(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】高タンパク質パスタ
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20230421BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 C
A23L7/109 E
(21)【出願番号】P 2020530566
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2018083664
(87)【国際公開番号】W WO2019110668
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514140089
【氏名又は名称】アーラ フーズ エエムビエ
【氏名又は名称原語表記】Arla Foods amba
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ポウルセン,インゲ リセ
(72)【発明者】
【氏名】ラングヴィグ,セシリー ウィルソー
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,ハンネ バク
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-094045(JP,A)
【文献】特開平08-154608(JP,A)
【文献】低カロリー、高タンパク! ホエイを使った「究極のパスタ」を作りたい! コミュニケーション 詳細 96404,Makuake,2017年11月01日,https://www.makuake.com/project/yorokoba/communication/detail/96404/,[検索日2022年9月15日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾物含量当たりの総タンパク質含量が少なくとも13重量%であり、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が少なくとも5重量%であ
り、前記微粒子化変性ホエータンパク質のうちの少なくとも50重量%が、0.5~10ミクロンの粒度を有する、パスタ。
【請求項2】
総タンパク質含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が少なくとも35重量%である、請求項1に記載のパスタ。
【請求項3】
カゼインおよびカゼイン塩を実質的に含んでいない、請求項1
又は2に記載のパスタ。
【請求項4】
乾物含量当たりの総タンパク質含量が、少なくとも15重量%である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のパスタ。
【請求項5】
乾物含量当たりの総タンパク質含量が
18~
27重量%である、請求項
4に記載のパスタ。
【請求項6】
微粒子化変性ホエータンパク質が、前記パスタ中に含まれるホエータンパク質の少なくとも50%を占める、請求項1~
5のいずれか1項に記載のパスタ。
【請求項7】
生パスタである、請求項1~
6のいずれか1項に記載のパスタ。
【請求項8】
前記生パスタの水分量が少なくとも15重量%である、請求項
7に記載のパスタ。
【請求項9】
乳化剤を含んでいない、請求項1~
8のいずれか1項に記載のパスタ。
【請求項10】
前記微粒子化変性ホエータンパク質が、甘性ホエーに由来する微粒子化変性ホエータンパク質である、請求項1~
9のいずれか1項に記載のパスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭水化物の含量が低く、タンパク質の含量が高いパスタに関する。より具体的には、本発明は、乾物含量当たりの総タンパク質含量が少なくとも13重量%であり、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が少なくとも5重量%であるパスタに関する。
【背景技術】
【0002】
パスタ製品は、世界中でよく知られている食品である。パスタは、小麦粉の含量が高い食品であり、したがって、炭水化物の含量が高く、タンパク質の含量が低い。パスタのアルデンテな歯ごたえを得るためには、調理時間が重要である。パスタを調理する際、茹ですぎないように調理時間をコントロールするのは難しく、そのため、パスタを茹ですぎてしまうことが多く、すなわち、パスタが粘つき、膨張してしまうことが多く、消費者にとって喜ばしいとは言えない。
【0003】
タンパク質は以前から、食品中で有益な特性を備えていることが示されており、すなわち、タンパク質含量が高い食品は、消費者の満腹感を増加させる。それゆえ、多くの食事療法では、高タンパク質食品の摂取が推奨されている。
【0004】
様々な食品においてタンパク質含量を増加させることが常に検討されており、パスタ製品中のタンパク質含量を増加させる試みも実施されている。しかし、タンパク質含量が高く、かつ滑らかで粘りのない表面と心地よい味を備えたパスタを提供することはこれまで不可能であった。
【0005】
たとえば、米国特許公開第4,361,591号明細書では、ほぼ同量のカゼインカルシウムと部分変性ホエータンパク質から実質的になり、約0.005インチ(127μmに相当)未満の平均粒度を有するタンパク質性材料を約5%加えて作製したパスタ製品が開示されている。
【0006】
しかしながら、このパスタは、調理後に粘つき、膨張することから、消費者の嗜好にはあまりそぐわない。
【0007】
したがって、タンパク質含量が高く、滑らかで、粘つかず、膨張しない表面や、心地よい風味特性などの良好な官能特性を備えたパスタは有益であると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、パスタ生地に微粒子化変性ホエータンパク質を添加すると、茹ですぎに対する耐性が改善されたパスタ、すなわち、調理した後の粘着性が低減されたパスタが得られることを示している。また、本発明者らは、驚くべきことに、本発明のパスタの含水量は、標準的な従来のパスタ製品よりも最大で7%高くなることを見出している。
【0009】
したがって、本発明は、良好な品質を備え、タンパク質含量が高いパスタ製品、すなわち、茹ですぎに対する耐性が改善され、茹ですぎた場合の粘着性および膨張性が低減された、タンパク質含量が高いパスタ製品を提供することを目的とする。
【0010】
より具体的は、本発明は、調理後のテクスチャーが損なわれるという前述の先行技術の問題を解決することができるパスタを提供することを目的とする。
【0011】
したがって、本発明の一態様は、乾物含量当たりの総タンパク質含量が少なくとも13重量%であり、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が少なくとも5重量%であるパスタに関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】a)~h)は、様々なパスタ生地試料の写真を示す。
【
図2】a)~c)は、未調理の帯状パスタの様々な試料の写真を示す。
【
図3】様々な時間にわたり調理した後の様々な調理済みパスタ試料の硬さを示す。
【
図4】a)およびb)は、1分間および10分間調理した後の様々な調理済みパスタ試料の膨張率を示す。
【
図5】a)~g)は、様々な量の水を加えて作製したパスタ生地の写真を示す。
【
図6】a)~g)は、様々な量の水を加えて作製した未調理の帯状パスタの写真を示す。
【
図7】様々な量の水を加えて作製し、様々な時間にわたり調理した調理済みパスタの硬さを示す。
【
図8】a)~e)は、様々な量の水を加えた調理済みの帯状パスタの写真を示す
【
図9】a)およびb)は、大豆タンパク質を加えたパスタおよびタンパク質を加えていないパスタ(参照試料)と比較した場合の、微粒子化変性ホエータンパク質を加えたパスタの官能試験の結果を示す。
【
図10】a)およびb)は、様々な時間にわたり調理した様々な種類のパスタの粘着性を示す。c)は、様々な種類のパスタの水分活性を示す。
【
図11】a)~f)は、微粒子化変性ホエータンパク質を様々な量で加えた調理済み帯状パスタの写真を示す。
【
図12】微粒子化変性ホエータンパク質を様々な量で加えた調理済み帯状パスタの乾物含量を示す。
【
図13】微粒子化変性ホエータンパク質を様々な量で加えた調理済み帯状パスタの水分活性を示す。
【
図14】微粒子化変性ホエータンパク質を様々な量で加えた調理済み帯状パスタの粘着性を示す。
【
図15】A)~D)は、微粒子化変性ホエータンパク質またはカゼイン塩を加えた未調理の帯状パスタおよび調理済みの帯状パスタの写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
用語の定義
本発明をさらに詳細に説明する前に、以下の用語および慣用語を最初に定義する。
【0015】
特段の記載がない限り、あるいは言及されている文脈において明らかに反することが記載されている場合を除き、本発明において、単数の特徴または限定事項に関する言及はいずれも、それに対応する複数の特徴または限定事項を含み、複数の特徴または限定事項に関する言及はいずれも、それに対応する単数の特徴または限定事項を含む。
【0016】
特段の記載がない限り、本明細書に記載のパーセンテージはいずれも重量パーセントである。また、「乾物含量当たり」という用語と、「乾物換算」という用語は、いずれも同じ概念を指し、同じ意味で使用される。
【0017】
特段の記載がない限り、本明細書で使用されている技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0018】
パスタ:
本明細書で述べる「パスタ」は、穀粉と、塩、卵または水を混合して、パン種を入れずに生地を作製し、シート状またはその他の様々な形状に成形し、調理して、様々な料理として出される食品を指す。パスタは、小麦粉から作製されたものであることが好ましく、デュラム小麦粉で作製されたものであることがより好ましい。ただし、パスタは、その他の穀類または穀物から得られた穀粉で作製することもでき、卵の代わりに水を使用してもよく、卵の一部を水で置き換えてもよい。パスタは、乾燥パスタと生パスタの2種類に大きく分類してもよい。パスタは通常、デュラム小麦粉から作製される。デュラム小麦粉はグルテン含量が多い。本明細書で述べる「パスタ」は麺を含む。
【0019】
本発明のパスタは、乾燥パスタであってもよく、生パスタであってもよいが、本発明の一実施形態において、本発明のパスタは生パスタである。
【0020】
本発明の文脈において、「生パスタ」という用語は、乾燥工程を経ていないパスタに関する。生パスタは、水分量が少なくとも15重量%、たとえば15~40重量%の生の生地から作製されたパスタを指す。「水分」とは、水などの液体を意味する。通常、生パスタの水分量は、パスタの総重量の20~30重量%の範囲である。
【0021】
本明細書で述べる「穀粉」は、通常、穀物の粉砕により得られる流動性粉末である食料品を指す。
【0022】
本発明のパスタに含まれる穀粉は、通常、デュラム小麦粉などの小麦粉であるが、その他の穀類から得られた穀粉を使用してもよく、たとえば、その他の穀類から得られた穀粉を小麦粉と組み合わせて使用してもよい。穀粉の例として、小麦粉、ライ小麦粉、ライ麦粉、大麦粉、オート麦粉、ソバ粉、スペルト小麦粉、雑穀粉、キノア粉、トウモロコシ粉、米粉、馬鈴薯粉、アーモンド粉、ヘーゼルナッツ粉およびココナッツ粉が挙げられる。
【0023】
小麦粉中のタンパク質含量は、穀粉の品質にもよるが、通常8~15%である。
【0024】
本発明の一態様において、本発明のパスタは、乾物含量当たりのタンパク質含量(総タンパク質含量)が少なくとも13重量%である。パスタ中のタンパク質は、パスタの作製に使用される穀粉とパスタに添加される微粒子化変性ホエータンパク質に由来する。
【0025】
本明細書で使用する「総タンパク質含量」という用語は、本発明のパスタ製品に含まれるタンパク質の総量に関し、すなわち、非タンパク質窒素(NPN)を除いた、本発明のパスタに含まれる真のタンパク質に関する。本発明のパスタにおいて、総タンパク質含量は、1)微粒子化変性ホエータンパク質に由来するタンパク質、2)本発明のパスタの作製に使用される穀粉に由来するタンパク質、3)卵白粉末に由来するタンパク質、および4)その他の添加されうるタンパク質源を含む。
【0026】
本発明の別の一実施形態において、本発明のパスタは、乾物含量当たりの総タンパク質含量が少なくとも15重量%であり、たとえば、乾物含量当たりの総タンパク質含量が少なくとも18重量%であり、乾物含量当たりの総タンパク質含量が少なくとも20%であることがさらにより好ましい。
【0027】
本発明のさらに別の一実施形態において、本発明のパスタにおける乾物含量当たりの総タンパク質含量は、13~30重量%の範囲であり、たとえば18~27重量%である。
