(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】ハイブリッドコア光ファイバを採用した分布型ファイバセンサ及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/353 20060101AFI20230421BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
G01D5/353 B
G02B6/036
(21)【出願番号】P 2019538594
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(86)【国際出願番号】 US2018013984
(87)【国際公開番号】W WO2018136477
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-18
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥーソ,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】コズロフ,ヴァレリー エー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン-ジュン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-121988(JP,A)
【文献】特開昭60-200208(JP,A)
【文献】特開2016-188930(JP,A)
【文献】米国特許第5627934(US,A)
【文献】特表2012-514772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
G01B 11/16
G01K 11/32-11/324
G02B 6/00、6/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
約300nm~約2000nmの波長で動作するよう構成され、更に伝送端部、別の端部、ファイバ外径、及びファイバ長によって画定された、光ファイバを備える、ファイバセンサであって、
前記ファイバは:
シングルモードコア部分及びマルチモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
前記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド
を備え、
前記シングルモードコア部分の最大相対屈折率Δ
31は、
0.4%≦Δ
31≦3%であり、
前記マルチモー
ドコア部分の最大相対屈折率Δ
32は、
0.1%≦Δ
32≦2.7%で
あり、および
Δ
31
≧Δ
32
である、ファイバセンサ。
【請求項2】
前記シングルモードコア部分はGeO
2を含み、
前記シングルモードコア部分中のGeO
2の最大量は、6重量%~50重量%である、請求項1に記載のファイバセンサ。
【請求項3】
前記マルチモードコア部分は、0~45重量%のGeO
2を含
む、請求項1又は2に記載のファイバセンサ。
【請求項4】
(i)前記ファイバ長は約10m~100kmであり;並びに/又は
(ii)前記ファイバの前記伝送端部の前記コアは、前記ファイバ内に、約1マイクロメートル~約100マイクロメートルのスポットサイズを有する単一の光源からの入射光を受信するよう配設及び構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のファイバセンサ。
【請求項5】
0.2%≦Δ
31-Δ
32≦1%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のファイバセンサ。
【請求項6】
前記ファイバの前記伝送端部は、光源からの光が前記ファイバの前記伝送端部において前記コアに入射した後に、前記シングルモードコア部分及び前記マルチモードコア部分の両方から放出される、全後方散乱信号を発する、請求項1~5のいずれか1項に記載のファイバセンサ。
【請求項7】
前記全後方散乱信号は、基準シングルモードコア光ファイバからの後方散乱信号からのSN比より大きなSN比を有する、請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のファイバセンサシステムであって、
前記光ファイバは、約300nm~約2000nmの波長でのシングルモード動作又はいくつかのモードでの動作のために構成され、
前記ファイバセンサシステムは更に:
入射光のスポットを、前記ファイバの前記伝送端部において、前記コアの少なくとも一部分へと配向するよう構成された、光源;
前記入射光のスポットが、前記ファイバの前記伝送端部において、前記ハイブリッドコアに入射した後に、前記ハイブリッドコアから放出される全後方散乱信号を受信するよう構成された、レシーバ;並びに
前記
全後方散乱信号を処理して、前記ファイバに近接した又は接触した特徴部分に対応するセンサ測定値を得るよう構成された、信号問い合わせ要素
を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のファイバセンサシステム。
【請求項9】
(i)シングルモードコア部分及びマルチモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
(ii)前記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド、
を備える、光ファイバであって、
前記マルチモードコア部分中のGeO
2の最大量は、5.5重量%~35重量%であり、
前記シングルモードコア部分の最大相対屈折率Δ
31は、
0.4%≦Δ
31≦3%であり、
前記マルチモー
ドコア部分の最大相対屈折率Δ
32は、
0.1%≦Δ
32≦2.7%であ
り、および
Δ
31
≧Δ
32
である、光ファイバ。
【請求項10】
前記シングルモードコア部分中のGeO
2の最大量は、6重量%~50重量%であり、
0.2%≦Δ
31-Δ
32≦1%である、請求項9に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、2017年1月19日出願の米国仮特許出願第62/448,053号に対する優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は信頼できるものであり、その全体が参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は一般に、分布型ファイバセンサ及びファイバセンサシステムに関する。より詳細には、本開示は、感知に関してレイリー散乱メカニズムに依存する、ハイブリッドマルチコアファイバを採用した上述のようなセンサ及びセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
レイリー散乱に依存する分布型ファイバセンサ及びシステムは、構造ヘルスモニタリング(structure health monitoring:SHM)、地盤工学、送電線、石油及びガス管路、並びに油田及びガス田を含むがこれらに限定されない多数の用途に採用されている。特にこれらのセンサ及びシステムは、レイリー散乱メカニズムを採用して、温度、圧力、歪み、音波、及び他のパラメータを、1m未満の空間分解能で測定できる。
【0004】
レイリー散乱に依存する従来のアプローチは、多くの場合、遠距離通信グレードの光ファイバを分布型ファイバセンサ及びシステム内に採用して、これらの測定値(例えば温度、圧力、歪み等)を得る。このような光ファイバに依存する分布型ファイバセンサ及びシステムは、様々な欠点を有する。例えば、入射した信号の光学的パワーは、ファイバ内での低閾値の非線形効果によって制限され得る。その結果、散乱信号は、特に伝送端部から離れたファイバの遠位端において、低くなることが多い。別の例として、これらの光ファイバ内での減衰によっても、特に数十キロメートルのファイバスパンに関して、ファイバの遠位端において散乱信号が制限され得る。更に、シングルモード動作のために構成された遠距離通信グレードのファイバ内での光学的パワーは、このようなファイバの開口数が少ないことにより、低くなる場合が多い。これら全ての影響により、遠距離通信グレードの光ファイバを採用した従来の分布型ファイバセンサ及びシステムに関連するSN比が低下する傾向がある。
【0005】
光ファイバ及びレイリー散乱メカニズムに依存する分布型ファイバセンサ及びシステムは、様々な用途(例えば地盤工学、送電線等)において採用され続けているため、これらのセンサ及びシステムの使用は、ますます長い距離におけるその有効性によって最終的に制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、光信号をより低い損失及びより高いSN比で伝送できる光ファイバを採用した、分布型ファイバセンサ及びファイバセンサシステムに対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様によると、ファイバセンサは:約300nm~約2000nmの波長で動作するよう構成され、更に伝送端部、別の端部、ファイバ外径、及びファイバ長によって画定された、光ファイバを備え、上記ファイバは:
