(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】ペプチドリンカーをコードする改良されたヌクレオチド配列
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20230421BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230421BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230421BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230421BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230421BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230421BHJP
A01K 67/027 20060101ALI20230421BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20230421BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230421BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20230421BHJP
C12N 15/81 20060101ALN20230421BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12P21/02 C
C12N1/19
C12N5/10
A01K67/027
A61K47/65
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/81 Z
(21)【出願番号】P 2020544858
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2019054697
(87)【国際公開番号】W WO2019162521
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-24
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517123807
【氏名又は名称】アブリンクス・エヌ・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ヴェロニク・ドゥ・ブラバンデール
(72)【発明者】
【氏名】アン・ブルージュ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・スタンセンズ
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル-ヤン・デュ・ボック
(72)【発明者】
【氏名】トム・メルチャーズ
(72)【発明者】
【氏名】アントニン・ドゥ・フジェロル
【審査官】中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102311503(CN,A)
【文献】国際公開第2017/186928(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/126213(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03037530(EP,A1)
【文献】特表2014-525736(JP,A)
【文献】特表2013-520974(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107557341(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0259923(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104277118(CN,A)
【文献】国際公開第02/029072(WO,A2)
【文献】特表2015-528003(JP,A)
【文献】tRNAの構造と反応,生物物理,1973年,Vol. 13, No. 4,p. 24-35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00- 15/90
C12P 1/00- 41/00
A01K 67/027
A61K 47/65
C07K 19/00
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドリンカーにおける
グリシン残基(Gly
)から
アスパラギン酸残基(Asp
)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法であって、
少なくとも一つのグリシンをコードするGGCコドンを含み、前記ペプチドリンカーをコードす
る核酸において、少なくとも1つのGGCコドン
をGGT/GGUコドンで置換する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
ペプチドリンカーは、配列モチーフGGGGS(配列番号1)
の1つまたはそれ以上のリピートを含むか、またはそれか
ら成る、請求項
1に記載のペプチドリンカーにおける
グリシン残基(Gly
)から
アスパラギン酸残基(Asp
)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法。
【請求項3】
ペプチドリンカーは、9GSリンカー、15GSリンカー、20GSリンカー、または35GSリンカーである、請求項
1または2に記載のペプチドリンカーにおける
グリシン残基(Gly
)から
アスパラギン酸残基(Asp
)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法。
【請求項4】
ペプチドリンカーは、35GSリンカーである、請求項
1~
3のいずれか1項に記載のペプチドリンカーにおける
グリシン残基(Gly
)から
アスパラギン酸残基(Asp
)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法。
【請求項5】
ペプチドリンカーは、2つまたはそれ以上のペプチド部分を連結する、請求項
1~
4のいずれか1項に記載のペプチドリンカーにおける
グリシン残基(Gly
)から
アスパラギン酸残基(Asp
)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法。
【請求項6】
ペプチド部分は、免疫グロブリン単一可変ドメインである、請求項
5に記載のペプチドリンカーにおける
グリシン残基(Gly
)から
アスパラギン酸残基(Asp
)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法。
【請求項7】
ペプチド部分は、VHH、ヒト化VHH、配列最適化VHH、また
はラクダ化VHである、請求項
6に記載のペプチドリンカーにおける
グリシン残基(Gly
)から
アスパラギン酸残基(Asp
)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法。
【請求項8】
ペプチドリンカーは、二価、三価、二重特異性、三重特異性、バイパラトピック、または四価の
抗原結合性構築物中に含まれている、請求項
5~
7のいずれか1項に記載のペプチドリンカーにおける
グリシン残基(Gly
)から
アスパラギン酸残基(Asp
)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法。
【請求項9】
ピキアが宿主細胞として使用される、請求項1~8のいずれか1項に記載のペプチドリンカーにおけるグリシン残基(Gly)からアスパラギン酸残基(Asp)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法。
【請求項10】
ピキア・パストリスが宿主細胞として使用される、請求項9に記載のペプチドリンカーにおけるグリシン残基(Gly)からアスパラギン酸残基(Asp)への誤取り込みのレベルを低下させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドリンカーをコードする改良されたヌクレオチド配列および核酸に関する。
【0002】
本発明はまた、ペプチドリンカーを含む(融合)タンパク質およびポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および核酸であって、ペプチドリンカーをコードするそのような改良されたヌクレオチド配列および核酸を含む、ヌクレオチド配列および核酸にも関する。
【0003】
本発明はまた、ペプチドリンカーをコードするそのような改良されたヌクレオチド配列および核酸の使用を含む、ペプチドリンカーを含む(融合)タンパク質およびポリペプチドを発現/生成するための方法にも関する。
【0004】
本発明の他の側面、実施形態、使用および利点は、本明細書におけるさらなる記載から明らかになるであろう。
【背景技術】
【0005】
