IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブルー・インダクティヴ・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7266570モジュール式出力を用いたワイヤレス送電
<>
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図1
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図2
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図3
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図4
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図5
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図6
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図7
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図8
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図9
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図10
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図11
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図12
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図13
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図14
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図15
  • 特許-モジュール式出力を用いたワイヤレス送電 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】モジュール式出力を用いたワイヤレス送電
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20230421BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20230421BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/80
H02M7/12 W
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020205840
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2021097591
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】19216000
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518307145
【氏名又は名称】ヴィフェリオン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル・シュプリンゲット
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-134965(JP,A)
【文献】特開平04-058764(JP,A)
【文献】特開2014-017281(JP,A)
【文献】特開2015-070787(JP,A)
【文献】特開2006-179456(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090700(WO,A1)
【文献】特開2017-118806(JP,A)
【文献】特開2007-097303(JP,A)
【文献】特開2014-090570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J50/00-50/90
H02M3/00-3/44
H02M7/00-7/40
H04B5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス送電システムの移動体側回路であって、
前記移動体側回路を前記ワイヤレス送電システムの据置側回路に誘導結合させるように適合された移動体側共振回路(24、26)と、
移動体側負荷(32)に電力を供給するための入力信号を整流するように適合された移動体側整流器段(28)と、
入力側において前記移動体側共振回路(24、26)に直接に接続され、出力側において前記移動体側整流器段(28;40_1、...、40_n)に接続された、移動体側トランス段(30)と
を備え、
前記移動体側トランス段(30)が、同数の一次側巻線(36_1、...、36_n、36)と二次側巻線(38_1、...、38_n)とを備え、
前記移動体側整流器段(28)が、それぞれの二次側巻線(38_1、...、38_n)にそれぞれが接続された1つの移動体側AC/DCコンバータ(40_1、...、40_n)を備え、
前記移動体側AC/DCコンバータ(40_1、...、40_n)が、前記移動体側整流器段の入力側電流の測定を通じて間接的に測定されるDC出力電流に従って制御される同期整流器回路として実現され、
複数の移動体側AC/DCコンバータ(40_1、...、40_n)の出力端子対(42_1、...、42_n)が直列接続されるか、または前記複数の移動体側AC/DCコンバータ(40_1、...、40_n)の出力端子対(42_1、...、42_n)が並列接続されるか、または移動体側AC/DCコンバータ(40_1、...、40_n)が複数の移動体側出力グループ(48_1、...、48_g)にグループ化されて、各移動体側出力グループ(48_1、...、48_g)内の出力端子対が直列接続されるとともに異なる移動体側出力グループ(48_1、...、48_g)の出力端子対が並列接続される
ことを特徴とする、移動体側回路。
【請求項2】
移動体側AC/DCコンバータ(40_1、...、40_n)の数がn>1であり、
移動体側出力グループ(48_1、...、48_g)の数がg≧1であり、
