(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】ギア切削方法およびギア切削機
(51)【国際特許分類】
B23F 23/12 20060101AFI20230421BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B23F23/12
B23Q17/09 A
(21)【出願番号】P 2020526293
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2018078793
(87)【国際公開番号】W WO2019096542
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】102017010598.7
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500120211
【氏名又は名称】グリーソン - プァウター マシネンファブリク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン クレシェル
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-062967(JP,A)
【文献】特開2015-164751(JP,A)
【文献】特開2001-347423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 5/00、23/12
B23Q 17/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の機械加工パスで所定の歯面の端部形状を生成するために、回転軸を中心に回転し、刃先(5)を含む歯工具(1)が、特に回転軸を中心に回転する歯との、特に、ローリングチップ除去機械加工係合にもたらされる、クランプに保持されたワークピースの歯(2)を加工する方法であって、 前記歯面の端部形状を生成する前記機械加工パス中、除去されたチップ(4)が、特にローリング機械加工プロセスによって前記歯(2)の機械加工された歯面に押し込まれた事象に応答して、モニタリングが実行され、前記モニタリングが応答した場合、発生した前記事象中に押し込まれた前記チップ(4’)によって形成された歯面の端部形状の上部にある材料の突起を除去する追加の歯機械加工プロセスは、特に自動的に実行され、このプロセスは、特に前記ワークピースの同じクランプで、特に前記歯工具(1)自体によって実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記モニタリングは、前記モニタリングによってモニタリングされるパラメータの時間曲線(8)の振幅(А)が所定の閾値を超えるときに応答する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記追加の歯機械加工プロセスが、少なくとも前記歯の幅部分にわたる、前記モニタリングをトリガする前記機械加工パスの繰り返しである、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記追加の歯機械加工プロセスが、前記モニタリングの前記応答をトリガする前記機械加工パスと比較して、前記工具と前記歯の間のより
大きい距離を使用して実行される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記モニタリングは、前記モニタリングによってモニタリングされるパラメータの時間曲線(8)の振幅(А)が所定の閾値を超えるときに応答するものであり、
前記機械加工パスにおいて、前記閾値
を超過
した際の時間に基づき、前記事象が生じた歯幅範囲が決定され、前記追加の歯機械加工プロセスは、特に、前記決定された歯
幅範囲に基づいて実行される、請求項3または請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
2つのパラメータがモニタリングされ、前記モニタリングが、両方のパラメータの時間曲線の振幅がそれぞれの所定の閾値を超える場合、応答する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
モニタリングされるパラメータは、前記ワークピースの回転を示し、特に、前記ワークピースの回転速度または前記ワークピースの回転のトルクを直接的または間接的に示す、請求項2から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
モニタリングされるパラメータが工具の回転を示し、特に、前記工具の回転速度または前記工具の回転のトルクを直接的または間接的に示す、請求項2から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
