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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/622 20150101AFI20230421BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
E05F15/622
B60J5/10 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019192788
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021067080
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 弘行
(72)【発明者】
【氏名】森山 亮祐
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-82516(JP,A)
【文献】特開2017-101537(JP,A)
【文献】特開2017-32071(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017117993(DE,A1)
【文献】特表2015-505015(JP,A)
【文献】特開2019-157491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/10
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングの延在方向に沿って、前記第1ハウジングに対して相対移動する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに設けられた駆動部と、
前記駆動部の駆動により回転するスピンドル部材と、
前記スピンドル部材と螺合するナット部材と、
前記ナット部材と連結した移動部材と、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを互いに離間する方向に付勢するコイルバネと、
前記コイルバネの内周と前記スピンドル部材の外面との間に、前記スピンドル部材の軸方向に延びるバネガイド部材と
を備えた駆動装置であって、
前記第1ハウジングは、内周面と、前記駆動部を収容する収容部と、前記内周面から中心に向けて突出する突出部とを有し、
前記バネガイド部材は、前記スピンドル部材の軸方向に沿って延びて前記コイルバネを支持するバネ支持部と、前記バネ支持部の一端側において、前記バネ支持部外面に対して前記バネ支持部の径方向外側に突出したフランジ部とを有し、
前記第1ハウジングの前記突出部は、前記コイルバネの一端を直接または間接的に支持する支持部と、径方向内側に、前記バネガイド部材の前記バネ支持部が挿通される挿通空間と、前記バネガイド部材の前記フランジ部が直接または間接的に接続される接続部とを有し、
前記バネガイド部材の前記フランジ部は、前記スピンドル部材の軸方向で、前記突出部と前記駆動部との間に挟持されている、駆動装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記第1ハウジングの内周面と接続する外側端部と、前記バネガイド部材の前記バネ支持部が挿通される前記挿通空間を形成する内側端部とを有し、
前記バネガイド部材は、前記内側端部により前記バネ支持部の外面が支持された、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記第1ハウジングの内周面に沿って延びる環状に形成され、
前記フランジ部は、所定の径方向長さで前記突出部の接続部と当接可能な略円筒状に形成されている、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記突出部の前記挿通空間と前記スピンドル部材とは、同軸に設けられ、
前記突出部の接続部と前記バネガイド部材の前記フランジ部とは、軸方向に略垂直に設けられ、
前記バネガイド部材は、前記フランジ部が前記突出部と前記駆動部との間に挟持されることにより、前記スピンドル部材とほぼ同軸とされている、請求項1~3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のバックドアや外開き窓などを旋回させるための駆動装置としては、車両本体などの基体に設けられた第1ハウジングと、車両ドアに設けられ、第1ハウジングと相対的に移動することができる第2ハウジングとを有し、伸縮駆動をする駆動装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような駆動装置は、例えば、モータ等の駆動部と、駆動部によって回転駆動されるスピンドルと、スピンドルの回転運動をスピンドルの軸方向への変位に変えるスピンドルナットと、スピンドルナットが連結され、スピンドルの一部を内側に収容するスピンドルガイド管とを有している。このような駆動装置はさらに、駆動装置の第1ハウジングおよび第2ハウジングを互いに離間する方向に付勢するコイルスプリングを有している。
