(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】カーボンファイバー強化ポリオレフィン組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20230421BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230421BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230421BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20230421BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230421BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C08L23/10
C08J3/20 B CES
C08K3/04
C08K7/06
C08L23/08
C08L23/26
(21)【出願番号】P 2019560204
(86)(22)【出願日】2018-05-02
(86)【国際出願番号】 US2018030698
(87)【国際公開番号】W WO2018204519
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510320575
【氏名又は名称】イクイスター・ケミカルズ・エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ジュエ・ルー
(72)【発明者】
【氏名】チャンライ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・ダンマン
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0301265(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0060440(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0086970(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03095819(EP,A1)
【文献】特開2005-194337(JP,A)
【文献】特表2016-525586(JP,A)
【文献】特開2003-049026(JP,A)
【文献】特表2012-513511(JP,A)
【文献】特開2009-275149(JP,A)
【文献】特開2008-163157(JP,A)
【文献】特表2020-513429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
C08J5/04-5/10
5/24
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)ポリオレフィン及びエラストマーを備え、前記組成物の総重量に対して、80重量%~95重量%の量で前記組成物中に存在し、
(i)2つ以上のポリプロピレンホモポリマーの配合物と、プロピレンモノマー及びエチレンモノマーの任意の組み合わせを含むポリマー鎖を有するプロピレン-エチレン共重合体とを含み、前記組成物の総重量に対して、40重量%~65重量%の量で存在するポリオレフィン、及び
(ii)前記組成物の総重量に対して、25重量%~45重量%の量で存在するエラストマー(但し、上記(i)におけるプロピレン-エチレン共重合体を除く)
を備える熱可塑性オレフィン樹脂と、
(b)カーボンファイバーを含み、前記組成物の総重量に対して1重量%~15重量%の量で存在する充填剤成分と、
(c)前記組成物の総重量に対して、0.5重量%~10重量%の量で存在する相溶化剤と、
(d)前記組成物の総重量に対して、0.5重量%~10重量%の量で存在する添加剤パッケージとを含み、
前記組成物は、0.90g/cm
3~0.98g/cm
3の密度を有する組成物。
【請求項2】
前記成分(i)は、リアクター熱可塑性ポリオレフィンをさらに含み、前記リアクター熱可塑性ポリオレフィンは、前記組成物の総重量に対して、0.01重量%~15重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リアクター熱可塑性ポリオレフィンは、0.5g/10分~30g/10分のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg)を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンは、60g/10分~400g/10分のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg)を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記エラストマーは、0.85g/cm
3~0.90g/cm
3の密度を有するエチレン系共重合体からなる請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記エラストマーの前記エチレン系共重合体は、0.4g/10分~5g/10分のメルトフローレート(190℃、2.16kg)を有する請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
前記カーボンファイバーは、0.5mm~300mmの平均長さと、1μm~30μmの平均直径を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記相溶化剤は、カルボン酸、アミン、ヒドロキシル、エポキシド、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の極性基で変性されたポリオレフィンからなる請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記添加剤パッケージは、1つ以上の酸化防止剤、グリセロールモノステアレート、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又はこれらの組み合わせから選択された1つ以上の離型剤、1つ以上のスクラッチ低減添加剤、1つ以上の造核剤、水酸化アルミニウムマグネシウム炭酸塩又はその水和物、ステアリン酸、ステアリン酸塩、又はそれらの組み合わせから選択された1つ以上の中和剤/掃酸剤、ステアリン酸及び/又はステアリン酸塩、又はそれらの組み合わせ、着色剤、着臭剤、脱臭剤、可塑剤、衝撃改質剤、界面活性剤、湿潤剤、難燃剤、紫外線安定化剤、殺虫剤、金属不活性化剤、増粘剤、熱安定化剤、消泡剤、カップリング剤、
ポリマーアロイ相溶化剤、発泡剤、乳化剤、架橋剤、ワックス、微粒子、流動促進剤、又はこれらの組み合わせからなる請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、0.2%~0.7%の焼成後成形収縮(1時間、120℃)を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、1,200MPa~3,000MPaの曲げ弾性率を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、1~8×10