【0028】
ホエータンパク質:
本発明の一態様において、本発明のパスタは微粒子化変性ホエータンパク質を含む。ホエータンパク質は、ホエーから単離される球状タンパク質の混合物であり、ホエーは、チーズの製造時の副産物として生産される液体材料である。ホエータンパク質は、牛乳または凝乳の乳清中に含まれるタンパク質である。ホエータンパク質以外の乳清中タンパク質も、乳清タンパク質と呼ばれることがある。
【0029】
ホエー全体のタンパク質含量は約10~15重量%である。さらに、ホエー全体の乾物含量当たりのタンパク質含量は約75~85重量%であり、たとえば乾物含量当たりのタンパク質含量は78~82重量%である。ホエーは、タンパク質以外にラクトースを含み、すなわち、乾物含量当たりのラクトースの含量は約9重量%である。ホエータンパク質は、β-ラクトグロブリン(約55~65%)、α-ラクトアルブミン(約18~25%)、ウシ血清アルブミンおよび免疫グロブリンを含む。
【0030】
ホエータンパク質は、様々なホエー供給源に由来するものであってもよく、すなわちホエータンパク質組成物であってもよく、このホエータンパク質組成物は、たとえば、カゼインホエーであってもよく、甘性ホエーであってもよい。甘性ホエーは、β-ラクトグロブリンやα-ラクトアルブミンなどのタンパク質以外にも、カゼイノマクロペプチド(CMP)を含む。CMPは、カゼインホエーには含まれていない。本発明の好ましい一実施形態において、パスタ生地に添加されるホエータンパク質は、甘性ホエーに由来するものである。
【0031】
本明細書で述べる「甘性ホエー」は、レンネットタイプのチーズの製造過程において、凝乳した牛乳を漉した後に残る液体を指す。「甘性ホエー」は、チェダーチーズやスイスチーズなどのレンネットタイプのハードチーズの製造時に得られる。甘性ホエーのpHは、5.2~6.7の範囲となりうる。
【0032】
「カゼインホエー」(サワーホエーまたは酸ホエーと呼ばれることもある)という用語は、カゼイン/カゼイン塩の製造時に得られるホエーに関する。本発明の文脈において、カゼインホエーは酸ホエーと同じものではない。「酸ホエー」は、カッテージチーズやクォークなどの酸性タイプのチーズの製造時に得られるホエーに使用される用語である。酸ホエーのpHは、3.8~4.6の範囲となりうる。本発明の一実施形態において、使用されるホエータンパク質は酸ホエーではない。本発明のパスタ製品に酸ホエーを使用すると、パスタ製品の膨張およびゲル化が起こるため、余分な構造および機能性が付加されてしまう。
【0033】
本発明の一実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質は、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンおよびカゼイノマクロペプチド(CMP)の組み合わせを含む甘性ホエーから得られたホエータンパク質を変性および微粒子化することによって得られる。本発明によるホエータンパク質は、実質的に純粋なCMP製品ではない。たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質中のCMPの含量は、総タンパク質含量当たり20重量%未満であり、15重量%未満であることが好ましい。
【0034】
本発明において使用されるホエータンパク質は、ホエータンパク質濃縮物(WPC)であってもよく、ホエータンパク質単離物(WPI)であってもよく、これらは変性および微粒子化された製品である。ホエータンパク質濃縮物とホエータンパク質単離物は、製品の組成、特にタンパク質含量が異なる。ホエー単離物は、ホエー濃縮物よりも純粋であり、その他の非タンパク質成分を部分的に除去することによりホエータンパク質を「単離した」ものである。したがって、ホエータンパク質単離物は、タンパク質の割合がより高く、ラクトース、炭水化物、脂肪およびコレステロールを実質的に含まないほどに純粋なものであってもよい。
【0035】
本発明の文脈において、「ホエータンパク質濃縮物(WPC)」という用語は、ホエーから非タンパク質成分を十分に除去することによって得られたホエー液を乾燥させて、ホエータンパク質含量を25重量%以上とした乾燥製品に関する。ただし、ホエータンパク質濃縮物中のホエータンパク質の含量はこれよりも高くてもよく、たとえば、乾物含量当たりのホエータンパク質の含量は80重量%であってもよい。
【0036】
ホエータンパク質単離物は、通常、ラクトースおよびコレステロールをほとんど含んでいないと考えられ、乾物含量当たりのホエータンパク質の含量が少なくとも90重量%である。ホエータンパク質単離物中のホエータンパク質の含量は、たとえば92重量%以上であってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質は、甘性ホエーから得られた微粒子化変性ホエータンパク質濃縮物である。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明のパスタの作製に使用される微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の総ホエータンパク質含量は、乾燥重量換算で少なくとも60重量%であり、乾燥重量換算で少なくとも70重量%であることが好ましく、乾燥重量換算で少なくとも75重量%であることがさらにより好ましい。
【0039】
本発明の別の一実施形態において、本発明のパスタの作製に使用される微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の総ホエータンパク質含量は、乾物重量当たり60~95重量%の範囲であり、たとえば70~90重量%であり、乾物重量当たり72~87重量%であることが好ましく、乾物重量当たり75~86重量%の範囲であることがさらにより好ましい。
【0040】
本発明において使用されるホエータンパク質は、哺乳動物の乳汁から得られたホエータンパク質であることが好ましく、哺乳動物の乳汁としては、たとえば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、ラクダ、ラマ、ウマおよび/またはシカの乳汁などが挙げられる。本発明の好ましい実施形態のいくつかにおいて、ホエータンパク質はウシのホエータンパク質である。
【0041】
本発明の文脈において、「ホエー」という用語は、乳汁からカゼインを除去した後に残る液状組成物に関する。カゼインは、たとえば精密ろ過で除去してもよく、これによって、カゼインミセルを全くまたは実質的に含んでいないが、天然のホエータンパク質を含む透過液が得られる。この透過液は、アイディアルホエー(ideal whey)、乳漿または乳清と呼ばれることもある。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明のパスタは、カゼインおよび/またはカゼイン塩を実質的に含んでおらず、すなわち、本発明のパスタには、カゼインおよび/またはカゼイン塩が実質的に含まれていない。カゼインおよび/またはカゼイン塩が本発明のパスタに含まれている場合、カゼインおよび/またはカゼイン塩の含量は非常に少量であり、たとえば、本発明のパスタの総タンパク質含量当たり最大で5重量%である。本発明のパスタ中のカゼインおよび/またはカゼイン塩の含量は、総タンパク質含量当たり3重量%未満であることが好ましく、2重量%未満であることがさらにより好ましく、たとえば、本発明のパスタの総タンパク質含量当たり1重量%未満であることがさらにより好ましい。カゼインは、ホエータンパク質と同様に乳タンパク質ではあるが、本発明のパスタの作製において、微粒子化変性ホエータンパク質のような良好な特性を有していない。したがって、微粒子化変性ホエータンパク質は、ホエータンパク質とカゼインの複合体として添加すべきではない。特定の理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、パスタ生地中にカゼインが含まれていると、調理中にパスタが膨脹し、ゼラチン状になることを見出した。本発明のさらなる一実施形態において、本発明のパスタの作製に使用される微粒子化変性ホエータンパク質は、カゼインおよび/またはカゼイン塩を実質的に含んでおらず、たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質中の総タンパク質含量当たりのカゼインおよび/またはカゼイン塩の含量は2重量%以下であり、1重量%以下であることが好ましく、カゼインおよび/またはカゼイン塩を含んでいないことがさらにより好ましい。
【0043】
精密ろ過によりカゼインを除去する以外にも、κ-カゼインを切断してパラκ-カゼインとカゼイノマクロペプチド(CMP)というペプチドを生成するレンネットという酵素で乳汁組成物を変性させ、カゼインミセルを不安定化させてカゼインを沈殿させることにより、乳汁からカゼインを除去することもできる。レンネットにより沈殿したカゼインの周りの液体を甘性ホエーと呼ぶことが多く、甘性ホエーには、ホエータンパク質以外にもCMPが含まれ、これらの成分は乳汁中に通常見られるものである。
【0044】
また、酸沈殿法で乳汁からカゼインを除去してもよく、すなわち、乳汁のpHをpH4.6よりも低くすることによってカゼインを除去してもよい。カゼインは、このpHに等電点を持ち、このpHでカゼインミセルが崩壊して沈殿する。酸により沈殿したカゼインの周りの液体を酸ホエーまたはカゼインホエーと呼ぶことが多く、酸ホエーにはCMPは含まれていない。
【0045】
微粒子化変性ホエータンパク質:
本発明の一態様において、本発明のパスタは微粒子化変性ホエータンパク質を含む。変性と微粒子化は異なるものであり、ホエータンパク質を微粒子化せずに変性させることができるが、微粒子化されたホエータンパク質は常に変性されたものである。
【0046】
本発明の文脈において、「微粒子化ホエータンパク質」は、ホエータンパク質組成物を指し、たとえば、微粒子化工程に供してタンパク質を凝集させたホエータンパク質濃縮物を指す。微粒子化は、熱機械的処理によりタンパク質の凝集物を作製する方法である。たとえば、高熱処理と制御されたせん断力を組み合わせることによって微粒子化が行われる。
【0047】
本発明の文脈において、「変性ホエータンパク質」という用語は、少なくともある程度の量の変性ホエータンパク質を含む組成物、好ましくは、大量の変性ホエータンパク質を含む組成物に関する。変性ホエータンパク質組成物は、ある程度の量の未変性ホエータンパク質をさらに含んでいてもよいが、変性ホエータンパク質組成物中のタンパク質の変性度は、少なくとも50%であることが好ましい。たとえば、変性ホエータンパク質組成物中のタンパク質の変性度は、少なくとも60%であってもよい。変性ホエータンパク質組成物中のタンパク質の変性度は、たとえば少なくとも70%であってもよく、たとえば少なくとも75%であってもよい。あるいは、変性ホエータンパク質組成物中のタンパク質の変性度は、少なくとも80%であってもよい。
【0048】
さらに高い変性度が望ましい場合もあり、したがって、変性ホエータンパク質組成物中のタンパク質の変性度は、少なくとも85%であってもよい。たとえば、変性ホエータンパク質組成物中のタンパク質の変性度は、少なくとも90%であってもよい。変性ホエータンパク質組成物中のタンパク質の変性度は、たとえば少なくとも95%であってもよく、たとえば少なくとも97%であってもよい。あるいは、変性ホエータンパク質組成物中のタンパク質の変性度は、少なくとも99%であってもよい。
【0049】
変性度は、実施例1.7に概説する手順によって測定する。
【0050】
ホエータンパク質の変性と微粒子化は異なるものである。変性および微粒子化は、二段法を使用したタンパク質の変性に基づく複雑な機構により達成され、これは、Simmonsら(2007)およびSchokkerら(2000)によって報告されている。変性工程は吸熱反応であり、タンパク質のアンフォールディングと、タンパク質のダイマーと天然モノマー/非天然モノマーの間の平衡状態の変化とからなり、可逆性または不可逆性の分子内転位(たとえば水素結合の破壊)を伴う。
【0051】
微粒子化工程は、凝集化に相当し、主に分子間での-SH基とS-S結合の交換反応により達成され、これよりも寄与の程度は小さいものの、非共有結合性相互作用によっても達成される。凝集は、非天然のダイマーおよびオリゴマーの形成から始まり、これらの非天然のダイマーおよびオリゴマーが、モノマーおよび小さな凝集物を取り込むことに主によって、化学的環境および温度の関数として急速に成長することによって起こる。本発明において使用されるホエータンパク質の微粒子化および変性は、実施例2に開示されている。
【0052】