【0004】
このようなコイルスプリングを有する駆動装置の場合、コイルスプリングの収縮時など、スピンドルナットの外周にコイルスプリングの一部が接触することを抑制するために、コイルスプリングの内側とスピンドルナットの外周との間に筒状のスプリングガイドが設けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-172201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このようなスプリングガイドを設ける場合、スプリングガイドが駆動装置に対して強固に固定されていなければ、スプリングガイドがスピンドルの軸に対して傾くように動いてしまう。一方、スプリングガイドを駆動装置に対して強固に固定する場合には、スプリングガイドと駆動装置との間の固定部分の構造が複雑になる。また、筒状のスプリングガイドを径方向外側から固定する固定部材を設けると、駆動装置全体の径方向の寸法が大きくなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、駆動装置を径方向でコンパクトに保つことができ、簡単な構造でバネガイド部材を固定することが可能な駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の駆動装置は、第1ハウジングと、前記第1ハウジングの延在方向に沿って、前記第1ハウジングに対して相対移動する第2ハウジングと、前記第1ハウジングに設けられた駆動部と、前記駆動部の駆動により回転するスピンドル部材と、前記スピンドル部材と螺合するナット部材と、前記ナット部材と連結した移動部材と、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを互いに離間する方向に付勢するコイルバネと、前記コイルバネの内周と前記スピンドル部材の外面との間に、前記スピンドル部材の軸方向に延びるバネガイド部材とを備えた駆動装置であって、前記第1ハウジングは、内周面と、前記駆動部を収容する収容部と、前記内周面から中心に向けて突出する突出部とを有し、前記バネガイド部材は、前記スピンドル部材の軸方向に沿って延びて前記コイルバネを支持するバネ支持部と、前記バネ支持部の一端側において、前記バネ支持部外面に対して前記バネ支持部の径方向外側に突出したフランジ部とを有し、前記第1ハウジングの前記突出部は、前記コイルバネの一端を直接または間接的に支持する支持部と、径方向内側に、前記バネガイド部材の前記バネ支持部が挿通される挿通空間と、前記バネガイド部材の前記フランジ部が直接または間接的に接続される接続部とを有し、前記バネガイド部材の前記フランジ部は、前記スピンドル部材の軸方向で、前記突出部と前記駆動部との間に挟持されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の駆動装置によれば、駆動装置を径方向でコンパクトに保つことができ、簡単な構造でバネガイド部材を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の駆動装置の収縮状態を示す、駆動装置を長手方向に切断した断面図である。
図2図1の駆動装置の伸長状態を示す、駆動装置を長手方向に切断した断面図である。
図3図1の駆動装置が車両に取り付けられた状態を示す概略図である。
図4図2における領域Aの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の駆動装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の駆動装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1および図2に示されるように、本実施形態の駆動装置1は、第1ハウジング2と、第1ハウジング2の延在方向に沿って、第1ハウジング2に対して相対移動する第2ハウジング3と、第1ハウジング2に設けられた駆動部4と、駆動部4の駆動により回転するスピンドル部材5と、スピンドル部材5と螺合するナット部材6と、ナット部材6と連結した移動部材7とを備えている。また、駆動装置1は、図1および図2に示されるように、第1ハウジング2および第2ハウジング3を互いに離間する方向に付勢するコイルバネ8と、コイルバネ8の内周とスピンドル部材5の外面との間に、スピンドル部材5の軸X方向に延びるバネガイド部材9とを備えている。
