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特許7266610鋸歯状プロファイルを有する流れ分離スラットを有する、ターボ機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】鋸歯状プロファイルを有する流れ分離スラットを有する、ターボ機械
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/04 20060101AFI20230421BHJP
   F02C 7/045 20060101ALI20230421BHJP
   F02K 1/38 20060101ALI20230421BHJP
   B64D 27/10 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
F01D9/04
F02C7/045
F02K1/38
B64D27/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020543564
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 FR2019050352
(87)【国際公開番号】W WO2019158877
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】1851361
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲア・アギレラ,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】フィアック,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】グリューベル,マチュー・シモン・ポール
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101716995(CN,A)
【文献】特表2015-503694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184053(US,A1)
【文献】特開2003-090300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0022820(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/04
F02C 7/045
F02K 1/38
B64D 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流が上流から下流に、内部を流れることができる前部ファン(14)を有するターボ機械であって、ターボ機械が、全体軸(X)を有し、この軸周りに、前部ファンが回転することができ、前部ファンが回転する際に、前部ファンが下流に後流を生成し、ターボ機械が、
ファン(14)の下流の空気流を一次流れ(Fp)と二次流れ(Fs)とに分離するための、スラット(16)を有する環状分離壁(160)であって、スラット(16)が前縁部を有する、環状分離壁(160)と、
一次流れを案内するための第1のガイドベーン(IGV24)と、
二次流れを案内するための第2のガイドベーン(OGV26)と、を備え、
環状分離壁(160)のスラット(16)の前縁部が、連続した歯(30)と波状の凹部(32)とを有する鋸歯状プロファイル(28)を有し、
前縁部の延長の方向(L)に沿って繰り返される、基本の幾何学形状であって、前記方向(L)に沿う2つの連続する基本の幾何学形状(34、36)の2つの同一の波形が、その波形間に、前記方向に沿って距離(λ)を有する、基本の幾何学形状と、
前記方向(L)に対して垂直な最大振幅(h)であって、この方向(L)に沿って、前縁部が長さを有する最大振幅(h)と、
を規定し、かつ、以下の基準、
a)最大振幅(h)が、
【数1】
で40%以内の関係にしたがって寸法が決定され、
【数2】
において、
u’iを、方向iにおける、前部ファン(14)と第1のガイドベーン(24、IGV)との間の空気流(38)の速度、
rを、k方向における前部ファン(14)の後流の2つのポイント間の距離とし、
【数3】
を、プロファイルの弦(40)の方向、または、ターボ機械の全体軸(X)に平行な方向での、前部ファン(14)によって生成される空気流(38)の積分スケールとすることと、
b)前記距離(λ)が、以下の関係、
e<λ≦d-e
ここでd/λ≠1,2,3・・・
