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特許7266604セラミックマトリックスを含む複合部品の製造方法
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  • 特許-セラミックマトリックスを含む複合部品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】セラミックマトリックスを含む複合部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/80 20060101AFI20230421BHJP
   C04B 35/84 20060101ALI20230421BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20230421BHJP
   B28B 11/00 20060101ALI20230421BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C04B35/80 600
C04B35/84
C04B41/88 U
B28B11/00
F01D25/00 L
F01D25/00 X
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020534429
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 FR2018053475
(87)【国際公開番号】W WO2019122760
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】1763017
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516299213
【氏名又は名称】サフラン・セラミックス
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドルウーズ,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ブイヨン,エリク
(72)【発明者】
【氏名】ルプティコール,ヤン
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-186268(JP,A)
【文献】特開平02-064068(JP,A)
【文献】特表2014-513031(JP,A)
【文献】特開昭63-277563(JP,A)
【文献】特開平06-116036(JP,A)
【文献】特開2017-024978(JP,A)
【文献】特開2017-119589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/80-35/84
C04B 41/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックマトリックスにより高密度化された粒状強化材を含む複合材料部品を製造する方法であって、以下の工程、すなわち、
- 結合剤、部品の粒状強化材を形成するための第1のセラミック又は炭素粒子、第1の粒子とは異なる第2のセラミック又は炭素粒子を含む混合物を成形することにより、製造されるべき部品のブランクを成形する工程(S4)、
- 部品の多孔性プレフォームを得るためにブランク中に存在する結合剤を除去又は熱分解する工程(S5)、及び
- 部分を得るために金属を含む溶融組成物をプレフォームの気孔に浸透させる工程(S6)
を含み、浸透工程の前に、結合剤の除去又は熱分解後に得られた多孔性プレフォームの熱間等方圧圧縮の工程をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記溶融組成物がシリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の粒子が、50μm~5000μmの間に含まれる長さを有する、短繊維である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
短繊維が100~300μmの間に含まれる長さを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の粒子が粒である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の粒子の中央値の基本体積が第2の粒子の中央値の基本体積以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
混合物を成形することが、混合物をモールドに注入することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物を含む液体媒体がモールドに注入され、該モールドが液体媒体のための濾過装置を備え、ブランクを成形する工程が、濾過装置による液体媒体の濾過をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
混合物を成形することが、混合物に圧力を加えることを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
