(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】電気モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20230421BHJP
F16C 35/067 20060101ALI20230421BHJP
F16C 35/02 20060101ALI20230421BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20230421BHJP
H02K 5/08 20060101ALI20230421BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20230421BHJP
H02K 3/44 20060101ALI20230421BHJP
H02K 5/16 20060101ALI20230421BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
H02K3/46 B
F16C35/067
F16C35/02 Z
H02K5/10 Z
H02K5/08 A
H02K5/22
H02K3/44 B
H02K5/16 Z
H02K1/18 D
H02K1/18 E
(21)【出願番号】P 2019548985
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2018055710
(87)【国際公開番号】W WO2018162620
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】102017105089.2
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508002036
【氏名又は名称】コレクトール グループ デー.オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ラハイナ―ル、フランチ
(72)【発明者】
【氏名】イェゼルセク、ボリス
(72)【発明者】
【氏名】イェラム、ボルト
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008019608(DE,A1)
【文献】実開昭52-011103(JP,U)
【文献】実開昭63-051545(JP,U)
【文献】特開昭50-096801(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136384(WO,A1)
【文献】特開2015-140692(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
F16C 35/067
F16C 35/02
H02K 5/10
H02K 5/08
H02K 5/22
H02K 3/44
H02K 5/16
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターステータ(1)と回転軸(A)周りで回転可能に支承されたインナーロータとを備えていて、前記アウターステータ(1)が、
・実質的に半径方向に延在するコイル芯(5)を有する、軸(A)の周りに配置された複数の強磁性の極片(4)と、
・前記コイル芯(5)を被覆するコイルサポート(17)と、前記極片(4)の半径方向内側に延在する閉鎖された内周面(19)を有するスリーブ(15)とを備える射出成形された樹脂構造体(13)と、
・前記コイルサポート(17)上に収容されたステータコイル(10)を含んでなり、
また前記スリーブ(15)の内側にロータ(R)を配置してなる、流体装置用の電気モータであって、
前記樹脂構造体(13)がブシュ(14)を含み、さらにそのブシュが前記スリーブ(15)とそのスリーブを末端側で閉鎖する終端部材(16)とを含み、ロータ(R)が前記終端部材(16)内に配置された軸受け(L)内に支承され
る電気モータにおいて、
中性リング(12)は終端部材(16)のサポート要素(31)内に収容されるピン形状の中性接触子(32)と結合さ
れ、
極片(4)が半径方向外側でその極片に接触する中性リング(12)によって囲繞され、
前記中性リング(12)は終端部材(16)のサポート要素(31)内に収容されるピン形状の中性接触子(32)と結合されることを特徴とする電気モータ。
【請求項2】
樹脂構造体(13)がエポキシ熱可塑性樹脂から形成されることを特徴とする請求項1記載の電気モータ。
【請求項3】
終端部材(16)上に少なくとも2個の支持突起部(27)を配置し、それに電子モータ制御機構を備えた回路基板(25)を固定することを特徴とする請求項1または2記載の電気モータ。