を尊重し、を、前部ファン(14)のブレード(140)の内の1つの後流内の、前部ファン(14)によって生成される空気流(28)の幅であって、前記幅が、前記後流によって生成された、最大の乱流の運動エネルギK_maxの半分が見られるポイントにおいて計算され、eが、
【数4】

から40%以内にあるものと概算可能である幅であり、
を、前部ファン(14)の、周方向に連続する2つのブレード(140)間の間隔とすることと、
c)前縁部の長さに沿う、基本の幾何学形状の、歯(30)、凹部(32)、または繰り返し周期の数が、第1のガイドベーン(24、IGV)の数に等しく、40%以内にあることと、
の規準a)、規準b)、規準c)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする、ターボ機械。
【請求項2】
第1のガイドベーン(24、IGV)が、全体軸(X)に対する角度位置(β)を有し、
前記全体軸(X)周りに、鋸歯状プロファイル(28)の前記凹部(32)の少なくともいくつかが、第1のガイドベーン(24、IGV)の角度位置(β)に対して角度的にオフセットしており、それにより、前記少なくともいくつかの凹部(32)が、周方向に連続した2つの前記第1のガイドベーン(24、IGV)の間に角度的に介在されている、請求項1に記載のターボ機械。
【請求項3】
前部ファン(14)が、前記全体軸(X)周りに所定の方向(Y)に回転するように構成されており、それにより、ファンの下流の空気流(38)が、前記全体軸(X)に対してある角度(α)で、ほぼ斜めに向けられ、
歯(30)が、前部ファン(14)下流の空気流のほぼ斜めの向き(α)に向かって、該空気流に面するように前記全体軸(X)周りで円周方向に傾斜する、請求項1または請求項2に記載のターボ機械。
【請求項4】
第1のガイドベーン(24、IGV)が、個々に、キャンバーライン(240)および前縁部(25)を有し、
歯(30)が、前記全体軸(X)周りに周方向に、かつ個々に、前縁部(25)が通る前記第1のガイドベーン(24、IGV)のキャンバーライン(240)に対する接線(42)方向にほぼ向けられ、前記接線が、ターボ機械の全体軸(X)の方向に対し、(β)の非ゼロの角度を形成する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のターボ機械。
【請求項5】
鋸歯状プロファイル(28)の凹部(320)が底部を有し、
前記全体軸(X)の方向において、凹部(320)の前記底部の少なくともいくつかが、第1の表面(Y1、Y2)に属し、第1の表面(Y1、Y2)は、前記全体軸(X)に交差し、第2の表面(Y’1、Y’2)よりもさらに下流または上流に配置されており、第2の表面(Y’1、Y’2)は、第1のガイドベーン(24、IGV)の前縁部(25)の少なくともいくつかが属する前記全体軸(X)と交差している、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のターボ機械。
【請求項6】
鋸歯状プロファイルの歯(30)および凹部(32)が、個々に、丸いまたは鋭い先端(31)を有する波形状を有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のターボ機械。
【請求項7】
航空機(100)を推進するように構成されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のターボ機械、または、航空機のターボ機械の試験台における、固定ブレードの航空音響管理の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの固定ブレードは、例えば、空気流を整えるために、回転体の下流に配置されたOGV(出口ガイドベーン)、または整流器に見られる。静翼またはガイドベーンとの用語が、回転ブレードと対照的なものとして、固定ブレードを示すために使用される。
【0003】
一実施例として、(前部)ファンと、二次空気脈流内に配置された、下流のガイドベーンと、を有するターボファンエンジンが与えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一定数のターボファンエンジン、特に、超高バイパス比ターボファンエンジン(UHBR、希釈率が15を超える、非常に高い希釈率のフェアリングファンのエンジン構成)では、ファンの直径を増大させ、ターボ機械を航空機に対して懸架する懸架ポッドの長さを低減することが予想され、こうして、ファンと、IGV(入口ガイドベーン)の吸気ガイドベーン、OGV、およびスラットとの間の距離を低減させることが考えられる。このタイプのエンジンでは、ファンによって発生する後流の、IGV、OGVおよびスラットとの干渉が、主要な広帯域のノイズの発生源の1つである。したがって、新たな技術的解決策が、現在の音響レベルを維持および低減するために、分析されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このため、(前部)ファンおよび、このファンがその周りを回転することができる全体軸(X)を有するターボ機械であって、このターボ機械が、