歯切り盤(100)のコントローラ(99)上で実施されるとき、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行するように前記コントローラを制御する制御プログラムを有するコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
ワークピーススピンドルに接続されたクランプに保持されたワークピースを回転駆動するワークピーススピンドルと、歯工具を回転駆動する工具スピンドルと、コントローラ(99)とを含む歯切り盤(100)であって、前記コントローラは、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行するように前記歯切り盤を制御することができることを特徴とする、歯切り盤(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプに保持されたワークピースの歯を機械加工する方法に関し、その方法では、1つまたは複数の機械加工パスで所定の歯面の端部形状を生成するために、その回転軸を中心に回転し、刃先を含む歯工具が、特にその回転軸を中心に回転する歯との特に、ローリングチップ除去機械加工係合にもたらされる。
【背景技術】
【0002】
この種の方法は公知であり、その最もよく知られている例は、ホッビング、成形、およびパワースカイビングを含む。
【0003】
製造された歯は、しばしばギアシステムで使用され、ギアシステムでのその使用の目的のために、例えば、後でギアシステムにおいて望ましくないノイズやその他の故障を引き起こす可能性のある歯の欠陥のために、あらかじめ測定プロセスを使用して事前にチェックされる。例えば、例えば望ましい王冠の形で、歯面の意図された耐荷重能力に対して歯面修正が達成されない場合、測定プロセスの結果に基づいて、製造プロセスを再調整でき、または必要に応じて、個々のワークピースを廃棄できる。それにもかかわらず、製造された歯は、後でギアシステムにおいて使用したときに、望ましい特性を示さないことがよくある。
【0004】
したがって、本発明によって対処される問題は、特に、歯の後のより信頼性の高い使用に関して、最初に述べた種類の方法を改善することである。
【0005】
この問題は、歯面の端部形状を生成する機械加工パス中、すでに除去されたチップが、特にローリング機械加工プロセスによって歯の機械加工された歯面に押し込まれた事象に応答して、モニタリングが実行され、モニタリングが応答した場合、発生した事象中に押し込まれたチップによって形成された歯面の端部形状の上部にある材料の突起を除去する追加の歯機械加工プロセスは、特に自動的に実行され、このプロセスは、特にワークピースの同じクランプで、特に歯工具自体によって実行される、という点で本質的に特徴がある、冒頭で述べたタイプのメソッドを開発することにより、メソッドに関して解決される。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、初期には、不十分な特性は、提供された最終機械加工パスで、フライングチップが、歯工具の表面とワークピースの歯の間のギャップに入り、歯工具のホッビングプロセスの結果として、すでに機械加工された歯の歯面に押し込まれるという事実によるという、知識に基づいている。これらの押し込まれたチップは、機械加工中に通常発生する温度により、ワークピースの材料と一種の冷間溶接または摩擦溶接があるため、機械的に簡単に取り外すことができない。
【0007】
さらに、本発明は、このタイプの事象がしばしば歯の根元領域で発生し、孤立した事象として発生し、したがって、通常実行されるモニタリングおよび測定プロセスでは、不適切な歯を廃棄するときに十分に高い成功率を保証するのに十分な信頼性でそのような事象を識別しないという知識に基づいている。
【0008】
最後に、本発明は、このタイプの有害な事象が、その後のモニタリングによってではなく、上記の機械加工パス中に早期に発生したかどうかを判断することが可能であるという、知識に基づいており、疑わしい場合でも、現場で直接、追加の工具なしで必要に応じて対応することができるという知識に基づいている。したがって、追加の歯機械加工プロセスにより、歯面の端部形状自体を変更することなく、押し込まれたチップによって引き起こされる欠陥が排除される。
【0009】
追加の歯機械加工プロセスの実行には時間がかかり、機械加工サイクルに不整合があるように、同じワークピースのバッチで異なる機械加工時間が発生する結果となるが、本発明はまた、この失われた時間は、追加の歯機械加工プロセスによって達成されるワークピースの効果と信頼性の向上によってオフセットされるという、知識に基づいている。
【0010】
この方法の好都合な実施形態では、モニタリングは、モニタリングによってモニタリングされるパラメータの時間曲線の振幅が所定の閾値を超えると応答する。所定の閾値は、事象が発生していなくても応答するリスクを低減するために、パラメータの時間曲線のバックグラウンドノイズからの安全距離が維持されるように設定される。さらに、発生する事象が記録されなくなるほど閾値を高く設定してはならない。事象の場合の振幅は、閾値が、例えばバックグラウンドノイズの標準偏差の小さな倍数の領域でテストを実行することにより、大きな困難なしに適切に決定することができる程度に、バックグラウンドノイズとは異なることが証明されている。使用するモニタリング技術とモニタリングパラメータに応じて、さまざまな閾値を選択することも可能である。