シングルモードコア部分及びマルチモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
上記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド
を備える。
【0008】
本開示の更なる態様によると、上記シングルモードコア部分はGeO2を含み、上記シングルモードコア部分中のGeO2の最大量は、6重量%~50重量%である。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記マルチモードコア部分は、0~45重量%のGeO2、例えば5~45重量%のGeO2、又は5.5~45重量%のGeO2を含む。いくつかの実施形態では、上記マルチモードコア部分中のGeO2の最大量は、5.5重量%~35重量%である。いくつかの実施形態では、上記マルチモードコア部分中のGeO2の最大量は、5~20重量%である。いくつかの実施形態では、上記マルチモードコア部分は、0~45重量%のGeO2、及び0.5~3重量%のClを含む。
【0010】
これらのファイバセンサの態様の他の実装形態では、上記マルチコアファイバは、その長さが約10m~約100kmとなるよう構成される。更に、上記ファイバ長は、特定の実装形態において、約10m、20m、30m、40m、50m、60m、70m、80m、90m、100m、150m、200m、250m、300m、350m、400m、450m、500m、550m、600m、650m、700m、750m、800m、850m、900m、950m、1km、5km、10km、15km、20km、25km、30km、35km、40km、45km、50km、55km、60km、65km、70km、75km、80km、85km、90km、95km、100km、及びこれらの指定された長さの間のあらゆる長さの値に設定できる。
【0011】
更なる実装形態では、上記シングルモードコア部分は、最大相対屈折率Δ31を有し、上記マルチモード差分コア部分は、最大相対屈折率Δ32を有し、0.2%≦Δ31-Δ32≦1%である。
【0012】
上記ファイバの上記伝送端部の上記コア部分は、上記ファイバ内に、約5マイクロメートル~約100マイクロメートル(直径)のスポットサイズを有する単一の光源からの入射光を受信するよう配設及び構成される、請求項1に記載のセンサ。
【0013】
更に、上記ファイバセンサのいくつかの実装形態は:約300nm~約2000nmの波長で動作するよう構成され、更に伝送端部、別の端部、ファイバ外径、及びファイバ長によって画定された、光ファイバを備え、上記ファイバは:
シングルモードコア部分及びマルチモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
上記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド
を備え、
更に、上記ファイバの上記伝送端部は、光源からの光が上記ファイバの上記伝送端部において上記コアに入射した後に、上記シングルモードコア部分及び上記マルチモードコア部分の両方から放出される、全後方散乱信号を発する。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記ハイブリッドコアから放出される上記全後方散乱信号は、基準シングルモードコア光ファイバから得られる後方散乱信号からのSN比より高いSN比を有し、またいくつかの実施形態では、上記ハイブリッドコアから放出される上記全後方散乱信号は、基準シングルモードコア光ファイバから放出される後方散乱信号からのSN比より少なくとも25%(例えば少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%)高いSN比を有する。いくつかの実施形態では、上記ハイブリッドコアから放出される上記全後方散乱信号は、SMF‐28(登録商標)ファイバからの後方散乱信号からのSN比より少なくとも25%(例えば少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%)高いSN比を有する。
【0015】
上記ハイブリッドコアファイバのいくつかの実施形態では、上記ハイブリッドコアから放出される上記全後方散乱信号は、基準シングルモードコア光ファイバからの後方散乱信号より、少なくとも1dBだけ大きい(例えば少なくとも1.5dBだけ大きい)。いくつかの実施形態では、上記ハイブリッドコアから放出される上記全後方散乱信号は、SMF‐28ファイバからの後方散乱信号より、少なくとも1dBだけ(例えば少なくとも1.5dBだけ)大きい。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記ハイブリッドコアから放出される上記全後方散乱信号は、基準シングルモードコア光ファイバからの後方散乱信号からのSN比より少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、又は400%高いSN比を有する。いくつかの実施形態では上記ハイブリッドコアから放出される上記全後方散乱信号は、SMF‐28ファイバからの後方散乱信号からのSN比より少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、又は400%高いSN比を有する。
【0017】
これらのファイバセンサシステムの別の例示的実装形態は:
約300nm~約2000nmの波長でのシングルモード動作又はいくつかのモードでの動作のために構成され、更に伝送端部、別の端部、ファイバ外径、及びファイバ長によって画定された、光ファイバであって、上記ファイバは:
マルチモードコア部分及びシングルモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
上記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド
を備える、光ファイバ;
入射光のスポットを、上記ファイバの上記伝送端部において、上記コアの少なくとも一部分へと配向するよう構成された、光源;
上記入射光のスポットが、上記ファイバの上記伝送端部において、上記ハイブリッドコアに入射した後に、上記ハイブリッドコアから放出される全後方散乱信号を受信するよう構成された、レシーバ;並びに
上記後方散乱信号を処理して、上記ファイバに近接した又は接触した特徴部分に対応するセンサ測定値を得るよう構成された、信号問い合わせ要素
を備える。
【0018】
いくつかの実施形態によると、上記センサ測定値は、温度、圧力、歪み、変位及び雑音からなる群からの1つ以上の特徴を含む。
【0019】
上記ファイバセンサシステムの他の実施形態によると、本開示中で概説される上述のハイブリッドコアファイバ及びファイバセンサの構成のうちのいずれを、上記システムに採用できる。上記ファイバセンサシステムの特定の態様では、上記センサ測定値は、温度、圧力、歪み、変位及び雑音からなる群からの1つ以上の特徴を含むことができる。
【0020】
上記ファイバセンサシステムの特定の実装形態では、上記システムは、構造体、送電線、石油ライン若しくはパイプ、ガスライン若しくはパイプ、配水ライン若しくはパイプ、基礎、道路、導管、水路、貯水池、井戸、又はその他の地盤工学的特徴部分の、状態、完全性、性能及び/又は特性の監視に使用するために構成される。
【0021】
いくつかの実施形態によると、光ファイバは:
(i)シングルモードコア部分及びマルチモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
(ii)上記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド
を備え、
上記マルチモードコア部分中のGeO2の最大量は、5.5重量%~35重量%である。
【0022】
いくつかの実施形態によると、上記シングルモードコア部分中のGeO2の最大量は、6重量%~50重量%である。いくつかの実施形態によると、上記シングルモードコア部分は最大相対屈折率Δ31を有し、上記マルチモード差分コア部分は最大相対屈折率Δ32を有し、0.2%≦Δ31-Δ32≦1%である。
【0023】
更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、またその一部は、当業者には、「発明を実施するための形態」の記載から容易に明らかとなるか、又は以下の「発明を実施するための形態」、請求項及び添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実践することにより認識されるであろう。
【0024】