ファン下流の空気流を一次流れと二次流れとに分離するための、スラットを有する環状分離壁であって、スラットが前縁部を有する、環状分離壁と、
一次流れを案内するための第1のガイドベーン(IGV)と、
二次流れを案内するための第2のガイドベーン(OGV)と、
を備えたターボ機械に関する。
【0006】
ファンによる回転の中に置かれた流れと、二次ダクト内の整流器との間の干渉は、ターボ機械によって生じるか、動作状況に応じて航空機によって生じさえするノイズ全体に亘って支配的であると考えられるノイズの発生源にある。
【0007】
この文脈において、上述の問題の全てまたは一部を少なくとも制限するために、前記環状分離壁のスラットの前縁部が、歯と凹部とが連続した鋸歯状プロファイルを有するものとされることが提案される。
【0008】
換言すると、ファンブレードの後流と、スラットとの間の干渉ノイズを低減するために、波状の前縁部のスラットを使用することが、本明細書で提案されている。これに関し、スラットと、ファンブレードの後縁部との間の軸方向の距離が比較的短く、したがって、スラットは、OGVおよびIGVによって感知される空気の乱流より高いレベルの空気の乱流に曝される場合があることに留意されたい。
【0009】
鋸歯状、すなわち、波状の前縁部を有する翼型に関し、波形(以下を参照)とは関係なく、乱流を伴う干渉ノイズが、特に波形の凹部において生成され、この凹部で、圧力の変動がより強くなる。
【0010】
したがって、当然の目標は、ノイズ発生源と、凹部の底との間の干渉を最小にすることにより、波状の前縁部のスラットによって広がるノイズを低減するように、波形の幾何学形状を最適にすることである。
【0011】
この干渉を低減させるために、とりわけ、正弦波形または三角形とすることができる、波形を画定するために、3つの規準の全てまたは一部が考慮された。
【0012】
より正確には、
前縁部の延長の方向に沿って、それ自体が連続する基本の幾何学形状(このため、この幾何学形状のプロファイルは、周期的法則に従う)であって、前記方向に沿う2つの連続する基本の幾何学形状の2つの同一の波形が、その波形間に、前記方向に沿って距離λ(m)を有する、基本の幾何学形状と、
前記方向に対して垂直な、最大振幅h(m)と、
を画定し、かつ、以下の基準、
a)最大振幅が、
【数1】
で40%以内の関係にしたがって寸法が決定され、
【数2】
において、
u’(m/s)を、方向iにおける、ファンと第1のガイドベーン(5、IGV)との間の空気流の速度、
rを、k方向におけるファンの後流の2つのポイント間の距離(m)とし、
【数3】
を、ターボ機械の全体軸(図2のX軸)の方向(これに対して平行な方向)、または、鋸歯状プロファイルの弦(そのような弦が存在する場合であり、図3のアイテム40を参照)の方向での、ファンによって生成される空気流の積分スケール、とすることと、
b)前記距離(λ)(すなわち、2つの連続する歯の間の周期性または間隔)が、以下の関係、
e<λ≦d-e
ここでd/λ≠1,2,3・・・
を尊重し、
を、ファンのブレードの下流のファンによって生成される(空気流の)後流の損失を規定する幅(m)であって、前記幅が、最大乱流運動エネルギK_maxの半分が生成される空気流の対応する部分、このため、前記後流内において見られるポイントにおいて計算され、eが、
【数4】
(ここで、
【数5】
は、周方向に、ファンによって生成された空気流の積分スケールである)から40%以内にあるものと概算されることができる幅であり、
を、周方向に連続する2つのファンブレード間の間隔(m)(図13を参照されたい)とすることと、
c)鋸歯状プロファイルの前縁部の長さに沿う、基本の幾何学形状の、歯、凹部、または繰り返し周期の数が、第1のガイドベーン(IGV)の数の40%以下であることと、
の規準a)、規準b)、規準c)の少なくとも1つを満たす、波形を与える鋸歯を有するプロファイルを考慮することが提案されている。
【0013】
このテキストでは、
寸法のパラメータ(振幅、距離、速度など)は、SI単位系(国際単位系)で考慮され、
「40%以内」との許容範囲は、必要であれば、10%以内に低減される場合がある。このことは、前記波状の前縁部のスラットにより、前部ファンの一定の回転速度において、発散されるノイズがさらに低減されることに繋がる。
【0014】
