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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】石突及び釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
A01K87/00 640C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019176606
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021052603
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 一真
(72)【発明者】
【氏名】谷川 尚太郎
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-058395(JP,A)
【文献】特開2000-279061(JP,A)
【文献】特開2004-159544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0251596(US,A1)
【文献】特開2002-159248(JP,A)
【文献】特開2009-240283(JP,A)
【文献】実開昭62-141325(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00 - 87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材を有する竿保持具によって保持可能とされた釣竿本体の後端部に連結される石突本体と、
前記石突本体に取り付けられた保護部材と、を備え、
前記石突本体には、前記石突本体の後端部側を上下に分断するように、前記石突本体の後端面から前記釣竿本体に向かう前方に向けて窪むと共に、前記支持部材を内部に係合可能に収容する係合凹部が形成され、
前記保護部材は、少なくとも前記石突本体の前記後端面に取り付けられ
さらに前記保護部材は、前記石突本体の前記後端面から側面に亘って連続的に延びるように形成され、前記後端面及び前記側面を連続して覆うように取り付けられていることを特徴とする石突。
【請求項2】
請求項1に記載の石突において、
前記石突本体のうち、前記係合凹部よりも上方に位置する部分が上側フランジとされると共に、前記係合凹部よりも下方に位置する部分が下側フランジとされ、
前記保護部材は、前記上側フランジ及び前記下側フランジのうち、少なくとも一方のフランジの後端面に取り付けられている、石突。
【請求項3】
請求項2に記載の石突において、
前記保護部材は、前記少なくとも一方のフランジの後端面の全面を覆うように取り付けられている、石突。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の石突において、
前記保護部材は、弾性変形可能な弾性材料で形成されている、石突。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の石突において、
前記保護部材は、前記石突本体よりも硬度を有する材料で形成されている、石突。
【請求項6】
支持部材を有する竿保持具によって保持可能とされた釣竿本体の後端部に連結される石突本体と、
前記石突本体に取り付けられた保護部材と、を備え、
前記石突本体には、前記石突本体の後端部側を上下に分断するように、前記石突本体の後端面から前記釣竿本体に向かう前方に向けて窪むと共に、前記支持部材を内部に係合可能に収容する係合凹部が形成され、
前記保護部材は、少なくとも前記石突本体の前記後端面に取り付けられ、
さらに前記保護部材は、前記石突本体よりも硬度を有する材料で形成されていることを特徴とする石突。
【請求項7】
釣竿本体と、
前記釣竿本体の後端部に連結される請求項1から6のいずれか1項に記載の石突と、を備えることを特徴とする釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石突及び釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
磯釣りにおいて、例えば石鯛等の大型魚を対象魚とする場合、大型魚の大きな泳力等に対応するために、一般的に専用設計された釣竿が使用される。
例えば石鯛釣りに用いられる釣竿は、下記特許文献1に示されるように、釣竿本体の後端部に固定された石突を具備しており、石突を利用して磯場に固定された、いわゆるモーメント釣合いタイプの竿保持具に保持される。