【0013】
駆動装置1は、駆動部4の駆動力によって、第1ハウジング2の延在方向(本実施形態では、軸X方向)に沿って、第2ハウジング3を第1ハウジング2に対して相対移動させることによって、第1ハウジング2および/または第2ハウジング3に接続された駆動対象を作動させる。本実施形態では、第1ハウジング2は第1の基体B1(図3参照)に接続される第1接続部C1を有し、第2ハウジング3は第2の基体B2(図3参照)に接続される第2接続部C2を有している。これにより、駆動装置1は、第1接続部C1および第2接続部C2を介して第1の基体B1および第2の基体B2に接続される。本実施形態では、駆動装置1が駆動されることによって、第1の基体B1および/または第2の基体B2が作動される。
【0014】
本実施形態では、駆動装置1は、図3に示されるように、車両のバックドアの開閉装置に適用されている。本実施形態では、第1の基体B1が車体(以下、車体B1とも呼ぶ)であり、第2の基体B2がヒンジHを中心に回転するバックドア(以下、バックドアB2とも呼ぶ)である。図3に示されるように、バックドアB2が車両の後部開口部を閉鎖した、参照符号S1で示す閉鎖状態から駆動部4が駆動されると、第2ハウジング3が第1ハウジング2から突出して、バックドアB2の開放が開始される。バックドアB2は、第2ハウジング3の第1ハウジング2からの突出量が大きくなるにつれて、参照符号S2で示される開放途中状態を経て、参照符号S3で示される開放状態まで移動する。なお、バックドア2の開放状態S3から駆動部4によって第2ハウジング3が第1ハウジング2内に収容されるように移動すると、バックドアB2は開放状態S3から閉鎖状態S1まで移動する。
【0015】
なお、本実施形態では、駆動装置1が車両のバックドアの開閉装置に適用された例を示しているが、駆動装置1の用途は、バックドアの開閉装置に限定されない。例えば、駆動装置1は、バックドア以外の開閉体の開閉装置や、伸縮動作を行う伸縮装置などに適用されてもよい。
【0016】
第1ハウジング2は、図1および図2に示されるように、駆動部4を収容する。第1ハウジング2は、本実施形態では、第2ハウジング3とともに、駆動部4の駆動力を駆動対象に伝達する。第1ハウジング2は、第2ハウジング3に対して相対移動可能に接続される。具体的には、第1ハウジング2は、駆動部4、スピンドル部材5、ナット部材6および移動部材7を介して第2ハウジング3に接続されている。第1ハウジング2は、図1および図2に示されるように、内周面21と、駆動部4を収容する収容部22と、内周面21から中心に向けて突出する突出部23とを有している。より具体的には、第1ハウジング2は、第1ハウジング2の一端2a側に、駆動部4を収容する収容部22を有し、第1ハウジング2の他端2b側に、駆動装置1の収縮状態(図1参照)において、第2ハウジング3と重なる筒部24を有し、軸X方向で収容部22と筒部24との間に、突出部23を有している。なお、本実施形態では、収容部22、突出部23および筒部24は全て一体に形成されている。
【0017】
本実施形態では、第1ハウジング2は、例えば円筒状など、中空の筒状部材として構成されている。第1ハウジング2を構成する材料は特に限定されないが、所定の剛性を有する金属または樹脂であることが好ましい。収容部22は、内周面21を有する略筒状に形成され、駆動部4を内部に収容する。筒部24は、内周面21を有する略筒状に形成され、スピンドル部材5、ナット部材6、移動部材7、コイルバネ8、バネガイド部材9等を少なくとも部分的に収容している。突出部23の詳細については後述する。
【0018】
第1ハウジング2は、本実施形態では、図3に示されるように、第1接続部C1により、第1の基体B1に接続される。第1の基体B1は、本実施形態では車両の車体である。より具体的には、第1の基体B1は、バックドアにより閉鎖される車両の後部開口部の開口縁である。しかし、第1の基体B1は車体に限定されず、駆動装置1が適用される対象に応じて適宜変更される。
【0019】
第1接続部C1は、第1の基体B1に接続することができればよく、第1ハウジング2が第1の基体B1に対して揺動等の相対移動をすることができるように接続されてもよいし、第1の基体B1に対して相対移動しないように固定されてもよい。本実施形態では、第1接続部C1は、図3に示されるように、第1ハウジング2が第1の基体B1に対して揺動するように構成されている。第1接続部C1に用いられる構造は特に限定されないが、例えば、ボールジョイント、クレビス、ピンジョイント、ユニバーサルジョイントなど、公知の接合構造を用いることができる。