混合物を成形することが、混合物のモールドへの冷間等方圧圧縮を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の粒子が炭化ケイ素である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の粒子が中間相を用いてコーティングされる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のセラミック粒子が、SiC、MoSi、TiSi、CoSi、ZrSi、HfSi、ZrB、HfB、TiB、及びそれらの混合物から選択される材料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
部品中の前記第1の粒子の体積含有率が、10%~70%の間に含まれる、および/または部品中の前記第2の粒子の体積含有率が、30%~90%の間に含まれる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記部品が、航空ターボ機械に使用するための部品である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、セラミックマトリックス複合材料で作られた部品を製造するための方法の一般的な分野に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックマトリックス複合材料(CMC)は、それらを構造要素としての使用に適したものにする良好な機械的特性、及び高温でこれらの特性を維持することで知られており、従来の金属部品の実行可能な代替物である。金属の同等物と比べて質量が小さいため、この複合材料は高効率化及び航空分野のエンジンからの汚染物質の排出削減の問題に対応するのに理想的な選択肢である。
【0003】
CMC部品は、織布の形態の一般的に連続した繊維状強化材を含む。これはセラミックマトリックスにより高密度化されている。このように、繊維状強化材は連続した長い繊維を含み、その配向は、使用中の部分の応力の主な方向に適応させることができる。繊維状強化材を形成するためのプレフォームは、適切な織機を用いて、連続繊維から前記部品の寸法まで(例えば、二次元又は三次元織りによって)織られる。織り工程は長くて費用のかかる処理であり、小さな部品を作るのに最適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、小さな部品を製造するための実施がより容易であり、かつより安価なセラミックマトリックス複合部品を製造するための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の主題及び要約)
したがって、本発明の主な目的は、セラミックマトリックスにより高密度化された粒状強化材を含む複合材料部品を製造する方法を提案することにより、このような不利益を補償することであり、この方法は以下の工程、すなわち、
- 結合剤、部品の粒状強化材を形成するための第1のセラミック又は炭素粒子、第1の粒子とは異なる第2のセラミック又は炭素粒子を含む混合物を成形することにより、製造されるべき部品のブランクを成形する工程、
- 部品の多孔性プレフォームを得るためにブランク中に存在する結合剤を除去又は熱分解する工程、及び
- 部分を得るために金属を含む溶融組成物をプレフォームの気孔に浸透させる工程
を含む。
【0006】
したがって、本発明による方法は、織られた繊維状強化材なしに溶融浸透方法によってCMC部品を製造することを可能にする。第1の粒子及び第2の粒子で充填された混合物を成形し、その後結合剤の除去又は熱分解により多孔質プレフォームを得る工程のおかげで、本発明による方法は、繊維状強化材を織る工程を省くことを可能にする。これは、特に、高い熱-機械的応力を受けない小さな部品の製造に有利であり、これは、製造時間及びコストの観点からの節約である。また、本発明による方法から、追加の加工を必要とせずに、複雑な形状及び所望の寸法を有する部品を得ることも可能である。
【0007】
混合物は、均質であり、かつ結合剤と粒子との間で密接であり得る。
【0008】
一実施形態では、溶融組成物は金属間化合物を含むことができる。一実施形態では、溶融組成物はシリコンを含むことができる。
【0009】
溶融組成物は、純粋な溶融シリコンからなるか、あるいはシリコン及び1種以上の他の構成成分の溶融合金の形態であり得る。溶融組成物は、質量において主にシリコンからなることができ、すなわち、50質量%以上のシリコン含有率を有する。溶融組成物は、例えば、75質量%以上のシリコン含有率を有することができる。シリコン合金中に存在する成分は、B、Al、Mo、Ti、及びそれらの混合物から選択することができる。特に、溶融組成物は、二ケイ化モリブデン(MoSi)を含むことができる。浸透中に溶融組成物と多孔質プレフォームに存在する炭素(熱分解残渣など)との間に化学反応が起こり、炭化ケイ素が生成する(反応性溶融浸透方法)。
【0010】
