されている。
【0049】
軸受ホルダ221は、第2ベース部26のボス部262に装着されている。軸受ホルダ221は、金属製(例えば、真鍮)の内周部に空間を有している円筒状の部材である、軸受ホルダ221は、樹脂製の第2ベース部26にインサート成形などの適宜な方法により装着されている。軸受ホルダ221の内周部の空間には第2ベース部26のシャフト22を回転自在に支持する一対の軸受222が装着されている。
【0050】
ステータコア231は、軸受ホルダ221の外周に装着されている。ステータコア231は、その上側aに例えばドーナッツ形状の回路基板233が取り付けられている。第2インペラ21のハブ211はロータ232の外周面に装着されている。第2モータ23において、ロータ232が回転するのに伴って第2インペラ21も回転する。
【0051】
[第2ケースの構成]
次に、第2軸流ファン20が備える第2ケース24の構成について説明する。
【0052】
図7は、第2ケース24の斜視図である。また、
図8は、第2ケース24を吸込口242側から見た状態を示す平面図である。さらに、
図9は、第2ケース24の第2係合フランジ部25を示す拡大平面図である。
【0053】
図1乃至
図3、
図7乃至
図9に示すように、第2ケース24は、第2周壁241と、吸込口242と、吐出口243と、風洞部244とを備える。また、第2ケース24は、回路基板233に接続される配線(不図示)を通すための引出溝2411を備える。
【0054】
第2周壁241は、第2インペラ21を外周側cから囲むように円筒状または略円筒状に形成されている。第2周壁241の外周面には、第2周壁241を補強する補強リブ247が軸線x方向及び周方向に形成されている。第2周壁241の内周面には、第2インペラ21を配置するための中空円筒状の風洞部244が形成されている。
【0055】
吸込口242は、風洞部244の上側aの端部に形成されている。吐出口243は、風洞部244の下側bの端部に形成されている。吸込口242は、第1軸流ファン10の吐出口143と風洞部244とを連通する。吐出口243は、風洞部244と外部とを連通する。吸込口242の周縁は、直線的な形状に限らず、空気が吸い込まれ易いように、例えば曲面により形成されていてもよい。
【0056】
吐出口243の外周側cの縁部には、径方向において外方に向かって延在するフランジ部248が複数、例えば4箇所が形成されている。フランジ部248は、第2軸流ファン20を不図示の筐体に取り付けるための締結部材(例えば、ボルト)を挿通するための貫通孔249が形成されている。吸込口242の端面には、径方向において外方に向かって延在する4箇所の第2係合フランジ部25が形成されている。
【0057】
図7乃至
図9に示すように、第2係合フランジ部25は、外周面251と、第2係合部252と、接合部253と、段差部254と、突起部255とを備える。第2係合フランジ部25は、第2ベース部26の本体部261の表側の面(以下「表面」という。)から軸線x方向外側(
図2及び
図7における上側a)に突出して設けられている。
【0058】
外周面251は、第2インペラ21の外周を囲む第2周壁241の上側aの端部に設けられている。外周面251は、第1ケース14の第1係合フランジ部15の内周面151と向かい合うことができるように、内周面151の形状に対応して少なくとも一部が軸線xを中心とした円弧状または略円弧状に形成されている。
【0059】
第2係合部252は、第2周壁241の軸線xに関して対称である位置に2組設けられている。第2係合部252は、外周面251において、径方向外側に向かって突出するように形成されている段差である。第2係合部252は、第2周壁241の外周面251の周方向において第1係合部152と対応する位置に設けられている。外周面251に設けられた第2係合部252は軸線x方向に延在している。第2係合部252は、外周面251から径方向外側に向かって緩やかに傾斜して突出して頂点に至り、頂点から径方向内側に向かって傾斜して段差部254に連接している。そして、段差部254は接合部253に連接している。なお、第2係合部252の形状は、径方向外側に向かって突出して形成されていれば、上述した形状には限定されない。
【0060】
接合部253は、第2係合フランジ部25における周方向の一方の端部に設けられている。接合部253は、第1係合フランジ部15の切欠部153と同じく第2係合フランジ部25の一部が、径方向に延びる略直線状に切り取られたように形成されて平面を形成しており、第1ケース14と第2ケース24が回転摺動して結合した際、接合部253は、第1係合フランジ部15の切欠部153と対向する。
【0061】
段差部254は、外周面251において第2係合部252と接合部253との間に設けられている。
【0062】
突起部255は、接合部253の軸線x方向外側(
図7における上側a)の端部から回動方向Rとは反対方向に向かって延びるように形成され、接合部253に対してオーバーハングしている。
【0063】