2つまたはそれ以上のタンパク質、ペプチド、ペプチド部分(peptide moiety)、結合ドメインまたは結合ユニットを連結するためのペプチドリンカーの使用は、当技術分野においてよく知られている。しばしば使用されるペプチドリンカーの1つのクラスは、「Gly-Ser」すなわち「GS」リンカーとして知られている。これらは、グリシン(G)およびセリン(S)残基から本質的に成るリンカーであり、通常、GGGGSモチーフ(例えば、nが1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上であり得る式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nを有する)のようなペプチドモチーフの1つまたはそれ以上のリピートを含む。そのようなGSリンカーのしばしば使用されるいくつかの例は、15GSリンカー(n=3)および35GSリンカー(n=7)である。例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照されたい。
【0006】
そのようなGSリンカーを含むポリペプチドおよび(融合)タンパク質はしばしば、適切な宿主細胞または宿主生物における適切な発現により、場合により単離および/または精製のための適切な工程の後に、所望の融合タンパク質またはポリペプチドが得られるように、連結される関連するペプチド部分をコードする2つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物を適切に発現させることによって生成され、ここで、ペプチド部分をコードするこれらのヌクレオチド配列は、1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を介して、適切かつ作動可能に連結されている。このような遺伝子構築物のいくつかの好ましいが非限定的な例(連結されるペプチドの代表例としてナノボディを使用、表IIIの説明文を参照)が
図1に模式的に示されており、ここで、NB
1、NB
2、NB
A、NB
B等は、連結されるペプチド部分をコードするヌクレオチド配列を示し、そしてL
1、L
2、L
3等は、適切なGSリンカーをコードするヌクレオチド配列を示している。そのような遺伝子構築物は、DNAまたはRNAであり得、例えば、発現ベクターのような適切なベクターの形態であり得る。これはすべて、タンパク質工学の分野において周知である;例えば、本明細書において参照されるSambrookら、およびAusubelらのような標準的なハンドブックを参照されたい。
【0007】
また、遺伝暗号の縮重により、GSリンカーをコードするヌクレオチド配列において、4つの異なるコドンのそれぞれ、すなわち、GGU(またはGGT)、GGC、GGAおよび/またはGGGが、グリシン残基をコードするために使用されることも一般に知られている(同様に、GSリンカー中のセリン残基は、UCU(またはTCT)、UCC(またはTCC)、UCA(またはTCA)、UCG(またはTCG)、AGU(またはAGT)、および/またはAGCコドンによりコードされることが知られている)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Chenら、Adv.Drug Deliv.Rev.2013年10月15日;65(10):1357-1369
【文献】Kleinら、Protein Eng.Des.Sel.(2014年)27(10):325-330
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今回、GSリンカーをコードする改良されたヌクレオチド配列が、GSリンカー中のグリシン残基をコードするために過剰なGGAおよびGGGコドン(すなわち、GGT/GGUおよび/またはGGCコドンの量と比較して)を使用することにより提供されることが見出された。
【0010】
さらに、GSリンカーをコードする改良されたヌクレオチド配列が、GSリンカー中のグリシン残基をコードするために過剰なGGA、GGG、およびGGT/GGUコドン(すなわち、GGCコドンの量と比較して)を使用することにより提供されることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、第1の側面において、本発明は(本明細書でさらに定義される)GSリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、ここで、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGA、GGG、またはGGT/GGUのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0012】
この側面では、本発明はまた、(本明細書でさらに定義される)GSリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、ここで、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGAまたはGGGのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0013】
この側面では、本発明はまた、(本明細書でさらに定義される)GSリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、ここで、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)のような10%未満は、GGCである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0014】
さらなる側面では、本発明は、ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、ここで、前記ペプチドリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGA、GGG、またはGGT/GGUのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0015】
この側面では、本発明はまた、(本明細書においてさらに記載される)ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、グリシンおよびセリン残基を含むか、またはそれらから本質的に成り、ここで、前記ペプチドリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGAまたはGGGのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0016】
この側面では、本発明はまた、ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、ここで、前記ペプチドリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)のような10%未満は、GGCである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0017】
本明細書においてさらに記載されるように、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、一般に、少なくとも5アミノ酸残基から最大50アミノ酸残基またはそれ以上を含む(しかし実際には、通常、約15アミノ酸残基から約35アミノ酸残基のような10~40アミノ酸残基を含む)。また、本明細書においてさらに記載されるように、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、通常、セリン残基の数と比較して過剰なグリシン残基、例えば、各セリン残基に対し3~6個のグリシン残基を含む。また、しばしば、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、配列モチーフの(2つまたはそれ以上のような)1つまたはそれ以上のリピートを含む。
【0018】
さらなる側面では、本発明は(本明細書においてさらに記載される)ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、ここで、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、配列モチーフGGGGS(配列番号1)の(2つまたはそれ以上のような)1つまたはそれ以上のリピートを含むか、またはそれから本質的に成り、ここで、前記ペプチドリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGA、GGGまたはGGT/GGUのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0019】
この側面では、本発明はまた、(本明細書においてさらに記載される)ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、配列モチーフGGGGS(配列番号1)の(2つまたはそれ以上のような)1つまたはそれ以上のリピートを含むか、またはそれから本質的に成り、ここで、前記ペプチドリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGAまたはGGGのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0020】
