(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】糖尿病の治療において使用するためのトリアジン誘導体を含むフィルムコーティング錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/53 20060101AFI20230421BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20230421BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20230421BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20230421BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230421BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230421BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230421BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230421BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230421BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
A61K31/53
A61K9/30
A61K9/32
A61K9/36
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
A61P3/10
(21)【出願番号】P 2020561073
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065158
(87)【国際公開番号】W WO2019238647
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-01-04
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512169062
【氏名又は名称】ポクセル
【氏名又は名称原語表記】POXEL
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ボルズ
(72)【発明者】
【氏名】マクシム・ロジエ
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531646(JP,A)
【文献】特表2009-523141(JP,A)
【文献】特開2009-137996(JP,A)
【文献】特表2016-520108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00 ~ 33/44
A61K 47/00 ~ 47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムコーティング錠剤であって、
(a)
ポビドン及びクロスポビドンを含まない内部コアであって、
- 前記錠剤の総重量に対して少なくとも80重量%の量の、2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるトリアジン誘導体、
-
結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロー
ス、
- 少なくとも1つの流動化剤、
- 少なくとも1つの崩壊剤、及び
- 少なくとも1つの滑沢剤
を含む、内部コア、並びに
(b)少なくとも1つの水溶性フィルム形成剤を含む外部コーティング
を含む、フィルムコーティング錠剤。
【請求項2】
前記トリアジン誘導体が、(+)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその薬学的に許容される塩、(-)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその薬学的に許容される塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項3】
前記トリアジン誘導体が、(+)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及び薬学的に許容される塩からなる群から選択され、任意に(-)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその薬学的に許容される塩と、少なくとも95:5の(+):(-)の重量比で混合されていることを特徴とする、請求項2に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項4】
前記塩が、塩酸塩であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項5】
前記水溶性フィルム形成剤が、アクリルポリマー又はセルロースポリマーであり、前記コーティングが任意に、乳白剤及び/又は着色剤、可塑剤、充填剤、甘味料、滑沢剤、界面活性剤、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物を更に含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項6】