実施形態例では、混合物を加熱して結合剤を流動化し、ブランクを形成するための成形工程を容易にすることができる。混合物はまた、成形前に混合物中に存在するあらゆる気泡を除去するために、真空にさらすことができる。ブランクは、結合剤の除去又は熱分解後にブランクの内部に多孔質網目を残すために、最終部品よりも大きいか又は等しいサイズとすることができる。結合剤除去又は熱分解工程(「脱結合剤」とも呼ばれる)は、好ましくは、最終部品に至る異なる処理工程の間にブランクの機械的強度を低下させるであろうブランクの酸化を避けるために、不活性ガス下、例えばアルゴン下で実施することができる。以下では、「結合剤除去」工程に言及する場合、熱分解が、結合剤を除去し、残留物を残すことからなる「結合剤除去又は熱分解」工程を意味すると常に理解される。
【0011】
実施形態例では、第1の粒子は短繊維であることができる。換言すれば、第1の粒子は、略円筒形状を有することができる。
【0012】
実施形態例では、短繊維は、50μm~5000μmの間に含まれる長さを好ましくは有することができ、又はより好ましくは短繊維は、100μm~300μmの間に含まれる長さを有することができる。
【0013】
実施形態例では、短繊維は、機械的切断又は粉砕により長繊維から得ることができる。
【0014】
実施形態例では、第1の粒子は粒であることができる。換言すれば、第1の粒子は、球形であっても楕円形であってもよい。この場合、第1の粒子の平均サイズ(D50)は、10μm~300μmの間、より優先的には40μm~100μmの間であることができる。
【0015】
実施形態例では、第1の粒子の中央値の基本体積は、第2の粒子の中央値の基本体積よりも大きいか又は等しいことができる。粒子の基本体積とは、粒子が占める体積である。
【0016】
実施形態例では、混合物の成形は、混合物をモールドに注入することを含むことができる。
【0017】
実施形態例では、結合剤は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含むことができる。例えば、結合剤は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)から選択される少なくとも1種の化合物を含むことができる。
【0018】
実施形態例では、結合剤は、少なくとも1種の熱硬化性ポリマーを含むことができる。例えば、結合剤は、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、プレセラミック樹脂から選択される少なくとも1種の化合物を含むことができる。
【0019】
実施形態例では、混合物は、2種の熱的に除去可能な結合剤を含むことができ、それぞれ異なる除去温度を有する。したがって、結合剤除去工程は、2つの異なる温度で結合剤の各々を熱的に除去する2つの副工程を含むことができる。
【0020】
実施形態例では、混合物は、溶解によって除去することができる第1の結合剤と、熱的に除去することができる第2の結合剤とを含むことができる。したがって、結合剤除去工程は、溶解による第1の結合剤の除去、次いで第2の結合剤の熱的除去の2つの除去副工程を含むことができる。この配置は、第1の結合剤の溶解除去後にブランクの気孔を広げることにより、第2の結合剤のより効率的な除去を可能にするので、有利である。
【0021】
実施形態例では、混合物を含む液体媒体をモールドに注入することができ、モールドに液体媒体のための濾過装置を装備することができ、ブランクを成形する工程は、濾過装置による液体媒体の濾過をさらに含むことができる。液体媒体は水性媒体であることができ、又は、例えばアルコールを含むことができる。
【0022】
実施形態例では、混合物の成形は、混合物に圧力を加えることを含むことができる。この場合、結合剤は混合物の圧縮を改善するために可塑剤を含む。このような可塑剤はステアリン酸であることができる。この場合、混合物の成形は、モールドへの混合物の冷間等方圧圧縮を含む。
【0023】
実施形態例では、方法は、浸透工程の前に、結合剤の除去又は熱分解後に得られる多孔質プレフォームの等方圧圧縮を含むことができる。この等方圧圧縮工程は、高温又は低温のいずれかで行うことができる。この等方圧圧縮工程は、この気孔率を制御し、その後の浸透工程を容易にするために、結合剤の除去又は熱分解工程によって生成された気孔を部分的に閉じることを可能にする。
【0024】
また、さらに脱結合剤化された(debound)ブランクの気孔率を制御するために、浸潤工程の前に、脱結合剤化されたブランクの自由(すなわち、応力のない)焼結熱処理を行うことも可能である。この自由焼結熱処理は、冷間等方圧圧縮工程の後、熱間等方圧圧縮工程の前に行うことができる。
【0025】
実施形態例では、第1の粒子は、炭化ケイ素で作ることができる。短繊維の場合、それらは1原子%以下の酸素含有率を有することができる。例えば、このような短繊維は、日本の企業NGSが販売するHi-Nicalon型S繊維であることができる。あるいは、短繊維は、炭素、酸化物、例えばアルミナ(Al)の中から選択される物質で作ることができる。
【0026】
実施形態例では、第1の粒子を中間相を用いてコーティングすることができる。このような中間相は、例えば、熱分解炭素(PyC)、窒化ホウ素(BN)又は炭化ケイ素(SiC)で作ることができる。中間相はいくつかの層を含み、それぞれが異なった材料を含む。中間相は、マトリックス中を伝播した後に中間相に到達する可能性のある亀裂のたわみを促進する複合材料の脆弱性を減少させ、このような亀裂による強化材の破壊を防止又は遅延させる機能を有する。この中間相はまた、その成形中にマトリックス材料の第1の粒子を保護する。