移動体側出力グループ(48_1、...、48_g)当たりの移動体側AC/DCコンバータの数が1≦r≦nであり、
r>1の場合、各移動体側出力グループ(48_1、...、48_g)内の移動体側AC/DCコンバータの出力端子対が直列接続され、
g>1の場合、前記移動体側出力グループ(48_1、...、48_g)の出力端子対が並列接続される、
請求項1に記載の移動体側回路。
【請求項3】
g=1かつn=r>1である、請求項2に記載の移動体側回路。
【請求項4】
g=n>1かつr=1である、請求項2に記載の移動体側回路。
【請求項5】
1<g<n、n mod g=0、かつr>1である、請求項2に記載の移動体側回路。
【請求項6】
平衡巻線(Lb_1、...、Lb_n)と平衡抵抗器(Rb_1、...、Rb_n)との直列接続としてそれぞれ構成された複数の平衡モジュール(46_1、...、46_n)を備え、各平衡モジュール(46_1、...、46_n)が1つのトランスモジュールに付加され、前記複数の平衡モジュール(46_1、...、46_n)が並列接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載の移動体側回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス送電システムに関し、詳細には、ワイヤレス送電システムの移動体(mobile)側におけるモジュール式出力構造の提供、モジュール式出力構造の出力電流の測定、およびワイヤレス電力伝送システムの移動体側において動作する同期整流器のための制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワイヤレス電力伝送システムは、伝導式の送電システムに勝るいくつかの利点を有する。例えば、電気車両の場合、それはケーブルのプラグインがもはや不要であるということを意味する。
【0003】
図1は、当技術分野において知られているワイヤレス送電システム100の概略図を示す。
【0004】
図1に示すように、ワイヤレス送電システム100は、据置側において、DC/ACコンバータ102、据置側コントローラ104、据置側補償コンデンサ106、および据置側補償コンデンサ106に直列接続された送電コイル(transmitter coil)108を備える。据置側補償コンデンサ106と送電コイル108との直列接続は、DC/ACコンバータ102の出力側に接続される。
【0005】
図1に示すように、ワイヤレス送電システム100は、移動体側において、移動体側補償コンデンサ112に直列接続された受電コイル(receiver coil)110を備える。受電コイル110と移動体側補償コンデンサ112との直列接続は、移動体側コントローラ116の制御下で動作するAC/DCコンバータ114の入力側に接続される。受電コイル110と移動体側補償コンデンサ112との直列接続と並列に、ガルバニック分離(galvanic decoupling)を高めるべくトランス118が接続されてよい。AC/DCコンバータ114の出力において、負荷118が接続される。負荷118の接続に関して、負荷118に供給される電力レベルを制御するためのDC/DCコンバータ(図1には図示せず)が設けられてよい。
【0006】
図1に示すように、移動体側と据置側との間で制御データおよび/または測定データを交換するために、移動体側から据置側にワイヤレス通信リンク122が確立されてよい。
【0007】
機能上、DC/ACコンバータ102は、DC入力信号を受け取るように適合され、それを据置側AC信号に変換するように適合される。据置側AC信号が、据置側補償コンデンサ106と送電コイル108との直列接続に出力されると、振動磁界が発生する。据置側コントローラ104は、DC/ACコンバータ102を制御するために、据置側AC信号の特性、およびオプションでDC入力信号の特性を測定するように適合される。より詳細には、据置側コントローラ104は、発生した磁界が据置側補償コンデンサ106と送電コイル108との直列接続の共振周波数において振動するように、DC/ACコンバータ102を制御するように適合される。
【0008】
機能上、受電コイル110は、送電コイル108によって生成された磁界中に置かれると、送電コイル108によって送電されたエネルギーを、誘導結合を通じて受電する。誘導結合により、移動体側AC信号が発生する。移動体側コントローラ116の制御下で、AC/DCコンバータ114は、移動体側AC信号を負荷側DC信号に変換するように適合され、負荷側DC信号は次いで、負荷118に転送される。
【0009】
機能上、移動体側コントローラ116は、負荷118に供給される電力を制御するために、移動体側AC信号、およびオプションで負荷側DC信号を測定するように適合される。機能上、制御を改善し、移動体側における障害状態について据置側に通知するために、測定データおよび制御データがワイヤレス通信リンク122経由で送られてよい。
【0010】
一般に、上述したワイヤレス送電システム100内のコイルに至るケーブルは、電力伝送周波数において動作し、大きな電圧および電力を運ぶ。さらに、ワイヤレス送電システム100の移動体側において、移動体側補償コンデンサ112およびAC/DCコンバータ114の整流器要素を通じて出力電流が流れる。したがって、電流が増加するにつれて損失も増加し、その結果、電気的性能の劣化を招く。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記に鑑みて、本発明の目的は、ワイヤレス送電システムの移動体側出力回路における電気的性能を改善するための効率的な方途を提供することである。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、ワイヤレス送電システムの移動体側回路によって達成される。ワイヤレス送電システムの移動体側回路は、移動体側回路をワイヤレス送電システムの据置側回路に誘導結合させるように適合された移動体側共振回路と、移動体側負荷に電力を供給するための入力信号を整流するように適合された移動体側整流器段と、入力側において移動体側共振回路に接続され、出力側において移動体側整流器段に接続された、移動体側トランス段とを備える。さらに、移動体側トランス段は、少なくとも1つの一次側巻線と、複数の二次側巻線とを備え、移動体側整流器段は、複数の二次側巻線のうちの1つにそれぞれが接続された複数の移動体側AC/DCコンバータを備える。