(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】再生可能なベースオイル、ディーゼルおよびナフサを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C10G 3/00 20060101AFI20230421BHJP
B01J 29/83 20060101ALI20230421BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20230421BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230421BHJP
C10G 45/02 20060101ALN20230421BHJP
C10G 45/58 20060101ALN20230421BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
B01J29/83 M
B01J21/06 M
B01J35/10 301A
C10G45/02
C10G45/58
(21)【出願番号】P 2019569800
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2018065973
(87)【国際公開番号】W WO2018234187
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-21
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュッリョヤ、ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】ヌルミ、ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】カネルボ、ヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】トッピネン、サミ
(72)【発明者】
【氏名】マッコネン、ヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】ケッツネン、ミカ
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/062868(WO,A1)
【文献】特表2008-545034(JP,A)
【文献】特表2011-526640(JP,A)
【文献】国際公開第2013/113976(WO,A1)
【文献】特表2010-529274(JP,A)
【文献】特表2009-518530(JP,A)
【文献】特表2015-520162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
B01J 21/00-38/74
C07B 31/00-61/00、63/00-63/04
C07C 1/00-409/44
C11C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)2~95wt%の遊離脂肪酸の混合物;脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドから選択される5~98wt%の脂肪酸グリセロール;および非グリセロールタイプの脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよび脂肪酸アルコールからなるリストから選択される0~50wt%の一または複数の化合物、を含むフィードストックであって、前記フィードストックの大部分は遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールの混合物からなるフィードストックを提供する工程、
b)前記フィードストックを少なくとも以下の:
前記フィードストックよりもより高い遊離脂肪酸濃度を有する遊離脂肪酸フィードであって、遊離脂肪酸がC
10~C
24の脂肪酸を含むフィード;ならびに
より高い濃度の、脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドから選択される化合物を含み、および、前記遊離脂肪酸フィードよりも高い沸点を有する、一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィード
に分離する工程、
c)前記遊離脂肪酸フィードを、ケトン化反応条件に付す工程であって、2つの遊離脂肪酸がケトン流を得るために反応され、前記ケトン流は主に飽和ケトンを含む工程、
d)前記ケトン流を、再生可能なベースオイルを含む脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流を得るために、同時にまたは順次、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと付す工程
e)任意には、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために、前記工程d)の生成物を蒸留する工程、
f)前記一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードを、ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流を得るために、同時にまたは順次、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと付すことによって、前記一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードが、ディーゼル生成物へと変換される工程、
g)任意には、蒸留されたディーセル燃料を得るために、前記工程f)から得られる流を蒸留する工程
を含む生物起源のフィードストックから再生可能なベースオイルおよびディーセル燃料を製造するための方法。
【請求項2】
追加で、ナフサ燃料を製造するために、前記ナフサ燃料が、前記工程d)の前記脱酸素化および異性化されたベースオイル流と前記工程f)の前記脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流の両方の蒸留から得られる請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)に先立って、脂肪酸エステルを含む最初のフィードストックは、少なくとも加水分解工程において前処理され、これによりフィードストックが生成され、ここで、脂肪酸エステルに対する遊離脂肪酸の割合が前記最初のフィードストックと比較して増加されている請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
水素化によるまたは加水分解による前処理が、前記工程a)~c)のいずれの間にもまたは工程間でも行われない請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程d)の前記水素化脱酸素化および水素化異性化が順次行われ、および前記水素化脱酸素化および水素化異性化の工程間に、ストリッピング工程が存在し、ここで、ガスが、300~330℃のあいだの温度および40~50bargのあいだの圧力の分離工程で液体から分離される請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程d)およびe)の工程間にストリッピング工程が存在し、ここで、ガスが、320~350℃のあいだの温度でおよび3~6bargのあいだの圧力で液体から分離される請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程b)において、前記フィードストックよりもより高い遊離脂肪酸濃度を有する前記フィード中の前記遊離脂肪酸が、C
14~C
22の脂肪酸を含む、またはC
14、C
16、C
18、C
20およびC
22の脂肪酸を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記遊離脂肪酸フィードが主に、飽和の遊離脂肪酸を含む、またはC
16脂肪酸を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記フィードストックがパーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)である請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ケトン化反応条件が、300~400℃の範囲である温度、5~30bargの範囲である圧力、および0.25~3hr
-1の範囲であるWHSV、金属酸化物触媒であるケトン化触媒の存在下、任意には0.1~1.5ガス/フィード比(w/w)の範囲であるガスの存在下、ここで、ガスは、一またはそれ以上のCO
2、H
2、N
2、CH
4、H
2Oから選択される、を含む請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ケトン化反応条件が、液相のケトン化である請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ケトン化触媒が、Ti、Mn、Mg、CaおよびZr含有の金属酸化物触媒のうちの一または複数からなるリストから選択される金属酸化物触媒であ
る請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ケトン化触媒が、Ti含有金属酸化物触媒である請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ケトン化触媒が、TiO
2である、または80~160Åである平均の細孔径、および/または40~140m
2/gであるBET面積、および/または0.1~0.3cm
3/gである多孔度を有するアナターゼ型のTiO
2である請求項1~
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ケトン化触媒が、担体に担持されているTiO
2である請求項1~
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記水素化脱酸素化反応条件が、250~400℃の範囲の温度、20~80bargの範囲の圧力、および、0.5~3h
-1の範囲のWHSV、および、350~900nl H
2/lフィードのH
2フロー、水素化脱酸素化触媒の存在下を含む請求項1~
15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
水素化脱酸素化触媒が、アルミナ担体に担持されたNiMoである請求項1~
16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記異性化反応条件が、250~400℃の範囲の温度、10~60bargの範囲の圧力、および、0.5~3h
-1の範囲のWHSV、および、100~800nl H
2/lフィードのH
2フロー、異性化触媒の存在下を含む請求項1~
17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記異性化反応条件が、アルミナおよび/またはシリカである担体に担持されたグループVIII金属およびモレキュラーシーブを含む触媒の存在を含む請求項