微粒子化ホエータンパク質(MWP)は、適切なpHにおいて加熱とせん断を同時に行うことを主な工程とする製法(欧州特許公開第0 250 623号明細書を参照されたい)を利用して、ホエータンパク質濃縮物から製造される。せん断は、機械的せん断によって達成してもよく、たとえば、表面かき取り式熱交換器またはホモジナイザーを使用して行ってもよく、高い線流速で溶液を流して乱流を発生させることによって行ってもよい。別法として、酸性pHでのエクストルージョンクッキング(Queguiner、Dumay、SaloucavalierおよびCheftel、1992)または動的高圧せん断(すなわちマイクロ流動化)(DissanayakeおよびVasiljevic、2009)などを使用してもよい。これらの方法によって、通常0.5~10μmの範囲の粒度体積分布を有するホエータンパク質凝集物が得られる(SpiegelおよびHuss、2002)。
【0053】
本発明のパスタにおいて使用される微粒子化変性ホエータンパク質は、たとえば、
a)水と、乾燥重量換算での総量が少なくとも60%(w/w)のタンパク質とを含む、pH5~8のホエータンパク質含有溶液を提供する工程、
b)前記溶液を70~160℃の温度範囲に加熱し、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質微粒子を形成するのに十分な時間にわたって該温度範囲で該溶液を維持する工程、
c)任意で、前記加熱処理した溶液を冷却する工程、
d)任意で、前記加熱処理した溶液を粉末に変換する工程、および
e)少なくとも工程b)において、前記溶液を機械的にせん断する工程
を含む方法で調製してもよい。
【0054】
したがって、本発明による微粒子化ホエータンパク質は、0.5~10μmの範囲の粒度分布を有する。
【0055】
本発明の一態様において、本発明のパスタは、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が少なくとも5重量%である。本発明の好ましい一実施形態において、本発明のパスタは、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が少なくとも7重量%であり、たとえば、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が少なくとも12重量%であり、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が少なくとも15重量%であることがさらにより好ましい。
【0056】
本発明の別の一実施形態において、本発明のパスタは、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が5~25重量%である。本発明の好ましい一実施形態において、本発明のパスタは、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が8~20重量%であり、たとえば10~18重量%であり、乾物含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が11~15重量%であることがさらにより好ましい。
【0057】
本発明の別の一実施形態において、本発明のパスタは、微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、パスタ全体の重量当たり少なくとも3重量%であり、たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、パスタ全体の重量当たり少なくとも6重量%であり、微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、パスタ全体の重量当たり少なくとも11重量%であることがさらにより好ましい。「パスタ全体」とは、各乾燥材料、水およびその他の液体を含む、パスタを構成するすべての材料を意味する。
【0058】
本発明の一実施形態において、本発明のパスタは、微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、パスタ全体の重量当たり3~20重量%の範囲であり、たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、パスタ全体の重量当たり少なくとも5~18重量%であり、微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、パスタ全体の重量当たり少なくとも7~15重量%であることがさらにより好ましい。
【0059】
本発明のさらなる一実施形態において、本発明のパスタは、総タンパク質含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、少なくとも35重量%であり、総タンパク質含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、少なくとも40重量%であることが好ましく、たとえば少なくとも45重量%であることが好ましく、総タンパク質含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、少なくとも50重量%であることが最も好ましい。
【0060】
本発明の一実施形態において、本発明のパスタは、総タンパク質含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、35~60重量%であり、総タンパク質含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、40~55重量%であることが好ましく、総タンパク質含量当たりの微粒子化変性ホエータンパク質の含量が、42~52重量%であることがさらにより好ましい。
【0061】
本発明による微粒子化変性ホエータンパク質を、「不溶性ホエータンパク質粒子」と呼ぶことがあり、本発明による微粒子化変性ホエータンパク質は、遠心分離により可溶性ホエータンパク質から分離可能な、微粒子化変性ホエータンパク質を含む粒子凝集物に関する。
【0062】
0.5~10μm(ミクロン)の粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子は、本発明において特に有益であり、好ましい実施形態のいくつかにおいて、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、この粒度範囲の不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも50%(w/w)含み、たとえば該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも55%(w/w)含む。
【0063】
粒度の大きい微粒子化変性ホエータンパク質は、生地のレオロジーおよび粘稠性に悪影響を及ぼす。生地の作製時に、グルテンネットワークが粒度の大きい微粒子化変性ホエータンパク質粒子の影響を受け、その結果、グルテンの強度が弱くなってグルテンネットワークが脆弱になり、すなわち、生地がそれほど伸びなくなる。
【0064】
微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の0.5~10μmの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量(総タンパク質含量当たりの%(w/w))は、実施例1.8(P1-10)に従って測定する。
【0065】
たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、0.5~10ミクロン(μm)の粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも60%(w/w)含んでいてもよい。0.5~10ミクロンの粒度範囲であれば、0.5000ミクロンもの小さい粒度から10.4999ミクロンもの大きい粒度(流体力学的直径)を有する粒子を効果的に包含することができる。「w/w」は重量パーセントを指す。
【0066】
微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも65%(w/w)含んでいてもよい。あるいは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、1~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも70%(w/w)含んでいてもよい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも75%(w/w)含んでいてもよく、たとえば少なくとも80%(w/w)含んでいてもよい。
【0067】
特定の用途では、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量がさらに高いと好ましい場合がある。したがって、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも85%(w/w)含んでいてもよい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも88%(w/w)含んでいてもよい。あるいは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも90%(w/w)含んでいてもよく、たとえば少なくとも95%(w/w)または約100%(w/w)含んでいてもよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり50~100%(w/w)含んでいてもよい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり60~95%(w/w)含んでいてもよい。あるいは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり65~90%(w/w)含んでいてもよい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり70~85%(w/w)含んでいてもよい。
【0069】
約1ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子は、本発明において特に有益であり、好ましい実施形態のいくつかにおいて、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、この粒度の不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも50%(w/w)含む。「約1ミクロンの粒度」であれば、0.5000ミクロンもの小さい粒度から1.4999ミクロンもの大きい粒度(流体力学的直径)を有する粒子を包含することができ、すなわち0.5~1.5ミクロンの粒子を包含することができる。微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の約1ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量(総タンパク質含量当たりの%(w/w))は、実施例1.8に従って測定する。
【0070】
本発明の一実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質組成物のうちの少なくとも55%、たとえば少なくとも60%は、0.5~1.5ミクロンの範囲の粒度分布を有しており、たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質組成物のうちの少なくとも70%は、0.5~1.5ミクロンの範囲の粒度分布を有しており、微粒子化変性ホエータンパク質材料のうちの少なくとも75%が、0.5~1.5ミクロンの範囲の粒度分布を有することが好ましい。
【0071】