本発明の第1の態様によれば、複数の移動体側AC/DCコンバータの出力端子対が直列接続されるか、または複数の移動体側AC/DCコンバータの出力端子対が並列接続されるか、または移動体側AC/DCコンバータが複数の移動体側出力グループにグループ化されて、各移動体側出力グループ内の出力端子対が直列接続されるとともに異なる移動体側出力グループの出力端子対が並列接続される。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、上で概説した目的は、ワイヤレス電力伝送システムの出力電流を評価するためのカレントトランスの使用によって達成される。第2の態様によれば、カレントトランスは、ワイヤレス送電システムの移動体側回路の入力に接続された一次側巻線と、ワイヤレス電力伝送システムの出力電流を評価するように適合された監視回路に接続された二次側巻線とを有する。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、上で概説した目的は、ワイヤレス電力伝送システムの出力電流を決定するための監視回路によって達成される。監視回路は、一次側巻線および二次側巻線を有するカレントトランスを備え、一次側巻線はワイヤレス送電システムの移動体側回路の入力に接続される。監視回路は、二次側巻線に接続された整流回路をさらに備える。第3の態様によれば、監視回路は、整流回路に接続され、ワイヤレス送電システムの出力電流に等価な整流回路の出力の平均を決定するように適合された、平均化回路をさらに備える。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、上で概説した目的は、ワイヤレス送電システムの移動体側回路内で動作する少なくとも1つの同期AC/DCコンバータを制御するための、信号処理ユニットと制御処理ユニットとを備えたコントローラによって達成される。本発明の第4の態様によれば、信号処理ユニットは、ワイヤレス送電システムの移動体側回路の入力に接続された一次側巻線を有するカレントトランスの出力信号を受け取り、出力信号の極性を参照電位に対して正の極性または負の極性に分類し、出力信号をしきい値と比較するように適合される。さらに、本発明の第4の態様によれば、制御処理ユニットは、出力信号が正の極性を有し、かつ出力信号の絶対値がしきい値よりも大きいときに、少なくとも1つの同期AC/DCコンバータの少なくとも1つの第1のスイッチング回路をオンにすることを行うように適合される。そうでない場合、制御処理ユニットは、出力信号が負の極性を有し、かつ出力信号の絶対値がしきい値よりも大きいときに、少なくとも1つの同期AC/DCコンバータの、少なくとも1つの第1の回路とは異なる少なくとも1つの第2のスイッチング回路をオンにすることを行うように適合される。
【0016】
本発明の第5の態様によれば、上で概説した目的は、ワイヤレス送電システムの移動体側回路内で動作する少なくとも1つの同期AC/DCコンバータの動作を制御する方法によって達成される。方法は、ワイヤレス送電システムの移動体側回路の入力に接続された一次側巻線を有するカレントトランスの出力信号を受け取るステップと、出力信号の極性を参照電位に対して正の極性または負の極性に分類するステップと、出力信号をしきい値と比較するステップとを含む。少なくとも1つの同期AC/DCコンバータの動作を制御する方法は、出力信号が正の極性を有し、かつ出力信号の絶対値がしきい値よりも大きいときに、少なくとも1つの同期AC/DCコンバータの少なくとも1つの第1のスイッチング回路をオンにするステップと、出力信号が負の極性を有し、かつ出力信号の絶対値がしきい値よりも大きいときに、少なくとも1つの同期AC/DCコンバータの、少なくとも1つの第1のスイッチング回路とは異なる少なくとも1つの第2のスイッチング回路をオンにするステップとをさらに含む。
【0017】
以下では、本発明のさまざまな態様および例について、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】当技術分野において知られているワイヤレス送電システムの概略回路図である。
図2】本発明の理解を得るために説明する、ワイヤレス送電システムの概略回路図である。
図3】ワイヤレス電力伝送システムの移動体側におけるモジュール式出力回路の基本概念を示す図である。
図4図3に示すモジュール式出力回路の基本概念の一修正形態を示す図である。
図5図3に示すモジュール式出力回路の第1の直列構成を示す図である。
図6】並列接続の平衡モジュールが付加された、図3に示す第1の直列構成を示す図である。
図7】4つの出力端子対が直列接続された、図3に示す第1の直列構成の一例を示す図である。
図8図4に示すモジュール式出力回路の第2の直列構成を示す図である。
図9】整流器回路と関連の二次側巻線とが移動体側出力グループにグループ化され、各移動体側出力グループ内の整流器回路の出力端子が直列接続されるとともに異なる移動体側出力グループの出力端子対が並列接続される、図3に示すモジュール式出力回路のグループ構成を示す図である。
図10】各移動体側出力グループがそれぞれ、2つのトランスユニットと2つの移動体側AC/DCコンバータを有する、図9に示すグループ構成の一例を示す図である。
図11図3に示すモジュール式出力回路の並列構成を示す図である。
図12】4つの出力端子対が並列接続された、図11に示す並列構成の一例を示す図である。
図13】本発明による間接的なDC出力電流測定の誘因としての、パワートレインの異なる段における異なる電流形態を示す概略図である。
図14】DC出力電流を間接的に測定し、後に測定結果を使用して移動体側整流器回路を制御する目的でカレントトランスを使用した、ワイヤレス電力伝送システムの移動体側回路の概略図である。
図15】本発明による電磁誘導電力伝送システムのコントローラ装置の概略回路図である。
図16図15に示すコントローラ装置の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。ここで、そのような説明は、本発明の例にのみ関連し、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲に対し拘束力のあるものではない、ということを理解されたい。特定の回路コンポーネントに言及がなされる限り、これは、基礎となる機能の例としてみなすべきであり、そのような回路コンポーネント同士は、同一の機能が達成される限り、明らかに交換可能である。
【0020】
図2は、本発明の理解を得るために説明する、ワイヤレス送電システム10の概略図を示す。
【0021】