【0020】
本実施形態では、第1ハウジング2は略円筒状に形成され、一端2a側に第1接続部C1を有している。第1ハウジング2の内部には、一端2a側に駆動部4が設けられ、駆動部4に接続されたスピンドル部材5が第1ハウジング2と同軸上に第1ハウジング2の他端2bに向かって延びている。本実施形態では、駆動装置1は、第1ハウジング2の内周面21とスピンドル部材5の外周との間にバネガイド部材9を有している。バネガイド部材9の内周面とスピンドル部材5の外周とはスピンドル部材5の径方向で離間しており、バネガイド部材9の内周面とスピンドル部材5の外周との間にナット部材6および移動部材7が設けられている。また、バネガイド部材9の外周と第1ハウジング2の内周面21とは、スピンドル部材5の径方向で離間しており、バネガイド部材9の外周と第1ハウジング2の内周面21との間には、移動部材7の移動に伴い移動する第2ハウジング3が第1ハウジング2の内側に入れ子式に出没する。また、バネガイド部材9の外周と第1ハウジング2の内周面21との間には、第2ハウジング3の他に、第2ハウジング2の動作をアシストするコイルバネバネ8が設けられている。なお、駆動装置1の形状や構造は、図示するものに限定されない。例えば、第1ハウジング2が、第2ハウジング3の内側に入れ子式に出没するように構成されていてもよい。
【0021】
第2ハウジング3は、駆動部4の駆動力によって、第1ハウジング2に対して軸X方向に相対移動する。本実施形態では、第2ハウジング3は、第1ハウジング2とともに、駆動部4の駆動力を駆動対象に伝達する。第2ハウジング3は、図1および図2に示されるように、ナット部材6がスピンドル部材5に対して軸X方向に移動することによって、移動部材7とともに、軸X方向に移動する。
【0022】
第2ハウジング3は、本実施形態では、図3に示されるように、第2接続部C2により、第2の基体B2に接続される。第2の基体B2は、本実施形態では車両のバックドアである。しかし、第2の基体B2はバックドアに限定されず、駆動装置1が適用される対象に応じて適宜変更される。第2接続部C2は、第2の基体B2に接続することができればよく、第2ハウジング3が第2の基体B2に対して揺動等の相対移動をすることができるように接続されてもよいし、第2の基体B2に対して相対移動しないように固定されてもよい。本実施形態では、第2接続部C2は、図3に示されるように、第2ハウジング3が第2の基体B2に対して揺動するように構成されている。第2接続部C2に用いられる構造は特に限定されないが、例えば、ボールジョイント、クレビス、ピンジョイント、ユニバーサルジョイントなど、公知の接合構造を用いることができる。
【0023】
本実施形態では、第2ハウジング3は円筒状に形成され、一端3a側に第2接続部C2を有している。第2ハウジング3を構成する材料は特に限定されないが、所定の剛性を有する金属または樹脂であることが好ましい。第2ハウジング3の内部には、コイルバネ8の一部、移動部材7、ナット部材6が設けられている。第2ハウジング3の一端3a側には、移動部材7の一端7aが接続され、移動部材7は第2ハウジング3の一端3a側から他端3b側に向かって延びている。移動部材7の他端7b側には、ナット部材6が設けられている。ナット部材6は第2ハウジング3の他端3b側に位置している。
【0024】
駆動部4は、第1ハウジング2に対して第2ハウジング3を相対移動させるための駆動力を発生させる。本実施形態では、駆動部4は、スピンドル部材5を軸X周りに回転させる。これにより、スピンドル部材5に対してナット部材6が軸X方向に移動し、ナット部材6と連結された移動部材7および第2ハウジング3が、スピンドル部材5および第1ハウジング2に対して軸X方向に移動する。本実施形態では、駆動部4は電動モータを有し、第1ハウジング2の外部から給電されてスピンドル部材5を正逆回転させることができるように構成されている。
【0025】
駆動部4の形状および構造は、第1ハウジング2に対して第2ハウジング3を相対移動させるための駆動力を発生させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、駆動部4は、スピンドル部材5を回転可能に接続する接続部41を有している。接続部41は、スピンドル部材5を回転可能に支持するベアリングBを有している。また、後述するように、駆動部4は、バネガイド部材9と軸X方向に対向する端面42を有している。