18記載の方法。
【請求項20】
前記水素化脱酸素化および水素化異性化触媒が、同一である、または、両方がNiWである請求項1~
19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
50wt%より多い量の前記フィードストックが、前記遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールの混合物である請求項1~
20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
70wt%より多い量、または90wt%より多い量の前記フィードストックが、前記遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールの混合物である請求項
21記載の方法。
【請求項23】
前記フィードストックが、少なくとも10wt%の遊離脂肪酸を含む請求項1~
22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記フィードストックが、90wt%以下の遊離脂肪酸を含む請求項1~
23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記フィードストックが、少なくとも10wt%および90wt%より小さい遊離脂肪酸を含む請求項1~
24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記フィードストックが、少なくとも10wt%の脂肪酸エステルを含む請求項1~
25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記フィードストックが、90wt%以下の脂肪酸エステルを含む請求項1~
26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記フィードストックが、少なくとも10wt%および90wt%より小さい脂肪酸エステルを含む請求項1~
27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記フィードストックが、少なくとも10wt%および90wt%より小さい遊離脂肪酸、および、少なくとも10wt%および90wt%より小さい脂肪酸エステルを含み、ならびに、70wt%より多い量、または90wt%より多い量の前記フィードストックが、前記遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールの混合物である請求項1~
28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記脂肪酸エステルが、脂肪酸グリセロールである請求項
26~29のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的オイルの水素化処理の分野に関し、特には、例えば再生可能なベースオイル、ディーゼルオイルおよびナフサをプロセス効率のよい方法で製造するための方法などの、再生可能なベースオイルおよびディーゼルオイルを製造するための方法、特には低下された水素消費および向上された触媒寿命を伴う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば植物性オイルおよび動物性脂肪などの生物学的オイルの水素化処理に関連する技術は、植物性オイルの水素化脱酸素化および水素化異性化の組み合わせられたステップが改良された低温流動性を有する再生可能なディーゼルを与えることが20世紀の終わりに最初に発見されて以来多くの注目を集めてきた。21世紀の始めに、再生可能なベースオイルの製造もまた、再生可能なオイルの二重結合オリゴマー化または脂肪酸のケトン化反応などを含む多くの反応経路を通じて調べられてきた。
【0003】
生物学的オイルの水素化処理は、大部分において触媒化反応である。産業スケール(年間>100ktの生物学的オイル)における生物学的オイルの触媒的水素化処理は、メンテナンスが必要となる前にプラントまたはリアクターが操業状態でいられる時間などのいくつかの問題に直面している。操業時間の低下の原因の一つは、触媒の不活性化、または触媒床の物理的な詰まりであり、頻繁かつ望ましくない圧力低下を引き起こす。触媒の寿命は、フィードストックの質に大きく依存している。触媒的水素化処理の問題のひとつは、特には、例えば非常に少ない量の遊離脂肪酸しか含まない食用の菜種油などのより分解していない生物学的オイルと比較して、一定の量のより反応性である遊離脂肪酸(FFA)と共にグリセリドを含むより分解したフィードの処理と組み合わせた場合の触媒の寿命である。生物学的オイルの水素化処理における別の問題は、生物学的オイルを再生可能なディーゼルへとまたは再生可能なベースオイルへと変換するために必要とされる全体の水素量を減少させることである。
【0004】
特許文献1(Neste Oyjが特許権者)は、5wt%以上の遊離脂肪酸を含む生物学的オイルからのディーゼルの製造における望ましくない副反応に対する解法を提供している。遊離脂肪酸を含むフィードを大量の炭化水素希釈剤を用いて希釈することが望ましくない副反応を減少させ、改善された触媒の寿命を可能とし、そしてそれゆえより多くの操業時間を可能にすることが見出された。
【0005】
食用として使用することのできない再生可能なオイルを使用したいという欲求が存在している。再生可能なディーゼルおよび再生可能なベースオイルへと処理するために使用される生物学的オイルは、従来技術において時々示されている純粋なトリグリセリドフィードの例と比較して、ますますより分解されたものに、およびより複雑になり続けてきている。したがって、当該技術分野において、特には再生可能なディーゼルおよび再生可能なベースオイルの調製のための、様々な量の遊離脂肪酸を含むそのような分解されたおよび複雑な生物学的オイルまたはそれらの混合物を利用できるプロセスへの要求がある。
【0006】
特許文献2(Neste Oyjが特許権者)は、炭化水素を用いて希釈され、および、前水素化、ケトン化、水素化酸素化、ストリッピング、水素化異性化、任意の水素化仕上げ、および蒸留によって再生可能なベースオイルの、再生可能なディーゼルおよび再生可能なガソリンへと処理されている複雑なフィードについて記載している(例えば、文献の
図1を参照のこと)。
【0007】
遊離脂肪酸および脂肪酸エステルを含む価値の低い生物学的オイルを、例えば触媒の寿命および水素消費などに関して効率的な方法で、再生可能なベースオイルおよび再生可能なディーゼルへと処理することのできるさらなるプロセスに対する要求が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1741768号明細書
【文献】国際公開第2007/068795号
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上述の従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、一定の量の遊離脂肪酸を含む再生可能なオイルのより効率的な処理方法、特にはこれらに限定されるわけではないが、より低い水素消費および向上された触媒寿命を提供することである。
【0010】
課題を解決するために、本発明は、生物起源のフィードストックから再生可能なベースオイルおよびディーセル燃料を製造するための方法であって、
a)2~95wt%の遊離脂肪酸の混合物;脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドから選択される5~98wt%の脂肪酸グリセロール;非グリセロールタイプの脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよび脂肪酸アルコールからなるリストから選択される0~50wt%の一またはそれ以上の化合物、を含むフィードストックであって、前記フィードストックの大部分は遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールの混合物であるフィードストックを提供する工程、
b)フィードストックを少なくとも以下の:フィードストックよりもより高い遊離脂肪酸濃度を有する遊離脂肪酸フィードであって、遊離脂肪酸がC10~C24の脂肪酸、好ましくはC14~C22の、例えばC14、C16、C18、C20およびC22などの脂肪酸を含むフィード;ならびに、より高い濃度の、脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドから選択される化合物を含み、および、遊離脂肪酸フィードよりも高い沸点を有する、一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィード、に分離する工程、
c)脂肪酸フィードを、ケトン化反応条件に付す工程であって、2つの脂肪酸がケトン流を得るために反応され、前記ケトン流は主に(飽和された)ケトンを含む工程、
d)前記ケトン流を、再生可能なベースオイルを含む脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル生成物流を得るために、同時にまたは順次、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと付す工程、
e)任意には、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために、工程d)の生成物を蒸留する工程、
f)好ましくは一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードを、ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流を得るために、同時にまたは順次、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと付すことによって、一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードが、ディーゼル生成物へと変換される工程、
任意には、蒸留されたディーセル燃料を得るために、工程f)から得られる流を蒸留する工程
を含む方法を提供する。
【0011】
すなわち、本発明の発明者らは、本発明の第1の態様において、初めに少なくとも一部の遊離脂肪酸をフィードストックから分離すること、そしてその後、再生可能なベースオイル流を得るためにこの遊離脂肪酸を別個にケトン化反応において、続いて水素化脱酸素化および水素化異性化反応によって処理することによって、遊離脂肪酸および脂肪酸エステルを含む分解した価値の低い生物学的オイルが再生可能なベースオイルおよび再生可能なディーゼルオイルへと効率的な方法で処理され得ることを発見した。残りの遊離脂肪酸が枯渇したフィードは、再生可能なディーゼル燃料流を得るために別々の水素化脱酸素化および水素化異性化反応で処理される。
【0012】