特定の用途では、0.5~1.5ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量がさらに高いと好ましい場合がある。したがって、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、0.5~1.5ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも80%(w/w)含んでいてもよい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、0.5~1.5ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも85%(w/w)含んでいてもよい。あるいは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、0.5~1.5ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも90%(w/w)含んでいてもよく、たとえば少なくとも95%(w/w)または約100%(w/w)含んでいてもよい。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、0.5~1.5ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり50~100%(w/w)含んでいてもよい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、0.5~1.5ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり60~95%(w/w)含んでいてもよい。あるいは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、0.5~1.5ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり65~90%(w/w)含んでいてもよい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、0.5~1.5ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子を、該組成物中の総タンパク質含量当たり70~85%(w/w)含んでいてもよい。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の10ミクロンを超える粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量は、該組成物中の総タンパク質含量当たり10%(w/w)以下であり、5%(w/w)以下であることが好ましく、1%(w/w)以下であることがさらにより好ましい。
【0074】
また、0.5ミクロン未満の粒度の不溶性ホエータンパク質粒子は、パスタを膨張させる可能性があることから望ましくなく、したがって、0.5ミクロン未満の粒度の不溶性ホエータンパク質粒子の含量を最小限に抑えると好ましい場合がある。
【0075】
したがって、本発明の実施形態のいくつかにおいて、微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の0.5ミクロン未満の粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量は、該組成物中の総タンパク質含量当たり10%(w/w)以下であり、5%(w/w)以下であることが好ましく、1%(w/w)以下であることがさらにより好ましい。
【0076】
本発明の好ましい実施形態のいくつかにおいて、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、
0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも50%(w/w)であり、
10ミクロンを超える粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該組成物中の総タンパク質含量当たり10%(w/w)以下であり、かつ
0.5ミクロン未満の粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該組成物中の総タンパク質含量当たり10%(w/w)以下である。
【0077】
たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、
0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも50%(w/w)であり、
10ミクロンを超える粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該組成物中の総タンパク質含量当たり5%(w/w)以下であり、かつ
0.5ミクロン未満の粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該組成物中の総タンパク質含量当たり10%(w/w)以下である。
【0078】
あるいは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、
0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該組成物中の総タンパク質含量当たり少なくとも50%(w/w)であり、
10ミクロンを超える粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該組成物中の総タンパク質含量当たり1%(w/w)以下であり、かつ
0.5ミクロン未満の粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該組成物中の総タンパク質含量当たり10%(w/w)以下である。
【0079】
不溶性ホエータンパク質粒子の粒度分布は、実施例1.8に概説した手順により測定する。
【0080】
さらに好ましい一実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質組成物のうちの少なくとも55%は、0.7~1.0ミクロンの範囲の粒度分布を有しており、たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質組成物のうちの少なくとも60%は、0.7~1.0ミクロンの範囲の粒度分布を有しており、微粒子化変性ホエータンパク質材料のうちの少なくとも65%が、0.7~1.0ミクロンの範囲の粒度分布を有することが好ましい。
【0081】
微粒子化変性ホエータンパク質の粒度とは、流体力学的直径を指し、実施例1.8に記載の方法または当技術分野で公知の方法により測定してもよい。
【0082】
本発明の一実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質は、本発明のパスタ中に含まれるホエータンパク質の少なくとも50%を占めており、微粒子化変性ホエータンパク質が、本発明のパスタ中に含まれるホエータンパク質の少なくとも55%を占めることが好ましく、微粒子化変性ホエータンパク質が、本発明のパスタ中に含まれるホエータンパク質の少なくとも60%を占めることがさらにより好ましく、微粒子化変性ホエータンパク質が、本発明のパスタ中に含まれるホエータンパク質の少なくとも65%を占めることが最も好ましい。本発明のさらなる一実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質は、本発明のパスタ中に含まれるホエータンパク質の50~100%を占めており、たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質が、本発明のパスタ中に含まれるホエータンパク質の55~95%を占めており、微粒子化変性ホエータンパク質が、本発明のパスタ中に含まれるホエータンパク質の60~90%を占めることが好ましく、微粒子化変性ホエータンパク質が、本発明のパスタ中に含まれるホエータンパク質の65~80%を占めることがさらにより好ましい。
【0083】
変性かつ微粒子化されたホエータンパク質濃縮物(WPC)やホエータンパク質単離物(WPI)などのホエータンパク質組成物は、これらの組成物中に含まれるタンパク質が変性していることから、天然のα-ラクトアルブミンおよびβ-ラクトグロブリンの含量が低い。しかしながら、WPIおよびWPC中のカゼイノマクロペプチド(CMP)は変性しないことから、天然型のまま残る。変性工程においてCMPが変性しない理由として、CMPにはジスルフィド結合(SH基)が存在しないことから、熱処理中に変性することがないことが挙げられる。
【0084】
本発明の一実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質材料の変性度は50~100%の範囲である。本発明の好ましい一実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質材料の変性度は、60~98%の範囲である。
【0085】
本発明による微粒子化変性ホエータンパク質画分中の天然のβ-ラクトグロブリンおよびα-ラクトアルブミンの含量は、微粒子化も変性もしていない同じ種類のホエータンパク質画分における含量よりも低い。これに対して、CMPの含量は、微粒子化および変性を行った後でも変化していない。
【0086】
したがって、本発明の好ましい実施形態のいくつかにおいて、微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の天然の可溶性α-ラクトアルブミンの総量は、総タンパク質含量当たり5%(w/w)以下である。微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の天然の可溶性α-ラクトアルブミンの総量は、総タンパク質含量当たり4%(w/w)以下であることが好ましく、3%(w/w)以下であることが好ましい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の天然の可溶性α-ラクトアルブミンの総量は、2%(w/w)以下であることがさらにより好ましい。
【0087】
微粒子化変性ホエータンパク質は、通常、不溶性ホエータンパク質粒子の形態で存在する。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、熱処理中に変性しなかった微量の可溶性ホエータンパク質をさらに含んでいてもよい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、天然の可溶性β-ラクトグロブリンおよび/または天然の可溶性α-ラクトアルブミンを含んでいてもよい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、たとえば、該ホエータンパク質が甘性ホエーに由来する場合、CMPをさらに含む。
【0088】
本発明の文脈において、「不溶性ホエータンパク質粒子」は、遠心分離などにより可溶性ホエータンパク質から分離可能な、変性ホエータンパク質を含む粒子凝集物に関する。
【0089】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明のパスタにおいて使用されるホエータンパク質は、粒度が0.5~10ミクロンであり、変性度が50~100%である微粒子化変性ホエータンパク質粒子である。
【0090】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明による微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、
総タンパク質含量が、乾燥重量換算で少なくとも60%(w/w)であり、かつ
0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の総タンパク質含量当たり50~100%(w/w)の範囲である。
【0091】
本発明の別の好ましい一実施形態において、本発明による微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、
総タンパク質含量が、乾燥重量換算で少なくとも60%(w/w)であり、
0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の含量が、該微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の総タンパク質含量当たり50~100%(w/w)であり、かつ
変性度が50~100%である。
【0092】
微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、塩類およびミネラル類をさらに含んでもよく、塩類およびミネラル類は、通常、ホエーまたは乳汁由来製品に含まれている。食品中のミネラル類の含量は、通常、食品中の灰分含量として示される。
【0093】
灰分含量は、食品中に存在するミネラル類の総量の指標である。灰分は、酸化剤の存在下で加熱することによって水および有機物を取り除いた後に残る無機残渣であり、灰分含量が表示されている製品には灰の粒子そのものが含まれているわけではないことには留意されたい。灰分含量は、乾式灰化法で測定することが好ましい。
【0094】
本発明者らは、灰分含量を低減した微粒子化変性ホエータンパク質組成物を使用すると有利であることを見出した。本発明のいくつかの実施形態において、微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の総タンパク質含量:灰分含量の重量比は少なくとも15である。微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の総タンパク質含量:灰分含量の重量比は、少なくとも20であることが好ましい。