【0026】
スピンドル部材5は、外周に雄ネジが形成された棒状の部材である。スピンドル部材5は、駆動部4によって軸X周りに回転し、スピンドル部材5の雄ネジと螺合するナット部材6を軸X方向に移動させる。本実施形態では、図1および図2に示されるように、スピンドル部材5の一端5a側は、駆動部4の接続部41に設けられたベアリングBに挿通され、駆動部4に接続されている。スピンドル部材5の他端5b側は、略筒状の移動部材7の内側に位置している。スピンドル部材5の他端5b側の先端は、スピンドル部材5がナット部材6から抜けることを抑制するための抜け止め部51を有している。本実施形態では、駆動部4によってスピンドル部材5が回転して、ナット部材6とともに移動部材7が軸X方向に移動する際に、移動部材7の内周面がスピンドル部材5の先端の抜け止め部51に対して摺動するように構成されている。抜け止め部51は、駆動装置1が図2に示される伸長状態になったときに、移動部材7の他端7b側に設けられた係合部71と軸X方向で係合して、スピンドル部材5に対して移動部材7が抜けることが抑制される。
【0027】
ナット部材6は、内周に雌ネジが形成された筒状体である。ナット部材6は、スピンドル部材5の軸X周りの回転に応じて、スピンドル部材5に対して軸X方向に所定のストロークで移動するように構成されている。ナット部材6は、移動部材7に連結されており、移動部材7とともにスピンドル部材5に対して軸X方向へ移動する。ナット部材6は、本実施形態では、バネガイド部材9の内側を軸X方向に移動するように構成されている。ナット部材6は、本実施形態では、図示しない回転規制部によって、バネガイド部材9に対する軸X周り方向の回転が規制されている。これにより、ナット部材6は、スピンドル部材5と共回りすることが抑制され、スピンドル部材5が軸X周りに回転する際に、バネガイド部材9の内側において、スピンドル部材5の軸X方向に移動することができる。
【0028】
図1および図2に示されるように、移動部材7は、ナット部材6と連結され、ナット部材6の軸X方向への移動によって軸X方向に移動する。移動部材7は、本実施形態では、軸X方向で駆動部4とは反対側となる一端7a側において第2ハウジング3と接続され、駆動部4側となる他端7b側においてナット部材6と連結されている。本実施形態では、ナット部材6が軸X方向で駆動部4に向かって移動した際には、移動部材7は、第1ハウジング2の内部に引き込まれるように移動する。一方、ナット部材6が軸X方向で駆動部4から離れる方向へ移動した際には、移動部材7は、第1ハウジング2から突出するように移動する。この移動部材7の第1ハウジング2からの出没動作によって、第2ハウジング3が第1ハウジング2に対して軸X方向に相対移動する。本実施形態では、第2ハウジング3の第1ハウジング2に対する軸X方向での相対移動によって、図3に示されるように、駆動装置1が伸縮して第2接続部C2を介して移動部材7に接続された駆動対象となるバックドア等の第2の基体B2が駆動される。
【0029】
移動部材7の形状や構造は、移動部材7がナット部材6に連結され、ナット部材6の移動によって軸X方向に移動することができれば、特に限定されない。本実施形態では、移動部材7は略筒状である。具体的には、移動部材7はスピンドル部材5と同軸上に配置され、スピンドル部材5の外径よりも大きい内径を有する中空の円筒状に形成されている。ナット部材6および移動部材7が駆動部4側に向かって移動したときに、スピンドル部材5は、中空の移動部材7の内側に収容される(図1参照)。なお、移動部材7とナット部材6との間の連結方法は、ナット部材6の軸X方向への移動によって移動部材7が軸X方向に移動することができれば、特に限定されない。ナット部材6は移動部材7と一体に成形されていてもよいし、着脱可能に設けられていてもよい。
【0030】
コイルバネ8は、第1ハウジング2および第2ハウジング3を軸X方向で互いに離間する方向に付勢する。本実施形態では、コイルバネ8は、第2ハウジング3の第1ハウジング2に対して駆動部4から離れる方向への動作をアシストしている。駆動装置1が車両のバックドアの開閉装置に適用される場合には、コイルバネ8は、バックドアB2を開放状態S3(図3参照)で保持できるように、バックドアB2の重量を支持できる程度の付勢力を有している。
【0031】
コイルバネ8は、スピンドル部材5の軸Xと同軸の伸縮軸を有している。コイルバネ8の、軸X方向で駆動部4側となる一端8aは、図1および図2に示されるように、第1ハウジング2の突出部23に取り付けられ、軸X方向で駆動部4側とは反対側となる他端8bは、第2ハウジング3の一端3aに取り付けられている。コイルバネ8は、駆動装置1の全長が短くなった収縮状態(図1参照)のときに圧縮され、駆動装置1の全長が長くなった伸長状態(図2参照)において伸長している。