【請求項4】
終端部材(16)に電気接触部材(35)のためのソケット(34)を形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項5】
ソケット(34)をいずれも2個の極片(4)間の間隙に整列させることを特徴とする請求項4記載の電気モータ。
【請求項6】
接触部材(35)をU字型に形成し、末端が接触ピン(40)になる脚部(37)を有するようにすることを特徴とする請求項4または5記載の電気モータ。
【請求項7】
極片(4)が半径方向外側でT字型に形成されることを特徴とする請求項1ないし
6のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項8】
コイルサポート(17)が半径方向外側で成形された終端プレート(22)に移行することを特徴とする請求項1ないし
7のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項9】
ブシュ(14)内に、インサートシェルを埋入することを特徴とする請求項1ないし
8のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項10】
スリーブ(15)が終端部材(16)と反対側に装置ハウジングに対する密封接続のためのシール構造を備えることを特徴とする請求項1ないし
9のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項11】
極片(4)が半径方向内側の延長部材(6)の領域内で接続ブリッジ(7)を介して相互に結合されることによって組み合わされる極構造(3)の一部とされることを特徴とする請求項1ないし
10のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項12】
極構造(3)を薄膜積層体から形成することを特徴とする請求項
11記載の電気モータ。
【請求項13】
薄膜のうちの一部のみが接続ブリッジ(7)を備えて環状に組み合わされることを特徴とする請求項
12記載の電気モータ。
【請求項14】
樹脂からその場成形されるものであって樹脂構造体(13)上に噴射成形された外被部材(46)をステータ(1)が備え、その中に樹脂構造体(13)がステータコイル(10)ならびに、存在すれば、
中性リング(12)と回路基板(25)を含めて埋入されることを特徴とする請求項1ないし
13のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項15】
外被部材(46)と樹脂構造体(13)を同一の材料から形成することを特徴とする請求項
14記載の電気モータ。
【請求項16】
ロータが薄膜積層体から形成されたコア構造(49)を有することを特徴とする請求項1ないし
15のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項17】
コア構造(49)内に焼結された永久磁石(51)を挿入することを特徴とする請求項
16記載の電気モータ。
【請求項18】
コア構造(49)を少なくとも部分的に樹脂外被(52)によって被覆成形することを特徴とする請求項
16または
17記載の電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電気モータに関する。本発明は特にインナーロータ型の電気モータに係り、すなわちアウターステータと回転軸周りで回転可能に支承されたインナーロータとを備える電気モータに関する。具体的には、本発明は請求項1前文に記載の電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは極めて多数の異なった構造方式ならびに原理によって知られている。インナーロータ型、アウターロータ型、およびパンケーキ型モータ、さらに交流モータおよび直流モータ等が有り、直流モータには機械式あるいは電子式整流等がある。その際特定の適用法に最も適した電気モータの選択は通常種々の異なった観点と条件から実行される。考慮すべき点は、例えば存在する供給電圧、必要なモータ動作特性(モータ特性曲線)、存在する利用可能空間、コスト要件、場合によって要求される電磁環境適合性、存在する冷却条件等である。
【0003】