【0003】
石突は、上面側に上方に向けて開口した係合溝が形成された石突本体を備えている。係合溝は、いわゆるピトン掛けと称される溝部であり、竿保持具における後方支持部を上方から嵌め込むように係合させることが可能とされている。
【0004】
上述の石突を具備する釣竿は、釣竿本体が竿保持具における前方支持部によって下方から支持され、且つ石突の係合溝内に竿保持具における後方支持部が上方から係合した状態で、竿保持具にセットされる。これにより、前方支持部と釣竿本体との接触部分が支点となり、後方支持部と係合溝との係合部分が力点となる。その結果、支点を中心として発生する釣竿の自重等に基づくモーメントと、力点に作用する反力に基づいて発生する反モーメントとが釣り合うことで、釣竿が略水平状態で竿保持具に保持される。
【0005】
このような釣竿の場合、魚信(魚の当たり)があると、竿先が海面側に引き込まれるので、石突が上方に持ち上げられ、竿保持具の後方支持部と係合溝との係合が強まる。そのため、竿保持具から釣竿を取り外す際、例えば石突を上方に持ち上げる方向に作用する力に反して石突を下方に向けて押してしまった場合には、対象魚に違和感を与えてしまい逃げられてしまったり、大きな魚信(魚の引きがあった)の場合には、速やかに取り外して、手持ちに移行することが難しい場合があったりする等、改善の余地があった。
【0006】
そこで、石突本体の後端面から前方に向けて延びるように形成された係合凹部を有する石突が知られている。係合凹部は、竿保持具の後方支持部を後方側から挿入可能とさせる収容凹部であって、石突本体の幅方向の全長に亘って形成されていると共に、収容した後方支持部を係合させることが可能とされている。
【0007】
このような石突を具備する釣竿において、魚信があった場合には、釣竿のうち石突側を僅かに押下げて後方支持部と係合凹部との係合を解除した後、釣竿を前方に向けて移動させることで、係合凹部から後方支持部を離脱させることができる。
これにより、竿保持具から釣竿を速やかに、且つ対象魚に違和感を与えることなく、取り外すことが可能となり、手持ちへのスムーズな移行に繋げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-159544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、係合凹部が形成された石突の場合には、石突本体の後端部側の肉厚が、係合凹部の形成分だけ薄くなってしまう。具体的には、石突本体の後端部は、係合凹部によって上下に分断された二股形状となってしまう。そのため、石突本体における後端部のうち、係合凹部よりも上方に位置する上側部分、及び収容溝よりも下方に位置する下側部分は、それぞれ厚みが薄い薄肉部分となってしまう。
従って、石突本体の後端部側の剛性が低下してしまい、例えば落下等による衝撃や、意図しない外力等によって、割れや変形等の不都合が生じ易かった。特に、石突はプライウッド等の木製である場合が多く、繊維目(木目)に沿うような裂け、割れ等が生じ易い。そのため、上述した不都合が生じ易かった。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、竿保持具からのスムーズな釣竿本体の取り外しを可能にすることができると共に、割れ等の不都合が生じ難い石突、及び釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る石突は、支持部材を有する竿保持具によって保持可能とされた釣竿本体の後端部に連結される石突本体と、前記石突本体に取り付けられた保護部材と、を備え、前記石突本体には、前記石突本体の後端部側を上下に分断するように、前記石突本体の後端面から前記釣竿本体に向かう前方に向けて窪むと共に、前記支持部材を内部に係合可能に収容する係合凹部が形成され、前記保護部材は、少なくとも前記石突本体の前記後端面に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る石突によれば、係合凹部内に竿保持具の支持部材を係合させた状態で収容できるので、竿保持具を利用して石突が連結された釣竿本体の保持を行うことができる。また、魚信があった場合には、釣竿本体の後端部側を押下げて係合凹部と支持部材との係合を解除した後、続けて釣竿本体を前方に向けて移動させることで、竿保持具からの釣竿本体の取り外しをスムーズに行うことができる。従って、手持ちへの速やかな移行に繋げることができる。