フィードストックを2つの流に分離することは、全体のフィードストックの組み合わされた処理と比較して、主に遊離脂肪酸を含む分離されたフィードのケトン化反応が、全体流のケトン化に比べて望ましくないオリゴマー化反応がより少ないために、遊離脂肪酸のケトンへのほぼ完全な(>90%、>95%、>99%、または99.5%以上でさえある)を結果としてもたらす条件下で行われ得るという驚くべき優位点を提供する。さらに、このケトン流は、未変換の脂肪酸またはトリグリセリドもまた含むフィードと比較して、より温和な水素化脱酸素化条件の下で対応するパラフィンへと変換され得る。
【0013】
追加の利点として、脂肪酸が枯渇したフィードは、(始めの)フィードストックと比較してより少ない遊離脂肪酸しか含まず、したがって、全体のフィードストックの水素化と比較して、より少ない水素しか使用しない。これは、ケトン化のあいだ、脂肪酸の酸素含有量の75%は、水素を消費することなくCO2およびH2Oとして除去され、そして結果としてより少ない水素がケトン流を変換するために必要とされるため、分離された遊離脂肪酸フィードのケトン化反応に起因してより少ない総計の水素消費を結果としてもたらす。したがって、フィードの分離は、完全なケトン化変換が達成され得る場合、すなわちさらに過酷な反応条件を必要とする未変換の脂肪酸がない場合、より少ない総計の水素消費量、ケトン流のためのより温和な水素化脱酸素化条件、を結果としてもたらす。脂肪酸はまた、非常に腐食性であり、およびHDOのあいだに副反応物を生成するかもしれない。したがって、前もっての分離が行われていない同じフィードの水素処理と比較してより少ない遊離脂肪酸に暴露されているため、水素化脱酸素化触媒を含むリアクターにおけるより長時間の操業が達成可能である。
【0014】
プロセスは追加で、ナフサ燃料を製造するためのものであってもよく、ここで、ナフサ燃料は、工程d)の脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流の蒸留および工程f)の脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流の蒸留の両方から得られる。
【0015】
該方法の工程a)に先立って、脂肪酸エステルを含む最初のフィードストックは、少なくとも加水分解工程において前処理されてもよく、これによりフィードストックが生成され、ここで、脂肪酸エステルに対する遊離脂肪酸の割合は、最初のフィードストックと比較して増加されている。
【0016】
ある変形において、水素化によるまたは加水分解による前処理は、工程a)~c)中にまたは工程a)~c)の工程間に行われなくてもよい。
【0017】
工程d)の水素化脱酸素化および水素化異性化が順次、行われる場合、水素化脱酸素化工程と水素化異性化工程との工程間に、ストリッピング工程が存在していてもよく、ここで、ガスが液体から分離される。これは、例えば、300~330℃のあいだである温度および40~50bargのあいだである圧力などの高温および高圧の分離工程において行われ得る。
【0018】
方法の工程d)と工程e)との工程間に、
ストリッピング工程が存在していてもよく、ここで、ガスが液体から分離される。これは、320~350℃のあいだである温度および3~6bargのあいだである圧力で行われ得る。
【0019】
遊離脂肪酸フィードの大部分は、飽和した遊離脂肪酸であり得る。遊離脂肪酸フィードの大部分は、C16脂肪酸であり得る。フィードストックは、パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)であり得る。
【0020】
ケトン化反応条件は、一またはそれ以上の以下の条件を含み得る:300~400℃の範囲である温度;5~30bargの範囲である圧力;0.25~3hr-1の範囲であるWHSV。ケトン化反応は、ケトン化触媒の存在下で行われ得、ここで、ケトン化触媒は、金属酸化物触媒を含む。ケトン化反応は、0.1~1.5ガス/フィード比(w/w)の範囲であるガスの存在下で行われ、ここで、ガスは、一またはそれ以上のCO2、H2、N2、CH4、H2Oから選択される。
【0021】
ケトン化反応条件は、液相のケトン化を確実にするように選択され得る。
【0022】
ケトン化触媒は、Ti、Mn、Mg、CaおよびZr含有の金属酸化物触媒のうちの一または複数からなるリストから選択される金属酸化物触媒であり得る。
【0023】
ケトン化触媒は、任意には担体に担持されていてもよいTiO2であってもよい。例えば、80~160Åである平均の細孔径、および/または40~140m2/gであるBET面積、および/または0.1~0.3cm3/gである多孔度を有するアナターゼ型のTiO2。
【0024】
水素化脱酸素化反応条件は、以下のうちの一またはそれ以上を含む。250~400℃の範囲の温度、20~80bargの範囲の圧力、0.5~3h-1の範囲のWHSV、および350~900nl H2/lフィードのH2フロー。水素化脱酸素化反応は、例えば、アルミナ担体に担持されているNiMOなどの水素化脱酸素化触媒の存在下で行われてもよい。
【0025】
異性化反応条件は、以下のうちの一またはそれ以上を含む。250~400℃の範囲の温度、10~60bargの範囲の圧力、0.5~3h-1の範囲のWHSV、100~800nl H2/lフィードのH2フロー。水素化異性化反応は、任意にはアルミナおよび/またはシリカ担体に担持されていてもよい、例えば、グループVIII金属およびモレキュラーシーブを含む触媒などの異性化触媒の存在下で行われてもよい。
【0026】
水素化脱酸素化および異性化の触媒は、例えばNiWなどの、同じ触媒であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、再生可能なベースオイル製造の概要図を示す図である。
【
図2】
図2は、例えば、サワーウォーターストリッパーおよびリサイクルガスループなどの形状などである、ベースオイルおよびディーゼル製造のための追加的な共有される支持ユニットを含む、再生可能なベースオイル製造、ならびに任意的なナフサおよび/またはディーゼル製造のための概略図である。
【
図3】
図3は、追加的なおよび任意的なサワーウォーターストリッパーおよびリサイクルガスループを含む、統合された再生可能なベースオイル、ディーゼルおよびナフサ製造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施態様を記載するにあたり、明確性を目的として特定の用語が明確性のために使用されるであろう。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されるわけではなく、そして、それぞれの特定の用語は、類似の目的を達成するために類似の様式で操作される全ての技術的な等価物を含むものと理解される。
【0029】
本発明の目的は、一定の量の遊離脂肪酸を含む再生可能なオイルのより効率的な処理方法、特にはこれらに限定されるわけではないが、より低い水素消費および向上された触媒寿命を提供することである。
【0030】
本発明によって提供されるものは、生物起源のフィードストックから再生可能なベースオイルおよびディーセル燃料を製造するための方法であって、
a)2~95wt%の遊離脂肪酸の混合物;脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドから選択される10~98wt%の脂肪酸グリセロール;非グリセロールタイプの脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよび脂肪酸アルコールからなるリストから選択される0~50wt%の一またはそれ以上の化合物、を含むフィードストックであって、前記フィードストックの大部分は遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールの混合物であるフィードストックを提供する工程、
b)フィードストックを少なくとも以下の:フィードストックよりもより高い遊離脂肪酸濃度を有する遊離脂肪酸フィードであって、遊離脂肪酸がC10~C24の脂肪酸、好ましくはC14~C22の、例えばC14、C16、C18、C20およびC22などの脂肪酸を含むフィード;ならびに、より高い濃度の、脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドから選択される化合物を含み、および、遊離脂肪酸フィードよりも高い沸点を有する、一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィード、に分離する工程、
c)脂肪酸フィードを、ケトン化反応条件に付す工程であって、2つの脂肪酸がケトン流を得るために反応され、前記ケトン流は主にケトンを含む工程、
d)前記ケトン流を、再生可能なベースオイルを含む脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル生成物流を得るために、同時にまたは順次、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと付す工程、
e)任意には、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために、工程d)の生成物を蒸留する工程、
f)好ましくは一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードを、ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流を得るために、同時にまたは順次、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと付すことによって、一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードが、ディーゼル生成物へと変換される工程、
任意には、蒸留されたディーセル燃料を得るために、工程f)から得られる流を蒸留する工程
を含む方法である。
【0031】
すなわち、本発明の発明者らは、本発明の第1の態様において、初めに少なくとも一部の遊離脂肪酸をフィードストックから分離すること、そしてその後、再生可能なベースオイル流を得るためにこの遊離脂肪酸を別個にケトン化反応において、続いて水素化脱酸素化および水素化異性化反応によって処理することによって、遊離脂肪酸および脂肪酸エステルを含む分解した価値の低い生物学的オイルが再生可能なベースオイルおよび再生可能なディーゼルオイルへと効率的な方法で処理され得ることを発見した。
【0032】
残りの遊離脂肪酸が枯渇したフィードは、再生可能なディーゼル燃料流を得るために別々の水素化脱酸素化および水素化異性化反応で処理される。フィードストックを2つの流に分離することは、全体のフィードストックの組み合わされた処理と比較して、主に遊離脂肪酸を含む分離されたフィードのケトン化反応が、全体流のケトン化に比べて望ましくないオリゴマー化反応がより少ないために、遊離脂肪酸のケトンへのほぼ完全な(>90%、>95%、>99%、または99.5%以上でさえある)を結果としてもたらす条件下で行われ得るという驚くべき優位点を提供する。さらに、このケトン流は、トリグリセリドもまた含むフィードと比較して、より温和な水素化脱酸素化条件の下で対応するパラフィンへと変換され得る。
【0033】