ドイツ国特許出願公開第10052797号(A1)明細書によりポンプヘッドを有するラジアル型ポンプが開示されており、それの回転輪が冒頭に述べた種類の電気モータによって駆動される。その際電気モータは鍋型のモータハウジング内に収容され;モータのステータがモータハウジングの底床に取り付けられる。モータハウジングは底床と逆側で吸引マニホールドを備えたポンプハウジングによって遮閉され、そのポンプハウジングがその中に収容されたアタッチメントと共に回転輪のための空間を定義する。モータロータは一方でシャフトを介してモータハウジングの底床に支承され、他方ではポンプヘッドのインサート内に支承される。モータハウジングは、底床を介して延在するリング形状の延長部材によって、モータ制御機構ならびにその他の電子構成要素のための蓋部材によって遮閉された収容空間を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、流体装置(例えば自動車のオイルセパレータ)の駆動のためにより良好に適していてかつ(可能な限り低い製造コストで)多様な観点における要求を最適な方式で満たす電気モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題は、請求項1に定義される電気モータ、すなわち下記の相互作用する特徴の組み合わせを有するインナーロータ型の電気モータによって解決される:アウターステータが、実質的に半径方向に延在するコイル芯を有する、軸の周りに配置された複数の強磁性の極片と、ブシュとそのブシュに接合して形成されていて前記コイル芯を被覆するコイルサポートとを有する射出成形された樹脂構造体と、前記コイルサポート上に収容されたステータコイルを含んでなる。前記ブシュは、前記極片の半径方向内側に延在する閉鎖型の内周面を有するスリーブと、前記スリーブを末端側で閉鎖する終端部材を含んでなる。ロータが前記スリーブの内側に配置されるとともに前記終端部材内に配置された軸受け内に支承される。
【0006】
本発明に係る電気モータの中心的な特徴は、極片に接合して射出成形され複数の機能が統合された複合式の樹脂構造体にある。この構造体は、ブシュとそのブシュに接合して形成されていて(極片の)コイル芯を被覆するコイルサポートを少なくとも含み、さらに前記ブシュが極片の内側で半径方向に延在する閉鎖型で特にシリンダ状の内面を有するスリーブと前記スリーブを末端側で閉鎖する終端部材を含む。その際スリーブの閉鎖型の内面とそれを末端側で閉鎖する終端部材のため、樹脂構造体のブシュはアウターステータの2個の領域間、すなわちインナーロータが配置される(内側)領域と、コイルサポート上に巻かれたステータコイルが存在する(外側)領域の間の永続的かつ絶対的に信頼性を有する気密な分離のために適する。その種のロータ空間の密封式のカプセル化によって、特にロータが液体に浸漬されしかもその液体が電気モータによって駆動される装置(例えば自動車のオイルセパレータ)に作用するものであるような電気モータの適用分野ならびにそれに対応する動作方式に電気モータを統合することが可能になる。従って、電気モータのロータに対する前記の装置の気密なシーリングが不要になる。(ロータ空間内の)ブシュの内部で循環する液体によって電気モータの効率的な冷却の可能性が提供される。加えて、適宜な液体にすればそれが本発明に従ってブシュの終端部材内に配置された軸受けによって達成されるロータ支承の潤滑に寄与することができる。別の側において、特にステータコイルが存在するステータの外側領域が液体と非接触である。さらに、樹脂構造体のブシュの終端部材上でロータを支承することによって極めて低コストな電気モータの製造が可能になる。加えて、複合的な樹脂構造体によって後述するように他の多様な機能性を達成することができる。
【0007】
追加的な機能性の観点から、樹脂構造体は熱硬化性材料、特に熱硬化性エポキシ樹脂からなることが好適である。すなわち、ロータの支承のために必要な樹脂構造体の耐荷重性を比較的に小さな壁厚によって既に達成することができ、そのことが本発明の原理に係る比較的小型かつ軽量の電気モータの実現に寄与する。
【0008】
本発明の別の好適な追加構成によれば、終端部材上に少なくとも2個の支持突起部を配置し、それに電子モータ制御機構を備えた回路基板を固定する。その際回路基板は終端部材の近くでモータ軸に対して横断方向に延在することが好適である。このことは、ステータ側のコイルと回路基板との確実な接触を低コストに形成する観点から極めて好適である。その点に関して本発明の極めて好適な追加構成は、終端部材に電気接触部材のためのソケットを形成することを特徴とする。その際前記のソケット(さらにその中に挿入された接触部材)を、いずれも2個の極片間の間隙に整列させることができる。接触部材はU字型に形成することが好適であり、従って2個の隣接するコイルサポートの間に装着すべきステータコイルのコイル線をU字型の接触部材を通じて配線することができる。その際接触部材は末端が接触ピンになる脚部を備え、前記接触ピンが回路基板と接触することが極めて好適である。