第2ベース部26は、第2ケース24の吸込口242側に配置されている。第2ケース24は、円板状の本体部261と、本体部261の中央(軸線xの中心位置)に形成され軸線x方向に立設する中空円筒状のボス部262と、本体部261の外周縁に形成され軸線x方向に延在する円筒状の外周壁263を有する。また、第2ベース部26は、本体部261の下側b(吐出口243側)の面であってボス部262と外周壁263との間に複数のリブ264が放射状に形成されている。リブ264は、第2ベース部26の強度を向上するために形成されている。
【0064】
第2固定翼27は、吸込口242に面して周方向に均等配置された複数(例えば、6枚)配置されている翼形状の部材である。第2固定翼27は、軸線x方向に対して所定の角度で傾斜している。第2固定翼27は、第2ベース部26の外周壁と風洞部244の内周面との間を連結している。
【0065】
第2軸流ファン20において、第2ケース24と、第2係合フランジ部25と、第2ベース部26と、第2固定翼27は、樹脂(例えば、PBT樹脂)の一体成形にて形成されている。
【0066】
以上のように構成されている軸流ファン装置1は、第1軸流ファン10の吸込口142から風洞部144に気体(例えば、空気)を吸い込む。風洞部144に吸い込まれた気体は、第1軸流ファン10の風洞部144の内部を流れて第1軸流ファン10の吐出口143から第2軸流ファン20の吸込口242に流入する。第2軸流ファン20の吸込口242から風洞部244に流入した空気は、第2軸流ファン20の風洞部244の内部を流れて第2軸流ファン20の吐出口243から外部に吐き出される。
【0067】
[第1軸流ファン10と第2軸流ファン20との結合動作]
次に、以上説明した構成を備える軸流ファン装置1における、第1軸流ファン10と第2軸流ファン20との結合動作について説明する。
【0068】
図10は、軸流ファン装置1において、第1ケース14の第1係合部152と第2ケース24の第2係合部252とが係合する前の状態を概略的に示す平面図である。また、
図11は、軸流ファン装置1において、第1ケース14の第1係合部152と第2ケース24の第2係合部252とが係合した状態を概略的に示す平面図である。
【0069】
図2及び
図3に示すように、軸流ファン装置1において、第1軸流ファン10と第2軸流ファン20とを結合する際には、第1軸流ファン10の第1ケース14の吐出口143の端面と、第2軸流ファン20の第2ケース24の吸込口242の端面とが向かい合うようにする。つまり、第1軸流ファン10と第2軸流ファン20とを結合する際には、第1軸流ファン10の第1ベース部16の本体部161と第2軸流ファン20の第2ベース部26の本体部261とが背合わせになるように組み合わせられる。
【0070】
図10に示すように、第1軸流ファン10の吐出口143の端面と、第2軸流ファン20の吸込口242の端面とを接触させた後、これらの端面同士を所定の回動方向Rに回転摺動させる。第1ケース14の第1係合部152と第2ケース24の第2係合部252は、ともに軸線xに関して対称な位置に2組設けられていて、互いの周方向における位置が対応している。このため、第1ケース14と第2ケース24の端面同士を回転摺動させると、第2軸流ファン20の第2ケース24の吸込口242側に設けられている第2係合フランジ部25の外周面251は、第1軸流ファン10の第1ケース14の吐出口143側に設けられている第1係合フランジ部15の内周面151にガイドされる。
【0071】
同様に、
図4及び
図5に示す第1軸流ファン10の第1ケース14の吐出口143側の第1周壁141の外周面156は、
図7及び
図8に示す第2軸流ファン20の第2ケース24の吸込口242側の第2係合フランジ部25の内周面256にガイドされる。
【0072】
図11に示すように、第1ケース14と第2ケース24の端面同士の回転摺動を継続すると、第1軸流ファン10の第1ケース14の吐出口143側に形成されている第1係合フランジ部15の内周面151に形成されている第1係合部152が、第2軸流ファン20の第2ケース24の吸込口242側の外周面251に形成されている第2係合部252を乗り越え、段差部254に嵌る。段差部254に嵌ることで、第1係合フランジ部15と第2係合フランジ部25とは、第1ケース14と第2ケース24との周方向における回動方向Rへの回転止めとして係合する。
【0073】
第1ケース14の第1係合部152が第2ケースの第2係合部252を乗り越えて段差部254に嵌って係合したとき、段差部254側に位置する第2係合部252の面の傾斜は、外周面251に位置する第2係合部252の面の傾斜よりも傾きが大きくなっている。このため、軸流ファン装置1によれば、第2係合部252を乗り越え、段差部254に嵌った第1係合部152が、何らかの外力により回動方向Rと反対方向に回動しても容易に第2係合部252を乗り越えて第1ケース14と第2ケース24との係合が解かれてしまうことを防ぐことができる。
【0074】
第1軸流ファン10の第1ケース14の吐出口143側の第1係合フランジ部15の切欠部153には、第2軸流ファン20の吸込口242側の第2係合フランジ部25の接合部253が接触する。切欠部153に接合部253が接触することで、第1ケース14と第2ケース24との回転が規制され、回転摺動が停止する。この状態において、貫通孔154は、第1軸流ファン10の第1係合フランジ部15にのみ形成されているため、貫通孔154の位置が第1ケース14と第2ケース24との間でずれてしまうことがない。また、この状態において、第2軸流ファン20の吸込口242側の第2係合フランジ部25の突起部255は、その一部が第1軸流ファン10の吐出口143側の第1係合フランジ部15の軸線x方向に向かい合う平面部155の一部分と軸線x方向で重なって当接していることで、軸線x方向の抜け止めとして機能する。