【0027】
この中間相は、混合物に導入する前に第1の粒子上に堆積させることができる。短繊維の場合、中間相は切断又は粉砕する前に長繊維上に堆積させることができる。中間相は、化学蒸着(CVD)法又は電解体積法又は溶融塩によって、短繊維上に直接堆積させることができる。また、中間相の代わりに、又は中間相の上に、形成されるべきマトリックス材料と相溶性のあるセラミックコーティングを堆積させることも可能である。
【0028】
実施形態例において、第2のセラミック粒子は、SiC、MoSi、TiSi、CoSi、ZrSi、HfSi、ZrB、HfB、TiB、及びそれらの混合物から選択される材料で作製することができる。
【0029】
実施形態例では、部品における第1の粒子の体積含有率は、10%~70%の間、優先的には25%~50%の間に含まれることができる。
【0030】
実施形態例では、部品における第2の粒子の体積含有率は、30%~90%の間、優先的には50%~75%の間に含まれることができる。
【0031】
実施形態例では、第2の粒子は、0.5μm~200μmの間、より優先的には0.7μm~75μmの間に含まれる平均サイズ(D50)を有することができる。
【0032】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図を参照して、以下に与えられる記載から明らかになるであろう。これは、いかなる制限的な性質を含まない実施形態例を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態による方法の様々な工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の実施形態による方法の工程を、図1のフローチャートに関連して説明する。ここでは、セラミックマトリックス複合部品を得ることを目的とする。このような部品は、航空機用部品、例えば、航空機用ターボ機械での使用を意図した部品であることができる。このような部分は、例えば、小さなブレードであることができる。
【0035】
工程S1において、製造される部品の粒状(例えば、繊維状)強化材を形成するために使用される第1のセラミック又は炭素粒子を得ることができる。第1の粒子が短繊維である場合、それらはそれ自体知られた方法で長繊維を粉砕又は機械的に切断することによって得ることができる。短繊維は、50μm~5000μmの間、又は100μm~300μmの間に含まれる中央値長さを有することができる。第1の粒子のサイズ分布は単分散である必要はなく、多分散であってもよい。
【0036】
第1の粒子は、任意選択的に中間相のコーティングでコーティングすることができる(工程S2)。短繊維の場合は、それらは切断又は粉砕の前に、直接又は長繊維をコーティングすることによってコーティングすることができる。中間相の厚さは、例えば10nm~1000nmの間、例えば10nm~500nmの間に含まれ得る。相間は単層又は多層とすることができる。中間相は、熱分解炭素(PyC)、窒化ホウ素(BN)、シリコンドープ窒化ホウ素(BN(Si)、5~40%の間の質量比率のシリコン、残りは窒化ホウ素)又はホウ素ドープ炭素(BC、5~20%の間の原子比率のホウ素、残りは炭素)の少なくとも1層を含むことができる。中間相の堆積は、CVD法又は電気メッキ法又は溶融塩によって、短繊維上に直接行うことができる。中間相は、ここでは、マトリックス中を伝播した後に中間相に到達する可能性のある亀裂のたわみを促進し、このような亀裂による強化材の破壊を防止する又は遅延させる複合材料の最適化の機能を有する。中間相はまた、マトリックス成形の後の段階で強化材を保護することができる。また、中間相の代わりに、又は中間相の上に、例えばCVIによって形成されるマトリックス材料と相溶性のあるセラミックコーティングを堆積させることも可能である。
【0037】
工程S3では、部品のマトリックスを形成するために、結合剤、第1のセラミック又は炭素粒子、及び第2のセラミック粒子を含む混合物を次に調製することができる。結合剤は、例えば、熱可塑性又は熱硬化性樹脂のようなポリマー、又は可塑剤を含むことができる。混合物は、いくつかの結合剤を含むことができる。混合を容易にし、より良好な均質化を可能にするために結合剤を流動化するために、混合物を加熱することが有利であり得る。次に、混合温度は、熱分解及び早期重合を回避するために使用される有機結合剤に依存する。混合物中の気泡の存在を減らすために、減圧下で混合物を調製することも可能である。こうして調製された混合物は、例えば、後に使用するための顆粒にするか、又は次の工程で直接注入することができる。
【0038】
工程S4では、工程S3で調製した混合物を成形することにより、部品のブランクを形成する。この工程を実施するいくつかの方法を以下に述べる。
【0039】