【0009】
本発明の別の好適な追加構成は、半径方向外側で軸に対して直角に延在して極片に接触する中性リングによって極片が囲繞されることを特徴とする。その(特に好適には環状薄膜の積層体から組成される)中性リングはピン形状の中性接触子と結合されることが好適である。その中性接触子を案内するために樹脂構造体の終端部材が特殊なサポート要素を備えることが極めて好適である。それによって、前述した終端部材の支持突起部上に回路基板を載置する際に(接触部材の接触に加えて)中性接触子に対する電気接続も形成し得るような方式で中性接触子が配置される。
【0010】
本発明の別の好適な追加構成によれば、極片が半径方向外側でT字型に構成される。従って、極片から中性リングへの大面積の接続が形成される。その際相互に隣接する極片のT字型の末端(“頭部”)の間にいずれも間隙が存在し、その間隙がニードル巻線技術を使用したコイルサポートへの(外側からの)コイルの装着を可能にする。そのため、樹脂構造体のコイルサポートが好適には半径方向外側で終端プレートに移行するかまたはコイルサポートの半径方向外側に終端プレートを成形し、その際相互に隣接する2枚の終端プレートの間にいずれも間隙が存在することが好適であり、その間隙が巻線ニードルの進入を可能にする。
【0011】
本発明の別の好適な追加構成によれば、樹脂構造体のブシュ内に、特に高級鋼からなる、インサートシェルを埋入する。それによって、静電特性を改善することができ、同時に磁気特性に対する不良な影響を抑制することができる。このことも特定の適用分野において、ロータ空間に流入する液体をステータのコイル領域に対して最適に封止する観点から有効である。
【0012】
ステータの個々の領域間の極めて確実な相互封止(上述参照)のために、スリーブが終端部材と反対側の端面側に電気モータによって駆動される装置の装置ハウジングあるいはその他の構成部品に対する気密な接続のためのシール面あるいはその他のシール構造を備えることが極めて好適である。例えばスリーブの端面がOリングを収容するための周回状の溝を備えることができる。
【0013】
本発明のさらに別の好適な追加構成によれば、極片が半径方向内側の延長部材の領域内でいずれも接続ブリッジを介して相互に結合されることによって組み合わされる極構造の一部とされる。その際接続ブリッジは極構造の形状安定性のために充分であるが磁束に対しては大きな抵抗を形成する最小限の断面を有し;従って接続ブリッジは個々の極片の間に小さな半径方向の距離しか有さない。本発明によって相当に単純化される電気モータの製造を鑑みれば、(拡散損失によって)僅かに低下する効率の難点を受容する必要がある。本発明の好適な追加構成に係るように極構造を薄膜積層体から形成する場合、極めて有効な追加構成によれば、接続ブリッジを介して個々の極片薄膜を相互に結合することによって薄膜のうち一部のみを環状に組み合わせ;一方極構造の残りの層内にはいずれも分離された極片薄膜を設けてそれらの間にいずれも空隙が存在するようにする。従って、薄膜積層体からなる極構造において例えば2枚毎、3枚毎、あるいは4枚毎に1枚の薄膜を環状に組み合わせて構成することができる。それによって前述した拡散損失を最小化することができる。従って、本発明に従って極構造上に射出成形し、また前述した個々の極片薄膜間の空隙を形成してなる樹脂構造体によれば、薄膜のうちの一部のみしか接続ブリッジを設けて環状に組み合わせて構成されないにもかかわらず、極構造の統合性が保証される。代替的な構成形態によれば、環状に閉鎖された個々の極構造薄膜を(インプリンティング等によって)接続ブリッジの領域内においてその他の領域内に比べて薄くすることができ、従って極構造に組成される環状に閉鎖された極構造薄膜の個々の接続ブリッジの間にいずれも軸方向の間隔が存在する。極構造薄膜を形成するために極めて適した材料の1つが高品質な「電炉鋼」である。
【0014】
本発明のさらに別の好適な追加構成によれば、樹脂からその場成形されるものであって樹脂構造体上に噴射成形された外被部材をステータが備え、その中に樹脂構造体がコイルならびに、存在すれば、中性リングと回路基板を含めて埋入される。極構造と、その上に射出成形された樹脂構造体と、その樹脂構造体上に設置されたステータコイルと、装着された中性リングと、接続された回路基板とからなり予備仕上げされたユニット上に噴射成形される外被部材がステータをさらに補強する。それと同時に前記の外被部材が、ステータの多様な構成要素の機械的および化学的防護、例えば腐食に対する防護を形成する。前記の外被部材の補強機能のため、射出成形される(内側の)樹脂構造体はその分脆弱に形成することができ、すなわちステータの製造中に重要である特性を充足するために必要な材料厚に厳密に限定することができる。その際外被部材と樹脂構造体の両部材を同一材料(特にエポキシ熱硬化性樹脂)から形成すれば、外被部材と樹脂構造体の相互補強が大きく向上し、従って外被部材と樹脂構造体が理想的に1つのユニットとして相互に結合される。