-5mm/mm/℃の線形熱膨張係数を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、10
7オーム/スクェア以下の表面抵抗率を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
請求項2の前記組成物を備える製造品であって、自動車パネル及びバンパーフェイシアから選択される物品を備える製造品。
【請求項15】
組成物の作成方法であって、
成分(a)(b)(c)及び(d)を溶解混合して、組成物を形成するステップを備え、前記成分(a)(b)(c)、及び(d)は、
(a)ポリオレフィン及びエラストマーを備え、前記組成物の総重量に対して、80重量%~95重量%の量で前記組成物中に存在し、
(i)2つ以上のポリプロピレンホモポリマーの配合物と、プロピレンモノマー及びエチレンモノマーの任意の組み合わせを含むポリマー鎖を有するプロピレン-エチレン共重合体とを含み、前記組成物の総重量に対して、40重量%~65重量%の量で存在するポリオレフィン、及び
(ii)前記組成物の総重量に対して、25重量%~45重量%の量で存在するエラストマー(但し、上記(i)におけるプロピレン-エチレン共重合体を除く)
を備える熱可塑性オレフィン樹脂と、
(b)カーボンファイバーを含み、前記組成物の総重量に対して1重量%~15重量%の量で存在する充填剤成分と、
(c)前記組成物の総重量に対して、0.5重量%~10重量%の量で存在する相溶化剤と、
(d)前記組成物の総重量に対して、0.5重量%~5重量%の量で存在する添加剤パッケージとを含み、
前記組成物は、0.90g/cm
3~0.98g/cm
3の密度を有し、
前記充填剤成分の前記カーボンファイバーは、下流に供給される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月3日出願の米国仮出願第62/500,929号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
高まる燃料効率目標と環境への影響を有するその他の基準(例えば、米国における企業平均燃費(CAFE)や欧州連合(EU)におけるCO2制限)とに取り組むため、自動車産業では、現在、車両の製造に使用される多くの成分について重量低減を目指している。
【0003】
ポリオレフィン系組成物は、スペアタイヤ部品カバー、車体下部パネル、シートバックレスト、エンジンと変速機のカバー、バンパーフェイシア、リアパネルシェルフ、及びドア縁パネルを含むがこれに限定されない、多数の自動車部品の製造に使用される。通常、ポリオレフィン系組成物を変更することによってこれらの部品の重量を低減する努力を行うと、剛性、収縮、低温影響性能等、種々の部品の1つ以上のその他の重要な特性に望ましくない影響を与えてしまう。
【0004】
例えば、その軽量性、高い剛性、優れた熱的安定性、及び/又は導電性を一部理由として、カーボンファイバーがポリマー組成物の強化に使用されてきた。しかしながら、ポリオレフィン系組成物にカーボンファイバーを添加すると、通常、低温延性の低下という結果を招いてしまう。このような不都合があるとともに、カーボンファイバーはコストが高いため、自動車産業におけるカーボンファイバー強化の使用は一般的に限定されている。
【0005】
さらに塗装バンパーフェイシアを用途とする場合、塗装後に剛性及び/又は低温影響性能のバランスの取れた熱可塑性オレフィン(TPO)溶液が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、組成物の線形熱膨張係数(CLTE)、収縮、間隙封止等を含んでもよい、適合と機能とに関する特性等、1つ以上の他の特性を妥協することなく、重量低減を達成するポリオレフィン系組成物のニーズが依然としてある。また導電性TPOは、バンパーフェイシア等の塗装される自動車部品の静電塗装伝達効率を向上する潜在性を有することがあるため、このような材料が有利となることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自動車産業を含む種々の産業において使用される他のポリオレフィン組成物と共通して関連づけられる剛性及び低温衝撃特性を含む、好適な剛性及び低温衝撃特性を維持しつつ、比較的低い密度及び/又は高い寸法安定性を有してもよいカーボンファイバー強化ポリオレフィン組成物全般に関連する。本明細書において提供されるカーボンファイバー強化ポリマー組成物はまた、導電性を有してもよい。
【0008】
実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、約0.90g/cm3~0.98g/cm3の密度を有し、(a)ポリオレフィン及びエラストマーを備え、前記組成物の総重量に対して、約80重量%~約95重量%の量で前記組成物中に存在する熱可塑性オレフィン樹脂と、(b)複数のカーボンファイバーからなり、前記組成物の総重量に対して約1重量%~約15重量%の量で存在する充填剤成分と、(c)前記組成物の総重量に対して、約0.5重量%~約10重量%の量で存在する相溶化剤と、(d)前記組成物の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量で存在する添加剤パッケージとを含む。熱可塑性オレフィン樹脂は、(i)ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、又はそれらの組み合わせからなり、前記組成物の総重量に対して、約40重量%~約65重量%の量で存在するポリオレフィン、及び(ii)前記組成物の総重量に対して、約25重量%~約45重量%の量で存在するエラストマーを備えてもよい。一実施形態において、熱可塑性オレフィン樹脂は、リアクター熱可塑性ポリオレフィンをさらに含み、前記リアクター熱可塑性ポリオレフィンは、前記組成物の総重量に対して、約0.01重量%~約15重量%の量で存在する。
【0009】
また本明細書中、カーボンファイバー強化ポリオレフィン組成物を含む自動車パネル等の製造品を提供する。一実施形態において、同パネルは、バンパーフェイシアであってもよい自動車パネルである。
【0010】
複数の実施形態を開示するが、当業者には、以下の詳細な説明より、さらに他の実施形態も明らかとなるであろう。自明のことではあるが、本明細書に開示の特定の実施形態は、本明細書に記載の請求項の要旨及び範囲から逸脱することなく、種々の面で変更が可能である。従って、詳細な説明は例示としての性質を有するものと見做されなければならず、限定を意図するものでない。
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書において、導電性を有してもよく、比較的低い密度を有し、高い寸法安定性を有するか、又はその組み合わせを有する、改良されたカーボンファイバー強化ポリオレフィン組成物を提供する。例えば、本明細書において提供される組成物は、約0.90~約0.98g/cm3の密度を有してもよい。本明細書において提供される組成物はまた、好適な剛性と低温衝撃特性を有するため、本明細書において提供される組成物は、多数の産業において種々の用途を有してもよい。例えば、本明細書において提供される組成物は、単独又は1つ以上の他の材料との組み合わせにおいて、自動車用のパネル、水槽、機関車、レクリエーション用車両、飛行機等の部品の形成に使用されてもよい。