【0011】
好ましい実施形態では、追加の歯機械加工プロセスは、少なくとも歯の幅部分にわたる、モニタリングの応答をトリガする機械加工パスの繰り返しである。これにより、溶着したチップを確実に取り除くことができる。不運な場合、追加の歯機械加工プロセスが実行されたときにチップが再度押し込まれる場合が考えられるが、これもモニタリングによって検出され、修正され得る。
【0012】
この方法の別の好ましい実施形態では、モニタリングの応答をトリガする機械加工パスと比較して、工具と歯の間のより大きい距離を使用して、追加の歯機械加工プロセスが実行される。例えば、前進運動は、事象をトリガする機械加工パスと比較して、例えば、5~40μm、特に10~30μmの範囲において、工具の刃先の歯の大きさのオーダーの値だけ減少する。これは、押し込まれたチップをキャッチして切り離すのに十分である。以前に押し込まれたチップの痕跡が歯面形状に残っている場合、以前に押し込まれたチップによって形成された歯面の上部にある材料の突起よりも、ギアシステムで後で使用する場合の害が大幅に少なくなる。
【0013】
別の好ましい実施形態では、事象が割り当てられる歯幅範囲は、閾値の超過から決定され、追加の歯機械加工プロセスは、特に、決定された歯範囲に基づいて実行される。特に歯幅が大きい場合、機械加工が、影響を受ける領域が、機械加工が始まる歯の端に近いか、機械加工が終わる歯の端に近いかによって、影響を受ける領域でのみまたは影響を受ける領域までのみ行われる場合、または追加の歯機械加工プロセス中に影響を受ける領域から開始する場合、追加の歯機械加工プロセスの作業時間を短縮できる。
【0014】
原則として、歯面の端部形状を生成する機械加工パスでダブル事象を検出することは不可能ではない。この場合、特に簡略化の目的で、追加の歯機械加工プロセスを歯の全幅にわたって実行することができる。
【0015】
考えられる一実施形態では、2つのパラメータも監視することができ、両方のパラメータの時間曲線の振幅がそれぞれの所定の閾値を同時に超える場合、モニタリングが応答する。これにより、モニタリングが応答しない場合、または別の理由で応答する場合に、より高い冗長性が保証される。
【0016】
ほとんどの場合、モニタリングは1回限りのトリガ事象に応答する。ただし、モニタリングされているパラメータの曲線で繰り返し発生する異常は、個別に検討して排除する必要がある別の欠陥を示している。
【0017】
モニタリングの実施方法に関しては、さまざまな可能性、外部センサ、例えば、音響センサが考えられる。しかしながら、ワークピースの回転速度またはワークピース回転のトルク、または、工具の回転速度または工具回転のトルクに直接または間接的に関連している、機械動作パラメータが使用されることが好ましい。
【0018】
このようにして、回転速度を直接監視することができ、または回転速度制御の制御偏差またはトルク偏差を使用できる。これは、例えば、回転軸の制御用に提供される電流測定を使用して、間接的に行うこともできる。他の機械軸もこの目的で使用できる。
【0019】
この方法は、外歯と内歯の両方の機械加工に適し、特に内歯に特に効果的である。
【0020】
さらに、この方法は、ホッビングおよびパワースカイビング、特に好ましくは内歯をパワースカイビングすることを特に意図している。それはまた、例えば、内歯に切り欠きを形成する形で、歯内にさらなる歯が形成されるとき、および内歯自体を製造するときだけでなく使用することもできる。成形と掻き取りも考えられる機械加工方法の構成である。この方法は、ベベルギアの製造にも使用できる。
【0021】
モニタリングは、例えば、検出された事象の数を記録し、必要に応じて、その数を工具の再研磨または交換の時期に関する決定に組み込むために、前の荒削りパス中にも実行できる。
【0022】
この方法はまた、歯切り盤を制御するために使用できるコンピュータプログラム製品の形で、ならびにこの方法を実行するように制御できる歯切り盤の形で、制御技術によって保護されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明のさらなる特徴、詳細、および利点は、添付の図面を参照して以下の説明で見つけることができる。
【
図1】
図1は、本発明を説明する工具と部分的に係合している歯の概略図である。
【
図4】
図4はパワースカイビング機械として設計された歯切り盤である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明に関連して機械加工された歯に発生する事象を再び簡単に示している。したがって、
図1aは、ここで示されるパワースカイビングホイールである、チップ4(
