(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】固定具セット
(51)【国際特許分類】
F16B 13/04 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
F16B13/04 B
(21)【出願番号】P 2020565963
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2019063288
(87)【国際公開番号】W WO2019228896
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-14
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519441556
【氏名又は名称】ロシノックス
【氏名又は名称原語表記】LOCINOX
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タルペ,ジョゼフ
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-018518(JP,U)
【文献】英国特許出願公告第01319516(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0033895(US,A1)
【文献】米国特許第02516554(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面と、後面と、前記前面および前記後面を貫通する円形開口部(4)とを有する壁(1)を有する管状金属プロファイル(2)に付属部品(3)を固定するための固定具セットであって:
ボルトヘッド(8)と、前記壁(1)の前記開口部(4)を通って挿入されるように構成された少なくとも部分的にネジ山を有するシャフト(9)と、を有するボルト(5)と、
長手方向軸(17)を有し、前記長手方向軸(17)に平行な方向に前記壁(1)の前記開口部(4)に部分的に軸方向に挿入可能であるようにサイズ化されたスプリッタ(6)であって、
前記前面と接触するように構成された径方向に突出する部分(10)と、
前記径方向に突出する部分(10)から軸方向に離れるように延び、前記開口部(4)内に適合するように構成され、最小境界円筒(27)を有する、スリーブ部分と、
前記スリーブ部分(11)から軸方向に離れるように延び、前記スリーブ部分(11)から離れるにつれて直径が減少する少なくとも2つのくさび面(13)を有する、くさび部分(12)であって、前記スリーブ部分(11)および前記くさび部分(12)が、前記径方向に突出する部分(10)と前記くさび部分(12)の自由
端との間で前記長手方向軸(17)に平行に測定した全長(L)を有する、くさび部分(12)と、
貫通孔(15)であって、前記貫通孔(15)によって、前記スプリッタ(6)が、前記長手方向軸(17)に略平行な第1の方向(16)に前記ボルトヘッド(8)に向かって前記ボルト(5)の前記シャフト(9)上をスライドするように構成される、貫通孔(15)と、
を備える、スプリッタと、
前記壁(1)の前記開口部(4)を通って軸方向に挿入可能であるようにサイズ化された一体形成された金属アンカー(7)であって、前記ボルトシャフトのネジ山に螺合されるように構成されたネジ部(18)と、前記ネジ部(18)から軸方向に離れるように延び、前記アンカー(7)が、特に前記ボルト(5)を締め付けることによって前記第1の方向(16)にスライドするように付勢されたとき、前記少なくとも2つのくさび面(13)の各1つに沿ってスライドするように構成される、径方向に拡張可能な少なくとも2つのアーム(20)と、を備え、前記アーム(20)は、前記アーム(20)の径方向拡張時に前記後面に対して前記アンカー(7)をロックするように構成された自由端(24)を有し、前記径方向拡張は、前記金属アンカー(7)の変形によって引き起こされる、
金属アンカー(7)と、
を備え、
前記スプリッタ(6)および前記アンカー(7)は、前記スプリッタ(6)に対する前記アンカー(7)の回転を実質的に制限するための相互にインターロック可能な構造をさらに備え、
前記スプリッタ(6)は、前記最小境界円筒(27)内に完全に配置される少なくとも1つのキャッチ(22)をさらに備え、前記キャッチ(22)は、頂部(26)を有する径方向に延びる壁(25)を備え、前記頂部(26)は、前記長手方向軸(17)に平行に測定した軸方向距離(l)だけ前記径方向に突出する部分(10)から離れており、且つ前記長手方向軸(17)に垂直に測定した径方向距離(w)だけ前記幾何学的長手方向軸(17)から離れており、前記軸方向距離(l)は、最大で前記長さ(L)の60%であり、前記径方向距離(w)は、前記最小境界円筒(27)の半径(R)の少なくとも85%であり、
前記少なくとも2つのアーム(20)のそれぞれ1つの前記自由端(24)には返し部が設けられており、前記アンカー(7)を前記第1の方向(16)に前記スプリッタ(6)上をスライドさせ、前記返し部付き自由端(24)が前記キャッチ(22)を通過した後、前記アンカー(7)が前記第1の方向(16)とは反対の第2の方向(25)にスライドするように付勢されたとき、前記返し部付き自由端(24)は、特に前記返し部付き自由端(24)が前記径方向に延びる壁(25)に軸方向に係合することによって前記キャッチ(22)内に捕捉されるように構成される、
ことを特徴とする固定具セット。
【請求項2】
0.5mm~5mmの間、好ましくは1mm~3mmの間の厚さを有する壁(1)を有する管状金属プロファイル(2)に付属部品(3)を固定するための固定具セットであって、前記壁(1)は、前面と、後面と、前記前面および前記後面を貫通する円形開口部(4)とを有し、前記固定具セットは:
ボルトヘッド(8)と、前記壁(1)の開口部(4)を通って挿入されるように構成された少なくとも部分的にネジ山を有するシャフト(9)と、を有するボルト(5)と、
長手方向軸(17)を有し、前記長手方向軸(17)に平行な方向に前記壁(1)の前記開口部(4)に部分的に軸方向に挿入可能であるようにサイズ化されたスプリッタ(6)であって、
前記前面と接触するように構成された径方向に突出する部分(10)と、
前記径方向に突出する部分(10)から軸方向に離れるように延び、前記開口部(4)内に適合するように構成され、最小境界円筒(27)を有する、スリーブ部分(11)と、