この側面では、本発明はまた、(本明細書においてさらに記載される)ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、配列モチーフGGGGS(配列番号1)の(2つまたはそれ以上のような)1つまたはそれ以上のリピートを含むか、またはそれから本質的に成り、ここで、前記ペプチドリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)のような10%未満は、GGCである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0021】
例えば、本発明のこの側面では、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、配列モチーフGGGGSの2、3、4、5、6、7、8、9または10個のリピートを含むか、またはそれから本質的に成り得る。
【0022】
さらなる側面では、本発明は、(本明細書においてさらに記載される)ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n(ここで、nは1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上であり得る)を有し、ここで、前記ペプチドリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGA、GGG、またはGGT/GGUのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0023】
この側面では、本発明はまた、(本明細書においてさらに記載される)ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n(ここで、nは1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上であり得る)を有し、ここで、前記ペプチドリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGAまたはGGGのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0024】
この側面では、本発明はまた、(本明細書においてさらに記載される)ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n(ここで、nは1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上であり得る)を有し、ここで、前記ペプチドリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)のような10%未満は、GGCである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0025】
例えば、本発明のこの側面では、前記ヌクレオチド配列または核酸によってコードされるペプチドリンカーは、配列モチーフGGGGSの2、3、4、5、6、7、8、9または10個のリピートを含むか、またはそれから本質的に成り得る。
【0026】
さらなる側面では、本発明は、一般式
(Ax-Bp-Ay-Bq)n
のヌクレオチド配列および/または核酸であって、
式中:
- Aは、独立してGGU(またはGGT)、GGC、GGAおよび/またはGGGコドンであり得る(から選択され得る)グリシン残基をコードするコドンを表し;
- Bは、独立してUCU(またはTCT)、UCC(またはTCC)、UCA(またはTCA)、UCG(またはTCG)、AGU(またはAGT)および/またはAGCコドンであり得る(から選択され得る)セリン残基をコードするコドンを表し;
- (x+y)の合計が1~10、そして好ましくは3、4、5、6、7または8となるように、xは0~10(そして好ましくは0~5)の整数であり、yは0~10(そして好ましくは0~5)の整数であり;
- (p+q)の合計が2または1、そして好ましくは1となるように、pは0または1であり、qは0または1であり;
- nは1~10の整数であり(すなわち、ヌクレオチド配列および/または核酸は、モチーフ(Ax-Bp-Ay-Bq)[式中、A、B、p、q、x、およびyは、本明細書に記載のとおりである]のn個のリピートを含むように);
- モチーフ(Ax-Bp-Ay-Bq)の各リピートにおいて、各A、B、p、q、x、およびyは、独立して、本明細書に記載のとおりであってもよく(しかし、好ましい側面によれば、モチーフ(Ax-Bp-Ay-Bq)の各リピートにおいて、各A、B、p、q、x、およびyは同一である);
ただし、(表Iの式中のAで表される)グリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGA、GGG、もしくはGGT/GGUのいずれかであり;
ただし、(表Iの式中のAで表される)グリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGAもしくはGGGのいずれかであり;ならびに/または
ただし、(表Iの式中のAで表される)グリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)のような10%未満は、GGCである、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0027】
さらなる側面では、本発明は、一般式
(Ax-B)n
のヌクレオチド配列および/または核酸であって、
式中:
- Aは、独立してGGU(またはGGT)、GGC、GGAおよび/またはGGGコドンであり得る(から選択され得る)グリシン残基をコードするコドンを表し;
- Bは、独立してUCU(またはTCT)、UCC(またはTCC)、UCA(またはTCA)、UCG(またはTCG)、AGU(またはAGT)および/またはAGCコドンであり得る(から選択され得る)セリン残基をコードするコドンを表し;
- xは1~10の整数であり、そして好ましくは3、4、5、6、7または8であり;
- nは1~10の整数であり(すなわち、ヌクレオチド配列および/または核酸は、モチーフ(Ax-B)[式中、各A、B、およびxは、本明細書に記載のとおりである]のn個のリピートを含むように);
- モチーフ(Ax-B)の各リピートにおいて、各A、B、およびxは、独立して、本明細書に記載のとおりであってもよく(しかし、好ましい側面によれば、モチーフ(Ax-B)の各リピートにおいて、各A、Bおよびxは同一である);
ただし、(表Iの式中のAで表される)グリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGA、GGG、もしくはGGT/GGUのいずれかであり;
ただし、(表Iの式中のAで表される)グリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGAもしくはGGGのいずれかであり;ならびに/または
ただし、(表Iの式中のAで表される)グリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)のような10%未満は、GGCである、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0028】
さらなる側面では、本発明は、表Iに示される式の1つのヌクレオチド配列および/または核酸であって、式中:
- Aは、独立してGGU(またはGGT)、GGC、GGAおよび/またはGGGコドンであり得る(から選択され得る)グリシン残基をコードするコドンを表し;
- Bは、独立してUCU(またはTCT)、UCC(またはTCC)、UCA(またはTCA)、UCG(またはTCG)、AGU(またはAGT)および/またはAGCコドンであり得る(から選択され得る)セリン残基をコードするコドンを表し;
ただし、(表Iの式中のAで表される)グリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGA、GGG、もしくはGGT/GGUのいずれかであり;
ただし、(表Iの式中のAで表される)グリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGAもしくはGGGのいずれかであり;ならびに/または
ただし、(表Iの式中のAで表される)グリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)のような10%未満は、GGCである、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0029】