さらに、このテキストの式における下付文字または指数(i、j、k)に関し、例えば、図13が、ファンブレードのプロファイル140、ならびに、下流の流れの後流およびスラット16を示しており、ここで、下付文字(i、j、k)が、
1に等しい場合、これらは「X」方向(ターボ機械の全体軸の方向)に対応し、
2に等しい場合、これらは「Y」方向(周方向)に対応する
ことに留意されたい。このため、スラット16の前縁部の延長の方向(図2または図13のL)は、周方向「Y」、または、図13
【数6】
の指数「2」に対応する。
【0015】
「r」が、積分スケールの計算のための、
【数7】
に関する上述の方程式の積分変数であることをも理解されたい。
【0016】
空気流を前記一次流れと前記二次流れとに分割するスラット(以下に16と付されている)のケースのように、明確な「弦」がない場合、「プロファイルの弦(以下に40と付されている)の方向」は、このケースでは、前記全体軸の方向に対応することが考慮される。
【0017】
通常、過度には歪曲されない、周期的な基本の幾何学形状を有するプロファイルを少なくとも有することで、ファンによって生成された空気流または流れが、歯(の頂部)において波状前縁部をバイパスし、凹部の近くで加速することがわかる。
【0018】
この場合、第1のガイドベーン(IGV)の前縁部のケーシング領域のレベルで、過度に大きいエリアの乱流、および/または、過剰な速度になることを避けるために、前記全体軸(X)周りに、鋸歯状プロファイルの凹部の少なくともいくつかが、第1のガイドベーン(IGV)の角度位置に対して角度的にオフセットしており、それにより、(少なくともいくつかの)凹部が、周方向に連続した2つの第1のガイドベーン(IGV)の間に角度的に介在されていることが提案されている。
【0019】
ファンの軸方向下流で生成された空気流は、渦を巻き、ファンの回転方向および速度によって強く影響される。
【0020】
歯の表面が、予想される音響の影響において、可能な限り完全に有効になることができるように、このことを考慮に入れるために、前記全体軸(X)に対して平行な方向に対して傾斜する形で歯が個別に展開し、それにより、これら歯が、ファンの回転により、こうして生成される回転流の、前記X軸に対しほぼ斜めになっている、回転方向に向けられるようになっていることが、提案されている。
【0021】
換言すると、
ファンが、前記全体軸(X)周りに所定の方向に回転するように構成されており、それにより、ファンの下流の空気流が、前記全体軸(X)に対し、ほぼ斜めに向けられているようになっており、
歯が、このため、前記全体軸(X)周りに周方向に、ファンの下流の空気流のほぼ斜めの向きに向けて傾けられて、ほぼこの斜めの向きに面することができる。
【0022】
空気流の方向が、ファンの速度に応じて変化できるように、歯がIGVのキャンバーの方向に傾けられることも可能である。
【0023】
両方のケースにおいて、歯は実際には個別に、問題となっている歯の頂部を通る、前記全体軸(X)に対して平行な方向に関し、軸方向に非対称となる。
【0024】
基本的に、傾斜は、歯に応じて異なる傾斜が可能である場合であっても、全ての歯に関して同じとなる。
【0025】
同様に、ファンの回転の影響を考慮するために、かつ、前記渦を巻く空気流のIGVに対する音響の影響を制限するために、
a)前記第2のガイドベーン(IGV)が、全体で平均キャンバーラインを有し、歯の少なくともいくつかが、これらIGVの平均キャンバーラインに対し、ほぼ接線方向に、前記全体軸(X)周りに周方向に向けられており、接線に関し、IGVの前縁部において、ターボ機械の全体軸(X)の方向に対して、ゼロではない角度(β)を形成することが可能であること、および/または、
b)前記全体軸(X)の方向において、鋸歯状プロファイルの凹部の底部が、これら底部の少なくともいくつかにおいて、前記全体軸(X)に交差する第1の表面に属し、この第1の表面が、第2のガイドベーン(IGV)の前縁部の少なくともいくつかが属する、前記全体軸(X)に交差する第2の表面よりもさらに下流または上流に配置されていることが、同様に提案されている。
【0026】
ポイント(a)は、IGVの形状に関し、空気流の好ましい角度方向を確実にし、ポイント(b)は、IGVに関する空気流の、継続的な下流の案内を確実にし、それにより、空気流が歯に沿って依然としてスライドしており、したがって、依然として、歯によって直接向けられる間、空気流が歯に当たるようになっている。
【0027】
形状に関し、鋸歯状プロファイルの歯および凹部が、丸いか鋭い頂部を有する、個別に波形状を有するものとすることが、さらに提案されている。
【0028】