図1aにロールアップされ示されている)が、パワースカイビングホイール1と歯2との間のギャップに入り、機械加工中に歯2に転がって押し込まれる場合、歯2が歯工具1によって最終仕上げパスで機械加工される方法とタイミングを示す。この状態を、押し込まれたチップを4’で示している、
図1bに示す。
図1cは、押し込まれたチップ4’が追加の歯機械加工プロセスで取り除かれる状況を概略的に示す。
図1cから、押し込まれたチップ4’は、以前にチップ4を歯2に押し付けたのと同じパワースカイビングホイール1によって取り除かれることがわかる。
【0025】
さらに、この実施形態では、
図1a、bおよび1cの間に示される状況において、ワークピースのクランプに変化はない。むしろ、歯2を有するワークピースは同じクランプで保持される。押し込まれたチップ4’の存在は、
図1aに示されている機械加工ステップから早くもモニタリングによって検出される。このタイプのモニタリングの例を
図2に概略的に示す。このようにして、例えば、歯2を支持するワークピースの回転速度または別のパラメータが経時的に記録される。概略的に示されている状況では、このモニタリングは回転速度制御のコンテキストで発生するバックグラウンドノイズ内で動くが、
図2に示すように、チップ4が押し込まれた瞬間に一時的なピークのようなスパイク(9)が発生し、モニタリングがスパイクに応答する。基礎となる機械制御システムは、対応する「事象」信号を受信し、
図1cに示す追加の機械加工プロセスが実行される動作モードに切り替わる。
【0026】
この追加の機械加工プロセスの後、押し込まれたチップ4’によって引き起こされる材料の突起なしに、望ましい歯面の端部形状が歯2に存在し、歯が、後にギアシステムで使用されるとき、低ノイズの動作を保証し、押し込まれたチップ4’が検出されず、この状態で歯2がギアシステムに挿入された場合、そうでなければ存在するであろうギアシステムの損傷のリスクを増加させない。
【0027】
図2に抽象的に示したモニタリングは、さまざまな方法で実行できる。例えば、好ましい変形例による工具スピンドルの制御ループから導出されたトルクの時間曲線を示す、
図3に示された測定グラフを参照のこと。ただし、この制御ループまたはワークピーススピンドルの制御ループ、または、工具スピンドルまたはワークピーススピンドルの角度位置を検出する測定システム、速度センサ、変位測定システム、または構造物音センサなどの他の測定システム/センサから派生した他の値も考えられる。
【0028】
図1cに示す追加の機械加工プロセスでは、パワースカイビングホイール1は、前進深さに関して歯面の端部形状を生成するために最終仕上げパスを繰り返す。ただし、これは絶対に必要というわけではなく、わずかに大きい機械加工距離を使用したパスでも、押し込まれたチップ4’をキャッチして取り除くのに十分である。
【0029】
歯幅全体を機械加工するために、パワースカイビングホイール1が歯2に対して軸方向に前進するので、
図2に示されるモニタリング状況は、時間、および、したがって、少なくともおよそチップ4が押し込まれた場所の
図1に見られる高さを決定するために使用され得る。したがって、歯の全幅にわたって追加の歯機械加工プロセスを実行する必要がなく、時間を節約できる。
【0030】
図4は、制御システム99を含む別のパワースカイビング機械100を示し、事象のモニタリングは、例えば、上述の変形を使用して実施される。このマシンは、図に示すX、Y、Z、A、C、C2の各移動軸の個別のドライブを含む、CNC制御のマシンである。したがって、パワースカイビング機械100は、ワークピース側に、スピンドルが、この場合、垂直スピンドルとして設計される機械ベッド80上に配置されたワークピーススピンドル70を含む。工具側には、機械ベッド80に対して半径方向前進方向Xに移動可能な半径方向キャリッジ61が設けられており、キャリッジ上に上記半径方向キャリッジに対して軸方向Zに移動可能であるように取り付けられた軸方向キャリッジ62が、工具スピンドル軸C2を有する工具ヘッドが配置されている、接線方向キャリッジ63を旋回可能に支持する。ピボット軸Aはラジアル軸Xに平行であり、パワースカイビングのための典型的な機械軸構成に対し、工具の回転軸とワークピースの回転軸の間の軸交差角度Σを設定するために、工具スピンドル軸C2がY-Z平面で旋回できるようにする。
【0031】
本発明は、好ましくは、パワースカイビング内歯に使用されるが、それは、内歯またはパワースカイビング方法に限定されない。特に、前述の態様のいずれかによるそれぞれの制御システムを用いて、ベベルギアを製造するための、ホッビング機械、成形機、掻き取り工具を含む掻き取り機械または歯切り盤を制御することも考えられる。したがって、歯切り盤には少なくとも2つの操作モードがあり、機械制御システムのモニタリングがチップが歯に押し込まれる潜在的な事象に応答する場合、他の操作モードと比較して1つの操作モードで追加の機械加工プロセスが行われる。
【0032】
本発明は、図面の説明で述べた詳細にも限定されない。むしろ、上記の説明および以下の特許請求の範囲の特徴は、本発明をそのさまざまな実施形態で実施するために、個別にまたは組み合わせて不可欠であり得る。