一般に、Gly-Serリンカーをコードし、前記GSリンカーのグリシン残基が主に、または排他的にGGA、GGG、またはGGT/GGUコドンによってコードされている、本明細書に記載のヌクレオチド配列および核酸は、本明細書において「本発明のGSリンカーをコードする配列」とも呼ばれる。一般に、Gly-Serリンカーをコードし、前記GSリンカーのグリシン残基が主に、または排他的にGGAまたはGGGコドンによってコードされている、本明細書に記載のヌクレオチド配列および核酸も、本明細書において「本発明のGSリンカーをコードする配列」と呼ばれる。一般に、Gly-Serリンカーをコードし、前記GSリンカーのグリシン残基がGGCコドンによってほとんど、またはまったくコードされていない、本明細書に記載のヌクレオチド配列および核酸も、本明細書において「本発明のGSリンカーをコードする配列」と呼ばれる。
【0030】
本発明の1つの好ましいが非限定的な側面においては、本発明のGSリンカーをコードする配列中のグリシン残基をコードするコドンの95%超から最大99%またはそれ以上(100%を含む)が、GGA、GGG、またはGGT/GGUのいずれかである。
【0031】
本発明の1つの好ましいが非限定的な側面においては、本発明のGSリンカーをコードする配列中のグリシン残基をコードするコドンの95%超から最大99%またはそれ以上(100%を含む)が、GGAまたはGGGのいずれかである。
【0032】
本発明の1つの好ましいが非限定的な側面においては、本発明のGSリンカーをコードする配列中のグリシン残基をコードするコドンの5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)が、GGCである。表IIは、本発明のGSリンカーをコードする配列のいくつかの代表的であるが非限定的な例を示している。本発明のGSリンカーをコードする配列の他の例は、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであろう。
【0033】
【0034】
【0035】
特定の説明、仮説またはメカニズムに限定されることなく、そのようなヌクレオチド配列の使用は(すなわち、より多くの量/割合のGGUおよび/またはGGCコドンを含むGSリンカーをコードするヌクレオチド配列の使用と比較して;またはより多くの量/割合のGGCコドンを含むGSリンカーをコードするヌクレオチド配列の使用と比較して)、アスパラギン酸残基が誤って(意図したグリシン残基の代わりに)所望のGSリンカーに含まれるリスクを減らす、および/または適切な宿主または宿主生物での発現時に、所望のGSリンカーに誤って含まれるアスパラギン酸残基の量を減らすと想定される。
【0036】
したがって、融合タンパク質またはポリペプチドの発現および/または生成に使用される場合、本発明はまた、発現産物中に得られる混入物(すなわち、意図されたグリシン残基の代わりに1つまたはそれ以上のアスパラギン酸残基を有するGSリンカーを含む混入物)の量も減らし、また、イソアスパラギン酸への望ましくない異性化のような、所望のGSリンカーにおけるアスパラギン酸残基の望ましくない存在に関連する有害な影響も減らし、同様に、タンパク質分解に対する感受性も高める。
【0037】
したがって、別の側面では、本発明は、(融合)タンパク質または融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列および/または核酸によってコードされる融合タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上のGSリンカーを介して適切に連結されている2つまたはそれ以上のペプチド部分を含み、ここで、1つまたはそれ以上のGSリンカーは、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列によって(すなわち、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超が、GGG、GGG、またはGGT/GGUのいずれかである、ヌクレオチド配列または核酸によって)コードされている、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0038】
この側面では、本発明はまた、(融合)タンパク質または融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列および/または核酸によってコードされる融合タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上のGSリンカーを介して適切に連結されている2つまたはそれ以上のペプチド部分を含み、ここで、1つまたはそれ以上のGSリンカーは、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列によって(すなわち、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超が、GGGまたはGGGのいずれかである、ヌクレオチド配列または核酸によって)コードされている、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0039】
この側面では、本発明はまた、(融合)タンパク質または融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列および/または核酸によってコードされる融合タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上のGSリンカーを介して適切に連結されている2つまたはそれ以上のペプチド部分を含み、ここで、1つまたはそれ以上のGSリンカーは、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列によって(すなわち、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)のような10%未満が、GGCである、ヌクレオチド配列または核酸によって)コードされている、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0040】
別の側面では、本発明は、(融合)タンパク質または融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列および/または核酸によってコードされる融合タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上のGSリンカーを介して適切に連結されている2つまたはそれ以上のペプチド部分を含み、ここで、GSリンカーをコードするヌクレオチド配列または核酸の一部は、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列(すなわち、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超が、GGG、GGG、またはGGT/GGUのいずれかである、ヌクレオチド配列または核酸)である、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0041】
この側面では、本発明はまた、(融合)タンパク質または融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列および/または核酸によってコードされる融合タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上のGSリンカーを介して適切に連結されている2つまたはそれ以上のペプチド部分を含み、ここで、GSリンカーをコードするヌクレオチド配列または核酸の一部は、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列(すなわち、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超が、GGGまたはGGGのいずれかである、ヌクレオチド配列または核酸)である、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0042】
この側面では、本発明はまた、(融合)タンパク質または融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、前記ヌクレオチド配列および/または核酸によってコードされる融合タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上のGSリンカーを介して適切に連結されている2つまたはそれ以上のペプチド部分を含み、ここで、GSリンカーをコードするヌクレオチド配列または核酸の一部は、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列(すなわち、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5%未満から最小1%またはそれ未満(0%を含む)のような10%未満が、GGCである、ヌクレオチド配列または核酸)である、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0043】