【0012】
本明細書において提供される組成物は、単独又は他の材料との組み合わせにおいて、バンパーフェイシア等、自動車パネルの形成に使用されてもよい。自動車産業における標準技術を使用して塗装が行われるとき、バンパーフェイシアを含む自動車パネルは、多軸の衝撃(2.2m/s、ASTM D3763)下において、0℃で、延性を有してもよい。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される組成物により、導電性、CLTE、低温衝撃、低収縮、及び寸法安定性というより高密度の樹脂の特性のうちの1つ以上を実質的に維持するか、又は向上しつつ、密度の低減された射出成型部品の調整を可能にする。
【0013】
本明細書において提供される組成物は、ある実施形態によると、(a)熱可塑性オレフィン樹脂と、(b)充填剤成分と、(c)相溶化剤と、(d)添加剤パッケージとを含んでもよい。
【0014】
本明細書において提供される組成物は、約0.9~約0.98g/cm3の密度を有してもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.90g/cm3~約0.97g/cm3の密度を有する。さらなる実施形態において、組成物は、約0.94g/cm3~約0.96g/cm3の密度を有し、また約0.924g/cm3~約0.950g/cm3の密度を有する。
【0015】
本明細書において提供される組成物は、約0.2%~約0.7%の焼成後成形収縮(1時間、120℃)を有してもよい。
【0016】
本明細書において提供される組成物は、約1,200MPa~約3,000MPa、約1,500MPa~約2,200MPa、約1,600MPa~約2,000MPa、又は約1,650MPa~約2,100MPaの曲げ弾性率を有してもよい。
【0017】
本明細書において提供される組成物は、約1~約8(10-5mm/mm/℃)、約2~約7(10-5mm/mm/℃)、約3~約6(10-5mm/mm/℃)、約5~約8(10-5mm/mm/℃)、約3~約4、又は約5.5~約6.5(10-5mm/mm/℃)、の線形熱膨張係数を有してもよい。
【0018】
本明細書において提供される組成物は、107オーム/スクェア以下の表面抵抗率を有してもよい。
【0019】
組成物の密度、焼成後成形収縮、曲げ弾性率、線形熱膨張係数、及び表面抵抗率は、本明細書中、実施例2において記載の手順に従って測定可能である。
【0020】
一実施形態において、本明細書において提供される組成物は、約0.9~約0.98g/cm3、約0.90g/cm3~約0.97g/cm3、約0.91g/cm3~約0.96g/cm3、約0.924g/cm3~約0.96g/cm3、又は約0.94g/cm3~約0.96g/cm3の密度と、約0.2%~約0.7%の焼結後成形収縮(1時間、120℃)と、約1,200MPa~約3,000MPaの曲げ弾性率と、約1~約8(10-5mm/mm/℃)の線形熱膨張係数と、107オーム/スクェア以下の表面抵抗率とを有する。
【0021】
熱可塑性オレフィン
本明細書において提供される組成物の熱可塑性オレフィン樹脂は、[1]ポリオレフィン及びエラストマー、又は、[2]ポリオレフィン、エラストマー、及びリアクター熱可塑性ポリオレフィンを含んでもよい。熱可塑性オレフィン樹脂は、組成物の総重量に対して、約80重量%~約95重量%の量で、本明細書において提供される組成物中に存在してもよい。
【0022】
熱可塑性オレフィン樹脂のポリオレフィンは、[1]ポリプロピレン、[2]プロピレン-エチレン共重合体、又は[3]これらの組み合わせを含んでもよい。ポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマー、又は2つ以上のポリプロピレンホモポリマーの配合物を含んでもよい。2つ以上のポリプロピレンホモポリマーは、例えば、異なる数及び/又は重量平均分子量を含む、1つ以上の異なる特徴を有してもよい。プロピレン-エチレン共重合体は、ポリマー鎖がプロピレン及びエチレンモノマーの任意の組み合わせを含む、共重合体であってもよい。プロピレン-エチレン共重合体は、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含んでもよい。プロピレン-エチレン共重合体は、少なくとも1つのプロピレン-エチレンブロック共重合体と、任意の組み合わせのモノマーを含むポリマー鎖を有する少なくとも1つの共重合体とを含む配合物を備えてもよい。一実施形態において、ポリオレフィンは、[1]ポリプロピレンホモポリマーと、[2]任意の組み合わせのモノマーを含むポリマー鎖を有するプロピレン-エチレン共重合体を含む。他の実施形態において、ポリオレフィンは、[1]2つ以上のポリプロピレンホモポリマーの配合物と、[2]任意の組み合わせのモノマーを含むポリマー鎖を有するプロピレン-エチレン共重合体とを含む。さらなる実施形態において、ポリオレフィンは、[1]ポリプロピレンホモポリマーと、[2]プロピレン-エチレンブロック共重合体とを含む。さらに他の実施形態において、ポリオレフィンは、[1]2つ以上のポリプロピレンホモポリマーの配合物と、[2]プロピレン-エチレンブロック共重合体とを含む。さらに他の実施形態において、ポリオレフィンは、[1]ポリプロピレンホモポリマーと、[2]プロピレン-エチレンブロック共重合体と、[3]任意の組み合わせのモノマーを備えるポリマー鎖を有するプロピレン-エチレン共重合体とを備える。さらに他の実施形態において、ポリオレフィンは、[1]2つ以上のポリプロピレンホモポリマーの配合物と、[2]プロピレン-エチレンブロック共重合体と、[3]任意の組み合わせのモノマーを含むポリマー鎖を有するプロピレン-エチレン共重合体とを備える。特定の実施形態において、ポリオレフィンは、高結晶度ホモポリマー部を有するポリプロピレンを含む。「高結晶度」とは、高磁界NMR(例えば、WIPO PCT特許出願公開第WO2009/045351号を参照のこと。本明細書中、参照として援用する)によって判定される、97%超のメソペンタッド分立を備えたポリプロピレンをいうものである。
【0023】
ポリオレフィンは、組成物の総重量に対して、約40重量%~約65重量%又は約40重量%~約60重量%の量で、本明細書において提供される組成物中に存在されてもよい。
【0024】
ポリオレフィンはまた、約60g/10分~約400g/10分、又は約120~約350g/10分のメルトフローレートの組み合わせ(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg)を有してもよい。従って、約60g/10分~約400g/10分又は約120~約350g/10分の総メルトフローレート(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg)を有する配合ポリオレフィンを得るために、本明細書に開示の範囲以上又は本明細書に開示の範囲以下のメルトフローレートを有するポリオレフィンの成分が利用されてもよいことが理解される。