以上の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも例示的なものにすぎず、請求項の本質及び特性を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、更なる理解を提供するために含まれており、また本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は、1つ以上の実施形態を図示し、本記載と併せて、様々な実施形態の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】本開示のある態様による、ハイブリッドコア光ファイバを採用したファイバセンサの軸方向断面概略図
【
図1B】
図1Aに示すファイバのファイバセンサ部分の横断面概略図
【
図1C-1G】
図1A及び1Bに示すファイバ50のいくつかの実施形態の相対屈折率プロファイルの概略図
【
図3】
図1A及び1Bに示すファイバのある製造実施形態の相対屈折率(プロファイルA)
【
図4】SMF‐28ファイバに接合された
図3に示す屈折率プロファイルを有するハイブリッドコアファイバ50の概略図
【
図5】
図4に示すような
図3のハイブリッドコアファイバ50(~1km)と共に配置されたSMF‐28ファイバ(~1km)に関する、OTDRトレースを示す。光はSMF‐28ファイバ(OTDRトレースの左側部分)へと入射した。
【
図6】本開示のある態様によるハイブリッドコア光ファイバを採用したファイバセンサシステムの概略斜視図
【
図7A】光源から、
図6に示すファイバセンサシステムの光ファイバ中のコアに配向された入射光の、拡大端部概略図
【
図7B】光源から、
図6に示すファイバセンサシステムの光ファイバ中のコアに配向された入射光の、拡大端部概略図
【
図7C】光源から、
図6に示すファイバセンサシステムの光ファイバ中のコアから放出された後方散乱光信号の、拡大端部概略図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書中で説明される光ファイバと組み合わせて、以下の用語法を使用する:
本明細書中で使用される場合、用語「屈折率プロファイル」又は「相対屈折率プロファイル」は、屈折率又は相対屈折率とファイバの半径Rとの間の関係である。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「相対屈折率」は:
【0028】
【0029】
として定義され、ここでn(r)は、特段の記載がない限り、光ファイバの半径rにおける屈折率であり、またr=0は、ファイバの中心線に対応する。相対屈折率は、特段の記載がない限り、1550nmにおいて定義される。本明細書に記載の実施形態では、基準屈折率nREFは、純(即ち非ドープ)シリカガラスの屈折率である。本明細書中で使用される場合、相対屈折率はΔで表され、その値は、特段の記載がない限り、「%」を単位として与えられる。ある領域の屈折率が基準屈折率nREF未満である場合、相対屈折率のパーセントは負となり、抑制領域又は抑制屈折率を有すると表現され、最小相対屈折率は、特段の記載がない限り、相対屈折率が最も負となる点で計算される。ある領域の屈折率が基準屈折率nREFより大きい場合、相対屈折率のパーセントは正となり、上記領域は、上昇している、又は正の屈折率を有すると表現できる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「アップドーパント」は、純非ドープSiO2に比べてガラスの屈折率を上昇させるドーパントを指す。本明細書中で使用される場合、「ダウンドーパント」は、純非ドープSiO2に比べてガラスの屈折率を低下させる傾向を有するドーパントを指す。アップドーパントは、アップドーパントではない1つ以上の他のドーパントを伴う場合、負の相対屈折率を有する光ファイバのある領域中に存在してよい。同様に、アップドーパントではない1つ以上の他のドーパントが、正の相対屈折率を有する光ファイバのある領域中に存在してよい。ダウンドーパントは、ダウンドーパントではない1つ以上の他のドーパントを伴う場合、正の相対屈折率を有する光ファイバのある領域中に存在してよい。同様に、ダウンドーパントではない1つ以上の他のドーパントが、負の相対屈折率を有する光ファイバのある領域中に存在してよい。
【0031】
本明細書中で使用される場合、光ファイバの開口数(NA)は、IEC‐60793‐1‐43(TIA SP3‐2839‐URV2 FOTP‐177)、名称「測定方法及び試験手順:開口数(Measurement Methods and Test Procedures: Numerical Aperture)」に記載されている方法を用いて測定された開口数を意味する。
【0032】
用語「マイクロメートル」及び「μm」は、本明細書中では、相互交換可能なものとして使用される。用語「ナノメートル」及び「nm」は、本明細書中では、相互交換可能なものとして使用される。
【0033】
これより、本発明の好ましい実施形態について詳細に言及する。その例は添付の図面に図示されている。可能な限り、図面全体を通して、同一又は類似の部分を指すために同一の参照番号を使用する。
【0034】
本開示では、低い信号損失及び高いSN比を特徴とする、感知に関してレイリー散乱メカニズムに依存する分布型ファイバセンサファイバセンサシステムについて、例示的に概説する。より詳細には、本開示は、ハイブリッドコアファイバを採用した分布型センサ及びセンサシステムについて詳述する。
【0035】
図1A、1B及び1Cを参照すると、本開示のある態様による、ファイバセンサ100が概略図で示されている。ファイバセンサ100は、光源110、光源110に連結された光ファイバ50、及び光ファイバ50が供給する後方散乱光を受信/検出するために光ファイバ50に光学的に連結された、レシーバ110aを含む。後方散乱光は、戻って光源に衝突しないように偏向され、光学部品112、例えばビームスプリッタ、ファイバカプラ、又はサーキュレータによってレシーバ110aへと配向される。光ファイバ50は、長さ52、ファイバ外径54、伝送端部10a(上記ファイバの第1の端部)、別の端部(第2の端部)10b、及びハイブリッドコア30によって画定される。
図1、1A及び1Bに例示的に示されているように、ファイバコア30は、シングルモードコア部分31(内側コア部分)及びマルチモードコア部分32(外側コア部分)を内包する。光ファイバ50はクラッド40も含み、これはハイブリッドコア30を取り囲み、また外側クラッド直径44を有する。上記光ファイバは保護コーティング51を含み、これは、クラッド40の周りに配置された1つ以上のコーティング層を備える。コーティングされたファイバは、外径54を有する。
【0036】
ファイバセンサ100のいくつかの実施形態では、光ファイバ50は、約10m~約100kmの長さ52によって画定される。特定の実施形態では、ファイバ長52は、約10m、20m、30m、40m、50m、60m、70m、80m、90m、100m、150m、200m、250m、300m、350m、400m、450m、500m、550m、600m、650m、700m、750m、800m、850m、900m、950m、1km、5km、10km、15km、20km、25km、30km、35km、40km、45km、50km、55km、60km、65km、70km、75km、80km、85km、90km、95km、100km、及びこれらの指定された長さの間のあらゆる長さの値に設定できる。更に、本開示の他の態様は、100kmを超えるファイバ長52を有する光ファイバ50を含み、これは、SN比及び/又は空間分解能に関する要件が比較的厳しくない(例えば>1mである)ファイバセンサ100のいくつかの用途に関して実現可能である。
【0037】
いくつかの態様では、本開示のファイバセンサ100に採用される光ファイバ50は、約50マイクロメートル~約500マイクロメートルのクラッド直径44を有してよい。更に、これらの態様で採用されるファイバ50は、約50マイクロメートル、75マイクロメートル、100マイクロメートル、125マイクロメートル、150マイクロメートル、200マイクロメートル、300マイクロメートル、400マイクロメートル、500マイクロメートル、及びこれらの指定された直径の間のあらゆる直径のクラッド直径44を有するように構成できる。
【0038】
いくつかの態様では、本開示のファイバセンサ100に採用されるコーティング済み光ファイバ50は、約100マイクロメートル~約1000マイクロメートルの外側ファイバ直径54を有する。更に、これらの態様で採用されるファイバ50は、約100マイクロメートル、150マイクロメートル、200マイクロメートル、250マイクロメートル、300マイクロメートル、400マイクロメートル、500マイクロメートル、750マイクロメートル、1000マイクロメートル、及びこれらの指定された直径の間のあらゆる直径の外側ファイバ直径54を有するように構成できる。
【0039】
再び