より一般的には、別の側面では、本発明は、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列を含む、または包含するヌクレオチド配列または核酸に関する。そのようなヌクレオチド配列または核酸は、好ましくは、適切な宿主細胞または宿主生物における発現の際に、少なくとも1つのGSリンカー(すなわち、本発明のGSリンカーをコードする配列によってコードされるGSリンカー)を含む(融合)タンパク質またはポリペプチドを発現するものである。
【0044】
別の側面では、本発明は、(融合)タンパク質またはポリペプチドを発現させるための、または生成するための方法であって、前記(融合)タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上のGSリンカーを介して適切に連結されている2つまたはそれ以上のペプチド部分を含み、方法は、適切な宿主細胞または宿主生物において、前記(融合)タンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および/または核酸を適切に発現させることを含み、ここで、前記ヌクレオチド配列および/または核酸は、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列を含む、または包含する、方法に関する(さらには本明細書において記載されるとおり)。前記方法は、こうして発現された(融合)タンパク質またはポリペプチドを単離/精製する任意の工程をさらに含み得る。
【0045】
別の側面では、本発明は、1つまたはそれ以上のGSリンカーを含む(融合)タンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および/または核酸を含む宿主細胞または宿主生物であって、前記ヌクレオチド配列、および/または核酸は、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列を含む、または包含する、宿主細胞または宿主生物に関する(さらには本明細書において記載されるとおり)。
【0046】
別の側面では、本発明は、(融合)タンパク質またはポリペプチドを発現させるための、または生成するための方法であって、前記(融合)タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上のGSリンカーを介して適切に連結されている2つまたはそれ以上のペプチド部分を含み、方法は、宿主細胞または宿主生物が前記(融合)タンパク質またはポリペプチドを発現させる/生成する条件下で、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列を含む、または包含するヌクレオチド配列および/または核酸を含む適切な宿主細胞または宿主生物を培養すること(さらには本明細書において記載されるとおり)を含む、方法に関する(ここで、前記融合タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上のGSリンカー、すなわち、本発明のGSリンカーをコードする配列によってコードされる1つまたはそれ以上のGSリンカーを含む)。前記方法は、こうして発現された(融合)タンパク質またはポリペプチドを単離/精製する任意の工程をさらに含み得る。
【0047】
さらなる側面では、本発明は、適切な宿主細胞または宿主生物における(融合)タンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列または核酸の発現によって得られた(融合)タンパク質またはポリペプチド(特に1つまたはそれ以上のGSリンカーを含む(融合)タンパク質またはポリペプチド)であって、前記ヌクレオチド配列または核酸は、本発明の1つまたはそれ以上のGSリンカーをコードする配列を包含する、または含む、(融合)タンパク質またはポリペプチドに関する(さらには本明細書において記載されるとおり)。
【0048】
さらなる側面では、本発明は(例えばGSリンカーのような)ペプチドリンカーにおけるGlyからAspへの誤取り込み(Gly to Asp misincorporation)のレベルを低下させるための方法であって、前記ペプチドリンカーをコードする核酸配列および/または核酸において、少なくとも1つのGGCコドンをGGG、GGAまたはGGT/GGUコドンで置換する工程を含む、方法を提供する。
【0049】
この側面では、本発明はまた、(例えばGSリンカーのような)ペプチドリンカーにおけるGlyからAspへの誤取り込みのレベルを低下させるための方法であって、前記ペプチドリンカーをコードする核酸配列および/または核酸において、少なくとも1つのGGCコドンをGGGまたはGGAで置換する工程を含む、方法も提供する。
【0050】
さらなる側面では、本発明は、多価(例えば、二価、三価、四価)の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはナノボディ中に存在する(例えばGSリンカーのような)ペプチドリンカーにおけるGlyからAspへの誤取り込みのレベルを低下させるための方法であって、前記ペプチドリンカーをコードする核酸配列および/または核酸において、少なくとも1つのGGCコドンをGGG、GGAまたはGGT/GGUコドンで置換する工程を含む、方法を提供する。
【0051】
この側面では、本発明はまた、多価(例えば、二価、三価、四価)の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはナノボディ中に存在する(例えばGSリンカーのような)ペプチドリンカーにおけるGlyからAspへの誤取り込みのレベルを低下させるための方法であって、前記ペプチドリンカーをコードする核酸配列および/または核酸において、少なくとも1つのGGCコドンをGGGまたはGGAで置換する工程を含む、方法も提供する。
【0052】
本明細書に記載のヌクレオチド配列および核酸は、DNAまたはRNA(そして好ましくは二本鎖DNA)であり得、そして遺伝子構築物の形態(例えば、発現ベクターのような適切なベクターの形態)であり得る。そのような遺伝子構築物は、例えば、(融合)タンパク質もしくはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に加えて、適切なプロモーターのような前記ヌクレオチド配列の発現のための1つもしくはそれ以上の適切な要素、リボソーム結合部位および開始コドンのような適切な翻訳開始配列、適切な終止コドン、および適切な転写終結配列、3’-もしくは5’-UTR配列、リーダー配列、選択マーカー、発現マーカー/レポーター遺伝子、ならびに/または(融合)タンパク質もしくはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にすべて適切に(そして適切な場合には作動可能に)連結されている、形質転換または組み込み(の効率)を助長もしくは増加し得る要素を含んでいてもよい。そのような要素の適切な例は、当業者には明らかであり、例えば、前記(発現)ベクターが発現される宿主または宿主細胞に依存し得る。
【0053】
本明細書に記載の遺伝子構築物はまた、意図された宿主細胞または宿主生物の形質転換に適した形態、意図された宿主細胞のゲノムDNAへの組み込みに適した形態、または意図された宿主生物における独立した複製、維持および/もしくは継承に適した形態であってもよい。例えば、本明細書に記載の遺伝子構築物は、例えば、プラスミド、コスミド、YAC、ウイルスベクターまたはトランスポゾンのようなベクターの形態であり得る。特に、ベクターは、発現ベクター、すなわち、in vitroおよび/またはin vivoで(例えば、適切な宿主細胞、宿主生物および/または発現系において)発現を提供することができるベクターであり得る。このような遺伝子構築物および(発現)ベクターは、本発明のさらなる側面を形成する。
【0054】
好ましくは、本明細書に記載の遺伝子構築物の調節およびさらなる要素は、それらが意図された宿主細胞または宿主生物においてそれらの意図された生物学的機能を提供することができるものである。
【0055】
例えば、プロモーター、エンハンサーまたはターミネーターは、意図された宿主細胞または宿主生物において「作動可能」であるべきであり、これは、(例えば)前記プロモーターが、作動可能に連結されているヌクレオチド配列(例えば、コード配列)の転写および/または発現を開始またはそうでなければ制御/調節できるべきであることを意味する(本明細書で定義されるとおり)。
【0056】
いくつかの特に好ましいプロモーターは、本明細書で言及されている宿主細胞における発現についてそれ自体既知のプロモーター、特に、本明細書で言及されているもののような細菌細胞における発現のためのプロモーターを含むが、限定はされない。
【0057】
選択マーカーは、(本明細書に記載のように)ヌクレオチド配列で(成功裏に)形質転換された宿主細胞および/または宿主生物が、(成功裏に)形質転換されていない宿主細胞/生物から、すなわち、適切な選択条件下で、区別されることを可能とするものであるべきである。そのようなマーカーのいくつかの好ましいが非限定的な例は、(カナマイシンもしくはアンピシリンのような)抗生物質に対する耐性を提供する遺伝子、温度耐性を提供する遺伝子、または形質転換されていない細胞または生物の生存に不可欠な培地中の特定の因子、化合物および/もしくは(食品)成分の非存在下で、宿主細胞もしくは宿主生物を維持できるようにする遺伝子である。
【0058】