前記水溶性フィルム形成剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項7】
前記錠剤が、250~1000mgの前記トリアジン誘導体を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項8】
前記錠剤が、500又は750mgの前記トリアジン誘導体を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項9】
前記流動化剤が、無水コロイドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、タルク、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項10】
前記流動化剤が、無水コロイドシリカであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項11】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、微結晶性セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、グアーガム、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項12】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項13】
前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、スクロース脂肪酸エステル、タルク、及びその混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項14】
前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムであることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項15】
前記結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロースからなることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項16】
- トリアジン誘導体:
少なくとも8
5重量%
- 結合剤:1.5~4.5重量%
- 崩壊剤:1.5~3重量%
- 流動化剤:0.8~2.5重量%
- 滑沢剤:0.5~1.5重量%
- コーティング:2~3重量%
を含み、ただし、上記成分の総含有量は、100重量%になることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項17】
前記トリアジン誘導体が、2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン又はその塩酸塩であり、前記結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロースであり、前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムであり、前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムであり、前記流動化剤が、無水コロイドシリカである、請求項16に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項18】
請求項1から
17のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤を製造する方法であって、以下の連続する工程:
1)高剪断ミキサーにおいて、造粒助剤として水を使用して、前記トリアジン誘導体を、ヒドロキシプロピルセルロース及び任意に前記流動化剤の一部と湿式造粒する工程、
2)顆粒を、乾燥させる工程、
3)前記顆粒を、残りの添加剤と混合する工程、
4)得られた混合物を、打錠機において圧縮する工程、並びに
5)このようにして得られた錠剤を、コーティングする工程、
を含む、方法。
【請求項19】
医薬として使用するための、請求項1から
17のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項20】
糖尿病及び/又はその合併症の治療において使用するための、請求項1から
17のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部コア及び外部コーティングを含むフィルムコーティング錠剤(film-coated tablet)に関し、内部コアは、高い割合の特定のトリアジン誘導体及び特定の結合剤を含む。本発明はまた、糖尿病及び/又はその合併症の治療におけるこれらの錠剤の使用を対象とする。本発明は更に、これらのフィルムコーティング錠剤を製造する特定の方法を対象とし、これは、高剪断ミキサーにおける造粒工程を包含する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病(Diabetes mellitus)は、複数の病因の慢性代謝障害であり、インスリン分泌、インスリン作用、又はその両方における欠陥に起因する炭水化物、脂肪及びタンパク質の代謝の障害を伴う慢性高血糖を特徴とする。真性糖尿病の影響には、様々な臓器の長期的な損傷、機能不全及び障害を含む。真性糖尿病は通常、以下の2つの主要なカテゴリに分類される。