図1、1A及び1Bを参照すると、光ファイバ50、より詳細にはコア30及びクラッド40は、典型的にはシリカ組成物で製作される。更に、光ファイバ50、より詳細にはコア30のシングルモード部分31及びマルチモード部分32並びにクラッド40は、好ましくは、約300nm~約2000nmの波長でのシングルモード及びマルチモード動作に十分な、ファイバ内の全体的な屈折率プロファイルを達成するために、様々なドーパントレベルを有するように構成される。特定の態様では、コア30は、コア30の屈折率を(純シリカに比べて)上昇させるための1つ以上のドーパント、例えばGeO
2、P
2O
5、Al
2O
3でドープされたシリカである。特定の実装形態では、クラッド40は、クラッドの屈折率を低下させるための1つ以上のドーパント、例えばF、B
2O
3でドープされる。
【0040】
例えば
図1A、1B及び1Cに示す実施形態において図示されているように、光ファイバ50は、そのコア部分31、32が、本開示のファイバセンサ100の実装形態によるファイバの中心軸80の周りに対称に配設されるように、構成される。この実施形態では例えば、コア部分31は、光軸に関してセンタリングされ、300nm~2000nm、例えば1200nm~1600nmの波長λ1に関してシングルモードとなっている。好ましくは、コア部分31の外半径は、3~6μmである。コア部分32は環状であり、コア部分31を取り囲み、いくつかの実施形態(
図1C~1Fを参照)では、コア31に直接隣接して配置される。いくつかの実施形態によると、コア部分32の内半径及び外半径は、それぞれ3~10μm(例えば2~6μm)及び10~100μmである。
【0041】
いくつかの実施形態ではコア部分32は、同一の波長λ1に関して(例えば300nm~2000nmに関して)マルチモードとなっている。いくつかの実施形態では、コア部分32は、600nm~1600nm、又は1200nm~1600nmの波長に関してマルチモードとなっている。1200nm~1600nmの波長は、シリカ系コアファイバに関する低損失(低減衰)ウィンドウ内に位置し、1200nm~1600nmの範囲内に位置する波長でファイバセンサ100を動作させることにより、収集された後方散乱光の最大量がレシーバ110aに供給され、従ってSN比及びシステムの検出感受性が最大化される。従って、レシーバ110aは好ましくは、1200nm~1600nmの波長範囲内の後方散乱光を受信するように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、内側コア部分31及び外側コア部分32(例えば
図1Gを参照)は、低屈折率層33によって(即ち、コア部分31、32の最大屈折率より小さな最大屈折率を有する層33によって)隔てられる。このように低屈折率層33によって隔てられることにより、マルチモードコア32への結合部分から、ファイバコア部分31を通って(ファイバの伝送端部10aから端部10bに向かって)伝播する光の量が最小化される。いくつかの実施形態では、コア部分32の外半径は10~50μmであり、クラッド40の外半径は50~75μmである(外径44は約100~150μm、例えば125μmである)。いくつかの実施形態では、コア部分32の外半径は10~50μm(例えば20μm、22μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、又はこれらの間のいずれの値)である。
【0043】
図1Gに対応するある例示的実施形態では、ファイバは:(i)最大約25重量%のGeO
2でドープされたシリカであり、約4μmの外半径を有する、内側コア部分(シングルモードコア部分31);並びに(ii)最大約18重量%のGeO
2でドープされ、約20μmの内半径及び約50μmの外半径を有する、最外コア部分(マルチモードコア部分32)を有する。この実施形態では、ファイバコア30の低屈折率コア層33(即ち、コア部分31、32の屈折率より小さな屈折率を有するコア層)は、(純(非ドープ)シリカガラスに対する)最大相対屈折率Δ
33を有し、15重量%のGeO
2でドープされ、コア部分31とコア部分32との間に挟まれている。確認できるように、この例示的なファイバのコア30全体は、純シリカに対してドープされておらず、この場合、コアの各部分は、少なくとも15重量%のGeO
2を含む領域を有する。この例示的実施形態では、クラッド40は純シリカであり、フッ素及びホウ素を含有しない。いくつかの実施形態では、クラッド40は、フッ素及び/又はホウ素でダウンドープされている。
【0044】
いくつかの実施形態では層33は、15重量%未満(例えば3重量%又はそれ以上)のGeO2でドープされたシリカであってよい。いくつかの例示的実施形態では、層33は、5重量%のGeO2、10重量%のGeO2、15重量%のGeO2、又はこれらの間のいずれの量のGeO2でドープされたシリカである。いくつかの実施形態では、層33は、その最大相対屈折率Δ33がコア部分32の最大相対屈折率Δ32未満となる限り、15重量%超のGeO2を含む。
【0045】
図1Cにも示されているように、光ファイバ50は、そのシングルモードコア部分31が、波長600~1600nm(例えば1200~1600nm)において、マルチモードコア部分32より有意に高い屈折率を有するように、構成される。いくつかの実施形態では、(純(非ドープ)シリカガラス)の最大相対屈折率に対する)コア部分31の最大相対屈折率Δ
31は約0.4%~3%である。更に、コア部分31は、約0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.2%、1.5%、1.8%、2%、2.2%、2.5%、又は3%、及びこれらの指定された値の間のあらゆる範囲の相対屈折率Δ
31を有するように構成できる。対照的に、例えばSMF‐28では、コアは(純シリカに対して)0.34の最大相対屈折率を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、(純(非ドープ)シリカガラス)の最大相対屈折率に対する)波長600~1600nmにおけるマルチモードコア部分32の最大相対屈折率Δ32は、純シリカに対して約0~約2.7%、いくつかの実施形態では0.1%~2.7%であってよい。更に、コア部分32は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.3%、2.5%、又は2.7%、及びこれらの指定された値の間のあらゆる範囲のΔ32を有するように構成できる。本明細書に記載の実施形態では、Δ31>Δ32である。
【0047】
いくつかの実施形態では、Δ31とΔ32との間の差は、約0.3%~約0.6%である。いくつかの実施形態では、0.33%≦Δ31-Δ32≦0.5%である。例えば、Δ31-Δ32は、0.3%、0.31%、0.33%、0.37%、0.4%、0.43%、0.46、0.5%、0.55%、0.6%、及びこれらの指定された値の間のあらゆる範囲であってよい。
【0048】
クラッドは、純シリカに対する最大相対屈折率Δ40を有する。いくつかの例示的実施形態では、0%≦Δ40≦-1%である。いくつかの例示的実施形態では、0.1%≦Δ40≦-0.7%である。いくつかの例示的実施形態では、4%≧Δ31-Δ40≧0.4%である。いくつかの例示的実施形態では、3%≧Δ31-Δ40≧0.4%である。いくつかの例示的実施形態では、1.5%≧Δ31-Δ40≧0.3%である。いくつかの例示的実施形態では、1.5%≧Δ31-Δ40≧0.4%である。例えばΔ31-Δ40は、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、及びこれらの間のいずれの値であってよい。
【0049】
いくつかの例示的実施形態では、2.7≧Δ31-Δ40≧0%である。いくつかの例示的実施形態では、1.5%≧Δ32-Δ40≧0.1%(例えば0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.25%、1.5%、及びこれらの間のいずれの値)である。
【0050】
コア層33を内包するいくつかの実施形態では、Δ31>Δ32かつΔ32>Δ33であり、Δ32とΔ33との間の差は約0.1%~1%である。
【0051】
本開示のいくつかの態様では、ファイバ50のコア30は、約20マイクロメートル~約100マイクロメートルの外側コア直径34を有するように構成される。他の態様では、ファイバ50のコア30は、好ましくは、約30マイクロメートル~約100マイクロメートル、又は40~100マイクロメートルの外側コア直径34を有するように構成される。
【0052】
レイリー散乱をベースとした分布型感知システム(例えば
図2を参照)では、光ファイバ内の位置zで発生するレイリー散乱による、レシーバが検出する後方散乱光信号150dのパワーP
sは:
【0053】
【0054】
であり、ここでP0は、位置z=0においてファイバに供給される入射光150aのパワーであり、Cは、散乱光の捕捉係数であり、αsはレイリー散乱係数(レイリー散乱による損失係数)であり、α0は、他の因子による損失に関する損失係数である。