【0075】
以上説明したように、軸流ファン装置1では、第2軸流ファン20の吸込口242側の第2係合フランジ部25の一部である第2係合部252が、第1軸流ファン10の吐出口143側の第1係合フランジ部15の一部分である第1係合部152と互いに回転摺動した後に係合される。このように構成されているため、軸流ファン装置1によれば、第1ケース14と第2ケース24との偏心によって第1係合フランジ部15及び第2係合フランジ部25に過度な力が加わって破損することを抑制することができる。
【0076】
また、以上説明したように、軸流ファン装置1では、第1軸流ファン10と第2軸流ファン20の結合状態を解除する場合、第1ケース14の第1係合部152が第2ケースの第2係合部252を乗り越えることができる外力を回動方向Rと反対方向に加えて回転摺動することによって、第1係合部152及び第2係合部252の係合を外すことができる。このため、軸流ファン装置1によれば、第1軸流ファン10と第2軸流ファン20の結合状態を容易に解除することができる。このように、軸流ファン装置1によれば、第1軸流ファン10と第2軸流ファン20の着脱を容易にできる。
【0077】
また、軸流ファン装置1は、第1係合部152を有する第1係合フランジ部15と、第2係合部252を有する第2係合フランジ部25は、それぞれ第1ケース14と第2ケース24と一体成型されている。このため、軸流ファン装置1によれば、第1ケース14と第2ケース24とを係合させるための係合部を構成する部品点数を削減するとともに、係合部の破損を抑制することができる。
【0078】
さらに、以上説明したように、第1軸流ファン10の第1固定翼17と第2軸流ファン20の第2固定翼27は、周方向において同じ位置に配置され、第1軸流ファン10から吐き出された空気流れが第2軸流ファン20の固定翼によって空気流れが乱されないよう、所定の位置、傾きで配置されている。このため、軸流ファン装置1によれば、複数の軸流ファンを軸線x方向に結合して構成されているファン装置において効率的なファン出力を得ることができる。
【0079】
従って、以上説明した軸流ファン装置1によれば、第1係合部152及び第2係合部252が容易に着脱可能であるとともに第1係合部152及び第2係合部252の破損を抑制することで、第1係合部152及び第2係合部252の有用性を向上することができる。なお、本発明の実施の形態では、第1軸流ファン10の羽根112と第2軸流ファン20の羽根212は同じ枚数で構成しているが、これに限定されるものではなく、羽根112と羽根212の枚数は異なっていてもよい。また、本発明の実施の形態では、第1ケース14の端面と、第2ケース24の端面とを接触させた後、これらの端面同士を周方向に回動させているが、これに限定されるものではない。例えば、第1ケース14の端面と第1ベース部16の表面、及び、第2ケース24の端面と第2ベース部26の表面が同一の面となる場合に、第1ケース14の端面及び第2ケース24の表面、及び、第2ケース24の端面及び第2ベース部26の表面の両方の面が摺動面になる。そして、このような場合には、第1ケース14の端面と第1ベース部16の表面、及び、第2ケース24の端面と第2ベース部26の表面の両方の面が接触して回転摺動させてもよい。
【0080】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の構成を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
1…軸流ファン装置、10…第1軸流ファン、11…第1インペラ、12…シャフト、13…第1モータ、14…第1ケース、15…第1係合フランジ部、16…第1ベース部、17…第1固定翼、20…第2軸流ファン、21…第2インペラ、22…シャフト、23…第2モータ、24…第2ケース、25…第2係合フランジ部、26…第2ベース部、27…第2固定翼、111…ハブ、112…羽根、121…軸受ホルダ、122…軸受、131…ステータコア、132…ロータ、133…回路基板、141…第1周壁、142…吸込口、143…吐出口、144…風洞部、147…補強リブ、148…フランジ部、149…貫通孔、151…内周面、152…第1係合部、153…切欠部、154…貫通孔、155…平面部、156…外周面、161…本体部、162…ボス部、163…外周壁、164…リブ、211…ハブ、212…羽根、221…軸受ホルダ、222…軸受、231…ステータコア、232…ロータ、233…回路基板、241…第2周壁、242…吸込口、243…吐出口、244…風洞部、247…補強リブ、248…フランジ部、249…貫通孔、251…外周面、252…第2係合部、253…接合部、254…段差部、255…突起部、256…内周面、261…本体部、262…ボス部、263…外周壁、264…リブ、1411…引出溝、1412…支持片、2411…引出溝