図2に示すように、ワイヤレス電力伝送システム10は、据置側において送電ユニット12を有する。送電ユニット12は、据置側DC/ACコンバータ14、据置側コントローラ16、据置側補償コンデンサ18、および据置側補償コンデンサ18に直列接続された送電コイル20を備える。据置側補償コンデンサ18と送電コイル20との直列接続は、据置側DC/ACコンバータ14の出力側に接続される。
【0022】
機能上、据置側DC/ACコンバータ14は、据置側DC電圧U1,dcおよび据置側直流電流I1,dcを入力として受け取り、それを据置側高周波電圧U1,hfおよび据置側高周波電流I1,hfに変換するように適合される。次いで、据置側高周波電圧U1,hfおよび据置側高周波電流I1,hfが、据置側補償コンデンサ18と送電コイル20との直列接続に供給されると、振動磁界が発生する。
【0023】
機能上、据置側コントローラ16は、据置側高周波電流I1,hfと、オプションで据置側高周波電圧U1,hf、据置側直流電流I1,dc、および/または据置側dc電圧U1,dcを測定するように適合される。据置側コントローラ16は、測定結果を処理して、据置側DC/ACコンバータ14を制御するように適合される。据置側DC/ACコンバータ14は、据置側高周波電圧U1,hfおよび据置側高周波電流I1,hfを、据置側補償コンデンサ18と送電コイル20との直列接続に供給するように適合される。据置側コントローラ16による制御は、送電コイル20によって発生した磁界が、据置側補償コンデンサ18と送電コイル20との直列接続の共振周波数において振動するようなものである。
【0024】
図2に示すように、ワイヤレス送電システム10は、送電ユニット12から分離された少なくとも1つの受電ユニット22も有する。
【0025】
図2に示すように、受電ユニット22は、移動体側補償コンデンサ26に直列接続された受電コイル24を備える。受電ユニット22は、移動体側AC/DCコンバータ28をさらに備える。移動体側AC/DCコンバータ28の入力側において、移動体側トランス段30が接続され、移動体側トランス段30は、入力側において受電コイル24と移動体側補償コンデンサ26との直列接続に接続される。トランス段30は、その出力側において移動体側コンバータ28に接続される。さらに、移動体側コンバータ28の出力側において、負荷32が接続される。受電ユニット22は、移動体側AC/DCコンバータ28を制御するように適合された移動体側コントローラ34を備える。
【0026】
機能上、受電コイル24は、送電コイル20によって生成された磁界中に置かれると、送電コイル20によって送電されたエネルギーを、誘導結合を通じて受電する。誘導結合により、移動体側高周波電圧U2,hfおよび移動体側高周波電流I2,hfが発生する。
【0027】
機能上、移動体側AC/DCコンバータ28は、移動体側高周波電圧U2,hfおよび移動体側高周波電流I2,hfを、移動体側トランス30を通じた変圧後に、移動体側コントローラ34の制御下で、移動体側DC電圧U2,dcおよび移動体側直流電流I2,dcに変換するように適合される。
【0028】
機能上、出力トランス段30は、受電コイル24および移動体側補償コンデンサ26内を流れる電流を低減させ、移動体側AC/DCコンバータ28内の電流は負荷32に至る出力電流のままであるように適合される。
【0029】
機能上、移動体側コントローラ34は、オプションで移動体側高周波電流I2,hfを測定し、オプションで移動体側高周波電圧U2,hf、移動体側直流電流I2,dc、および/または移動体側DC電圧U2,dcを測定するように適合される。移動体側コントローラ34は、測定結果を処理して、移動体側AC/DCコンバータ28を制御するように適合される。移動体側AC/DCコンバータ28は、移動体側DC電圧U2,dcおよび移動体側直流電流I2,dcを負荷32に、例えば直接またはDC/DCコンバータ(図2には図示せず)を介して、供給するように適合される。
【0030】
図3は、ワイヤレス電力伝送システムの移動体側におけるモジュール式出力回路の基本概念を示す。
【0031】
図3に示すように、本発明によれば、移動体側トランス段30は、少なくとも1つの一次側巻線36_1、...、36_nと、複数の二次側巻線38_1、...、38_nとを備える。移動体側整流器段30はさらに、複数の二次側巻線38_1、...、38_nのうちの1つにそれぞれが接続された複数の移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nを備える。
【0032】
本発明の第1の構成代替形態によれば、複数の移動体側AC/DCコンバータの出力端子対42_1、...、42_nが直列接続されてよい。
【0033】
本発明の第2の構成代替形態によれば、複数の移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nの出力端子対42_1、...、42_nが並列接続されてよい。
【0034】
本発明の第3の構成代替形態によれば、移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nが複数の移動体側出力グループにグループ化されて、各移動体側出力グループ内の出力端子対が直列接続されるとともに異なる移動体側出力グループの出力端子対が並列接続される。
【0035】
最も一般的な意味では、また以下においてより詳細に説明するように、本発明によれば、
・移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nの数がn>1であり、
・移動体側出力グループの数がg≧1であり、
・移動体側出力グループ当たりの移動体側AC/DCコンバータの数が1≦r≦nであり、
・r>1の場合、各移動体側出力グループ内の移動体側AC/DCコンバータの出力端子対が直列接続され、
・g>1の場合、移動体側出力グループの出力端子対が並列接続される。
【0036】
図3に示すように、モジュール式出力回路の第1の実現概念によれば、移動体側トランス段30は、同数n個の一次側巻線36_1、...、36_nと二次側巻線38_1、...、38_nとを備え、それによって、一次側巻線36_1、...、36_nと二次側巻線38_1、...、38_nとの対応する対がトランスモジュール44_1、...、44_nを形成する。トランスモジュール44_1、...、44_nは共通のトランス鉄心(図3には図示せず)を共有する、ということに留意されたい。
【0037】
図4は、図3に示すモジュール式出力回路の基本概念の一修正形態を示す。
【0038】
図4に示すように、第2の実現概念によれば、移動体側回路の移動体側トランス段30は、複数の二次側巻線38_1、...、38_nに共通の1つの一次巻線36を備える。1つの一次側巻線36および複数の二次側巻線38_1、...、38_nは共通のトランス鉄心(図4には図示せず)を共有する、ということに留意されたい。
