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特許7266600内燃機関のインジェクタのスイッチング動作
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】内燃機関のインジェクタのスイッチング動作
(51)【国際特許分類】
   F02M 43/04 20060101AFI20230421BHJP
   F02M 25/025 20060101ALI20230421BHJP
   F02D 19/12 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
F02M43/04
F02M25/025 K
F02D19/12 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020531082
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 DE2018100992
(87)【国際公開番号】W WO2019110055
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】102017222170.4
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】デターベック・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ベーム・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フスマン・ビェルン
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/177561(WO,A1)
【文献】特開平09-049458(JP,A)
【文献】特開昭58-096168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 43/04
F02M 25/025
F02D 19/12
F02M 55/02
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内燃機関(VM)用の冷却液入射システムための制御装置(SV)であって、 冷却液入射システムは、制御装置(SV)により制御可能でスイッチ操作可能な、内燃機関(VM)に冷却液を導入するための少なくとも二つのインジェクタ(I1,I2,I3)を有し、
インジェクタ(I1,I2,I3)は、一つの共通のレール(R)によって冷却液が供給可能であり、
ロール軸周りおよび/またはピッチ軸周りのレール(R)の傾斜を表す傾斜量を取得し、
傾斜量に応じてインジェクタ(I1,I2,I3)のスイッチング動作を求め、
レール(R)を空にするか又は充填するために、求めたスイッチング動作によってインジェクタ(I1,I2,I3)をスイッチ操作するように構成されている、
制御装置(SV)。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置(SV)であって、インジェクタ(I1,I2,I3)のための予め設定された少なくとも二つのスイッチング動作の中から、傾斜量に応じてインジェクタ(I1,I2,I3)のスイッチング動作を選択するように構成されている制御装置(SV)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置(SV)であって、レール(R)を空にする際に、傾斜があるためにより高い位置にある一番目のインジェクタ(I1)を、傾斜があるために一番目のインジェクタより低い位置にある二番目のインジェクタ(I2)よりも先にスイッチ操作するように、傾斜量に応じてインジェクタ(I1,I2,I3)のスイッチング動作を決定するよう構成されている制御装置(SV)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置(SV)であって、レール(R)を充填する際に、傾斜があるためにより高い位置にある一番目のインジェクタ(I1)を、傾斜があるために一番目のインジェクタより低い位置にある二番目のインジェクタ(I2)よりも後からスイッチ操作するように、傾斜量に応じてインジェクタ(I1,I2,I3)のスイッチング動作を決定するよう構成されている制御装置(SV)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置(SV)であって、さらに、レール(R)が空にされるか又は充填されるかどうかによってもインジェクタ(I1,I2,I3)のスイッチング動作を決定するよう構成されている制御装置(SV)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置(SV)であって、さらに、レール入口からの各インジェクタ(I1,I2,I3)の距離及び/又はレール(R)の幾何学的形状によってもインジェクタ(I1,I2,I3)のスイッチング動作を決定するよう構成されている制御装置(SV)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置(SV)であって、インジェクタ(I1,I2,I3)のスイッチング動作は、インジェクタ(I1,I2,I3)をスイッチ操作する順番及び/又はタイミングを含んでいる制御装置(SV)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置(SV)であって、