丸い頂部の利点は、これにより、局所的な過度の機械的応力集中を避け、こうして、長期に亘って良好な強度を提供することである。鋭い頂部の利点は、ノイズ低減能力が向上することである。
【0029】
さらなる考慮事項は、鋸歯状プロファイルの歯および凹部が、局所的に直線状の側壁を有するように個別に形状を付され、同じ利点を有することである。
【0030】
航空機の推進に関して提供されているが、ターボ機械の特性は、陸または海の、他の用途に関連することができる。
【0031】
添付図面を参照しつつ、非限定的な実施例として与えられている、以下の詳細な説明を読むことにより、必要な場合、本発明がよりよく理解され、本発明の他の詳細、特徴、および利点が現れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】航空機のための通常のターボ機械の長手方向の断面図(X軸)である。
図2】本発明に係る解決策を有する、一次流と二次流との間の分離壁の上流ゾーン(スラット)を示す図である。
図3図2の細部IIIに対応する図である。
図4図1の細部IVに対応する図である。
図5】本発明に係る、様々な鋸歯状プロファイル形状を示す図である。
図6】本発明に係る、様々な鋸歯状プロファイル形状を示す図である。
図7】本発明に係る、様々な鋸歯状プロファイル形状を示す図である。
図8】本発明に係る、様々な鋸歯状プロファイル形状を示す図である。
図9】本発明に係る概略的な鋸歯状プロファイル、および、空気流の流線を示す図である。
図10】本発明に係る概略的な鋸歯状プロファイル、および、空気流の流線を示す図である。
図11】本発明に係る概略的な鋸歯状プロファイル、および、空気流の流線を示す図である。
図12】周方向Yにおける、一定のブレード高さでのファンブレードの後方の、一次流の乱流の運動エネルギK発生の曲線を示す図である。
図13】特に、前部ファンブレードと、流れを分離するスラットの狭められたプロファイルの実施例との間の、周方向Yに沿う乱流の空気流の強度曲線を示す図であり、この図は、スラットにおいて形成された一定の半径方向断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照すると、航空機100のターボジェット10が、概略的に示され、以下のように画定されている。
【0034】
ポッド12が、前方(図1では左側)に上流ファン14(AM)を含む、様々な構成要素のための外側ケーシングとして使用されている。
【0035】
ファン14の下流(AV)では、空気流(図4において、符号38で局所的に概略が示されている)が、環状壁160の分離スラット16により、一次空気流と二次空気流とに分離される。一次空気流は、第1のベーンとも呼ばれる、吸気ガイドベーン24、IGVにおいて、低圧コンプレッサ22に入る際に、内側の環状空気通路、または一次ジェット18を通って流れる。二次空気流は、分離スラット16により、外部の環状空気通路20(二次ジェット)内に、二次ベーンとも呼ばれる流出ガイドベーン26、OGVへ、次いで、エンジン流出部へと、方向が変えられる。
【0036】
図2では、分離スラット16の前部161をより正確に可視化することができる。この前部161は、最も上流側に位置する前縁部164を含み、また、この前部161において、分離スラット16の外壁162が、分離スラット16の内壁163と接触し、上壁162が二次ジェット20の内側シェルを形成する。
【0037】
本テキストでは、軸方向は、ターボ機械の関連する部分の回転の長手方向軸(X)に沿うか、平行に延びる任意の方向に言及する。この軸は、基本的に、ターボ機械の主要な回転軸である。径方向(Z軸)であるもの、および、周方向であるものは、それぞれ、X軸に対して径方向に延びるもの、および、X軸周りに延びるものである。X軸に対して、そのように径方向であるもの全ては、内部にあるものであるか内側のもの、および、外部にあるものであるか外側のものである。このため、内壁163は、分離スラット16の、径方向内側の壁である。さらに、上流および下流に対する任意の参照は、考慮されているタービンエンジン(の一部)のガスの流れに関連して考慮されるものとする。これらガスは、上流から入り、下流から出て、ほぼ前述の長手方向の回転軸に平行に循環する。
【0038】
さらに、添付図面、および、この添付図面に関する記載は、Xが上述のように規定されたものとして、慣習的な、垂直の基準マークX-Y-Zを参照しつつ規定されている。
【0039】
分離スラット16は中空である。壁の外側面162は、二次流れを受ける外側の環状空気通路20に対する径方向内側の境界として機能し、一方、壁の内側面163は、一次流れを受ける内側の環状空気通路18に対する径方向外側の境界として機能する。
【0040】
分離スラット16の下側壁163は、低圧コンプレッサ22の外側シェルを形成する。