追加の利点として、脂肪酸が枯渇したフィードは、(始めの)フィードストックと比較してより少ない遊離脂肪酸しか含まず、したがって、全体のフィードストックの水素化と比較して、より少ない水素しか使用しない。これは、ケトン化のあいだ、脂肪酸の酸素含有量の75%は、水素を消費することなくCO2およびH2Oとして除去され、そして結果としてより少ない水素がケトン流を変換するために必要とされるため、分離された遊離脂肪酸フィードのケトン化反応に起因してより少ない総計の水素消費を結果としてもたらす。したがって、フィードの分離は、より少ない総計の水素消費量、ケトン流のためのより温和な水素化脱酸素化条件、すなわちよりエネルギー効率のよい、および、前もっての分離が行われていない同じフィードの水素処理と比較してより少ない遊離脂肪酸に暴露されているため、水素化脱酸素化触媒を含むリアクターにおけるより長時間の操業を結果としてもたらす。
【0034】
生物起源のフィードストックから再生可能なベースオイルおよびディーセル燃料を製造するための本発明の方法が、以下により詳細に記載されるであろう。
【0035】
本発明のよる再生可能なベースオイルは、脂肪酸のケトン化から得られることにより高度にパラフィン化されているものであり得る。したがって、再生可能なベースオイルは、非常に少量の芳香族化合物または酸素化物のみを含み得る。ベースオイルであるので、それは、例えば380℃より高い温度などのベースオイル沸点範囲内で沸騰する。
【0036】
本発明の文脈における再生可能なベースオイルは、一またはそれ以上の再生可能な供給源から得られるベースオイルとして理解されるべきである。ベースオイルは、公知の用語であり、そして、本発明の文脈におけるベースオイルは、80より大きい粘度指数を有する炭化水素ベースの成分として規定され得、例えば本発明の文脈におけるベースオイルは、さらに、API(アメリカ石油協会)のベースオイルグループI、IIまたはIII、好ましくはAPIグループIIIの要件を満たすものとして規定され得る。
【0037】
ベースオイルは、それらの最終生成物または応用の多くのパラメータ、例えば粘度、酸化安定性、揮発性、例えば流動点などの低温流動性、および粘度指数などに影響を与える。
【0038】
本発明にしたがって得られるケトンから製造され得るベースオイルは、ベースオイルを5つの主なグループに分けているアメリカ石油協会のグループIIIの要件を満たす。グループIからIIIが様々な品質をもつ鉱物油ベースオイルである。
【0039】
再生可能なディーゼル燃料(または再生可能なディーセル燃料成分)は、生物学的オイルであるモノアルキル脂肪酸エステルである例えば酸素含有バイオディーゼルなどとは異なり、炭化水素ディーゼル製品である。ディーゼル燃料であるため、例えば180℃と380℃とのあいだなどの、例えば、180℃と350℃とのあいだなどの、ディーゼル沸点範囲内で沸騰する。例として、EN15940によるディーゼル燃料または例えばEN590によるディーゼル燃料のためのディーゼル燃料成分など。
【0040】
再生可能なベースオイル、ディーゼルまたはナフサに共通して、それらは、高度にパラフィン化されているものであり得、したがって、それらにおける芳香族化合物および/または酸素化物の含有量は非常に低く、例えば0.5vol%未満である。
【0041】
再生可能な成分含有量は、原料から決定され得るとともに、生成物においてもASTM D6866に記載されているような14C、13C、および/または12Cを含む同位体分布によって決定され得る。国際公開第200/068799号が参照され、これは本明細書中に参照により組み込まれる。例えば、完全に生物起源である生成物中の総計の炭素含有量の典型的な14C異性体含量は、少なくとも100%である。したがって、生物起源のフィードストックから生成される再生可能なベースオイルは、少なくとも100%であろう。
【0042】
フィードストック
フィードストックが提供される。フィードストックは、主要部分として、遊離脂肪酸および例えば脂肪酸グリセロールなどの脂肪酸エステルの混合物を含む。これはケトン化反応が遊離脂肪酸を必要とするためであり、および、分解したまたは価値の低い生物学的オイルは典型的には遊離脂肪酸および例えばトリグリセリドまたは部分的なグリセリドなどの脂肪酸グリセロールの混合物であるためである。遊離脂肪酸および脂肪酸エステルの主要部分は、50wt%より多い、例えば、70wt%より多い、90wt%より多いと考えられ得る。
【0043】
分解された生物学的オイルにおいては、高価な食用オイルとして使用され得るトリグリセリドの一部は、遊離脂肪酸および例えばモノ-およびジ-グリセリドなどの部分的なグリセリドへと分解されている。価値の低い生物学的オイルはしたがって、グリセリド含有量(モノ-、ジ-、およびトリ-グリセリドの量を合わせた量)と比較してより多い量の遊離脂肪酸を有する。例えば、粗パーム油の精製においては、パーム油ストリッパーが粗パーム油を価値の高い食用パーム油と価値の低いパーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)とに分離するために使用され得る。価値の低いPFADは、フィードの食用には適さず、本発明による方法において優位に使用され得る。
【0044】
したがって、フィードストックは、パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)であってもよく、これは、主要部分として、遊離脂肪酸を含む。PFADは、遊離脂肪酸および例えば部分的なグリセリドなどの脂肪酸エステルを含む価値の低い生物学的オイルの一つの例である。このような分解した脂肪は、食品製造には適しておらず、そして、パーム油精製プロセスのあいだに、パーム油が食品産業の品質基準に合う前に、除去される必要がある。PFADの脂肪酸成分は、供給源によって異なる。典型的には、例えばパーム油などの主要部分としてトリグリセリドを含む食用オイル中において分解した遊離脂肪酸含有量を低く保つことが望ましい。PFADは、食品製造に不適である副産物である。それは、トリグリセリドよりも高い含有量である遊離脂肪酸を含み(なぜならば、パーム油トリグリセリドは食用パーム油として使用されるためである)、例えば脂肪酸エステル含有量と比較してより多くの量の遊離脂肪酸を含む。
【0045】
パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)は、粗パーム油を精製することからの副産物である。それは、室温で、薄茶色の半固体状であり、加熱により茶色の液体へと融解する。PFADの成分は様々であるが、PFADの最少の遊離脂肪酸(FFA)含有量は、60wt%であり得る。PFADのプロバイダーが満たすように求められる契約上の仕様書は、しばしば、70wt%以上のFFAを明示しており、これは、FFA含有量がしばしば80wt%以上であることを意味している。FFA含有量は、65~95wt%のあいだの範囲、例えば80~90wt%のあいだであり得る。
【0046】
PFADはまた、脂肪酸の、モノ-グリセリド、ジ-グリセリド、およびトリ-グリセリドから選択される脂肪酸グリセロールを含む。例えば、脂肪酸グリセロールの含有量は、2wt%より多く、または20wt%より低く、例えば2~15wt%の範囲などであり得る。
【0047】
PFADの残余の成分は、例えばトコフェノール、トコトリエノール、ステロール、スクアラン、および揮発性物質などのけん化不能な物質であり得る。例えば、けん化不能な物質の含有量は、0.5wt%より多く、また、3wt%より少なく、例えば、0.5~2.5wt%の範囲などであり得る。
【0048】
PFADは、追加で、痕跡量の金属、例えば、Cr、Ni、Cu、Feなどを含んでいてもよい。
【0049】
Bonnie Tay Yen PingおよびMohtar Yusofは、2009年に、「Characteristics and Properties of Fatty Acid Distillates form Palm Oil」をOil Palm Buletin 59巻、5~11頁に発表しており、ここで、PFADの成分に関するアップデートされた情報を適用しており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本発明の生物起源のフィードストックの一例がPFADである一方、例えば、遊離脂肪酸を含んだ他の植物オイルまたは動物性脂肪、植物オイルまたは動物性脂肪の様々なグレードおよび精製工程からの生成物、廃棄食用油、トール油精製工程からの様々なグレードおよび生成物、粗トール油(CTO)、トール油、トール油ヘッド、トール油脂肪酸(TOFA)、黄色油脂、鶏油、魚油、または例えば油脂化学製品製造の酸性油分副生成物などの他の多くの良好に適した生物起源のフィードストックが存在している。
【0051】
生物起源のフィードストックはさらに、生物起源のいくつもの種々のフィードストックの混合物であってもよい。例えば、脂肪酸エステルと比べてより少しの遊離脂肪酸しか含まない一またはそれ以上の種類の植物オイルまたは動物性脂肪と混合された、脂肪酸エステルと比べてより多くの遊離脂肪酸を含む一またはそれ以上の種類の植物オイルまたは動物性脂肪。
【0052】
フィードストックが、主要部分として、遊離脂肪酸と例えば脂肪酸グリセロールなどの脂肪酸エステルとの混合物を含む一方、FFAおよび脂肪酸エステルの量は、顕著に変わっていてもよく、これは、多くの種々の種類の脂肪酸含油量、および脂肪酸エステルフィードストックおよび上記の混合物からも明らかである。
【0053】
実際上の目的として、フィードストックは、少なくとも2wt%の、例えば少なくとも5wt%の、遊離脂肪酸を含む。例えば、例えば蒸留などのいくつかの分離方法は、遊離脂肪酸の混合物が少なくとも5wt%、例えば少なくとも7wt%、または10wt%である場合により効率的である。遊離脂肪酸含有量は、98wt%未満、例えば95wt%未満、または90wt%未満などであり得る。
【0054】
実際上の目的として、フィードストックは、少なくとも2wt%の、例えば少なくとも5wt%の、脂肪酸エステルを含む。例えば、例えば蒸留などのいくつかの分離方法は、脂肪酸エステルの含有量が少なくとも5wt%、例えば少なくとも7wt%、または10wt%である場合により効率的である。脂肪酸エステル含有量は、98wt%未満、例えば95wt%未満、または90wt%未満などであり得る。
【0055】
例えば、遊離脂肪酸の混合物は、遊離脂肪酸の混合物の2~95wt%、例えば5~95wt%、例えば5~90wt%であり得る。いくつかのフィードストックにおいて、遊離脂肪酸の含有量は、比較的高く、例えば50wt%より多く、または70wt%より多い。
【0056】
例えば、脂肪酸のモノ-グリセリド、ジ-グリセリド、およびトリ-グリセリドから選択される脂肪酸グリセロールの混合物は、遊離脂肪酸混合物の5~98wt%、例えば5~95wt%、例えば5~90wt%であり得る。いくつかのフィードストックにおいて、遊離脂肪酸含量は、比較的高く、例えば、50wt%より多く、または70wt%より多い。
【0057】
フィードストックは、例えば、5~90wt%の遊離脂肪酸、5~90wt%の脂肪酸グリセロール、および0~20wt%の、非グリセロールタイプの脂肪酸エステル、脂肪アミド、および脂肪アルコールからなるリストから選択される一またはそれ以上の化合物を含んでいてもよく、ここで、フィードストックは、50wt%より多くの、例えば70wt%以上、例えば80wt%以上の、遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールを含む。
【0058】