【0013】
特に、石突本体の後端面には保護部材が取り付けられているので、係合凹部によって上下に分断されることで薄肉となった後端部側を保護することができる。従って、例えば落下等による衝撃や意図しない外力を保護部材で緩和することができ、これら衝撃等が石突本体に直接的に伝わることを抑制することができる。
従って、石突本体に割れや変形等の不都合が生じることを抑制することができ、長期に亘って品質が安定に維持された石突とすることができる。
【0014】
(2)前記石突本体のうち、前記係合凹部よりも上方に位置する部分が上側フランジとされると共に、前記係合凹部よりも下方に位置する部分が下側フランジとされ、前記保護部材は、前記上側フランジ及び前記下側フランジのうち、少なくとも一方のフランジの後端面に取り付けられても良い。
【0015】
この場合には、保護部材を利用して、上側フランジ及び下側フランジのうちの少なくとも一方のフランジに対して衝撃等が直接的に伝わることを抑制することができる。そのため、これら上側フランジ及び下側フランジに割れや変形等が生じることを効果的に抑制することができる。
【0016】
(3)前記保護部材は、前記少なくとも一方のフランジの後端面の全面を覆うように取り付けられても良い。
【0017】
この場合には、保護部材が、上側フランジ及び下側フランジのうちの少なくとも一方のフランジの後端面を全面に亘って覆っているので、これら上側フランジ及び下側フランジに割れや変形等が生じることをより一層効果的に抑制することができる。
【0018】
(4)前記保護部材は、前記石突本体の前記後端面から側面に亘って連続的に延びるように形成され、前記後端面及び前記側面を連続して覆うように取り付けられても良い。
【0019】
この場合には、保護部材が石突本体の後端面から側面を連続して覆っているので、石突本体に対する側方からの衝撃や外力等についても緩和でき、石突本体を広範囲に保護することができる。従って、石突本体に割れや変形等が生じることをさらに生じ難くすることができる。
特に、木製の石突の場合には、繊維目(木目)に沿って割れ等が生じ易いが、保護部材で石突本体の側面まで覆うことで、繊維目に沿うような割れ等を効果的に抑制することができる。従って、プライウッド等の木製の石突に特に有効である。
【0020】
(5)前記保護部材は、弾性変形可能な弾性材料で形成されても良い。
【0021】
この場合には、保護部材を例えばゴムシートや合成樹脂製の衝撃吸収シート等とすることができるので、落下等による衝撃や外力等を吸収することができ、石突本体に直接的に伝わることを抑制することができる。
【0022】
(6)前記保護部材は、前記石突本体よりも硬度を有する材料で形成されても良い。
【0023】
この場合には、保護部材を例えば金属製或いはセラミックス製の保護シート等とすることができるので、落下等による衝撃や外力等をより効果的に緩和することができ、石突本体に直接的に伝わることを抑制することができる。
【0024】
(7)本発明に係る釣竿は、釣竿本体と、前記釣竿本体の後端部に連結される前記石突と、を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る釣竿によれば、上述した石突を具備しているので、魚信があった場合に速やかに手持ちに移行することができるうえ、例えば磯場等での落下による衝撃に対する耐性が強い釣竿とすることができる。特に、石鯛釣り等の磯釣りに適した釣竿とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、竿保持具からのスムーズな釣竿本体の取り外しを可能にすることができると共に、割れ等の不都合が生じ難い石突及び釣竿とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態を示す図であって、石突を具備する釣竿が竿保持具を介いて磯場に保持されている状態を示す図である。
図2図1に示す竿保持具の斜視図である。
図3図1に示す石突の斜視図であって、係合凹部内に竿保持具の石突掛け部が係合している状態における斜視図である。
図4図3に示す石突を左右方向から見た側面図である。
図5図3に示す石突の上面図である。
図6図3に示す石突の下面図である。
図7図3に示す石突を後方から見た背面図である。
図8図1に示す石突の斜視図であって、係合溝内に竿保持具の石突掛け部が係合している状態における斜視図である。