【0039】
機能上、図4に示す移動体側トランス段30の第2の実現概念の利点は、異なる一次側巻線36_1、...、36_n間の不平衡の発生が回避され得る、ということである。
【0040】
図5は、図3に示すモジュール式出力回路30の第1の直列構成を示す。
【0041】
図5に示すように、複数のトランスモジュール44_1、...、44_nの入力端子が直列接続される。
【0042】
図5に示すように、複数の移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nの出力端子対42_1、...、42_nが直列接続されて、n=r>1の状態で全ての整流器回路40_1、...、40_nを収容した1つの単一出力端子グループg=1を有する完全直列回路構成をもたらしている。
【0043】
動作上、各トランスモジュール44_1、...、44_nは、変圧比u:1を有する理想トランスとして実現されてよい。さらに、入力電圧U1が一次巻線36_1、...、36_nにわたって等しく分割されると仮定すると、各一次巻線36_1、...、36_nにおいて電圧U1/nが印加され、それが各理想トランスの二次側においてU1/nuに変圧される。
【0044】
二次側において、整流後に、直列接続のため関連の電圧が加算されるとやはり仮定すると、U2はおよそn*U1/nu=U1/uとなり得る。結論として、モジュール式出力回路30の直列構成により、二次側における電圧レベルが理想トランスの変圧比uに従って修正される。
【0045】
さらに、動作上、各トランスモジュール44_1、...、44_nの二次側における電流は、I2=u*I1である。直列接続のため、同様の電流、例えばおよそu*I1という電流が、ただし整流されて、各移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nの出力側において流れる。結論として、モジュール式出力回路30の直列構成により、理想トランスの変圧比uに沿った電流レベルがもたらされる。
【0046】
さらに、機能上、モジュール式出力回路30の直列構成に入力された電力全体が出力側に伝送されるが、それにもかかわらず、トランスモジュール44_1、...、44_nと移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nとの各組合せによって取り扱うべき電力は、およそn分の1に低減される、ということに留意されたい。これは、より高レベルの電力を負荷32に伝送しなければならないときに、大きな利点となる。
【0047】
図6は、並列接続の複数の平衡モジュール46_1、...、46_nが付加された、図3に示すモジュール式出力回路の第1の直列構成を示す。
【0048】
図6に示すように、複数の平衡モジュール46_1、...、46_nはそれぞれ、平衡巻線Lb_1、...、Lb_nと関連の平衡抵抗器Rb_1、...、Rb_nとの直列接続として構成される。各平衡モジュール46_1、...、46_nは1つのトランスモジュール44_1、...、44_nに付加され、平衡モジュール46_1、...、46_n同士は並列接続される。
【0049】
機能上、全てのトランスモジュール44_1、...、44_nは、同一の一次電流を有し、したがって同一の出力電流も有するが、平衡モジュール46_1、...、46_nがなければ、各トランスモジュール44_1、...、44_nにわたる電圧を定めるものは何もない。したがって、わずかな漏れ電流が、トランスモジュール44_1、...、44_n間に大きな電圧差を生み出すおそれがある。
【0050】
これに鑑みて、平衡モジュール46_1、...、46_nは、異なるトランスモジュール44_1、...、44_nにわたって同様の電圧を維持する働きをする。各トランスモジュール44_1、...、44_nに追加の平衡巻線Lb_1、...、Lb_nが付加され、平衡巻線Lb_1、...、Lb_n同士は、関連の平衡抵抗器Rb_1、...、Rb_nを通じて並列接続される。各平衡巻線Lb_1、...、Lb_nが同一の電圧を有する場合、電流は流れない。しかし、ある電圧が異なる場合、電圧を同一レベルに維持するために平衡電流が流れる。平衡抵抗器Rb_1、...、Rb_nは、特にスイッチング遷移中の循環電流を低減させる。
【0051】
図7は、4つの出力端子対42_1、...、42_4が直列接続された、図3に示す第1の直列構成の一例を示す。
【0052】
図7に示すように、4つの移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_4の4つの出力端子対42_1、...、42_4が直列接続されて、n=r=4の状態で4つの移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_4を収容した1つの単一出力端子グループg=1を有する完全直列回路構成をもたらしている。
【0053】
機能上、上で図5に関して概説した説明によれば、一般に、直列回路構成により、トランスモジュール44_1、...、44_4と移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_4との各組合せに対する熱負荷を、4分の1に低減させることが可能になる。
【0054】
図8は、図4に示すモジュール式出力回路の第2の直列構成の一例を示す。
【0055】
図8に示すように、第2の実現概念によれば、移動体側回路の移動体側トランス段30は、複数の二次側巻線38_1、...、38_nに共通の1つの一次巻線36を備える。移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nの出力端子対42_1、...、42_nは直列接続される。
【0056】
1つの一次側巻線36および複数の二次側巻線38_1、...、38_nは共通のトランス鉄心(図8には図示せず)を共有してよい、ということに留意されたい。
【0057】
機能上、上で図5に関して概説した考慮すべき事項は、移動体側トランス段30の第2の実現概念にも当てはまる。図5および図6に示す移動体側トランス段30の第1の実現概念に勝る、移動体側トランス段30の第2の実現概念の利点は、一次側における一次巻線36_1、...、36_n間に平衡メカニズムを設ける必要がない、ということである。
【0058】