前記スリーブ部分(11)から軸方向に離れるように延び、前記スリーブ部分(11)から離れるにつれて直径が減少する少なくとも2つのくさび面(13)を有する、くさび部分(12)であって、前記スリーブ部分(11)および前記くさび部分(12)が、前記径方向に突出する部分(10)と前記くさび部分(12)の自由
端との間で前記長手方向軸(17)に平行に測定した全長(L)を有する、くさび部分(12)と、
貫通孔(15)であって、前記貫通孔(15)によって、前記スプリッタ(6)が、前記長手方向軸(17)に略平行な第1の方向(16)に前記ボルトヘッド(8)に向かって前記ボルト(5)の前記シャフト(9)上をスライドするように構成される、貫通孔(15)と、
を備える、スプリッタと、
前記壁(1)の前記開口部(4)を通って軸方向に挿入可能であるようにサイズ化された一体形成された金属アンカー(7)であって、前記ボルトシャフトのネジ山に螺合されるように構成されたネジ部(18)と、前記ネジ部(18)から軸方向に離れるように延び、前記アンカー(7)が、特に前記ボルト(5)を締め付けることによって前記第1の方向(16)にスライドするように付勢されたとき、前記少なくとも2つのくさび面(13)の各1つに沿ってスライドするように構成される、少なくとも2つの径方向に拡張可能なアーム(20)と、を備え、前記アーム(20)は、前記アーム(20)の径方向拡張時に前記後面に対して前記アンカー(7)をロックするように構成された自由端(24)を有し、前記径方向拡張は、前記金属アンカー(7)の変形によって引き起こされる、
金属アンカーと、
を備え、
前記スプリッタ(6)および前記アンカー(7)は、前記スプリッタ(6)に対する前記アンカー(7)の回転を実質的に制限するための相互にインターロック可能な構造をさらに備え、
前記スプリッタ(6)は、特に、前記最小境界円筒(27)内に完全に配置される少なくとも1つのキャッチ(22)をさらに備え、前記キャッチ(22)は、頂部(26)を有する径方向に延びる壁(25)を備え、前記頂部(26)は、前記長手方向軸(17)に平行に測定した軸方向距離(l)だけ前記径方向に突出する部分(10)から離れており、且つ前記長手方向軸(17)に垂直に測定した径方向距離(w)だけ前記幾何学的長手方向軸(17)から離れており、前記軸方向距離(l)は、最大で8mm、好ましくは最大で7mmであり、前記径方向距離(w)は、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも6mmであり、
前記少なくとも2つのアーム(20)のそれぞれ1つの前記自由端(24)には返し部が設けられており、前記アンカー(7)を前記第1の方向(16)に前記スプリッタ(6)上をスライドさせ、前記返し部付き自由端(24)が前記キャッチ(22)を通過した後、前記アンカー(7)が前記第1の方向(16)とは反対の第2の方向(25)にスライドするように付勢されたとき、前記返し部付き自由端(24)は、特に前記返し部付き自由端(24)が前記径方向に延びる壁(25)に軸方向に係合することによって前記キャッチ(22)内に捕捉されるように構成され、
前記壁(1)が約2mmの厚さを有する場合、前記アンカーが、前記返し部付き自由端が前記キャッチ(22)に捕捉されるその軸方向位置から、前記アンカー(7)が前記後面に対してロックされるその軸方向位置まで移動されたとき、前記スプリッタは、前記長手方向軸(17)から最大で1.5mm、好ましくは最大で1mmの距離にわたって、前記返し部付き自由端を径方向に拡張させるように構成される、
ことを特徴とする固定具セット。
【請求項3】
前記径方向距離(w)は、前記最小境界円筒の半径(R)の少なくとも87%、好ましくは、前記最小境界円筒の半径(R)の少なくとも90%、より好ましくは前記最小境界円筒の半径(R)の少なくとも92%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の固定具セット。
【請求項4】
前記径方向距離(w)は、前記最小境界円筒(27)の半径(R)に等しく、前記径方向距離(w)は、特に約7mmであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項5】
前記軸方向距離(l)は、前記長さ(L)の少なくとも15%、好ましくは前記長さ(L)の少なくとも25%、より好ましくは前記長さ(L)の少なくとも30%、最も好ましくは前記長さ(L)の少なくとも35%であり、前記軸方向距離(l)は、好ましくは最大で前記長さ(L)の50%、より好ましくは最大で前記長さ(L)の45%であり、前記軸方向距離(l)は、特に約5mmであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項6】
前記アンカー(7)を前記第1の方向(16)に前記スプリッタ(6)上をスライドさせ、前記返し部付き自由端(24)が前記キャッチ(22)を通過した後、前記アンカー(7)が前記第2の方向(25)にスライドするように付勢されたとき、前記返し部付き自由端(24)を有する前記アーム(20)は、部分的に径方向に収縮するように構成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項7】
前記アンカーは、弾性を有する金属から作製され、それにより、前記アンカーの前記返し部付き自由端が、前記長手方向軸(17)から2mmの距離にわたってそれぞれ拡張され、そして解放されたとき、前記距離の最大で40%にわたって、具体的には最大で35%にわたって、より具体的には最大で30%にわたって収縮し、前記金属は、好ましくはばね金属とは異なることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項8】
前記アンカーは、最大で400MPa、好ましくは最大で300MPa、好ましくは最大で250MPaの降伏強度を有する金属から作製され、前記金属は、少なくとも50MPa、より好ましくは少なくとも100MPa超、有利には少なくとも150MPa、より有利には少なくとも200MPaの降伏強度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項9】
前記最小境界円筒(27)の直径(D)は、好ましくは最大で25mm、より好ましくは最大で20mm、最も好ましくは最大15mmであり、前記スリーブ部分(11)は、好ましくは略円筒形であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項10】