図9】本発明の第2実施形態を示す石突の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、釣竿として、石鯛釣り等に用いられる磯釣り竿を例に挙げて説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の釣竿1は、竿軸線Oに沿って延びる釣竿本体2と、釣竿本体2に連結された石突3と、を備え、竿保持具4によって磯場Rに保持可能とされている。
【0030】
(釣竿本体)
釣竿本体2は、例えば竿軸線Oに沿って配置された複数の竿体が継ぎ合わされた、いわゆる並継式とされている。ただし、複数の竿体の継形式は、並継式に限定されるものではなく、振出形式等、公知の継式であっても構わない。さらには、釣竿本体2は、複数の竿体で構成される場合に限定されるものではなく、例えば継ぎ目のない、いわゆるワンピースロッドタイプであっても構わない。
【0031】
釣竿本体2には、例えば両軸受リール等の魚釣用リール10が装着されている。なお、図1では、魚釣用リール10を簡略化して図示している。魚釣用リール10から繰り出された釣糸11の先端には、魚種に対応した図示しない仕掛けがセットされている。
【0032】
なお本実施形態では、釣竿本体2の無負荷状態(すなわち湾曲せずに真直している状態)において、竿軸線Oに沿う方向を前後方向L1と定義する。また、前後方向L1において、魚釣用リール10から釣糸11が繰り出される方向を前方といい、その反対方向を後方という。
さらに竿軸線O方向から見て、竿軸線Oに交差する方向を径方向といい、径方向のうち竿軸線Oから魚釣用リール10に向かう方向を上方、その反対方向を下方という。さらに、前後方向L1及び上下方向L2の2方向に対して略直交するように交差する方向を左右方向L3という。
【0033】
釣竿本体2を構成する複数の竿体のうち、釣竿本体2の前端部側(竿先側)に位置する竿体は、いわゆる穂先竿12とされ、釣竿本体2の後端部側(尻手側)に位置する竿体は、元竿13とされている。また、釣竿本体2には、釣糸11をガイドする釣糸ガイド14が前後方向L1に間隔をあけて複数設けられている。
元竿13には、リールシート15が設けられている。なお、図1ではリールシート15を簡略化して図示している。上述した魚釣用リール10は、リールシート15を利用して釣竿本体2に確実に組み合わされている。
【0034】
石突3は、釣竿本体2の後端部、すなわち元竿13の後端部に連結されることで、釣竿本体2に対して一体的に組み合わされている。石突3については、後に詳細に説明する。
【0035】
(竿保持具)
竿保持具4について、簡単に説明する。
図1及び図2に示すように、竿保持具4は、いわゆるモーメント釣合タイプのロッドホルダとされ、前後方向L1に延びる板状に形成された保持具本体20、前方支持部21、後方支持部22及びピトン部23を主に備えている。なお、図1では竿保持具4を簡略化して図示している。
【0036】
前方支持部21は、保持具本体20の前端部に角度調整可能に連結された支持部本体21aと、支持部本体21aに連結された前方受け部21bと、を備えている。支持部本体21aは、保持具本体20の前端部から前方上向きに延びるように連結されている。前方受け部21bは、上方に向けて開口したU字状に形成され、支持部本体21aの上端部に連結されている。
後方支持部22は、保持具本体20の後端部に角度調整可能に連結された支持部本体22aと、支持部本体22aに連結された石突掛け部(本発明に係る支持部材)22bと、を備えている。支持部本体22aは、保持具本体20の後端部から後方上向きに延びるように連結されている。石突掛け部22bは、四角形状のリング状に形成され、支持部本体22aの上端部に連結されている。
【0037】
ピトン部23は、保持具本体20に連結されたピトン筒25内に取り外し可能に装着されている。ピトン部23は、下端部が先鋭化されており、例えば磯場Rに対して打ち込んで固定することが可能とされている。これにより、図1に示すように、磯場Rの所望する位置(実釣ポイント)に竿保持具4を打ち込み固定することが可能とされている。
【0038】
(石突)
石突3について詳細に説明する。
図3に示すように、石突3は、釣竿本体2の後端部、すなわち元竿13の後端部に連結される石突本体30と、石突本体30に取り付けられた保護部材50と、を備えている。
【0039】
(石突本体)
図3図7に示すように、石突本体30は、前後方向L1に沿って一定の長さを有する中実の円柱状に形成され、元竿13の後端部よりも後方に配置される。そのため、石突本体30のうち前方を向いた前端面31は、元竿13における後端面に対して前後方向L1に向かい合う対向面とされている。石突本体30の後端面32は、前端面31に対して前後方向L1の反対側に位置すると共に、後方を向いた面とされている。