- 1型糖尿病(元はインスリン依存性真性糖尿病と呼ばれる)は通常、小児期又は青年期に発症し、ケトーシス及びアシドーシスの傾向がある。1型糖尿病は糖尿病全体の約10%を占める。
- 2型糖尿病(元はインスリン非依存性真性糖尿病と呼ばれる)は、ほとんどの場合、インスリン抵抗性が主に寄与する、インスリン分泌における欠陥に起因する糖尿病の一般的な主要な形態を含む。2型糖尿病は糖尿病全体の約90%を占める。
【0003】
2型糖尿病の主要な始まりの1つは、進行性のベータ細胞の機能障害であると推定され、これは、臨床経過の初期に出現し(おそらくインスリン抵抗性の発症に先行し、更にインスリン抵抗性に寄与する)、治療下でさえ徐々に悪化する。2型糖尿病では、膵臓のベータ細胞は、1つにはベータ細胞量の後天的な減少のために、体の要求を満たすのに十分なインスリンを生成できない。ベータ細胞のアポトーシスの増加は、ベータ細胞の喪失と2型糖尿病の発症とに寄与する重要な要因であることがわかる(Rhodes CJ、Science、2005年1月21日、307(5708):380~4頁)。これは、活性酸素種の生成、代謝経路の変化、細胞内カルシウムの増加、及び小胞体ストレスの活性化を含む非常に多くのメカニズムによって起こる。これらのプロセスは、インスリン分泌を損ない、インスリンの遺伝子発現を減少させ、最終的にアポトーシスを引き起こすことにより、ベータ細胞に悪影響を及ぼす。
【0004】
ミトコンドリアはまた、糖尿病の病態生理学において重要な役割を果たす。それらは体の細胞の発電所であり、エネルギーバランスと代謝の調節に寄与する。ミトコンドリアの主要な役割は、食物からのブドウ糖及び脂肪酸等の栄養素を酸化することにより、アデノシン三リン酸(ATP)分子の形態でエネルギーを生成することである。糖尿病の病態生理学では、代謝の不均衡がミトコンドリアに圧力をかけ、これにより、ミトコンドリアの機能不全、酸化能力の低下、続いてインスリン感受性組織への脂質の蓄積、そして最後にインスリン抵抗性及び糖尿病を引き起こす。
【0005】
2型糖尿病は、心臓、血管、神経、目、及び腎臓を含む多くの主要な臓器に影響を及ぼし得、心血管疾患、神経障害、潰瘍、網膜症、及び腎症を含む様々な疾患を引き起こす。したがって、長く続く血糖コントロールをもたらす治療は、2型糖尿病に関連する合併症を減らすことができる。
【0006】
国際特許出願WO2001/055122は、トリアジン誘導体及びそれらの血糖降下特性について記載している。出願人は、これらのトリアジン誘導体の中で、2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩(「イメグリミン」としても知られている)がベータ細胞を細胞死から保護するのに有効であり、それ故、2型糖尿病の治療又は2型糖尿病の発症前のリスクのある集団、特に前糖尿病を罹患している対象において、ベータ細胞の機能不全の予防又は遅延に有用であり得ることを示した(WO2011/154497)。更に、イメグリミンは、ミトコンドリア機能を酸化ストレスから保護し、肝臓の脂質酸化を促進することにより、筋肉のブドウ糖の取り込みを刺激し、耐糖能及びインスリン感受性を正常化することが実証されている(G.Vialら、Diabetes、2015、64(6)、2254~64頁)。イメグリミンは、ミトコンドリアへの影響のため、特に2型糖尿病における微小血管及び大血管の合併症の予防に役立つことができる。
【0007】
したがって、インスリン抵抗性臓器(肝臓及び筋肉)及びインスリン分泌(膵臓β細胞を介して)の両方に作用することにより、イメグリミンは2型糖尿病の主要な欠陥をこのようにして標的化する。
【0008】
イメグリミン錠剤の製造のために、様々な配合及び製造の方法が提案されてきた。例えば、WO2010/066326では、トリアジン誘導体と様々な添加剤との混合物を形成し、次いでこの混合物を結合剤で湿らせることにより湿式造粒し、次いで得られる顆粒を滑沢化してから、この滑沢化混合物を圧縮することで錠剤を得ることが示されている。
【0009】
臨床試験中に、経口投与されるイメグリミンの最適な1日量は1000mgを超えることが決定され、これは、単位あたり500mg又は750mgの有効性成分含量(dosage strength)を有する数個の錠剤の1日の摂取量に相当し得る。しかしながら、従来の添加剤を用いて上記で示されたとおり調製された750mgの錠剤は、一般に錠剤あたり約1000mgの重量であり(例えば、WO2011/154497で提供される実施例を参照)、したがって、例えばこれらに限定されないが高齢者等、嚥下が困難な患者には大きすぎる。このようにサイズが大きいと治療コンプライアンスに負の影響を及ぼす可能性があるため、化学的安定性及び溶解速度に悪影響を与えることのないイメグリミン錠剤の投与性の改善が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2001/055122
【文献】WO2011/154497
【文献】WO2010/066326
【文献】WO2009/095159
【文献】WO2012/072663
【文献】WO2010/012746
【文献】WO2009/141040
【非特許文献】