【0015】
本発明のさらに別の好適な追加構成によれば、ロータが薄膜積層体から形成されたコア構造を有する。その際コア構造が複数の開口部を有し、その中に(好適には焼結された)永久磁石を挿入することが極めて好適である。この場合も、コア構造を少なくとも部分的に、すなわち少なくとも端面側を樹脂外被によって被覆成形することが極めて好適である。その樹脂外被の材料を適用分野に応じて適合させ、従って樹脂外被は特にロータ空間内を循環する液体による化学作用に対してコア構造を保護するように機能する。
【0016】
次に、本発明の好適な実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る電気モータのステータの製造工程を示した説明図である。
【
図2】本発明に係る電気モータのステータの製造工程を示した別の説明図である。
【
図3】本発明に係る電気モータのステータの製造工程を示したさらに別の説明図である。
【
図4】本発明に係る電気モータのステータの製造工程を示したさらに別の説明図である。
【
図5】本発明に係る電気モータのステータの製造工程を示したさらに別の説明図である。
【
図6】本発明に係る電気モータのステータの製造工程を示したさらに別の説明図である。
【
図7】本発明に係る電気モータのステータの製造工程を示したさらに別の説明図である。
【
図8】本発明に係る電気モータのステータの製造工程を示したさらに別の説明図である。
【
図9】
図1ないし
図8のステータと共働作用するために適したロータの製造工程を示した説明図である。
【
図10】
図1ないし
図8のステータと共働作用するために適したロータの製造工程を示した別の説明図である。
【
図11】
図1ないし
図8のステータと共働作用するために適したロータの製造工程を示したさらに別の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
アウターステータ1(
図8参照)を製造するための基礎が
図1に示された薄膜積層体からなる極構造3である。その極構造は環状に閉鎖された11枚の同形の極構造薄膜2とそれらの間に(いずれも交互に)10層で配置された個々の極片薄膜2´とから組成される。六極の極構造3は軸A周りで均等に配置された6個の強磁性極片4を備える。それらの極片はいずれも半径方向に延在するコイル5を備える。極片4は半径方向内側にいずれも円周方向に延在する延長部材6を備える。環状に閉鎖された極構造薄膜2によって形成された11枚の層内において、相互に隣接する2個の極片4の相互に対向する延長部材6がいずれも接続ブリッジ7を介して相互に結合されるが;それらは最低限度の半径方向の延伸を有する。別の10枚の層内において、個別の極片薄膜2´の間に空隙55(
図4参照)が存在する。半径方向外側において極片4はT字型に形成される。相互に隣接する極片4のT字型の頭部8の間に、いずれも(ニードル巻線技術によって外側から)ステータコイル10(
図5参照)を形成するために充分な幅の間隙9が存在する。極片のT字型の頭部8の中央に設けられたリリーフ溝11が、後の中性リング12の押圧(
図5および
図6参照)に際して極片4の規定された変形を可能にするよう作用する。
【0019】
射出成形型内で極構造3の上にエポキシ熱可塑性樹脂からなる複合型の樹脂構造体13が射出成形によって形成される(
図2ないし
図4参照)。その際樹脂構造体13がブシュ14を含み、そのブシュが実質的にスリーブ15とそのスリーブを末端で閉鎖する終端部材16とから構成され、さらに前記スリーブ15上に一体式に形成されてそこから半径方向に突立するコイルサポート17を含み、そのコイルサポートが極構造3のコイル芯5を被覆する。極片4の(半径方向内側の)延長部材6も接続ブリッジ7と同様にスリーブ15の領域内で完全に樹脂構造体13内に埋入される。その際スリーブ15の内径dが極構造の中央開口18の直径Dよりいくらか小さく、従ってスリーブ15が完全に閉鎖したシリンダ状の内周面19を有する。スリーブ15が端面20上にOリングを収容するように作用する環状溝21を備え、従って樹脂構造体13を隣接する構成部材に液密に接続することが可能になる。
【0020】