【0095】
たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の総タンパク質含量:灰分含量の重量比は15~60の範囲であってもよい。たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の総タンパク質含量:灰分含量の重量比は20~55の範囲であってもよい。あるいは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の総タンパク質含量:灰分含量の重量比は25~50の範囲であってもよく、たとえば、30~45の範囲であってもよい。
【0096】
灰分含量は実施例1.4に従って測定し、総タンパク質含量は実施例1.1に従って測定する。
【0097】
微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、塩類およびミネラル類に加えて、通常、脂肪、たとえば乳脂肪またはホエー脂肪をさらに含む。たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、乾燥重量換算で8%(w/w)以下の脂肪をさらに含んでいてもよい。
【0098】
微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、通常ラクトースまたはラクトースベースのオリゴ糖の形態の炭水化物をさらに含んでいてもよい。たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、乾燥重量換算で30%(w/w)以下のラクトースを含んでいてもよい。たとえば、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、乾燥重量換算で15%(w/w)以下のラクトースを含んでいてもよい。あるいは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、乾燥重量換算で10%(w/w)以下のラクトースを含んでいてもよい。
【0099】
本発明の好ましい実施形態のいくつかにおいて、微粒子化変性ホエータンパク質組成物中のラクトース含量はさらに低く、たとえば、乾燥重量換算で4%(w/w)以下である。微粒子化変性ホエータンパク質組成物中のラクトース含量は、乾燥重量換算で3%(w/w)以下であることが好ましい。微粒子化変性ホエータンパク質組成物中のラクトース含量は、乾燥重量換算で2%(w/w)以下であることがさらにより好ましく、たとえば1%(w/w)以下であることがさらにより好ましい。
【0100】
本発明者らは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物をパスタに添加すると、非粘着性および非膨張性のテクスチャーをパスタに付与することができ、かつ従来のパスタ製品と比較してパスタ中の水分量を増加させることができることから、パスタの作製において微粒子化変性ホエータンパク質組成物を使用すると有利であることを見出した。
【0101】
微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、粉末、好ましくは乾燥粉末としてパスタ生地に加えてもよい。本発明の文脈において、乾燥粉末とは6%(w/w)以下の水分を含む粉末を指す。
【0102】
あるいは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、懸濁液、好ましくは水性懸濁液としてパスタに加えてもよく、これは、微粒子化変性ホエータンパク質組成物の不溶性粒子が水中に懸濁されていることを意味する。本発明の文脈において、水性懸濁液は、少なくとも50%(w/w)の水を含み、少なくとも60%(w/w)の水、たとえば、少なくとも70%(w/w)の水を含むことが好ましい。
【0103】
微粒子化変性ホエータンパク質組成物の懸濁液のpHは、25℃の水90g中に変性ホエータンパク質組成物10gを分散させて測定した場合、通常6.4~7.0の範囲である。
【0104】
パスタの含水量:
本発明のパスタの含水量を、標準的なパスタよりも高くすることができる。これは、微粒子化ホエータンパク質が、より多くの水分を吸収して、より多くの水分を結合することができることによる。
【0105】
本発明の一実施形態において、本発明の生パスタの含水量は、20~40重量%の範囲であり、たとえば、20~35重量%の範囲である。
【0106】
乳化剤:
本発明の好ましい一実施形態において、本発明のパスタは、乳化剤を実質的に含んでいない。「乳化剤を実質的に含んでいない」とは、本発明のパスタの乾物含量当たりの乳化剤の含量が1重量%未満であり、たとえば、0.5%未満であることを意味する。本発明のパスタは、乳化剤を含んでいないことが好ましい。
【0107】
本発明の一態様において述べられた実施形態および特徴は、本発明のその他の態様にも適用できることに留意されたい。
【0108】
本願において引用されたすべての特許文献および非特許文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0109】
以下の実施例において本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例】
【0110】
実施例1:分析方法
実施例1.1:総タンパク質含量の測定
試料中の総タンパク質含量(真のタンパク質)は、以下の方法で測定する。
1)ISO 8968-1 IDF 020-1/ISO 8968-2 IDF 020-2「牛乳-窒素含量の測定-第1部/第2部:ケルダール法を使用した窒素含量の測定」に従って、試料中の全窒素量を測定する。
2)ISO 8968-4 IDF 020-4「牛乳-窒素含量の測定-第4部:非タンパク質窒素含量の測定」に従って試料中の非タンパク質窒素量を測定する。
3)以下の式より総タンパク質含量を算出する。
(m(全窒素量)-M(非タンパク質窒素量))×6.38
【0111】
実施例1.2:ホエータンパク質(可溶性カゼイノマクロペプチド(CMP)、α-ラクトアルブミンおよびβ-ラクトグロブリン)の測定
可溶性カゼイノマクロペプチド(CMP)、α-ラクトアルブミンおよびβ-ラクトグロブリンの含量は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)で分析した。Waters社製600E Multisolvent Delivery System、Waters社製700 Satellite Wisp InjectorおよびWaters社製H90 Programmable Multiwavelength Detector(Waters、米国マサチューセッツ州ミルフォード)を使用した。0.15M Na2SO4、0.09M KH2PO4および0.01M K2HPO4を含む溶出緩衝液を使用した。流速は0.8mL/分とし、温度は20℃とした。
【0112】
分析を行う24時間前に、リン酸ナトリウム緩衝液(0.02M)を使用して、最終的なタンパク質含量を0.1%(w/v)とした微粒子化変性ホエータンパク質組成物の懸濁液を調製した。さらに、α-ラクトアルブミン(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ国シュタインハイム)の標準溶液、β-ラクトグロブリン(Sigma-Aldrich Chemie GmbH)の標準溶液、およびカゼイノマクロペプチドの標準溶液を、それぞれ1mg/mLの濃度で調製した。注入前に、各溶液を攪拌し、濾過した(0.22ミクロン)。25μLの各試料を注入した。210nmおよび280nmで吸光度を記録した。すべての微粒子化変性ホエータンパク質組成物試料および標準液の総タンパク質含量を実施例1.1に従って測定した。
【0113】
試料中の天然のα-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンおよびカゼイノマクロペプチドの含量は、各標準タンパク質のピーク面積と各試料のピーク面積を比較することによって定量した。
【0114】
実施例1.3:含水量の測定
食品の含水量は、ISO 5537:2004(粉乳-水分量の測定(参照方法))に従って測定する。
【0115】
実施例1.4:灰分含量の測定
食品中の灰分含量は、NMKL 173:2005「灰分、食品における重量分析」に従って測定する。NMKLは「Nordisk Metodikkomite for Naringsmidler」の略語である。
【0116】
実施例1.5:ラクトースの総量の測定
ラクトースの総量は、ISO 5765-2:2002(IDF 79-2: 2002)「粉乳、アイスクリームミックスの乾燥品およびプロセスチーズ-ラクトース含量の測定-第2部:ラクトースのガラクトース部分を利用した酵素法」に従って測定する。
【0117】
実施例1.6:溶液の乾燥重量の測定
溶液の乾燥重量は、NMKL 110、第2版、2005(全固形分(水中)-牛乳および乳製品における重量分析)に従って測定してもよい。NMKLは「Nordisk Metodikkomite for Naeringsmidler」の略語である。
【0118】
溶液の含水量は、乾物の相対量(% w/w)を100%から差し引いて算出することができる。
【0119】
実施例1.7:変性度の測定
微粒子化変性ホエータンパク質組成物中のタンパク質の変性度は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)で分析した。Waters社製600E Multisolvent Delivery System、Waters社製700 Satellite Wisp InjectorおよびWaters社製H90 Programmable Multiwavelength Detector(Waters、米国マサチューセッツ州ミルフォード)を使用した。0.15M Na2SO4、0.09M KH2PO4および0.01M K2HPO4を含む溶出緩衝液を使用した。流速は0.8mL/分とし、温度は20℃とした。
【0120】
分析を行う24時間前に、リン酸ナトリウム緩衝液(0.02M)を使用して、最終的なタンパク質含量を0.1%(w/v)とした微粒子化変性ホエータンパク質組成物の懸濁液を調製した。さらに、α-ラクトアルブミン(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ国シュタインハイム)の標準溶液、β-ラクトグロブリン(Sigma-Aldrich Chemie GmbH)の標準溶液、およびカゼイノマクロペプチドの標準溶液を、それぞれ1mg/mLの濃度で調製した。注入前に、各溶液を攪拌し、濾過した(0.22ミクロン)。25μLの各試料を注入した。210nmおよび280nmで吸光度を記録した。すべての微粒子化変性ホエータンパク質組成物試料および標準液の総タンパク質含量を実施例1.3に従って測定した。
【0121】
天然ホエータンパク質の含量は、各標準タンパク質のピーク面積と各試料のピーク面積を比較することによって定量した。その後、試料中の総タンパク質含量および定量した天然ホエータンパク質の含量を考慮に入れて、微粒子化変性ホエータンパク質組成物中の変性ホエータンパク質の含量を算出した。さらに、以下の式より変性度を算出した。
(Wtotal protein-Wsoluble protein)/Wtotal protein×100%
(式中、Wtotal proteinはタンパク質の総重量であり、Wsoluble proteinは天然の可溶性タンパク質の重量である。)
【0122】
実施例1.8:不溶性粒子の定量
変性ホエータンパク質組成物に含まれる0.5~10ミクロンの粒度(0.5~10.49ミクロンの粒度範囲を効果的に包含する)の不溶性ホエータンパク質粒子の含量は、以下の手順により測定する。
1.試験試料の5%(w/w)(水中)懸濁液を調製する。
2.得られた懸濁液を緩やかに1時間振盪(攪拌)して再水和する。
3.100バールで懸濁液を均質化する。
4.懸濁液の一部(第1の部分)を15000×gで5分間遠心分離する。
5.得られた上清を回収し、総タンパク質含量(真のタンパク質)を分析する。この上清中の総タンパク質含量を「A」と呼ぶ。
6.懸濁液の(遠心分離していない)別の一部(第2の部分)を分析して、総タンパク質含量(真のタンパク質)を測定する。この懸濁液中の総タンパク質含量を「B」と呼ぶ。
7.懸濁液のさらに別の一部(第3の部分)を使用して、静的光散乱法による粒度分布分析を行い、粒度が10ミクロンを超える粒子の体積パーセントを測定する。このパーセンテージを「C」を呼ぶ。
8.以下の式より、0.5~10ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の量(総タンパク質含量に対する相対量%(w/w))を求める。
P1-10=(((B-A)/B)×100%)-C