【0011】
【文献】Rhodes CJ、Science、2005年1月21日、307(5708):380~4頁
【文献】G.Vialら、Diabetes、2015、64(6)、2254~64頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の第1の目的は、トリアジン誘導体が錠剤の少なくとも80重量%を占め、かつ化学的に安定である、錠剤中に少なくとも500mgのイメグリミン等のトリアジン誘導体を含むことを可能にする錠剤の配合を提供することである。
【0013】
本発明の第2の目的は、破砕に対する耐性又は硬度によって反映されるとおりに物理的に安定であり、一方で溶解速度によって反映されるとおりに胃内におけるイメグリミンの即時放出を可能にする、イメグリミン等のトリアジン誘導体を含有する錠剤を提供することである。
【0014】
本発明の第3の目的は、工業的規模で容易かつ再現可能に実施することができる、この錠剤を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
イメグリミン錠剤のサイズを縮小する試みにおいて、本発明者らは、添加剤の性質及びレベル、並びにそれを組み込む方法に関して広範な研究を行った。その結果、本発明者らはイメグリミンと混合して錠剤を形成することが可能な成分の最適な組み合わせを見出し、かつ流動床での従来の湿式造粒方法が高剪断ミキサーにおける湿式造粒に置き換えられた、これらの錠剤を調製する特定の方法を見出した。
【0016】
したがって、本発明は、
(a)- 錠剤の総重量に対して少なくとも80重量%の量の、2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるトリアジン誘導体、
- ヒドロキシプロピルセルロースを含む少なくとも1つの結合剤、
- 少なくとも1つの流動化剤(glidant)、
- 少なくとも1つの崩壊剤、及び
- 少なくとも1つの滑沢剤、
を含む内部コア、並びに
(b)少なくとも1つの水溶性フィルム形成剤を含む外部コーティング、
を含む、フィルムコーティング錠剤を対象とする。
【0017】
本発明はまた、以下の連続する工程:
1)高剪断ミキサーにおいて造粒助剤として水を使用して、トリアジン誘導体を、ヒドロキシプロピルセルロース及び任意に流動化剤の一部と湿式造粒する工程、
2)顆粒を乾燥する工程、
3)顆粒を残りの添加剤と混合する工程、
4)得られた混合物を打錠機において圧縮する工程、並びに
5)このようにして得られた錠剤をコーティングする工程、
を含む、このフィルムコーティング錠剤を製造する方法に関する。
【0018】
本発明は更に、糖尿病及び/又はその合併症の治療において使用するための、上記のとおりのフィルムコーティング錠剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
錠剤の組成
「錠剤」とは、カプレット剤を含む、任意の成形及び圧縮された固体剤形を意味する。
【0020】
本発明の錠剤は、グリミン類の化学的分類に属し、かつ2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその塩に対応するトリアジン誘導体(テトラヒドロトリアジン)を医薬有効成分として含む。この化合物は、例えば、WO2009/095159、WO2012/072663、WO2010/012746、WO2009/141040、又はそれらの組み合わせに記載されているとおりに合成することができる。
【0021】
本発明の化合物は、不斉中心を含有する。この不斉中心は、R又はSの構成であり得る。更に、これらの化合物はまた、以下:
【化1】
に示すとおり互変異性も示す。
【0022】
本発明は、これらのトリアジン誘導体のラセミ混合物を含む個々の互変異性体、幾何異性体、光学異性体、及びそれらの混合物を含むことを理解されたい。光学異性体は、既知の方法、例えばクロマトグラフィー若しくは再結晶技術の適用若しくは適合によってそれらの混合物から分離することができ、又は上記の特許出願に記載されているとおり、それらの中間体の適切な異性体と別個に調製することができる。
【0023】
したがって、本発明のトリアジン誘導体は、(+)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその薬学的に許容される塩、(-)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその薬学的に許容される塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
より詳細には、トリアジン誘導体は、(+)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択され、任意に(-)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその薬学的に許容される塩と、少なくとも95:5の(+):(-)の重量比で混合されている。
【0025】
トリアジン誘導体が薬学的に許容される塩の形態である場合、この塩は、任意の無機酸との塩、任意の有機酸との塩、及び任意の酸性アミノ酸との塩を含むことができる。無機酸との塩の有用な例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、及びリン酸との塩が含まれる。有機酸との塩の有用な例には、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸との塩が含まれる。好ましくは、トリアジン誘導体は、塩酸塩の形態で投与される。