【0040】
石突本体30の前端面31には、前方に向けてさらに延びる連結軸33が形成されている。連結軸33は、いわゆる「込み」と称する部分であり、中実の円柱状に形成され、竿軸線Oと同軸に配置されている。連結軸33は、元竿13の後端部に開口するように該元竿13に形成された図示しない連結孔内に後方から嵌め込み可能とされている。
【0041】
連結孔内に連結軸33を嵌め込んで固定することで、図3に示すように、釣竿本体2に対して石突3を連結することが可能とされている。これにより、石突本体30を元竿13よりも後方に配置した状態で、釣竿本体2と石突3とを一体的に組み合わせることが可能となる。
ただし、釣竿本体2と石突3との連結方法は、この場合に限定されるものではなく、例えば連結孔と連結軸33とをねじ結合によって連結しても構わない。この場合には、連結孔の内周面に雌ねじ部を形成すると共に、連結軸33の外周面に雄ねじ部を形成すれば良い。いずれにしても、釣竿本体2と石突3とを連結できれば良く、ねじ結合以外の公知の方法を採用しても構わない。
さらに本実施形態では、連結軸33と石突本体30とを一体に形成したが、連結軸33を石突本体30とは別体に形成して、石突本体30に組み合わせても構わない。
【0042】
図3図7に示すように、石突本体30は、例えば元竿13の竿径よりも大きい直径で形成されている。石突本体30のうち、前後方向L1の中央に位置する中央部分よりも前方側に位置する前端部側には、前方に向かうに従って縮径した縮径部34が形成されている。
この縮径部34によって、図3に示すように、釣竿本体2に対して石突3を組み合わせた際に、元竿13と石突本体30とを、その境界部分に段差を生じさせることなく滑らかな外形ラインで繋ぎ合わせることが可能とされている。ただし、縮径部34は必至なものではなく、具備しなくても構わない。
【0043】
さらに石突本体30には、上方を向いた上側フラット面35及び下方を向いた下側フラット面36が形成されている。
図5及び図7に示すように、上側フラット面35は、石突本体30のうち縮径部34の後方に位置する部分から、中央部分よりも後方に位置する後端部側に亘って形成され、後端面32に連設されている。図示の例では、上側フラット面35は、左右方向L3に沿った横幅が後方に向かうにしたがって漸次幅広となるように形成されている。なお、上側フラット面35と後端面32との連設部分は、所定の曲率で丸みを帯びるように形成された上側湾曲面37とされている。
【0044】
図6及び図7に示すように、下側フラット面36は、上側フラット面35と同様に、石突本体30のうち縮径部34の後方に位置する部分から後端部側に亘って形成され、後端面32に連設されている。図示の例では、下側フラット面36は、左右方向L3に沿った横幅が後方に向かうにしたがって漸次幅広となるように形成されている。なお、下側フラット面36と後端面32との連設部分は、所定の曲率で丸みを帯びるように形成された下側湾曲面38とされている。
【0045】
図4及び図5に示すように、上側フラット面35には、左右方向L3に沿って延びる横長状の係合溝39が上方に向けて開口するように形成されている。具体的には、係合溝39は、前後方向L1よりも左右方向L3に長い平面視長方形状に形成されていると共に、左右方向L3にも開口している。
この係合溝39は、いわゆるピトン掛けと称される溝部であり、図8に示すように、竿保持具4における石突掛け部22bを上方から嵌め込むように係合させることが可能とされている。なお、図示の例では、係合溝39は、石突本体30における中央部分に位置するように形成されている。
【0046】
さらに石突本体30には、図3及び図4に示すように、後端部側を上下方向L2に分断するように後端面32から前方に向けて窪むと共に、竿保持具4の石突掛け部22bを内部に係合可能に収容する係合凹部40が形成されている。
係合凹部40は、後端面32から石突本体30の中央部分に達する程度の長さ(奥行)で前方に向けて窪むように形成されていると共に、石突本体30を左右方向L3に貫通するように形成されている。
【0047】
石突本体30は、上記係合凹部40によって後端部側が上下方向L2に二股状に分かれるように形成されている。そのため石突本体30の後端部は、係合凹部40よりも上方に位置する上側フランジ41と、係合凹部40よりも下方に位置する下側フランジ42とに分かれている。