半径方向外側でコイルサポート17がそれと一体式に形成された終端プレート22に移行する。この終端プレートは軸方向および円周方向にいずれも対応するコイルサポート17を超えて延在し、半径方向外側でステータコイル10を収容するために設けられた空間に接合する。終端プレート22は円周方向において極片4のT字型の頭部8と同程度に延在し、従って前記頭部の末端が露出する。後に押圧される環状薄膜積層体から形成された中性リング12への(磁束の観点で)最適な接触を可能にするために、極片4のT字型の頭部8が半径方向外側においていずれにしても完全に露出する。
【0021】
樹脂構造体13のブシュ14の終端部材16は内側が段階式に形成される。そこに、ロータ軸を支承するように作用するローラベアリングを収容するためのシート23が形成される。ここでは細部は省略されるため、
図4においてロータR、それのロータシャフトW、およびシート23内に収容される軸受けLは極簡略的に示される。樹脂構造体13は外側に多様な機能要素を備える。すなわち、終端部材16上に、電子制御機構を有する回路基板25のための接合面24をそれぞれ備えた複数の支持突起部が形成される(
図6参照)。その際中央支持突起部26が軸Aの領域内に配置されたピン状の突起部として形成される。さらに、3本の周辺支持突起部27がいずれも対応するアーム28の末端側に配置される。そのうち2本が、位置を固定するために回路基板25内の対応する心合せ孔部と共働作用する心合せピン29を備える。一方3番目の周辺支持突起部27の領域には、中性リング12と結合された中性接触子32を挿通するための開口31が設けられる。その方式によって3番目の周辺支持突起部27が中性接触子32のための支持要素33を同時に形成する。
【0022】
通常相互に120°ずらして配置されるとともにいずれも2個のコイルサポート17間の間隙に位置合せされる3本のアーム28の各々に、金属製の電気接触部材35のためのソケット34が形成される。3個の接触部材35はU字型に形成され、開脚部36がいずれも回路基板25の方向を指向する。各接触部材35の両方の脚部37によって仕切られる空間に位置合わせしてアーム28が2本の溝38を備え、従って隣接する両方のステータコイル10の間においていずれも両方の溝38を通してコイル線39をU字型の接触部材35内に装着することができる。各接触部材35の両方の脚部37の一方がいずれも接触ピン40として終端となる。その接触ピンは、回路基板25上の対応する接触孔部41に係合する。中性接触子32の末端に設けられた接触ピン42にも同様なことが該当する。
【0023】
いずれも2本のアーム28の間で終端部材16に3本のガイドリブ43が形成される。そのガイドリブがそれぞれその中に形成された溝44を有する。各溝44が、いずれも相互に対向する2個の同位相のステータコイル10の間のコイル線39のいずれも2個の接続セクション45を収容するよう機能する。それらのステータコイルは、
図5および
図6に示されるように、いずれもコイルサポート17上に巻き付けられていて、その際半径方向内側でスリーブ15の外面によってまた半径方向外側では終端プレート22の内面によって仕切られる空間内に配置される。従って、コイル線39と極構造3の直接的な接触が確実に排除されることが明らかである。
【0024】
回路基板25を装着してそれを3個の接触部材35および中性接触子32に電気的に接触させた後(
図7)、成形型内で該当する構成部品群に対し樹脂構造体13を形成するものと同じエポキシ熱可塑性樹脂を噴射被覆する。それによって、樹脂から射出成形されるものであって、極構造3と、その上に射出成形された樹脂構造体13と、その樹脂構造体内に挿入された接触部材35および樹脂構造体上に取り付けられたステータコイル10と、中性接触子32を含めて装着された中性リング12と、電気接続された回路基板25とからなり予備仕上げされたユニット上に噴射成形された外被部材46が形成され、その外被部材内に上記の構成部品(ステータコイル10と中性リング12を含めた樹脂構造体13と回路基板25)が完全に埋入される。外被部材46上には3本の固定ラグ47が形成される。最初から回路基板25上に設けられていて外被部材46内に機械的に固定される接続ブシュ48が、外被部材46から突出する。
【0025】
図1ないし
図8のアウターステータ1を備えた電気モータの(スリーブ15内に配置され軸A周りで回転可能に支承される)インナーロータが、独特な構成的特徴に関して
図9ないし
図11に示される。そのインナーロータは、強磁性体材料製の薄膜構造体から形成され(図示されていない)ロータシャフトと結合されるコア構造49を有する。このコア構造は4個の開口部50を備え、その中にNdFeBから焼結された4個の永久磁石51が(正方形配置で)挿入される。コア構造49は、両方の端面53が最大限に遮閉されるとともに開口部50の残りの空洞部も樹脂で填塞されるような方式で樹脂外被52によって被覆成形される。他方、コア構造49の外周54は露出したまま保持される。