リーダー配列は、意図された宿主細胞または宿主生物において、所望の翻訳後修飾を可能にする、および/または転写されたmRNAを細胞の所望の部分または細胞小器官に向けることを可能とするものであるべきである。リーダー配列はまた、前記細胞からの発現産物の分泌も可能にし得る。このように、リーダー配列は、宿主細胞または宿主生物において作動可能な任意のプロ、プレ、またはプレプロ配列であり得る。細菌細胞での発現には、リーダー配列は必要でない場合がある。例えば、抗体および抗体断片(単一ドメイン抗体およびScFv断片を含むが限定はされない)の発現および生成のためのそれ自体既知のリーダー配列が、本質的に類似の様式で使用される。
【0059】
発現マーカーまたはレポーター遺伝子は、宿主細胞または宿主生物において、遺伝子構築物(上に存在する遺伝子またはヌクレオチド配列)の発現の検出を可能にするものであるべきである。発現マーカーはまた、例えば、細胞の特定の部分もしくは細胞小器官中、ならびに/または多細胞生物の(a)特定の細胞、組織、器官もしくは部分中の発現産物の定位も場合により可能にし得る。そのようなレポーター遺伝子はまた、コードされたアミノ酸配列とのタンパク質融合物として発現させてもよい。いくつかの好ましいが非限定的な例は、GFPのような蛍光タンパク質を含む。
【0060】
適切なプロモーター、ターミネーター、およびさらなる要素のいくつかの好ましいが非限定的な例は、本明細書で言及されている宿主細胞における発現に使用できるもの、特に、本明細書で言及されているもののような細菌細胞での発現に適したものを含む。プロモーター、選択マーカー、リーダー配列、発現マーカー、ならびにターミネーター、転写および/または翻訳エンハンサー、および/または組み込み因子のような本明細書に記載の遺伝子構築物において存在する/使用されるさらなる要素の非限定的な(さらなる)いくつかの例については、Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(第2版)、Vols.1-3、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年);F.Ausubelら編、「Current protocols in molecular biology」、Green Publishing and Wiley Interscience、ニューヨーク(1987年)のような一般的なハンドブック、ならびにWO95/07463、WO96/23810、WO95/07463、WO95/21191、WO97/11094、WO97/42320、WO98/06737、WO98/21355、US-A-7,207,410、US-A-5,693,492およびEP1085089に示されている例を参照されたい。他の例は、当業者には明らかであろう。上記で引用した一般的な背景技術および本明細書で引用されているさらなる参考文献も参照されたい。
【0061】
本明細書に記載のヌクレオチド配列、核酸および遺伝子構築物を生成するための技術は当業者に明らかであり、例えば、自動化されたDNA合成を含み得るが、限定はされない。本明細書に記載の遺伝的構築物はまた、一般的に、本明細書に記載のヌクレオチド配列を上記の1つまたはそれ以上のさらなる要素に適切に連結することによっても提供される。しばしば、本明細書に記載の遺伝子構築物は、本明細書に記載のヌクレオチド配列または核酸をそれ自体既知の適切な(発現)ベクターに挿入することにより得られる。これらおよび他の技法は当業者には明らかであり、ここでも上記のSambrookら、およびAusubelらのような標準的なハンドブックを参照されたい。
【0062】
本明細書に記載の核酸および/または本明細書に記載の遺伝子構築物は、宿主細胞または宿主生物を形質転換するために、すなわち、コードされた(融合)タンパク質またはポリペプチドの発現および/または生成のために使用される。適切な宿主または宿主細胞は当業者に明らかであり、例えば、任意の適切な真菌、原核生物または真核生物の細胞または細胞株、または任意の適切な真菌、原核生物または真核生物は、例えば、以下であり得る:
【0063】
- 大腸菌;プロテウス、例えばプロテウス・ミラビリス;シュードモナス、例えばシュードモナス・フルオレッセンスの株のようなグラム陰性株;ならびにバチルス、例えばバチルス・サブチリスまたはバチルス・ブレビス;ストレプトミセス、例えばストレプトミセス・リビダンス;ブドウ球菌、例えばスタフィロコッカス・カルノサス;およびラクトコッカス、例えばラクトコッカス・ラクティスの株のようなグラム陽性株を含むが限定はされない細菌株;
【0064】
- トリコデルマ、例えばトリコデルマ・リーゼイ;ニューロスポラ、例えばニューロスポラ・クラッサ;ソーダリア、例えばソーダリア・マクロスポラ;アスペルギルス、例えばアスペルギルス・ニジェールまたはアスペルギルス・ソジェ;または他の糸状菌の種の細胞を含むが限定はされない真菌細胞;
【0065】
- サッカロミセス、例えばサッカロミセス・セレビシエ;シゾサッカロミセス、例えばシゾサッカロミセス・ポンベ;ピキア、例えばピキア・パストリスまたはピキア・メタノリカ;ハンセヌラ、例えばハンセヌラ・ポリモーファ;クルイベロミセス、例えばクルイベロミセス・ラクチス;アルクスラ、例えばアルクスラ・アデニニボランス;ヤロウィア、例えばヤロウィア・リポリティカの種の細胞を含むが限定はされない酵母細胞;
【0066】
- アフリカツメガエル卵母細胞のような両生類の細胞または細胞株;
【0067】
- スポドプテラSF9およびSf21細胞、またはシュナイダー細胞およびKc細胞のようなショウジョウバエに由来する細胞/細胞株を含むが限定はされない、鱗翅目由来の細胞/細胞株のような昆虫由来の細胞または細胞株;
【0068】
- 植物または植物細胞、例えばタバコ植物の細胞;および/または
【0069】
- 哺乳動物細胞または細胞株、例えばヒト由来の細胞または細胞株、CHO細胞、BHK細胞(例えばBHK-21細胞)およびHeLa、COS(例えばCOS-7)およびPER.C6細胞のようなヒト細胞または細胞株を含むが限定はされない哺乳類の細胞または細胞株;
【0070】
ならびに、当業者には明らかであろう抗体および抗体断片((単一)ドメイン抗体およびScFv断片を含むが限定はされない)の発現および生成のためのそれ自体既知の他のあらゆる宿主または宿主細胞。上記で引用した一般的な背景技術と同様に、例えば、WO94/29457; WO96/34103;WO99/42077;Frenkenら(1998年、Res.Immunol.149(6):589-99);RiechmannとMuyldermans(1999年、J.Immunol.Methods,231(1-2):25-38);van der Linden(2000年、J.Biotechnol.80(3):261-70);Joostenら(2003年、Microb.Cell Fact.2(1):1);Joostenら(2005年、Appl.Microbiol.Biotechnol.66(4):384-92);ならびに本明細書で引用されているさらなる参考文献も参照されたい。
【0071】
いくつかの好ましい発現宿主は、治療用タンパク質の発現/生成に使用されるピキア・パストリスおよびヒト細胞株である。
【0072】
本明細書において使用される「GSリンカー」という用語は、一般に、グリシンおよびセリン残基を含む、および/または本質的にそれらから成るペプチドリンカーを指す。
【0073】
一般に、そのようなGSリンカー(および本明細書において参照される他のペプチドリンカー)は、約10アミノ酸残基、約15アミノ酸残基、約20アミノ酸残基、約25アミノ酸残基、約35アミノ酸残基、そして最大50アミノ酸残基またはそれ以上のような、少なくとも5アミノ酸残基を含む(ただし通常は、約15から約35アミノ酸残基のような約10から40アミノ酸残基を含むリンカーが、しばしば実際に使用される)。
【0074】
通常、そのようなリンカーは、セリン残基の数と比較して過剰なグリシン残基、例えば、各セリン残基に対して3~6個のグリシン残基を含む。通常、そのようなリンカーはまた、配列モチーフの(2つまたはそれ以上のような)1つまたはそれ以上のリピートを含む。また、最も広い意味での本発明において、(セリン残基の代わりにグルタミン酸残基またはスレオニン残基のような)1つまたはそれ以上の他のアミノ酸の存在は除外されないが、本明細書において使用されるリンカーは、好ましくは、グリシンおよびセリン残基のみを含む(またはそれらのみを含むことが意図されている)。
【0075】
当業者には明らかなように、タンパク質工学の分野で最も一般的に使用されている(そして本発明の実施においても好ましい)GSリンカーは、GGGGS(配列番号1)モチーフの1つまたはそれ以上のリピートを含むリンカー、すなわち、一般式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nのリンカーであり、ここでnは1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上であり得る。いくつかの例は、15GSリンカー(n=3)および35GSリンカー(n=7)である。例えば、Chenら、Adv.Drug Deliv.Rev.2013年10月15日;65(10):1357-1369;およびKleinら、Protein Eng.Des.Sel.(2014年)27(10):325-330)を参照されたい。