【0055】
光ファイバ内の後方散乱光の捕捉係数は:
【0056】
【0057】
として定義されるファイバの捕捉係数Cに関連(比例)し、ここでNAはコアの開口数であり、n
1はコアの屈折率であり、κはファイバコアのタイプに依存するパラメータである。階段状屈折率コアプロファイルを有する複数のシングルモードコアのみを備えた典型的なシングルモードファイバに関して、κは約0.38であり、典型的な段階的屈折率プロファイルのシングルモードファイバに関して、κは約0.25である。
図2に示すファイバセンサ100で利用されるハイブリッドコアファイバ50に関して、κはここでも(コアプロファイルの形状に応じて)0.25~0.38となるが、ファイバ50の開口数NAは、典型的なシングルモード伝送ファイバの開口数より大きくなる。
【0058】
典型的な最新のシングルモード伝送ファイバ(例えばSMF‐28ファイバ等)では、レイリー散乱係数が低い(ファイバコア材料の品質が高い)こと、及びファイバのNAが小さいことによって捕捉係数が小さくなることにより、レイリー後方散乱光のパワーは極めて小さくなる。典型的なシングルモード伝送ファイバは、約0.11~0.12の開口数(NA)を有する(例えばSMF~28ファイバに関して0.12である)。本明細書に記載のハイブリッドコアファイバ50は、0.15超、例えば約0.2~0.4(例えば0.2~0.3)の開口数を有する。ハイブリッドコア30の開口数が大きくなるほど、基準シングルモードファイバによって提供されるものに対して、検出されるパワーPsが高くなる。(本明細書中で言及されるように、基準シングルモードコアファイバは、光ファイバ50のシングルモードコア部分31と同一のシングルモードコア直径及びコア組成、並びに光ファイバ50と同一のファイバクラッド直径、クラッド組成及び長さを有する。)同様に、ハイブリッドコア30の開口数が大きくなるほど、SMF‐28ファイバによって提供されるものに対して、検出されるパワーPが高くなる。
【0059】
理論によって束縛されるものではないが、光ファイバ50のハイブリッドコア30中で、ファイバセンサ100のレシーバ110aへと伝送される、後方散乱信号は、基準シングルモードファイバを利用するセンサシステムで伝送されるものに比べて、振幅が大きく、またより高いパワーPsを有する。これは:(i)内側コア部分31のドープレベルが高いこと;並びに(ii)シングルモード部分31(内側コア部分)及びマルチモード外側コア部分32の両方を通って伝播する後方散乱光がより効率的に捕捉されることによる。(本明細書に記載の少なくともいくつかの実施形態では、基準シングルモードファイバは、ニューヨーク州コーニングのCorning Incorporatedから入手可能なSMF‐28ファイバである。)従って、ハイブリッドコア構成を有する光ファイバ50を採用するセンサシステムは、シングルモード伝送ファイバ(例えばSMF‐28ファイバ)を感知用ファイバとして使用する典型的なセンサシステムに比べて、低い信号損失、高いSN比、及び/又は良好な空間分解能を得ることができる。
【0060】
よって、本発明者らは、シングルモードコア部分31に隣接して配置された(例えば
図1B、1C~1G、又は
図3を参照)、開口数が大きく(例えばNA>0.15、又は0.15≦NA≦0.4、又は0.2≦NA≦0.4)、直径が大きなマルチモードコア部分32を用いて、後方散乱光の捕捉効率を向上させることができることを発見した。
【0061】
従って、一実施形態では、シングルモードコア部分31はマルチモードコア部分32に取り囲まれ、光源からの光が主に(例えば光学的パワーの>80%、好ましくは光の光学的パワーの>90%、又は>95%までもが)コア30のシングルモードコア部分31へと入射する。後方散乱光は、シングルモードコア31及びマルチモードコア32の両方によって収集され、光検出器(レシーバ110a)へと供給される。これにより、後方散乱光は、マルチモードコア部分32を含むコア30全体によって、感知システムの光検出器へと案内される。ハイブリッドコア光ファイバ50によって検出器に供給される後方散乱光に関連する光信号のパワーは、典型的なシングルモード伝送ファイバによって供給されるものよりもはるかに大きい。よって、ハイブリッドコア光ファイバ50の使用により、感知システム100のSN比が、基準シングルモードファイバを利用した同等のシステムに比べて、及び/又はSMF‐28ファイバを用いた同等のシステムに比べて、改善される。
【0062】
図1Cは、ハイブリッドコア光ファイバ50の相対屈折率プロファイルを示す。このファイバは、階段状屈折率マルチモードコア部分32によって取り囲まれた、階段状屈折率プロファイルを有するシングルモードコア部分31を利用する。
図1D~1Fに示すように、ハイブリッドコア30の他の設計も可能である。なお、光ファイバ50において、階段状屈折率又は段階的屈折率シングルモードコア部分31を、段階的屈折率又は階段状屈折率マルチモードコア部分32で取り囲んでもよい。
【0063】
別の例示的実施形態では、ファイバセンサ100は、ハイブリッドコアの基本モードのみを用いて動作することにより、ハイブリッドコア光ファイバ50を分布型ファイバセンサ100内で利用する。即ち、光のパルスはファイバに、基本波(LP01)のみで入射し、後方散乱光(信号)は、同様に基本モードで収集されてレシーバへと供給される。(これは例えば、シングルモードファイバの小さなセクションを、ハイブリッドコアファイバ50の伝送端部10aに接合することによって実施でき、これにより、高次モードがレシーバに到達できなくなる。)よってこの実施形態では、シングルモードファイバの上述の小さなセクションを、光ファイバ50に連結でき、また基本モードの信号光をファイバ50に入射させるため、及び基本モードの後方散乱光を光ファイバ50から受信するために利用できる。これらの実施形態のファイバ50は、
図1C~1Fに示されているファイバの屈折率プロファイルと同様の屈折率プロファイルを有してよい。しかしながら他の実施形態では、高次モードも検出でき、このような高次モードからの後方散乱信号を必要に応じて利用してもよい。
【0064】
シングルモードコア部分31は、基準シングルモードファイバの相対屈折率より大きな相対屈折率を有するため、光ファイバ50のコア30は、より多くのレイリー後方散乱信号を生成し、光ファイバ50の感知性能を改善する。コア部分31中の高レベルのGe(例えば6重量%超、8重量%超、例えば10~50重量%、又は60重量%)も、後方散乱を増大させる。最後に、コア30(一方又は両方ノコア部分)をF(例えば2~5重量%)でドープしても、後方散乱が増大し、ファイバの後方散乱光捕捉効率が改善され、従ってファイバセンサのファイバ50の感知性能が改善される。
【0065】
ある例示的実施形態によると、ある相対屈折率プロファイルを有する、製造済みのハイブリッドコアファイバ50が、
図3に図示されており(プロファイルA)、ここでΔ
31、Δ
32及びΔ
31は850nmで測定された。この光ファイバ50は、最大相対屈折率Δ
31が約1.28%のシングルモードコア部分31を有するコア30を備える。このファイバはまた、最大相対屈折率Δ
32が約0.88%のマルチモードコア部分32を備える。
【0066】
図3(プロファイルA)のファイバの、波長1550nmにおけるMFD(モードフィールド直径)は、9.7μmである。典型的なシングルモードファイバ、例えばCorning incorporatedから入手可能なSMF‐28ファイバは、1550nmの波長において約10μmのMFDを有する。よって、
図3(プロファイルA)のファイバ50のMFDは、SMF‐28ファイバ等の典型的なシングルモードファイバと基本的に同等である。SMF‐28ファイバのコアのサイズ(コアの外径)もまた、
図3(プロファイルA)に対応するハイブリッドコアファイバ50のコア部分31と同等である。
図3のプロファイルAに対応する光ファイバ50は、約23重量%のGeO
2でドープされたシリカである内側コア部分(シングルモードコア部分31)、及び約16重量%のGeO
2でドープされた外側コア部分(マルチモードコア部分32)を有する。この実施形態(プロファイルA)では、クラッド40は純シリカであり、フッ素及びホウ素を含有しない。よってクラッド40は、0である最大相対屈折率Δ
40を有する。この実施形態では、Δ
31-Δ
40は約1.3%であり、Δ
32-Δ
40は約0.8%である。なお、SMF‐28ファイバでは、コアの最大相対屈折率とクラッドの最大相対屈折率との間の差は、0.34である(SMF‐28ファイバのクラッドは純シリカクラッドである)。
【0067】
他の実施形態では、クラッド40は、フッ素及び/又はホウ素ドープシリカを含んでよい(
図3のプロファイルB)。より具体的には、プロファイルBのファイバはプロファイルAのファイバと同様であるが、コア及びクラッド中にフッ素が存在することにより、ファイバプロファイル全体が、プロファイルAのファイバに対して下方にシフトされている。
【0068】
一実施形態によると、
図4に示すように、およそ1kmの、