【0032】
コイルバネ8は、軸X方向に垂直な方向において、第2ハウジング3の内側かつ移動部材7の外側に配置されている。また、コイルバネ8は、第1ハウジング2の内側においては、第1ハウジング2の内周面21およびバネガイド部材9の外面との間に配置されている。
【0033】
バネガイド部材9は、コイルバネ8を軸X方向に沿ってガイドする。本実施形態では、バネガイド部材9は、コイルバネ8とスピンドル部材5の外周とが接触しないようにコイルバネ8を第1ハウジング2内でガイドしている。なお、本実施形態では、バネガイド部材9は、第1ハウジング2に対して軸X周りに回転しないように取り付けられ、内側においてナット部材6を軸X方向に移動可能に案内している。バネガイド部材9は、図1図2および図4に示されるように、スピンドル部材5の軸X方向に沿って延びてコイルバネ8を支持するバネ支持部91と、バネ支持部91の一端91a側において、バネ支持部91外面に対してバネ支持部91の径方向外側に突出したフランジ部92とを有している。バネガイド部材9を構成する材料は特に限定されないが、所定の剛性を有する金属または樹脂であることが好ましい。
【0034】
バネ支持部91は、コイルバネ8を軸X方向に沿って支持する部位である。本実施形態では、バネ支持部91は、コイルバネ8の径方向内側において、軸X方向に延びて、コイルバネ8がスピンドル部材5の外周に接触することを抑制している。バネ支持部91は、本実施形態では、略円筒状に形成されている。バネ支持部91は、図1および図2に示されるように、軸X方向でスピンドル部材5の雄ネジが形成された領域の全体を覆うように設けられている。なお、バネ支持部91の形状および構造は、コイルバネ8がスピンドル部材5の外周に接触することを抑制することができれば、特に限定されない。
【0035】
フランジ部92は、軸X方向で駆動部4側となる、バネ支持部91の一端91a側において、バネ支持部91の外面91b(図4参照)に対して径方向外側に突出している。フランジ部92は、後述するように、スピンドル部材5の軸X方向で、突出部23と駆動部4との間に挟持される。これにより、バネガイド部材9が、第1ハウジング2に対して固定される。
【0036】
本実施形態では、フランジ部92は、図4に示されるように、軸X方向で突出部23側と当接する第1当接部92aと、軸X方向で駆動部4側と当接する第2当接部92bとを有している。なお、第1当接部92aは、直接突出部23と当接してもよいし、シール部材などの別部材を介して、突出部23と軸X方向に間接的に接続されていてもよい。また、第2当接部92bは、直接駆動部4と当接してもよいし、シール部材などの別部材を介して、駆動部4と軸X方向に間接的に接続されていてもよい。また、第1当接部92aおよび第2当接部92bの形状および構造は、突出部23および駆動部4のそれぞれと軸X方向で当接することができれば、特に限定されない。
【0037】
つぎに、第1ハウジング2の突出部23について説明する。第1ハウジング2の突出部23は、図4に示されるように、コイルバネ8の一端8aを直接または間接的に支持する支持部23aと、径方向内側に、バネガイド部材9のバネ支持部91が挿通される挿通空間23bと、バネガイド部材9のフランジ部92が直接または間接的に接続される接続部23cとを有している。本実施形態では、突出部23は、第1ハウジング2の内周面21と接続する外側端部23dと、バネガイド部材9のバネ支持部91が挿通される挿通空間23bを形成する内側端部23eとを有している。
【0038】
突出部23は、コイルバネ8の一端8aを支持するとともに、バネガイド部材9のフランジ部92を駆動部4とともに挟み込んで、バネガイド部材9を第1ハウジング2に対して固定する。突出部23は、第1ハウジング2の内周面21のうち、軸X方向で駆動部4側に設けられている。突出部23は、駆動部4の端面42に対して、バネガイド部材9のフランジ部92の軸X方向の長さに応じた距離で、軸X方向に離間している。
【0039】
突出部23の形状および構造は、支持部23a、挿通空間23bおよび接続部23cを有し、駆動部4とともにフランジ部92を挟持することができれば、特に限定されない。本実施形態では、突出部23は、第1ハウジング2の内周面21に沿って延びる環状に形成されている。より具体的には、突出部23は、軸X方向に延びる貫通孔が形成された略円板状に形成されている。突出部23は、本実施形態では、第1ハウジング2の収容部22および筒部24と一体に形成されている。なお、突出部23は、第1ハウジング2の内周面21の周方向において連続して延びているが、周方向に分断されていてもよい。