前記壁(25)は、少なくとも0.25mm、好ましくは少なくとも0.5mm、有利には少なくとも0.75mm、より有利には少なくとも0.9mmの高さ(h)を有し、前記キャッチ(22)は、好ましくは、前記スプリッタ(6)内の凹部、特に溝によって形成されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項11】
前記返し部付き自由端(24)は、前記少なくとも2つのアーム(20)のそれぞれの1つのノッチによって形成され、前記ノッチは、少なくとも0.25mm、好ましくは少なくとも0.5mm、有利には少なくとも0.75mm、より有利には少なくとも0.9mmの深さを有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項12】
前記頂部(26)は、前記スリーブ部分(11)と前記くさび部分(12)との間の移行部にまたは前記移行部の近くに配置されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項13】
前記ボルトシャフト(9)は、約8mmの直径を有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項14】
各アーム(20)は、特に、前記最小境界円筒(27)内に完全に配置されるキャッチ(22)と協働するようにそれぞれが構成された返し部付き自由端(24)を有し、各キャッチ(22)は、頂部(26)を有する径方向に延びる壁(25)を備え、前記頂部(26)は、前記長手方向軸(17)に平行に測定した軸方向距離(l)だけ前記径方向に突出する部分(10)から離れており、且つ前記長手方向軸(17)に垂直に測定した径方向距離(w)だけ前記幾何学的長手方向軸(17)から離れており、前記軸方向距離(l)は、最大で前記長さ(L)の60%であり、前記軸方向距離(l)は、好ましくは、最大で8mmであり、より好ましくは最大で7mmであり、前記径方向距離(w)は、前記最小境界円筒(27)の半径(R)の少なくとも85%であり、前記径方向距離(w)は、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも6mmであることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の固定具セット。
【請求項15】
前記相互にインターロック可能な構造が、前記少なくとも2つのくさび面(13)間の前記くさび部分(12)上に径方向に延びる突起部(14)を含み、前記アンカー(7)の前記少なくとも2つのアーム(20)は、前記突起部(14)によって案内されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の固定具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に0.5mm~5mmの間、好ましくは1mm~3mmの間の厚さの壁を有する管状金属プロファイルに付属部品を固定するための固定具セットであって、この壁が、前面と、後面と、前面および後面を貫通する円形開口部とを有する、固定具セットに関する。固定具セットは、ボルトヘッドと、壁の開口部を通して挿入されるように構成された少なくとも部分的にネジ山を有するシャフトと、を有するボルトと;幾何学的長手方向軸を有し、壁の開口部に部分的に軸方向に挿入可能であるようにサイズ化されたスプリッタであって、前面に接触するように構成された径方向に突出する部分と、径方向に突出する部分から軸方向に離れるように延び、開口部内に適合するように構成され、最小境界円筒を有する、スリーブ部分と、スリーブ部分から軸方向に離れるように延び、スリーブ部分から離れるにつれて直径が減少する少なくとも2つのくさび面を有するくさび部分であって、スリーブ部分およびくさび部分は、径方向に突出する部分とくさび部分の自由端との間で長手方向軸に平行に測定した全長を有する、くさび部分と、貫通孔であって、この貫通孔によって、スプリッタが長手方向軸に略平行な第1の方向にボルトヘッドに向かってボルトのシャフト上をスライドするように構成される、貫通孔と、を備える、スプリッタと;壁内の開口部を通って軸方向に挿入可能であるようにサイズ化された一体形成された金属アンカーであって、ボルトシャフトのネジ山に螺合されるように構成されたネジ部と、ネジ部から軸方向に離れるように延び、アンカーが、特にボルトを締め付けることによって第1の方向にスライドするように付勢されたとき、少なくとも2つのくさび面のそれぞれ1つに沿ってスライドするように構成される、少なくとも2つの径方向に拡張可能なアームと、を備え、アームは、アームの径方向拡張時に後面に対してアンカーをロックするように構成された自由端を有し、この径方向拡張が、金属アンカーの変形によって引き起こされる、金属アンカーと、を備え、スプリッタおよびアンカーは、スプリッタに対するアンカーの回転を実質的に制限するための相互にインターロック可能な構造をさらに備える。
【背景技術】
【0002】
このような固定具セットは、特許文献1に記載されており、ロックボルトキーパーを管状支柱に固定するために使用される。既知の固定具セットでは、スプリッタの径方向に突出する部分は、フランジから突出する円筒形スリーブを備えたフランジによって形成される。スリーブの直径は、支柱の側壁内の開口部の直径に対応する。4つのくさび面を有するくさび部分が、円筒形スリーブから軸方向に延び、そのくさび面は、径方向に突出する突起部によって分離されている。アンカーは、一般に、それぞれのくさび面上をスライドするアームを形成する4つの平行なスリットを備えたネジ部を有する端部を備えた中空円筒によって形成される。突起部およびスリットは、アームが突起部間で案内されるように寸法設定され、それにより、スプリッタおよびアンカーが互いに対して実質的に回転できないことを確実にする。特許文献1に記載されているように、アンカーのアームは、付属部品を支柱に固定する間のボルトを締める際、くさび面に沿ってスライドするときに径方向に拡張される。径方向拡張は、アンカーの変形によって引き起こされ、特にスリットが終了する領域、すなわちアームがネジ部に連結する領域が、変形される。アームの自由端が支柱の壁の裏側に接触するまでボルトが締められ、それによってアンカー、したがってボルトを付属部品と共に支柱に固定する。
【0003】