図3に示す屈折率プロファイルを有するハイブリッドコアファイバ50(プロファイルAのファイバ)を、約1kmのSMF‐28(基準ファイバ)に接合した。この図に示されているように、これら2つのファイバは、SMF‐28ファイバのコア部分がファイバ50のシングルモードコア部分31に接合されるように整列されている。これら2つのファイバの間の適切な整列を保証するために、1550nmの波長を有する光源(光はSMF‐28ファイバに入射させた)と、基本モードのみがシングルモードコア部分31に入射することを保証するためにビーム形状を監視するための、光ファイバ50の出力のビームプロファイラ(市販)とを用いて、接合前のファイバ間整列を実施した。この実施形態では、整列を実施することにより、高次モードの光をファイバ50に入射させることなく、ハイブリッドコアファイバ50において主に基本モードを励起した。接合の完了後、標準的なOTDRユニットを用いて、この2つのファイバのシステムを通る後方散乱光を監視した。
図5は、後方散乱光が2つの接合されたファイバを通って伝播する際の、後方散乱光のパワー(dB)を示すOTDRトレースである。より具体的には、SMF‐28ファイバ(比較用ファイバ)を光パルス試験器(optical time domain reflectometer:OTDR)に接続し、波長1310nm及び1550nmでのOTDRトレース(パワー(dB)として測定される、後方散乱光の量)を測定した(
図5)。確認できるように、ハイブリッドコアファイバ50からの後方散乱信号は、典型的なシングルモードファイバ、例えばSMF‐28ファイバからの後方散乱光より有意に大きい。SMF‐28ファイバのシングルモードコアと、
図3(プロファイルA)のファイバに関するコアのシングルモード部分31との間の、測定された後方散乱光の差は、約1.3dBである。しかしながらこの実験では、本発明者らは、ファイバ50のマルチモード部分32を通って伝播する光の量を測定しなかった。ファイバ50のマルチモードコア部分32によって収集されるこの追加の光を計算することにより、収集された信号の合計に更なる4dBの改善を提供した。この例示的実施形態では、SMF‐28ファイバ(基準ファイバ)の代わりに光ファイバ50を用いた場合の全体的な改善は、約5.3dBであると計算され、これは、例えばSMF‐28ファイバ等の基準シングルモードコア光ファイバからの後方散乱信号からのSN比より約3.5倍(即ち約350%)高いSN比に相当する。この光ファイバ50のNAは、約0.2である。
【0069】
ハイブリッドコアファイバ50のいくつかの実施形態では、NAは0.3であり、またいくつかの実施形態では0.4である。これらのファイバのSN比の全体的な改善は、例えばSMF‐28ファイバ等の基準シングルモードコア光ファイバからの後方散乱信号からのSN比に対して(NAが0.3である場合)約6倍、又は(NAが0.4である場合)約11倍である。
【0070】
本開示のファイバセンサ100に関して、光ファイバ50のハイブリッドコアとしての特性は、典型的なシングルモードコアファイバからよりも多くの後方散乱光を収集するという点で、有利である。例えば、入射光は、ファイバ50の伝送端部10aにおいてシングルモードコア部分31に入射でき、そして、シングルモードファイバを通って伝播するのと全く同様に、ファイバの他方の端部に向かって、シングルモードコア部分31を通って伝播する。しかしながら、光ファイバ50はマルチモードコア部分32も含んでいるため、後方散乱光は、はるかに大きなコア(コア30全体)に収集されることになり、従ってより多くの光が捕捉されてレシーバに供給され、より良好な信号の収集が可能となる。これにより、ファイバセンサ100のSN比の改善(より高い感受性)が得られる。
【0071】
コアのシングルモード部分からだけでなく、コア30全体から(シングルモードコア部分31から、及びマルチモードコア部分32から)後方散乱信号を受信する検出器又はレシーバ110aは、より高い振幅(より大きなパワー)の後方散乱光信号を受信する。その結果、光ファイバ50のこの特性により、コア30から放出された全後方散乱信号に関して、典型的なシングルモードファイバから受信されるものよりも良好なSN比(S/N)がもたらされ、これは、分布型感知用途のためのファイバセンサ100における、より高い空間分解能につながる。更に、本開示の分野における当業者であれば、ファイバセンサ100と共に使用するために選択された光源110からのスポットサイズに適応できるよう、特定のサイズ及び相対屈折率のコア部分31及び32を有するように、光ファイバ50を構成できる。例えばいくつかの実施形態では、単一の光源からの入射光は、約5マイクロメートル、10マイクロメートル、15マイクロメートル、20マイクロメートルのスポットサイズ、及びこれらの指定されたスポットサイズの間のあらゆるスポットサイズを有してよく、その一方で光ファイバ50は、これに適合した(即ち略同一の)直径のコア部分31を有してよい。また例えばいくつかの実施形態では、単一の光源からの入射光は、直径20マイクロメートル、30マイクロメートル、40マイクロメートル、50マイクロメートル、60マイクロメートル、70マイクロメートル、80マイクロメートル、90マイクロメートル、100マイクロメートルのスポットサイズ、及びこれらの指定されたスポットサイズの間のあらゆるスポットサイズを有してよく、その一方で光ファイバ50は、これに適合した(即ち略同一の)直径のコア部分32を有してよい。
【0072】
よって、ファイバセンサ100のある実装形態によると、光ファイバ50は、ファイバ50の伝送端部10aにおいてコア30から放出される全後方散乱信号が、基準シングルモードコアファイバから得られる後方散乱信号のSN比より高いSN比を有するように、構成できる。更に、光ファイバ50のハイブリッドコア30から放出される全後方散乱信号のSN比は、基準シングルモードファイバから得られる後方散乱信号に関連するSN比より、少なくとも約1.5倍高くなり得る。特定の態様では、光ファイバ50のコア30から放出される全後方散乱信号のSN比は、基準シングルモードファイバから得られる後方散乱信号に関連するSN比より、少なくとも約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、11倍、又はこれらの指定された係数の間のあらゆる値だけ、高くなり得る。
【0073】
ファイバセンサ100のいくつかの実装形態によると、光ファイバ50は、ファイバ50の伝送端部10aにおいてコア30から放出される全後方散乱信号が、SMF‐28ファイバから得られる後方散乱信号のSN比より高いSN比を有するように、構成できる。更に、光ファイバ50のハイブリッドコア30から放出される全後方散乱信号のSN比は、SMF‐28ファイバから得られる後方散乱信号に関連するSN比より、少なくとも約1.5倍高くなり得る。特定の態様では、光ファイバ50のコア30から放出される全後方散乱信号のSN比は、SMF‐28ファイバから得られる後方散乱信号に関連するSN比より、少なくとも約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、11倍、又はこれらの指定された係数の間のあらゆる値だけ、高くなり得る。
【0074】
図6、7A、7B及び7Cを参照すると、本開示の別の態様による、光ファイバ50を採用したファイバセンサシステム200が図示されている。センサシステム200は、約300nm~約2000nm(例えば1200nm~2000nm)の波長で動作するよう構成された光ファイバ50を含む。更に、光ファイバ50は、伝送端部10a、別の(第2の)端部10b、及び長さ52によって画定される。更に、センサシステム200で採用される光ファイバ50は、ハイブリッドコア30と、このコア30を取り囲むクラッド40とを共に含む。コア30は、マルチモードコア部分32に取り囲まれたシングルモードコア部分31を備える。特段の記載がない限り、
図6、7A及び7Bに示されている、関連要素(例えばクラッド40)を伴うハイブリッドコア光ファイバ50は、
図1A~1G又は3に示されているファイバ50と同一又は同様の特徴及び機能を有するように構成される。
【0075】
図6、7A及び7Cに示されているファイバセンサシステム200は、入射光150aの単一のスポット160を、ファイバ50の伝送端部においてハイブリッドコア30中へと配向するよう構成された、光源110も含む。
図7Aに示されているように、一実施形態によると、光源110は、ファイバ50の伝送端部10aにおいてコア30のシングルモード部分31のみと重なることが好ましいスポットサイズ160を有する、光信号150a(光ビーム)を生成する。この実施形態では、スポット160は、ファイバ50内のコア30のシングルモード部分31のみと重なり、従って、コアに注入された光信号が、ファイバ50の長さにわたって伝送される際に、シングルモードにとどまることが保証される。ファイバセンサシステム200での使用に好適な光源110としては、限定するものではないが:波長可変レーザ、LED光源、半導体レーザダイオード、及びVCSEL源が挙げられる。