【0026】
(+)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩は、イメグリミンとも呼ばれる。それは、通常、以下:
【化2】
の安定な互変異性体の形態で調製され、5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,2,3-トリアジンとも呼ばれる。
【0027】
本特許出願はまた、化合物の多形形態、例えば、(+)-2-アミノ-3,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩のA1又はH1多形形態、好ましくはそのA1形態にも関連する。
【0028】
トリアジン誘導体は、錠剤の総重量に対して、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、更に少なくとも90重量%であり得る。
【0029】
本発明の錠剤において、トリアジン誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースを含む少なくとも1つの結合剤と混合されている。HPCの粘度は、20℃で10重量%の水溶液として測定した場合、一般的には300.0~600.0mPa.sの間である。
【0030】
好ましい実施形態では、結合剤はヒドロキシプロピルセルロースからなる。他の実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースに加えて、少なくとも1つの他の結合剤を含み得、これは、微結晶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロース)、ゼラチン、アラビアガム、デキストリン、マルトデキストリン、アルファ化デンプン、ゼラチン、アカシアガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、カルボマー、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物から選択され得る。好ましくは、結合剤は、ポリビニルピロリドン(ポビドン)を含まない。適合性試験では、この添加剤とイメグリミンを50:50(w/w)の二成分混合物として混合する場合、分解生成物が形成されることが実際に示されている。結合剤は、錠剤の総重量に対して、1.5~4.5重量%、好ましくは3.5~4.5重量%であり得る。
【0031】
結合剤に加えて、本発明の錠剤は、少なくとも1つの崩壊剤を含む。好ましくは、崩壊剤はクロスポビドンを含まない。適合性試験では、この添加剤とイメグリミンを50:50(w/w)の二成分混合物として混合する場合、分解生成物が形成されることが実際に示されている。したがって、崩壊剤は、例えば、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、微結晶性セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、グアーガム、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。好ましくは、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムを含む、又は好ましくはクロスカルメロースナトリウムである。崩壊剤は、錠剤の総重量に対して、1.5~3重量%、好ましくは1.8~2.2重量%であり得る。
【0032】
本発明の錠剤は、少なくとも1つの流動化剤を更に含み、流動化剤は、無水コロイドシリカ(ヒュームドシリカとも呼ばれる)、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、タルク、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。好ましくは、流動化剤は、無水コロイドシリカを含む、又は好ましくは無水コロイドシリカである。流動化剤は、錠剤の総重量に対して、0.8~2.5重量%、好ましくは1.8~2.2重量%であり得る。
【0033】
本発明の錠剤には、少なくとも1つの滑沢剤もまた含まれ、滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、スクロース脂肪酸エステル、タルク、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。好ましくは、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。滑沢剤は、錠剤の総重量に対して、0.5~1.5重量%、好ましくは0.8~1.2重量%であり得る。
【0034】
錠剤の摂取をより容易にし、かつトリアジン誘導体の苦味をマスキングするために、錠剤は、少なくとも1つの水溶性フィルム形成剤を含む外部コーティングでコーティングされている。水溶性フィルム形成剤は、アクリルポリマー又はセルロースポリマー、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースであり得、コーティングは、任意に乳白剤(opacifying agent)及び/又は着色剤、例えば二酸化チタン及び酸化鉄等、可塑剤、例えばポリエチレングリコール等、充填剤、例えばラクトース及び微結晶性セルロース等、甘味料、例えばサッカリンナトリウム等、滑沢剤、例えばタルク等、界面活性剤、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物を更に含む。