特許文献1に記載されている固定具セットは、出願人によって「クイックフィックス(Quick-Fix)」という名前で市場に出されている。固定具セットの引張強度は少なくとも10kNであり、壁の厚さが0.5mm~5mmの間の中空の金属支柱に適している。引張強度は、ボルトおよびアンカーの製造に使用される材料の結果であり、特に十分に剛性である金属または金属合金が使用され、固定具セットは通常屋外で使用されるため、ステンレス鋼が好ましい。さらに、アームの形状、すなわちアームの横方向の曲線もまた、そのような溝の形状は容易に曲がらないので、アームを剛性または硬質にするのを助ける。金属アンカーのコストを削減するために、アンカーはバネ鋼で作製されず、スプリッタから取り外されたとき、限定された範囲しか、特に30%未満しか元の形状に戻らない。アンカーのアームの自由端は、固定具セットを2mmの厚さを有する壁上に取り付けた後にアンカーをスプリッタから取り外すと、それぞれ約0.6mmだけ収縮する(つまり、アンカーの直径は1.2mm減少する)。アームを曲げるのに必要な力を考慮して、スプリッタも通常、金属または金属合金から製造されるが、プラスチック性スプリッタも実現可能である。
【0004】
実際、既知の固定具セット内のボルトは、付属部品を支柱に固定した後で取り外されてはならない。しかし、そのような取り外しは、付属部品の交換、またはロックボルトキーパーの場合、付属部品を支柱に関して少なくとも部分的に緩める必要があるために付属部品に関してストライクプレートを調整するなどのいくつかの理由で必要となり得る。詳細には、ボルトが取り外された場合、特に取り外されたボルトがアンカーに再び挿入された場合、アンカーはスプリッタから外れることがあり、したがって支柱の内部に落下することがあり、ボルトの支柱への再取り付けに使用できなくなる。その結果、付属部品を再度固定するには、少なくとも新しいアンカーを支柱の開口部に挿入する必要がある。
【0005】
この問題は、特許文献2で対処されており、これは、一般に、薄壁の石膏ボード構造で使用するため、およびコンクリート壁に形成された止まり穴で使用するためのキャビティ固定装置に関するものである。特許文献2に開示されている固定具セットは、比較的剛性が高く非弾性の金属アンカーを使用せず、特にナイロンまたはポリプロピレンから製造された、より柔軟なプラスチックアンカーを含む。このようなプラスチック材料の降伏強度は、クイックフィックス装置でアンカーを製造するために使用される金属よりもはるかに小さいため、高い引張強度、特に少なくとも10kNの引張強度を提供するのには適していない。アンカーは4つの柔軟なアームを有し、これらのアームは、アンカーのネジ部の近くの円周方向チャネルの周りでさらに曲がることができる。換言すれば、チャネルは、アームが容易に回転し、それによって径方向に拡張または収縮することができる局所的に弱められた領域を形成する。エキスパンダ、すなわちスプリッタには、アンカーのアームのくさび面として作用する円錐台形面が設けられる。エキスパンダには、円錐台形面の端部近くに第1のカラーが設けられ、第1のカラーは、アームの自由端の円周方向溝とインターロックし、それにより、アンカーは、使用前にエキスパンダに対して保持され、すなわちアンカーは、使用前にエキスパンダから軸方向に離れることはできない。エキスパンダには、円筒面と円錐台形面との間の移行部に第2の外向きに突出するカラーが設けられ、このカラーは、壁の開口部の直径にほぼ等しい直径を有し、したがって円筒面はより小さい直径を有する。ボルトを締めるときに円錐台形面が原因でアームが拡張すると、アームはスナップして第2のカラーと係合し、次いで、アームの自由端が壁の後面に対してロックされるまでさらに拡張される。ボルトが最初の使用後に取り外された場合、プラスチックアンカーのアームは、非常に弾力性があるため、円周方向の溝が再び第2のカラーとインターロックするまで径方向に収縮する。
【0006】
特許文献2に開示されている固定具セットの欠点は、第2のカラーが壁の開口部の直径に対して小さい直径を有する円筒面を必要とすることである。つまり、スリーブと壁との間に余裕があり、これは望ましくない。さらに、大きな穴は、壁に開けることがより困難である。
【0007】
さらに、柔軟なプラスチックアームを、基部の円周方向のチャネルのために局所的に弱くなった領域と組み合わせて使用すると、固定具セットの最大引張強度が限定され、固定具セットは通常、高い引張応力に抵抗できない石膏ボードに対して物品を固定するためにのみ使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO-A-2007/009998
【文献】GB-A-1319516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、固定具セットであって、壁に固定されたときに高い引張強度、特に10kNの引張強度を提供するために比較的剛性のアームを備えたアンカーを備え、さらに、ボルトを取り外したときにスプリッタからアンカーが外れるのを防止するために提供される、固定具セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、スプリッタが、最小境界円筒内に完全に配置される少なくとも1つのキャッチをさらに備え、キャッチは、頂部を有する径方向に延びる壁を備え、頂部は、長手方向軸に平行に測定した軸方向距離だけ径方向に突出する部分から離れており、且つ長手方向軸に垂直に測定した径方向距離だけ幾何学的長手方向軸から離れており、軸方向距離は、最大で前記長さの60%であり、径方向距離は、最小境界円筒の半径の少なくとも85%であり、少なくとも2つのアームのそれぞれ1つの自由端には、返し部が設けられ、アンカーを第1の方向にスプリッタ上をスライドさせ、返し部付き自由端がキャッチを通過した後、アンカーが第1の方向とは反対の第2の方向にスライドするように付勢されたとき、返し部付き自由端は、特に返し部付き自由端が径方向に延びる壁に軸方向に係合することによってキャッチ内に捕捉されるように構成される、本発明によって達成される。
【0011】