フィードストックの脂肪酸含有量を増加させ、それによって、該方法の工程a)に先立ってプロセス中でより多くの再生可能なベースオイルを提供させることは可能であり、脂肪酸エステルを含む最初のフィードストックは少なくとも加水分解工程において、例えば部分的加水分解などで前処理されてもよくこれによって脂肪酸エステルに対する遊離脂肪酸の比率が最初のフィードストックと比較して増大されているフィードストックが製造され得る。
【0059】
用語脂肪酸は、当該技術分野における当業者にとって公知であり、そして、炭化水素鎖および末端のカルボキシ基からなるカルボン酸、とりわけ脂肪およびオイル中のエステルとして生成される任意のカルボン酸を特徴付けるために使用されてきた。
【0060】
脂肪酸は、飽和されていても、および不飽和であってもよい。ケトン化反応において二量体生成物を製造することが望まれる場合、脂肪酸が飽和脂肪酸であるか、減少された不飽和の量をもつことが遊離であるが、これは、タール質の生成物をもたらし得る二重結合オリゴマー化が避けられるまたは減少されるためである。例えば、遊離脂肪酸フィードの主な部分は、飽和の遊離脂肪酸であり得る。優位には、90wt%より多い、例えば95wt%より多い、または99wt%より多い量の遊離脂肪酸が飽和脂肪酸である。
【0061】
飽和の脂肪酸は、フィードストックが遊離脂肪酸フィードと一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードとに分離させる前のフィードストックの二重結合水素化反応、または、分離後の遊離脂肪酸フィードの二重結合水素化のどちらかから得られ得る。例えば、前水素化工程は、水素化触媒、例えば以下の「ケトン流の水素化脱酸素化」の題のもとに記載されている、例えばアルミナ担体に担持されているNiMo触媒などを利用し得るが、好ましくは、二重結合水素化は、二重結合水素化において効率的である傾向のある、担持された貴金属、例えば、シリカまたは炭素担体に担持されたPdまたはPtなどを用いて行われる。前水素化は、水素化脱酸素化反応を避けるために、300℃未満の温度で、例えば280℃未満、または260℃未満の温度で行われ得る。前水素化はまた、二重結合の十分な水素化を確実なものとするために十分な高温であるために、90℃より高い温度、例えば110℃より高い、または120℃より高い温度である。例えば、前水素化の温度は、90~300℃、例えば110~280℃、例えば120~260℃などであり得る。圧力は、10~70barg、例えば20~60barg、例えば30~50bargなどであり得る。WHSVは、0.5~3.0h-1、例えば1.0~2.5h-1、例えば1.0~2.0h-1などであり得る。H2/オイル比は、100~500nl/l、例えば150~450nl/l、例えば200~400nl/lなどであり得る。したがって、前水素化は、好ましくは、90~300℃、10~70barg、0.5~3.0h-1のWHSV、および100~500nl/lのH2/オイル比、より好ましくは、110~280℃、20~60barg、1.0~2.5h-1のWHSV、および150~450nl/lのH2/オイル比、さらにより好ましくは、120~260℃、30~50barg、1.2~2.0h-1のWHSV、および200~400nl/lのH2/オイル比で行われ得る。
【0062】
飽和脂肪酸はまた、フィードストック自身の中にも存在しており、分離は、飽和している遊離脂肪酸の部分をさらに増大させ得る。例えば、PFADは典型的には、約30~40wt%のC16飽和脂肪酸を、約50wt%のC18飽和のおよび不飽和の脂肪酸、ならびに5wt%未満のC14以下の脂肪酸と共に含む。これは、多くの量のC16飽和脂肪酸が残余のフィードストックから分離され得、それによって、より多くの量の遊離脂肪酸、特には、ケトン化反応において二量体生成物を製造することを望んでいる場合に有利であるより多くの量の飽和の遊離脂肪酸を含む遊離脂肪酸フィードを得ることができるため、PFADまたはPFADを含む混合物を有利なフィードストックにしている。
【0063】
フィードストックの分離
方法は、フィードストックを少なくとも、フィードストックよりも高い濃度の遊離脂肪酸を含む遊離脂肪酸フィードに分離する工程b)を含む。
【0064】
分離工程は、例えば、蒸留であってもよいが、他の方法、例えば冷却による結晶化、または、蒸留よび結晶化の組み合わせなども使用され得る。
【0065】
分離は、例えば、例えば、100℃~300℃のあいだの温度における、および、0.5kPa~5kPaの蒸留圧力での蒸留であってもよい。
【0066】
遊離脂肪酸フィードの遊離脂肪酸は、C10~C24の脂肪酸、好ましくはC14~C22の、例えばC14、C16、C18、C20およびC22などの脂肪酸であり得る。
【0067】
一またはそれ以上の、脂肪酸が枯渇されたフィードは、生物起源のフィードストックと比較して、より高い濃度の、脂肪酸のモノ-グリセリド、ジ-グリセリド、トリ-グリセリドから選択される化合物を含む。例えば、一またはそれ以上の、脂肪酸が枯渇されたフィードは、生物起源のフィードストックと比較して、少なくとも5%高い、例えば少なくとも25%高い濃度の、脂肪酸のモノ-グリセリド、ジ-グリセリド、トリ-グリセリドから選択される化合物を含む。例えば、一またはそれ以上の、脂肪酸が枯渇されたフィードは、2wt%未満である遊離脂肪酸含有量をもち得る。
【0068】
例えば、遊離脂肪酸フィードは、生物起源のフィードストックと比較して、少なくとも5%高い、例えば少なくとも25%高い濃度の、脂肪酸のモノ-グリセリド、ジ-グリセリド、トリ-グリセリドから選択される化合物を含む。例えば、遊離脂肪酸フィードは、5wt%未満である、脂肪酸のモノ-グリセリド、ジ-グリセリド、トリ-グリセリドから選択される脂肪鎖グリセロールの含有量をもち得る。
【0069】
一またはそれ以上の、脂肪酸が枯渇されたフィードは、遊離脂肪酸ビードよりも高い沸点、および/または、より大きな平均分子量を有し得る。例えば、より高い沸点は、遊離脂肪酸フィードと比較して、より高い最終沸点であり得、より大きな平均分子量は、重量平均として測定され得る。沸点は、例えば、ASTM D 2887にしたがい、SimDist GC 沸点プロットを用いて測定され得る。
【0070】
フィードストックは通常、C16およびC18の脂肪酸の両方を含み、これらは、例えば蒸留で分離され得、および、遊離脂肪酸フィードの主な部分は、C16脂肪酸であり得る。
【0071】
ケトン化
フィードストックまたはフィードストックから分離された脂肪酸フィードは、工程c)において、ケトン化反応条件に付され、ここで、2つの脂肪酸が、主な部分としてケトンを含むケトン流を生成するために反応される。
【0072】
ケトン化反応は、水および二酸化炭素の両方を生成し、これらは、油分の留分から分離され得、例えば、水は傾斜法によって分離され得、および、二酸化炭素よび他のガス状の成分はフラッシュドラム中で分離され得る。
【0073】
ケトン化反応条件は、以下の:
300~400℃の範囲の温度、5~30bargの範囲の圧力、0.25~3.0h-1の範囲のWHSV
のうちの一またはそれ以上を含み得る。
【0074】
例えば、ケトン化反応条件は、300~400℃の範囲の温度、5~30bargの範囲の圧力、0.25~3.0h-1の範囲のWHSVを含んでいてもよい。好ましくは、ケトン化反応条件は、330~370℃の範囲の温度、10~25bargの範囲の圧力、0.5~2h-1の範囲のWHSVを含んでいてもよい。より好ましくは、ケトン化反応条件は、340~360℃の範囲の温度、15~25bargの範囲の圧力、1.0~1.5h-1の範囲のWHSVを含み得る。
【0075】
ケトン化反応は、通常、ケトン化触媒の存在下で行われ、ここで、ケトン化触媒は、金属酸化物触媒を含む。例えば、ケトン化触媒は、Ti、Mn、Mg、CaおよびZr含有の金属酸化物触媒のうちの一または複数からなるリストから選択される金属酸化物触媒であり得る。例えば、ケトン化触媒は、TiO2、例えば、80~160Åである平均の細孔径、および/または40~140m2/gであるBET面積、および/または0.1~0.3cm3/gである多孔度を有するアナターゼ型のTiO2であってもよい。
【0076】
ケトン化反応は、ガスによって加圧されていてもよい。例えば、ケトン化は、0.1~1.5ガス/フィード比(w/w)の範囲でガスの存在下で行われ得、ここで、ガスとしては、以下の:CO2、H2、N2、CH4、H2Oのうちの一またはそれ以上から選択される。加圧に使用されるガスは、それがケトン化反応の副生成物として製造され、および加圧のためのガスとしてリサイクルされ得るため、CO2であることが優位であり得る。
【0077】
ケトン化反応条件は、例えば液相ケトン化を確実にするように、または、少なくともケトン化工程へのフィードの導入が液体形状であることを確実にするように、選択され得る。液相でのケトン化を確実なものとすることで、触媒、圧力および温度の組み合わせの適切な選択により、反応は、ガス相ケトン化と比較して、より望ましくない副生成物をより少なくもたらす。ガス相ケトン化は通常、脂肪酸の高い沸点に起因して、脂肪酸を固体/液体形状からガス相へと移動させるために高いガスリサイクルを必要とする。これは、ガス相ケトン化のためのリアクターシステムがより大きくおよびより複雑であらねばならないことを意味しており、これは投資コストを顕著に増加させるであろう。
【0078】
ケトン流は、遊離脂肪酸フィードの二量体を含む。例えば、遊離脂肪酸フィードが、パルミチン酸(C16:0脂肪酸)のみであれば、ケトン流は、C31ケトンを生成し、そして、もし脂肪酸フィードがC16およびC18脂肪酸の混合物であれば、ケトン流は、C31、C33、およびC35ケトンの混合物を生成するであろう。
【0079】
上述されるように、遊離脂肪酸流は、飽和の遊離脂肪酸フィードであってもよい。これは望ましくないオリゴマー化された生成物の量を減少させる。遊離脂肪酸が不飽和の遊離脂肪酸を含んでいる場合、これらの遊離脂肪酸は、水素化によって飽和され得る。このような前水素化工程は、通常、温和な条件下で、水素化触媒の存在下、50~400℃のあいだの温度で、0.1~20MPaの範囲の水素圧下で、好ましくは、150~300℃のあいだの温度で、1~10MPaの範囲の水素圧下で、行われる。前水素化触媒は、元素周期表のグループVIIIおよび/またはVIAの金属を含む。前水素化触媒は、好ましくは、担持されたPd、Pt、Rh、Ru、Ni、Cu、CuCr、NiMoまたはCoMo触媒であり、担体は活性炭素、アルミナおよび/またはシリカである。
【0080】
しかしながら、遊離脂肪酸の前水素化が行われないことが望ましい。とりわけ、PFAD中のパルミチン酸(飽和脂肪酸)は蒸留によって分離され得、したがって、何らの水素化も必要とすることなく、パルミチン酸である飽和の遊離脂肪酸フィードをもたらす。
【0081】
したがって、本発明のある変形において、水素化によるまたは加水分解による前処理は、工程a)~c)中または工程a)~c)の工程間に行われない。
【0082】