【0035】
このような混合物に相当する市販の製品は、Opadry(登録商標)及びOpadry(登録商標)IIの商品名で販売されている製品を含み入手可能である。非限定的な例には、Opadry(登録商標)YS-1-7706-G white、Opadry(登録商標)Yellow 03692357及びOpadry(登録商標)Blue 03690842が含まれる。これらの組成物は、使用直前に水で希釈することができるドライフィルムコーティング組成物として利用可能である。Opadry(登録商標)及びOpadry(登録商標)IIの配合物は、セルロースフィルム形成ポリマー(例えば、HPMC及び/又はHPC)を含み、ポリデキストロース、マルトデキストリン、可塑剤(例えば、トリアセチン、ポリエチレングリコール)、ポリソルベート80、着色剤(例えば、二酸化チタン、1つ又は複数の色素又はレーキ)、及び/又は他の適切なフィルム形成ポリマー(例えば、アクリレート-メタクリレートコポリマー)を含有し得る。特に好ましい市販の製品は、Opadry(登録商標)White(HPMC/HPCベース)及びOpadry(登録商標)II White(PVA/PEGベース)である。初めの保護コーティングの代替の製品には、Kollicoat(登録商標)IRの商品名で市販されている製品等のポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、及びEudragit(登録商標)Eの商品名で市販されている製品等のメタクリル酸メチルアンモニウムベースコポリマーを含む。別の好ましい例には、低分子量HPMCがある。
【0036】
コーティングは、錠剤の総重量に対して、2~3重量%、好ましくは2.2~2.8重量%であり得る。
【0037】
甘味料、香味料、着色剤、可塑剤、賦形剤等の追加の添加剤が錠剤内に含まれ得る。しかしながら、好ましい実施形態によれば、本発明の錠剤は、上記に列挙されたもの以外のいずれの添加剤も含まない。
【0038】
特に好ましい実施形態では、本発明の錠剤は、
- トリアジン誘導体:85~95重量%
- 結合剤:1.5~4.5重量%
- 崩壊剤:1.5~3重量%
- 流動化剤:0.8~2.5重量%
- 滑沢剤:0.5~1.5重量%
- コーティング:2~3重量%
からなり、ただし、上記成分の総含有量は100重量%になる。
【0039】
本発明の錠剤は、楕円形、円形、正方形、又はひし形等の任意の形状を有し得る。楕円形の両凸形状が好ましい。各錠剤は通常、250~1000mgのトリアジン誘導体を含有し、好ましくは500mg又は750mgを含有する。
【0040】
この錠剤に含有されるトリアジン誘導体は、化学的に安定であり、すなわち、
- ブリスター中で40℃/75%RHで6か月間保管した後、HPLCにより測定した場合、2.0重量%未満、好ましくは1重量%未満、更に好ましくは0.5重量%未満、例えば0.1重量%未満又は更に0.05重量%未満の総分解生成物を生成し、かつ
- トリアジン誘導体の量は、同じ条件下で、HPLCにより測定した場合もまた理論値の90~105%のままである。
【0041】
更に、以下の実施例に提供される方法に従って測定されるとおり、トリアジン誘導体の溶解速度は、水性緩衝媒体中で30分以内に、80~100%の間、好ましくは90~100%の間、より好ましくは95~100%の間である。
【0042】
製造の方法
次に、上記のフィルムコーティング錠剤を製造する方法について説明する。
【0043】
この方法の第1の工程では、高剪断ミキサーにおいて造粒助剤として水を使用して、トリアジン誘導体を、ヒドロキシプロピルセルロースと湿式造粒する。必須ではないが、製造のプロセス中にトリアジン誘導体が凝集するリスクを下げるために、この段階で流動化剤の一部を加えることが可能である。あるいは、全量の流動化剤をプロセスの後の段階で付与することが可能である。
【0044】
このようにして顆粒を得て、顆粒をこの方法の第2の工程、例えば流動床乾燥機において任意の適切な手段によって乾燥する。水は顆粒の凝集性を改善するが、同時にトリアジン誘導体の粘着性を高めるので、顆粒中の残留水が2%未満、好ましくは1.5%未満、更に好ましくは1%未満に達するように乾燥工程を調整することが望ましい。顆粒の水分含有量は、欧州薬局方2.5.12に従い、カールフィッシャー法によって測定することができる。結合剤の量は、通常、乾燥した顆粒の目的の水分含有量に応じて調整される。水分量が少ないほど、結合剤の含有量を多くする必要がある。
【0045】
次に、乾燥した顆粒を、任意にふるいにかけた後に、残りの添加剤と混合する。
【0046】
得られた混合物を、欧州薬局方2.9.8に従って測定されるとおり、例えば少なくとも60N、例えば100~200Nの範囲の硬度を有する錠剤コアが得られるように、回転プレス機等の打錠機で圧縮する。
【0047】
次に、これらの錠剤コアを水溶性フィルム形成剤でコーティングする。この目的のために、フィルム形成剤を水溶液として使用することができる。
【0048】