【0025】
ポリオレフィンの好適な成分の非限定的な例として、LyondellBasell Industries(Houston,Texas,USA)から入手可能なADSTIF(登録商標)、METOCENE(登録商標)、PROFAX(登録商標)、又はこれらの組み合わせを含む市販のポリプロピレンが挙げられる。
【0026】
実施形態において、ポリオレフィンは、リアクター熱可塑性ポリオレフィンを含む。
【0027】
リアクター熱可塑性ポリオレフィンは、組成物の総重量に対して、約0.01重量%~約15重量%、又は約11重量%の量で、本明細書において提供される組成物中に存在してもよい。
【0028】
リアクター熱可塑性ポリオレフィンは、約0.5g/10分~約30g/10分、約1g/10分~約20g/10分、約2g/10分~約10g/10分のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg)を有してもよい。
【0029】
リアクター熱可塑性ポリオレフィンの好適な成分の非限定的な例として、LyondellBasell Industries(Houston,Texas,USA)から入手可能なADFLEX(登録商標)、HIFAX(登録商標)、SOFTELL(登録商標)、又はこれらの組み合わせを含む。
【0030】
実施形態において、ポリオレフィンは、エラストマーを含む。エラストマーは、エチレン系共重合体を含んでもよい。エチレン系共重合体は、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0031】
一実施形態において、エラストマーは、約0.85g/cm3~約0.90g/cm3又は約0.87g/cm3~約0.90g/cm3の密度を有するエチレン系共重合体から成る。他の実施形態において、エラストマーのエチレン系共重合体は、約0.4g/10分~約5g/10分又は約0.6g/10分~約2g/10分のメルトフローレート(190℃、2.16kg)を有する。さらなる実施形態において、エラストマーは、約0.85g/cm3~約0.90g/cm3の密度を有し、約0.4g/10分~約5g/10分又は約0.6g/10分~約2g/10分のメルトフローレート(190℃、2.16kg)を有するエチレン系共重合体からなる。
【0032】
エラストマーは、単一の成分を含んでもよく、又は2つ以上の成分を含んでもよい。一実施形態において、エラストマーは、第1エラストマーと、第2エラストマーとを含み、第1エラストマー及び第2エラストマーは、異なる構造を有する(例えば、異なる平均分子量、異なるモノマーからなる、分岐のために異なる原子の空間配置、又はこれらの組み合わせ)。一実施形態において、第1エラストマーは、約0.85g/cm3~約0.90g/cm3の密度を有するエチレン系共重合体からなる。他の実施形態において、第1エラストマーのエチレン系共重合体は、約0.4g/10分~約5g/10分、又は約0.6g/10分~約2g/10分のメルトフローレート(190℃、2.16kg)を有する。さらなる実施形態において、第1エラストマーは、約0.85g/cm3~約0.90g/cm3の密度と、約0.4g/10分~約5g/10分又は約0.6g/10分~約2g/10分のメルトフローレート(190℃、2.16kg)とを有するエチレン系共重合体からなる。他の実施形態において、第2エラストマーは、約0.5g/10分~約30g/10分、約2g/10分~約10g/10分、又は約5g/10分のメルトフローレート(190℃、2.16kg)を有するエチレン系共重合体からなる。さらに他の実施形態において、第1エラストマーは、約0.85g/cm3~約0.90g/cm3の密度と、約0.4g/10分~約5g/10分、又は約0.6g/10分~約2g/10分のメルトフローレート(190℃、2.16kg)とを有するエチレン系共重合体からなり、第2エラストマーは、約0.5g/10分~約30g/10分、約2g/10分~約10g/10分、又は約5g/10分のメルトフローレート(190℃、2.16kg)を有するエチレン系共重合体からなる。
【0033】
実施形態において、エラストマーは、組成物の総重量に対して、約25重量%~約45重量%の量で存在する。エラストマーが第1エラストマーと第2エラストマーとを含むとき、第1エラストマーは、組成物の総重量に対して、約10重量%~約25重量%、及び約12重量%~約20重量%の量で存在してもよく、第2エラストマーは、組成物の総重量に対して、約6重量%~約12重量%の量で存在してもよい。
【0034】
エラストマーの好適な成分の非限定的な例として、VISTAMAXX(登録商標)(ExxonMobil Corp.)、ENGAGE(登録商標)(Dow Chemical Co.)、CATTALOY(登録商標)(LyondellBasell Industries)ブランド、及びTAFMER(登録商標)(Mitsui Chemicals,Inc.)ブランドが挙げられる。
【0035】
充填剤成分
本明細書において提供される組成物は、充填剤成分を含んでもよい。充填剤成分は、複数のカーボンファイバーを含んでもよい。本明細書において使用される「カーボンファイバー」というフレーズは、アスペクト比の高い、すなわち、10:1を超えるカーボンを含むファイバーをいう。特定の理論に束縛されるものでないが、複数のカーボンファイバーは、少なくとも部分的に、本明細書において提供される組成物に、望ましい剛性、導電性、及び/又は低いCLTEを確保させるものであると考えられる。
【0036】
カーボンファイバーは、約0.5mm~約300mm、約1~約200m、約2mm~100mm、又は約6mmの平均長さを有してもよい。カーボンファイバーは、約1μm~約30μm、約2μm~約20μm、約3μm~約10μm、又は約7mmの平均直径を有してもよい。「平均直径」というフレーズは、断面で見たときのカーボンファイバーの平均最大寸法をいう。断面で見たとき、カーボンファイバーは略円形であるが、カーボンファイバーの全部又は一部は、断面で見たとき、非円形であってもよい。従って、「直径」という用語は、カーボンファイバーを断面で見たときに略円形を有するものに限定するものとして理解されてはならない。一実施形態において、カーボンファイバーは、約0.5mm~約300mm、約1~約200mm、約2mm~100mm、又は約6mmの平均長さを有し、約1μm~約30μmの平均直径を有する。他の実施形態において、カーボンファイバーは、約0.5mm~約300mm、約1mm~約200mm、約2mm~約100mm、又は約6mmの平均長さと、約2μm~約20μmの平均直径とを有する。さらなる実施形態において、カーボンファイバーは、約0.5mm~約300mm、約1mm~約200mm、約2mm~100mm、又は約6mmの平均長さと、約3μm~約10μmの平均直径とを有する。さらなる実施形態において、カーボンファイバーは、約0.5mm~約300mm、約1mm~約200mm、約2mm~100mm、又は約6mmの平均長さと、約7μmの平均直径とを有する。本明細書において提供される組成物のカーボンファイバーは、不織構造、織構造、又はそれらの組み合わせに配置されてもよい。充填剤成分は、サイジング剤も含んでよい。