従って、上側フランジ41及び下側フランジ42における上下方向L2の厚みは、例えば石突本体30における縮径部34や中央部分に比べて薄肉とされている。
なお、上側フランジ41の後端面41a、及び下側フランジ42の後端面42aは、それぞれ石突本体30としての後端面32として機能する。
【0048】
上記係合凹部40について詳細に説明する。
図4に示すように、係合凹部40は、第1傾斜壁面40a、第1湾曲壁面40b、突当り壁面40c、第2湾曲壁面40d、第2傾斜壁面40e及び第3傾斜壁面40fを備え、これら各壁面が段差なく連設されることで画成されている。
【0049】
第1傾斜壁面40aは、上側フランジ41の後端面41aに連設されると共に、該後端面41aから前方に向かうにしたがって下方に延びるように形成されている。第1湾曲壁面40bは、第1傾斜壁面40aの前端縁から下方に向けて所定の曲率で湾曲するように形成されている。突当り壁面40cは、第1湾曲壁面40bの下端縁から下方に向けて延びるように形成され、後方を向いた平坦面とされている。第2湾曲壁面40dは、突当り壁面40cの下端縁から前方に向けて所定の曲率で湾曲するように形成されている。第2傾斜壁面40eは、第2湾曲壁面40dの前端縁から後方に向かうにしたがって上方に延びるように形成されている。第3傾斜壁面40fは、第2傾斜壁面40eの上端縁から前方に向かうにしたがって下方に延びるように形成されている。
【0050】
なお、上述した各壁面のうち、主に第1傾斜壁面40a及び第1湾曲壁面40bは、上側フランジ41の下面を構成する壁面としても機能する。また、上述した各壁面のうち、主に第2湾曲面、第2傾斜壁面40e及び第3傾斜壁面40fは、下側フランジ42の上面を構成する壁面としても機能する。
【0051】
特に、下側フランジ42には、第2傾斜壁面40e及び第3傾斜壁面40fによって上方に向けて凸となる突起部45が形成されている。突起部45は、左右方向L3から見た側面視で三角形状に形成され、第2湾曲壁面40dよりも後方側に位置している。
【0052】
上述のように係合凹部40が形成されているので、図3に示すように、石突掛け部22bを突起部45に係合させた状態で、第2湾曲壁面40dを利用して石突掛け部22bを収容することが可能とされている。これにより、先に述べたように、石突掛け部22bを係合凹部40内に係合可能に収容することが可能とされている。
また、第1傾斜壁面40aと第3傾斜壁面40fとによって、係合凹部40は上下方向L2の開口幅が後端面32側で最も広く、前方に向けて狭くなるように形成されている。そのため、係合凹部40に対する石突掛け部22bの着脱を行い易い設計とされている。
【0053】
以上のように構成された石突本体30(連結軸33を含む)は、プライウッド等の木材により形成されている。ただし、石突本体30は、木製に限定されるものではなく、例えば金属製、合樹樹脂製或いはセラミックス製等であっても構わない。
【0054】
(保護部材)
図3図7に示すように、保護部材50は、石突本体30の後端面32に取り付けられている。具体的には、保護部材50は、上側フランジ41の後端面41aに取り付けられた上側保護部材51と、下側フランジ42の後端面42aに取り付けられた下側保護部材52と、を備えている。
【0055】
上側保護部材51は、上側フランジ41の後端面41aの全面を覆うように取り付けられている。同様に下側保護部材52は、下側フランジ42の後端面42aの全面を覆うように取り付けられている。これら上側保護部材51及び下側保護部材52の取付け方法は、特に限定されるものではないが、例えば接着、溶着、融着等による固定や、ねじ結合或いは嵌合等による固定を採用しても構わない。
【0056】
また、上側保護部材51及び下側保護部材52の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば弾性変形可能な弾性材料で形成されている。
具体的には、上側保護部材51及び下側保護部材52は、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、ソルボセイン等のゴム材料によって形成され、所定の厚みを有するゴムシートとされている。
【0057】
(石突を有する釣竿の作用)
次に、上述のように構成された釣竿1を使用する場合について説明する。
この釣竿1によれば、石突3を具備しているので、竿保持具4を利用して釣竿本体2の保持を行うことができる。
【0058】