【0041】
流出部26の下流の、分離スラット16の前縁部164からのIGV24の軸方向のオフセット(X)は、同じ前縁部164からのOGV26のオフセットより小であるが、分離スラット16の前縁部164に直接隣接している前部161の部分は明確である。
【0042】
したがって、このゾーンによって発生するノイズを制限することによる、航空音響管理の印加される影響に関し、この前縁部164が、歯30と凹部32とが連続するプロファイル28を有していることが予測されることができる。
【0043】
鋸歯28のプロファイルの前縁部に沿うノイズ発生源間の干渉を低減するために、図示のように、とりわけ、正弦波形であるか三角形とされることができる鋸歯に関する3つの規準のいくつかまたは全てを考慮することが提案されている。
【0044】
第1の規準:乱流のフルスケール。
乱流の積分スケールから、鋸歯の波長λと振幅hとを概算することが提案されている。
【0045】
より正確には、我々は、鋸歯状プロファイル28が、
前縁部164(図2および図3)の延長の方向(L)に沿って、それ自体が繰り返される基本の幾何学形状であって、2つの同一(または、2つの連続した歯の幾何学形状がわずかに変化している場合、+/-15%まで、おおよそ同一)である、2つの連続した基本の幾何学形状の波形、例えば、図5および図6の符号34、36などが、前記方向Lに沿って、その波形間に、この方向に距離λ(m)を有する、基本の幾何学形状と、
この方向Lに対して垂直な、最大振幅h(m)と、
を規定する波形を提供することを考慮することになる。
【0046】
基本の幾何学形状が、いくつかの、好ましくは2つの波形、2つの異なる歯30と2つの異なる凹部32とを有すると推定されると、図5に示すように、最大振幅hは、歯30の頂部、もしあれば、もっとも顕著な頂部と、凹部32の底部、もしあれば、最も深い底部との間の、X軸に沿う最大の距離として規定されており、このケースでは、
λ=λ1+λ2
となる。
【0047】
この第1の規準によれば、最大振幅hは、
【数8】
の関係に従って規定される寸法から、40%以内にあるような寸法であるように選択される。この一般式
【数9】
(※)
では、
u’(m/s)を、方向iにおける、ファン14とガイドベーンIGV24との間の空気流の速度、
rを、k方向におけるファンの後流の2つのポイント間の距離(m)、
【数10】
を、全体機械軸(図2)、または、プロファイルの弦40(図3)の方向において、ファン14によって生じる空気流38(図4)の積分スケールとする。
【0048】
(※)さらなる詳細または説明については、AIAAの会議論文「Wavy Leading Edge Airfoils Interacting having Anisotropic Turbulence」の、AIAA2017-3370、ページ4/16に公表されている、式(5)、および、その関連するデータを参照されたい。このことは、u’が、前記空気流の速度のn番目の構成要素を示し、rが、k番目の方向2つのポイント間の距離であり、ekが、k方向における単位ベクトルであり、
【数11】
が、アンサンブル平均の記号であることを特定している。したがって、
【数12】
は、k番目の空間的方向における前記速度のn番目とj番目の構成要素の積分長さスケールである。
【0049】
これら定義を使用して、プロファイル28の広帯域のノイズを最適化するために使用される鋸歯のサイズは、
【数13】
と、
【数14】
とを、それぞれ、翼型の翼弦40の方向(したがって、実質的に、前記全体軸に沿う)の乱流の空気流38の積分スケールと、延長方向Lでの前縁部164の積分スケールと、として(図5図8、および図13を参照)、
【数15】
および、
【数16】
を満たすものとする。
【0050】
これらの値は、等方性乱流の空気流が存在する中で、スラット16によって生じる広帯域のノイズの低減を最適化するために使用される。
【0051】
しかしながら、このことは、ファンが作動している場合、実際には等方性の乱流ではない、空気流またはファン14の後流38に関するケースとはならないものとして、考慮されることができる。
【0052】
したがって、以下の第2の規準を、164などのスラットの動作上の特殊性に対して好ましく適応させるために、単独で、または第1の規準と組み合わせて、適用することが決定されることができる。
【0053】
第2の規準:最大の音響放射を有する凹部の低減。
したがって、同時に、個別化された後流38によって影響される前縁部164の凹部32の数を低減することが提案されている。このため、図13により、我々は、空気流38の強度(または割合)Iの最大レベル(ゾーンIm)がファン14の各ブレード140の、後流にあることを見ることが可能である。これら最大レベルは、スラット16からの音響放射の振幅に直接関連している。