【0076】
図6、7B及び7Cに示されているファイバセンサシステム200は、入射光150aの単一のスポット160を、ファイバ50の伝送端部においてハイブリッドコア30中へと配向するよう構成された、光源110も含む。
図7Bに示されているように、一実施形態によると、光源110は、伝送端部10aにおいてファイバ50のコア30全体と重なることが好ましいスポットサイズ160を有する、ガウスモードの光信号150aを生成する。この実施形態では、スポット160は、のコアのシングルモード部分31及びコアのマルチモード部分32の両方と重なり、光は、コアの両方の部分を通ってファイバの端部10bに向かってこのモードで伝播する際、マルチモードのままとどまる。ファイバセンサシステム200での使用に好適な光源110としては、限定するものではないが:波長可変レーザ、LED光源、半導体レーザダイオード、及びVCSEL源が挙げられる。
【0077】
再び
図6、7A、7B及び7Cを参照すると、ファイバセンサシステム200は更に、単一のスポット160からの入射光150aがファイバ50の伝送端部10aにおいてコア30中に注入された後に、コア部分31及び32から放出された全後方散乱信号150dを受信するよう構成された、レシーバ110aを含む。
図6、7A、7B及び7Cに具体的に図示されているように、光源110及びレシーバ110aは単一のユニットに内包され、信号150a及び150dは、本開示の分野の当業者には理解される手段によって、分離されている。本開示の分野の当業者であれば、光源110及びレシーバ110aを、光信号150a及び全後方散乱信号150dをそれぞれ扱う、センサシステム200内の別個のユニットとして構成できることも、理解できる。ファイバセンサシステム200で使用するためのレシーバ110aとしては、光検出器、例えばダイオード組立体、単一のフォトダイオード、又は本開示の分野の当業者には理解されるような、システム200内でレシーバ110aの目的の機能を実施するために好適な他のいずれのレシーバが挙げられる。
【0078】
引き続き
図6、7A、7B及び7Cを参照すると、ファイバセンサシステム200は、光源110及びレシーバ110aに連結された信号問い合わせ要素120も含む。信号問い合わせ要素120は、後方散乱信号150dを処理して、ファイバ50に近接した又は接触した特徴部分に対応するセンサ測定値を得るよう構成される。ファイバセンサシステム200で使用するために好適な信号問い合わせ要素120としては、限定するものではないが、本開示の分野において理解されている、後方散乱信号150dに関連する信号振幅、信号相及び/又は信号周波数の検出又はその他の処理が可能なデバイス、要素及び組立体が挙げられる。
【0079】
これもまた
図6、7A、7B及び7Cに示されているように、ファイバセンサシステム200は、光ファイバ50に近接した特徴部分、例えば足跡300に対応するセンサ測定値(例えば圧力読み取り値)を得るよう、本開示のある態様に従って構成できる。より詳細には、システム200内の光源110及び光ファイバ50は、入射光150aが、ファイバ50の伝送端部10aにおいてコア30に注入されるスポット160を生成するように、構成される(
図1Aを参照)。入射光150aは、ファイバ50のコア30を通って(上述のように、コアのシングルモード部分を通って、又はコア全体を通って)、第2の端部10bに向かって伝播する。入射光150aは、(例えばファイバ内のマイクロメートル規模及び/又はナノメートル規模の欠陥による)レイリー散乱メカニズムによって、ファイバの長さ全体にわたって散乱し、入射光の一部分は、ファイバの伝送端部10aに向かって戻るように散乱し、この後方散乱光は、コア部分31及び32の両方を通って、ファイバの伝送端部10aに向かって伝播する。両コア部分31、32の収集効率は、コア部分31のみの収集効率より高いため、より多くの後方散乱光がファイバの伝送端部10aに向かって伝播し、より強い後方散乱信号150dを生成する。
【0080】
再び
図6、7A、7B及び7Cを参照すると、入射光150aがファイバ50のコア30を通って伝播する際、後方散乱信号150dの強度は、
図6に示されている場所300a等の特定の位置zにおける、ファイバに近接した又は接触した特徴部分(例えば足跡300)に関連するファイバの局所的変位、温度変化及び/又は変形に基づいて変動し得る。その結果、全後方散乱信号150dは、基準光強度に対する強度変化を有し得る。従って、コア30の部分31、32両方から放出された後方散乱信号150dは、レシーバ110a及び/又は信号問い合わせ要素120によって、全後方散乱信号へとまとめることができ、これにより、入射光150aと後方散乱信号150dとの間の波長のシフトと相関し得る、特徴部分300に関連する特定のパラメータ、例えば圧力を算出できる。
【0081】
ファイバセンサシステム200はまた、全後方散乱信号150dを用いて、ファイバ50に近接した又は接触した特徴部分300に関連する、時間及び場所関連情報を推定するよう、構成することもできる。特に、光源110、レシーバ110a、及び信号問い合わせ要素120を、ファイバセンサシステム200内において、レイリー散乱メカニズムによってファイバ50を通って戻るように反射する光の割合を、光パルス試験器(OTDR)を用いて測定するよう、構成できる。特に、システム200は、異なる複数の時点において、全後方散乱信号150dの光の量を入射光150aと比較することによって、ファイバ50に近接した又は接触した特徴部分300に関連する場所300aを確認できる。
【0082】
ファイバセンサ100及びファイバセンサシステム200を含む、本明細書に記載の分布型ファイバセンサ及びセンサシステムはそれぞれ、典型的なシングルモードコア光ファイバ(例えばSMF‐28ファイバ等の、市販グレードかつ遠距離通信グレードの光ファイバ)を感知用ファイバとして採用した従来の分布型ファイバセンサ及びセンサシステムを上回る以下の利点のうちの1つ以上を実証する。本開示のファイバセンサ及びセンサシステムの1つの利点は、ハイブリッドコアファイバ50からの後方散乱信号が、従来のシングルモードコアファイバからの後方散乱信号に比べて、少なくとも0.5dBだけ(例えば1dB~10dBだけ(0.4NAのハイブリッドコアファイバに関して))大きいことである。その結果、本開示のファイバセンサ及びセンサシステムに関連する後方散乱信号のSN比(S/N)を、従来のファイバセンサ及びシステムのSN比に対して大幅に改善できる。別の利点は、非線形散乱効果を比較的受けにくい、パワーが小さな信号を、光ファイバ50のハイブリッドコア30に入射させることによって、(より強力な光源からの)パワーがはるかに高い信号Poを従来のシングルモードコアファイバへと伝送する際のシングルモードコアファイバの後方散乱信号強度と、略同一の後方散乱信号強度Psを達成できることである。
【0083】
第1の態様(態様1)によると、ファイバセンサのある実施形態は:
約300nm~約2000nmの波長で動作するよう構成され、更に伝送端部、別の端部、ファイバ外径、及びファイバ長によって画定された、光ファイバ
を備え、上記ファイバは:
シングルモードコア部分及びマルチモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
上記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド
を備える。
【0084】
第2の態様(態様2)によると、第1の態様に記載のファイバセンサは、GeO2を含む上記シングルモードコア部分を備え、上記シングルモードコア部分中のGeO2の最大量は、6重量%~50重量%である。
【0085】
第3の態様によると、態様1及び2に記載のファイバセンサは、0~45重量%のGeO2、例えば5.5重量%~35重量%のGeO2、又は5~20重量%のGeO2を含むマルチモードコア部分を備える。
【0086】
上述の態様のいずれによると、上記ファイバセンサは、最大相対屈折率Δ31を有する上記シングルモードコア部分を有し、上記マルチモード差分コア部分は、最大相対屈折率Δ32を有し、0.2%≦Δ31-Δ32≦1%である。
【0087】
上述の態様のいずれによると、上記ファイバの上記伝送端部の上記コアは、上記ファイバ内に、約1マイクロメートル~約100マイクロメートルのスポットサイズを有する単一の光源からの入射光を受信するよう配設及び構成される。
【0088】
上述の態様のいずれによると、上記ファイバの上記伝送端部は、光源からの光が上記ファイバの上記伝送端部において上記コアに入射した後に、上記シングルモードコア部分及び上記マルチモードコア部分の両方から放出される、全後方散乱信号を発する。いくつかの態様によると、上記全後方散乱信号は、基準シングルモードコア光ファイバからの後方散乱信号からのSN比より大きな、例えば基準シングルモードコア光ファイバからの後方散乱信号からのSN比より少なくとも2倍大きなSN比を有し、上記全後方散乱信号は、SMF‐28ファイバからの後方散乱信号からのSN比より少なくとも2倍大きなSN比を有する。