本目的はまた、スプリッタが、特に、最小境界円筒内に完全に配置される少なくとも1つのキャッチをさらに備え、キャッチは、頂部を有する径方向に延びる壁を備え、頂部は、長手方向軸に平行に測定した軸方向距離だけ径方向に突出する部分から離れており、且つ長手方向軸に垂直に測定した径方向距離だけ幾何学的長手方向軸から離れており、軸方向距離は、最大で8mm、好ましくは最大で7mmであり、径方向距離は、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも6mmであり、少なくとも2つのアームのそれぞれ1つの自由端に返し部が設けられ、アンカーを第1の方向にスプリッタ上をスライドさせ返し部付き自由端がキャッチを通過した後、アンカーが第1の方向とは反対の第2の方向にスライドするように付勢されたとき、返し部付き自由端は、特に返し部付き自由端が径方向に延びる壁に軸方向に係合することによってキャッチ内に捕捉されるように構成され、そして、壁1が約2mmの厚さを有する場合、アンカーが、返し部付き自由端がキャッチ22内に捕捉される軸方向位置から、アンカー7が後面に対してロックされる軸方向位置まで移動されたとき、スプリッタは、長手方向軸17から最大で1.5mm、好ましくは最大で1mmの距離にわたって返し部付き自由端を径方向に拡張するように構成される、本発明によって達成される。
【0012】
WO-A-2007/009998に開示されている既知の固定具セットと同様の一体形成された金属アンカーを有することにより、引張強度は、略同じである。換言すれば、本発明による固定具セットの引張強度は、WO-A-2007/009998に開示された固定具セットに関して有意に低下しない。
【0013】
金属製アンカーのアームはプラスチック製のアームに比べて弾性が低いが、驚くべきことに、返し部付き自由端を備えた金属製アームは、ボルトを緩めるとき、および/またはアンカーがスプリッタから押し出されるときに、径方向に突出する部分から最大でスプリッタの長さの60%の軸方向距離および最小境界円筒の半径の少なくとも85%の径方向距離だけ離れた頂部を備えた壁を有するキャッチ内に捕捉されるように十分に径方向に収縮できることが見出された。同様に、固定具セットを使用して付属部品を約2mmの厚さの壁に固定する場合、キャッチを通過してからアンカーを後面に対してロックするまでの間に最大で1.5mm径方向に拡張するように構成された返し部付き自由端を有すると共に、軸方向距離が最大で8mmであり、径方向距離が少なくとも5mmであることにより、ボルトを緩めるとき、および/またはアンカーがスプリッタから押し出されるときに、返し部付き自由端を備えた金属アームが、キャッチ内に捕捉されるように十分に径方向に収縮できるようになることが見出された。換言すれば、キャッチの壁の頂部の特定の位置選択は、アンカーのアームの収縮が非常に小さいにもかわらず、ボルトを取り外すときに金属アンカーがスプリッタに捕捉されることを確実にする。そのため、WO-A-2007/009998に開示されている固定具セットとは異なり、アンカーは、ボルトを取り外した後これをアンカーに再挿入するとき、スプリッタに取り付けられたままであり、つまり、アンカーは失われず、ボルトを再度挿入して、付属部品を再度取り付けるときに再使用することができる。
【0014】
さらに、キャッチとくさび部分の自由端との間の残りの距離は、アームの比較的高い剛性にもかかわらず、くさび面がアンカーのアームを拡張することを可能にするのに十分な長さのくさび面を提供する。この点で、スプリッタと、スプリッタ上をスライドせずにボルトに螺合されるアンカーの合計長さは、スプリッタおよびアンカーを挿入する必要がある中空支柱の内側寸法によって限定され、この内側寸法は、通常、最大で60mm、50mm、または40mmであるように標準化される。
【0015】
さらに、キャッチは、好ましくは、最小境界円筒内に完全に配置され、スリーブ部分は、その最小境界円筒が壁の開口部の半径に可能な限り近い半径を有するように設計することができる。換言すれば、スリーブ部分と壁の開口部との間の余裕(隙間)は、生産公差を考慮に入れるのに必要とされる必要最小限に保つことができる。この余裕を最小限に抑えることは、壁に対して付属部品を動かすための余裕が少なくなることにもなるため、有利である。さらに、最小限に抑えられた余裕は、水および/または汚れが支持体の内部に入る余地が少ないことを意味する。スプリッタの全体的な強度は、その最小境界円筒が壁の開口部の半径に可能な限り近い半径を有するようにスリーブ部分を設計できることによっても高められる。壁の開口部のサイズを最小限に保つこともできるため、壁の開口部の穴あけがより容易になる。
【0016】
本発明の一実施形態では、アンカーは、弾性を有する金属から作製され、それにより、アンカーの返し部付き自由端がそれぞれ、長手方向軸から2mm距離にわたって拡張され、そして、この自由端が解放されたとき、この距離の最大で40%、特には最大で35%、さらに特には最大で30%にわたって収縮する。このような金属の利点は、弾性の小さい金属よりもはるかに高価な、いわゆるバネ金属である必要がないことである。
【0017】
本発明の一実施形態では、アンカーは、最大で400MPa、好ましくは最大で300MPa、好ましくは最大で250MPaの降伏強度を有する金属から作製され、金属は少なくとも50MPaの降伏強度、より好ましくは少なくとも100MPa以上、有利には少なくとも150MPa、より有利には少なくとも200MPaを有する。
【0018】
そのような降伏強度を有する金属からアンカーを製造することにより、返し部付き自由端を有するアームが、返し部付き自由端がそれぞれのキャッチに捕捉されたときに十分な強度を加えることができることが見出された。換言すれば、キャッチに捕捉されると、アームは、スプリッタに対して力、すなわち径方向に向けられた力を加え続ける。この力により、たとえばボルトが完全に取り外され、次いで挿入されたときに、キャッチと返し部のインターロックが誤って解放されないことが確実にされる。
【0019】
本発明の一実施形態では、径方向距離は、最小境界円筒の半径の少なくとも87%、好ましくは最小境界円筒の半径の少なくとも90%、より好ましくは最小境界円筒の半径の少なくとも92%である。特に、径方向距離は、最小境界円筒の半径に等しく、径方向距離は、好ましくは約7mmである。
【0020】
径方向距離を増加させることは、壁の頂部がより径方向外側に配置されることを意味し、つまり、アームが必要とする径方向の収縮が減少することを意味する。結果として、より剛性の高い、したがってより強いアンカーを使用することができ、これにより、固定具セットの全体的な引張強度が高まる。
【0021】
本発明の一実施形態では、軸方向距離は、前記長さの少なくとも15%、好ましくは前記長さの少なくとも25%、より好ましくは前記長さの少なくとも30%、最も好ましくは前記長さの少なくとも35%であり、軸方向距離は、好ましくは最大で前記長さの50%、より好ましくは最大で前記長さの45%であり、軸方向距離は特に約5mmである。