【0054】
凹部32の数を低減するために、ファンのブレード140の単一の後流が、実質的に同時に、周方向に連続する2つの凹部32に影響することを防止するように、鋸歯状プロファイルの前縁部164の設計および構成に、追加の条件を適用することが、最初に提案されている。
【0055】
この条件は、
λ>e
によって与えられ、ここでeは、ブレード140とほぼ連続している、ブレード140下流の、ファンによって発生する空気流38の後流の幅に対応する(図13参照)。この局所的な後流の幅は、図12に示すように、スラット16の前縁部164に面している、このブレードの後流において、最大の乱流の運動エネルギKmaxの半分が見られるポイントにおいて計算される。この値eは、テストデータから、または、
【数17】
の規準から概算されるものから、40%以内とすることができる。乱流の積分スケールも、計算流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)の計算から概算されることができる。
【0056】
第2に、周方向に連続する2つのファンブレード140間の間隔または距離dを考慮するために、別の条件を追加で適用することが提案されている。図13を参照されたい。図13では、距離dが、2つの連続するファンブレードの2つの後縁部間の距離として規定されている。この目的は、いくつかのファンブレード140の同時の後流の同時の影響に起因する、いくつかの凹部32の最大の音響放射を避けることである。ノイズの低減は、ブレードの数が、最大のノイズを放射する凹部の数に等しい場合に、影響が少なくなるものとされる。
【0057】
したがって、別の条件として、2つの連続する歯30間の周期性または間隔、すなわち、前記距離(λ)に関し、
e<λ≦d-e
ここでd/λ≠1,2,3・・・
が提案されている。したがって、
eは、ブレード140の下流でファンによって生成される乱流の空気流38(技術用語では「ファン後流」と呼ばれる)の幅(m)であって、前記幅が、最大の乱流の運動エネルギK_maxの半分が、好ましくは、図13を参考とするスラットの前縁部に面する(または近接する)、生成される空気流の対応する部分において見られるポイントにおいて計算される、幅(m)であり、eは、
【数18】
の規準から概算されるもの(上述の一般式を参照されたい)から、40%以内と概算されることができ、は、好ましくは、スラットの前縁部において(またはその近くで)、周方向に連続する2つのファンブレード140間の間隔(m)である。図13を参照されたい。
【0058】
規準「e」は、有利には、スラットの前縁部にもっとも近いポイントにおいて計算されることになる。
【0059】
第3の規準:IGVに関する凹部の配置。
通常、流れ38は、歯30の頂部において前縁部164をバイパスし、凹部32の底部の近位で加速する。図9から図11に示される流れのラインを参照されたい。
【0060】
したがって、前述の条件の全てまたは一部に対し、代替的または追加的に、別の条件を、鋸歯状プロファイルを有する前縁部164の設計および構成に適用することが提案されている。すなわち、鋸歯状プロファイルの前縁部164の長さ(方向Lであり、このため、ここでは、外辺部)に亘る基本の幾何学形状の、歯30、凹部32、または繰り返し周期の数(図5から図8のλを参照されたい)が、第1のIGVガイドベーン24の数に等しく、40%以内にある。
【0061】
図9図11に示すように、IGV24を、歯30を有する空力学的整列に配置することは、IGV24の数と、前縁部164における歯30の数とが、上述の割合にある場合、同様に好ましいものとなる。
【0062】
このため、乱流の顕著な領域が、ケーシング領域におけるIGVの前縁部に影響することを防止するために、X軸周りにおいて、鋸歯状プロファイル28の凹部32の少なくともいくつかを、IGV24の角度位置から、角度的に(周方向に)オフセットさせ、それにより、これら凹部32が、図9図11に示すように、2つの最初の周方向に連続するIGV24間に介在されるようにすることが提案されている。
【0063】
これらの図では、IGV24は、歯30と連続して、軸方向(X)に均等に配置されている。より正確には、各IGV24が、X軸に沿って実質的に整列して配置されており、上流において、歯30の頂部がIGV24の前方にある。
【0064】
図9では、この整列は全体X軸に平行である。また、歯30は、各々が頂部31を有しており、この頂部31では、X軸に対して平行な方向に関し、各個に対称である。この平行な方向は、考慮される歯30の頂部31を通っている(例えば平行な方向X1を参照されたい)。