前述のことから明らかなように、水は、造粒工程で造粒助剤として、及びコーティング工程で分散剤としてそれぞれ使用される唯一の溶媒であり、プロセス中に乾燥によって除去される。したがって、本発明の方法は、費用効果の高い条件で十分に許容される添加剤を使用して実施することができる。
【0049】
製薬学的用途
上記のとおりのフィルムコーティング錠剤は、好ましくは糖尿病及び/又はその合併症の治療において、医薬として使用することができる。
【0050】
本発明の文脈において、治療という用語は、治癒的、対症的、及び/又は予防的な治療を意味する。特に、疾患の進行を軽減すること、症状又は合併症(心血管疾患、神経障害、潰瘍、網膜症又は腎症を含む)の少なくとも1つを軽減又は抑制すること、又は何らかの方法で患者の健康状態を改善することを指すことができる。本発明のトリアジン誘導体は、疾患の初期又は後期の段階、好ましくは疾患の初期の段階を含む、既存の2型糖尿病を罹患しているヒトに使用することができる。本発明の誘導体は、必ずしも疾患を有する患者を治癒する必要はなく、疾患の進行を遅延させる若しくは減速させる、又は更なる進行を防ぎ、それによって患者の状態を改善するであろう。本発明の誘導体はまた、2型糖尿病の全ての症状を有さないが、通常は2型糖尿病を発症する、又は2型糖尿病のリスクが高い者に投与することもできるであろう。治療には、2型糖尿病の全ての症状を最終的に発症する、又は年齢、家族歴、遺伝的異常若しくは染色体異常、及び/又は疾患の1つ又は複数の生物学的マーカーの存在により、疾患のリスクがある個人において疾患の発症を遅延することも含む。
【0051】
2型糖尿病の治療において、本発明の誘導体は、治療有効量、すなわち、例えば500~3000mgの範囲の1日量で投与される。本発明において、「有効量」とは、患者の健康状態を何らかの方法で改善するのに十分な量である。トリアジン誘導体は、1日に1回、1日に2回、又は1日に3回、好ましくは1日に2回投与することができる。更に好ましくは、500mg又は750mgのトリアジン誘導体が1日に2回投与される。
【0052】
前述のように、2型糖尿病は、心臓、血管、神経、目、及び腎臓を含む多くの主要な臓器に影響を及ぼし得る。2型糖尿病に関連する合併症は、例えば、心血管疾患、神経障害、潰瘍(すなわち、足部潰瘍)、網膜症、又は腎症等の様々な疾患に相当し得る。心血管疾患は、特に、高血圧、冠状動脈疾患、心臓病、及び/又は脳卒中を含む。
【0053】
本発明によるトリアジン誘導体を含む2型糖尿病を治療する医薬は、それを必要とする対象に投与される。
【0054】
そのような治療を必要とする対象は、以下の試験を実施することによって診断することが可能である:
- 空腹時血漿ブドウ糖(FPG)試験は、少なくとも8時間等、数時間何も食べていない人の血糖値を測定する。この試験は、糖尿病及び前糖尿病を検出するために使用される。
- 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は、少なくとも8時間絶食した後、及びブドウ糖含有飲料を飲んだ2時間後の血糖値を測定する。この試験は、糖尿病及び前糖尿病の診断に使用することが可能である。
- ランダム血漿ブドウ糖検査はまた、随時血漿ブドウ糖検査とも呼ばれ、検査対象が最後に食べた時間に関係なく血糖値を測定する。この試験は、症状の評価とともに、糖尿病の診断に使用されるが、前糖尿病の診断には使用されない。
【0055】
対象が糖尿病を罹患していることを示す試験結果は、異なる日の第2の試験で確認することが可能である。
【0056】
得られた試験結果に応じて、対象を、正常、前糖尿病又は糖尿病である対象として診断することが可能である。前糖尿病は2型糖尿病の発症に先行する。一般に、前糖尿病を罹患している対象では、空腹時血漿ブドウ糖レベルが正常よりも高いが、未だ糖尿病として分類されるほど高くはない。前糖尿病は糖尿病のリスクを大幅に高める。
【0057】
特定の実施形態では、本発明の治療を必要とする対象は、前糖尿病又は2型糖尿病を罹患している対象である。
【0058】
別の特定の実施形態では、本発明の治療を必要とする対象は、妊娠性糖尿病を罹患している。
【0059】
本発明の一実施形態によるトリアジン誘導体は、少なくとも1つの他の活性化合物と共投与され得る。好ましくは、少なくとも1つの他の活性化合物は、前糖尿病又は2型糖尿病を治療するために現在使用されている治療の中から選択される。「共投与」(又は「共投与される」)という用語は、同じ患者への1つ又は複数の化合物の、最大2時間又は更に最大12時間であり得る期間にわたる、同時、別個、又は逐次の投与を意味する。例えば、共投与という用語は、(1)両方の化合物の同時投与、(2)第1の化合物の投与、続いて2時間後の第2の化合物の投与、(3)第1の化合物の投与、続いて12時間後の第2の化合物の投与を含む。
【0060】
本発明のトリアジン誘導体と共投与され得る活性化合物の例には、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、例えばアカルボース及びミグリトール;インスリン感作物質、例えばピオグリタゾン及びロシグリタゾン等のチアゾリジンジオン(TZD);糖新生を減少させる薬剤、例えばメトホルミン等のビグアニド;スルホニル尿素(SU)、例えばカルブタミド、グリベンクラミド/グリブリド、グリボムリド、グリクラジド、グリメピリド、グリピジド、クロルプロパミド、及びトラザミド;グリニド、例えばレパグリニド;ドーパミン作動薬、例えばブロモクリプチン;DPP-4阻害剤、例えばアログリプチン、リナグリプチン、サクサグリプチン、シタグリプチン、又はビルダグリプチン;ナトリウムグルコーストランスポーター(SGLT2又はSGLT1/2)阻害剤、例えばダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、又はソタグリフロジンが含まれる。