図9は、整流器回路と関連の移動体側巻線とがグループ化され、各グループ内の整流器回路の出力端子が直列接続されるとともに異なるグループの出力端子対が並列接続される、図3に示すモジュール式出力回路のグループ構成を示している。
【0059】
図9に示すように、モジュール式出力回路30のグループ構成によれば、一般に、r個のトランスモジュール44_11、...、44_1r、...、44_g1、...、44_grおよび関連の移動体側AC/DCコンバータ40_11、...、40_1r、...、40_g1、...、40_grをそれぞれが備える、セットアップされたg個の移動体側出力グループ48_1、...、48_gがある。
【0060】
図9に示すように、各移動体側出力グループ48_1、...、48_g内の出力端子対が直列接続されるとともに異なる移動体側出力グループ48_1、...、48_gの出力端子対が並列接続される。
【0061】
ここで、移動体側出力グループ48_1、...、48_gの数がgであり、移動体側AC/DCコンバータの数がnであり、移動体側出力グループ当たりの移動体側AC/DCコンバータの数がrであり、かつ各移動体側出力グループ48_1、...、48_gが、同数r個の移動体側AC/DCコンバータを備えると仮定すると、1<g<n、n mod g=0、r>1、かつg*r=nが当てはまる。
【0062】
動作上、各トランスモジュール44_1、...、44_nは、変圧比u:1を有する理想トランスによって実現されてよい。さらに、入力電圧U1がg個の移動体側出力グループ48_1、...、48_gおよび関連の一次巻線にわたって等しく分割されると仮定すると、各一次巻線において電圧U1/nが印加され、それが各理想トランスの二次側においてU1/nuに変圧される。
【0063】
二次側において、直列接続のため関連の電圧が加算されなければならないとやはり仮定すると、各移動体側出力グループ48_1、...、48_gにおける出力電圧は、およそr*U1/nu=r*U1/g*r*u=U1/g*uとなり得る。結論として、モジュール式出力回路30のグループ構成により、二次側における電圧レベルは、図5に示すモジュール式出力回路30の直列構成と比較すると、r/n=r/g*r=1/gだけ減少する。
【0064】
さらに、動作上、各トランスモジュール44_1、...、44_nの二次側における電流は、I2=u*I1である。異なる移動体側出力グループの並列接続のため、g*u*I1という重畳電流が、ただし整流されて、モジュール式出力回路30のグループ構成の出力側において流れる。結論として、モジュール式出力回路30のグループ構成により、二次側における電流レベルは、図5に示すモジュール式出力回路30の直列構成と比較すると、g倍に増加する。
【0065】
さらに、機能上、モジュール式出力回路30の直列構成に入力された電力全体が出力側に伝送されるが、それにもかかわらず、各移動体側出力グループ48_1、...、48_gによって取り扱うべき電力は、入力電力のr/n=r/g*r=1/g倍である、ということに留意されたい。これによりやはり、各移動体側出力グループ48_1から48_gについて、負荷が低減される。
【0066】
図10は、各移動体側グループがそれぞれ、2つのトランスユニット44_1、44_2と2つの移動体側AC/DCコンバータ40_1、40_2、および2つのトランスユニット44_3、44_4と2つの移動体側AC/DCコンバータ40_3、40_4を有する、図9に示すグループ構成の一例を示す。
【0067】
一般に、移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_4の数nが2のべき乗n=2i、i=1、2、3、...、であり、かつ移動体側出力グループの数も2のべき乗であると仮定すると、移動体側出力グループの取り得る数に関して、g=2j、0≦j≦i-1が当てはまる。
【0068】
図11は、図3に示すモジュール式出力回路の並列構成を示す。
【0069】
図11に示すように、モジュール式出力回路30のグループ構成によれば、一般に、1つのトランスモジュールおよび1つの関連の移動体側AC/DCコンバータをそれぞれが備える、セットアップされたg個の移動体側出力グループ48_1、...、48_gがある。
【0070】
図11に示すように、異なる移動体側出力グループ48_1、...、48_gの出力端子対が並列接続される。
【0071】
ここで、移動体側AC/DCコンバータの数がnであり、かつ移動体側出力グループ当たりの移動体側AC/DCコンバータの数がr=1であると仮定すると、g=n>1かつr=1である。
【0072】
動作上、各トランスモジュール44_1、...、44_nは、変圧比u:1を有する理想トランスによって実現されてよい。さらに、入力電圧U1がg個の移動体側出力グループ48_1、...、48_gおよび関連の一次巻線にわたって等しく分割されると仮定すると、各一次巻線において電圧U1/nが印加され、それが各理想トランスの二次側においてU1/nuに変圧される。
【0073】
また、並列接続のため、二次側において関連の電圧が出力に直接的にマッピングされ、出力電圧はU1/nuである。結論として、モジュール式出力回路30の並列構成により、二次側における電圧レベルは、図5に示すモジュール式出力回路30の直列構成と比較すると、1/nだけ減少する。
【0074】
さらに、動作上、各トランスモジュール44_1、...、44_nの二次側における電流は、I2=u*I1である。異なる移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nの並列接続のため、n*u*I1という重畳電流が、ただし整流されて、モジュール式出力回路30の並列構成の出力側において流れる。結論として、モジュール式出力回路30の並列構成により、二次側における電流レベルは、図5に示すモジュール式出力回路30の直列構成と比較すると、n倍に増加する。
【0075】
さらに、機能上、モジュール式出力回路30の直列構成に入力された電力全体が出力側に伝送されるが、それにもかかわらず、各移動体側出力グループ48_1、...、48_gによって取り扱うべき電力は、入力電力の1/n倍である、ということに留意されたい。これによりやはり、各移動体側出力グループ48_1から48_gについて、負荷が低減される。
【0076】
図12は、4つの出力端子対が並列接続された、図11に示す並列構成の一例を示す。
【0077】
図12に示す具体例について、例えばu=1と仮定すると、U2=U1/4、かつI2=4*I1が当てはまる。さらに、トランスモジュール44_1、...、44_4と移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_4との各対は、入力電力の1/4を取り扱う。