【0065】
図10および図11では、IGV24は、X軸に対し、X-Y平面において角度βだけ傾斜している。歯30は、このため、このX軸周りに周方向に、同じ角度βで、共通のIGV24と同じ方向に傾斜されることができる。代替的には、ファン14の回転の影響を考慮すると(図2の実施例の矢印を参照されたい)、歯は、ファンの下流において、流れの方向に傾斜させることができる(このことは、図10および図11に示すように、X軸と角度αを形成することができる)。
【0066】
実施されたテストの最初の結果を考えると、15°から60°の間の角度αおよび/またはβが適切である場合がある。したがって、このことは限定的ではない。
【0067】
このため、IGV24(の前縁部)と、歯30(の前縁部)との両方が、実際、空気流38にほぼ面している。この空気流38は、その全体の斜めの方向Uが、ファン14の一致した回転方向(矢印S)を考慮し、Xに沿う、その成分Uxと、Yに沿う成分Uyとの結果である。
【0068】
さらに、歯30は、全体軸Xに対して平行な方向(図10のX’1および図11のX’2を参照されたい)に関し、各個に軸方向には対称ではなく、やはり、問題となっている歯の頂部31を通っている。
【0069】
これらの配置の目的は、2つの要素があると見なされることができる。第1に、凹部32に生じる、加速された乱流の流れと、IGVの前縁部25との間の干渉を避けることである(図9図11)。このことは、低圧コンプレッサ22のノイズに著しく寄与し得る。第2に、この技術的解決策は、この低圧コンプレッサ22の吸気を最適にするため、および、あらゆる空力学的損失を低減するために、使用されることができる。
【0070】
図10および図11に示すように、これら第1のガイドベーン/IGV24は、個別に、ファン14の回転の影響に対処するために、そのガイドベーンの翼弦に沿って、平均的なキャンバーライン240を示す場合がある。
【0071】
図示の実施例では、上側表面241は、正のY方向を向いており、下側表面は反対側にある。
【0072】
これらの条件下では、ファン14がこうして下流に生成する、渦を巻く空気流のIGV24に対する音響の影響を制限もするために、図10および図11に示すように、歯30が、前記全体軸X周りに周方向に、その前縁部25において、IGV24の平均キャンバーの前記ライン240に対する接線42の方向に全体的に向けられて、一次脈流ケーシングの近位においてIGVに影響する相対流れの発生を向上させ、こうして、剥離に関する潜在的な負の影響を、および/または、IGVのグリッド性能の損失を制限することも提案されている。「全体の」により、我々は、同一の角度から、40%までを意図している。図10および図11に示すように、前記接線は、ターボ機械の全体軸(X)の方向に対し、流れの方向において鋭角の、ゼロではない角度(β)を形成する場合がある。この流れの方向は、それ自体は下流を向いている。
【0073】
体系的に、全体軸Xに沿って、歯30は、図に見られることができるように、IGV24の前縁部2から上流に位置している。
【0074】
しかしながら、ノイズ低減に有益となり得る、歯のサイズの増大のために、依然としてこのX軸の方向において、鋸歯状プロファイル28の凹部32の底部320が、それらの少なくともいくつかに関し、第1の表面であって、前記X軸を横切り、図10ではY1、図11ではY2としてマークされ、(図10)に配置された、第1の表面に属し、または、第2の表面であって、やはりX軸を横切り、図10ではY’1、図11ではY’2とマークされ、IGV24の前縁部25の少なくともいくつかが属する第2の表面よりさらに上流(AM)または下流(AV、図11)にオフセットされることが、提案されている。図示に関わらず、このことは、先験的に、歯30の頂部および凹部32の底部320の形状とは無関係である。より上流側の配置が、同様に可能であり、上述の効果に匹敵する効果を有する。
【0075】
このことに関し、鋸歯状プロファイル28の歯30および凹部32は、ファンブレードによって生成される空気流の影響のノイズを低減することを補助し、また、波形のケースでは、局所的な応力の集中を低減するために、個別に、丸い(図10)か鋭い(図11)先端を有する、波状の形状を有することになる。
【0076】
これら歯30および凹部32の、図11で符号300が附される側壁の形状に関し、これら側壁は、個別に、かつ局所的に、直線状(図11)である場合があり、別の、潜在的に効率的な製造プロセスを提供する。このことは、前縁部に沿って、ノイズ発生源間のいくらかの非相関、または位相シフトを導入し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13