レール(R)内の圧力を表す圧力量を取得し、
圧力量に応じて少なくとも一つのインジェクタ(I1,I2,I3)のスイッチ操作タイミングを決定し、
決定したスイッチ操作タイミングでインジェクタ(I1,I2,I3)をスイッチ操作するように
構成されている制御装置(SV)。
【請求項9】
自動車の内燃機関(VM)のための冷却液入射システムであって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の制御装置(SV)を有し、
制御装置(SV)により制御可能でスイッチ操作可能な、内燃機関(VM)の吸気系に冷却液を導入するための少なくとも二つのインジェクタ(I1,I2,I3)を有し、 インジェクタ(I1,I2,I3)は、一つの共通のレールによって(R)冷却液が供給可能である
冷却液入射システム
【請求項10】
請求項8に記載の冷却液入射システムであって、レール(R)は、新鮮な空気を吸入するためのバルブ(V)を有している冷却液入射システム。
【請求項11】
内燃機関(VM)に冷却液を導入するための少なくとも二つのスイッチ操作可能なインジェクタ(I1,I2,I3)を有し、インジェクタ(I1,I2,I3)は、一つの共通のレール(R)によって冷却液が供給可能である、自動車の内燃機関(VM)のための冷却液入射システムを制御する方法であって、以下の:
ロール軸周りおよび/またはピッチ軸周りのレール(R)の傾斜を表す傾斜量を取得するステップ(100,230)と、
傾斜量に応じてインジェクタ(I1,I2,I3)のスイッチング動作を求めるステップ(110,240)と、
レール(R)および冷却媒体供給装置の一部を空にするか又は充填するために、求めたスイッチング動作によってインジェクタ(I1,I2,I3)をスイッチ操作するステップ(130,250)と、
を有している方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、冷却液入射システムおよび内燃機関のインジェクタのスイッチング動作を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却液を導入して内燃機関を冷却することにより内燃機関の性能を向上させることが知られている。冷却液としてはこのとき例えば蒸留水が用いられる。冷却液を導入することによる内燃機関へのダメージを防ぐために、内燃機関が稼動し、それにより温度が上昇しているときに専ら内燃機関にのみ冷却液を導入することが有利である。運転終了後、内燃機関内に残っている冷却液は再び除去することができる。冷却液により内燃機関を満たし、また空にするには、インジェクタをスイッチ操作しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、改良された制御装置、冷却液入射システムおよびインジェクタをスイッチ操作する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。一つの独立請求項に従属する或る請求項の追加的な特徴は、独立請求項の特徴なしで、或いは独立請求項の特徴の一部分との組み合わせだけでも、独立請求項の特徴全部との組み合わせには拠らない独立した発明を成し得るし、その発明が、一つの独立請求項、分割出願或いは継続出願の対象となり得ることを指摘しておく。このことは、明細書に記載されている技術的開示事項にも当てはまることであり、その技術的開示事項は、独立特許請求項の特徴には拠らない発明を形成することができる。
【0005】
本発明の第一の態様は、自動車の内燃機関用の冷却液入射システムのための制御装置に関する。冷却液は、例えば、(蒸留)水または水/アルコール混合物であり得る。
【0006】
冷却液の入射は、内燃機関の出力を増加させる方法である。最大出力時の最大許容排気ガス温度を超えないようにするために、冷却液が内燃機関に入射される。蒸発する液体が、燃焼前、燃焼中、燃焼後の混合物に対する冷却効果をもたらす。燃焼出力の生成と排気ガス温度の低減のための燃焼サイクル中の入射も行われる。
【0007】
冷却液入射システムは、制御装置により制御可能でスイッチ操作可能な、内燃機関に冷却液を導入するための少なくとも二つのインジェクタを有し、ここで、インジェクタをスイッチ操作するとは、特にインジェクタを開い(開放し)たり閉じ(閉鎖し)たりすることである。
【0008】
冷却液は、内燃機関のさまざまな場所にさまざまな方法で導入することができる。特に、冷却液は、入口側で内燃機関に導入することができ、例えば、冷却液をエアインテーク(エア吸気系)に入射することができる。あるいは、冷却液は、燃焼室に直に入射することもできる。
【0009】