【0078】
図13は、本発明による間接的なDC出力電流測定の誘因となっている、パワートレインの異なる段における異なる電流形態を示す概略図を示す。
【0079】
図13に示すように、電流は、パワートレインに沿って、異なる波形および関連の電流値を有する。図13によれば、移動体側AC/DCコンバータは、変圧比4:1を有する理想トランスとして実現されると仮定される。
【0080】
図13に示すように、理想トランスの入力側において、電流I1は正弦波であり、測定が容易である。理想トランスの出力側においても、電流は正弦波であるが、理想トランスの4:1という変圧比のため、より高い電流レベルにある。
【0081】
図13に示すように、移動体側AC/DCコンバータを実現するダイオードブリッジの出力側において、電流I2は、整流後の正弦波形態のものである。ダイオードブリッジの出力における平滑コンデンサがローパスとしての働きをし、したがって、最終的には、DC電流I3が負荷32に供給される。一般に、I3=I1(2√2)/πが当てはまる。
【0082】
結論として、本発明によれば、はるかに高い電流レベルにあるDC電流I3の代わりに、比較的低い電流レベルにある正弦波電流I1を測定することが提案される。これは、AC電流センサがDC電流センサのようにより安いという点においても有利である。
【0083】
さらに、電流を測定する必要のあるいくつかの移動体側出力グループがある場合、現況技術の解決策では、各移動体側出力モジュールにおいて電流を測定し、したがって、複数の電流センサが使用される。場合により、別の現況技術の解決策は、組み合わされた出力電流を測定するというものであるが、それによって、かさばる出力ケーブルを電流センサに通さなければならないという欠点が生じる。また、電流センサのダイナミックレンジが単一出力電流に必要とされるよりも大きくなるので、精度が損なわれる。
【0084】
そうではなく、本発明による、図13に示す手法は、入力電流I1を測定し、そこからDC出力電流I3を計算することを可能にするものである。
【0085】
図14は、DC出力電流を間接的に測定し、後に測定結果を使用して移動体側整流器回路を制御する目的でカレントトランスを使用した、ワイヤレス電力伝送システムの移動体側回路の概略図を示す。
【0086】
図14に示すように、移動体側共振回路と移動体側トランス段30の入力との間に接続された一次側巻線50と、回路54に接続された二次側巻線52とを有するカレントトランス48が、ワイヤレス電力伝送システムの出力電流を評価するように適合される。
【0087】
普通ならトランス44_1、...、46_nおよび48の磁化電流ならびに整流器における損失が測定をほとんど使い物にならないものにすることが予想されるため、本発明による間接的な電流測定の基礎となる概念は反直感的なものである、ということに留意されたい。しかし、これらの磁化電流は、位相ずれを付加するにすぎず、出力電流測定の精度にどんな影響も及ぼさない。これは、実際のところ、カレントトランス48の使用により、通常のDC電流センサの使用を通じて可能であるはずよりも正確な電流測定が可能になる、ということを意味する。
【0088】
さらに、本発明は、ワイヤレス電力伝送システムの出力電流を評価するためのカレントトランス48であって、ワイヤレス送電システムの移動体側回路の入力に接続された一次側巻線50と、ワイヤレス電力伝送システムの出力電流を評価するように適合された監視回路54に接続された二次側巻線52とを有する、カレントトランス48の使用もカバーする、ということに留意されたい。
【0089】
図14に示すように、ワイヤレス電力伝送システムの出力電流を決定するための監視回路54は、カレントトランス48の二次側巻線52に接続された整流回路56を備える。さらに、監視回路54は、整流回路56に接続され、ワイヤレス送電システムの出力電流に等価な整流回路56の出力の平均を決定するように適合された、平均化回路58を備える。
【0090】
オプションで、平均化回路58は、整流回路56の出力端子に接続された平滑コンデンサと、平滑コンデンサに並列接続された抵抗器とを備える。
【0091】
機能上、また以下に説明するように、平均化回路58の出力は、移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nが同期整流器である場合にこれらを制御するために使用されてよい。
【0092】
図15は、本発明による電磁誘導電力伝送システムのコントローラ装置60の概略回路図を示す。
【0093】
図15に示すように、コントローラ装置60は、少なくとも1つのインターフェース62、例えば無線インターフェースを備える。インターフェース62は、例えば電磁誘導電力伝送システム10内の遠隔コントローラとの、または電磁誘導電力伝送システム10の外部制御ステーションとの、ワイヤレス情報交換に適している。いくつかのシナリオでは、インターフェース62は、外部システム、例えばメンテナンスシステムとの情報の交換に使用されてもよい。
【0094】
図15に示すように、コントローラ装置60は、インターフェース62に結合された少なくとも1つのプロセッサ64、および少なくとも1つのプロセッサ64に結合されたメモリ66を備える。メモリ66は、読出し専用メモリROM、例えばフラッシュROM、ランダムアクセスメモリRAM、例えばダイナミックRAM DRAMまたはスタティックRAM SRAM、大容量記憶装置、例えばハードディスクまたはソリッドステートディスクなどを含んでよい。メモリ66は、命令、例えば、コントローラ装置60の後述する機能を実装するために少なくとも1つのプロセッサ64によって実行される、適切に構成されたプログラムコードも含む。この機能は、以下ではユニットと呼ばれる。これらのユニットは、コントローラ装置60の個々のハードウェア要素を表すのではなく、少なくとも1つのプロセッサ64が適切に構成されたプログラムコードを実行すると生成される機能を表す、ということに留意されよう。
【0095】
図15に示すように、メモリ66は、信号処理ユニット68および制御処理ユニット70を実装するように適切に構成されたプログラムコードを含んでよい。
【0096】
機能上、信号処理ユニット68は、ワイヤレス送電システムの移動体側回路の入力に接続された一次側巻線50を有するカレントトランス48の出力信号を受け取り、出力信号の極性を参照電位に対して正の極性または負の極性に分類し、出力信号をしきい値と比較するように適合される。
【0097】