【0040】
支持部23aは、突出部23のうち、軸X方向で駆動部4とは反対側に位置する、コイルバネ8の一端8aと対向する部分である。支持部23aは、コイルバネ8の一端8aを直接または間接的に支持する。本実施形態では、支持部23aは、コイルバネ8の一端8aに当接して、直接的にコイルバネ8を支持している。しかし、支持部23aとコイルバネ8の一端8aとの間に、シール部材などの別部材が介装されて、支持部23aがコイルバネ8の一端8aを間接的に支持していてもよい。
【0041】
支持部23aの形状は、コイルバネ8の一端8aを直接または間接的に支持することができれば、特に限定されない。本実施形態では、支持部23aは、軸Xに略垂直な面として形成されている。
【0042】
挿通空間23bは、バネガイド部材9のバネ支持部91を軸X方向に挿通するための空間である。バネガイド部材9は、駆動装置1の組み立て時に、挿通空間23bに挿通される。これにより、第1ハウジング2に対してバネガイド部材9が組み付けられる。挿通空間23bは、本実施形態では、突出部23の内側端部23eによって画定される。なお、挿通空間23bの形状および大きさは、バネガイド部材9のバネ支持部91を挿通することができれば、特に限定されず、突出部23の形状および大きさに応じて適宜変更が可能である。本実施形態では、図4に示されるように、突出部23の挿通空間23bとスピンドル部材5とは、同軸に設けられている。また、挿通空間23は、軸X方向に垂直な断面において、バネ支持部91の外面91bの外径と略同一の径の円形の開口を有している。なお、挿通空間23bは、バネ支持部91の外面91bと突出部23の内側端部23eとの間に隙間を有するような大きさであってもよい。
【0043】
接続部23cは、突出部23のうち、軸X方向で駆動部4側の、フランジ部92と接続される部位である。本実施形態では、接続部23cは、フランジ部92の第1当接部92aに軸X方向で対向し、第1当接部92aに直接または間接的に接続される。接続部23cの形状および構造は、フランジ部92を接続部23cおよび駆動部4によって挟持できるように構成されていれば特に限定されない。本実施形態では、接続部23cは、第1当接部92aに当接する当接面を有している。より具体的には、接続部23cは、軸Xに対して略垂直な当接面を有している。
【0044】
上述したように、バネガイド部材9のフランジ部92は、図4に示されるように、スピンドル部材5の軸X方向で、突出部23と駆動部4との間に挟持されている。これにより、バネガイド部材9を第1ハウジング2に対して固定する際に、バネガイド部材9のフランジ部92を突出部23と駆動部4とによって挟み込むことによって、簡単にバネガイド部材9を固定することができる。そして、バネガイド部材9の固定は、第1ハウジング2の内周面21から中心(軸X)に向けて突出する突出部23と、第1ハウジング2に収容された駆動部4とによって、フランジ部92を軸X方向に挟持している。したがって、バネガイド部材9の固定のために、第1ハウジング2の外周から突出するような固定部材は必要ないので、駆動装置1を径方向でコンパクトに保つことができる。
【0045】
また、本実施形態では、突出部23は、コイルバネ8の一端8aを支持する支持部23aと、フランジ部92を挟持する際に軸X方向でフランジ部92の一方側と接続する接続部23cとを有している。この場合、例えば、駆動装置1が組み立てられた後、突出部23は、コイルバネ8から支持部23aを介してフランジ部92をより強く挟持する方向に力を受ける。これにより、接続部23cからフランジ部92に向かってより強く挟持する力が加わり、フランジ部92がさらに安定して挟持される。したがって、バネガイド部材9のバネ支持部91が軸Xに対して傾斜するような、バネガイド部材9のガタつきが抑制される。また、本実施形態では、駆動部4は圧縮されたコイルバネ8によって、フランジ部92に向かって押圧する方向に力を受けている。具体的には、圧縮されたコイルバネ8が伸長しようとする力によって、第2ハウジング3が第1ハウジング2から突出する方向(図1における右方向)に力を受ける。駆動部4は、移動部材7、ナット部材6およびスピンドル部材5を介して第2ハウジング3に接続されているので、駆動部4はフランジ部92に向かって押圧力を加える。したがって、本実施形態では、圧縮されたコイルバネ8の復元力によって、駆動部4および突出部23の両方からフランジ部92が挟み込まれる方向に力が加わる。これにより、フランジ部92がさらに安定して挟持される。