【0037】
充填剤成分は、充填剤材料も含んでよい。従って、一実施形態において、充填剤成分は、複数のカーボンファイバーと充填剤材料とを含む。充填剤材料は、高アスペクト比(すなわち、少なくと10:1)を有するタルク、ガラスファイバー、ガラスバブル、ミネラルファイバー、バイオフィラー、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。バイオフィラーは、木材、亜麻、麦藁、ココナッツ、ケナフ、ヘンプ、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0038】
充填剤成分は、組成物の総重量に対して、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約10重量%、又は約3重量%~約5重量%の量で、本明細書において提供される組成物中に存在してもよい。充填剤成分が複数のカーボンファイバーに加えて充填剤材料を含むとき、この充填剤材料は、組成物の総重量に対して、約0.1重量%~約10重量%の量で存在してもよい。
【0039】
本明細書において提供される組成物で使用されてもよい好適なカーボンファイバーの非限定的な例として、Zoltek(St.Louis,MO)及びToho Tenax(Tokyo,Japan)から得られてもよい。
【0040】
相溶化剤
本明細書において提供される組成物は、相溶化剤を含んでもよい。相溶化剤は、組成物の総重量に対して、約0.5重量%~約10重量%、又は約0.5重量%の量で、本明細書において提供される組成物中に存在してもよい。
【0041】
実施形態において、相溶化剤は、1つ以上の極性基で変性されたポリオレフィンを含む。1つ以上の極性基は、カルボン酸、アミン、ヒドロキシル、エポキシド、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、相溶化剤は、マレイン酸無水物変性ポリプロピレンからなる。1つ以上の極性基は、相溶化剤の総重量に対して、約0.2重量%~約5重量%、又は約0.5重量%~約2重量%の量で存在してもよい。
【0042】
実施形態において、相溶化剤は、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ゴム、又は異相ポリプロピレン共重合体等、衝撃改質相溶化剤を含む。衝撃改質相溶化剤は、組成物の総重量に対して、約1重量%~約10重量%、約2重量%~約8重量%、約4重量%~約6重量%、又は約4重量%の量で存在してもよい。いくつかの実施形態において、衝撃改質相溶化剤のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ゴムは、約15g/10分~約33g/10分のメルトフローレート(230℃、5.0kg)、又は約22g/10分のメルトフローレートを有する。いくつかの実施形態において、異相ポリプロピレン共重合体は、約0.1g/10分~約2g/10分、約0.35g/10分~約1g/10分、又は約0.45g/10分のメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する。
【0043】
実施形態において、衝撃改質相溶化剤の異相プリプロピレン共重合体は、[1]プロピレンホモポリマー、8%以下のエチレンを含有するプロピレンのランダム共重合体、8%以下の少なくとも1つのC4-C10α-オレフィンを含有するプロピレンのランダム共重合体、これらの任意の組み合わせから選択される、単峰性分子量分布を有する、約30重量%~約80重量%、約30重量%~約70重量%、又は約45重量%~約55重量%の半結晶ポリプロピレン成分(成分A)であって、任意で、半結晶ポリプロピレンは、1g/10分~500g/10分のメルトフローレート(MFR)を有してもよく、[2]プロピレンと、エチレン、及び/又は、C4-C10αオレフィンからなる選択された少なくとも1つの共重合体とからなる、約20重量%~約70重量%、約40重量%~約70重量%、又は約45重量%~約55重量%の二元重合体成分(成分B)であって、50%~75%のプロピレンを含有する二元重合体とを含み、二元重合体は、室温でキシレンに可溶であり、約4~約7.5dl/g(デカリン中)の固有粘度[η]を有し、任意で、成分Bは、室温でキシレンに可溶であり、25重量%~50重量%、又は30重量%~45重量%のエチレン部分と、室温で約4dl/g~約7dl/g(デカリン中)の固有粘度[η]とを有し、任意で、成分Bは、0.15g/10分未満のメルトフローレートを有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、エラストマーは、第1エラストマーと、第2エラストマーとを含む。相溶化剤は、衝撃改質相溶化剤を含む。第1エラストマーと、第2エラストマーと、衝撃改質相溶化剤とを組み合わせた重量%は、組成物の総重量に対して約25重量%~約34重量%、又は約27重量%~約33重量%である。
【0045】
好適な相溶化剤の非限定的な例として、POLYBOND(登録商標)(Addivant,Danbury,CT)、EXXELOR(登録商標)(Exxon Mobil Co.,Irving,TX)、FUSABOND(登録商標)(Dupont,USA)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
添加剤パッケージ
実施形態において、本明細書において提供される組成物は、添加剤パッケージを含む。添加剤パッケージは、[1]1つ以上の酸化防止剤、[2]1つ以上の離型剤、[3]1つ以上のスクラッチ低減添加剤、[4]1つ以上の造核剤、[5]1つ以上の中和剤/掃酸剤、[6]ステアリン酸及び/又はステアリン酸塩、又は[7]これらの組み合わせを含んでもよい。
【0047】
中和剤/掃酸剤の非限定的な例として、水酸化アルミニウムマグネシウム炭酸塩又はその水和物、ステアリン酸、ステアリン酸塩、又はこれらの組み合わせが挙げられる。特定の理論に束縛されるものでないが、水酸化アルミニウムマグネシウム炭酸塩水和物は、束縛アミン光安定化剤の不活性化を遅延させることに有効となり得る。本明細書において提供される組成物において使用されてもよい水酸化アルミニウムマグネシウム炭酸塩水和物の非限定的な例として、協和化学工業によるDHT-4A(登録商標)又はDHT-4V(登録商標)が挙げられる。酸化防止剤の非限定的な例として、1つ以上の有機リンを含む。離型剤の非限定的な例として、グリセロールモノステアレート、ステアリン酸、ステアリン塩、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又はこれらの組み合わせを含む(例えば、米国特許第3,886,105号を参照のこと。その内容を参照として本明細書中に援用する)。ステアリン酸マグネシウムは、分散助剤としても作用する。
【0048】
スクラッチ低減添加剤の非限定的な例として、脂肪酸アミド等、潤滑油が挙げられる。好適な脂肪酸アミドとして、オレアミド(「OR」)、エチレンビス-ステアラミド(EBS)、及び/又は、エルカミド等が挙げられる。例えば、オレアミド(OR)は、Crodaによって供給されるCRODAMIDE(登録商標)ORであってもよい。エルカミド(ER)は、Crodaによって供給されるCRODAMIDE(登録商標)ERであってもよい。