9.工程4~5を繰り返す。ただし、15000×gではなく、3000×gで5分間遠心分離する(粒度が最も大きい粒子のみを除去する)。この工程9で得られた上清中の総タンパク質含量を「D」とする。
10.以下の式より、0.5~1.5ミクロンの粒度を有する不溶性ホエータンパク質粒子の量(総タンパク質含量に対する相対量%(w/w))を求める。
P1=((D-A)/B)×100%
【0123】
上記の手順は、SIGMA Laborzentrifugen GmbH社製の冷却遠心機3-30Kを使用して約15℃で行うが、5%懸濁液を85mLの試験管(注文番号:15076)に入れることから、試験管と試料を合わせた総重量は96gとなる。
【0124】
粒度分布分析は、マルバーン社製のMastersizer(Micro Particle Sizer、Malvern Instruments Ltd.、英国ウスターシャー)を使用して行う。
パラメータ:粒子屈折率1.52(実数部)、0.1(虚数部)および分散屈折率1.33を使用した。
データ分析:データは、ミー散乱モデル(残差<2%)を使用してフィッティングした。
【0125】
実施例1.9:水分活性の測定
水分活性はaw値で測定する。水分活性とは、試料中の自由水の量を測定した数値である。aw値は、0(完全に乾燥した状態)~1(凝結湿度)の範囲である。aw値=0.5は、試料中の水分の半量が結合していることを示す。
【0126】
水分活性は、「ノバシーナLabSwift-aW」を使用して室温で測定する。蓋をせずにディッシュ上に試料を載せ、「LabSwift-aW」に挿入し、aw値を読み取ることができる。
【0127】
実施例2:本発明による微粒子化変性ホエータンパク質組成物
微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、以下の方法を使用して作製した。
【0128】
溶液:
甘性ホエータンパク質濃縮物を水に溶解して乾物含量を16%とし、pHを6.4に調整して、甘性ホエータンパク質濃縮物を含む水溶液を調製した。
【0129】
変性および微粒子化:
APV/SPX社製(デンマーク)の表面かき取り式熱交換器(SSHE)(6+6)であるAPVせん断造粒装置を使用して変性および微粒子化を行った。
【0130】
前記水溶液を収容セルに通過させた後(約60秒)、SSHEにおいて冷却し、平板熱交換器(PHE)で約10℃に加熱した。
【0131】
熱処理(約80℃で約10分間)中にタンパク質が変性し、さらにせん断によってホエータンパク質が微粒子化されて、0.5~10ミクロンの粒度の粒子が形成された。
【0132】
この食品懸濁液をポンプで吸引して貯蔵タンクに送り、そのうちの一定量をスプレー乾燥により乾燥して粉末を得た。乾燥させた微粒子化変性ホエータンパク質濃縮物粉末は、約78~82%のタンパク質を含む。
【0133】
次に、前記ホエータンパク質水溶液と、熱変性および微粒子化により得られた懸濁液を、天然物乾物含量、総タンパク質含量、総脂肪含量、総ラクトース含量、灰分含量、天然のβ-ラクトグロブリンの含量、天然のα-ラクトアルブミンの含量、天然のCMPの含量、微粒子化度、粒度およびpHについて評価した。
【0134】
甘性ホエータンパク質濃縮物溶液および微粒子化変性ホエータンパク質の懸濁液の特性評価の結果を表1に示す。表に示すように、甘性ホエー溶液中の天然のβ-ラクトグロブリンおよびα-ラクトアルブミンの大部分は変性したが(β-ラクトグロブリンの約88%およびα-ラクトアルブミンの約69%)、甘性ホエー溶液と食品懸濁液でCMPの量はほぼ変化していない。
【0135】
【0136】
食品懸濁液中の非タンパク質窒素含量は0.15%(w/w)であった。
【0137】
スプレー乾燥した微粒子化変性ホエータンパク質組成物は、固形分の乾物含量が約95%であり、微粒子化変性ホエータンパク質の含量が80%である。
【0138】
実施例3:パスタの作製
いくつかの種類の生パスタを作製し、通常の調理および茹ですぎた場合の調理を行った。テクスチャーを評価し、比較した。比較結果を実施例4の下方の表2に示す。
【0139】
手順
ドウフックを備えたホバート社製のN-50に乾燥材料をすべて入れて混合する。
【0140】
混合した乾燥材料に水をゆっくり加え、生地を形成させる。均質になるまで生地を混合する。
【0141】
生地を混合した後、手動のパスタマシン(Pasta Queen、モデル:150mm DELUXE)に生地を入れて薄く伸ばし、5℃で24時間休ませる。パスタの厚さ:「1段階目の印」から「5段階目の印」まで薄く伸ばした(約1~2mm)。次に、「タリアテッレ用マシン」にパスタを入れて薄く伸ばし、塩を加えていない水道水で2分間茹でた。
【0142】
パスタは2種類の小麦粉を使用して作製した。通常、乾燥重量で9~11%のグルテンを含む改良粉と、デュラム小麦のセモリナ粉を使用した。いずれの小麦粉もHavnemoellerne社(デンマーク)から入手した。卵白粉末は、Sanovo Foods A/S社(デンマーク)から入手した。
【0143】
各材料は、得られた生地中の重量パーセント(すなわち含水重量)として示した。各パスタにつき、800gの生地を作製した。
【0144】
3.1.微粒子化変性ホエータンパク質組成物を含む生パスタ
【表2】
【0145】
3.2 WPIおよびカゼインカルシウムを含む生パスタ
Miprodan(登録商標)40(Arla Foods)はカゼインカルシウムである。WPI Lacprodan(登録商標)DI-9250は、Arla Food Ingredients社から入手したホエータンパク質単離物である。
【表3】
【0146】
後掲の表2のデータに示すように、カゼインミセル単離物(MCI)およびカゼイン塩を使用すると、パスタの味およびテクスチャーに悪影響を与え、得られた食品が異味となり、食品の酸化も見られた。さらに、カゼイン塩による水の吸収が高すぎることから、得られたパスタ製品が過度に膨張した。
【0147】
3.3 小麦グルテン含量の高い生パスタ
グルテン源として、小麦(KRONER STARKE社製のVital wheat gluten)を使用した。
【表4】
【0148】
3.4 微粒子化変性ホエータンパク質組成物を含み、繊維を添加した生パスタ
【表5】
【0149】
オート麦繊維として、LCH A/S社(デンマーク国レズオウアEgegaardsvej 41、DK-2610)製のVitacel Oat fibre HF 501-30を添加した。
【0150】
作製した生パスタ生地のテクスチャーは許容可能なものであった。
【0151】
3.5 微粒子化変性ホエータンパク質組成物を含み、カルシウムを添加した生パスタ
【表6】
【0152】
カルシウムとして、Arla Foods Ingredients社製のCapolac(登録商標)MM-0525BGを添加した。
【0153】
【0154】
実施例4 パスタの調理試験
実施例3で作製した生パスタを調理試験に供した。生パスタを沸騰水中で2分間茹で、そのうちのいくつかはさらに8分間茹でた。テクスチャーは官能評価パネルによって評価し、結果を以下の表2に示した。
【0155】
【0156】
実施例5:他のタンパク質源と比較した微粒子化変性ホエータンパク質を含むパスタ
小麦粉および卵白粉末中のタンパク質以外にはタンパク質を加えていない参照試料と、卵白粉末と様々な種類のタンパク質を加えた6種類の試料の、合計7種類のパスタ生地試料を作製した。
参照試料:実施例3.6に記載の材料を含むパスタ。
試料1:微粒子化変性ホエータンパク質を加えた実施例3.1に記載のパスタ。
試料2:微粒子化変性ホエータンパク質の代わりに大豆タンパク質単離物(SUPRO XT 219 IP)を加えたこと以外は、実施例3.1と同様に作製したパスタ。
試料3:微粒子化変性ホエータンパク質の代わりにcGMPを加えたこと以外は、実施例3.1と同様に作製したパスタ。cGMP(カゼイングリコマクロペプチド)とCMP(カゼイノマクロペプチド)は、同じ化合物を指し、本発明の文脈において、これらの用語は区別なく使用される。使用したcGMPはLacprodan cGMP-20である。
試料4:微粒子化変性ホエータンパク質の代わりに、微粒子化も変性もしていない標準的なホエータンパク質材料(Lacprodan(登録商標)80)を加えたこと以外は、実施例3.1と同様に作製したパスタ。
試料5:微粒子化変性ホエータンパク質の代わりに大豆タンパク質濃縮物(PROCON 2000 IP)を加えたこと以外は、実施例3.1と同様に作製したパスタ。
試料6:微粒子化変性ホエータンパク質の代わりに大豆タンパク質単離物(ALPHA 5812 IP)を加えたこと以外は、実施例3.1と同様に作製したパスタ。
【0157】
試料1~6および参照試料中の固形分を以下の表3に示す。
【表9】
【0158】
5.1 様々な試料から作製した生地を撮影した写真の評価
図1において、a)~h)は、6種類の試料および参照試料から作製したパスタ生地を示す。
【0159】
図1a)は、参照試料を使用したパスタ生地を示す。
図1b)は、試料1を使用したパスタ生地を示す。
図1c)は、試料2を使用したパスタ生地を示す。
図1d)は、試料3を使用したパスタ生地を示す。
図1e)は、試料4を使用したパスタ生地を示す。
図1f)は、試料5を使用したパスタ生地を示す。
図1g)は、試料6を使用したパスタ生地を示す。
【0160】
微粒子化していないホエータンパク質を使用して作製した試料4は、かなり液状であり、帯状パスタの作製に適した生地を得ることはできなかったことが示されている。さらに、大豆濃縮物を使用した試料5および大豆単離物を使用した試料6では、ぼろぼろに崩れた生地となり、引き伸ばして帯状パスタを作製することが可能な生地を得ることはできなかった。cGMPを使用して作製したパスタ生地(試料3)は、非常に粘つき、ぽろぽろと崩れるテクスチャーであり、帯状パスタの作製に適していなかった。一方、
図1b)に示すように、微粒子化変性ホエータンパク質を使用して作製したパスタ生地(試料1)は、帯状パスタへと加工可能な強固なパスタ生地となった。また、大豆タンパク質単離物としてSUPRO XT 219 IPを使用して作製したパスタ生地も、帯状パスタの作製に適した生地となった。さらに、参照試料も帯状パスタの作製に適した生地となった。
【0161】
参照試料、微粒子化変性ホエーを使用して作製したパスタ(試料1)および大豆タンパク質としてSUPRO XTを使用して作製したパスタ(試料2)についてテクスチャー分析および官能試験を行った。
【0162】
5.2 様々な時点において未調理パスタを撮影した写真の評価
まず、参照試料から作製した生地、試料1から作製した生地および試料2から作製した生地からそれぞれ帯状パスタを作製し、その写真を撮影した。未調理の帯状パスタを撮影した写真を
図2a)~c)に示す。
【0163】
図2a)は、参照試料を使用したパスタ生地から作製した未調理の帯状パスタの写真を示す。参照試料のパスタは粘つきが見られ、コンパクトに小さくなっていることが写真から分かる。皿上でパスタの形が崩れている。
【0164】
図2b)は、微粒子化変性ホエータンパク質を使用した試料1の生パスタの写真を示す。このパスタはさらに白味が強く、表面は滑らかである。また、帯状パスタは、それほど粘つかず、形が崩れることもなく、束の密度もそれほど高くない。
【0165】
図2c)は、試料2を使用した未調理の帯状パスタの写真を示す。このパスタは、表面が滑らかでより褐色味を帯びており、束の密度が、試料1のパスタ(
図2b))よりも若干高いが、
図2a)の参照試料のパスタよりも低い。
【0166】
5.3 様々な時点の調理済みパスタの硬さ
試料1から作製したパスタ、試料2から作製したパスタおよび参照試料から作製したパスタについてテクスチャー分析(硬さ)を実施し、その結果を
図3に示した。
【0167】
図3の1番は、試料2のレシピに従って作製したパスタ(SUPRO大豆タンパク質を使用して作製したパスタ)であり、
図3の2番は、試料1のレシピに従って作製したパスタ(微粒子化ホエータンパク質を使用して作製したパスタ)である。
【0168】
未調理パスタ、および1分間、3分間、5分間または10分間調理したパスタの硬さをテクスチャー分析により測定した。
【0169】
調理済みパスタは、塩6.5gを加えた蒸留水1.5L中で生パスタ100gを茹でることによって作製した。1分間、3分間、5分間または10分間茹でた後、調理済みパスタをお湯から取り出し、パスタを振って湯切りし、テクスチャーアナライザーで直ちに測定した。各試料に対して繰り返し性(%)を求め、実験を2回繰り返した。データは、Tukeyの一対比較を使用して分析した。
【0170】
図3は、未調理パスタおよび調理済みパスタ(1分間、3分間、5分間および10分間)の硬さを示す。
図3から明らかなように、微粒子化変性ホエータンパク質を加えた未調理パスタ生地(2番)は、ホエータンパク質を添加せずに全卵を加えて作製した参照試料のパスタよりも有意に硬く、さらにSUPRO大豆タンパク質を加えたパスタよりも有意に硬い。さらに、3~5分間調理後、3種類の試料はすべて同様の硬さを示したことが