【0076】
本発明のGSリンカーをコードする配列によってコードされるGSリンカーは、任意の所望のタンパク質、ペプチド、ペプチド部分、結合ドメインまたは結合ユニットを適切な様式で一緒に連結して、(融合)タンパク質またはポリペプチドを形成するために使用することができ、ここで、そのようなタンパク質、ペプチド、ペプチド部分、結合ドメインまたは結合ユニットの2つまたはそれ以上が1つまたはそれ以上のGSリンカーによって一緒に連結される。一般に、そして当業者には明らかであるように、本発明のGSリンカーをコードする配列によってコードされるGSリンカーは、GSリンカーが使用され得る任意の目的、および/または従来技術においてGSリンカーが使用された任意の目的に使用できる。本発明のGSリンカーをコードする配列(およびそれによってコードされるGSリンカー)のそのような使用および応用は、当業者には明らかであろう。
【0077】
特定の一つの側面では、本発明のGSリンカーをコードする配列によってコードされるGSリンカーは、(2つまたはそれ以上のナノボディ、例えばVHH、ヒト化VHH、配列最適化VHH、またはラクダ化ヒトVHのようなラクダ化VHのような)2つまたはそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを一緒に連結して、二価、三価、二重特異性、三重特異性、バイパラトピック、四価、または他の適切なISVD構築物を形成するために適切に使用できる。例えば、限定されるものではないが、WO2004/062551、WO2006/122825、WO2008/020079、WO2009/068627のような、Ablynx N.V.による様々な出願を例えば参照されたい。GSリンカーはまた、例えば、治療標的に対する1つまたはそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはナノボディを、血清アルブミンに対する免疫グロブリン単一可変ドメインまたはナノボディのような、半減期の延長(例えばt1/2-betaの増加)を提供する免疫グロブリン単一可変ドメインまたはナノボディに連結するために使用してもよい。ここでも、これらの使用または応用において、本発明のGSリンカーをコードする配列(およびそれによりコードされるGSリンカー)は、GSリンカーをコードする既知のヌクレオチド配列と本質的に同じ方法で使用することができる。そのような免疫グロブリン単一可変ドメインまたはナノボディ構築物のいくつかの具体的であるが非限定的な例が表IIIに模式的に示されており、また、これらの構築物をコードする核酸も
図Iに模式的に示されている(表IIIの説明が適用される)。本明細書の開示に基づき、当業者には他の例が明らかであろう。
【0078】
【0079】
ここで、本発明を以下の非限定的な好ましい側面、実施例、および図によってさらに記述する:
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】リンカーを含むナノボディ構築物のいくつかの非限定的な例を示す概略図である。
【
図2】本発明を例示するために実施例1で使用されている四価のナノボディ構築物を示す概略図である。
図2はまた、この構築物におけるT10ペプチドの所在も示している。
【
図3】ペプチドT10のアミノ酸配列(配列番号10)およびコドン使用頻度(配列番号11)を示す図である。配列中、アスパラギン酸による誤取り込みが観察されたアミノ酸残基とコドンは、太字/下線で示されている(イタリック/下線で示されている残基/コドンについては、誤取り込みが予想され得るが、観察されなかったことに注目)。
【
図4】ナノボディ構築物A中の35GSリンカーのアミノ酸配列(配列番号12)とコード配列(配列番号13~15)を示す図である。アスパラギン酸(GGTおよびGGC)による誤取り込みの影響を受けやすいグリシンの特定のコドンが、太字/下線で示されている。セリンのコドンは、小文字で示されている。
【
図5】UV254nm(赤色(下)の線)とUV280nm(青色(上)の線)で記録したSource 15Sカラム(GE Healthcare Life Sciences)とpH勾配(緑色の線(green trace)、CX-1 pH勾配バッファーA(pH5.6)およびB(pH10.2)、Thermo Scientific)における精製したナノボディ構築物Aの陽イオン交換クロマトグラムを示す図である。pHの記録は灰色の線で示されている。プレピークは、ナノボディ構築物Aの酸性バリアントである。画分14、15、16、および17は、続く酸性バリアントの特性評価のためにプールされ、画分18はメインピークの特性評価のためにプールされた。
【
図6】精製したナノボディ構築物Aの陽イオン交換分画から回収した酸性バリアント(上のパネル)とメインピーク(下のパネル)で得られたMax-entデコンボリューション質量スペクトル(Max-ent deconvoluted mass spectra)を示す図である。酸性画分で測定された最も重要な質量は59689.4Daであり、これはpH-IEXメインピーク画分で測定されたナノボディ構築物Aの質量よりも58ダルトン高い(59630.9Da、下のパネルを参照)。
【
図7-1】アスパラギン酸のN末端で切断するエンドプロテアーゼであるAsp-Nの消化によって生成されたトリプシンペプチドT10のペプチド断片(配列番号16~33)を列挙する図である。各切断部位は、アスパラギン酸に交換されたグリシンに対応している。
【
図8】(a)ナノボディ構築物A;(b)pH-IEXによりAsp誤取り込みを有するバリアントを枯渇させた後のナノボディ構築物A;(c)GGCコドン配列の100%がGGG、GGA、またはGGTコドン配列で置換されているナノボディ構築物AのGSリンカー内の3つの部位(C1、C2、およびC3)のGlyからAspへの誤取り込みの相対レベルを示す図である。
【
図9】実施例3に記載されているように、GlyからAspへの誤取り込みに対する結合価およびリンカーの長さの影響を調査するために作製された10個の構築物を示す図である。
【
図10】9GSリンカー内の2つの部位(C1およびC2)のGlyからAspへの誤取り込みの相対レベルを示す図である。(A)二価の構築物、(B)三価の構築物、(C)四価の構築物である。
【
図11】20GSリンカー内の5つの部位(C1、C2、C3、C4、およびC5)のGlyからAspへの誤取り込みの相対レベルを示す図である。(A)二価の構築物、(B)三価の構築物、(C)四価の構築物である。
【
図12】35GSリンカー内の9つの部位(C1からC9)のGlyからAspへの誤取り込みの相対レベルを示す図である。(A)二価の構築物、(B)三価の構築物、および(C)四価の構築物、(D)GGCコドンを持たない四価の構築物である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本出願を通して引用されるすべての参考文献(参考文献、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)の内容全体は、特に上記において参照される教示について、参照により明確に本明細書に組み入れられる。
【0082】
実験パート
【実施例1】
【0083】
四価のナノボディ構築物のための発現ベクターの構築
この実施例では、非限定的な例として、35GSリンカーによりヘッドトゥーテール(head-to-tail)で融合された重鎖ラマ抗体の4つの配列最適化可変ドメインから成る四価のナノボディ構築物を使用して、本発明が説明される(
図2を参照)。使用された全体的な構築物(本明細書では「ナノボディ構築物A」とも呼ばれる)は、次の式で模式的に表され、
[A]-[35GSリンカー]-[B]-[35GSリンカー]-[C]-[35GSリンカー]-[C]
式中、[A]、[B]および[C]は、3つの異なるナノボディを表し、[35GSリンカー]は、35GSリンカーを表す(
図2も参照)。
【0084】
ナノボディ構築物Aのコード情報を含むDNA断片を、ナノボディ(登録商標)の配列がアルファ交配因子(aMF)シグナルペプチド配列の下流にインフレームとなるようにして、ゼオシン(商標)耐性遺伝子を含むピキア発現ベクター(Naatsaariら、PLoS One.2012年;7(6):e39720によって記述されたオリジナルのpPpT4_Alpha_S発現ベクターの派生物)のマルチクローニングサイト内にクローニングした。
【0085】
ピキア・パストリスにおけるナノボディ構築物Aコード配列の形質転換、発現および構築物の分泌
形質転換および発現の研究は、ピキアNRRL Y-11430株(ARS Patent Culture Collection、ピオリア市ノースユニバーシティストリート1815)で行なった。このWT株を使用して、内因性ピキア補助タンパク質KAR2(GeneID:8198455)およびナノボディ構築物Aを過剰発現する派生株を作製した。ナノボディ構築物AとKar2はどちらも、AOX1メタノール誘導プロモーターの制御下にあった。形質転換は、標準的な手法により、標準的なハンドブックに従って実行した(例えば、Methods In Molecular Biology 2007年、Humana Press Inc.を参照)。ゼオシンを含む選択培地上で形質転換体を生育させ、多数の個別のコロニーを選択し、ピキアのプロトコールに記載されているようにして(再び標準的なハンドブックを参照)、メタノールの添加により誘導したナノボディ構築物Aの発現レベルについて、BMCM培地中での5mL振盪フラスコ培養において評価した。発現の最も良いクローンを標準的な流加発酵に用いた。グリセロール流加培養(glycerol fed batch)を行ない、メタノールの添加により誘導を開始させた。生産は2Lスケール、pH6、30℃、4ml/L*hのメタノール供給速度で、複合培地中で行なった。