遊離脂肪酸フィードのケトン化反応は、全体流のケトン化と比較して望ましくないオリゴマー化反応がより少なくしか起こらないため、遊離脂肪酸のケトンへのほぼ完全な変換(>90%、>95%、>99%、または99.5%以上もの)をもたらす条件下で行われ得る。このことは、明確な優位性を下流にもたらし、それは、ケトン流の水素化脱酸素化は、例えば遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールの両方を含み得る遊離脂肪酸が枯渇されたフィードなどと比較して、ケトンフィードの完全な脱酸素化を確実なものとするためにそれほど厳しくない水素化脱酸素化反応条件を必要とすることである。それほど厳しくない要件、例えば水素化脱酸素化工程におけるより低い反応温度は、より少ないエネルギーの使用および例えばコーキングなどの望ましくない副反応の減少をもたらし、より長い触媒寿命を導く。
【0083】
ケトン流の水素化脱酸素化
ケトン化反応から得られるケトン流は、水をオイルから傾斜させることによって、および、および例えばフラッシュドラム中などで液体生成物からガス状生成物を分離することによって、単離され得る。ケトン流は、その後、工程d)において、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと付される。
【0084】
水素化脱酸素化および水素化異性化反応条件は、同時にまたは順番でのどちらで行われてもよい。生成物は、再生可能なベースオイルを含む脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流である。
【0085】
水素化脱酸素化反応は、例えば、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoなどの水素化脱酸素化触媒の存在下で行われ得る。水素化脱酸素化触媒は、当該技術分野における典型的な水素化脱酸素化触媒であってよく、例えば、それは、担体上に担持された水素添加金属、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などを含む。水素化脱酸素化工程は、ベースオイル生成物を提供するための水素化脱酸素化条件下で行われる。水素化脱酸素化工程は例えば、250~400℃の温度、および20~80bargの圧力で行われ得る。水素化処理工程は、例えば、250~400℃の温度、および20~80bargの圧力、0.5~3h-1のWHSV、および350~900nl/lのH2/オイル比で行われ得る。
【0086】
上述されるように、水素化脱酸素化反応条件は、以下の:250~400℃の範囲の温度、20~80bargの範囲の圧力、0.5~3h-1の範囲のWHSV、および350~900nl H2/lフィードのH2フロー、を含み得る。触媒は、アルミナ担体に担持されたNiMoであり得る。
【0087】
好ましくは、水素化脱酸素化条件は、280~350℃の範囲である温度;30~60bargの範囲である圧力;1.0~2.5h-1の範囲であるWHSV;および350~750nl H2/lフィードを含み得る。触媒は、アルミナ担体に担持されたNiMoであり得る。
【0088】
より好ましくは、水素化脱酸素化条件は、300~330℃の範囲である温度;40~50bargの範囲である圧力;1.0~2.0h-1の範囲であるWHSV;および350~500nl H2/lフィードを含み得る。触媒は、アルミナ担体に担持されたNiMoであり得る。
【0089】
さらにプロセスにおいて、ケトン流は、炭化水素流を用いて希釈されてもよい。希釈は、30wt%の炭化水素および70wt%のケトン流、例えば、30~85wt%の炭化水素および15~70wt%のケトン流などであってもよい。希釈に用いられる炭化水素流は、部分的にまたは全て生成物リサイクルであってもよい。
【0090】
生成物リサイクルは、リサイクルされる前に分画に付されていてもよく、例えば、リサイクルされる留分は380℃より高い温度で沸騰する留分、本明細書中に記載されるベースオイル混合物の任意の他の留分であり得る。
【0091】
上述されるように、水素化脱酸素化触媒は、例えば、典型的には例えばAl2O3などの担体上に担持されている、モリブデンまたはウォルフラム触媒であり得る。触媒は、活性化されていても、されていなくてもよい。典型的な活性化剤は、Niおよび/またはCoである。活性化された水素化脱酸素化触媒は、例えば、NiMo、CoMo、NiW、CoW、NiCoMoなどである。例えばNiWなどのウォルフラムベースの触媒またはPdもしくはPt触媒が使用される場合、それは異性化反応もまた触媒でき、したがって、同時の水素化脱酸素化および水素化異性化反応が可能であるという点においてさらに有利である。したがって、水素化脱酸素化および異性化触媒は、同じであってもよく、例えば、NiW、または例えば担体上に担持されている活性化されたMo触媒、例えばアルミナに担持されたNiMoなど、との混合物中のPt/SAPOなどのPt触媒などであってもよい。
【0092】
水素化脱酸素化は、固定相リアクター内の触媒床である、水素化脱酸素化ゾーン中で、水素ガスの存在下で行われる。
【0093】
工程d)の水素化脱酸素化および水素化異性化が順番に行われる場合、水素化脱酸素化と水素化異性化とのあいだにストリッピング工程が存在していてもよく、ここで、ガスが液体から分離される。これは、例えば300~330℃のあいだである温度および40~50bargのあいだである圧力などの、高温および高圧の分離工程において起こる。
【0094】
ケトン流の水素化異性化
水素化脱酸素化工程の生成物は、水素および異性化触媒の存在下で異性化工程へと付される。水素化工程および異性化工程の両方が、同じリアクターで、および同じ反応床ででも行われ得る。異性化触媒は、Pt含有の市販の触媒などの貴金属二元機能触媒、例えば、Pt-SAPOまたはPt-ZSM-触媒など、または、例えば非貴金属触媒例えばNiWなどであり得る。水素化脱酸素化および水素化異性化工程は、水素化処理および異性化段階の両方において例えばNiW触媒などを用いて同じ触媒床中で行われてもよい。NiW触媒は、追加で、ディーゼルおよびナフサ生成物へさらなる水素化分解をもたらし得、そして、もしこのような生成物もまた再生可能なベースオイル生成物とともに望ましいものである場合に有意な触媒であり得る。異性化段階は、例えば、250~400℃の温度および10~60bargの圧力で行われ得る。本明細書で記載されているように、再生可能なベースオイル生成物の分解を避けるまたはその量を減らすために、異性化反応の苛酷さを減少させることが望ましい。異性化段階は、例えば、250~400℃の温度、10~60bargのあいだの圧力、0.5~3h-1のWHSV、および100~800nl/lのH2/オイル比で行われ得る。
【0095】
水素化酸素化および水素化異性化反応は、順番に行われてもよい。順序は、典型的には、水素化脱酸素化、それに続いて水素化異性化であるが、この順序はまた反対とされてもよい。異性化反応条件は、以下のうちの一またはそれ以上を含んでいてもよい。250~400℃の範囲の温度、10~60bargの範囲の圧力、0.5~3h-1の範囲のWHSV、100~800nl H2/lフィードのH2フロー。
【0096】
好ましくは、異性化反応条件は、280~370℃の範囲の温度、20~50bargの範囲の圧力、0.5~2.0h-1の範囲のWHSV、200~650nl H2/lフィードのH2フローを含む。
【0097】
より好ましくは、異性化反応条件は、300~350℃の範囲の温度、25~45bargの範囲の圧力、0.5~1.0h-1の範囲のWHSV、300~500nl H2/lフィードのH2フローを含む。
【0098】
水素化異性化反応は、任意には、担体に担持されていてもよい、好ましくはPtなどのグループVIII金属、およびモレキュラーシーブを含む触媒などの異性化触媒の存在下であってもよい。担体は、例えば、単独でまたは混合物として用いられて得る、シリカ、アルミナ、クレイ、酸化チタン、酸化ボロン、ジルコニアから選択され得、好ましくはシリカおよび/またはアルミナから選択され得る。モレキュラーシーブは、例えば、例えばZSMなどのゼオライト、または、例えばSAPOなどの、例えばSAPO-11、MeAPO、MeAPSO(ここで、Meは例えばFe、Mg、Mn、Co、またはZnである)などのアルミノリン酸モレキュラーシーブ、または他のエレメント(EI)モレキュラーシーブEIAPOまたはEIAPSOであってもよい。例えば、シリカアルミナ、Y瀬尾ライト、SAPO-11、SAPO-41、ZSM-22、フェリエライト、ZSM-23、ZSM-48、ZBM-30、IZM-1、COK-7などが挙げられる。適切なモレキュラーシーブおよび水素化異性化適用に適したモレキュラーシーブの特性は、当該技術分野における当業者にとって公知である、そして、例えば、Handbook of heterogeneous catalysis from VCH Verlagsgesellschaft mbH with editiors Ertl, Knoezinger and Weitkamp, volume 4, pages 2036-2037などの文献に記載されており、これは参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0099】
ベースオイルの精製
方法の工程d)および工程e)の間に、ストリッピング工程が存在していてもよく、ここで、ガスが液体から分離される。これは、320~350℃のあいだの温度および3~6bargのあいだの圧力において行われ得る。
【0100】
方法の工程d)および工程e)の間に、もし存在するのであれば好ましくは、ストリッピング工程の後に、任意の水素化仕上げ工程また存在していてもよく、ここで、生成物は、例えば上の「ケトン流の水素化脱酸素化」の題のもとで記載されているように、例えばアルミナ担体に担持されたNiMoなどの水素化触媒の存在下でさらなる水素化工程を行うことによって安定化される。しかしながら、例えばアルミナおよび/またはシリカ担体上に担持されている、元素周期表のグループVIIIの金属を含む他の水素化仕上げ触媒もまた使用され得る。水素化仕上げ触媒は、好ましくは、担持されたPd、Pt、Ni触媒であり、ここで、担体はアルミナおよび/またはシリカである。
【0101】
水素化仕上げ工程は、反応条件に関して前水素化段階と類似している、しかしながら、水素化仕上げ段階では、典型的には、より高い圧力およびある程度のより高い温度が利用される。これは、フィードが、この段階では、可能な前水素化段階と比較して、完全に脱酸素化されているためである。水素化仕上げ段階は、生成物を安定化させるために存在しており、これは、特に、存在しているまたは例えば水素化異性化などのあいだなどの先の段階のあいだに形成された二重結合または芳香族化合物の水素化を含んでいる。水素化仕上げ工程は、300℃未満、例えば280℃未満、または260℃未満の温度で行われ得る。水素化仕上げは、また、180℃より高い、例えば190℃より高いまたは200℃より高い温度で行われ得る。例えば、前水素化の温度は、180~300℃、例えば、190~280℃、例えば、200~250℃などであってもよい。圧力は、100~200barg、例えば120~180barg、例えば140~160bargなどであってもよい。WHSVは、0.5~3h-1、例えば0.75~2.5h-1、例えば1.0~2.0h-1などであってもよい。H2/オイル比は、100~500nl/l、例えば150~450nl/l、例えば200~400nl/lなどであってもよい。したがって、前水素化は、好ましくは、90~300℃、10~70barg、0.5~3h-1のWHSV、および100~500nl/lのH2/オイル比で、より好ましくは、110~280℃、20~60barg、1.0~2.5h-1のWHSV、および150~450nl/lのH2/オイル比で、さらにより好ましくは、120~260℃、30~50barg、1.0~2.0h-1のWHSV、および200~400nl/lのH2/オイル比で、行われ得る。