第1の選択肢によれば、この混合物をモールドの空洞内に注入することにより成形工程を行うことができる。注入に用いるモールドの空洞は、浸透工程を効率的に行うためにポーラーネットワークが必要であるため(工程S6)、最終部品の空洞に比べてより大きな寸法を有することができる。モールドは、その寸法が既知の方法で、第1及び第2の粒子のサイズ、並びに結合剤及び選択された注入圧力及び温度に適合された注入ノズルを含むことができる。必要に応じて注入後に結合剤が凝固する可能性を制御するために、モールドを温度制御することができる。この制御はまた、第1の粒子がモールドの壁付近において短繊維に対応するときに第1の粒子の優先的配向を避けるために使用することができる。注入は、結合剤が流動化できる温度まであらかじめ加熱した混合物を用いて行うことができる。注入は50bar~3000barの間の圧力で行うことができる。混合物がモールドに注入され、ブランクが成形されると、ブランクをモールドから外すことができる。得られたブランクは「未焼結」又は可塑性の状態である。ブランクは、前述したように、通常、最終部品より大きくすることができる。
【0040】
第2の選択肢では、モールドに濾過装置を装備することができ、液体媒体中に分散された第1及び第2の粒子の混合物を含む液体媒体はモールドに注入されて、ブランクを形成する工程S4は、濾過装置によって液体媒体を濾過することをさらに含む。液体媒体は、水性媒体であってもよいし、又はアルコールを含んでいてもよい。液体媒体は、ポリビニルアルコール(PVA)を優先的に含むことができる。それはスラリーとなり得る。注入/濾過時、第1及び第2の粒子は濾過装置によりモールド内部に保持され、徐々にブランクを形成する。
【0041】
第3の選択肢では、結合剤は可塑剤を含むことができ、結合剤成形工程は混合物への圧力の適用、例えば混合物の冷間等方圧圧縮を含む。圧縮を促進する可塑剤はステアリン酸とすることができる。次に、この混合物を直接モールドに入れ、モールドによって混合物に圧力をかけて混合物を成形することができる。
【0042】
工程S5では、ブランク中の結合剤を除去するか、又は熱分解して脱結合剤化されたブランクを作製する。結合剤除去又は熱分解工程S5の条件は、一般に、それ自体知られた方法で除去される結合剤の性質に依存する。特に、いくつかの結合剤を熱的に除去することができ、すなわち、温度によってそれらを分解及び/又は蒸発させることができる一方で、他のものは、例えば適切な溶媒中での溶解によって化学的に除去することができる。工程S5は熱分解を含むことができ、その場合、熱分解残渣は脱結合剤化されたブランク内に留まることがある。工程S5は、除去工程の終わりまで炭素骨格をブランクに保ち、したがってブランクのより良い保持を確実にするだけでなく、ブランクの酸化のリスクを減少させるために、例えばアルゴンのような中性大気中で行うことができる。
【0043】
いくつかの結合剤、例えば、2つの別々の除去工程で除去することができる2つの結合剤を使用することが有利であり得る。一例では、最初に第1の結合剤が溶解によって除去され、次いで、第2の結合剤が熱的に除去される。別の例では、第1の結合剤を第1の除去温度で熱的に除去することができ、第2の結合剤を第1の除去温度よりも高い第2の除去温度で熱的に除去することができる。2つの結合剤を連続して除去すると、第1の結合剤を除去した後、そこか第2の結合剤をプレフォームから抜き出すことができるプレフォーム中の気孔を開くことにより、工程S5中にプレフォームに亀裂が発生するリスクが減少する。プレフォームの寸法は、一般に、脱結合剤工程S5後に変化しない。このように、脱結合剤化されたブランク又は多孔性プレフォームは、第1の粒子及び第2の粒子を含み、先に結合剤によって占められていたゼロでない気孔を有する。
【0044】
次に、工程S6において、プレフォームの気孔に金属、例えば金属間化合物又はシリコンを含む溶融組成物を浸透させて、部品を得る。この浸透工程は、溶融浸透工程(MI又はRMI方法)に相当する。溶融組成物又は浸透組成物は、純粋な溶融シリコンからなるか、あるいはシリコン及び1種以上の他の構成成分の溶融合金の形態であることができる。工程S6の後、CMC部品が得られる。
【0045】
多孔質プレフォームの熱間等方圧圧縮の工程は、ブランク中に存在する結合剤の除去又は熱分解の工程S5の後、及び工程S6の前に気孔率が高すぎる場合には、気孔の一部を閉じるために浸潤の工程S6の前に実施される。この熱間等方圧圧縮工程は、多孔質プレフォームの均一な圧縮を確実にするために、ジャケット下で実施されることが好ましい。印加される圧力は、好ましくは、1000bar~2000barの間に含まれる。ジャケットは、グラファイト及び窒化ホウ素を含むことができる。この工程は、例えば、十分に連結されたポーラ-ネットワークを保ち、プレフォーム中の溶融金属のより良い毛管上昇を確実にする気孔率を有するために、一般に30~40%の間の脱結合剤化されたブランクの気孔率を10%程度の気孔率に減少させることができる。また、浸透前に行ったこの熱間等方圧圧縮工程により、浸透時に強化材と反応し得る液体金属の体積を減少させることが可能となり、液体金属による強化材の溶解のリスクを減少させることで強化材を保護することができる。熱間等方圧圧縮工程は、関与するマトリックス材料に応じて、1000~1600℃の間に含まれる温度で行うことができる。二ケイ化チタンマトリックスの場合、温度は、例えば1100~1500℃の間に含まれることができる。
図1