さらに、機能上、制御処理ユニット70は、出力信号が正の極性を有し、かつ出力信号の絶対値がしきい値よりも大きいときに、それぞれ同期整流器回路として実現された少なくとも1つの移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nの少なくとも1つの第1のスイッチング回路をオンにし、出力信号が負の極性を有し、かつ出力信号の絶対値がしきい値よりも大きいときに、少なくとも1つの同期整流器回路40_1、...、40_nの、少なくとも1つの第1の回路とは異なる少なくとも1つの第2のスイッチング回路をオンにするように適合される。
【0098】
本発明によれば、少なくとも1つの移動体側AC/DCコンバータは、任意の適切なタイプのものであってよい、例えばフルブリッジ構成またはハーフブリッジ構成に構成されてよい、ということに留意されたい。
【0099】
ここで、フルブリッジ構成では、フルブリッジの第1の対角に位置する2つの第1のスイッチング素子と、フルブリッジの第2の対角に位置する2つの第2のスイッチング素子とが設けられ、第2の対角は第1の対角とは異なる。
【0100】
あるいは、ハーフブリッジ構成では、ハーフブリッジの上部に位置する1つの第1のスイッチング素子と、ハーフブリッジの下部に位置する1つの第2のスイッチング素子とが設けられる。
【0101】
図16は、図15に示すコントローラ装置60の動作のフローチャートを示す。
【0102】
図16に示すように、機能上、インターフェース62は、プロセッサ64と協働して、ワイヤレス送電システムの移動体側回路の入力に接続された一次側巻線50を有するカレントトランス48の出力信号を受け取るためのステップS20を実行するように適合される。
【0103】
図16に示すように、機能上、信号処理ユニット68は、プロセッサ64と協働して、出力信号の極性を参照電位に対して正の極性または負の極性に分類するためのステップS22を実行するように適合される。
【0104】
図16に示すように、機能上、制御処理ユニット70は、プロセッサ64と協働して、出力信号をしきい値と比較するためのステップS24を実行するように適合される。
【0105】
図16に示すように、機能上、制御処理ユニット70は、プロセッサ64と協働して、出力信号が正の極性を有し、かつ出力信号の絶対値がしきい値よりも大きいときに、同期整流器回路である少なくとも1つの移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nの少なくとも1つの第1のスイッチング回路をオンにするための、また出力信号が負の極性を有し、かつ出力信号の絶対値がしきい値よりも大きいときに、少なくとも1つの同期整流器回路40_1、...、40_nの、少なくとも1つの第1のスイッチング回路とは異なる少なくとも1つの第2のスイッチング回路をオンにするための、ステップS26を実行するように適合される。
【0106】
図16に示す動作は図15に示すコントローラ装置を使用した実現に限定されない、ということに留意されたい。あるいは、方法は、上で概説した分類およびしきい値比較にコンパレータ回路を使用してアナログ式に実現されてもよい。その場合、コンパレータの出力が、少なくとも1つの移動体側AC/DCコンバータ40_1、...、40_nのスイッチング回路を駆動するアナログゲートドライバ回路への入力として使用される。
【0107】
上記において、本発明の好ましい実施形態または例の図面および図を参照して、本発明について説明してきたが、当然ながら、本発明は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者によって明らかになるとともに容易に成し得る本発明の変形および修正を使用して実施されてもよい、ということに留意されたい。例えば、上で説明した機能は、ソフトウェアとして、ハードウェアとして、またはそれらの組合せとして、実現されてよい。
【0108】
したがって、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載の範囲は、本明細書に記載の説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本発明が属する分野の当業者によって本発明の等価物として扱われる全ての特徴を含む、本発明において重要な役割を果たす提示可能な新規な全ての特徴を包含するように解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0109】
10 ワイヤレス送電システム、ワイヤレス電力伝送システム、電磁誘導電力伝送システム
12 送電ユニット
14 据置側DC/ACコンバータ
16 据置側コントローラ
18 据置側補償コンデンサ
20 送電コイル
22 受電ユニット
24 受電コイル
26 移動体側補償コンデンサ
28 移動体側AC/DCコンバータ、移動体側コンバータ、移動体側整流器段
30 移動体側トランス段、移動体側トランス、出力トランス段、移動体側整流器段、モジュール式出力回路
32 移動体側負荷
34 移動体側コントローラ
36 一次巻線、一次側巻線
36_1、...、36_n 一次側巻線、一次巻線
38_1、...、38_n 二次側巻線
40_1、...、40_n 同期移動体側AC/DCコンバータ、同期整流器回路、移動体側整流器段、移動体側同期AC/DCコンバータ
40_11、...、40_1r、...、40_g1、...、40_gr 移動体側AC/DCコンバータ
42_1、...、42_n 出力端子対
44_1、...、44_n トランスモジュール、トランスユニット、トランス
44_11、...、44_1r、...、44_g1、...、44_gr トランスモジュール
46_1、...、46_n 平衡モジュール、トランス
48 カレントトランス
48_1、...、48_g 移動体側出力グループ、移動体側グループ
50 一次側巻線
52 二次側巻線
54 監視回路
56 整流回路
58 平均化回路
60 コントローラ装置
62 インターフェース
64 プロセッサ
66 メモリ
68 信号処理ユニット
70 制御処理ユニット
I1 正弦波電流、入力電流
I1,dc 据置側直流電流
I1,hf 据置側高周波電流
I2 電流
I2,dc 移動体側直流電流
I2,hf 移動体側高周波電流
I3 DC電流、DC出力電流
Lb_1、...、Lb_n 平衡巻線
Rb_1、...、Rb_n 平衡抵抗器
U1 入力電圧
U1,dc 据置側DC電圧、据置側dc電圧
U1,hf 据置側高周波電圧
U2,dc 移動体側DC電圧
U2,hf 移動体側高周波電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16