【0089】
上述の態様のいずれによると、上記光ファイバは、約300nm~約2000nmの波長でのシングルモード動作又はいくつかのモードでの動作のために構成され、上記ファイバセンサシステムは更に:
入射光のスポットを、上記ファイバの上記伝送端部において、上記コアの少なくとも一部分へと配向するよう構成された、光源;
上記入射光のスポットが、上記ファイバの上記伝送端部において、上記ハイブリッドコアに入射した後に、上記ハイブリッドコアから放出される全後方散乱信号を受信するよう構成された、レシーバ;並びに
上記後方散乱信号を処理して、上記ファイバに近接した又は接触した特徴部分に対応するセンサ測定値を得るよう構成された、信号問い合わせ要素
を備える。いくつかの実施形態によると、上記センサ測定値は、温度、圧力、歪み、変位及び雑音からなる群からの1つ以上の特徴を含む。
【0090】
上記ファイバセンサの上述の態様のいずれによると、上記光ファイバは、約600nm~1600nm、例えば1200nm~1600nmの波長での動作のために構成される。いくつかの例示的実施形態によると、上記光ファイバは、約1200nm~1600nmの波長での動作のために構成され、上記ファイバセンサは更に、1200nm~1600nmの波長の光を供給する光源、及び1200nm~1600nmの波長範囲内にある全後方散乱信号を受信するよう構成されたレシーバを備える。
【0091】
いくつかの実施形態によると、上記光ファイバは:
(i)シングルモードコア部分及びマルチモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
(ii)上記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド、
を備え、
上記マルチモードコア部分中のGeO2の最大量は、5.5重量%~35重量%である。
【0092】
いくつかの実施形態によると、上記シングルモードコア部分中のGeO2の最大量は、6重量%~50重量%である。これらの実施形態によると、上記シングルモードコア部分は最大相対屈折率Δ31を有してよく、上記マルチモード差分コア部分は最大相対屈折率Δ32を有し、0.2%≦Δ31-Δ32≦1%である。
【0093】
更に、請求項の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を実施できることは、当業者には明らかであろう。
【0094】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0095】
実施形態1
約300nm~約2000nmの波長で動作するよう構成され、更に伝送端部、別の端部、ファイバ外径、及びファイバ長によって画定された、光ファイバを備える、ファイバセンサであって、
上記ファイバは:
シングルモードコア部分及びマルチモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
上記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド
を備える、ファイバセンサ。
【0096】
実施形態2
上記シングルモードコア部分はGeO2を含み、
上記シングルモードコア部分中のGeO2の最大量は、6重量%~50重量%である、実施形態1に記載のファイバセンサ。
【0097】
実施形態3
上記マルチモードコア部分は、0~45重量%のGeO2を含む、実施形態1又は2に記載のファイバセンサ。
【0098】
実施形態4
上記マルチモードコア部分はGeO2を含み、上記マルチモードコア部分中のGeO2の最大量は、5.5重量%~35重量%である、実施形態3に記載のファイバセンサ。
【0099】
実施形態5
上記マルチモードコア部分中のGeO2の最大量は、5~20重量%である、実施形態3に記載のファイバセンサ。
【0100】
実施形態6
上記ファイバ長は約10m~100kmである、実施形態1~5のいずれか1つに記載のファイバセンサ。
【0101】
実施形態7
上記シングルモードコア部分は、最大相対屈折率Δ31を有し、
上記マルチモード差分コア部分は、最大相対屈折率Δ32を有し、
0.2%≦Δ31-Δ32≦1%である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のファイバセンサ。
【0102】
実施形態8
上記ファイバの上記伝送端部の上記コアは、上記ファイバ内に、約1マイクロメートル~約100マイクロメートルのスポットサイズを有する単一の光源からの入射光を受信するよう配設及び構成される、実施形態1~7のいずれか1つに記載のセンサ。
【0103】
実施形態9
上記ファイバの上記伝送端部は、光源からの光が上記ファイバの上記伝送端部において上記コアに入射した後に、上記シングルモードコア部分及び上記マルチモードコア部分の両方から放出される、全後方散乱信号を発する、実施形態1~8のいずれか1つに記載のファイバセンサ。
【0104】
実施形態10
上記全後方散乱信号は、基準シングルモードコア光ファイバからの後方散乱信号からのSN比より大きなSN比を有する、実施形態9に記載のセンサ。
【0105】
実施形態11
上記全後方散乱信号は、基準シングルモードコア光ファイバからの後方散乱信号からのSN比より少なくとも2倍大きなSN比を有する、実施形態9に記載のセンサ。
【0106】
実施形態12
上記全後方散乱信号は、SMF‐28(登録商標)ファイバからの後方散乱信号からのSN比より少なくとも2倍大きなSN比を有する、実施形態9に記載のセンサ。
【0107】
実施形態13
実施形態1~12のいずれか1つに記載のファイバセンサシステムであって、
上記光ファイバは、約300nm~約2000nmの波長でのシングルモード動作又はいくつかのモードでの動作のために構成され、
上記ファイバセンサシステムは更に:
入射光のスポットを、上記ファイバの上記伝送端部において、上記コアの少なくとも一部分へと配向するよう構成された、光源;
上記入射光のスポットが、上記ファイバの上記伝送端部において、上記ハイブリッドコアに入射した後に、上記ハイブリッドコアから放出される全後方散乱信号を受信するよう構成された、レシーバ;並びに
上記後方散乱信号を処理して、上記ファイバに近接した又は接触した特徴部分に対応するセンサ測定値を得るよう構成された、信号問い合わせ要素
を備える、実施形態1~12のいずれか1つに記載のファイバセンサシステム。
【0108】
実施形態14
上記センサ測定値は、温度、圧力、歪み、変位及び雑音からなる群からの1つ以上の特徴を含む、実施形態13に記載のシステム。
【0109】
実施形態15
上記光ファイバは、約600nm~1600nmの波長での動作のために構成される、実施形態1~14のいずれか1つに記載のファイバセンサ。
【0110】
実施形態16
上記光ファイバは、約1200nm~1600nmの波長での動作のために構成される、実施形態1~15のいずれか1つに記載のファイバセンサ。
【0111】
実施形態17
上記光ファイバは、約1200nm~1600nmの波長での動作のために構成され、
上記ファイバセンサは更に、1200nm~1600nmの波長の光を供給する光源、及び1200nm~1600nmの波長範囲内にある全後方散乱信号を受信するよう構成されたレシーバを備える、実施形態1~8のいずれか1つに記載のファイバセンサ。
【0112】
実施形態18
(i)シングルモードコア部分及びマルチモードコア部分を備える、ハイブリッドコア;並びに
(ii)上記ハイブリッドコアを取り囲む、クラッド、
を備える、光ファイバであって、
上記マルチモードコア部分中のGeO2の最大量は、5.5重量%~35重量%である、光ファイバ。
【0113】
実施形態19
上記シングルモードコア部分中のGeO2の最大量は、6重量%~50重量%である、実施形態18に記載の光ファイバ。
【0114】
実施形態20
上記シングルモードコア部分は最大相対屈折率Δ31を有し、
上記マルチモード差分コア部分は最大相対屈折率Δ32を有し、
0.2%≦Δ31-Δ32≦1%である、実施形態18又は19に記載の光ファイバ。
【符号の説明】
【0115】
10a 伝送端部
10b 別の端部
30 ハイブリッドコア、ファイバコア
31 シングルモードコア部分、シングルモード部分、ファイバコア部分、コア部分、内側コア部分
32 マルチモードコア部分、マルチモード部分、コア部分
33 低屈折率層、低屈折率コア層
40 クラッド
44 外側クラッド直径、外径
50 ファイバ、光ファイバ、ハイブリッドコア光ファイバ、ハイブリッドコアファイバ
51 保護コーティング
52 長さ、ファイバ長
54 ファイバ外径、外側ファイバ直径
80 中心軸
100 ファイバセンサ、感知システム
110 光源
110a レシーバ
112 光学部品
120 信号問い合わせ要素
150a 入射光、光信号
150d 全後方散乱信号
160 スポット、スポットサイズ
200 ファイバセンサシステム、センサシステム
300 足跡、特徴部分
300a 場所