インジェクタは、蓄圧器として機能する共通のレール(コモンレール)によって冷却液を供給することができる。レールはここで、例えば、用語のとおり、本当に共通の分配管とすることができる。これに代えてレールは特に、インジェクタに接続されている任意の幾何学的形状の蓄圧器とすることもできる。
【0010】
さらに、制御装置は、レールの傾斜を表す傾斜量を取得ないし特定するように構成されている。
【0011】
レールの傾斜を表す量は、特に、内燃機関の傾斜または自動車の傾斜を表す量であることもある。レールの傾斜を表す量は例えば、ロール軸周りの車両長手方向の傾斜および/またはピッチ軸周りの車両横手方向の傾斜を表すことができる。
【0012】
傾斜量は、特に、例えば一次元または多次元の傾斜センサないし姿勢センサといったような少なくとも一つのセンサ信号であり得る。
【0013】
制御装置は、傾斜量に応じてインジェクタのスイッチング動作を求めるように構成されている。スイッチング動作には、特に、インジェクタがスイッチ操作されるスイッチ操作の順番、個々のインジェクタのスイッチ操作タイミングが含まれる。
【0014】
インジェクタは、制御装置によって、レールを空にするか又は充填するために、求めたスイッチング動作によりスイッチ操作される。
【0015】
有利な実施形態では、制御装置は、インジェクタのための予め設定された少なくとも二つのスイッチング動作の中から、傾斜量に応じてインジェクタのスイッチング動作を選択するように構成されている。
【0016】
例えば、傾斜量の第一の値(レールの僅かな第一の傾斜を表す)では、第一のスイッチング動作を選択することができる。或いは、傾斜量の第二の値(第一の傾斜に比べて大きいレールの傾斜を表す)では、第二のスイッチング動作を選択することができる。
【0017】
予め設定されたスイッチング動作は、特に、インジェクタのスイッチ操作の順番及び/又はスイッチ操作のタイミングが異なり得る。
【0018】
予め設定されたスイッチング動作は、特に、制御装置の開発過程で経験的に決めることができ、制御装置のメモリブロックに入れておくことができる。
【0019】
本発明は、質の高いスイッチング動作には様々な固有の性質が含まれ得るという知見に基づいている。できるだけ質の高いスイッチング動作はこのとき、中でもレールの幾何学的構造に強く依存し得るし、そのために例えばスイッチング動作を純粋に解析的に決めるのは極めて面倒になり得る。
【0020】
他の好ましい実施形態では、制御装置は、充填工程のために傾斜量に応じてインジェクタのためのスイッチング動作を決定し、それにより、レールを空にする際に、傾斜があるためにより高い位置にある一番目のインジェクタを、傾斜があるためにそれより低い位置にある二番目のインジェクタよりも先にスイッチ操作するように構成されている。
【0021】
特に、冷却液入射システムを満たすときに、一番目のインジェクタを二番目のインジェクタよりも先にスイッチ操作することができる。代替的ないし追加的に、冷却液入射システムを空にするときに、一番目のインジェクタを二番目のインジェクタよりも先にスイッチ操作することができる。インジェクタのスイッチ操作はこのとき、例えばインジェクタの開放また閉鎖であり得る。
【0022】
これに代えて、制御装置は、傾斜量に応じてインジェクタのためのスイッチング動作を決定し、それにより、レールを充填する際に、傾斜があるためにより高い位置にある一番目のインジェクタを、傾斜があるためにそれより低い位置にある二番目のインジェクタよりも後からスイッチ操作するように構成されている。
【0023】
特にこのとき、冷却液入射システムの充填時に、一番目のインジェクタを二番目のインジェクタよりも後からスイッチ操作することができる。代替的ないし追加的に、冷却液入射システムを空にするときに、一番目のインジェクタを二番目のインジェクタよりも後からスイッチ操作することができる。インジェクタのスイッチ操作はことのき、例えばインジェクタの開放または閉鎖であり得る。
【0024】
代替的または追加的に、特に充填時に、先ず全てのインジェクタを開放することができる。次に、例えば圧力信号に応じて、レールの入口に最も近いインジェクタを最初に閉鎖することができる。
【0025】
代替的または追加的に、特に最初の充填段階の後、短時間の入射とそれに対応する圧力低下の分析とにより、充填が完全であったかどうか、そして充填工程が終了しているかどうかを特定することができる。
【0026】
さらなる有利な実施形態では、制御装置は、さらに、レールが空にされるか又は充填されるかどうかによってもインジェクタのスイッチング動作を決定する構成とされている。
【0027】
特に、スイッチング動作としての、インジェクタのスイッチ操作の順番は、レールを空にするか又は充填するかによって決定することができる。例えば、レールを空にする際には、一番目のインジェクタを二番目のインジェクタの前にスイッチ操作することができる。レールを充填する際には、一番目のインジェクタを二番目のインジェクタの後に続けてスイッチ操作することができる。
【0028】
レールを空にし始めるときは、レールは、例えば全て冷却液で満たされていて、全てのインジェクタは閉鎖している。空にするためには、先ず傾斜したレールにおいて、傾斜によってより高い位置にある一番目のインジェクタを、それよりも低い位置にある二番目のインジェクタの前に開放することで、レールに空気を流れ込ませ、水を完全にレールから追い出す。