図3から分かる。したがって、微粒子化変性ホエータンパク質組成物をパスタに添加しても、茹ですぎに関するパスタの品質に対して悪影響は認められない。
【0171】
5.4 調理時間に伴うパスタの膨張の測定
試料1(微粒子化変性ホエータンパク質を使用して作製したパスタ)、試料2(SUPRO XT 219大豆タンパク質を使用して作製したパスタ)および参照試料のパスタ(全卵を使用して作製したパスタ)について、パスタの膨張を測定した。
【0172】
図4の1番は、試料2のレシピに従って作製したパスタ(SUPRO大豆タンパク質を使用して作製したパスタ)であり、
図4の2番は、試料1のレシピに従って作製したパスタ(微粒子化変性ホエータンパク質を使用して作製したパスタ)である。
【0173】
調理済みパスタは、塩6.5gを加えた蒸留水1.5L中で生パスタ50gを茹でることによって作製した。1分間または10分間茹でた後、調理済みパスタをお湯から取り出し、パスタを振って湯切りし、ざるに入れて2分間放置して余分な水気を切った。その後、パスタの重量を測定した。パスタの重量の増加(膨張率(%))を算出した。各試料の測定を3回繰り返し、実験を2回繰り返した。
【0174】
図4a)は、1分間および10分間それぞれ調理した参照試料、試料1および試料2の実験1における膨張率である。
【0175】
【0176】
図4a)および
図4b)から、調理時間を延長すると膨張が増加することが認められる。さらに、3種類の試料で測定された膨潤率はほぼ同じであることが認められる。この結果から、微粒子化変性ホエータンパク質をパスタに添加しても膨張に対して悪影響は認められないことが示された。
【0177】
5.5 乾物量分析
102±2℃で温度を一定に保った乾燥炉に既知量のパスタ試料を入れ、重量が一定になるまで乾燥させて水分を完全に蒸発させて、試料1、試料2および参照試料中の乾物含量を測定した。
【0178】
試料1、試料2および参照試料中の乾物含量を以下の表4に示す。
【表10】
【0179】
表に示すように、参照試料のパスタ中の乾物含量は、SUPRO大豆タンパク質を使用して作製したパスタおよび微粒子化変性ホエータンパク質を使用して作製したパスタよりも高い。したがって、微粒子化変性ホエータンパク質を使用して作製したパスタは、参照試料のパスタよりも水分を多く含むと考えられる。
【0180】
実施例6:パスタのテクスチャーに対する含水量増加の影響の調査
以下のレシピで7種類のパスタ生地試料を作製した。
・試料i)実施例3.6による参照試料生地
・試料ii)実施例3.1によるパスタ生地
・試料iii)微粒子化変性ホエータンパク質の代わりに大豆タンパク質単離物(SUPRO XT 219 IP)を加えたこと以外は、実施例3.1と同様に作製したパスタ生地。
・試料iv)水をさらに1.5%加えたこと以外は実施例3.1と同様に作製したパスタ生地。
・試料v)水をさらに2.0%加えたこと以外は実施例3.1と同様に作製したパスタ生地。
・試料vi)水をさらに2.5%加えたこと以外は実施例3.1と同様に作製したパスタ生地。
・試料vii)水をさらに3.0%加えたこと以外は実施例3.1と同様に作製したパスタ生地。
【0181】
各試料のテクスチャー分析および官能試験を行った。
【0182】
6.1 生地を撮影した写真の評価
図5a)~g)は、試料i)~vii)のレシピに従って作製したパスタ生地の写真を示す。水をさらに加えたレシピは、引き伸ばすことが可能なパスタ生地への加工に適していることが示されている。
【0183】
6.2 未調理の帯状パスタを撮影した写真の評価
参照試料生地(試料i))から作製した帯状パスタおよび試料ii)~vii)のレシピに従って作製した生地から作製した帯状パスタの写真を撮影した。未調理の帯状パスタを撮影した写真を
図6a)~g)に示す。
【0184】
図6a)は、実施例3.6に示したレシピに従って作製した参照試料のパスタ(試料i))を示す。この未調理パスタは非常に粘つき、束の密度も高く、コンパクトに小さくなっている。また、この未調理パスタは、皿上で形が崩れている。
【0185】
図6b)は、実施例3.1に従って微粒子化変性ホエータンパク質を使用して作製した未調理パスタ(試料ii))を示す。このパスタは白味が強く、乾燥して粘つかず、表面は滑らかである。
【0186】
図6c)は、微粒子化ホエータンパク質の代わりに大豆タンパク質を使用して作製した試料iii)の未調理パスタを示す。このパスタは、試料i)のレシピに従って作製した参照試料のパスタと比較して、表面が滑らかでより褐色味を帯び、粘つきが少ない。
【0187】
図6d)は、試料iv)のレシピに従って作製した未調理パスタ、すなわち、水をさらに1.5%加えたこと以外は試料ii)と同様にして作製した未調理パスタを示す。試料iv)の未調理パスタは、試料ii)(
図5b))よりも滑らかな生地である。さらに、この生地は粘つきがなく、形崩れもない。
【0188】
図6e)は、試料v)のレシピに従って作製した未調理パスタ、すなわち、水をさらに2.0%加えたこと以外は試料ii)と同様にして作製した未調理パスタを示す。この生地も粘つきがなく、皿上で形崩れしていないが、生地iv)よりも滑らかである。
【0189】
図6f)は、試料vi)のレシピに従って作製した未調理パスタ、すなわち、水をさらに2.5%加えたこと以外は試料ii)と同様にして作製した未調理パスタを示す。この生地も粘つきがなく、皿上で形崩れしていないが、生地v)よりも滑らかである。
【0190】
図6g)は、試料vii)のレシピに従って作製した未調理パスタ、すなわち、水をさらに3.0%加えたこと以外は試料ii)と同様にして作製した未調理パスタを示す。加える水の量を多くすればするほど、粘つかず、皿上で形崩れすることもなく、生地がより滑らかとなることが示された。生地の取り扱いやすさについても調べたところ、すべての試料のうち、試料vii)が最も良好で最も滑らかであることが分かった。
【0191】
6.3 乾物量分析
102±2℃で温度を一定に保った乾燥炉に既知量のパスタ試料を入れ、重量が一定になるまで乾燥することにより水分を完全に蒸発させて、試料i)~vii)から作製した各パスタ生地中の乾物含量を測定した。
【0192】
試料i)~vii)のレシピに従って作製した生地の乾物含量を表5に示す。
【表11】
【0193】
表に示すように、参照試料のパスタ中の乾物含量は、その他のパスタ生地の乾物含量のいずれよりも高い。予想した通り、含水量が増えると乾物含量は減少する。
【0194】
6.4 生パスタ生地および調理済みパスタの硬さ
各パスタについてテクスチャー分析(硬さ)を実施し、その結果を
図7に示した。生パスタ生地、および2分間または8分間調理したパスタ生地について、AACC内標準法16-50「AACCスパゲッティの硬さ pta3」を使用したテクスチャー分析により環境温度で硬さを測定した。また、作製したパスタ生地を食品用ラップでくるみ、冷蔵庫で2~4時間寝かせ、その同日に硬さを測定した。測定の約1時間前に、室温において生地の温度を測定した。
【0195】
調理済みパスタは、塩6.5gを加えた蒸留水1.5L中で生パスタ100gを調理することによって調製した。2分間または8分間茹でた後、調理済みパスタをお湯から取り出し、パスタを振って湯切りし、テクスチャーアナライザーで直ちに測定した。各パスタ試料につき、最低でも5回測定を繰り返した。
【0196】
データは、Tukeyの一対比較を使用して分析した。
【0197】
図7において、参照試料は、試料i)の参照試料を示し、1番は、SUPRO大豆タンパク質を使用した試料iii)を示す。2番は、微粒子化ホエータンパク質を使用した試料ii)を示し、3番は、水をさらに2%加えた試料v)を示し、4番は、水をさらに3%加えた試料vii)を示す。
【0198】
未調理パスタ生地の硬さを
図7に示す(参照試料、SUPRO大豆タンパク質を使用した試料、微粒子化ホエータンパク質を使用した試料、水をさらに2.0%加えた試料、および水をさらに3.0%加えた試料)。
図7から明らかなように、微粒子化変性ホエータンパク質を加えたパスタ生地は、ホエータンパク質を添加せずに卵白粉末を加えて作製した参照試料のパスタよりも有意に硬く、さらにSUPRO大豆タンパク質を加えたパスタよりも有意に硬い。さらに、2分間および8分間調理後のパスタも
図7に示す。水をさらに2%加えた生地では、参照試料よりも含水量が7%も多かったものの、参照試料のパスタ、微粒子化変性ホエータンパク質を使用したパスタ、および水をさらに2%加えたパスタの硬さは同程度である。したがって、微粒子化変性ホエータンパク質を使用して作製したパスタは、品質(硬さ)を損なうことなく、より多くの水を結合することができる。
【0199】
6.5 様々な量の水を加えた調理済みパスタを撮影した写真の評価
塩6.5gを加えた蒸留水1.5L中で帯状パスタ80gを2分間調理し、パスタの水気を切り、深鍋に入れたまま10分間放置した後、深鍋から移した。
【0200】
以下の生地から作製した帯状パスタの写真を撮影した。
・試料i)のレシピに従って作製した生地(参照試料のパスタ)
・試料ii)の生地(微粒子化変性ホエータンパク質を使用したパスタ)
・試料iii)の生地(SUPRO大豆タンパク質を使用したパスタ)
・試料v)の生地(微粒子化変性ホエータンパク質を使用し、水をさらに2%加えたパスタ)
・試料vii)の生地(微粒子化変性ホエータンパク質を使用し、水をさらに3%加えたパスタ)
【0201】
調理済みの帯状パスタを撮影した写真を
図8a)~e)に示す。
【0202】
図8a)は、実施例3.6に示したレシピに従って作製し、調理した参照試料のパスタ(試料i))を示す。この調理済みパスタは、非常にコンパクトに小さくなり、束の密度も高い。
【0203】
図8b)は、実施例3.1に従って微粒子化ホエータンパク質を使用して作製し、調理したパスタ(試料ii))を示す。このパスタは、参照試料と量/重量が同じであるにもかかわらず、かさが倍になっている。また、このパスタは、参照試料ほどには粘つかず、コンパクトにもなっていない。
【0204】
図8c)は、微粒子化ホエータンパク質の代わりに大豆タンパク質を使用して作製した試料iii)の調理済みパスタを示す。このパスタは、参照試料(試料i))および試料ii)よりも褐色味が強く、束が若干緩んでいる。また、このパスタは深鍋から移した際の形状が維持されていない。
【0205】
図8d)は、試料v)のレシピに従って作製した調理済みパスタ、すなわち、水をさらに2.0%加えたこと以外は試料ii)と同様にして作製した調理済みパスタを示す。水をさらに2%加えたパスタは、食欲を刺激する外観であり、束の密度も高くない。
【0206】
図8e)は、試料vii)のレシピに従って作製した調理済みパスタ、すなわち、水をさらに3.0%加えたこと以外は試料ii)と同様にして作製した調理済みパスタを示す。このパスタは、試料ii)を使用して作製した調理済みパスタ(
図8b))よりも若干コンパクトであるが、
図8a)の参照試料(試料i))および試料iii)(大豆タンパク質を使用したパスタ)よりもコンパクトではない。
【0207】
したがって、
図8に示した写真から、微粒子化ホエータンパク質を使用し、水をさらに2%加えたパスタが、最も最適なパスタであると見られる。
【0208】
実施例7:微粒子化変性ホエータンパク質を加えたパスタとSUPRA大豆タンパク質を加えたパスタの官能試験による比較
実施例3.1に従って微粒子化変性ホエータンパク質を使用して作製したパスタと、SUPRO大豆タンパク質を加えて作製したパスタを比較するため、官能試験を行った。
【0209】
実施例3.1の調理済みパスタ(実施例5の試料1)25gと、SUPRO大豆タンパク質を使用した調理済みパスタ(実施例5の試料2)25gを、黒色のプラスチック製トレーに載せ、9人からなる試験パネルに提示した。評価日の前日に試験パネルを訓練し、試験は盲検法で行った。各試験官に対して各試料を2回提示した。データは、Tukeyの一対比較を使用して分析した(Minitab17)。
【0210】
官能特性は1~10段階で評価した。低い値の場合に「1」点とし、高い値の場合に「10」点とした。
【0211】
表面粗さ:
パスタの表面および縁部分を評価する。パスタに凹凸がある場合に1点と採点し、パスタが滑らかな場合に10点と採点する。表面粗さは目視で評価する。
【0212】
コンパクトさ:
トレーに対するパスタ試料の収まり具合を評価する。パスタがコンパクトに小さくまとまった場合に1点と採点し、パスタが軽く、ふわふわした状態であった場合に10点と採点した。コンパクトさは目視で評価する。
【0213】
粘着性:
試験官に親指と人差し指でパスタをつまんでもらい、指を離したときの、指へのパスタの粘つきの程度を評価する。粘着性は指を使用して評価する。
【0214】
弾力:
試験官に1本のパスタを指でつまんでもらい、両端を軽く引っ張ってもらう。弾力を評価する。弾力は指を使用して評価する。
【0215】