【0049】
またエチレンビス-ステアラミド(EBS)は、Crodaによって供給されるCRODAMIDE(登録商標)EBSであってもよい。造核剤の非限定的な例として、ヘキサヒドロフタリック酸、その塩、又はその無水物が挙げられる(例えば、WIPO PCT出願公開第WO2008/073401号を参照のこと。その内容を参照として本明細書中に援用する)。ヘキサヒドロフタリック酸の塩は、カルシウム塩であってもよい。1つ以上の造核剤は、組成物の総重量に対して約0.05重量%~約3重量%、約0.1重量%~約0.2重量%の量で、又は組成物の総重量に対して約0.15重量%の量で、本明細書において提供される組成物中に存在してもよい。
【0050】
添加剤パッケージは、以下のうちの1つ以上も含んでよく、これらは従来の量で使用される。つまり、着色剤、着臭剤、脱臭剤、可塑剤、衝撃改質剤、界面活性剤、湿潤剤、難燃剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、殺虫剤、金属不活性化剤、増粘剤、熱安定化剤、消泡剤、カップリング剤、ポリマーアロイ相溶化剤、発泡剤、乳化剤、架橋剤、ワックス、微粒子、流動促進剤、又はこれらの組み合わせである。
【0051】
添加剤パッケージは、組成物の総重量に対して、約0.5重量%~約10重量%、又は約0.5重量%~約5重量%の量で、本明細書において提供される組成物中に存在してもよい。
【0052】
実施形態において、添加剤パッケージの添加剤は、本明細書において提供される組成物に個別に(又は組み合わせで)、任意で、組成物が配合又は押出されている間に直接添加され、添加剤パッケージの添加物が本明細書において提供される組成物内に均一に分布するようにする。この種の添加剤の添加は、「塩コショウ添加」と称されてもよい。他の実施形態において、添加剤パッケージの添加剤は、ポリマー担体内に事前配合されてもよい。ポリマー担体は、ポリエチレン又はポリプロピレンのホモポリマーであってもよい。同伴添加剤を有するポリマー担体は、マスターバッチと称されてもよい。組成物が配合又は押出されている間に、マスターバッチを添加されることにより、添加剤が組成物内に略均一に分布するようにしてもよい。任意で、ポリマー担体は、組成物の総重量に対して、約0.5重量%~約2重量%、又は約1重量%の量で存在してもよい。さらに他の実施形態において、添加剤パッケージの添加剤のうちの少なくとも1つは、マスターバッチ経路を通じて添加されてもよく、添加剤パッケージの添加剤のうちの少なくとも1つは、塩コショウ添加で添加されてもよい。
【0053】
さらに他の実施形態において、多数のマスターバッチが、添加剤パッケージの異なる添加剤を含んでもよい。例えば、第1マスターバッチは着色剤を含んでもよく、第2マスターバッチは、添加剤パッケージの添加物の残余を含んでもよい。多数のマスターバッチを使用する実施形態において、各マスターバッチのポリマー担体は、同一であってもよく、又は異なってもよい。
【0054】
製造品
その他の態様において、本明細書中に記載の組成物のうちの1つ以上を含む製造品が提供される。実施形態によると、この物品は、成形部品等の自動車部品であるが、水容器、機関車、レクレーション車両、飛行機、及びその他の製造物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、成形部品は、バンパーフェイシア、バンパー、ロッカー、被覆材、ホイールフレア、ドアパネル、又はインスツルメントパネルである。いくつかの実施形態において、このような成形部品を使用して、自動車産業において、燃費が高く、排気量の低い、より軽量の車を製造するのを支援してもよい。さらなる実施形態において、本明細書に開示の成形部品は、例えば、現在のバンパーフェイシア樹脂に使用されるもののように、現在のより高密度の組成物の特性プロファイルを示す。このような特性には、例えば、密度を低減しつつ、剛性を向上すること、ギャップ化を低減すること、一定の収縮及びCLTEを得ることが含まれる。従来既知の他のより低密度な組成物とは対照的に、本明細書において提供される組成物は、いくつかの実施形態において、CLTE又は収縮の増加又は実質的な増加を結果として招くものでない。
【0055】
実施形態において、本明細書において提供される組成物は、既存の設備に対応しており、再設備化の支出を全く要しないか、限定的なものである。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される組成物は、膨張/収縮のギャップ化が増加するのを回避することにより、他の低密度組成物とは対照的である。自動車産業では、技能向上のため、ギャップ化の低減が目指されている。
【0056】
実施形態において、物品は、着色剤が組み込まれてもよい。他の実施形態において、物品は、成形後(又は前)、着色、塗装、又はシールされてもよい。さらなる実施形態において、物品は、塗装性を向上するために、種々の材料が塗布されてもよい。さらに他の実施形態において、この物品は、クリアシール又はワックスが(塗装の前後、又は塗装の代わりに)塗布されてもよい。クリアシール、ワックス、及び/又は、塗装は(単独又は組み合わせで)、日光、風、雨、土砂及び虫、花粉又は樹液、及び/又は、鳥糞を含む道路のがれき等の要素から、物品を保護してもよい。
【0057】
方法
他の態様によると、組成物の作成方法であって、成分(a)(b)(c)及び(d)を溶解混合して、組成物を形成するステップを備え、組成物は、
(a)ポリオレフィン及びエラストマーを備え、前記組成物の総重量に対して、約80重量%~約95重量%の量で前記組成物中に存在し、(i)ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、又はそれらの組み合わせからなり、前記組成物の総重量に対して、約40重量%~約65重量%の量で存在するポリオレフィン、及び(ii)前記組成物の総重量に対して、約25重量%~約45重量%の量で存在するエラストマーを備える熱可塑性オレフィン樹脂と、
(b)複数のカーボンファイバーからなり、前記組成物の総重量に対して約1重量%~約15重量%の量で存在する充填剤成分と、
(c)前記組成物の総重量に対して、約0.5重量%~約10重量%の量で存在する相溶化剤と、
(d)前記組成物の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量で存在する添加剤パッケージとを含み、前記組成物は、約0.90g/cm3~0.98g/cm3の密度を有する方法を提供する。一実施形態において、組成物は、約0.90g/cm3~約0.98g/cm3、約0.90g/cm3~約0.97g/cm3、又は約0.94g/cm3~約0.96g/cm3の密度と、約0.2%~約0.7%の焼成後成形収縮(1時間、120℃)と、約1,200MPa~約3,000MPaの曲げ弾性率と、約1~約8(10-5mm/mm/℃)の線形熱膨張係数と、107オーム/スクェア以下の表面抵抗率とを有する。
【0058】