【0086】
流加発酵後のナノボディ構築物Aの精製
ナノボディ構築物Aは、次のように精製した:発酵後、細胞培養液の一部を中空糸750kDaにより浄化した後、CIEX Poros XS樹脂を使用した捕捉工程、CIEX Nuvia HR-S樹脂を使用した洗練工程、そして、AIEX Sartobind STIC PAによるフロースルー工程。最後に、Hydrosart 10kDメンブレンを使用したUF/DFにより、濃縮およびバッファー交換工程を実行した。
【0087】
イオン交換クロマトグラフィーによる精製したナノボディ構築物Aの分析および酸性バリアントの分子量の決定
精製したナノボディ構築物Aを、pH勾配(pH-IEX)を使用した強陽イオン交換クロマトグラフィーにより分析した。
図5に示されているクロマトグラムは、メインピークに関連する一群のプレピークとして溶出するナノボディ(登録商標)Aの酸性バリアントを示している。酸性ピークとメインピークの画分の回収後、エレクトロスプレーQ-TOF質量分析によって分子量を決定することにより、酸性バリアントの性質を調査した。デコンボリューション質量スペクトルが
図6に示されている。酸性画分で観察された主な質量は59689.4Daであり、これはpH-IEXメインピーク画分で測定されたナノボディ構築物Aの質量よりも58ダルトン高い。メインピーク画分(59630.9Da)のナノボディ構築物Aについて測定された質量は、ナノボディ構築物Aの理論上の分子量よりも12ppm高く、つまり機器の測定誤差内である。
【0088】
58ダルトンの質量差は、グリシンと酸性アミノ酸アスパラギン酸との交換によって説明できる。
【0089】
質量分析と組み合わせたペプチドマップ逆相UHPLC(RP-UHPLC-MS)による酸性バリアントの分析と同定
ナノボディ構築物Aの酸性バリアント画分のペプチドマップ分析(トリプシン消化後)は、58ダルトンの質量増分を有する2つのペプチドの同定をもたらした。
図2に模式的に示されているように、これら2つのペプチドのうちの1つ(ここでは「T10ペプチド」と呼ぶ)は、構築物中の第1のナノボディのC末端アミノ酸残基のいくつか、第1の35GSリンカー、および構築物中の第2のナノボディのN末端アミノ酸残基のいくつかを含む、配列の一部に対応している。T10ペプチドのアミノ酸配列(配列番号10)およびヌクレオチド配列(配列番号11)が
図3に示されている。
【0090】
質量分析計では衝突が誘導する断片化のためにT10ペプチドの部分的な配列カバレッジしか得られなかったため、トリプシン消化物のT10ペプチドを逆相クロマトグラフィーで分画し、その後、酵素Asp-Nで消化した。酵素Asp-Nは、アスパラギン酸残基のN末端側のペプチド結合を加水分解するエンドプロテアーゼである。このペプチドの配列にはアスパラギン酸残基がないため、切断はGly->Asp誤取り込み事象の場合にのみ予想された。RP-UHPLC-MSによるT10ペプチドのAsp-N消化の分析では、58ダルトンの質量増分を有するT10ペプチドの断片に対応する質量を有する様々な断片が同定された。
図7に示すように、合計9つのAsp-N断片化部位が同定された。まったく予期せぬことに、Aspの誤取り込みはGGCコドンでのみ発生し(
図3も参照)、GGTコドンでは発生しないことが観察されたが、両方のグリシンコドンは、原則として、アスパラギン酸tRNA(アンチコドンCUGおよびCUAを有する)によって誤読され得るものである。どちらの場合も、アミノ酸の誤取り込みを引き起こすG-(mRNA)/U-(tRNA)ミスマッチ、つまり、翻訳中の最も一般的なミスマッチが、ウォッブル位置ミスマッチ(C/Uおよび/またはU/U)と共に存在している。したがって、より一般的には、本発明によれば、GGAまたはGGG以外の(すなわち、GGAまたはGGGではない)グリシンをコードするコドンが本発明のヌクレオチド配列中に存在する場合、コドンはGGCよりもむしろGGTまたはGGUであることが好ましい。
【0091】
前述のように、ナノボディ構築物Aのペプチドマップ分析でも、58ダルトンの質量増分を有する第2のペプチドの同定をもたらした。このペプチドは、ナノボディ構築物A中に存在するナノボディの1つのCDRの1つに対応することが見出された。さらなる分析(データは示さず)は、このペプチドについても、観察された58ダルトンの質量増分は、Aspの誤取り込みによる可能性が最も高いことを確認した。
【実施例2】
【0092】
35GSリンカーの核酸配列におけるコドン最適化
ナノボディ構築物Aの35GSリンカー配列中に存在するGGCコドン配列を、GGG、GGA、またはGGTコドン配列に置換した。
【0093】
得られたナノボディ構築物をピキアNRRL Y-11430株において上記のように発現させ、精製した。得られたポリペプチドのAsp誤取り込みのレベルを、上記と同じ方法で測定した。質量分析計を9つの誤取り込み部位のうち3つを定量化するように調整した。
【0094】
参照ナノボディ構築物A(コドン最適化なし)で得られたポリペプチドと、コドン最適化ナノボディ構築物Aで得られたポリペプチドの35GSリンカーにおけるAsp誤取り込みの相対レベルを
図8に示す。
【実施例3】
【0095】
他のリンカーにおけるAsp誤取り込みの観察
この実施例では、GlyからAspへの誤取り込みに対するナノボディの結合価とリンカーの長さの影響を調べた。このために、それぞれ9GS、20GSまたは35GSリンカー配列とナノボディビルディングブロック配列(ナノボディ構築物A中に存在するナノボディビルディングブロック配列とは異なる)を有する二価、三価、および四価の構築物を作製した。追加の四価の35GSリンカーナノボディ構築物も、GGCコドンなしで作製した。10個の新たな構築物が
図9に示されている。9GSリンカーは2つのGGCコドンを含み、20GSリンカーは5つのGGCコドンを含み、そして35GSリンカーは9つのGGCコドンを含んでいる。
【0096】
GlyからAspへの誤取り込み後におけるそれぞれの可能な新たなペプチドを、上記の質量分析法によりフォローした。この方法をさらに最適化して、9つのAsp-N断片化部位すべての同時定量化を可能とした。誤取り込みの結果が、
図10(9GSリンカー)、
図11(20GSリンカー)、および
図12(35GSリンカー)に示されている。
【0097】
これらの結果から、結合価またはリンカーの長さは、GlyからAspへの誤取り込みのレベルに影響を与えないと結論付けることができる。GGCコドンの除去またはGGCコドンの数の削減は、GlyからAspへの誤取り込みのレベルを明らかに低下させる。
【0098】
最後に、本明細書では主にGSリンカーに関して本発明を記述しているが、グリシン残基を含む他のペプチドリンカーに本発明を一般に適用できることが当業者には明らかであろう。
【0099】
よって、さらなる側面では、本発明は、ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、ヌクレオチド配列および/または核酸によってコードされるペプチドリンカーは4つまたはそれ以上のグリシン残基を含み、ここで、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGA、GGGまたはGGT/GGUのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸に関する。
【0100】
この側面では、本発明はまた、ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、ヌクレオチド配列および/または核酸によってコードされるペプチドリンカーは4つまたはそれ以上のグリシン残基を含み、ここで、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの70%超、好ましくは85%超、より好ましくは95%超から最大99%およびそれ以上(100%を含む)のような90%超は、GGAまたはGGGのいずれかである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【0101】
この側面では、本発明はまた、ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列および/または核酸であって、ヌクレオチド配列および/または核酸によってコードされるペプチドリンカーは4つまたはそれ以上のグリシン残基を含み、ここで、GSリンカー中のグリシン残基をコードするコドンの30%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは5%未満から最小1%およびそれ未満(0%を含む)のような10%未満は、GGCである、ヌクレオチド配列および/または核酸にも関する。
【配列表】