【0029】
他方、レールを充填し始めるときは、レールは、例えば全て空気で満たされていて、全てのインジェクタは開放している。充填するためには、先ず傾斜したレールにおいて、より低い位置にある二番目のインジェクタを、それよりもより高い位置にある二番目のインジェクタよりも前に閉鎖することでレールを冷却液で満たす。
【0030】
さらなる有利な実施形態では、インジェクタのスイッチング動作は、インジェクタをスイッチ操作する順番及び/又はタイミングを含んでいる。
【0031】
さらなる有利な実施形態では、制御装置は、レール内の圧力を表す圧力量を取得するように構成されている。圧力量に応じて少なくとも一つのインジェクタのスイッチ操作タイミングを決定し、決定したスイッチ操作タイミングでインジェクタをスイッチ操作する。
【0032】
特に、既存の圧力センサを使用して、レールを充填する際の圧力変化を追加的な入力量として記録してもよい。空気がシステム内にあると、空気と冷却液との間に圧縮率と粘度の違いがあるために、充填工程中の圧力変化においてそのことを見て取ることができる。冷却液がインジェクタに達すると直ぐに圧力上昇が観測され、これに合せて対応するインジェクタをスイッチ操作することができる。こうして、冷却液入射システムを完全に充填することを確実にすることができる。
【0033】
本発明の第二の態様は、自動車の内燃機関のための冷却液入射システムに関する。冷却液入射システムは、上述した制御装置を有し、制御装置により制御可能でスイッチ操作可能な、内燃機関の吸気系に冷却液を導入するための少なくとも二つのインジェクタを有し、インジェクタは、一つの共通のレール(コモンレール)によって冷却液が供給可能である。
【0034】
有利な実施形態では、レールは、新鮮な空気を吸入するためのバルブを有している。制御装置はここで、さらにバルブを制御するように構成されている。代わりに、バルブが機械的に動作可能で、レールが負圧のときに開放可能でもよい。例えば、バルブは、給気または排気バルブである。
【0035】
特に、電気制御式のバルブの場合、制御装置は、レールを空にするときはバルブを開放することで、内燃機関からの空気ではなく、新鮮な空気で満たすように構成されている。
【0036】
代替的ないし追加的に、制御装置は、レールの充填時にはバルブを閉鎖することで、冷却液入射システム内に存在する空気が、専ら開放されたインジェクタを介して冷却液入射システムから出ることができるように構成されている。
【0037】
特に、第一ステップにおいて、レールを空にするときにバルブを開放することで、内燃機関からの空気ではなく新鮮な空気でレールを満たすことができるような冷却液入射システムの操作手順が可能である。第二ステップにおいて、バルブを閉鎖してインジェクタを開放する。システム内にある空気により、残りの冷却液をインジェクタから吸気システムへ追い出す。第三ステップでは次に、閉鎖したインジェクタと開放したバルブにより空気をシステムに吸込むことで、改めてレール並びに冷却液入射装置の給気すべき箇所に新鮮な空気を給気する。
【0038】
この操作の順序は、いかなるタンク排出ガス、燃焼ガスないしブローバイガスも吸引装置から冷却液システムに達しないことが有利であり得るという知見に基づいている。
【0039】
本発明の第三の態様は、自動車の内燃機関のための冷却液入射システムを制御する方法に関する。この冷却液入射システムは、内燃機関に冷却液を導入するための少なくとも二つのスイッチ操作可能なインジェクタを有し、インジェクタは、一つの共通のレール(コモンレール)によって冷却液が供給可能である。
【0040】
この方法の一つのステップは、レールの傾斜を表す傾斜量を取得することである。
【0041】
この方法の後続のステップは、傾斜量に応じてインジェクタのスイッチング動作を求めることである。
【0042】
この方法の最後のステップは、レールを空にするか又は充填するために、求めたスイッチング動作によってインジェクタをスイッチ操作することである。
【0043】
本発明の第一の態様による本発明による制御装置に関する上記の説明は、本発明の第二の態様による本発明によるシステムおよび本発明の第三の態様による本発明による方法にも同様に当てはまる。この箇所で、そして特許請求の範囲で、明示的に記載されていない本発明によるシステムおよび方法の有利な実施例は、上記または特許請求項に記載された本発明による制御装置の有利な実施例に対応する。
【0044】
以下に、添付の図面を参照しながら実施例に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の冷却液入射システムの一実施例を示す図である。
図2】冷却液入射システムを制御する本発明の方法の一実施例を示す図である。
図3】冷却液入射システムを制御する本発明の方法のさらなる一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、自動車の内燃機関VMを示す。内燃機関VMは、冷却液入射システムに接続されており、このとき冷却液入射システムは、制御装置SVにより制御可能でスイッチ操作可能な、内燃機関VMに冷却液を導入するための三つのインジェクタI1,I2,I3を有する。特に、インジェクタI1,I2,I3はこのとき、インジェクタI1,I2,I3のそれぞれに、内燃機関VMのシリンダZ1,Z2,Z3の一つが対応させられるようにして内燃機関VMに接続されている。