【0046】
また、突出部23は、コイルバネ8の付勢力によって駆動部4側に向かって力を受けるが、本実施形態では、突出部23に加わる付勢力は、フランジ部92および駆動部4によって支持される。したがって、突出部23が軸X方向に薄い板状に形成されていたとしても、突出部23の変形が抑制され、コイルバネ8を安定して支持することができる。
【0047】
また、本実施形態では、バネガイド部材9は、図4に示されるように、内側端部23eによりバネ支持部91の外面91bが支持されている。この場合、仮にバネガイド部材9のバネ支持部91が軸Xに対して傾くような力を受けた場合であっても、突出部23の内側端部23eにバネ支持部91の外面91bが当接して、バネガイド部材9のバネ支持部91が軸Xに対して傾斜することが抑制される。
【0048】
また、本実施形態では、突出部23は、第1ハウジング2の内周面21に沿って環状に形成され、フランジ部92は、所定の径方向長さで突出部23の接続部23cと当接可能な略円筒状に形成されている。この場合、環状の突出部23と略円筒状のフランジ部92とが、軸X方向で当接することによって、突出部23とフランジ部92とは、環状の接触領域で互いに接触する。これにより、フランジ部92が突出部23と駆動部4とによってより安定して挟持される。
【0049】
また、本実施形態では、突出部23の接続部23cとバネガイド部材9のフランジ部92とは、軸X方向に略垂直に設けられ、バネガイド部材9は、フランジ部92が突出部23と駆動部4との間に挟持されることにより、スピンドル部材5とほぼ同軸とされている。この場合、接続部23cとフランジ部92とが共に軸X方向に対して略垂直に設けられていることにより、フランジ部92が接続部23cに接続されたときに、バネガイド部材9の中心軸はスピンドル部材5の軸Xに一致するように延びる。したがって、バネガイド部材9(本実施形態ではバネ支持部91)が、スピンドル部材5の軸Xに対して傾くことがさらに抑制される。本実施形態では、接続部23cが軸Xに対して略垂直な面を有し、接続部23cに接続される第1当接部92aも、軸Xに略垂直な面を有している。この場合、接続部23cと、第1当接部92aとは面で接続され、バネガイド部材9の固定がより強固になる。なお、本実施形態では、第2当接部92bが軸Xに略垂直な面を有し、駆動部4の端面42が軸Xに略垂直な面を有している。この場合、フランジ部92が軸X方向で両側において、突出部23および駆動部4に対して面で接続される。これにより、バネガイド部材9は、より精度良く、スピンドル部材5の軸Xと一致するように安定して配置される。そのため、本実施形態のように、バネガイド部材9に対してナット部材6が軸X方向に移動するように構成されている場合、ナット部材6の軸X方向での移動が円滑となる。
【0050】
また、フランジ部92は、第1ハウジング2の内面21と対向する外周面92cを有している。外周面92cは、本実施形態では、第1ハウジング2の内面21と所定の軸X方向の長さで当接するように構成されている。この場合、第1ハウジング2の内面21とフランジ部92の外周面92cとが、軸X方向に所定の長さで面接触することにより、バネガイド部材9が軸Xに対して傾斜する動作がより規制される。なお、フランジ部92の軸X方向の所定の長さは特に限定されないが、例えば突出部23の軸X方向の厚さの2倍以上、好ましくは3倍以上とすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 駆動装置
2 第1ハウジング
2a 第1ハウジングの一端
2b 第1ハウジングの他端
21 内周面
22 収容部
23 突出部
23a 支持部
23b 挿通空間
23c 接続部
23d 外側端部
23e 内側端部
24 筒部
3 第2ハウジング
3a 第2ハウジングの一端
3b 第2ハウジングの他端
4 駆動部
41 接続部
42 端面
5 スピンドル部材
5a スピンドル部材の一端
5b スピンドル部材の他端
51 抜け止め部
6 ナット部材
7 移動部材
7a 移動部材の一端
7b 移動部材の他端
71 移動部材の係合部
8 コイルバネ
8a コイルバネの一端
8b コイルバネの他端
9 バネガイド部材
91 バネ支持部
91a バネ支持部の一端
91b バネ支持部の外面
92 フランジ部
92a 第1当接部
92b 第2当接部
92c フランジ部の外周面
B ベアリング
B1 第1の基体(車体)
B2 第2の基体(バックドア)
C1 第1接続部
C2 第2接続部
H ヒンジ
S1 閉鎖状態
S2 開放途中状態
S3 開放状態
X スピンドル部材の軸
図1
図2
図3
図4