具体的には、竿保持具4の石突掛け部22bに対して釣竿本体2を前方側から接近させ、係合凹部40内に石突掛け部22bを挿入させる。そして、突当り壁面40cに石突掛け部22bが接触するまで、係合凹部40内に石突掛け部22bを挿入した後、図1に示すように、元竿13を竿保持具4における前方受け部21b上に載置する。
これにより、前方受け部21bを利用して元竿13を下方から支持しながら、図3に示すように、石突掛け部22bを突起部45に係合させた状態で係合凹部40内に収容することができる。この際、石突掛け部22bに対して係合凹部40の第2湾曲壁面40dが下方から接触する。
【0059】
図1に示すように、元竿13が前方受け部21bによって下方から上向きに支持されることで、元竿13と前方受け部21bとの接触部分を支点として、釣竿本体2の自重等に基づく第1モーメントM1が発生する。これと同時に、係合凹部40の第2湾曲壁面40dが石突掛け部22bに下方から接触することで、その反作用により石突3が石突掛け部22bにより上方から下向きに支持される。これにより、石突掛け部22bと石突3との接触部分を力点とする第2モーメントM2が発生する。
そして、第1モーメントM1と第2モーメントとの釣合いによって、釣竿1を磯場Rにおいて略水平状態に保持することが可能とされている。
【0060】
このように、釣竿1及び竿保持具4によって、釣り合いが保たれた「てこ」が構成されており、前方受け部21bと元竿13との接触部分が支点を構成し、釣竿1全体の重心が作用点を構成し、石突掛け部22bと石突3との接触部分が力点を構成している。
【0061】
上述のように竿保持具4に釣竿1を保持した状態において、魚信があった場合には、釣竿本体2の元竿13側を押下げて、突起部45と石突掛け部22bとの係合を解除した後、続けて釣竿本体2を前方側に向けて移動させることで、係合凹部40内から石突掛け部22bを離脱させることができる。そのため、竿保持具4から釣竿本体2の取り外しをスムーズに行うことができる。従って、釣竿1の手持ちへの速やかな移行に繋げることができる。
【0062】
従って、本実施形態の釣竿1によれば、釣竿本体2をスムーズに手持ちに移行させることができ、対象魚の動きに対応した釣り上げ操作を開始することができる。そのため、対象魚から仕掛けが外れる等の、いわゆるバレ等が生じ難く、使い易い釣竿1とすることができる。
【0063】
特に、本実施形態の釣竿1では、石突本体30の後端面32に保護部材50(上側保護部材51及び下側保護部材52)が取り付けられているので、係合凹部40によって上下に分断されることで薄肉となった上側フランジ41及び下側フランジ42を保護することができる。従って、例えば落下等による衝撃や意図しない外力を保護部材50で緩和することができ、衝撃等が石突本体30に直接的に伝わることを抑制することができる。
従って、石突本体30、特に上側フランジ41及び下側フランジ42に割れや変形等の不都合が生じることを抑制することができ、長期に亘って安定に品質が維持された石突3及び釣竿1とすることができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、竿保持具4からのスムーズな釣竿本体2の取り外しを可能にすることができると共に、割れ等の不都合が生じ難い石突3及び釣竿1とすることができる。特に、落下による衝撃に対する耐性が強い釣竿1とすることができるので、石鯛釣り等の磯釣りに適した釣竿1とすることができる。
【0065】
特に本実施形態では、保護部材50として上側保護部材51及び下側保護部材52を備え、上側フランジ41の後端面41a及び下側フランジ42の後端面42aの両方を保護している。それに加え、上側フランジ41の後端面41a及び下側フランジ42の後端面42aの全面をそれぞれ覆うように、上側保護部材51及び下側保護部材52を取り付けている。
従って、上側フランジ41及び下側フランジ42に割れや変形等が生じることをより一層効果的に抑制することができる。
【0066】
さらに、上側保護部材51及び下側保護部材52を、弾性変形可能なゴムシートとしているので、落下等による衝撃や外力等を吸収することができ、石突本体30に直接的に伝わることを抑制することができる。この点においても、上側フランジ41及び下側フランジ42に割れや変形等が生じることをより一層効果的に抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態の石突3は、係合凹部40に加えて、上側フラット面35に係合溝39を具備しているので、図8に示すように係合溝39に石突掛け部22bを係合させることで、竿保持具4に釣竿1を保持させることができる。