【0022】
スプリッタの径方向に突出する部分は壁の前側に配置され、アンカーはそのアームの自由端が壁の後面に接触するようにして螺合されるため、キャッチの壁の頂部とスプリッタの径方向に突出する部分との間の軸方向距離は、約0.5mm~約5mmの間の厚さを有する壁に必要とされる空間、およびアンカーのアームの自由末端部に設けられた返し部が後壁に対してロックする前にキャッチを通過するために必要とされる空間を提供する。他方で、キャッチの壁の頂部とスプリッタの径方向に突出する部分との間のより小さな軸方向距離により、返し部付き端部がスプリッタのキャッチ内に捕捉されるようにために、アームの径方向の収縮は、より小さくてよい。したがって、アンカーのアームの剛性を犠牲にすることなく、前記長さの35%~45%の間、特に約5mmの軸方向距離が最も好ましいことが見出された。
【0023】
本発明の一実施形態では、頂部は、スリーブ部分とくさび部分との間の移行部にまたは移行部の近くに配置される。
【0024】
頂部のそのような配置は、アームの必要な径方向の収縮を最小化することが見出されており、つまり、それらの剛性は、最大化され得ることを意味する。
【0025】
本発明の一実施形態では、各アームは、特に、最小境界円筒内に完全に配置されるキャッチと協働するようにそれぞれが構成された返し部付き自由端を有し、各キャッチは、頂部を有する径方向に突出する壁を備え、頂部は、長手方向軸に平行に測定した軸方向距離だけ径方向に突出する部分から離れており、且つ長手方向軸に垂直に測定した径方向距離だけ幾何学的長手方向軸から離れており、軸方向距離は、最大で前記長さの60%であり、軸方向距離は、好ましくは、最大で8mmであり、より好ましくは最大で7mmであり、径方向距離は、最小境界円筒の半径の少なくとも85%であり、径方向距離は、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも6mmである。
【0026】
アンカーの各アーム用のキャッチを提供することで、固定具セットの堅牢性および/または信頼性が向上する。各アームに対して、別個のキャッチを提供してもよく、または1つのキャッチ、例えば、円周方向の溝が、すべてのアームの共通のキャッチとして作用してもよい。
【0027】
本発明は、以下の説明および添付の図によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】付属部品、特にロックボルトドアキーパーを中空支柱の壁に固定するために使用される、本発明による固定具セットの側面の部分的に切り取られた図である。
【
図4】ボルトが省略され、アンカーがスプリッタに捕捉されている、
図1の固定具セットの斜視図である。
【
図5】
図4のスプリッタ内に捕捉されたアンカーの正面図である。
【
図6】
図5の線Vlに沿った固定具セットの軸方向断面図である。
【
図7-9】
図1の固定具セットのスプリッタを様々な方向から見た斜視図である。
【
図11】
図10の線XIに沿ったスプリッタの軸方向断面図である。
【
図12】
図1の固定具セットのアンカーの斜視図である。
【
図14】
図14の線XIVに沿ったアンカーの軸方向断面図である。
【
図15】代替スプリッタの
図7のような正面図である。
【
図16】
図10の線XVIに沿ったスプリッタの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明されるが、本発明は、これに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0030】
さらに、本説明および特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的または時系列の順序を説明するために使用されるわけではない。これらの用語は、適切な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、本明細書で説明または図示する以外の順序で動作することができる。
【0031】
さらに、説明および特許請求の範囲における頂部、底部、上方、下方などの用語は、説明の目的で使用される。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書で説明する本発明の実施形態は、本明細書で説明または図示される以外の向きで動作することができる。
【0032】
さらに、様々な実施形態は、「好ましい」と呼ばれるが、本発明の範囲を限定するものとしてではなく、本発明を実施することができる例示的な方法として解釈されるべきである。
【0033】
図1は、付属部品3を中空の金属支柱またはフレーム2の壁1上に固定するために使用される本発明による固定具セットの例を示している。付属部品3は、この非限定的な例では、中空フレーム2の壁1のうちの1つの前面に接触して固定されているドアロックボルトキーパーである。付属部品3は、
図2により詳細に示すように、壁1を貫通する開口部4を通って延びる2つの固定具セットによって中空フレーム1に固定されている。固定具セットのそれぞれは、標準の雄ネジ付きボルト5と、スプリッタ6と、雌ネジ付きアンカー7とを備える。ボルト5は、アンカー7の対応する雌ネジ27と螺合するように構成された、少なくとも部分的にネジ山を備えるシャフト9を有する。アンカー7は、その拡張されていない形態で、中空フレーム2の壁1に開けられた円形穴4に挿入することができるが、スプリッタ6は、この穴4に部分的にしか挿入できない。さらに、アンカー7は、その拡張された位置では、ネジ山9、27によって、壁1の内面に接触してボルト5によって保持され、したがって、固定具セット全体を付属部品と共に支柱またはフレーム2に固定する。
【0034】
図1に示すような支柱2は、典型的には、約4cm~約6cmの外幅、特に約4cm、約5cmまたは約6cmの外幅を有する。アンカー7は拡張されていない形態で挿入される必要があるので、アンカー4と支柱内のスプリッタ6の部分とを合わせた長さは、支柱2内の利用可能なスペースよりも短くなければならない。結果として、その拡張されていない形態のアンカー7は、典型的には、最大で3cm、好ましくは最大で2.5cmの長さを有する。
【0035】