実施形態において、本明細書において提供される方法は、溶解配合された組成物をペレット化して複数のペレットを形成することを備える。いくつかの実施形態において、方法は、複数のペレットを押出成形することを備える。いくつかの実施形態において、成分は、高負荷連続ミキサー又は内側バッチミキサー(例えば、バンバリーミキサー又はツインスクリュー押し出し機)押し出し機で溶解配合される。充填剤成分の複数のカーボンファイバーは、下流に供給されてもよく、又はメインフィーダに供給されてもよい。
【0059】
「オレフィン」という用語は、アルケンをいい、分子中の少なくとも1つの炭素-炭素二重結合が末端二重結合である。オレフィン類の非限定的な例として、スチレン、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、及びドデセンが挙げられる。
【0060】
「エラストマー」という用語は、ゴム様特性を有し、約0%~約20%の範囲の結晶度を有するポリマー化合物をいう。いくつかの実施形態において、ポリマーは、約0%~約5%の範囲内で、少なくとも0.1%の結晶度を有することができる。
【0061】
本明細書において、「異相ポリプロピレン共重合体」とは、ポリプロピレンマトリクス内に分散されたエチレン及びプロピレンの共重合によって調製された共重合体(又は、ゴム共重合体)をいう。ポリプロピレンマトリクスは、ホモポリマー又は共重合体であってもよい。
【0062】
「ホモポリマー」という用語と類似の用語は、単一種のモノマーに由来する単一又は基本的単位からなるポリマーを意味する。例えば、エチレンホモポリマーは、エチレンに由来する単一又は基本的単位からなるポリマーであり、プロピレンホモポリマーは、プロピレン等に由来する単一又は基本的単位からなるポリマーである。
【0063】
「衝撃改質相溶化剤」という用語は、組成物全体の特性を改善するために、エラストマーエチレン共重合体組成物とポリオレフィンとの界面と相乗的に相互作用する化合物を意味する。本開示の目的のために、「衝撃改質相溶化剤」という用語は、前述のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ゴム及び異相ポリプロピレン共重合体を含む。
【0064】
「モノマー」及び「コモノマー」という用語は、入れ替え可能に使用される。これらの用語は、ポリマーを作成するために、リアクタに添加される重合性部分を備えた任意の化合物を意味する。例えば、プロピレン及びエチレンを含むポリマー等、ポリマーが1つ以上のモノマーを含むものとして説明される場合、ポリマーは、例えば、-CH2-CH2-由来の単位からなるものであって、そのモノマー自体、例えば、CH2=CH2ではない。
【0065】
「ポリマー」という用語は、同一又は異なる種別のモノマーを重合することで調製された高分子化合物を意味する。「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、共重合体、多―ポリマー、インターポリマー等を含む。
【0066】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種類のモノマー又はコモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これは、共重合体(3種以上の異なるモノマー又はコモノマーからなるポリマーをいうとき、「インターポリマー」とは相互交換可能に使用することができるが、2つの異なる種別のモノマー又はコモノマーから調製されたポリマーをいうことができる)、ターポリマー(3つの異なる種別のモノマー又はコモノマーから調製されたポリマーをいうことができる)、テトラポリマー(4つの異なる種別のモノマー又はコモノマーから調製されたポリマーをいうことができる)等に限定されるものでないが、これを含むものである。
【0067】
「ポリマー組成物」とは、少なくとも1つのポリマーからなる、及び/又は、少なくとも1つのポリマーを含有する組成物をいう。
【0068】
本明細書において使用される「ポリオレフィン」という用語は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、及び酢酸ビニル及び「オレフィン」ファミリー分類内のその他のポリマー樹脂等、より少量のコモノマーで重合した少なくとも約50重量%のエチレンを有するエチレン共重合体等のポリマーを含む。
【0069】
ポリオレフィンは、単一、多段階、又は連続リアクターと、スラリーと、溶液と、流動層プロセスと、例えば、異なる特性の組み合わせを有するポリマーを作成するための、不均質及び均質な系統、Ziegler-Natta、Phillips、メタロセン、単一サイト、及び束縛構造触媒を含む1つ以上の触媒とを使用した、バッチ連続プロセスを含む種々のプロセスで作成されてもよい。このようなポリマーは、高度に分岐されるか、又は略線形であってもよく、分岐、分散、及び平均分子量は、ポリマー分野の教示に従って製造のために選択するパラメータ及びプロセスによって変動し得る。
【0070】
「室温」という用語は、摂氏約23度をいう(ASTMで異なる規定のない限り。その場合、「室温」とは、特定の試験/手順/方法毎にASTM内に規定されているものをいう)。
【0071】
「熱可塑性ポリマー」は、熱への露出時に軟化し、室温への冷却時にその当初の状況に戻るポリマーを意味する。
【0072】
以上の定義は、本明細書に参照として援用された参照文献において矛盾する定義にとってかわるものである。しかしながら、特定の用語を定義したことは、定義されなかった用語が無限であることを示すものと考えられてはならない。むしろ、使用されたすべての用語については、当業者が理解できるように、添付の請求項を説明するものであると考えられる。
【0073】
本明細書の説明において、「含む」「である」「含有する」「有する」及び「備える」という用語は、非制限的に使用されているため、「含むが、これに限定されない」ということを意味するものと解されなければならない。方法及び組成物材料が種々の成分又はステップを「備える」という用語でクレーム又は説明されるとき、同組成物材料及び方法は、指摘の無い限り、種々の成分から「基本的になる」又は「なる」ものとすることもできる。
【0074】
本願全体を通じて、「約」という用語は、ある値が、その値の判定に採用される装置や方法の誤差の変動、又は研究間に存在する変動を含むものであることを示すものとして使用されている。
【0075】
不定冠詞や定冠詞は、複数の代替、例えば少なくとも1つの代替も含み得ることが意図されている。例えば、「ポリオレフィン」、「エラストマー」、「充填剤成分」等の開示は、指摘の無い限り、1種を超えるポリオレフィン、エラストマー、充填剤成分等のうちの1つ、混合物、又は組み合わせを網羅するものが意味されている。
【0076】
種々の数値範囲について本明細書中に開示している。出願人が任意の種別の範囲について開示又はクレームするとき、出願人の意図は、指摘の無い限り、範囲の終点や、その中に含まれる副次的範囲、及びその副次的範囲の組み合わせを合理的に網羅する、各々個別に可能な数字を開示又はクレームするというものである。さらに、本明細書に開示の範囲のすべての数値的終点は近似値である。代表的な例として、出願人は、一実施形態において、組成物は、約0.9~約0.98g/cm3の密度を有する。この範囲は、約0.9g/cm3~約0.98g/cm3の範囲の重量パーセンテージを網羅し、さらにこれらの値の間の任意の範囲及び副次的範囲を含んで、各々、「約」0.91g/cm3、0.92g/cm3、0.93g/cm3、0.94g/cm3、0.95g/cm3、0.96g/cm3、及び0.97g/cm3をも網羅するものとして理解されなければならない。