【0102】
工程d)から得られる、脱酸素化されたおよび異性化ベースオイル流は、再生可能なベースオイルを含む。それは、任意には、工程e)において、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために蒸留されてもよく、例えば、脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流は、再生可能なベースオイルを得るために、380℃より高い、例えば450℃より高い、例えば460℃より高い、例えば470℃より高い、例えば480℃より高い、または、500℃より高いなどの沸点を有する留分に蒸留され得る。例えば、蒸留は、再生可能なベースオイルの一または複数の留分、例えば380℃より高い温度の留分、例えば380~450℃のあいだの留分、および450℃より高い温度の留分、をもたらし得る。
【0103】
蒸留のあいだ、例えばナフサ留分および/またはディーゼル留分などの他の留分もまた単離され得る。これらの留分は、水素化脱酸素化および水素化異性化反応のあいだの分解の結果、ならびに、非常に少量の、ケトン化工程からの未変換の遊離脂肪酸である。
【0104】
FFAが枯渇したフィードの水素化脱酸素化および異性化
一または複数の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードは、好ましくは、ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたかつ異性化されたディーゼル流を得るために、同時にまたは順次、工程f)において水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方に付され、任意には、蒸留されたディーゼル燃料を得るために、工程f)から得られた流を蒸留することに付される、例えばディーゼル生成物などの中間蒸留物へと変換され得る。
【0105】
これは、「ケトン流の水素化脱酸素化および異性化」の題のもとで記載されている様式と同じ様式で行われ得る。一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードもまた、水素化脱酸素化および水素化異性化の前に、炭化水素流を用いて希釈されてもよい。希釈は、30wt%の炭化水素および70wt%の流、例えば、30~85wt%の炭化水素(希釈剤)および15~70wt%の遊離脂肪酸が枯渇したフィード(新鮮なフィード)などであってもよい。希釈はまた、高い希釈度(炭化水素:新鮮なフィードの比で)例えば、3:1~20:1まで、例えば4:1~20:1まで、例えば5:1~20:1であってもよい。希釈に用いられる炭化水素流は、部分的にまたは全て生成物リサイクルであってもよい。
【0106】
生成物リサイクルは、リサイクルされる前に分画に付されていてもよく、例えば、リサイクルされる留分は、約180~350℃、例えば210~380℃であるディーゼル範囲で沸騰する留分であり得る。
【0107】
再生可能なベースオイル、ディーゼル、およびナフサ
本発明の方法は、再生可能なベースオイルおよび再生可能なディーゼルを製造する。製造中に、再生可能なベースオイルは、また、上記で説明されているように、少量の再生可能なディーゼルおよびナフサを含むであろう。脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流は、再生可能なベースオイルから分離され、そして再生可能なナフサをともにプールされ得る再生可能なディーゼルに加えて、少量の再生可能なナフサを含んでおり、そして、脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流の蒸留から得られる再生可能なディーゼルは、再生可能なベースオイル留分からの再生可能なディーゼルとともにプールされ得る。
【0108】
したがって、プロセスは、追加で、ナフサ燃料を製造するためのものであり得、ここで、ナフサ燃料は、工程d)の脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流と工程f)の脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流との両方の蒸留から得られる。
【0109】
例えば、生物起源のフィードストックから得られる再生可能なナフサ、ディーゼルおよびベースオイルの合わせた量は、5~95wt%の再生可能なベースオイル、5~95wt%のディーゼル、および0~30wt%のナフサであり、例えば、5~95wt%のあいだの再生可能なベースオイル、5~95wt%のあいだのディーゼル、および5~30wt%のあいだのナフサである。
【0110】
本発明はここで、図面を参照して記載される。
図1は、生物起源のフィードストック(「PFAD」と表されている)からの再生可能なベースオイルを製造するための方法を記載している。
図1における生物起源のフィードストックはPFADと表されているが、
図1の方法は、PFADに限定されるわけではなく、本明細書中で記載される任意の生物起源のフィードストックであり得る。
【0111】
方法は、本明細書中で、具体的には「フィードストック」の題のもとで記載されるように生物起源のフィードストックを提供する工程a)を含む。PFADと表される生物起源のフィードストックは、その後、工程b)において、蒸留によって(「FFA蒸留」と表されている)少なくとも遊離脂肪酸流へと分離され、ここで、フィードストックよりも遊離脂肪酸の濃度が高い蒸留物が得られる。「フィードストックの分離」と題されている上記の段落が参照される。「FFA蒸留」から得られた遊離脂肪酸流は、その後、工程c)において、ケトン化反応条件(「ケトン化」と表されている)に付され、ここで、2つの脂肪酸が、主要部分としてケトンを含むケトン流を与えるために反応される。ケトン化段階についての追加の詳細については、「ケトン化」と題されている上記の段落が参照される。
【0112】
ケトン流はその後、工程d)において、水素化脱酸素化反応条件(「HDO」と表されている)へと付され、ここでは水素も供給される。水素化脱酸素化段階と水素化異性化段階とが同時にではなく順次行われる場合、脱酸素化されたベースオイル流において、ストリッピング工程で水およびガスのストリッピングが行われ得る(「中間ストリッパー」と表されている)。HDO工程は、「ケトン流の水素化脱酸素化」の題のもとで記載され得、そして、ストリッピング工程は、「ベースオイルの精製」の題のもとで記載され得る。脱酸素化されたベースオイルは、その後、水素化異性化反応条件(「異性化」と表されている)に付され得、ここでは水素も供給され得、再生可能なベースオイルを含む脱酸素化および異性化されたベースオイル流を与える。水素化異性化条件は、「ケトン流の水素化異性化」の題のもとで上記されているものであり得る。例として「ケトン流の水素化異性化」の題のもとで記載されているように、水素化脱酸素化および水素化異性化が同時に起こる場合、「HDO」および「異性化」は一つかつ同一のリアクターであり、そして、「中間ストリッパー」は、水素化脱酸素化および水素化異性化の下流に置かれる。脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流は、任意には、例えば「ベースオイルの精製」の題のもとで記載されているように安定化されてもよく、これは「生成物安定化」と表されている。
【0113】
方法はまた、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために、例えば「ベースオイルの精製」の題のもと上記で記載されているように、典型的には減圧下で、工程d)の生成物を蒸留する工程e)(「減圧蒸留」と表されている)を含んでいてもよい。蒸留は、例えば380℃より高い温度の再生可能なベースオイルの一または複数の留分、例えば380~450℃のあいだの留分、および450℃より高い温度の留分などを与え、これはまとめて「RBO」と表される。
【0114】
生成物安定化からの副生成物および減圧蒸留からのRBO留分以外の留分は、例えば「再生可能なベースオイル、ディーゼル、およびナフサ」の題のもと上記で記載されているように、例えば、例えば180度未満などのナフサ蒸留範囲および180~350℃のディーゼル沸点範囲である一または複数の留分の製造のためなど、燃料製造のための流(「燃料製造のための流」と表される)として送られ得る。
【0115】
図2は、
図1の「PFAD」、「FFA蒸留」、「ケトン化」、「HDO」、「中間ストリッパー」、「異性化」、「生成物安定化」、「減圧蒸留」、および「RBO」に加えて、方法とともに単独でまたは組み合わせて使用され得る3つの要素を記載している。
【0116】
第1の要素は、ベースオイルおよびディーゼル製造のための共有される支持ユニット(「ベースオイルおよびディーセル製造のための共有される支持ユニット」)であり、これは、ケトン化反応および水素化脱酸素化のあいだに形成される水をストリッピングまたは傾斜法で除去することを含む(例えば、サワーウォーターストリッピングの形でなど、
図3において「サワーウォーターストリッパー」と表されている)。共有される支持ユニットは、追加で、水素化脱酸素化工程(「HDO」)からまたはディーゼル燃料製造(「ディーゼル燃料製造」)から、水素をリサイクルするために、リサイクルガスをループさせる、任意には、ケトン化工程(「ケトン化」)へと送られる前のストリッパー中での例えば流などの除去により、例えば「ケトン化」の題のもと上記で記載されている、ケトン化反応のための加圧ガスとしての水素ガスを精製する可能性を提供する。
【0117】
第2の要素は、「ベースオイルの精製」の題のもと上記で記載されている、生成物を安定化するための、含まれる可能性のある芳香族化合物または二重結合の飽和のための水素化仕上げ工程である。生成物安定化は、また、水素化異性化のあいだの分解に起因して、および/または、ケトン化反応において反応せずかつ次の工程に運ばれたFFA由来の、再生可能なベースオイル中に存在する可能性のあるナフサ沸点範囲(「ナフサ安定化」)およびディーゼル沸点範囲(「ディーゼル安定化」)の化合物も安定化する。再生可能なベースオイルの減圧蒸留(「減圧蒸留」)はしたがって、「再生可能なベースオイル、ディーゼルおよびナフサ」の題のもと上記で記載されているように、再生可能なベースオイルの、例えば380℃より高い温度である一または複数の留分、例えば380~450℃のあいだの留分および450℃より高い温度の留分、ならびに、例えば180℃未満などのナフサ沸点範囲および180~350℃ディーゼル沸点範囲の一または複数の留分(まとめて「RBO」と表されている)をもたらす。
【0118】
第3の要素は、分離工程(「FFA蒸留」)である。生物起源のフィードストック(「PFAD」)の、ケトン化を経て再生可能なベースオイル(「RBO」)へと処理される遊離脂肪酸、および、例えばディーゼル燃料へとさらに処理され得る(「ディーセル燃料製造」)底流(「底流」)への分離。分離工程(「FFA蒸留」)は、RBOの品質および量の両方の点において、再生可能なベースオイル(「RBO」)のより多目的な製造を可能にする。品質に関して、FFA蒸留は、実施例1に示されるように、本質的に例えばパルミチン酸のみからなる遊離脂肪酸フィードを製造することができる。この単一の炭素脂肪酸は、その後ケトン化を経て、それらがベースオイルに必要とされる特定の特性を微調整することができるという点でベースオイル製造社にとって産業関連製品である、本質的にC31ベースオイルからなる、明確に定義された組成を有する再生可能なベースオイルへと処理され得る。