従って、本実施形態の石突3によれば、係合凹部40と石突掛け部22bとの係合による釣竿1の保持形態(図3参照)と、係合溝39と石突掛け部22bとの係合による釣竿1の保持形態(図8参照)と、を任意に選択して使用することができる。
【0068】
(第1実施形態の変形例)
上述した第1実施形態では、石突本体30に係合溝39及び係合凹部40の両方を形成したが、少なくとも係合凹部40だけを具備していれば良く、係合溝39は具備しなくても構わない。
また、保護部材50をゴムシートしたが、この場合に限定されるものではなく、ゴム以外の弾性材料で形成しても構わない。例えば、保護部材50を合成樹脂製の衝撃吸収シート等としても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
【0069】
さらに、保護部材50としては、弾性変形可能な弾性材料で形成される場合に限定されるものではなく、例えば石突本体30よりも硬度を有する材料で形成しても構わない。例えば、保護部材50を金属製或いはセラミックス製の保護シート等としても構わない。この場合には、硬度を有する保護部材50を利用できるので、落下等による衝撃や外力等をより効果的に緩和することができ、上記実施形態と同様に、上側フランジ41及び下側フランジ42に割れや変形等が生じることを抑制することができる。
【0070】
また、保護部材50を、例えば弾性を有する塗料(例えば、自己治癒性塗料やネオラバサン等のゴム系塗料)等を塗布することで形成しても構わない。この場合には、保護部材50を接着等する必要がなくなり、製造工程を簡略化できるだけでなく、保護部材50の剥離の可能性を抑制することができる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態では、上側フランジ41の後端面41aに上側保護部材51を取り付け、下側フランジ42の後端面42aに下側保護部材52を取り付けたが、第2実施形態では、さらに石突本体30の側面に保護部材50を取り付けている。
【0072】
図9に示すように、本実施形態の石突60は、石突本体30のうち左右方向L3を向いた側面に取り付けられたサイド保護部材62を備えている。
サイド保護部材62は、係合凹部40の開口周縁に沿うように形成されていると共に、上側保護部材51及び下側保護部材52に対してそれぞれ連設されている。従って、本実施形態の保護部材61は、互いに連続的に繋がった、上側保護部材51、下側保護部材52及びサイド保護部材62を備えている。
【0073】
つまり、保護部材61は上側フランジ41の後端面41a、下側フランジ42の後端面42a、上側フランジ41の側面(石突本体30の側面)及び下側フランジ42の側面(石突本体30の側面)を連続して覆うように取り付けられている。
【0074】
(石突の作用)
このように構成された本実施形態の石突60の場合には、石突本体30に対する側方からの衝撃や外力等についても保護部材61で緩和でき、石突本体30を広範囲に保護することができる。従って、石突本体30、特に上側フランジ41及び下側フランジ42に割れや変形等が生じることをさらに生じ難くすることができる。
特に、石突本体30が木製の場合には、繊維目(木目)に沿って割れ等が生じ易いが、本実施形態の保護部材61によれば、繊維目に沿うような割れ等を効果的に抑制することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0076】
例えば、上記各実施形態では、上側フランジ41の後端面41aの全面を覆うように上側保護部材51を取り付けると共に、下側フランジ42の後端面42aの全面を覆うように下側保護部材52を取り付けたが、必ずしも全面を覆う必要はない。例えば、上側フランジ41の後端面41aのうち、左右方向L3の中央部分だけを覆う、或いは左右方向L3の両端部分だけを覆うように保護部材を部分的に取り付けても構わない。
さらに、上側フランジ41の後端面41a及び下側フランジ42の後端面42aのうちのいずれか一方だけに、保護部材を全面に亘って取り付ける、或いは部分的に取り付けても構わない。
【符号の説明】
【0077】
1…釣竿
2…釣竿本体
3、60…石突
4…竿保持具
22b…石突掛け部(支持部材)
30…石突本体
32…石突本体の後端面
40…係合凹部
41…上側フランジ
41a…第1フランジの後端面(石突本体の後端面)
42…下側フランジ
42a…第2フランジの後端面(石突本体の後端面)
50、61…保護部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9