【実施例】
【0077】
本発明について、以下の実施例によりさらに説明を行うが、これらの実施例は、いかなる方法においても、その範囲に限定を課すものとして理解されてはならない。一方、本明細書に記載の説明を読んだ後に、本発明の要旨又は添付の請求項の範囲から逸脱することなく、当業者に対して提示されてもよいその他種々の態様、実施形態、変形例、及びそれらの同等物について、期待され得ることが明確に理解されなければならない。従って、本発明の他の態様は、本明細書に記載の本発明のと実施を考慮することにより、当業者にとって明らかとなるであろう。
【0078】
実施例1-組成物の調製
本明細書に記載の組成物の3つの実施形態は、ツインスクリュー押し出し機から表1の配合成分を引き出すことによって調製した。表1に与えられる重量パーセンテージは、各組成物の総重量に対するものである。
【0079】
本実施例における3つの実施形態では、各々、充填剤成分がカーボンファイバーを含むものであった。カーボンファイバーは、サンプル1及び2については下流で供給を行い、サンプル3については、メインフィーダで供給を行った。表1に開示の実施形態のうちの一部について、2つのデータポイント(コンマで分離)を以下に示した。表1は、列ごとに読む。例えば、第1のサンプル1は、18重量%のポリオレフィンAと、2.65重量%のポリオレフィンBと、20重量%のポリオレフィンCと、5重量%の充填剤成分を有する、等である。
【0080】
【0081】
実施例2-組成物の性質
実施例1のサンプル1~3に一連の試験を行い、その結果を表2に示した。表2に示される実施形態の一部について、2つのデータポイント(コンマで分離)を以下に示す。表2は、列毎に読む。例えば、第1サンプル1は、0.93g/cm3の密度と、21.4g/10分のMFRと、2785MPaの曲げ弾性率を有する、等である。
【0082】
【0083】
表2のデータは、以下の技術で収集した。
【0084】
(a)メルト質量フローレート(MFR)-メルト質量フローレート(MFR)は、グラム/10分の単位で与えられ、以下に特定される条件の下、表題「押出弾性率計による熱可塑性のメルトフローレート試験方法」のASTM D1238を使用して測定した。
【0085】
本明細書において使用される「ASTM D1238」という用語は、押出弾性率計により実施された熱可塑性のメルトフローレート判定のための標準試験方法をいう。通常、この試験方法は、押出弾性率計を使用した溶融熱可塑性樹脂の押出率の判定を網羅している。特定の予加熱後、規定の温度、負荷、及びバレル中のピストン位置といった条件下において、特定長さ及び開口直径を有するダイを通じて樹脂を押し出す。この試験方法は、2013年8月1日に承認され、2013年8月に公開されており、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。参照したASTM規格は、ASTMのウェブサイト、wwwastm.org又はASTMの顧客サービスservice@astm.orgにて参照可能である。
【0086】
(b)密度-単位をg/cm3とする密度は、表題「プラスチック-非セルラープラスチックの密度の判定方法、その1:浸漬方法、液体ピクノメータ法、及び滴定法」のISO1183-1を使用して測定した。本明細書において使用される「ISO1183-1」という用語は、2012年5月15日付で第二版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【0087】
(c)曲げ弾性率-曲げ弾性率は、メガパスカル(MPa)の単位で計算し、表題「プラスチック-曲げ弾性特性の判定」のISO178を使用して測定した。本明細書において使用される「ISO178」という法語は、2010年12月15日付で第五版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【0088】
(d)シャルピーノッチ付衝撃強度-シャルピーノッチ付衝撃強度(又は、「ノッチ付シャルピー衝撃強度」)は、KJ/m2の単位で計算し、表題「プラスチック-シャルピー衝撃特性の判定、その1:非計装化衝撃試験」のISO179-1を使用して測定した。本明細書において使用される「ISO179」又は「179-1」は、2010年6月15日付で第二版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【0089】
(e)多軸計装化衝撃-多軸計装化衝撃(MAII)エネルギー値は、J(ジュール)の単位で与えられ、パーセンテージ延性破壊モードを記録し、表題「負荷及び変位センサを使用したプラスチックの高速穿刺特性の標準試験方法」のASTM D3763を使用して測定した。本明細書において使用される「ASTM D3763」という用語は、2015年9月1日付で証明され、2015年9月に公開された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【0090】
(f)線形熱膨張係数-線形熱膨張係数(CLTE)は、押出成形プラークから切り出された焼き鈍し試験片の熱機械分析(TMA)を通じて測定されるものであり、流動方向における3つのデータ点の平均と、流動直交方向における3つのデータ点の平均として(10-5mm/mm/℃)の単位で計算した。各データ点は、表題「プラスチック-熱機械分析(TMA)、その2:線形熱膨張係数とガラス転移温度の判定」のISO11359-2を使用して測定した。本明細書において使用される「ISO11359-2」という用語は、1999年10月1日付で第1版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【0091】
(g)成形時収縮-成形時収縮は、4×6×1/8インチのプラークを成形することによって測定し、プラークを室温まで冷却し、24時間かけて再調整を行い、固定ゲージを使用して平均収縮を測定した。
【0092】
(h)焼成後成形収縮-焼成後成形収縮は、室温において、4×6×1/8インチに成形されたプラークを1時間又は1時間半(指定の通り)のいずれかの間、120℃の設定温度まで加熱し、室温に戻って再調整された(又は、室温において湿度を制御し、24時間放置することにより、安定化させた)後の平均収縮を固定ゲージを使用して測定することにより測定した。
【0093】
(i)表面抵抗率-表面抵抗率は、3点プローブ測定技術を取り入れたPinion/VoyargerモデルSRM-110の組み合わせによる表面抵抗率計により測定した。表面抵抗率は、オーム/スクェアの単位で10の累乗として記録した。
【0094】
(j)加熱撓み温度(HDT)-HDTは、℃の単位で計算し、表題「プラスチック-負荷下における撓み温度の判定、その2:プラスチック及びエボナイト」のISO75-2を使用して測定した。本明細書において使用される「ISO75」又は「75-2」という用語は、2013年4月15日付で第3版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本細書中に援用する。