【0061】
いずれの場合も、本発明による錠剤は、PCTFE、PVC、PVDC、PVC/PE/PVDC若しくはアルミニウムブリスター等のブリスター、又はPE若しくはPPボトル等のプラスチックボトルに包装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】pH 1.2での従来の錠剤の溶解速度と比較した、本発明の2つの錠剤(最適化された錠剤)の溶解速度を示す図である。
【
図2】pH 6.8での従来の錠剤の溶解速度と比較した、本発明の2つの錠剤(最適化された錠剤)の溶解速度を示す図である。
【実施例】
【0063】
本発明は、以下の実施例に照らしてよりよく理解され、これらは例示のみを目的として与えられ、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0064】
(実施例1:本発明による錠剤の製造)
以下の組成を有する4つの錠剤を調製した。
【0065】
【0066】
イメグリミンと無水コロイドシリカとの予混合物を調製し、次にこの予混合物を高剪断ミキサーにおいてヒドロキシプロピルセルロースと混合する第1の工程を含む方法に従って、錠剤1を製造した。このようにして得られた顆粒を流動床乾燥機で乾燥した。乾燥した顆粒は、欧州薬局方2.5.12に従いカールフィッシャー法により測定される場合に、約0.8~1.0%の水分含有量を有した。次いで、それらをふるいにかけ、コンテナブレンダー内でクロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムと混合して、最終的な混合物を得た。この混合物を、標準的な回転プレス機で圧縮した。次いで、このようにして得られた錠剤コアを、標準的な塗布装置においてOpadry(登録商標)の水性懸濁液を用いてフィルムコーティングした。錠剤2は、イメグリミンと予混合することの代わりに無水コロイドシリカを顆粒外材料(extragranular materials)に添加したことを除いて、同様に調製した。
【0067】
(実施例2:比較錠剤)
以下の組成を有する2つの異なる含量(strengths)の錠剤を調製した。
【0068】
【0069】
これらの錠剤を以下のように調製した。
イメグリミンの顆粒を、イメグリミンと50重量%のシリカとの予混合物を使用することによって調製し、これは流動床造粒を含む標準的な方法を使用して湿式造粒を行った。水に懸濁したゼラチンを造粒助剤として使用した。顆粒を流動床造粒機内で乾燥し、次いでふるいにかけ、コンテナブレンダー内で残りの成分と混合して、最終的な混合物を得た。圧縮の準備ができた混合物を標準的な回転プレス機で圧縮した。次いで、このようにして得られた錠剤コアを、標準的な塗布装置においてOpadry(登録商標)の水性懸濁液を用いてフィルムコーティングした。
【0070】
上記の表からわかるように、これらの従来の錠剤は、本発明による錠剤よりもはるかに重く、したがって大きく、嚥下するのが困難である。
【0071】
(実施例3:溶解試験)
バイオアベイラビリティを示す溶解速度は、米国薬局方<711>及び欧州薬局方2.9.3版に従い、75rpmの撹拌速度を有するパドル装置、900mLの試料、及びpH 6.8に調整された緩衝液を使用して実施した。イメグリミンの溶解濃度は、240nmでのUV検出により、各容器から特定の時点にて最小限に測定する。この実験の結果は、異なる条件下でPVC/PE/PVDCのブリスターに保管された場合の、実施例1の錠剤1及び錠剤2について以下の表に示される。
【0072】
【0073】
この表から、イメグリミンは30分以内に完全に溶解し、この溶解速度は時間に対して安定していることがわかる。したがって、本発明の錠剤は、胃内でのイメグリミンの即時放出を可能にし得る。
【0074】
実施例1に記載のとおりの本発明による錠剤の溶解速度を、実施例2に記載のとおりの従来の500mgの錠剤の溶解速度と比較するために、追加の溶解実験を実施した。これらの実験は、米国薬局方<711>及び欧州薬局方2.9.3版に従い、50rpmの撹拌速度を有するパドル装置、900mLの試料、及びpH 1.2又はpH 6.8のいずれかに調整された緩衝液を使用して実施した。イメグリミンの溶解濃度は、240nmでのUV検出により、各容器から特定の時点にて最小限に測定される。これらの実験の結果を
図1及び
図2に示し、バッチ151907は錠剤1を指し、バッチ171055は錠剤2を指す。これらの図に示されるとおり、錠剤1及び錠剤2の溶解速度は、pH 1.2及びpH 6.8の両方で、従来の錠剤の溶解速度と同等、又はそれを更に上回っている。
【0075】
(実施例4:安定性試験)
実施例1の錠剤1及び錠剤2の経時的なイメグリミン含有量及び総分解生成物の変動を、勾配溶出及び215nmでのUV検出に適したHPLCによって評価した。計算は外部標準に対して行った。これらの実験の結果を以下の表に示す。
【0076】
【0077】
これらの結果は、活性化合物の含有量が90~105%の範囲内のままであり、かつ総分解生成物の含有量が2.0%をはるかに下回ったままであることで、イメグリミンが経時的に化学的に安定していることを示す。