【0119】
量に関して、分離工程はまた、再生可能なベースオイルまたは再生可能なディーゼルのどちらに関しても市場の要求にしたがって調整され得るRBO製造を提供する。すなわち、もしより多くのディーゼルがベースオイルよりも要求されるのであれば、分離工程は、例えばパルミチン酸のみのより狭いカット値を採用し、そして非常に明確に定義された組成をもつベースオイルを製造することができ、一方、もし市場によってより少ない量の再生可能なディーゼルが要求されるのであれば、分離工程は、例えば、例えばC16およびC18脂肪酸の両方を含み得、C31、C33およびC35ベースオイルを含むRBO混合物をもたらすケトン化を経て再生可能ベースオイル製品へと処理され得る、生物起源のフィードストックのより広いカット値を採用し得る。本明細書中で定義される(例えば「フィードストック」と題される箇所を参照のこと)生物起源のフィードストック通の遊離脂肪酸の量は、さらに、本発明の方法の工程a)より前に増加されていてもよく、ここで、脂肪酸エステルを含む最初のフィードストックは、少なくとも加水分解工程で前処理されてフィードストックを製造していてもよく、ここで、遊離脂肪酸の脂肪酸エステルに対する比が、最初のフィードストックと比較して増加されている。
【0120】
図3は、
図1および2に追加で、
図2の底流はここでは、一または複数の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードを、「ケトン化」の題のもとで記載されるように、水素化触媒の存在下の温和な条件で行われる任意の前水素化段階(「前処理」)へと付す工程f)においてディーゼルの製造のための遊離脂肪酸が枯渇したフィード(「再生可能なディーゼルライン」)であることを記載している。前水素化は、残存している脂肪酸および脂肪酸エステル中の二重結合を飽和することを意図しており、それは、次の工程(「HDO」)におけるより激しい水素化脱水素化条件の使用を可能にする。
【0121】
HDO工程は、「FFAが枯渇したフィードの水素化脱酸素化および異性化」の題の下で記載されているようなものであってもよい。RBOラインで共有されてもよいストリッパーで水が分離され(「サワーウォーター分離」)、追加で、水素が、リサイクルガスループ(これもRBOラインと共有されていてもよい)を介してリサイクルされ得る。脱酸素化されたディーゼル流は、その後、水素化異性化反応条件(「異性化」と表される)へと付され得、ここでは水素もまた供給され、ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流をもたらす。
【0122】
「FFAが枯渇したフィードの水素化脱酸素化および異性化」の箇所で記載されているように、水素化脱酸素化および水素化異性化は、同時にまたは順番に行われてもよい。脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流は、任意には、例えば、「ベースオイルの精製」の題のもとで上述されているような水素化仕上げ工程の形状で、安定化されてもよく、これは、「ディーゼル安定化」および「ナフサ安定化」として表される。脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流の減圧蒸留(「減圧蒸留」)は、したがって、例えば「再生可能なベースオイル、ディーセルおよびナフサ」の題のもとで記載されているように、まとめて「ディーセル」と表される、例えば180~350℃の沸点範囲などである一または複数のディーセル燃料留分、および、例えば180℃未満などのナフサ沸点範囲である一または複数の留分をもたらす。
【0123】
本発明の実施形態が記載されるとき、全ての可能な実施例の組み合わせおよび順列が明示されているわけではない。それどころか、特定の方法が互いに異なる従属クレームに列挙されている、または異なる実施形態において記載されているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利には使用されないということを示しているわけではない。本発明は、記載されている実施形態の全ての可能な組み合わせおよび順列を想定している。
【0124】
本明細書中において用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、どのような場合においても、発明者らによって、それぞれ、「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」および「からなる(consists of)」の用語と任意には置換可能であることが意図されている。
【実施例】
【0125】
実施例1 PFADの、パルミチン酸およびパルミチン酸が枯渇したフィードへの分離
パーム脂肪酸蒸留物(PFAD)が、約250~275℃の温度および0.01~0.05bar圧力での蒸留によってパルミチン酸およびパルミチン酸が枯渇したフィードへと分離された。
【0126】
これは、C18脂肪酸(0.42wt%)、C14脂肪酸(2.5wt%)である少量の不純物を伴う97.0wt%純度であるパルミチン酸フィードを結果としてもたらした。
【0127】
【0128】
実施例2 パルミチン酸フィードのケトン化
パルミチン酸フィードは、250gの触媒材料(TiO2 BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床(パイロット)リアクターへとフィードされた。ケトン化は、液相中、約18bargの圧力、約360℃の温度、約1.0h-1のWHSV、および131 l/h窒素の追加のガスフローで行われた。ケトン化反応条件は、85%の脂肪酸変換を結果として与え、したがってケトン流が得られた。
【0129】
実施例2a パルミチン酸フィードのケトン化
パルミチン酸フィードは、250gの触媒材料(TiO2 BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床リアクターへとフィードされた。ケトン化は、液相中、約25bargの圧力、約360℃の温度、約0.5h-1のWHSVで、追加のガスフローなしで行われた。ケトン化反応条件は、99.9%の脂肪酸変換を結果として与え、したがってケトン流が得られた。
【0130】
実施例2b パルミチン酸フィードのケトン化
パルミチン酸フィードは、20gの触媒材料(TiO2 BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床(マイクロ)リアクターへとフィードされた。ケトン化は、液相中、約10bargの圧力、約360℃の温度、約1.0h-1のWHSV、および5 l/h水素の追加のガスフローで行われた。ケトン化反応条件は、99.9%の脂肪酸変換を結果として与え、したがってケトン流が得られた。
【0131】
実施例2c パルミチン酸フィードのケトン化
パルミチン酸フィードは、20gの触媒材料(TiO2 BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床リアクターへとフィードされた。ケトン化は、液相中、約10bargの圧力、約360℃の温度、約1.0h-1のWHSVで、および5 l/h二酸化炭素の追加のガスフローで行われた。ケトン化反応条件は、99.4%の脂肪酸変換を結果として与え、したがってケトン流が得られた。
【0132】
実施例3 ケトン流の水素化脱酸素化および異性化
得られたケトンがNiMo/Al2O3触媒上で、約310℃の温度、約40barの圧力、約1.5h-1のWHSV、および900nl/lのH2/オイル比で、水素化脱酸素化された生成物を得るために水素化脱酸素化された。酸素除去の効率はHDO工程として99.9%であった。
【0133】
結果として得られた水素化脱酸素化された生成物は、水素化異性触媒としてアルミナ担体に担持されたPt/SAPO-11上で、約350℃の温度、約40barの圧力、および約1.0h-1のWHSVで、水素化異性化されたベースオイル生成物を得るために水素化異性化された。
【0134】
水素化異性化されたベースオイル生成物は、ナフサ留分(180℃未満)、ディーゼル留分(180~350℃)へと分画され、そして380+℃の留分が再生可能なベースオイル生成物として単離された。
【0135】
実施例3a ケトン流の水素化脱酸素化および異性化
得られたケトンがNiMo/Al2O3触媒上で、約310℃の温度、約40~50barの圧力、約1.5h-1のWHSV、および900nl/lのH2/フィードオイル比で、水素化脱酸素化された生成物を得るために水素化脱酸素化された。酸素除去の効率はHDO工程として99.9%であった。
【0136】
結果として得られた水素化脱酸素化された生成物は、水素化異性触媒としてアルミナに担持されたPt/SAPO-11上で、約348℃の温度、約40barの圧力、約1.0h-1のWHSVで、および800nl/lのH2/フィードオイル比で、水素化異性化されたベースオイル生成物を得るために水素化異性化された。
【0137】
水素化異性化されたベースオイル生成物は、ナフサ留分(180℃未満)、ディーゼル留分(180~350℃)へと分画され、そして380+℃の留分が再生可能なベースオイル生成物(59.9wt%)、再生可能なディーゼル(22.9wt%)、35~180℃の範囲の沸点の再生可能なナフサ(1.3wt%)、生成物ガスである残余物(11.9wt%)、および350~380℃の間の沸点のプロセスオイル(4.0wt%)として単離された。
【0138】
再生可能なベースオイル生成物は、以下の特性を有していた:17.7mm2/sである40℃での動粘度、4.2mm2/sである100℃での動粘度、151の粘度指数(VI)、-1.1℃の曇り点、-17℃の流動点、および0.1wt未満の芳香族化合物含有量。動粘度は、ENISO3104を用いて、粘度指数は、ASTM D 2270を用いて、曇り点は、ASTM D 5771を用いて、および流動点はASTM D 5950を用いて、芳香族化合物の含有量はASTM D 7419を用いて測定された。
【0139】
実施例4 残余の、パルミチン酸が枯渇した流れの水素化脱酸素化および異性化
残余の、パルミチン酸が枯渇したフィードが、NiMo/Al2O3触媒上で、約310℃の温度、約50barの圧力、約1.0~1.5h-1のWHSV、および900nl/lのH2/オイル比で、水素化脱酸素化された生成物を得るために水素化脱酸素化された。酸素除去の効率はHDO工程として99.9%であった。
【0140】
結果として得られた水素化脱酸素化された生成物は、水素化異性触媒として還元されたプラチナモレキュラーシーブ/Al2O3上で、約300~350℃の温度、約20~40barの圧力、および約0.8~1.0h-1のWHSVで、水素化異性化されたベースオイル生成物を得るために水素化異性化された。
【0141】
水素化異性化されたディーゼル生成物は、ナフサ留分(180℃未満)、ディーゼル留分(180~350℃)へと分画された。