【0047】
インジェクタI1,I2,I3は、一つのコモンレール(共通のレール)Rによって冷却液が供給可能であり、冷却液はここで、例えば、入口Zを通して冷却液タンクWから送出可能とされている。
【0048】
制御装置SVは、さらに傾斜センサNSと連結されており、このセンサが、例えば長手方向および横手方向における自動車の傾斜といったようなレールRの傾斜を表す傾斜量を特定する。しかも、制御装置SVは、レールRが有する新鮮な空気を吸引するためのバルブVに連結されている。
【0049】
図2は、冷却液入射システムを制御する本発明の方法の一実施例を示す。
【0050】
本方法のフローの開始時には、レールRは完全に空になっているので、レールR内に冷却液は存在しない。全てのインジェクタI1,I2,I3は開放されているので、もしレールRが冷却液で充填されるような場合には、レールR内に存在する空気は、この開放されたインジェクタI1,I2,I3を通って逃げることができる。
【0051】
ステップ100において、制御装置SVは、レールRの傾斜を表す傾斜量を取得する。傾斜量はこのとき、例えば傾斜センサNSによって検知された車両長手方向における自動車の傾斜であり得る。
【0052】
これに続くステップ110において、制御装置SVは、傾斜量に応じてインジェクタI1,I2,I3のためのスイッチング動作を求める。スイッチング動作はこのとき、特に、インジェクタI1,I2,I3をスイッチ操作すべき順番を含む。
【0053】
例えば、制御装置SVはこのとき、予め設定された少なくとも二つのインジェクタI1,I2,I3のためのスイッチング動作の中から、インジェクタI1,I2,I3のための一つのスイッチング動作を選択することができる。これらの予め設定されたスイッチング動作は、例えば、冷却液入射システムの開発過程において経験的に決めることができる。
【0054】
加えて、制御装置SVは、インジェクタI1,I2,I3のスイッチング動作を求める際に、Rが空にされるか充填されるかどうかを考慮することができる。
【0055】
例えば、制御装置SVは、レールRを充填する際に、傾斜があるためにより高い位置にある一番目のインジェクタI1を、傾斜があるためにそれより低い位置にある二番目のインジェクタI2よりも後からスイッチ操作するように、インジェクタI1,I2,I3のためのスイッチング動作を決定する構成とされている。
【0056】
レールRの充填工程の間、制御装置は、ステップ120においてレールR内の圧力を表す圧力量を取得することができる。この圧力量に応じ、求めたスイッチング動作に従って次のインジェクタI1,I2,I3のスイッチ操作タイミングを決定し、次のインジェクタI1,I2,I3は、ステップ130において、冷却液がインジェクタI1,I2,I3に達するタイミングを表す圧力上昇が観測されると直ちに、決定したスイッチ操作タイミングで閉鎖される。
【0057】
最後のインジェクタI1,I2,I3を閉鎖した後、レールは完全に満たされた状態になることができる。
【0058】
図3は、冷却液入射システムを制御するための本発明の方法のさらなる実施例を示す。
【0059】
本方法のフローの開始時には、レールRは、完全に冷却液で満たされている。全てのインジェクタI1,I2,I3は、冷却液が内燃機関VMに導入されないように閉鎖されている。
【0060】
レールRを空にするために、ステップ200では、レールRが有しているバルブVを制御装置SVにより開弁する。
【0061】
続くステップ210において、内部に存在している冷却液を冷却液タンクWに圧送することによりレールRと冷却液供給システムの一部を空にする。バルブVが開いているので、しかるべき体積がこのとき新鮮な空気で満たされる。
【0062】
レールRが完全に空になったら直ちにステップ220においてバルブVを制御装置SVにより閉じる。
【0063】
ステップ230において、制御装置SVは、レールRの傾斜を表す傾斜量を取得する。この量は、例えば、制御装置SV自体によって特定された車両長手方向における自動車の傾斜であってもよい。
【0064】
続くステップ240において、制御装置SVは、傾斜量に応じてインジェクタI1,I2,I3のためのスイッチング動作を求める。スイッチング動作はこのとき、特に、インジェクタI1,I2,I3をスイッチ操作すべき順番と、インジェクタI1,I2,I3をスイッチ操作すべきタイミングとを含んでいる。ステップ250において、次に、求めた順番と求めたタイミングでインジェクタI1,I2,I3をスイッチ操作し、システム内の空気を用いて冷却液をインジェクタから吸気システムへと追い出し、これにより、この方法が終了した後にはインジェクタとレールが新鮮な空気で満たされているようになる。
【0065】
必要であれば、後続のステップ260において、インジェクタが開放され且つバルブが開放された状態で、冷却液供給システムが、予め設定された体積割合まで改めて新鮮な空気で満たされる。
図1
図2
図3