噛み応え:
試験官に試料の一部を5回噛んでもらい、口の中でパスタがどのように噛み砕かれていくのかを評価する。
【0216】
異臭:
パスタに何らかの異臭が感知されるか否かを試験官により評価する。異臭は「あり」または「なし」で評価した。
【0217】
匂い:
パスタの匂いの有無を試験官により評価した。匂いは「あり」または「なし」で評価した。さらに、短いフレーズで匂いを説明してもらった。
【0218】
官能試験の結果を
図9A)および
図9B)に示す。A)は、2分間調理した3種類のパスタの官能試験の結果を示し、B)は、8分間調理した3種類のパスタの官能試験の結果を示す。1番は、試料iii)のレシピに従ってSUPRO大豆タンパク質を使用して作製したパスタを示し、2番は、実施例3.1による試料ii)のレシピに従って微粒子化ホエータンパク質を使用して作製したパスタを示す。
【0219】
図9A)を参照すると、微粒子化変性ホエータンパク質を加え2分間調理したパスタは、コンパクトさ、粘着性および噛み応えの点で参照試料のパスタと有意に異なっていることが認められる。一方、これらのパラメータにおいて、微粒子化変性ホエータンパク質を加えたパスタとSUPRO大豆タンパク質を加えたパスタとの間で有意差はないが、微粒子化変性ホエータンパク質を加えたパスタは、弾力および表面粗さの点でSUPRO大豆タンパク質を加えたパスタとは異なり、微粒子化変性ホエータンパク質を加えたパスタの方が、弾力が低く、表面はより滑らかである。
【0220】
8分間調理後では、微粒子化変性ホエータンパク質を加えたパスタは、弾力以外のすべての特性において、参照試料のパスタとは有意に異なっていた。さらに、微粒子化変性ホエータンパク質を加え8分間調理したパスタは、コンパクトさおよび噛み応え以外のすべての特性において、SUPRA大豆タンパク質を加えたパスタと異なっている。
【0221】
結論として、微粒子化変性ホエータンパク質を加えたパスタは、SUPRO大豆タンパク質を加えたパスタおよび参照試料のパスタよりも非常に良好な官能試験結果を示した。
【0222】
実施例8:粘着性試験
調理後のパスタを10分間または30分間保存し、粘着性の測定を繰り返した。これは、消費者の実際の体験を模倣したものである。
【0223】
塩6.5gを加えた蒸留水1.5L中で生パスタ100gを調理した。2分間、8分間または12分間茹でた後、調理済みパスタをお湯から取り出し、パスタを振って湯切りし、10分間または30分間経過後にテクスチャーアナライザーで測定した。各パスタ生地につき最低でも5回測定を繰り返し、実験を2回行った。粘着性は、5kgのロードセルを備え、1mmの厚さの平らなパースペックス製ナイフブレード(A/LKB-F)を装着したテクスチャーアナライザーTA XTPlusを使用して環境温度で測定した。データは、Tukeyの一対比較を使用して分析した(Minitab17)。
【0224】
以下のパスタ生地の粘着性試験を行った。
参照試料:実施例3.6による試料i)のレシピに従って作製した参照試料のパスタ
1番:SUPRO大豆タンパク質を加えたパスタ(実施例3.2による試料iii))
2番:微粒子化変性ホエータンパク質を使用したパスタ(実施例3.1による試料ii))
3番:水をさらに2.0%加えたこと以外は実施例3.1と同様に作製したパスタ(試料v)
【0225】
【0226】
図10A)は、2分間調理後に10分間または30分間静置したパスタの粘着性を示す。この図から、10分間静置後の粘着性において、参照試料とその他のパスタ生地の間で差が認められ、水をさらに添加しなかった試料と比較して、微粒子化変性ホエータンパク質を使用した生地に水をさらに加えた試料において粘着性が低下していることが分かる。30分間静置後では、参照試料のパスタおよび大豆タンパク質を使用したパスタと、微粒子化変性ホエータンパク質を加えたパスタ生地との間で有意差が見られる。さらに、この図から、水をさらに添加すると粘着性が低下することが分かる。
【0227】
図10Bでは、8分間調理後に10分間静置したパスタの粘着性はほぼ同じであることが示されたが、パスタを30分間静置した場合、参照試料とその他の試料の間で差が認められ、ここでも、微粒子化ホエータンパク質を使用し、水をさらに加えたパスタが最も低い粘着性を示した。
【0228】
図10A)および
図10B)から、全体として、微粒子化変性ホエータンパク質を使用したパスタよりも、参照試料のパスタの方が粘つく傾向があることが認められる。この粘着性測定法は、実験室での取り扱いおよび管理が容易であり、試験パネルによる官能試験よりも粘着性の感知をより現実的に反映すると考えられる。
【0229】
図10C)は、前述の4種類のパスタ生地1)~4)の水分活性を示す。
【0230】
図10C)から、4種類の試料中の水分活性がほぼ同じであることが分かる。
【0231】
実施例9:(微粒子化変性)ホエータンパク質を様々な量で加えたパスタのテクスチャー分析
実施例3と同様にしてパスタ生地を作製した。6種類のパスタ用生地を作製した。そのうちの5種類の試料は、微粒子化変性ホエータンパク質を様々な量で加え、それ以外の材料は同じとした。残りの1種類は、ホエータンパク質の代わりに卵白粉末を加えた参照試料であった。
【0232】
6種類のパスタ生地試料を同様に引き伸ばして、すなわち、片面1回ずつ計2回引き伸ばして、パスタを作製した。パスタをタリアテッレの麺の形状に引き伸ばした後、気密性の袋に入れて翌日まで冷蔵庫で寝かせた。
【0233】
6種類のパスタ生地試料の材料の組成を以下に示す。
1番:微粒子化変性ホエータンパク質を3.5%加えた試料
2番:微粒子化変性ホエータンパク質を7.0%加えた試料
3番:微粒子化変性ホエータンパク質を11.5%加えた試料
4番:微粒子化変性ホエータンパク質を14.68%加えた試料
5番:微粒子化変性ホエータンパク質を18.18%加えた試料
6番:微粒子化変性ホエータンパク質を0%加えた試料
【0234】
1~5番のパスタ生地および参照試料のパスタ生地中の各材料の量を表6に示す。
【表12】
【0235】
試料中の総栄養素量を以下の表7に示す。
【表13】
【0236】
6種類のパスタ用生地試料(1~5番および参照試料)から作製した帯状パスタ(タリアテッレの麺)を調理し、官能試験の各パラメータを分析した。
【0237】
9.1-調理済みパスタの写真
塩6.5gを加えた蒸留水1.5L中で、帯状に成形したパスタ生地80gを8分間調理した。調理した帯状パスタの水気を切り、深鍋に入れたまま30分間放置し、深鍋から皿に移した。調理済みパスタの写真を撮影し、
図11に示した。
【0238】
図11a)は、微粒子化ホエータンパク質を3.5%加えた1番のパスタを示す。
図11b)は、微粒子化ホエータンパク質を7.0%加えた2番のパスタを示す。
図11c)は、微粒子化ホエータンパク質を11.5%加えた3番のパスタを示す。
図11d)は、微粒子化ホエータンパク質を14.68%加えた3番のパスタを示す。
図11e)は、微粒子化ホエータンパク質を18.18%加えた3番のパスタを示す。
図11f)は、微粒子化ホエータンパク質を0%加えた参照試料のパスタを示す。
【0239】
図11a)~f)に示すように、微粒子化変性ホエータンパク質を加えていない参照試料のパスタは、束の密度が高く、コンパクトに小さくまとまっている。これに対して、パスタへの微粒子化変性ホエータンパク質の添加量が多ければ多いほど、参照試料のパスタよりも束の密度が小さくなり、コンパクトにはならない。
【0240】
9.2 乾物量分析
1~5番の試料(実施例9.1に示した試料)および参照試料の乾物含量を測定した。結果を
図12に示す。
【0241】
102±2℃で温度を一定に保った乾燥炉に既知量のパスタ試料を入れ、重量が一定になるまで乾燥させて水分を完全に蒸発させて、乾物含量を測定した。
【0242】
図12に示すように、参照試料のパスタ中の総乾物含量が最も高く、微粒子化変性ホエータンパク質組成物の量が増えるほど、総乾物含量が減少する。たとえ含水量が増加していても、微粒子化変性ホエータンパク質組成物の量が増えるほど、総乾物含量が減少する(前記表を参照されたい)。
【0243】
9.3-水分活性
1~5番の試料(実施例9.1に示した試料)および参照試料の水分活性を測定した。結果を
図13に示す。
【0244】
図13に示すように、各試料(参照試料および1~5番の試料)の水分活性はほぼ同じである。
【0245】
このように、微粒子化変性ホエータンパク質組成物の量を増加した場合、水分活性に影響を与えることなく、乾物含量を低下させることができる。水分活性は、試料中の自由水の量を表すものであり、0(乾燥した状態)~1(凝結湿度)の範囲で示される。自由水は、微生物、酵素および化学物質に利用されるため、試料の保存性にとって重要である。測定した試料はいずれも同様に高いaw値を有している。したがって、微粒子化変性ホエータンパク質組成物の添加量を増加したことによって総含水量が高くなったとしても、水分は「自由水」としては存在せず、パスタの基質内に結合している。これは、パスタ中の微粒子化変性ホエータンパク質の含量が多ければ多いほど、パスタ中に結合している水分が多くなることを意味する。
【0246】
9.4-粘着性の測定
さらに、6種類の試料(参照試料および実施例9.1で得た1~5番の試料)の粘着性をテクスチャーアナライザーで測定した。粘着性は、5kgのロードセルを備え、1mmの厚さの平らなパースペックス製ナイフブレード(A/LKB-F)を装着したテクスチャーアナライザーTA XTPlusを使用して環境温度で測定した。データは、Tukeyの一対比較を使用して分析した(Minitab17)。
【0247】
パスタ生地100gを作製し、24時間冷蔵保存した。次に、塩6.5gを加えた蒸留水1.5L中でこの帯状パスタを調理した。8分間茹でた後、調理済みパスタをお湯から取り出し、パスタを振って湯切りし、30分間経過後、調理済み帯状パスタの粘着性をテクスチャーアナライザーで測定した。テクスチャー分析は、各番号の試料につき8回繰り返し、実験を2回行った。データは、Minitab17を使用してTukeyの一対比較により分析した。
【0248】
図14は、1~5番の試料および参照試料の粘着性の測定結果を示し、試料間で有意差が測定されたことが示されている。たとえば、参照試料の粘着性が最も高く、微粒子化変性ホエータンパク質の量が増加するほど粘着性は低下した。また、
図14から、参照試料、1番および2番の試料が、3番、4番および5番の試料よりも、有意に高い粘着性値を有することが分かる。
【0249】
9.5-官能試験
1~5番の試料および参照試料の官能分析を行った。官能試験は、合議制のナッピング法を使用して行った。すなわち、7人の試験パネルにより盲検法で測定し、特定の尺度において各試料を個別に採点した後、合議によって評価をまとめた。7種類のパラメータを評価し(パスタの表面、食欲刺激性、粘着性、弾力、硬さ、噛み応えおよび異臭)、1~10点で採点した。「10」点が最も良好または最も程度が高く、「1」点が最も低い点数である。
【0250】
官能分析は、以下の表8に示すように評価した。
【表14】
【0251】
異臭は、1~10段階ではなく、「あり」または「なし」で感知した。
【0252】
【0253】
タンパク質含量が高くても、パスタの味または見た目に悪影響は認められない。
【0254】
実施例10:パスタにおけるカゼイン塩の影響の分析
本発明に従って微粒子化変性ホエータンパク質を使用して作製したパスタを、カゼイン塩を含むパスタと比較した。以下の材料を含む2種類のパスタ生地を作製した。
【表16】
【0255】
パスタ生地は、生地の各材料を混合することにより作製する。
【0256】
2種類のパスタ生地の写真を撮影し、
図15に示した。
【0257】
図15A)は、微粒子化変性ホエータンパク質を使用した本発明のパスタ生地を示す。
【0258】
図15B)は、カゼイン塩を使用したパスタ生地を示す。
【0259】
図15C)は、微粒子化変性ホエータンパク質を使用した本発明の調理済みパスタを示す。
【0260】
図15D)は、カゼイン塩を使用した調理済みパスタを示す。
【0261】
図15A)および
図15B)から、カゼイン塩を使用した未調理パスタ生地には凹凸があるが、微粒子化変性ホエータンパク質を使用した未調理パスタ生地は表面が滑らかであることが分かる。さらに、カゼイン塩を使用したパスタは、板状のパスタを引き伸ばした際に、複数の層に分離して互いに貼り付き、不良であることが観察された。これに対して、微粒子化変性ホエータンパク質を使用した生地は、容易に引き伸ばすことができ、生地が粘つくこともなかった。また、生地は良好な薄い色を呈していた。
【0262】
図15C)および
図15D)に示すように、カゼイン塩を使用した調理済みパスタは、凹凸がある不均一な表面を有し、膨張していた(カゼイン塩を含むため、多量の水分を吸収していた)が、これに対して、微粒子化変性ホエータンパク質を使用した調理済みパスタは、滑らかで良好な表面および構造を有し、多量の水分を吸収していなかった。