図3は、組み立て前の固定具セットの要素の分解図を示す。ボルト5は、少なくとも部分的にネジ山を備えるシャフト9上に設けられたボルトヘッド8を有する。スプリッタ6は、非円形の、この場合は正方形の径方向に突出するヘッド10を備え、径方向に突出するヘッド10は、中空フレーム2の開口部4よりも大きい。このように、スプリッタ6のヘッドは、
図1および
図2に示すように、壁2の前面と接触するように構成されたフランジ10を形成する。スプリッタ6はさらに、
図1および
図2に示すように、フランジ10から離れるように軸方向に延び、開口部4内に適合するように構成されたスリーブ部分11を有する。添付の図では、スリーブ部分11は円形の断面を有し、最大強度を達成するために円形断面であることが好ましいが、他の断面形状(例えば、六角形の断面)が可能であることが容易に理解されよう。スリーブ部分11は、
図7~
図9に示すように、リブ14によって分離された円錐形、特に円錐台形のくさび面13を有するくさび部分12に移行する。スプリッタ6にはまた、貫通孔15が設けられ、この貫通孔15によって、スプリッタ6は、貫通孔15の長手方向軸17に略平行な(
図6では矢印16によって示す)第1の方向に、ボルトヘッド8に向かってボルト5のシャフト9上をスライドするように構成される。
【0036】
図示するアンカー7は、全体として、雌ネジ27を有するネジ付き底部18を備え、スプリッタ6によって径方向に拡張することができるアーム20を形成する4つのスリット19を有する中空円筒形部品からなる。
【0037】
スプリッタ6およびアンカー7は、互いに対して押し付けられたときに、スプリッタ6のリブ14がアンカー7のスリット19と係合して、スプリッタ6に対するアンカー7の回転を実質的に制限し、そしてスプリッタ6の円錐くさび面13がアンカー7の拡張可能なアーム20に対し径方向外側に向けて力を及ぼし、それによってアンカー7の外径が、
図2に詳細に示すような中空フレーム2の開口部4の直径より大きいサイズに拡張されるように形状化されている。実際、アーム20の径方向拡張は、金属アンカー7の変形によって引き起こされることが判明している。特に、スリット19が終了する領域、すなわち、アーム20がネジ付き底部18と連結する領域は、
図2に示すように変形される。
【0038】
図1および
図2に示すように、付属部品3の裏側は、スプリッタ6の正方形のヘッド10を受け入れるように構成された正方形の凹部21を備える。正方形のスプリッタヘッド10が凹部21に挿入されると、それらの形状ロック係合により、付属部品3に対するスプリッタ6の回転は実質的に制限される。
図1および
図2では、凹部21は正方形として示されているが、スプリッタヘッド10の回転を制限する任意の非円形の形態を考慮することができる。例えば、単一の細長い溝が、いくつかのスプリッタヘッド10を収容し、それらを回転しないように保持することができる。凹部21を細長い溝の形にすることの利点は、押し出し成形プロセスによって付属部品を製造するときにそのような溝を容易に得ることができることである。
【0039】
付属部品3に対するスプリッタ6の回転を制限するために形状ロック装置を使用する代わりに、付属部品とスプリッタ6との間を強固に連結して、付属部品3に対するスプリッタ6の回転を制限することも可能である。換言すれば、1つまたは複数のスプリッタ6は、付属部品3と一体的に(一体物として)形成される。スプリッタおよび付属部品は、特に、プラスチック材料から射出成形するか、または金属または金属合金から鋳造成形することができる。
【0040】
付属部品3を中空フレーム2に固定するために、ボルト5は、最初に付属部品3の開口部を通して導入され、次いで、1つまたは複数のスプリッタ6およびそれに対応する数のアンカー7と組み付けられ、スプリッタ6の正方形のヘッド10は、それによって付属部品3の正方形の凹部21または細長い溝に適合する。次いで、ボルト5、スプリッタ6、およびアンカー7を備えた付属部品3が、フレーム2の壁1の前面に配置され、この固定具セットは、壁2の対応する穴4を通して導入される。
図2から容易に理解できるように、ボルト5を締めるとき、アンカー7は、スプリッタ6のリブ14と係合するそれらのスリット19によって回転しないように保持され、スプリッタ6自体も、スプリッタヘッド10が付属部品3の凹部21と係合していることで回転しないように保持される。結果として、アンカー7の径方向に拡張可能なアーム20は、スプリッタ6の円錐形のくさび面13に押し付けられ、外側に拡張させられ、最終的には、
図2に示すように、アーム自体を中空フレーム2の壁1の裏側に接触させて強固に固定する。
【0041】
本発明によれば、スプリッタ6は、少なくとも1つのキャッチ22、好ましくは、くさび面13またはアーム20の数と同じ数のキャッチ22、すなわち、添付の図では4つのキャッチ22をさらに含む。各キャッチ22は、スリーブ部分11の周りの最小境界円筒27内に完全に配置され、その最小境界円筒27は、貫通孔15の長手方向軸17と同軸であり、
図11および16に示す直径Dを有する。1つまたは複数のキャッチ22は、ボルト5がアンカー7から外されたときに、アーム20の自由端24の、キャッチ22と対応する数の返し部23と協働するように構成される。詳細には、
図4~
図6に示すように、アンカー7を第1の方向16にスプリッタ6上をスライドさせ、返し部付き自由端24がキャッチ22を通過した後、ボルト5がアンカーから取り外されたとき(すなわちアンカー7が、(
図6の矢印25に示す)第2の方向にスライドするように付勢されたとき)、返し部付き自由端24は、キャッチ22とインターロックし、それによって
図4から6図に示すようにアンカー7がスプリッタ6から外れることを防止する。
【0042】
キャッチ22はスプリッタ6の特定の領域に配置されるので、金属アームの弾性が低いことを考慮しても、そのようなキャッチ動作が可能である。詳細には、本発明によれば、キャッチ22は、頂部26を有する径方向に延びる壁25を備え、頂部は、径方向に突出する部分10から、長手方向軸17に平行に測定した軸方向距離l(
図11および
図16に示す)だけ離れており、この軸方向距離lは、(これも
図11および
図16に示すように)スプリッタ6の長さL、特にスリーブ部分11とくさび部分12とを合わせた全長Lの最大で60%である。さらに、頂部26は、幾何学的長手方軸17から、長手方向軸17に垂直に測定した径方向距離w(
図16に示す)だけ離れており、この径方向距離wは、最小境界円筒27の半径R(
図11および16に示す)の少なくとも85%である。あるいは、本発明によれば、固定具セットが約2mmの厚さを有する壁に適用される場合、アンカーが、返し部付き自由端がキャッチ22に捕捉される軸方向位置から、アンカー7が後面に対してロックされる軸方向位置まで移動されたとき、スプリッタは、長手方向軸17から最大で1.5mm、好ましくは最大で1mmの距離にわたって返し部付き自由端を径方向に拡張させるように構成され、さらに軸方向距離lが最大で8mmであり、径方向距離wが少なくとも5mmであることも組み合わさって、金属アームの小さい弾性に関わらず捕捉作用をもたらす。
【0043】
アンカーに関して、実際、好ましくは、必要な引張強度、特に少なくとも10kNの引張強度を提供するために、比較的剛性の金属が使用される。アンカーのコストを低減するために、金属は、好ましくはバネ金属ではなく、好ましくは高弾性を有さず、特に400MPaを超えず、好ましくは30MPaを超えず、より好ましくは250MPaを超えない降伏強度を有する金属である。しかし、アンカーの金属の降伏強度は、好ましくは50MPaより高く、より好ましくは100MPaより高く、有利には150MPaより高く、より有利には200MPaより高く、その結果、アームの必要な剛性をその制限された厚さによって達成することができる。アンカーは、特に、アンカーの返し部付き自由端が長手方向軸から2mmの距離にわたってそれぞれ拡張され、その後、これらの自由端が解放されたときにこの距離の最大で40%、特には最大で35%、より特には最大で30%にわたって収縮するような弾性を有する金属で作製される。たとえば、アンカーのアームの自由端はそれぞれ、2mmの厚さを有する壁に固定具セットを適用した後にアンカーをスプリッタから取り外したとき、約0.6mmだけ収縮する(すなわちアンカーの直径は1.2mm減少する)。
【0044】
軸方向距離lは、好ましくは3mmより大きく、より好ましくは4mmより大きく、例えば約5mmに等しい。径方向距離wは、好ましくは12.5mmより小さく、より好ましくは10mmより小さく、最も好ましくは7.5mmより小さく、例えば約7mmに等しい。径方向距離wが7mmの場合、壁に開ける必要のある穴は、15mmのドリルビットで開けることができ、これは非常に簡単で、支柱の強度を大幅に低下させることはない。
【0045】
拡張されたアームの収縮の範囲が限られていることを考慮して、驚くべきことに、返し部付き自由端24が背後に捕捉される頂部26の上記で説明した配置により、金属アーム20が、その金属の低い弾性にもかかわらずその弾性によって部分的に径方向に収縮できることが見出された。この部分的な径方向の収縮は、特に、拡張時の金属アンカーの変形が弾性および塑性成分の両方を含み、径方向の収縮が弾性変形の結果であるという事実による。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、径方向距離wは、最小境界円筒27の半径Rの少なくとも87%、好ましくは最小境界円筒の半径Rの少なくとも90%、より好ましくは最小境界円筒27の半径Rの少なくとも92%であり、有利には、径方向距離wは、
図11に示すように、最小境界円筒27の半径Rに等しく、特に約7mmである。さらに、いくつかの実施形態では、軸方向距離lは、スプリッタ6の長さLの少なくとも15%、好ましくは長さLの少なくとも25%、より好ましくは長さLの少なくとも30%、最も好ましくは長さLの少なくとも35%であり、そして特に最大で長さLの50%、好ましくは最大で長さLの45%であり、軸方向距離lは特に約5mmである。そのような構成では、頂部26は、スリーブ部分11とくさび部分12との間の移行部にまたはその近くに配置され、この移行部は、アーム20の返し部および異なる厚さを有する壁2を収容するのに十分な余地を残す。特に、壁2は、0.5mm~5mmの間、好ましくは1mm~3mmの間、そして典型的には約2mmの厚さを有し得る。さらに、頂部26のそのような配置により、アーム20は、壁2の後面に対してロックするために、返し部付き自由端24をキャッチ22にインターロックするのに必要な部分的な径方向収縮を提供するために、もはや変形の弾性成分だけでは十分でなくなるような程度まで拡張する必要がないことが、確実にされる。
【0047】
図示する実施形態では、キャッチ22は、スリーブ部分の不連続溝(
図7~
図11を参照)またはくさび部分12の不連続溝(
図16を参照)によって形成される。あるいは、溝は、連続的な円周方向の溝であってもよい。このような連続溝は、スプリッタ6に容易にフライス加工することができる。しかし、スプリッタ6が金属または金属合金から製造される場合、スプリッタ6全体を鋳造することができ、またはプラスチック材料を使用してスプリッタ6を製造する場合、スプリッタ6を射出成形することができる。このような鋳造プロセスを使用して、図に示す不連続な溝を備えたスプリッタを製造した。
【0048】
溝は、好ましくは、少なくとも0.25mm、好ましくは少なくとも0.5mm、有利には少なくとも0.75mm、より有利には少なくとも0.9mmである(壁25の高さhに等しい)深さを有する。図示する実施形態では、壁25は、約1.0mmに等しい高さhを有する。
【0049】
図示する実施形態では、アーム20の自由端24の返し部23は、ノッチ、特に溝によって形成され、このノッチは、少なくとも0.25mm、好ましくは少なくとも0.5mm、有利には少なくとも0.75mm、より有利には少なくとも0.9mmである(
図14に示す)深さdを有する。図示する実施形態では、ノッチは、約1.0mmに等しい深さdを有する。この場合も、形成された金属アンカー7に容易にフライス加工できるので、溝が好ましい。このアンカーは、通常、ステンレス鋼ロッドからフライス加工することによって製造される。キャッチ22および/または返し部23を形成する溝は、通常、非溝形状の凹部および/またはノッチによって形成され得ることが容易に理解されよう。
【0050】
添付の図に示すようなボルト5は、典型的には、約6mm~約10mmの間の直径を有し、好ましくは約8mmの直径を有する。その結果、貫通孔15の直径は、典型的には7mm~11mmの間であり、好ましくは8mm~9mmの間である。さらに、最小境界円筒の直径Dは、好ましくは最大で25mm、より好ましくは最大で20mm、最も好ましくは最大で15mmである。
【0051】
本開示の態様を特定の実施形態に関して説明してきたが、これらの態様は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内の他の形態で実施され得ることが容易に理解されよう。